説明

省電力モード解除装置、中継装置、省電力モード解除方法、およびコンピュータープログラム

【課題】様々なタイプの画像形成装置が設置されているネットワークにおいて従来よりも確実に省電力モードを解除できるようにする
【解決手段】スイッチングハブ3に、画像形成装置のそれぞれの、省電力モードを解除する解除方法を示す解除方法データ6を記憶する、省電力モード解除テーブル301を、設ける。通信回路30cが、パケット76を宛先の画像形成装置に送信できない場合に、マジックパケット送信制御部306または電源オン信号送信制御部307は、この画像形成装置の解除方法データ6に基づいて、この特定処理装置の省電力モードを解除するための解除処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の処理を行う画像形成装置などの特定処理装置における省電力モードの解除の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な製品に関して、省電力を図るための様々な方法が提案されている。画像形成装置のための省電力の方法も、提案されている。
【0003】
特許文献1に記載される方法によると、電源コードを電力制御装置のアウトレットに接続することによって電力制御装置を介して電力の供給を受けるプリンタにおける電力状態が通常電力状態から省電力状態へ遷移することにより、前記電力制御装置のアウトレットからプリンタへの電力供給を停止する。電力制御装置は、画像形成要求元からそのプリンタへの画像形成要求若しくはウォームアップ要求を受信することによってプリンタへの電力供給を開始し、省電力状態から通常電力状態へと復帰させる。
【0004】
特許文献2に記載される方法によると、外部からのアクセスにより省電力から復帰する印刷装置と通信可能で、印刷装置にアクセスする第1アクセス手段と、第2アクセス手段と、を有する情報処理システムは、第1アクセス手段の処理により発生される通知を依頼する依頼手段と、第1アクセス手段による印刷装置に対するイベント発生の通知の有無を判定する判定手段と、を備え、第2アクセス手段は、判定手段の判定によりイベント発生の通知が有ると判定した場合、印刷装置に対してアクセスする。
【0005】
特許文献3に記載される方法によると、クライアント装置から要求先ではない画像形成装置に対して、所定の起動要求のみで復帰可能な省電力モードではない省電力モードへ移行させる要求を出す。
【0006】
省電力モードの状態では、画像形成装置が実行できる処理が限られることが、ある。そこで、次の方法が提案されている。
【0007】
特許文献4に記載される方法によると、装置全体の制御を行う制御手段と、情報を記憶する情報記憶手段と、ネットワークを介して接続された端末装置と情報の送受信を行う通信手段と、を有し、通信手段は、独立して動作する制御手段と記憶手段とを備える。通常動作モード時は、制御手段が端末装置からの要求に応答する。省電力モード時は、通信手段が備える制御手段が制御手段から受信して記憶手段に記憶した情報に基づいて、制御手段に代わって端末装置からの要求に応答し、通常動作モードの復帰を伴う要求があった場合は、通常動作モードに復帰するまでの間、端末装置からの情報を受信し、該情報を情報記憶手段に記憶させる。
【0008】
特許文献5に記載される方法によると、一方のMFPは、他方のMFPが省電力状態へ移行する際に、他方のMFPからファイル情報を受信する。そして、一方のMFPは、他の装置から他方のMFPに記憶されたファイルに対するファイル処理要求パケットを受信すると、処理要求をRAMに保持する。また、一方のMFPは、他方のMFPが通常電力状態へ復帰する場合に、RAMに保持されたファイル処理要求パケットを他方のMFPへ送信する。
【0009】
特許文献6に記載される方法によると、特定のデータパターンの検知に応じて、外部装置からの要求に応答可能な状態にすべく電力供給復帰を行なう印刷制御装置と通信可能な情報処理装置において、代行条件を検知する検知手段と、前記特定のデータパターンを含むデータを印刷制御装置に発行する発行手段と、代行印刷先の候補の印刷制御装置の状態を取得する取得手段と、前記取得手段により取得された代行印刷先の候補の印刷制御装置を表示部に表示させる表示制御手段と、表示された代行印刷先の候補から指示に応じて選択された印刷制御装置に代行印刷ジョブを投入するジョブ投入手段とを有する仕組みを提供する。
【0010】
特許文献7に記載される方法によると、印刷装置が省電力モードに設定されているときに、無線起動装置が、ホストコンピュータから有線LANを介して送信される印刷要求信号を監視し、印刷要求信号が送信された場合に、印刷を行うべき印刷装置の無線インターフェース部に対して、通常状態へ復帰指示信号を送信する。省電力モードに設定されている印刷装置であっても無線インターフェース部だけは通電されているので、印刷装置は通常状態へ復帰できる。
【0011】
特許文献8に記載される方法によると、ネットワークに接続されているプリンタを認識し、通常モードであるプリンタがなければ、認識されたプリンタの中から通常モードに復帰させるプリンタを選択し、選択されたプリンタに対して省電力モードから通常モードに復帰するよう指示する制御信号を送信し、選択したプリンタを省電力モードから通常モードに復帰させ、予め設定された時間が経過すると、別のプリンタを選択し、各プリンタが交替で通常モードに復帰するようパワーマネージメントを行う。
【0012】
そのほか、省電力モードにおけるファイルの消失を防止する方法として、次の方法が提案されている。一方のMFPは、他方のMFPが省電力状態へ移行する際に、他方のMFPからファイル情報を受信する。そして、一方のMFPは、他の装置から他方のMFPに対するファイル情報取得要求パケットを受信すると、他方のMFPから受信済みのファイル情報を他の装置へ送信する。また、一方のMFPは、他方のMFPへ記憶させるべきファイルを代理取得し、他方のMFPが通常電力状態へ復帰する場合に、代理取得したファイルを他方のMFPへ送信する(特許文献9)。
【0013】
また、省電力モードから通常モードへの復帰時間を解消し高速に印刷を行う方法として、次の方法が提案されている。IEEE1394シリアルバスを介してネットワークに接続された印刷装置の設定情報を認識し、通常モードで待機する代表プリンタの存否を判断し、代表プリンタが設定されていない場合は、所定の選択基準を満たす代表プリンタを選択して、常時印刷処理可能な状態を保持する(特許文献10)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2010−225060号公報
【特許文献2】特開2007−249430号公報
【特許文献3】特開2006−235941号公報
【特許文献4】特開2010−283734号公報
【特許文献5】特開2010−146340号公報
【特許文献6】特開2006−018586号公報
