説明

看護用マット

【課題】看護等を行う際の体型を保持するための看護用マットを提供する。
【解決手段】この看護用マット10は、主マット12および補助マット14からなる。主マット12は、メインマット部16、および、互いに平行に距離を隔てて配置される一対のサイドマット部18,18を含み、コの字状の平面形状で、且つ全面均一な厚みを持って形成される。メインマット部16および一対のサイドマット部18、18により囲まれた領域には、保持空間部20が形成されている。そして、主マット12に形成された保持空間部20の周縁部における主マット12の上面には、身体上部支持面22が形成されている。また、保持空間部20において、メインマット部16が位置する方向の反対側には、開口部24が形成されている。保持空間部20は、保持空間部20と身体上部支持面22との協働作用により、身体の胸部近傍の胴部が自重により沈むことができる程度に保持できる大きさを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、看護等に使用可能な用具に関し、特にたとえば、体型を保持するための看護用マットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、身体の体型を保持するための用具として、ウレタンや綿等により形成された体型保持用クッションやマット等が知られている。
【0003】
たとえば、身体の頭部および頚部を安定させるように構成された体型を保持するための用具として、肩背部および両肩から上腕部を支えるくの字状のマクラと頭部を支えるマクラの上に、頚部を支える半円状のマクラが紐等で構成された体型を保持するための用具がある。この体型を保持するための用具を用いることにより、身体の頭部および頚部が、常にマクラに安定した態勢に収まり、肩関節と上腕部がくの字状のマクラによって内側に支えられる為、神経の出口である神経孔が開き、神経が弛んだ状態となって頚椎症やムチ打ち症等による神経症状を緩和することができる。(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3022839号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような体型を保持するための用具は、肩背部および両肩から上腕部を支えるくの字状のマクラおよび頭部を支えるマクラの上に取り付けられた頚部を支える半円状のマクラによって、身体の頚部より上の部分を保持することを主とした機能としているため、身体の胴部に対する保持はされていないことから、たとえば、看護等において病人等に対して処置をする際に、身体の体型を保持する用具として使用するのには不十分であるという問題がある。
【0006】
それゆえに、この発明の主たる目的は、身体の体型を保持するための看護用マットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明にかかる看護用マットは、弾性を有する主マットおよび補助マットからなる看護用マットであって、主マットは、メインマット部、および、互いに略平行に距離を隔てて配置される一対のサイドマット部を含み、メインマット部および一対のサイドマット部により全体がコの字状の平面形状で、且つ全面均一な厚みを持って形成され、メインマット部および一対のサイドマット部により囲まれた領域には、保持空間部が形成され、一対のサイドマット部は、少なくとも身体の肩から肘の部分が載せられる長さを有し、保持空間部の周縁部における主マットの上面には、身体上部支持面が形成され、保持空間部は、保持空間部と身体上部支持面との協働作用により身体の胸部近傍における胴部が自重により沈むことができる程度に保持できる大きさを備え、補助マットは、略直方体で主マットと略同じ高さ(厚さ)に形成され、且つ少なくとも身体の頭部の幅よりも広く背肩幅よりも狭い大きさを有することを特徴とする、看護用マットである。
また、この発明にかかる看護用マットは、主マットは、保持空間部が、身体の胸部近傍における胴部(脇より下の部分)が自重により沈むことができる程度の大きさを備え、且つメインマット部が、上半身の上部(頭部を除く)が自重により沈むことなくメインマット部の上面で支えられる大きさを備え、補助マットは、身体の後頭部または前頭部を支持する機能を有することを特徴とする看護用マットである。
更に、この発明にかかる看護用マットは、主マットは、保持空間部が、身体の胸部近傍における胴部(頚部より下の部分)が自重により沈むことができる程度の大きさを備え、且つメインマット部が、身体の頭部が自重により沈むことなくメインマット部の上面で支えられる大きさを備え、補助マットは、主マットの一対のサイドマット部の一方の他端部の前面と連接するように形成されることを特徴とする看護用マットである。
