説明

真空冷却機および真空冷却方法

【課題】 液深が深い容器で液物食材を真空冷却する場合や、高粘度の液物食材を真空冷却する場合でも、短時間で均一な冷却が可能な真空冷却機の提供。
【解決手段】 被冷却物としての液物食材1が入られた容器2を収容する処理槽3と、この処理槽3内を減圧する減圧手段4と、減圧された処理槽3内を復圧する復圧手段5と、液物食材1を撹拌する撹拌手段6とを備える。撹拌手段6は、液物食材1が入れられる容器2内で回転する撹拌羽根13を備える。あるいは、容器2の底部から空気を注入して、その気泡が上昇することで、液物食材1の撹拌を図ってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、食材や食品などを冷却するための真空冷却機と真空冷却方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に開示されるように、被冷却物が収容された処理槽内を減圧して、被冷却物中の水分を気化し、その気化熱で被冷却物を冷却する真空冷却機が知られている。
【特許文献1】特開平9−296975号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特にカレーのルー、ラーメンのスープ、煮物の煮汁など、少なくとも一部に液状物を含んだ液物食材(食品を含む)を真空冷却する場合、冷却に長時間を要し、あるいは内部まで均一に冷却できなかった。
【0004】
具体的には、容器に入れた液物食材の液深が深い場合、液面部と液底部との圧力差に基づき、液面部が冷えやすく、液底部が冷えにくかった。そのため、冷却温度にムラが生じるだけでなく、浅い容器に入れて真空冷却する場合と比べると、同じ負荷でも冷却時間が長くなるものであった。
【0005】
また、上述のように、液深があって表面部のみが冷えやすくても、液面部と液底部との温度差に基づき通常は対流を生じて全体の冷却が促されるが、流動性の悪い高粘度の液物食材の場合、その対流が起こりにくかった。そのため、液面部だけ冷却されて、内部や下部は目標温度まで冷却されなかったり、冷却されても場所により温度差を生じたり、あるいは冷却に長時間を要したりするものであった。
【0006】
この発明が解決しようとする課題は、液深が深い容器で液物食材を真空冷却する場合や、高粘度の液物食材を真空冷却する場合でも、短時間で均一な冷却が可能な真空冷却機と真空冷却方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、被冷却物を収容する処理槽と、この処理槽内を減圧する減圧手段と、減圧された前記処理槽内を復圧する復圧手段と、前記被冷却物を撹拌する撹拌手段とを備えることを特徴とする真空冷却機である。請求項1に記載の発明によれば、真空冷却中に撹拌手段により被冷却物を撹拌することで、短時間で均一な真空冷却が可能となる。特に、液物食材の真空冷却に有効で、液深が深い場合や、高粘度の液物食材の場合でも、短時間で均一な真空冷却が可能となる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記撹拌手段は、前記被冷却物としての液物食材が入れられる容器内で回転する撹拌羽根を有することを特徴とする請求項1に記載の真空冷却機である。請求項2に記載の発明によれば、液物食材が入れられた容器内で撹拌羽根を回転させることで、被冷却物の撹拌を図り、これにより短時間で均一な真空冷却が可能となる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、前記撹拌手段は、前記被冷却物としての液物食材が入れられる容器内に設けられる撹拌子と、この撹拌子を前記容器外から非接触で回転させる撹拌器とを有することを特徴とする請求項1に記載の真空冷却機である。請求項3に記載の発明によれば、液物食材が入れられた容器内に撹拌子を入れ、この撹拌子を磁力などを用いて外部から回転させることで、被冷却物の撹拌を図り、これにより短時間で均一な真空冷却が可能となる。
【0010】
