説明

真空ポンプ

【課題】外部装置により制御やモニタをするような使い方をする場合において、使い勝手の良い真空ポンプの提供。
【解決手段】回転翼が形成された回転体をモータ11により高速回転して真空排気するポンプ本体1と、モータ11を駆動制御する電源装置2とを備える真空ポンプであって、電源装置2は、外部装置3によりポンプ制御状態のモニタおよび起動停止等のポンプ制御を行うための通信インターフェース24と、通信インターフェース24を介してポンプ制御状態のモニタおよび起動停止等のポンプ制御を行うためのソフトウェアを、予め記憶保持している記憶媒体23とを備え、記憶媒体23に記憶保持されたソフトウェアを、通信インターフェース24を介して外部装置3に出力することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボ分子ポンプやドラッグポンプ等の真空ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、真空装置に装着されたターボ分子ポンプは、真空装置側のホストコンピュータにより監視するような構成となっている。ターボ分子ポンプの制御装置にはRS−232CやRS−485規格準拠の通信インターフェースが設けられ、そのインターフェースを介してターボ分子ポンプの制御状態をホストコンピュータに送信するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−339954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらのインターフェースは上位のプロトコルが統一されていないため、各メーカの各機器が独自のデータ形式を採用している。そのため、ターボ分子ポンプのユーザは、制御装置の通信プロトコルに合わせた専用の通信ソフトを作成する必要があり、手間がかかり、使い勝手が良くないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、回転体をモータにより高速回転して真空排気するポンプ本体と、モータを駆動制御する電源装置とを備える真空ポンプであって、電源装置は、外部装置によりポンプ制御状態のモニタおよび起動停止等のポンプ制御を行うための通信インターフェースと、通信インターフェースを介してポンプ制御状態のモニタおよび起動停止等のポンプ制御を行うためのソフトウェアを、予め記憶保持している記憶媒体とを備え、記憶媒体に記憶保持されたソフトウェアを、通信インターフェースを介して外部装置に出力することを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載の真空ポンプにおいて、通信インターフェースは、ポンプ制御状態のモニタおよび起動停止等のポンプ制御を行うための第1の通信インターフェースと、ポンプ制御状態のモニタおよび起動停止等のポンプ制御を行うためのソフトウェアを、外部装置に伝送するための第2の通信インターフェースとを備えるものである。
請求項3の発明は、請求項2に記載の真空ポンプにおいて、第1の通信インターフェースの通信速度を、第2の通信インターフェースの通信速度よりも低速としたものである。
請求項4の発明は、請求項2に記載の真空ポンプにおいて、第1の通信インターフェースとしてRS−232C、RS−485およびCAN(Controller Area Network)のいずれかに準拠の低速通信インターフェースを使用し、第2の通信インターフェースとしてETHERNET(登録商標)、USBおよびIEEE1394のいずれかに準拠する高速通信インターフェースを使用するようにしたものである。
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の真空ポンプにおいて、記憶媒体には、ソフトウェアとともに当該真空ポンプに固有のポンプ情報が予め記憶保持され、記憶媒体に記憶保持されたソフトウェアおよびポンプ情報の少なくとも一方を、通信インターフェースを介して外部装置に出力するようにしたものである。
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の真空ポンプにおいて、電源装置はダイレクトメモリアクセスコントローラを備え、記憶媒体からソフトウェアおよびポンプ情報のいずれかを外部装置に伝送する際には、それらをダイレクトメモリアクセスコントローラにより一括して伝送するようにしたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、外部装置により制御やモニタをするような使い方をする場合において、従来よりも使い勝手が良い真空ポンプを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】ターボ分子ポンプの概略構成を示すブロック図である。
【図2】ポンプ本体1の概略構成を示す断面図である。
【図3】ターボ分子ポンプの第1の変形例を示す図である。
【図4】ターボ分子ポンプの第2の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1はターボ分子ポンプの一実施の形態を示す図であり、磁気軸受式ターボ分子ポンプの概略構成を示すブロック図である。ターボ分子ポンプは、ポンプ本体1と電源装置2とで構成されている。
【0009】
図2はポンプ本体1の概略構成を示す断面図である。ロータ130は、磁気軸受12を構成する電磁石121,122によって非接触支持される。磁気軸受12によって回転自在に磁気浮上されたロータ130は、モータ11により高速回転駆動される。ロータ130には、複数段の回転翼132と円筒状のネジロータ131とが形成されている。
【0010】