【特許文献7】特開2005−169623号公報
【特許文献8】特開2000−235470号公報
【特許文献9】特開2010−141600号公報
【特許文献10】特開2000−187579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、近年、LAN(Local Area Network)などのネットワークには、様々なタイプの画像形成装置が設けられている。例えば、無線通信の機能を有する画像形成装置もあれば、有しない画像形成装置もある。
【0016】
しかし、従来の方法では、様々なタイプの画像形成装置が設置されているネットワークにおいては、一部の画像形成装置の省電力モードを上手く解除できないことがある。
【0017】
本発明は、このような問題点に鑑み、特定の処理を行う様々なタイプの画像形成装置などの装置が設置されているネットワークにおいて従来よりも確実に省電力モードを解除できるようにすることを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一形態に係る省電力モード解除装置は、特定の処理を行う複数の特定処理装置のそれぞれの、省電力モードを解除する解除方法を記憶する、記憶手段と、前記特定の処理を行うための特定処理用データが前記複数の特定処理装置のうちの当該特定処理用データの宛先の特定処理装置に届かないことを検知する検知手段と、前記特定処理用データが前記宛先の特定処理装置に届かないことが前記検知手段によって検知された場合に、前記記憶手段に記憶されている、当該宛先の特定処理装置の前記解除方法に基づいて、当該宛先の特定処理装置の省電力モードを解除するための解除処理を実行する、解除処理手段と、を有する。
【0019】
本発明の一形態に係る中継装置は、特定の処理を行う複数の特定処理装置のうちの宛先の特定処理装置へ当該特定の処理を行うための特定処理用データを中継する中継装置であって、前記複数の特定処理装置のそれぞれの、省電力モードを解除する解除方法を記憶する、記憶手段と、前記宛先の特定処理装置へ前記特定処理用データを中継することができない場合に、前記記憶手段に記憶されている、当該宛先の特定処理装置の前記解除方法に基づいて、当該宛先の特定処理装置の省電力モードを解除するための解除処理を実行する、解除処理手段と、を有する。
【0020】
好ましくは、前記複数の特定処理装置のそれぞれの特性を示す特性データを取得する取得手段と、前記特性データに基づいて前記複数の特定処理装置のそれぞれの前記解除方法を決定する決定手段と、を有し、前記記憶手段は、前記決定手段によって決定された前記解除方法を記憶する。
【0021】
または、前記複数の特定処理装置のうちの1台の前記特性データとして、WOL(Wake On LAN)に当該1台の特定処理装置が対応している旨を示すデータが前記取得手段によって取得された場合は、前記決定手段は、当該1台の特定処理装置の前記解除方法を、マジックパケットを当該1台の特定処理装置へ送信することであると、決定する。
【0022】
または、前記複数の特定処理装置のうちの1台の前記特性データとして、前記特定処理用データをやり取りする通信網とは異なる第二の通信網によって近距離無線通信を行いかつ省電力モードにおいても稼働する近距離無線通信手段を備える旨を示すデータが前記取得手段によって取得された場合は、前記決定手段は、当該1台の特定処理装置の前記解除方法を、当該1台の特定処理装置へ当該第二の通信網によって省電力モードの解除の信号を送信することであると、決定する。
【0023】
または、前記複数の特定処理装置のうちの1台の前記特性データとして、インテリジェント電源タップを介して電力が当該1台の特定処理装置へ供給される旨を示すデータが前記取得手段によって取得された場合は、前記決定手段は、当該1台の特定処理装置の前記解除方法を、電力の供給を開始するように当該インテリジェント電源タップへ指令することであると、決定する。
【0024】
または、前記特定処理用データが前記宛先の特定処理装置に届かないことが前記検知手段によって検知された場合は、前記解除処理手段によって前記解除処理が実行された後、一定の時間が経過した後、当該特定処理用データを当該宛先の特定処理装置へ再送信する、送信手段、を有する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によると、特定の処理を行う様々なタイプの画像形成装置などの装置が設置されているネットワークにおいても、従来よりも確実に省電力モードを解除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】印刷システムの全体的な構成の例を示す図である。
【図2】画像形成装置のハードウェア構成の例を示す図である。
【図3】スイッチングハブのハードウェア構成の例を示す図である。
【図4】スイッチングハブの機能的構成の例を示す図である。
【図5】画像形成装置それぞれの仕様の相違の例を示す図である。
【図6】画像形成装置における電力の供給の例を示す図である。
【図7】インテリジェント電源タップのプラットフォームの例を示す図である。
【図8】画像形成装置における電力の供給の例を示す図である。
【図9】省電力モード解除テーブルおよび解除方法データの例を示す図である。
【図10】テーブル登録処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【図11】スイッチングハブの全体的な処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、印刷システム100の全体的な構成の例を示す図である。図2は、画像形成装置1のハードウェア構成の例を示す図である。図3は、スイッチングハブ3のハードウェア構成の例を示す図である。図4は、スイッチングハブ3の機能的構成の例を示す図である。図5は、画像形成装置1A〜1Cそれぞれの仕様の相違の例を示す図である。図6は、画像形成装置1Aにおける電力の供給の例を示す図である。図7は、インテリジェント電源タップ4のプラットフォームの例を示す図である。図8は、画像形成装置1Bにおける電力の供給の例を示す図である。
【0028】
図1に示すように、印刷システム100は、複数台の画像形成装置1、1台または複数台の端末装置2、スイッチングハブ3、およびインテリジェント電源タップ4などによって構成される。
【0029】
各画像形成装置1および端末装置2のそれぞれのNIC(Network Interface Card)は、ツイストペアケーブルによってスイッチングハブ3に繋がれている。これにより、スイッチングハブ3を介して各画像形成装置1および端末装置2同士で通信が行われる。
【0030】
画像形成装置1は、一般に「複合機」または「MFP(Multi Function Peripherals)」などと呼ばれる装置であって、コピー、ファクシミリ、スキャン、ネットワークプリント、およびボックスなどの機能を集約した装置である。以下、複数の画像形成装置1のうちの特定の3台をそれぞれ「画像形成装置1A」、「画像形成装置1B」、および「画像形成装置1C」と区別して記載することがある。
