説明

真偽判別印刷物及びその作製方法

【課題】画線の導電性の有無により真偽判別を行うことができる真偽判別媒体を提供する。
【解決手段】基材上に金属コロイド粒子を含有する導電性インキにより形成された第1の印刷領域3と、導電性インキと等色の導電性を有さないインキにより形成された第2の印刷領域2から成る真偽判別印刷物において、第1の印刷領域は3、少なくとも1つの導電性領域3bと、導電性領域3bを挟んで隣接された第1の非導電性領域3a及び第2の非導電性領域3cから成り、第2の印刷領域2は、第1の印刷領域3に隣接又は重なり、真偽判別印刷物にマイクロ波を照射した場合には、導電性領域に出力電圧が生じる真偽判別印刷物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の導電性領域と非導電性領域を基材上に形成し、導電性の有無により真偽判別を行うことができることを特徴とする真偽判別印刷物を提供することを目的とする。
【背景技術】
【0002】
近年のスキャナ、プリンタ、カラーコピー等のディジタル機器の発展により、貴重印刷物の精巧な複製物を容易に作製することが可能となっている。その対策の一つとして、従来からホログラムや磁気記録媒体又は導電性インキにより情報を付与した真偽判別印刷物とその製造方法がある。
【0003】
導電性インキを使用した真偽判別印刷物としては、例えば、基材に印刷された数字や文字等の絵柄の上に、金属粉末やカーボン等を加えたインキを使用して、不連続点のない線分又は有限湾曲線により導電パターンを形成し、導電パターンの有無により真偽判別を行うことを特徴とする抽選券がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、用紙等の基材上に導電性インキにより真贋判定部を形成し、この真贋判定部に電源と導通表示手段とが接続された電気回路と、当該電気回路の両端に判定器を接続させて導通表示部の表示により真偽判別を行うことができることを特徴とする真贋判定可能な印刷物がある(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、基材上に金属コロイド粒子を含有する複数の導電性領域が形成された真偽判別印刷物であって、複数の導電性領域のうち、少なくとも二つの導電性領域は異なる電気抵抗値を有し、異なる電気抵抗値を有する二つの導電性領域が所定の範囲内に並列して配置され、かつ、等色であることを特徴とする導電性情報を有する真偽判別印刷物がある(例えば、特許文献3参照)
【0006】
【特許文献1】実開平05−074876号公報
【特許文献2】特開平07−237380号公報
【特許文献3】特開2008−126475号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、実開平05−074876号公報は、金属粉末やカーボン等を加えたインキにより線分又は有限湾曲線により導電パターンを形成しているため、導電パターンを容易に視認されるおそれがある。
【0008】
また、特開平07−237380号公報は、判別にランプ等を使用するため印刷物に対する真贋判定部の占める領域を大きくする必要があり、導電性インキにより容易に真贋判定部を偽造されるおそれがある。
【0009】
また、特開2008−126475号公報は、インキ皮膜に有する少なくとも二以上の導電性領域をテスター等により検出できる大きさであるため、導電性領域の存在を検出されるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、基材上に金属コロイド粒子を含有する導電性インキにより形成された第1の印刷領域と、導電性インキと等色の導電性を有さないインキにより形成された第2の印刷領域から成る真偽判別印刷物において、第1の印刷領域は、少なくとも1つの導電性領域と、導電性領域を挟んで隣接された第1の非導電性領域及び第2の非導電性領域から成り、第2の印刷領域は、第1の印刷領域に隣接又は重なり、真偽判別印刷物にマイクロ波を照射した場合には、導電性領域に出力電圧が生じることを特徴とする真偽判別印刷物である。
【0011】
本発明は、導電性領域の幅が、0.3μm以上10μm以下であることを特徴とする真偽判別印刷物である。
【0012】