この発明にかかる看護用マットでは、メインマット部の幅の長さは、55cm以上で、治療用ベッドの幅の長さ以下の長さであることが好ましい。
また、この発明にかかる看護用マットでは、主マットおよび補助マットは、低発泡ウレタンフォームで作製されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
この発明にかかる看護用マットは、主マットと補助マットからなる。主マットは、メインマット部、および、互いに平行に距離を隔てて配置される一対のサイドマット部とを含み、メインマット部と一対のサイドマット部により全体がコの字状の平面形状で、且つ全面均一な厚みを持って形成される。そして、メインマット部および一対のサイドマット部により囲まれた領域には、保持空間部が形成される。また、保持空間部の周縁部における主マットの上面には、身体上部支持面が形成されている。そして、保持空間部において、身体の胸部近傍の胴部が、保持空間部と身体上部支持面との協働作用により保持されることとなる。また、身体の両腕部は、一対のサイドマット部の上面において支持される。よって、この発明によれば、両腕部を含めた身体の体型を安定して保持する看護用マットを得ることができる。また、この発明にかかる看護用マットを用いると、たとえば、看護を行う場合、身体の体型が安定して保持されるので、リハビリや点滴等の看護処置を容易に行うことができる。
この発明にかかる看護用マットにおいて、補助マットが身体の後頭部を支持し、主マットの保持空間部が、身体の胸部付近における胴部、特に脇より下の部分を自重により沈むことができるような大きさを備え、且つ主マットのメインマット部が、身体の上半身の上部(頭部を除く)を自重により沈むことなくメインマット部の上面で支えることにより、身体の胴部、特に脇より下の部分を安定して保持することができる。つまり、主マットの保持空間部が、身体の胴部、特に脇の下の部分を自重により沈むことができる程度に保持し、メインマット部が、身体の上半身の上部(頭部を除く)を支持することにより、身体の胴部、特に脇の下の部分が沈むと同時に、身体の肩部が相対的に上方へ押し上げられることで、たとえば、胸郭出口症候群の原因である腕神経叢やその周囲の血管の圧迫や牽引をやわらげることから、胸郭出口症候群の諸症状、たとえば、肩こりや腕のしびれ等が改善できるという効果がある。
また、この発明にかかる看護用マットにおいて、主マットの保持空間部が、身体の胸部付近における胴部、特に頚部より下の部分を自重により沈むことができるような大きさを備え、且つ主マットのメインマット部が、身体の頭部を自重により沈むことなくメインマット部の上面で支えられる大きさを備えることで、より身体の体型が安定して保持される。そして、たとえば、点滴等の処置をする際には、略同じ高さの補助マットが、点滴の処置をする側のサイドマット部に連接するように設置されることで、点滴される腕を安定して支持することができ、結果、所定の処置を容易に行うことができる。
更に、この発明にかかる看護用マットにおいて、補助マットが身体の前頭部を支持し、主マットの保持空間部が、身体の胸部前面を保持することで、うつ伏せの状態でも使用することができる。よって、たとえば、身体の背部等における怪我等の処置も、うつ伏せの状態で身体の体型を安定して保持できるので、所定の処置を容易に行うことができる。
また、この発明にかかる看護用マットは、主マットのメインマット部の幅の広さが、55cm以上で、且つ治療用ベッドの幅の広さ以下で作製されることで、治療用ベッドに安定して設置することができる。
更に、この発明にかかる看護用マットは、主マットおよび補助マットともに、低発泡ウレタンフォームで作製されることで、ウレタンフォームにおける、軽量で、クッション性、耐久性に優れ、衝撃吸収性が良いという特徴から、治療用ベッドの上における長時間にわたる看護処置では、身体に対して大きな負担をかけることなく処置を続けることができる。
【0009】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の発明を実施するための最良の形態の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、この発明にかかる看護用マットの一例を示す平面図であり、図2および図3は、図1に示された看護用マットにおける断面図を示している。また、図4は、この発明にかかる看護用マットの一例を示す斜視図である。この看護用マット10は、主マット12および補助マット14を有している。主マット12および補助マット14は、略同じ高さ(厚さ)で形成され、たとえば、高さ(厚さ)は、8cmで形成される。