【0031】
ネットワークプリント機能は、パーソナルコンピューターなどの装置から画像データを受信し画像を用紙に印刷する機能である。「PCプリント」などと呼ばれることもある。
【0032】
ボックス機能は、ユーザ−ごとに「個人ボックス」または「ボックス」などと呼ばれる、パーソナルコンピューターにおけるフォルダまたはディレクトリなどに相当する記憶領域を設け、管理する機能である。「ドキュメントサーバー機能」などと呼ばれることもある。ユーザ−は、自分の個人ボックスに画像データなどをファイル単位で保存しておくことができる。
【0033】
画像形成装置1は、図2に示すように、CPU(Central Processing Unit)10a、RAM(Random Access Memory)10b、ROM(Read Only Memory)10c、大容量記憶装置10d、スキャンユニット10e、印刷ユニット10f、NIC10g、タッチパネルディスプレイ10h、モデム10i、電源制御装置10j、およびインターフェースボード10mなどによって構成される。
【0034】
さらに、一部の画像形成装置1には、近距離無線装置10kが備わっている。近距離無線装置10kは、画像形成装置1に内蔵されていてもよいし、インターフェースボード10mを介して外付けされていてもよい。インターフェースボード10mとして、USB(Universal Serial Bus)またはIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)1394などに対応したボードが用いられる。
【0035】
NIC10gは、上述の通り、ツイストペアケーブルによってスイッチングハブ3に繋がれている。そして、端末装置2および他の画像形成装置1を相手にTCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)などのプロトコルで通信を行う。
【0036】
また、NIC10gは、スイッチングハブ3を相手にSNMP(Simple Network Management Protocol)によって通信を行う。
【0037】
タッチパネルディスプレイ10hは、ユーザ−に対してメッセージまたは指示を与えるための画面、ユーザ−が処理の指令および条件を入力するための画面、およびCPU10aの処理の結果を示す画面などを表示する。また、ユーザ−が指で触れた位置を検知し、検知結果を示す信号をCPU10aに送信する。
【0038】
スキャンユニット10eは、用紙に記されている写真、文字、絵、図表などからなる画像を読み取って画像データを生成する。
【0039】
モデム10iは、固定電話網を介してファクシミリ端末との間でG3などのプロトコルで画像データをやり取りするための装置である。
【0040】
印刷ユニット10fは、スキャンユニット10eによって読み取られた画像のほか、端末装置2またはファクシミリ端末などから受信した画像データに示される画像を印刷する。また印刷ユニット10fは加熱部と加圧部を備えた定着部を備え、印刷する際は用紙上に形成されたトナー画像を定着部で加熱・加圧処理することにより印刷処理を行う。
【0041】
電源制御装置10jは、商用電源からの電力を、画像形成装置1を構成する各ハードウェアへ分配する。
【0042】
近距離無線装置10kは、低い消費電力で他の装置を相手に近距離の無線通信を行う。近距離無線装置10kとして、ZigBeeの規格に適応した装置が用いられる。
【0043】
ROM10cまたは大容量記憶装置10dには、オペレーティングシステムおよびミドルウェアのほか上記の各機能を実現するためのアプリケーションなどのプログラムが記憶されている。これらのプログラムは必要に応じてRAM10bにロードされCPU10aによって実行される。大容量記憶装置10dとして、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)などが用いられる。
【0044】
端末装置2は、画像形成装置1が提供する上記の機能をユーザ−が遠隔的に使用するためのクライアントである。端末装置2には、画像形成装置1を制御するための各種のプログラム、例えばプリンタドライバーなどがインストールされている。端末装置2として、パーソナルコンピューター、PDA(Personal Digital Assistant)、またはスマートフォンなどが用いられる。
【0045】
スイッチングハブ3は、図3に示すように、コントローラー30a、プログラム記憶部30b、通信回路30c、バッファ30d、アドレス管理テーブル30e、および近距離無線装置30fなどによって構成される。
【0046】
通信回路30cは、パケットを送信元の装置から受信し送信先の装置へ送信する。もう少し具体的には、通信回路30cは、複数の(本実施形態では、少なくとも4つの)ポートを有している。そして、パケットを送信元の装置から受信すると、送信先の装置に繋がっているポートにのみ、このパケットを送出する。
【0047】
バッファ30dは、送信元の装置からのパケットを、送信先の装置への送信に成功するまで、または、タイムアウトになるまで、一時的に記憶する。
【0048】
アドレス管理テーブル30eは、ポートごとの、繋げられている装置のMAC(Media Access Control)アドレスを記憶する。通信回路30cは、アドレス管理テーブル30eに基づいて、送信元からのパケットを特定のポートへ送出する。
【0049】
なお、一般に、「ポート」は、ある装置に他の装置を繋ぐソケットつまり物理的なインターフェースを意味することもあれば、TCP/IPによるデータの受渡しを行うためのアプリケーションを意味することもある。以下、両ポートを区別するために、前者を意味するポートを「接続ポート」と記載し、後者を意味するポートを「TCP/IPポート」と記載する。
【0050】
以上説明したパケットの中継の処理は、従来の処理と同じである。スイッチングハブ3には、さらに、省電力モードの状態または電源がオフの状態の画像形成装置1宛てのパケットを処理するための仕組みが備わっている。なお、省電力モードには、各ハードウェアへの電力の供給の形態に応じて、様々なモードがある。本実施形態では、電力を少なくとも近距離無線装置10kへは供給するが少なくともNIC10gへは供給しないモードを省電力モードとして取り上げて説明する。ただし、NIC10gとしてWOL(Wake On LAN)に対応のNICが用いられる場合は、NIC10gを構成する装置のうちパケットを受け取って省電力モードを解除し通常モードに復帰するための回路には少なくとも、省電力モード時にも電力が供給される。
【0051】
近距離無線装置10kがインターフェースボード10mを介して外付けされている場合は、インターフェースボード10mへは、省電力モード時にも電力が供給される。