本発明は、第2の非導電性領域が、第1の印刷領域の導電性インキをレーザにより除去し、露出した基材であることを特徴とする真偽判別印刷物である。
【0013】
本発明は、第1の印刷領域及び/又は第2の印刷領域は、画線及び/又はベタ刷りで印刷されたことを特徴とする真偽判別印刷物である。
【0014】
本発明は、基材上に金属コロイド粒子を含有する導電性インキにより第1の印刷領域を形成し、導電性インキと等色の導電性を有さないインキにより第2の印刷領域を第1の印刷領域に隣接又は重畳して形成する印刷領域形成工程と、第1の印刷領域の導電性インキと、第2の印刷領域の導電性を有さないインキを乾燥させる印刷領域乾燥工程と、第1の印刷領域の一部にレーザ光を照射し、導電性インキを除去して基材を露出させることにより第2の非導電性領域を形成し、第2の非導電性領域に隣接する部分にレーザ光のエネルギを伝導させることで第1の印刷領域の部分に導電性領域を形成する導電性領域形成工程から成ることを特徴とする真偽判別印刷物の作製方法である。
【0015】
本発明は、第1の印刷領域を画線及び/又はベタ刷りにより形成することを特徴とする真偽判別印刷物の作製方法である。
【0016】
本発明は、導電性領域形成工程が、第1の印刷領域の一部に1J/cmのレーザ光を照射し、導電性領域の幅を0.3μm以上10μm以下に形成することを特徴とする真偽判別印刷物の作製方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の真偽判別印刷物は、導電性領域が微小であることから偽造が困難であり、かつ、金属コロイド粒子を含有するインキにより印刷されているため、複写を防止することができる。
【0018】
また、本発明の真偽判別印刷物は、導電性領域が微小であるため視認による判別は不可能であり、テスターによる測定も不可能である。
【0019】
また、本発明の真偽判別印刷物は、レーザにより微小な導電性領域を複数形成することができるため、微細な印刷領域(画線等)に多くの情報量を付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態による真偽判別印刷物について説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための最良の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載における技術的思想の範囲内であれば、その他の色々な実施の形態が含まれる。
【0021】
図1は、一例として、金属コロイド粒子を含有する導電性インキにより第1の印刷領域3をベタ刷りで印刷し、導電性インキと等色の導電性を有さないインキにより第2の印刷領域2をベタ刷りで印刷した本発明の真偽判別印刷物A1である。図1(a)に示すように、真偽判別印刷物A1は、基材1上に第2の印刷領域2と「1」の文字から成る第1の印刷領域3を有し、第1の印刷領域3と第2の印刷領域2は、隣接している。また、拡大図に示すように、第1の印刷領域3は、第1の非導電性領域3aと導電性領域3b、第2の非導電性領域3cを有している。なお、図1において、第1の印刷領域3と第2の印刷領域2は隣接しているが、第1の印刷領域3と第2の印刷領域2は重なっていても良い。
【0022】
また、図1(b)の真偽判別印刷物A1のY―Y’における断面図に示すように、導電性領域3bは、第1の非導電性領域3aと隣接している。また、導電性領域3bは、レーザにより導電性インキを除去されて、露出した基材から成る第2の非導電性領域3cに隣接している。
【0023】
第1の印刷領域3の導電性領域3bは、第1の非導電性領域3aと隣接し、かつ、等色である。等色にすることによって、導電性領域3bを識別されることを防止するためである。導電性領域3bは、マイクロ波等の電磁波を照射した場合に出力電圧が生じることが求められるため、電気抵抗は、少なくとも1kΩ以下である。電気抵抗が1kΩ以上の場合は、マイクロ波等の電磁波を照射した場合における出力電圧が微小となり、検出が困難となるからである。なお、導電性領域3bの幅は、0.3μmから10μm程度である。導電性領域3bの幅が0.3μm未満の場合は、電磁波を照射した場合における導電性の検知が困難となるからである。また、導電性領域3bの幅が10μm以上の場合は、テスター等により容易に導電性を検知されるおそれがあるためである。