【0011】
主マット12は、主マット本体12aと主マット本体12aを覆うように形成された主マットカバー12bで構成されている。主マット本体12aは、たとえば、発泡ウレタンフォームにより、55cm角で形成され、高さ(厚さ)は、8cmで形成される。また、主マットカバー12bは、主マット本体12aに対して取り外し可能な状態で取り付けられる。そして、主マットカバー12bは、たとえば、ポリエステルニットにより作製される。
主マット12は、メインマット部16、および、互いに略平行に距離を隔てて配置される一対のサイドマット部18、18を含み、メインマット部16と一対のサイドマット部18、18により、全体がコの字状の平面形状で、且つ全体が全面均一な厚みを持って形成される。そして、メインマット部16および一対のサイドマット部18、18により囲まれた領域には、身体の胸部近傍を保持するための保持空間部20が形成されている。そして、主マット12に形成された保持空間部20の周縁部における主マット12の上面には、身体上部支持面22が形成されている。また、保持空間部20において、メインマット部16が位置する方向の反対側には、身体の腰部を挟むように保持するための開口部24が形成されている。
メインマット部16は、身体の頭部または上半身の上部(頭部を除く)を支持する機能を有するものである。メインマット部16において、メインマット部16の上面における身体上部支持面22に隣接する面には、身体支持面16aが形成されている。また、メインマット部16の横の長さは、看護マット10が治療用ベッドからはみ出ることなく載せられるように、たとえば、55cmで形成される。
一対のサイドマット部18、18は、主に身体の腕部を支持する機能を有するものである。一対のサイドマット部18、18において、一対のサイドマット部18、18の上面における身体上部支持面22に隣接する面には、上腕支持面18a、18aが形成されている。そして、一対のサイドマット部18、18の他端部の前面には、前面18b、18bが形成されている。また、一対のサイドマット部18、18は、上腕支持面18a、18aにおいて、少なくとも身体の肩から肘の部分が乗せられる長さを有しており、その長さは、たとえば、35cmで形成される。
保持空間部20は、保持空間部20と身体上部支持面22との協働作用により、たとえば、身体の胸部近傍の胴部が自重により沈むことができる程度に保持できる大きさを有している。本発明にかかる看護用マット10の主マット12における保持空間部20は、たとえば、縦35cm、横幅23cm、高さ8cmの大きさで形成される。
【0012】
補助マット14は、補助マット本体14aと補助マット本体14aを覆うように形成された補助マットカバー14bで構成されている。補助マット本体14aは、たとえば、発泡ウレタンフォームにより、縦16cm、横34cm、高さ8cmで形成される。また、補助マットカバー14bは、補助マット本体14aに対して取り外し可能な状態で取り付けられ、たとえば、ポリエステルニットにより作製される。
補助マット14は、身体の頭部や腕部を支持する機能を有するものである。補助マット14は、略直方体で形成され、且つ少なくとも身体の頭部の幅よりも広く背肩幅よりも狭い長さを有している。そして、補助マット14には、補助支持面14cおよび側面14dを有しており、主マット12と略同じ高さ(厚さ)で形成される。
【0013】
図5は、この発明にかかる看護用マットの使用例を示し、図6は、図5における断面図を示している。図中の斜線部は、身体が看護用マット10に対して接する部分を示している。図5もしくは図6のように、たとえば、看護用マット10に身体の胸部近傍の胴部が仰向けの状態で載せられる場合、主マット12の保持空間部20は、保持空間部20と身体上部支持面22との協働作用により、身体の胸部付近の胴部を自重により沈むことができる程度に保持できる大きさを備えており、且つ主マット12の開口部24において、一対のサイドマット部18、18により身体の腰部を挟むように保持することで、身体を安定して保持することができる。
この保持空間部20において、保持空間部20の横幅が狭すぎると、身体の胸部近傍の胴部が自重により保持空間部20に沈めることができなくなり、開口部24において、一対のサイドマット部18、18により身体の腰部を挟むことができなくなるので、結果、身体を保持することができなくなる。つまり、保持空間部20の横幅が狭すぎると、平坦なマットに身体の胸部近傍を載せている場合と同様な状態となり、身体の胴部を保持することができなくなる。反対に、この保持空間部20の横幅が広すぎると、身体の胸部近傍の胴部が保持空間部20に完全に収まってしまうことから、身体の胴部を保持することができなくなり、且つ開口部24においても、サイドマット部18、18により身体の腰部を挟むように保持できなくなるので、結果、身体を保持することができなくなる。よって、保持空間部20は、自重により身体の胴部が沈む程度に保持できる大きさを有していなければならない。