【0052】
プログラム記憶部30bは、図4に示す省電力モード解除テーブル301、状況データ取得部302、テーブル更新部303、解除要否決定部304、省電力モード解除方法決定部305、マジックパケット送信制御部306、および電源オン信号送信制御部307などを実現するためのプログラムが記憶されている。プログラム記憶部30bとして、ROMまたはフラッシュメモリなどが用いられる。
【0053】
コントローラー30aは、プログラム記憶部30bに記憶されているプログラムを実行することによって、スイッチングハブ3の各ハードウェアを制御する。
【0054】
近距離無線装置30fは、画像形成装置1の近距離無線装置10kと同一の規格で他の装置を相手に無線通信を行う。
【0055】
ところで、画像形成装置1A〜1Cは、それぞれ、図5に示すような、電源に関して特徴を有する。ここで、それぞれの特徴について説明する。
【0056】
画像形成装置1Aは、近距離無線装置10kを有する。また、画像形成装置1Aは、ジョブを実行しない状態(いわゆるアイドリング)が一定時間以上続いた場合に、省電力モードに切り換わる。ここで、図6を参照しながら、省電力モード時における画像形成装置1Aの各部の動作について、説明する。
【0057】
省電力モード時、図6(A)に示すように、電源制御装置10jは、電力を近距離無線装置10kへは供給するが、NIC10gへは供給しない。よって、近距離無線装置10kは、他の装置からデータを受信することができる。しかし、NIC10gは、受信することができない。
【0058】
そして、図6(B)に示すように、近距離無線装置10kは、スイッチングハブ3から省電力モードを解除する指令を示す信号(以下、「ウェイクアップ信号51」と記載する。)を受信すると(丸数字1)、省電力モードを解除するように電源制御装置10jに対して要求する(丸数字2)。すると、電源制御装置10jは、NIC10gをはじめ、すべてのハードウェアへの電力の供給を再開する(丸数字3)。これによって、NIC10gは、他の装置からデータを受信することができるようになる。
【0059】
画像形成装置1Bは、近距離無線装置10kを有しない。また、画像形成装置1Bは、省電力モードの機能も、有しない。ただし、画像形成装置1Bは、商用電源からの電力をインテリジェント電源タップ4を介して受けており、インテリジェント電源タップ4によって省電力化を図っている。
【0060】
インテリジェント電源タップ4は、図7に示すように、コントローラー40a、プログラム記憶部40b、電源回路40c、近距離無線装置40dなどによって構成される。
【0061】
プログラム記憶部40bは、オン切換要求部401、オフ切換要求部402、および電力消費量通知処理部403などによって構成される。
【0062】
コントローラー40aは、プログラム記憶部40bに記憶されているプログラムを実行することによって、インテリジェント電源タップ4の各ハードウェアを制御する。
【0063】
近距離無線装置40dは、スイッチングハブ3の近距離無線装置30fと同一の規格で他の装置を相手に無線通信を行う。
【0064】
電源回路40cは、複数の電源コンセントを有する。そして、コントローラー40aからの指令に応じて、電源コンセントを介する他の装置への電力の供給を開始したり停止したりする。
【0065】
さらに、電源回路40cは、各電源コンセントを介して他の装置へ供給する電力の遷移を、コントローラー40aへ通知する。
【0066】
ここで、画像形成装置1Bが繋げられている電源コンセント(以下、「電源コンセント40p1」と記載する。)を介しての電力の供給の切換えを、図8を参照しながら説明する。
【0067】
ところで、一般に、画像形成装置の消費電力あるいは消費電力の時間平均値は、アイドリングしている間、一定以下である。
【0068】
オフ切換要求部402は、電源回路40cからの、電源コンセント40p1を介して供給される電力の遷移の通知に基づいて、画像形成装置1Bが一定の時間以上アイドリングが続いているか否かを判断する。そして、続いていると判断したら、電源コンセント40p1を介して電力を出力するのを停止するように、電源回路40cに要求する。すると、電源回路40cは、電源コンセント40p1への電力の供給をオフにする。これにより、図8(A)に示すように、画像形成装置1Bへの電力の供給が停止し、画像形成装置1Bの電源がオフになる。
【0069】
その後、近距離無線装置40dが電源コンセント40p1の識別子を示すウェイクアップ信号51を受信すると、オン切換要求部401は、電源コンセント40p1からの電力の供給を開始するように要求する。すると、電源回路40cは、電源コンセント40p1への電力の供給をオンにする。これにより、図8(B)に示すように、画像形成装置1Bへの電力の供給が再開され、画像形成装置1Bが起動する。
【0070】
画像形成装置1Cは、近距離無線装置10kを有しない。画像形成装置1Cは、アイドリングが一定時間以上続いた場合に、省電力モードに切り換わる。
【0071】
また、画像形成装置1CのNIC10g、BIOS(Basic Input/Output System)、およびオペレーティングシステムなどは、WOLに対応している。よって、画像形成装置1Cは、マジックパケットによって電源のオン/オフを切り換えることができる。なお、画像形成装置1Aおよび画像形成装置1Bは、WOLには対応していない。
【0072】
次に、図4に示すプログラム記憶部30bのプログラムによって実現される各機能、通信回路30c、および近距離無線装置30fの処理の内容などを説明する。
【0073】
〔省電力モードの解除等のための情報の収集〕
図9は、省電力モード解除テーブル301および解除方法データ6の例を示す図である。図10は、テーブル登録処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【0074】
省電力モード解除テーブル301には、図9に示すように、画像形成装置1ごとに対応して解除方法データ6が1つずつ格納されている。解除方法データ6は、それに対応する画像形成装置1の省電力モードを解除しまたは電源をオンにする方法を示している。
【0075】
解除方法データ6において、「MACアドレス」は、解除方法データ6に対応する画像形成装置1のMACアドレスである。「TCP/IPポート番号」は、端末装置2から画像形成装置1へジョブを与える際に用いられるTCP/IPポートの番号(ポート番号)である。「解除方法」は、画像形成装置1の省電力モードを解除しまたは画像形成装置1の電源をオンにする方法である。以下、説明の簡単のため、ネットワークプリントのジョブが画像形成装置1へ与えられる場合を例に、説明する。また、各解除方法データ6を「解除方法データ6A」、「解除方法データ6B」、…と区別して記載することがある。
【0076】