一方、固定側には、軸方向に対して回転翼132と交互に配置された複数段の固定翼133と、ネジロータ131の外周側に設けられたネジステータ139とが設けられている。各固定翼133は、スペーサリング135を介してベース140上に載置される。ポンプケーシング134をベース140に固定すると、積層されたスペーサリング135がベース140とポンプケーシング134との間に挟持され、固定翼133が位置決めされる。
【0011】
ベース140には排気ポート141が設けられ、この排気ポート141にバックポンプが接続される。ロータ130を磁気浮上させつつモータ11により高速回転駆動することにより、吸気口側の気体分子は排気ポート141側へと排気される。なお、図示していないが、ロータ130の浮上位置は変位センサにより検出され、回転数は回転数センサによって検出される。
【0012】
図1に戻り、電源装置2には、ターボ分子ポンプ駆動部22と、ターボ分子ポンプ駆動部22を制御するCPU21とが設けられている。ターボ分子ポンプ駆動部22には、電磁石12に励磁用電流を供給する励磁アンプ222とモータ11を駆動するインバータ221とが設けられている。CPU10は、変位センサや回転数センサからの信号に基づいて、ターボ分子ポンプ駆動部22の励磁アンプ222およびインバータ221を制御する。
【0013】
ROM等の不揮発性記憶媒体であるメモリ23には、CPU10で処理されるプログラムが記憶保持されるとともに、当該ターボ分子ポンプに固有の情報と通信ソフトウェア(プログラム)が格納されている。ポンプ固有の情報としては、取扱説明書を電子データ化したものや、ターボ分子ポンプを制御するためのパラメータなどがある。通信ソフトウェアには、ターボ分子ポンプの制御状態をホストコンピュータ3からモニタするためのプログラムや、電源装置2のスタートストップなどを制御するプログラムが含まれる。
【0014】
電源装置2には、回転数などのポンプの制御状態を外部に通信するための通信インターフェース24が設けられている。通信インターフェース24には、RS−232CやRS−485規格準拠の通信インターフェースが使用される。図1に示す例では、通信インターフェース24を介して真空装置側のホストコンピュータ3が繋がっているが、ターボ分子ポンプを制御監視する装置としては、PC(パーソナルコンピュータ)等であっても構わない。ホストコンピュータ3は、通信インターフェース24を介して、ポンプの制御や制御状態のモニタを行うとともに、電源装置2のメモリ23内に記憶保持された取扱説明書や通信ソフトウェアをダウンロードすることができる。ホストコンピュータ3は、電源装置2側からダウンロードした通信ソフトウェアを実行することで、制御状態のモニタやスタートストップ等の制御を行うことが可能となる。また、取扱説明書の閲覧も容易に行うことができる。
【0015】
従来のターボ分子ポンプでは、ホストコンピュータ3から制御できるようにするためには、前述したように、取扱説明書の記載に基づいてその装置の通信プロトコルに合わせた専用の通信ソフトウェアを作成する必要があった。しかし、本実施の形態では、電源装置2のメモリ内に記憶保持されている通信ソフトウェアを、通信インターフェースを介してホストコンピュータ側にダウンロードできる構成となっているので、ユーザは、通信ソフトウェアを作成する手間が省ける。
【0016】
また、CD−ROM等の媒体で取扱説明書や制御および状態モニタソフトウェアを添付する形態も考えられるが、次のような問題がある。すなわち、真空装置には複数台のターボ分子ポンプが搭載されることが多いが、例えば、電源装置2のファームウェアのバージョンアップをした場合には、取扱説明書や制御および状態モニタソフトウェアも変更されるため、複数台のターボ分子ポンプと各々のCD−ROMとを1対1の対応を付けて管理する必要がある。しかしながら、ポンプ本体1や電源装置2のシリアルナンバーにてCD−ROM等を管理している場合でも、ターボ分子ポンプが装置内部に組み込まれた場合には、シリアルナンバーの確認が困難であるという問題が生じる。このように、取扱説明書や制御および状態モニタソフトウェアが記憶されたCD−ROMを、どの電源装置用のCD−ROMかを判別しやすいように管理するのが煩雑であった。
【0017】
一方、本実施の形態では、電源装置2から取扱説明書や制御および状態モニタソフトウェアをダウンロードするような構成としているので、それらは接続されている電源装置2と完全に合致している。そのため、上述したような取扱説明書や制御および状態モニタソフトウェアの管理に関する煩わしさや、制御および状態モニタソフトウェアの取り違えといったような人為的ミスを排除することができる。
【0018】
図3は、図1に示したターボ分子ポンプの変形例を示す図である。図3に示す電源装置2では、2系統の通信インターフェース24A,24Bを設けた。一方は、ポンプの制御や制御状態のモニタを行うための通信インターフェース24Aであって、他方は、取扱説明書や制御および状態モニタソフトウェアをダウンロードするための通信インターフェース24Bである。このように、通信系統を分離することにより、PC側で行うポンプの制御や制御状態のモニタに影響を及ぼすことなく、取扱説明書やソフトウェアのダウンロードを行うことができる。
【0019】
図3のように通信インターフェースを2系統に分けた場合、ノイズ環境下というターボ分子ポンプ特有の状況を考慮して、ポンプの制御や制御状態のモニタを行う通信インターフェース24Aには、耐ノイズ性の点で信頼性の高い低速のインターフェースを使用する。一方、制御および制御状態モニタに用いられるソフトウェアや取扱説明書のダウンロードに用いられる通信インターフェース24Bには、情報量が多くても素早くダウンロードができるように高速のインターフェースを使用する。
【0020】