また、身体の両腕部は、一対のサイドマット部18、18の上腕支持面18a、18a上に支持される。
よって、たとえば、病人や怪我人等の身体を保持しながらリハビリや点滴などの看護の処置をしなければならない場合に、両腕部を含めた身体を安定して保持することで、所定の処置を容易に行うことができる。このとき、補助マット14は、たとえば、身体の後頭部を支持するのに用いられる。
【0014】
また、図5に示すように、この看護用マット10では、補助マット14の補助支持面14aで後頭部を支持し、主マット12の保持空間部20が、保持空間部20と身体上部支持面22との協働作用により、身体の胸部付近における胴部、特に脇より下の部分を自重により沈むことができる程度に保持し、且つ主マット12のメインマット部16の身体支持面16aが、身体の上半身の上部(頭部を除く)を自重により沈むことなく支持するので、身体の胴部、特に脇より下の部分を安定して保持することができる。また、身体の両腕部の肩から肘の部分は、一対のサイドマット部18、18の上腕支持面18a、18a上に支持される。よって、たとえば、肩こりや腕のしびれの原因といわれている胸郭出口症候群の改善に効果がある。
胸郭出口症候群とは、頚髄から枝分かれした一部の頚神経が一塊となって形成された腕神経叢とその周囲の血管が、身体の胸郭出口部で骨(頚肋、鎖骨および第一肋骨)や筋肉(前斜角筋や中斜角筋など)によって、圧迫および牽引されて起こる症状をいう。つまり、上述したように、この発明にかかる看護用マット10を用いることで、主マット12の保持空間部20において、身体の胴部、特に脇より下の部分が自重により沈むと同時に、主マット12のメインマット部16の身体支持面16aにおいて、身体の肩部が相対的に上方へ押し上げられることから、身体の胸郭出口部における腕神経叢やその周囲の血管の圧迫や牽引をやわらげることでき、結果、胸郭出口症候群の諸症状を改善することができる。ここで、胸郭出口部とは、鎖骨・第1肋骨と周辺の筋群(小胸筋・前斜角筋・中斜角筋)で形成される部分のことをいう。
【0015】
また、図7は、この発明にかかる看護用マットの他の使用例を示している。図中の斜線部は、身体が看護用マット10に対して接する部分を示している。図のように、この看護用マット10を点滴の処置に使用する場合には、主マット12の保持空間部20が、保持空間部20と身体上部支持面22との協働作用により、身体の胸部付近における胴部(頚部より下の部分)を自重により沈むことができる程度に保持し、且つ主マット12のメインマット部16の身体支持面16aが、身体の頭部を自重により沈むことなく支持する。更に、主マット12の開口部24において、一対のサイドマット部18、18により身体の腰部を挟むように保持することで、身体の上半身を安定して保持することができる。また、身体の両腕部の肩から肘の部分は、一対のサイドマット部18、18の上腕支持面18a、18a上に支持される。
加えて、主マット12と略同じ高さの補助マット14の側面14bを、点滴の処置をする腕部に相当する側のサイドマット部18の前面18bに連接するように設置させることで、補助マット14の補助支持面14a上に身体の腕部、特に肘より先の部分をより安定した状態で支持することができるので、所定の処置を容易に行うことができる。
【0016】
図8は、この発明にかかる看護用マットの他の使用例を示している。図中の斜線部は、身体が看護用マット10に対して接する部分を示している。図のように、この看護用マット10において、身体の胸部近傍の胴部がうつ伏せの状態で載せられる場合、補助マット14の補助支持面14aが前頭部を支持し、主マット12の保持空間部20が、保持空間部20と身体上部支持面22との協働作用により、身体の胴部、特に脇より下の胴部を自重により沈むことができる程度に保持し、且つ主マット12のメインマット部16の身体支持面16aが、身体の上半身の上部(頭部を除く)を自重により沈むことなく支持する。更に、主マット12の開口部24において、一対のサイドマット部18、18により身体の腰部を挟むように保持することで、身体の胴部を安定して保持することができる。
よって、たとえば、身体の背部における処置等、うつ伏せの状態で処置をしなければならない状況の場合には、うつ伏せの状態で身体の胴部を安定して保持することができることから、所定の処置を容易に行うことができる。
【0017】