なお、一般に、「515」は、LPR(Line Printer daemon Protocol)印刷のポート番号として用いられる。「9100」は、RAW印刷のポート番号として用いられる。
【0077】
これらの解除方法データ6を、ユーザ−が各画像形成装置1の仕様などを調べてスイッチングハブ3へ入力してもよい。この場合は、スイッチングハブ3にウェブサーバーおよびCGI(Common Gateway Interface)の機能を用意しておき、入力用のウェブページを端末装置2などへ配信し、ユーザ−に入力を行わせればよい。そして、ユーザ−が入力した内容を端末装置2から受信すればよい。
【0078】
本実施形態では、スイッチングハブ3は、これらの解除方法データ6を自動で取得する機能として、状況データ取得部302およびテーブル更新部303を有する。ここで、取得の処理の流れの一例を、図10のフローチャートを参照しながら説明する。
【0079】
各画像形成装置1にSNMPエージェントをインストールしておき、スイッチングハブ3にSNMPマネージャをインストールしておく。
【0080】
状況データ取得部302は、SNMPマネージャによって、各画像形成装置1のSNMPエージェントから各画像形成装置1のMIB(Management Information Base)に登録されているデータ(以下、「管理データ71」と記載する。)を受け取る(#801)。この際のデータのやり取りは、通信回路30cの各接続ポートを介して行われる。
【0081】
テーブル更新部303は、各管理データ71を解析し、WOLの機能を有する画像形成装置1を特定する(#802)。そして、特定できた場合は(#803でYes)、その画像形成装置1の解除方法データ6を生成し省電力モード解除テーブル301に格納する(#804)。
【0082】
この解除方法データ6の「MACアドレス」には、特定した画像形成装置1のMACアドレスが示される。「解除方法」には、LAN(Local Area Network)でマジックパケットを送信することが示される。「TCP/IPポート番号」には、この画像形成装置1がネットワークプリントに用いるポート(TCP/IPポート)のポート番号が示される。
【0083】
このポート番号は、管理データ71から特定すればよい。または、一般的に用いられる「515」等のウェルノウンポートのポート番号を特定するのであれば、後にこの画像形成装置1に宛てて端末装置2から送信されてきたネットワークプリントのジョブのデータおよび画像形成装置1による処理の結果(印刷の処理が行われた旨を示すジョブ履歴情報)から、このポート番号を特定してもよい。後述するポート番号の特定の仕方についても、同様である。ネットワークプリントのジョブ等の省電力モードを解除する必要がある特定の処理とポート番号とを対応づけておくことにより、ポート番号により特定の処理であるか判断できこれにより「解除方法」により省電力モードの解除を行う必要があるか否かを判断できる。
【0084】
ステップ#801〜#804の処理によると、画像形成装置1Cの解除方法データ6として解除方法データ6Cがスイッチングハブ3に登録される。
【0085】
ステップ#801〜#804の処理と並行してまたは前後して、状況データ取得部302は、電源のオンおよびオフの切換えの制御を行うことができるか否かを各近距離無線装置に対してZigBeeによって問い合わせる(#805)。
【0086】
すると、近距離無線装置10kおよび近距離無線装置40dなどの各近距離無線装置は、電源のオンおよびオフの切換えの制御ができる場合は、その旨を示す切換可回答データ72をZigBeeによって送信する。LANに参加している装置(例えば、画像形成装置1A)に設けられている近距離無線装置は、さらに、その装置のMACアドレスをも示す切換可回答データ72を送信する。このようにして、状況データ取得部302は、切換可回答データ72を取得する。この際のデータのやり取りは、近距離無線装置30fを介して行われる。
【0087】
テーブル更新部303は、切換可回答データ72が取得されると(#806でYes)、送信元に応じて次のように解除方法データ6を生成する。
【0088】
切換可回答データ72がインテリジェント電源タップ4から送信されてきた場合は(#807でYes)、テーブル更新部303は、ネットワークプリントのジョブのデータを通信回路30cによって画像形成装置1へ送信し(#808)、その後すぐに、電力の消費量が一定以上増大した電源コンセントを回答するようにこのインテリジェント電源タップ4に対して近距離無線装置30fによって要求する(#809)。
【0089】
ジョブのデータとして、いわゆるテストページを印刷するためのデータを、画像形成装置1へ送信してもよい。この場合は、1台の画像形成装置1へジョブのデータを送信したら、回答の要求をインテリジェント電源タップ4に対して行う。そして、印刷を実行するのに掛かる時間(例えば、2分)が経過したら、次の画像形成装置1へジョブのデータを送信し、回答の要求をインテリジェント電源タップ4に対して行う。
【0090】
または、端末装置2からネットワークプリントのジョブのデータを受信するのを待ち、受信したら通常通り、送信先である画像形成装置1にのみ送信してもよい。そして、送信後すぐに回答の要求をインテリジェント電源タップ4に対して行えばよい。
【0091】
画像形成装置1は、ネットワークプリントのジョブのデータを受信すると、印刷の処理を行う。このとき、画像形成装置1における電力の消費量が一定以上まで上昇する。
【0092】
インテリジェント電源タップ4において、スイッチングハブ3からの要求が受け付けられると、電力消費量通知処理部403(図7参照)は、電力の消費量が一定の値未満から一定の値以上に変化した電源コンセントを特定する。この電源コンセントは、電源回路40cから通知される電力の遷移に基づいて、特定することができる。
【0093】
もしも、いずれかの電源コンセントに繋がれている画像形成装置1がネットワークプリントのジョブのデータを受信しているのであれば、この繋がれている電源コンセントが特定される。電力消費量通知処理部403は、特定できた場合に、この電源コンセントの識別子を示す接続回答データ73をスイッチングハブ3へ送信する。
【0094】
そして、スイッチングハブ3において、接続回答データ73が受信されると、テーブル更新部303は、解除方法データ6を生成し省電力モード解除テーブル301に格納する(#810)。
【0095】
この解除方法データ6の「MACアドレス」には、直近に送信したネットワークプリントのジョブのデータの送信先である画像形成装置1のMACアドレスが示される。「解除方法」には、接続回答データ73に示される識別子の電源コンセントへの電力の供給を開始するためのウェイクアップ信号を接続回答データ73の送信元のアドレスへ宛ててZigBeeで送信することが示される。「TCP/IPポート番号」には、この画像形成装置1がネットワークプリントに用いるポート(TCP/IPポート)のポート番号が示される。
【0096】