【0024】
一方、第1の非導電領域3aは、少なくとも1MΩ程度の電気抵抗を有することが必要である。電気抵抗が少なくとも1MΩ以上の場合は、電磁波等を照射しても出力電圧が生じることは無く、導電性領域3bの出力電圧に影響を与えないからである。また、導電性領域3bの間に第1の非導電領域3aが存在するのは、個々の導電性領域3bの出力電圧を明確に発現させるためである。
【0025】
第2の非導電領域3cは、マイクロ波等の電磁波を照射した場合に出力電圧が生じないことが求められるため、少なくとも電気抵抗が1MΩ以上必要である。電気抵抗が1MΩ以上の場合は、マイクロ波等の電磁波を照射した場合に出力電圧が生じないからである。なお、第2の非導電性領域3cの幅は、100μmから1mm程度である。幅が1mm以上の場合は、電磁波を照射した場合における導電性の検知が困難となるからである。また、第2の非導電性領域3cの幅が100μm以上の場合は、第2の非導電性領域3cが複数の導電性領域3bの間に形成された場合において、一つの導電性領域3bの出力電圧の検知が困難となるからである。
【0026】
次に、第2の印刷領域2について説明する。第2の印刷領域2は、導電性を有さなければ特に限定されず、真鍮やアルミニウム、鉄等を含有する公知のインキ等を使用して印刷することができる。第2の印刷領域2が導電性を有すると、電磁波を照射した場合における第1の印刷領域3の導電性の有無を検知することが困難だからである。
【0027】
次に、使用する金属コロイド粒子を含有するインキについて説明する。第1の印刷領域3の形成に使用するインキは、金属コロイド粒子を含有するインキである。金属コロイド粒子を含有するインキは、光や微弱なレーザにより導電性を発現することができるからである。金属コロイド粒子を含有しない場合は、光や微弱なレーザにより導電性が発現せず、高出力のレーザや加熱手段が必要となるからである。なお、金属コロイド粒子とは、高分子顔料分散剤の存在下で金属化合物を還元して得られたものであり、金属と高分子顔料分散剤とを主成分とから成るものである。金属コロイド粒子は、上記高分子顔料分散剤を含むことにより、高濃度でも安定なインキとして保つことができる。この金属コロイド粒子中の金属濃度は、93重量%以上、さらには95重量%以上が好ましい。金属分の濃度が93重量%未満では、記録後に照射しても導電性を有する金属性被膜を得ることができないことがあるからである。
【0028】
金属コロイドの原料として使われる金属化合物は、溶媒に溶解することにより金属イオンを生じるものであり、このイオンが還元されて金属コロイド粒子が析出する。金属コロイド粒子を形成する金属は、導電性を得る目的から貴金属又は銅である。例えば、上記貴金属としては、金、銀、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金等を挙げることができる。
【0029】
上記溶媒は、水性又は有機溶媒であってもよく、公知のものを使用することができる。例えば、水性のものとしては、水、水可溶性有機溶剤又は水と水可溶性有機溶剤との混合溶剤が一般的である。また、有機溶媒としては、特に限定されず、デカン等の長鎖アルカンやドデシルベンゼン等の芳香族炭化水素、オクタノール等のアルコール類、ブチルセロソルブ等のエーテル類、セロソルブアセテート等のエステル類等を使用することができる。
【0030】
また、溶媒中の金属化合物の金属モル濃度は、0.05mol/l以上1.0mol/l以下である。溶媒中の金属モル濃度が0.05mol/l未満の場合は、導電性が発現しないか、又は導電性が低いことがあるからである。また、溶媒中の金属モル濃度が1mol/l以上の場合は、インキの流動性等が低下するため取り扱いが困難になるからである。
【0031】
また、金属コロイド粒子を含有するインキの膜厚は、0.1μm以上5.0μm以下程度の膜厚である。インキ被膜が0.1μm未満の場合は、導電性が発現しないか、又は導電性が低いことがあるからである。また、インキ膜厚が5.0μm以上の場合は、基材からインキが剥がれやすくなるからである。
【0032】