更に、図9は、この発明にかかる看護用マットの他の使用例を示している。図中の斜線部は、身体が看護用マット10に対して接する部分を示している。図のように、この看護用マット10では、主マット12の保持空間部20が、保持空間部20と身体上部支持面22との協働作用により、身体の胸部付近における胴部、特に脇より下の部分を自重により沈むことができる程度に保持し、且つ主マット12のメインマット部16の身体支持面16aが、身体の上半身の上部(頭部を除く)を自重により沈むことなく支持する。更に、主マット12の開口部24において、一対のサイドマット部18、18により身体の腰部を挟むように保持する。そして、身体の頭部をメインマット部16の外周縁より外側へ突出させることで、身体の後頭部がメインマット部16の身体支持面16aから下方に下がることにより、たとえば、応急処置における気道確保のための下顎を上に向けるといった体勢を容易に行うことができ、且つ身体の体型を安定して保持することができる。また、このとき身体の両腕部は、一対のサイドマット部18、18の上腕支持面18a、18a上に支持される。
【0018】
また、図10は、この発明にかかる看護用マットの他の使用例を示している。図中の斜線部は、身体が看護用マット10に対して接する部分を示している。図のように、この看護用マット10では、主マット12のメインマット部16の身体支持面16aが、脚部の膝窩部を支持し、更に、保持空間部20に脚部の腓腹部以下の部分を、一対のサイドマット部18、18で挟むように配置させることで、身体の脚部を安定して保持することができる。
よって、たとえば、脚部に点滴をするといった、身体の脚部を保持して看護をしなければならない場合等に適用することができる。この場合、補助マット14は、身体の後頭部を保持するのに使用される。
【0019】
図11は、この発明にかかる看護用マットの主マットにおける他の例を示した下からの斜視図である。図11に示す主マット112は、図4に示す主マット12と比べて、保持空間部20において、保持空間部20の底部をふさぐように形成された主マットカバー112bを、主マット本体12aの略正方形の底面26の全体を含めて取り付けることで形成されたものである。主マットカバー112bは、保持空間部20の幅方向の長さが不用意に変わらないように、保持空間部20の幅方向の間隔を略一定に保たせる機能を有するものである。
すなわち、上述の主マット112では、サイドマット部18、18が主マットカバー112bで固定されているので、開口部24の幅が広がり難くなる。したがって、主マット112の保持空間部20において身体の胴部を保持し、また、開口部24において身体の腰部を保持する際に、サイドマット部18、18が外側に広がることで身体の胴部および腰部を保持する効果の低下を防ぐことができる。
また、主マット112は、主マット本体12aに対して、あらかじめ、主マット本体12aの略正方形の底面26の大きさに相当する樹脂板等を、たとえば、接着剤等で直接取り付けておいてから、主マットカバー112bを取り付けるように形成されてもよい。
【0020】
図12は、この発明にかかる看護用マットの他の例を示す斜視図である。この看護用マット210は、主マット212および補助マット214を有している。
主マット212は、メインマット部216および互いに略平行に距離を隔てて配置される一対のサイドマット部218、218を含み、メインマット部216と一対のサイドマット部218、218により全体がコの字状に形成される。そして、メインマット部216および一対のサイドマット部218、218により囲まれた領域には、身体の胸部近傍を保持するための保持空間部220が形成されている。そして、主マット212に形成された保持空間部220の周縁部における主マット212の上面には、身体上面支持面222が形成されている。また、保持空間部220において、メインマット部216が位置する方向の反対側には、身体の腰部を挟むように保持するための開口部224が形成されている。
メインマット部216は、身体の頭部を支持する機能を有するものである。メインマット部216において、メインマット部216の上面における身体上部支持面222に隣接する面には、身体支持面216aが形成されている。
一対のサイドマット部218、218は、主に身体の腕部を支持する機能を有するものであり、開口部224の方向に向かうに従って、低くなるように傾斜されて形成されている。傾斜された一対のサイドマット部218、218の上面における身体上部支持面222に隣接する面には、上腕支持面218a、218aが形成されている。そして、傾斜された一対のサイドマット部218、218の他端部の前面には、前面218b、218bが形成されている。また、傾斜された一対のサイドマット部218、218は、上腕支持面218a、218aにおいて、少なくとも身体の肩から肘の部分が乗せられる長さを有している。傾斜角の大きさは、たとえば、5°〜10°が好ましいが、より好ましいのは、8°前後である。