ステップ#805、#808〜#810の処理によると、画像形成装置1Bの解除方法データ6として解除方法データ6Bがスイッチングハブ3に登録される。なお、この処理は、各画像形成装置1の省電力モードが解除されている状態で行うのが望ましい。
【0097】
一方、ステップ#805において切換可回答データ72が画像形成装置1から送信されてきた場合は(#807でNo)、テーブル更新部303は、この画像形成装置1の解除方法データ6を生成し省電力モード解除テーブル301に格納する(#811)。
【0098】
この解除方法データ6の「MACアドレス」には、この切換可回答データ72に示されるMACアドレスが示される。「解除方法」には、切換可回答データ72の送信元のアドレスへウェイクアップ信号をZigBeeで送信することが示される。「TCP/IPポート番号」には、この画像形成装置1がネットワークプリントに用いるポート(TCP/IPポート)のポート番号が示される。
【0099】
ステップ#805、#811の処理によると、画像形成装置1Aの解除方法データ6として解除方法データ6Aがスイッチングハブ3に登録される。
【0100】
〔省電力モードの解除等の処理〕
図4に戻って、スイッチングハブ3において、端末装置2からネットワークプリントのジョブのパケット76が送信されてくると、通信回路30cは、従来通り、パケット76をバッファ30dに記憶させるとともに、パケット76の送信先である画像形成装置1が繋がっている接続ポートおよびMACアドレスをアドレス管理テーブル30eに基づいて特定する。そして、このMACアドレスに宛てて、この接続ポートへパケット76を送出する。そして、パケット76が画像形成装置1に届いたことを確認できたら、例えばACKが返ってきたら、パケット76をバッファ30dから削除する。
【0101】
しかし、パケット76が画像形成装置1へ届かない場合がある。その原因として、画像形成装置1の電源のモードが省電力モードでありまたは画像形成装置1の電源がオフであることが、考えられる。
【0102】
そこで、通信回路30cおよび解除要否決定部304ないし電源オン信号送信制御部307は、画像形成装置1の省電力モードが解除されまたは電源がオンになるように、次の処理を行う。
【0103】
通信回路30cは、パケット76を送出してから一定の時間が経過してもACKが返ってこなければ、パケット76をコントローラー30aに与える。
【0104】
解除要否決定部304は、通信回路30cから与えられたパケット76に示される送信先のMACアドレスおよびポート番号を示す解除方法データ6を、省電力モード解除テーブル301(図9参照)から検索する。そして、このような解除方法データ6が見つかったら、送信先の省電力モードを解除しまたは電源をオンにする必要があると、決定する。
【0105】
省電力モード解除方法決定部305は、送信先の省電力モードを解除しまたは電源をオンにする必要があると解除要否決定部304によって決定されたら、その方法を、検索された解除方法データ6に示される解除方法に決定する。
【0106】
省電力モード解除方法決定部305によって決定された方法に応じて、マジックパケット送信制御部306および電源オン信号送信制御部307は、次の処理を行う。
【0107】
LANでマジックパケットを送信する方法に決定された場合は、マジックパケット送信制御部306は、解除方法データ6に示されるMACアドレスに宛ててマジックパケットを通信回路30cによって送信する。
【0108】
すると、例えば、マジックパケットが画像形成装置1Cへ送信されると、画像形成装置1Cは、省電力モードを解除する。そして、通信回路30cは、マジックパケットの送信後、一定の時間が経過したら、バッファ30dに記憶されているパケット76を画像形成装置1Cへ再送信する。なお、一定の時間は、省電力モードの解除を完了するのに必要な時間であって、解除方法ごとに予め計測するなどして定めておくのが望ましい。
【0109】
または、電源コンセントを指定してウェイクアップ信号をZigbeeで送信する方法に決定された場合は、電源オン信号送信制御部307は、解除方法データ6に基づいて、電源コンセントの識別子を示すウェイクアップ信号51を生成し、近距離無線装置30fによって他の近距離無線装置へ送信する。
【0110】
例えば解除方法データ6Bに基づく場合は、電源オン信号送信制御部307は、電源コンセントの識別子として「01」を示すウェイクアップ信号51を生成し、「00EEFF」へ宛てて近距離無線装置30fによって送信する。ウェイクアップ信号51に電源コンセントの識別子が示される場合は、ウェイクアップ信号51の送信先は、いずれかのインテリジェント電源タップ4である。
【0111】
インテリジェント電源タップ4において、近距離無線装置40dがウェイクアップ信号51を受信すると、電源回路40cは、これに示される識別子の電源コンセントへの電力の供給を開始する。これにより、この電源コンセントに繋がっている画像形成装置1(例えば、画像形成装置1B)の電源がオンになる。
【0112】
そして、スイッチングハブ3において、通信回路30cは、ウェイクアップ信号51の送信後、バッファ30dに記憶されているパケット76を再送信する。なお、一定の時間は、画像形成装置1の起動が完了するのに必要な時間である。
【0113】
または、電源コンセントを指定せずウェイクアップ信号をZigbeeで送信する方法に決定された場合は、電源オン信号送信制御部307は、ウェイクアップ信号51を生成し、解除方法データ6に基づいてウェイクアップ信号51を近距離無線装置30fによって他の近距離無線装置へ送信する。電源コンセントを指定しない場合は、ウェイクアップ信号51の送信先は、いずれかの画像形成装置1である。
【0114】
画像形成装置1(例えば、画像形成装置1A)において、近距離無線装置10kは、ウェイクアップ信号51を受信すると、省電力モードを解除するように電源制御装置10jに要求する。すると、電源制御装置10jは、省電力モードを解除する。
【0115】
そして、スイッチングハブ3において、通信回路30cは、ウェイクアップ信号51の送信後、マジックパケットの送信の場合と同様、一定の時間が経過したら、バッファ30dに記憶されているパケット76を送信先である画像形成装置1へ再送信する。
【0116】
なお、特定のジョブのパケットのタイムアウトの時間を通常よりも長くして端末装置2に設定しておくのが望ましい。
【0117】
図11は、スイッチングハブ3の全体的な処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【0118】
次に、ある1つのパケットを中継するための全体的な処理の流れを、図11のフローチャートを参照しながら説明する。
【0119】
スイッチングハブ3は、印刷システム100の運用の開始前に、画像形成装置1ごとの解除方法データ6を生成し省電力モード解除テーブル301に記憶させる処理を行う(#11)。この処理の手順は、前に図10で説明した通りである。