次に、本発明の真偽判別印刷物A1の作製方法について説明する。図2(a)に示すように、金属コロイド粒子を含有する導電性インキにより第1の印刷領域3と導電性インキと等色の通常インキにより第2の印刷領域2を基材1に印刷する。インキを乾燥後、図2(b)に示すように、第1の印刷領域3にレーザ4を照射して導電性インキを除去する。レーザ4のエネルギにより導電性インキの周囲に導電性を発現させるためである。一方、レーザ4のエネルギが伝わらなかった部分は、導電性が発現せず、第1の非導電性領域3aとなる。レーザ4の照射後、図2(c)に示すように、基材1の第1の印刷領域3には、レーザのエネルギが伝わらなかった領域である第1の非導電性領域3aと、レーザのエネルギが伝わった領域である導電性領域3b、レーザ4により導電性インキが除去されて、露出した基材が第2の非導電性領域3cが形成される。
【0033】
使用するレーザ4は、特に限定されず、公知の半導体レーザや炭酸ガスレーザ、エキシマレーザ等を使用することができる。ただし、レーザ照射による導電性インキの変色や基材の破損等を防止するため、導電性インキを除去する最低限の出力に調整する必要がある。照射するレーザの出力は、導電性インキの被膜の厚さによって変化するが、1J/cm程度あれば十分である。レーザの出力が低い場合は、導電性インキを除去することができないからである。また、レーザ出力が高い場合は、第1の印刷領域3の導電性インキが変色又は基材を破損し、第1の非導電性領域3aと導電性領域3bの色が異なるため、導電性領域3bの存在を視認されるおそれがある。
【0034】
次に、本発明の真偽判別印刷物の作製工程を図3により説明する。一例として、真偽判別印刷物の作製工程は、第1の印刷領域と第2の印刷領域を印刷する印刷領域形成工程(S1)、第1の印刷領域と第2の印刷領域のインキを乾燥させる印刷領域乾燥工程(S2)、乾燥後の第1の印刷領域にレーザを照射して導電性領域を形成する導電性領域形成工程(S3)から成り立っている。
【0035】
印刷領域形成工程(S1)は、第1の印刷領域を金属コロイド粒子を含有するインキにより印刷し、第2の印刷領域を導電性を有さないインキにより印刷することによって、第1の印刷領域と第2の印刷領域を形成する工程である。
【0036】
印刷領域乾燥工程(S2)は、印刷領域形成工程(S1)により印刷された第1の印刷領域と第2の印刷領域のインキを乾燥させる乾燥工程である。
【0037】
導電性領域形成工程(S3)は、印刷領域乾燥工程(S2)後、第1の印刷領域の一部にレーザ光を照射し、第1の印刷領域の導電性インキを除去して基材を露出させることにより第2の非導電性領域を形成する。また、レーザ光のエネルギが伝導した第1の印刷領域の部分に導電性領域を形成し、レーザ光のエネルギが伝導しなかった第1の印刷領域の部分を第1の非導電性領域とする工程である。
【0038】
本発明の真偽判別印刷物を印刷する印刷方式は、特に限定されず、プリンタ、平圧印刷機、凸版印刷機、平版印刷機、凹版印刷機、スクリーン印刷機等の印刷機械、又はスプレー塗装、静電塗装、電着塗装、ロール塗装、カーテンフロー塗装、浸漬塗装等の塗装方法又は無電解メッキによっても行うことが可能である。
【0039】
また、第1の印刷領域3と第2の印刷領域2は、ベタ刷りのみならず、任意の画線を使用して形成することができる。第1の印刷領域3を形成する任意の画線としては、例えば、図5に示すように、万線や破線、点線等で形成することができる。拡大図に示すように、図5(a)の万線には、万線の上端と下端に導電性領域3bを形成することができる。また、図5(b)の破線においては、破線の始端と終端に導電性領域3bを形成することができる。また、図5(c)の点線においては、点の周囲に導電性領域3bを形成することができる。なお、第1の印刷領域3と第2の印刷領域2のデザインは、文字、数字、記号及び絵柄等を用いることができるため、特に限定されるものではない。
【0040】
本発明に用いられる基材1は、導電性を有さなければ特に限定されず、紙や耐熱性の低いプラスチック等を使用することができる。なお、インキと基材との密着性を考慮した場合は、平滑性が高い上質紙等がより好ましい。
【0041】