【0021】
補助マット214は、主に、腕部を支持する機能を有するものである。補助マット214は、補助支持面214cおよび側面214d、214eを有している。
補助支持面214cは、側面214e側に、ある一定の平面部を有し、さらに、側面214eから側面214dに向かうに従って、低くなるように傾斜されて形成されている。傾斜角の大きさは、たとえば、5°〜10°が好ましいが、より好ましいのは、8°前後である。
【0022】
図13は、この発明にかかる看護用マットの使用例を示している。この看護用マット210を点滴の処置に使用する場合には、主マット212の保持空間部220が、保持空間部220と身体上部支持面222との協働作用により、身体の胸部付近における胴部(頚部より下の部分)を自重により沈むことができる程度に保持し、且つ主マット212のメインマット部216の身体支持面216aが、身体の頭部を自重により沈むことなく支持する。更に、主マット212の開口部224において、傾斜された一対のサイドマット部218、218により身体の腰部を挟むように保持することで、身体の上半身を安定して保持することができる。また、このように一対のサイドマット部218、218に傾斜をつけることで、長時間の点滴による治療に対しても、身体に負担がかからない。また、身体の両腕部の肩から肘の部分は、傾斜された一対のサイドマット部218、218の上腕支持面218a、218a上に支持されている。
加えて、主マット212と補助マット214の側面214dとを、点滴の処置をする腕部に相当する側のサイドマット部218の前面218bに連接するように設置させることで、補助マット214における傾斜された補助支持面214c上に身体の腕部、特に肘より先の部分をより安定した状態で支持することができるので、所定の処置を容易に行うことができる。
結果、傾斜された一対のサイドマット部218、218の上腕支持面218a、218aや補助マット214の補助支持面214cにおける傾斜に腕を支持させることで、自然な体勢を保持することが可能となり、身体に対して、リラックス効果を高めることができる。
【0023】
看護用マット10における主マット12、112および補助マット14は、主マットカバー12bおよび補助マットカバー14bが取り付けられることで、看護用マット10の材料である発泡ウレタンフォームが直接身体に触れることなく、身体の体型が保持される。また、主マットカバー12b、112bにおいて、主マット12、112の底面にあたる部分は、たとえば、治療用ベッドの載置面に対して滑り難くなるような材料を用いることで、この看護用マット10は、身体の体型を安定して保持することができる。
また、本発明にかかる看護用マット10における主マット12、112および補助マットカバー14bは、ポリエステルニットにより作製したが、ビニールレザーにより作製されてもかまわない。ポリエステルニットは、通気性に優れていることから一般用として用いることができ、ビニールレザーは、耐久性に優れていることから業務用として用いることができる。そして、ビニールレザーおよびポリエステルニット、両素材ともに、必要に応じて撥水、抗菌防臭および滑り止め加工が適宜施されてもよい。
更に、これらカバーは、袋状に形成されることにより取り外し可能な状態で取り付けられるため、看護を行ったときにカバーが汚れた際に、そのカバーを取り外して洗濯したり、またはきれいなものと交換したりすることができるので、この看護用マット10は、清潔な状態で使用することができる。
【0024】
また、この看護用マット10、210を収納する際に、補助マット14、214を主マット12、112、212の保持空間部20、220に位置させることで、全体をコンパクトに収納することができる。
【0025】
なお、上述の主マット12、112、212の保持空間部20、220の幅は可変とし、あらかじめいくつかの幅のパターンの看護用マット10、210を作製しておいてもよい。また、保持空間部20、220の幅の広さが、手動で調節できるように作製されていてもよい。更に、たとえば、大人用、子供用と大きさの異なる看護用マットをあらかじめ作製しておいてもよく、大人用でも、男性用、女性用と異なる大きさの看護用マットをあらかじめ作製しておいてもよい。
【0026】
また、上述の看護用マット10、210は、発泡ウレタンフォームにより作製したが、弾性を有するものであれば、たとえば、空気式クッションで作製されてもよい。
【0027】
更に、上述の看護用マット10、210は、治療ベッド上に置かれることを前提として作製されているが、それに限定されるものではなく、身体の体型を保持することにより看護をする際に、この看護用マット10、210は、どこで使用されてもかまわない。