【0120】
スイッチングハブ3は、端末装置2からパケット76を受信すると(#12)、バッファ30dによって一時的に記憶する(#13)。そして、順番が来たら、パケット76を宛先(パケット76に含まれるIPアドレス及びMACアドレス)の画像形成装置1へ通信回路30cによって転送する(#14)。
【0121】
パケット76のACKが画像形成装置1から送信されてきた場合は(#15でYes)、スイッチングハブ3は、パケット76をバッファ30dから削除しまたは無効にする(#16)。
【0122】
一方、パケット76の転送後、一定の時間が経過してもACKが画像形成装置1から送信されてこない場合は(#15でNo)、スイッチングハブ3は、宛先の画像形成装置1が省電力モード状態にあると判断する。そして、パケット76が特定のジョブに係るものであれば、つまり、ネットワークプリントに係るものであれば(#17でYes)、この画像形成装置1の解除方法データ6を検索する(#18)。そして、解除方法データ6に基づいて画像形成装置1の省電力モードを解除する処理を行い(#19)、一定の時間が経過したら、パケット76の転送をリトライする(#20)。
【0123】
なお、パケット76の特定のジョブに係るものでないならば(#17でNo)、省電力モードの解除の処理は行わず、従来通り、端末装置2へエラーを通知してもよい。また、ステップ#20の転送のリトライに失敗した場合は、省電力モードの解除を断念し、端末装置2へエラーを通知してもよい。
【0124】
また、ステップ#11の処理、具体的には、図10に示した処理は、印刷システム100の開始後も適宜実行し、省電力モード解除テーブル301を更新するのが望ましい。
【0125】
本実施形態によると、様々なタイプの画像形成装置1が設置されているネットワークにおいても、従来よりも確実に省電力モードを解除することができる。
【0126】
しかも、スイッチングハブ3が各画像形成装置1の仕様等を調査し各画像形成装置1の解除方法データ6を生成するので、ユーザ−の手を煩わせることなく省電力モードの解除のための設定を行うことができる。
【0127】
本実施形態では、スイッチングハブ3は、画像形成装置1がWOLに対応しているか否かを管理データ71つまりMIBのデータを取得しそれに基づいて判別したが、他の方法で判別してもよい。例えば、スイッチングハブ3は、画像形成装置1が稼働しているときに、マジックパケットを通信回路30cによって画像形成装置1へ送信する。その後、PINGなどの信号を送信し、反応を待つ。そして、回答があればWOLに対応していないと判別し、回答がなければ対応していると判別する。さらに、もう一度、マジックパケットを送信し、画像形成装置1が通常モードに回復するか否かをPINGで確認することによって、WOLに対応しているか否かの判別の精度を高めてもよい。
【0128】
同様に、スイッチングハブ3は、上述の仕様の近距離無線装置10kを画像形成装置1が備えているか否かを、次のように判別してもよい。マジックパケットに相当する信号を、通常電力モードで画像形成装置1へ近距離無線装置30fによって送信する。その後、PINGなどの信号を通信回路30cによって送信し、反応を待つ。そして、回答があれば近距離無線装置10kを備えていないと判別し、回答がなければ備えていると判別する。さらに、もう一度、マジックパケットに相当する信号を送信し、画像形成装置1が通常モードに回復するか否かをPINGで確認することによって、判別の精度を高めてもよい。
【0129】
本実施形態では、省電力モードの解除を、ネットワークプリントのジョブのデータのパケットが宛先の画像形成装置1へ届かない場合を例に説明したが、本発明は、他の種類のジョブのデータのパケットが届かない場合にも適用することができる。例えば、ファクシミリによる画像の送信のジョブ(いわゆる、FAX送信ジョブ)のデータのパケットが届かない場合にも、適用することができる。または、ボックスへのファイルの保存のジョブまたはボックスからのファイルの読出しのジョブのデータのパケットが届かない場合にも、適用することができる。ジョブの種類は、パケットのTCP/IPポート番号に基づいて判別することができる。
【0130】
または、ジョブの種類等に関わらず、ユニキャストのパケットが届かない場合に省電力モードの解除の処理を実行し、ブロードキャストまたはマルチキャストのパケットが届かない場合は省電力モードの解除の処理を実行しないようにしてもよい。
【0131】
または、省電力モードに複数のレベルがある場合は、パケットに係るジョブの種類に応じて、復帰のレベルを変えてもよい。例えば、印刷を伴うジョブのパケットである場合は、通常モードに復帰させ、伴わない場合はNIC10gを稼働させるが印刷ユニット10fを稼働させないレベルに復帰させてもよい。
【0132】
本実施形態では、画像形成装置1の省電力モードを解除する場合を例に説明したが、多機能型でない装置の省電力モードを解除する場合にも、本発明を適用することができる。コピー、ファクシミリ、スキャン、ネットワークプリント、およびボックス(ドキュメントサーバー)の機能のうち、例えば、ファクシミリ機能のみを備えるファクシミリ端末の省電力モードを解除する場合にも、適用することができる。または、ドキュメントサーバー機能のみを備えるNAS(Network Attached Storage)の省電力モードを解除する場合にも、適用することができる。
【0133】
本実施形態では、画像形成装置1からSNMPによって管理データ71を取得し省電力モードの解除方法を特定したが、省電力モードの解除方法を回答するアプリケーションを画像形成装置1にインストールしておき、このアプリケーションを画像形成装置1に実行させることによって特定してもよい。
【0134】
画像形成装置1を使用することができる時間帯を制限している場合は、省電力モードの解除の処理の実行を限定してもよい。例えば、夜間における画像形成装置1の使用を禁止している場合は、特定のジョブのパケットが画像形成装置1に届いても、夜間であれば、省電力モードの解除の処理の実行しないようにしてもよい。解除の処理を実行する時間帯は、ユーザ−が任意に設定できるようにすればよい。
【0135】
その他、印刷システム100、画像形成装置1、スイッチングハブ3の全体または各部の構成、処理内容、処理順序、データの構成などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0136】
1 画像形成装置(特定処理装置)
3 スイッチングハブ(省電力モード解除装置、中継装置)
301 省電力モード解除テーブル(記憶手段)
302 状況データ取得部(取得手段)
305 省電力モード解除方法決定部(決定手段)
306 マジックパケット送信制御部(解除処理手段)
307 電源オン信号送信制御部(解除処理手段)
30c 通信回路(検知手段、送信手段)
6 解除方法データ
71 管理データ(特性データ)