本発明の真偽判別印刷物の真偽判別は、マイクロ波計又はオシロスコープ等の公知の測定機器により行うことができる。本発明の真偽判別印刷物は、第1の印刷領域に微小な導電域を有する導電性画線を複数集合させることにより形成しているため、電磁波等の照射時における第1の印刷領域2の出力特性をオシロスコープ等により表示して真偽判別を行うことができる。また、本発明の真偽判別印刷物は、レーザにより微小な印刷領域に多数の情報を付与することができるため、電磁波等の照射時における第1の印刷領域2の出力特性を複数形成することができる。
【0042】
さらに、金属コロイド粒子を含有するインキは、一度、導電性を発現した場合には、その後導電性をなくすことができないため、当該情報のみを消去して新しい情報を付加することができず、当該情報の書き換えは不可能である。さらに、金属コロイド粒子を含有するインキにより形成した導電性画線内の導電域の情報を消去又は再使用を防止したい場合は、導電性画線全体にフラッシュ光やエネルギ線を照射し、導電性画線全体に導電性を生じさせればよい。
【実施例】
【0043】
以下、本発明の真偽判別印刷物の実施例について図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための最良の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載における技術的思想の範囲内であれば、その他の色々な実施の形態が含まれる。
【0044】
(実施例1)
本実施例1においては、図5(a)に示すような印刷物P2を作製した。基材1は、市販の上質紙を使用した。印刷物P2は、第2の印刷領域2と、第1の印刷領域3となる「印」の文字から成る形成とした。第2の印刷領域2は、導電性を有さない市販のスクリーン印刷用の金インキを使用してスクリーン印刷によりベタ刷りで印刷した。一方、第1の印刷領域3は、Au(金)の金属コロイド粒子を配合した金インキを使用してスクリーン印刷によりベタ刷りにより形成した。
【0045】
スクリーン印刷機を使用して上質紙である基材1に、第2の印刷領域2と「印」の文字から成る第1の印刷領域3を有する印刷物P2を作製し、印刷物P2のインキを自然乾燥させた。
【0046】
乾燥後、第1の印刷領域3に導電性領域3bと第2の非導電性領域3cを形成するためのレーザは、波長1064nmのYVOレーザ(平均出力6W、ビーム径2μm)を使用し、照射エネルギを1J/cmに成るよう出力を調節した。第1の印刷領域3にレーザを照射して、第1の印刷領域3の導電性インキを除去して図5(b)に示すような真偽判別印刷物A2を作製した。拡大図に示すように、第1の非導電性領域3aと導電性領域3b、第2の非導電性領域3cを形成した。なお、第1の非導電性領域3aと導電性領域3bによる画線幅(T)とピッチ(P)は、100μmとした。
【0047】
レーザの照射後に生じた導電性領域3bの導通の確認は、センサにより確認した。レーザ照射前の第1の印刷領域3の抵抗値は、1.2MΩであったのに対し、レーザ照射後に生じた導電性領域3bの抵抗値は5Ωであり、導電性を確認することができた。一方、レーザを照射しなかった第1の非導電性領域3aと第2の非導電性領域3cの抵抗値は、1.2MΩであり、導通を確認することはできなかった。
【0048】
また、複数の導電性領域3bにより形成された第1の印刷領域3は、マイクロ波を照射することによって、複数の導電性領域3’bにより形成された出力電圧をオシロスコープにより確認することができた。一方、第2の印刷領域2は、出力電圧を確認することができなかった。
【0049】
(実施例2)
本実施例2においては、図6(a)に示すように、第2の印刷領域2と「国」の文字から成る第1の印刷領域3から成る印刷物P3を作製した。基材1は、市販の上質紙を使用した。拡大図に示すように、第2の印刷領域2は、万線である第2の印刷画線2’を使用して形成した。「国」の文字から成る第1の印刷領域3は、万線である第1の印刷画線3’を使用して形成した。第1の印刷画線3’と第2の印刷画線2’は、双方とも画線幅TとピッチPを500μmとした。なお、使用したインキ、基材、印刷方法や印刷物の乾燥等については、実施例1と同様であるため省略する。
【0050】
乾燥後、第1の印刷画線3’に導電性領域3bと第2の非導電性領域3cを形成するためのレーザは、波長1064nmのYVOレーザ(平均出力6W、ビーム径2μm)を使用し、照射エネルギを1J/cmに成るよう出力を調節した。第1の印刷画線3’にレーザを照射して、第1の印刷画線3’の導電性インキを除去して図6(b)に示すような真偽判別印刷物A3を作製した。拡大図に示すように、第1の非導電性領域3’aと導電性領域3’bが隣接するように形成した。また、第2の非導電性領域3’cは、導電性領域3’bと第2の印刷画線2’が隣接するように形成した。なお、第2の非導電性領域3cの幅は、100μmとした。