【産業上の利用可能性】
【0028】
この発明にかかる看護用マットは、たとえば、病人等を看護する際に、身体の体型を保持するための用具として使用される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明にかかる看護用マットを示す平面図である。
【図2】図1に示す看護用マットの平面図のX−X断面図である。
【図3】図1に示す看護用マットの平面図のY−Y断面図である。
【図4】図1に示す看護用マットを示す斜視図である。
【図5】図4に示す看護用マットの使用例を示した図解図である。
【図6】図5に示す看護用マットの使用例における断面図である。
【図7】図4に示す看護用マットの他の使用例を示した図解図である。
【図8】図4に示す看護用マットの更に他の使用例を示した図解図である。
【図9】図4に示す看護用マットの他の使用例を示した図解図である。
【図10】図4に示す看護用マットの更に他の使用例を示した図解図である。
【図11】この発明にかかる看護用マットにおける主マットの他の例を示す斜視図である。
【図12】この発明にかかる看護用マットのさらに他の例を示す斜視図である。
【図13】図12に示す看護用マットの使用例を示した図解図である。
【符号の説明】
【0030】
10、210 看護用マット
12、112、212 主マット
14、214 補助マット
16、216 メインマット部
18、218 サイドマット部
20、220 保持空間部
22、222 身体上部支持面
24、224 開口部
26 底面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性を有する主マットおよび補助マットからなる看護用マットであって、
前記主マットは、
メインマット部、および、互いに略平行に距離を隔てて配置される一対のサイドマット部を含み、
前記メインマット部および前記一対のサイドマット部により全体がコの字状の平面形状で、且つ全面均一な厚みを持って形成され、
前記メインマット部および前記一対のサイドマット部により囲まれた領域には、保持空間部が形成され、
前記一対のサイドマット部は、少なくとも身体の肩から肘の部分が載せられる長さを有し、
前記保持空間部の周縁部における前記主マットの上面には、身体上部支持面が形成され、
前記保持空間部は、前記保持空間部と前記身体上部支持面との協働作用により身体の胸部近傍における胴部が自重により沈むことができる程度に保持できる大きさを備え、
前記補助マットは、
略直方体で前記主マットと略同じ高さ(厚さ)に形成され、且つ少なくとも身体の頭部の幅よりも広く背肩幅よりも狭い大きさを有することを特徴とする、看護用マット。
【請求項2】
前記主マットは、
前記保持空間部が、身体の胸部近傍における胴部が自重により沈むことができる程度の大きさを備え、且つ前記メインマット部が、上半身の上部(頭部を除く)が自重により沈むことなく前記メインマット部の上面で支えられる大きさを備え、
前記補助マットは、
身体の後頭部または前頭部を支持する機能を有することを特徴とする、請求項1に記載の看護用マット。
【請求項3】
前記主マットは、
前記保持空間部が、身体の胸部近傍における胴部が自重により沈むことができる程度の大きさを備え、且つ前記メインマット部が、身体の頭部が自重により沈むことなく前記メインマット部の上面で支えられる大きさを備え、
前記補助マットは、
前記主マットの前記一対のサイドマット部の一方の他端部の前面と連接するように形成されることを特徴とする、請求項1に記載の看護用マット。
【請求項4】
前記メインマット部の幅の長さは、55cm以上で、治療用ベッドの幅の長さ以下の長さであることを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の看護用マット。
【請求項5】
前記主マットおよび前記補助マットは、低発泡ウレタンフォームで作製されていることを特徴とする、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の看護用マット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−15129(P2006−15129A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−160060(P2005−160060)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(304018808)有限会社リバティ (1)
【Fターム(参考)】