72 切換可回答データ(特性データ)
73 接続回答データ(特性データ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の処理を行う複数の特定処理装置と通信網を介して通信を行う省電力モード解除装置であって、
前記複数の特定処理装置のそれぞれの、省電力モードを解除する解除方法を記憶する、記憶手段と、
前記特定の処理を行うための特定処理用データが前記複数の特定処理装置のうちの当該特定処理用データの宛先の特定処理装置に届かないことを検知する検知手段と、
前記特定処理用データが前記宛先の特定処理装置に届かないことが前記検知手段によって検知された場合に、前記記憶手段に記憶されている、当該宛先の特定処理装置の前記解除方法に基づいて、当該宛先の特定処理装置の省電力モードを解除するための解除処理を実行する、解除処理手段と、
を有することを特徴とする省電力モード解除装置。
【請求項2】
前記特定処理用データが前記宛先の特定処理装置に届かないことが前記検知手段によって検知された場合は、前記解除処理手段によって前記解除処理が実行された後、一定の時間が経過した後、当該特定処理用データを当該宛先の特定処理装置へ再送信する、送信手段、を有する、
請求項1に記載の省電力モード解除装置。
【請求項3】
前記複数の特定処理装置は、
前記省電力モードを解除することにより、前記特定処理用データを受信し前記特定の処理を実行することが可能になる、
請求項1または請求項2に記載の省電力モード解除装置。
【請求項4】
前記複数の特定処理装置は、
前記特定の処理として、用紙にトナー画像を定着させる定着手段を備えたプリント部によって用紙に画像形成を行うプリント処理を実行し、
前記省電力モードを解除することにより、前記特定処理用データとして前記プリント処理のためのデータを受信し前記プリント処理を実行することが可能になる、
請求項3に記載の省電力モード解除装置。
【請求項5】
特定の処理を行う複数の特定処理装置のうちの宛先の特定処理装置へ当該特定の処理を行うための特定処理用データを中継する中継装置であって、
前記複数の特定処理装置のそれぞれの、省電力モードを解除する解除方法を記憶する、記憶手段と、
前記宛先の特定処理装置へ前記特定処理用データを中継することができない場合に、前記記憶手段に記憶されている、当該宛先の特定処理装置の前記解除方法に基づいて、当該宛先の特定処理装置の省電力モードを解除するための解除処理を実行する、解除処理手段と、
を有することを特徴とする中継装置。
【請求項6】
前記複数の特定処理装置のそれぞれの特性を示す特性データを取得する取得手段と、
前記特性データに基づいて前記複数の特定処理装置のそれぞれの前記解除方法を決定する決定手段と、
を有し、
前記記憶手段は、前記決定手段によって決定された前記解除方法を記憶する、
請求項5に記載の中継装置。
【請求項7】
前記複数の特定処理装置は、
前記省電力モードを解除することにより、前記特定処理用データを受信し前記特定の処理を実行することが可能になる、
請求項5または請求項6に記載の中継装置。
【請求項8】
前記複数の特定処理装置は、
前記特定の処理として、用紙にトナー画像を定着させる定着手段を備えたプリント部によって用紙に画像形成を行うプリント処理を実行し、
前記省電力モードを解除することにより、前記特定処理用データとして前記プリント処理のためのデータを受信し前記プリント処理を実行することが可能になる、
請求項7に記載の中継装置。
【請求項9】
前記複数の特定処理装置のうちの1台の前記特性データとして、WOL(Wake On LAN)に当該1台の特定処理装置が対応している旨を示すデータが前記取得手段によって取得された場合は、前記決定手段は、当該1台の特定処理装置の前記解除方法を、マジックパケットを当該1台の特定処理装置へ送信することであると、決定する、
請求項6ないし請求項8のいずれかに記載の中継装置。
【請求項10】
前記複数の特定処理装置のうちの1台の前記特性データとして、前記特定処理用データをやり取りする通信網とは異なる第二の通信網によって近距離無線通信を行いかつ省電力モードにおいても稼働する近距離無線通信手段を備える旨を示すデータが前記取得手段によって取得された場合は、前記決定手段は、当該1台の特定処理装置の前記解除方法を、当該1台の特定処理装置へ当該第二の通信網によって省電力モードの解除の信号を送信することであると、決定する、
請求項6ないし請求項8のいずれかに記載の中継装置。
【請求項11】
前記複数の特定処理装置のうちの1台の前記特性データとして、インテリジェント電源タップを介して電力が当該1台の特定処理装置へ供給される旨を示すデータが前記取得手段によって取得された場合は、前記決定手段は、当該1台の特定処理装置の前記解除方法を、電力の供給を開始するように当該インテリジェント電源タップへ指令することであると、決定する、
請求項6ないし請求項8のいずれかに記載の中継装置。
【請求項12】
前記特定処理用データを前記宛先の特定処理装置に中継することができない場合に、前記解除処理手段によって前記解除処理が実行された後、一定の時間が経過した後、当該特定処理用データを当該宛先の特定処理装置へ再送信する、送信手段、を有する、
請求項5ないし請求項11のいずれかに記載の中継装置。
【請求項13】
特定の処理を行う複数の特定処理装置のそれぞれの、省電力モードを解除する解除方法を記憶手段に記憶させておき、
前記特定の処理を行うための特定処理用データが前記複数の特定処理装置のうちの当該特定処理用データの宛先の特定処理装置に届かないことを検知すると、前記記憶手段に記憶されている、当該宛先の特定処理装置の前記解除方法に基づいて、当該宛先の特定処理装置の省電力モードを解除するための解除処理を実行する、
ことを特徴とする省電力モード解除方法。
【請求項14】
特定の処理を行う複数の特定処理装置のそれぞれの省電力モードを解除する解除方法を記憶する記憶手段にアクセス可能なコンピューターに用いられるコンピュータープログラムであって、
前記特定の処理を行うための特定処理用データが前記複数の特定処理装置のうちの当該特定処理用データの宛先の特定処理装置に届かないことを検知する処理を前記コンピューターに実行させ、
前記特定処理用データが前記宛先の特定処理装置に届かないことを検知した場合に、前記記憶手段に記憶されている、当該宛先の特定処理装置の前記解除方法に基づいて、当該宛先の特定処理装置の省電力モードを解除するための解除処理を前記コンピューターに実行させる、
ことを特徴とするコンピュータープログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−55488(P2013−55488A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191936(P2011−191936)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】