【0051】
レーザの照射後に生じた導電性領域3’bの導通の確認は、センサにより確認した。レーザ照射前の第1の印刷画線の抵抗値は、1.2MΩであったのに対し、レーザ照射後に生じた導電性領域3’bの抵抗値は5Ωであり、導電性を確認することができた。一方、レーザを照射しなかった第1の非導電性領域3’aと第2の非導電性領域3’cの抵抗値は、1.2MΩであり、導通を確認することはできなかった。
【0052】
また、複数の第1の印刷画線3’により形成された第1の印刷領域3について、複数の導電性領域3’aにより形成された出力電圧をオシロスコープにより確認することができた。一方、第2の印刷画線2’により形成されている第2の印刷領域2は出力電圧を確認することができなかった。
【0053】
(実施例3)
本実施例3においては、応用例として印刷領域3のインキを完全に除去しない場合について説明する。基材1は、市販の上質紙を使用した。印刷物P4の第1の印刷領域3は、Au(金)の金属コロイド粒子を配合した金インキを使用してスクリーン印刷によりベタ刷りにより形成し、図7(a)に示すような印刷物P4を作製した。
【0054】
インキの乾燥後、第1の印刷領域3に導電性領域3bを形成するためのレーザは、波長1064nmのYVOレーザ(平均出力6W、ビーム径2μm)を使用し、照射エネルギを1J/cmに成るよう出力を調節した。第1の印刷領域3に基材が露出しない程度にレーザを照射して、図7(b)に示すように「イ」の文字からなる導電性領域3bから成る真偽判別印刷物A4を作製した。拡大図に示すように、第1の非導電性領域3aと導電性領域3bを形成した。また、図7(c)のY―Y’断面図に示すように、第1の非導電性領域3aと導電性領域3bは、隣接している。また、導電性領域3bは、レーザによりインキ皮膜を完全に除去されていないため、凹状の形状から成っている。
【0055】
レーザの照射後に生じた導電性領域3bの導通の確認は、センサにより確認した。レーザ照射前の第1の印刷領域3の抵抗値は、1.2MΩであったのに対し、レーザ照射後に生じた導電性領域3bの抵抗値は5Ωであり、導電性を確認することができた。一方、レーザを照射しなかった第1の非導電性領域3aの抵抗値は、1.2MΩであり、導通を確認することはできなかった。
【0056】
また、第1の印刷領域3は、マイクロ波を照射することによって、導電性領域3bにより形成された出力電圧をオシロスコープにより確認することができた。一方、第1の非導電性領域3aは、出力電圧を確認することができなかった。
【0057】
(実施例4)
本実施例4において、基材1は、市販の上質紙を使用した。印刷物P5の第1の印刷領域3は、Au(金)の金属コロイド粒子を配合した金インキを使用してスクリーン印刷によりベタ刷りにより形成し、図8(a)に示すような印刷物P5を作製した。
【0058】
インキの乾燥後、第1の印刷領域3に導電性領域3bを形成するためのレーザは、波長1064nmのYVOレーザ(平均出力6W、ビーム径2μm)を使用し、照射エネルギを1J/cmに成るよう出力を調節した。レーザを照射して、第1の印刷領域3の導電性インキを除去し、図8(b)に示すように「I」の文字からなる導電性領域3bから成る真偽判別印刷物A4を作製した。拡大図に示すように、第1の非導電性領域3aと導電性領域3b、第2の非導電性領域3cを形成した。また、図8(c)のY―Y’断面図に示すように、導電性領域3bは、第1の非導電性領域3aと第2の非導電性領域3cに隣接している。
【0059】
レーザの照射後に生じた導電性領域3bの導通の確認は、センサにより確認した。レーザ照射前の第1の印刷領域3の抵抗値は、1.2MΩであったのに対し、レーザ照射後に生じた導電性領域3bの抵抗値は5Ωであり、導電性を確認することができた。一方、レーザを照射しなかった第1の非導電性領域3aと第2の非導電性領域3cの抵抗値は、1.2MΩであり、導通を確認することはできなかった。
【0060】