高速通信と低速通信との境界としては1Mbps程度が一般的であり、ここでは、通信速度が1Mbpsを超える場合を高速通信とし、1Mbps以下の場合を低速通信とする。低速の通信インターフェース24Aとしては、例えば、工業環境下で一般的に使用されるRS−232C、RS−485、CAN(Controller Area Network)等に準拠する低速通信インターフェースがある。高速の通信インターフェース24Bとしては、民生品で一般的に使用されている、ETHERNET(登録商標)、USB、IEEE1394等に準拠する高速通信インターフェースが用いられる。電源装置2に接続されたPCは、PC側に標準で付属するプロトコル、または、それに準ずるアプリケーションを用いて高速通信インターフェース24Bにより通信を行い、取扱説明書や制御および状態モニタソフトウェアをダウンロードする。そして、そのダウンロードした通信ソフトウェアを実行し、低速通信インターフェース24Aを介してポンプの制御や制御状態のモニタを行う。
【0021】
図4は第2の変形例を示す図であり、図3の構成にダイレクトメモリアクセスコントローラ25を設けたものである。ダイレクトメモリアクセス(DMA)とは、CPU21を介さずに周辺装置とメモリ23との間で直接にデータ転送を行う方法のことである。このようなDMAを利用すると、データが一括して処理されるので、CPU21がデータを直接転送するよりも速度が向上し、また、その間に他の作業をCPU21に割り当てることで全体として効率をあげることができる。すなわち、CPU21による制御や制御状態のモニタに影響を与えないように、取扱説明書や制御および状態モニタソフトウェアのダウンロードを行うことができる。
【0022】
上述した各実施形態はそれぞれ単独に、あるいは組み合わせて用いても良い。それぞれの実施形態での効果を単独あるいは相乗して奏することができるからである。また、本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではない。上述した実施の形態ではターボ分子ポンプを例に説明したが、上述のように真空装置に装着される真空ポンプであれはターボ分子ポンプに限らず、例えば、ドラッグポンプ(ネジ溝ポンプ)などにも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0023】
1:ポンプ本体、2:電源装置、3:外部装置、11:モータ、12:磁気軸受、21:CPU、22:ターボ分子ポンプ駆動部、23:メモリ、24,24A,24B:通信インターフェース、25:ダイレクトメモリアクセスコントローラ、130:ロータ、132:回転翼

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転翼が形成された回転体をモータにより高速回転して真空排気するポンプ本体と、前記モータを駆動制御する電源装置とを備える真空ポンプであって、
前記電源装置は、
外部装置によりポンプ制御状態のモニタおよび起動停止等のポンプ制御を行うための通信インターフェースと、
前記通信インターフェースを介して前記ポンプ制御状態のモニタおよび起動停止等のポンプ制御を行うためのソフトウェアを、予め記憶保持している記憶媒体とを備え、
前記記憶媒体に記憶保持された前記ソフトウェアを、前記通信インターフェースを介して外部装置に出力することを特徴とする真空ポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載の真空ポンプにおいて、
前記通信インターフェースは、
前記ポンプ制御状態のモニタおよび起動停止等のポンプ制御を行うための第1の通信インターフェースと、
前記ポンプ制御状態のモニタおよび起動停止等のポンプ制御を行うためのソフトウェアを、前記外部装置に伝送するための第2の通信インターフェースとを備えることを特徴とする真空ポンプ。
【請求項3】
請求項2に記載の真空ポンプにおいて、
前記第1の通信インターフェースの通信速度を、前記第2の通信インターフェースの通信速度よりも低速としたことを特徴とする真空ポンプ。
【請求項4】
請求項3に記載の真空ポンプにおいて、
前記第1の通信インターフェースとしてRS−232C、RS−485およびCAN(Controller Area Network)のいずれかに準拠の低速通信インターフェースを使用し、
前記第2の通信インターフェースとしてETHERNET(登録商標)、USBおよびIEEE1394のいずれかに準拠する高速通信インターフェースを使用することを特徴とする真空ポンプ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の真空ポンプにおいて、
前記記憶媒体には、前記ソフトウェアとともに当該真空ポンプに固有のポンプ情報が予め記憶保持され、
前記記憶媒体に記憶保持された前記ソフトウェアおよび前記ポンプ情報の少なくとも一方を、前記通信インターフェースを介して外部装置に出力することを特徴とする真空ポンプ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の真空ポンプにおいて、
前記電源装置はダイレクトメモリアクセスコントローラを備え、
前記記憶媒体から前記ソフトウェアおよび前記ポンプ情報のいずれかを前記外部装置に伝送する際には、それらを前記ダイレクトメモリアクセスコントローラにより一括して伝送することを特徴とする真空ポンプ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−270599(P2010−270599A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120617(P2009−120617)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】