また、第1の印刷領域3は、マイクロ波を照射することによって、導電性領域3bにより形成された出力電圧をオシロスコープにより確認することができた。一方、第1の非導電性領域3aと第2の非導電性領域3cは、出力電圧を確認することができなかった。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の真偽判別印刷物の一例を示す平面図。
【図2】本発明の真偽判別印刷物の作製方法を示す平面図。
【図3】本発明の真偽判別印刷物の作製方法を示す工程図。
【図4】第1の印刷領域を形成する画線の一例を示す平面図。
【図5】本発明の真偽判別印刷物の一実施例を示す平面図。
【図6】本発明の真偽判別印刷物の一実施例を示す平面図。
【図7】本発明の真偽判別印刷物の一実施例を示す平面図。
【図8】本発明の真偽判別印刷物の一実施例を示す平面図。
【符号の説明】
【0062】
1 基材
2 第2の印刷領域
2’ 第2の印刷画線
3 第1の印刷領域
3’ 第2の印刷画線
3a、3’a 第1の非導電性領域
3b、3’b 導電性領域
3c、3’c 第2の非導電性領域
A1、A2、A3、A4、A5 真偽判別印刷物
P1、P2、P3、P4、P5 印刷物
T 画線幅
P ピッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に金属コロイド粒子を含有する導電性インキにより形成された第1の印刷領域と、前記導電性インキと等色の導電性を有さないインキにより形成された第2の印刷領域から成る真偽判別印刷物において、
前記第1の印刷領域は、少なくとも1つの導電性領域と、前記導電性領域を挟んで隣接された第1の非導電性領域及び第2の非導電性領域から成り、
前記第2の印刷領域は、前記第1の印刷領域に隣接又は重なり、
前記真偽判別印刷物にマイクロ波を照射した場合には、前記導電性領域に出力電圧が生じることを特徴とする真偽判別印刷物。
【請求項2】
前記導電性領域の幅は、0.3μm以上10μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の真偽判別印刷物。
【請求項3】
前記第2の非導電性領域は、前記第1の印刷領域の導電性インキをレーザにより除去し、露出した基材であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の真偽判別印刷物。
【請求項4】
前記第1の印刷領域及び/又は前記第2の印刷領域は、画線及び/又はベタ刷りで印刷されたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の真偽判別印刷物。
【請求項5】
基材上に金属コロイド粒子を含有する導電性インキにより第1の印刷領域を形成し、前記導電性インキと等色の導電性を有さないインキにより第2の印刷領域を前記第1の印刷領域に隣接又は重畳して形成する印刷領域形成工程と、
前記第1の印刷領域の導電性インキと、前記第2の印刷領域の導電性を有さないインキを乾燥させる印刷領域乾燥工程と、
前記第1の印刷領域の一部にレーザ光を照射し、導電性インキを除去して基材を露出させることにより第2の非導電性領域を形成し、前記第2の非導電性領域に隣接する部分に前記レーザ光のエネルギを伝導させることで前記第1の印刷領域の部分に導電性領域を形成する導電性領域形成工程から成ることを特徴とする真偽判別印刷物の作製方法。
【請求項6】
前記第1の印刷領域は、画線及び/又はベタ刷りにより形成することを特徴とする請求項5に記載の真偽判別印刷物の作製方法。
【請求項7】
前記導電性領域形成工程は、前記第1の印刷領域の一部に1J/cmのレーザ光を照射し、導電性領域の幅を0.3μm以上10μm以下に形成することを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の真偽判別印刷物の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−36393(P2010−36393A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−199730(P2008−199730)
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】