請求項4に記載の発明は、前記撹拌手段は、前記被冷却物としての液物食材が入れられる容器内へ空気を導入する手段であることを特徴とする請求項1に記載の真空冷却機である。請求項4に記載の発明によれば、容器に入れられた液物食材に空気を導入することで、その気泡により被冷却物の撹拌を図り、これにより短時間で均一な真空冷却が可能となる。
【0011】
請求項5に記載の発明は、フィルターおよび開閉弁を介して、前記容器内への空気導入ラインが設けられており、前記減圧手段による前記処理槽内の減圧下で前記開閉弁を開くことにより、前記処理槽の内外の圧力差に基づき、前記容器の下部から気泡を出して前記被冷却物を撹拌しつつ真空冷却することを特徴とする請求項4に記載の真空冷却機である。請求項5に記載の発明によれば、ポンプなどを用いることなく、処理槽の内外の圧力差を利用して、液物食材の下部へ空気を注入することができる。そして、この注入された空気が気泡となって液物食材内を上昇することで被冷却物の撹拌を図り、これにより短時間で均一な真空冷却が可能となる。しかも、フィルターを介した空気が使用されるので、衛生的である。
【0012】
請求項6に記載の発明は、前記撹拌手段は、前記被冷却物としての液物食材の下部を加熱し、前記被冷却物中に気泡を生じさせることで前記被冷却物を撹拌する加熱器であることを特徴とする請求項1に記載の真空冷却機である。請求項6に記載の発明によれば、液物食材の下部を加熱器で熱することで、その箇所の液物食材の蒸発を促し、これにより発生した気泡の上昇により被冷却物の撹拌を図ることができる。この加熱器は、液物食材が入れられる容器の底部に配置されるが、容器内に配置してもよいし、容器外に配置してもよい。
【0013】
請求項7に記載の発明は、前記撹拌手段は、前記被冷却物としての液物食材が入れられる容器の上部と下部とを接続するバイパス路と、このバイパス路を介して前記液物食材を強制循環させる循環ポンプとを有することを特徴とする請求項1に記載の真空冷却機である。請求項7に記載の発明によれば、容器に入れられた液物食材を循環ポンプにて強制循環することで撹拌を図り、これにより短時間で均一な真空冷却が可能となる。
【0014】
請求項8に記載の発明は、液物食材からなる被冷却物を処理槽内に収容し、この処理槽内の被冷却物を撹拌しつつ、前記処理槽内を減圧して前記被冷却物を真空冷却することを特徴とする真空冷却方法である。請求項8に記載の発明によれば、真空冷却中に被冷却物を撹拌することで、短時間で均一な真空冷却が可能となる。特に、液物食材の真空冷却に有効で、液深が深い場合や、高粘度の液物食材の場合でも、短時間で均一な真空冷却が可能となる。
【0015】
さらに、請求項9に記載の発明は、前記被冷却物が入れられる容器の下部に空気導入ラインを設け、前記処理槽内の減圧下で前記空気導入ラインを大気に開放することで、差圧により前記容器の下部から気泡を出して前記被冷却物を撹拌しつつ真空冷却することを特徴とする請求項8に記載の真空冷却方法である。請求項9に記載の発明によれば、ポンプなどを用いることなく、処理槽の内外の圧力差を利用して、液物食材の下部へ空気を注入することができる。そして、この注入された空気が気泡となって液物食材内を上昇することで被冷却物の撹拌を図り、これにより短時間で均一な真空冷却が可能となる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、液深が深い容器で液物食材を真空冷却する場合や、高粘度の液物食材を真空冷却する場合でも、短時間で均一な冷却が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。
本発明は、密閉空間を形成する処理槽内に、冷却したい被冷却物を収容し、真空ポンプなどからなる減圧手段を用いて処理槽内の空気を外部へ真空引きして、処理槽内を減圧することで、前記被冷却物を真空冷却する装置である。
【0018】
この真空冷却機は、その用途を特に問わないが、典型的には加熱調理後の食材や食品の冷却に使用される。特に、カレーのルー、ラーメンのスープ、煮物の煮汁などの液物食材を真空冷却するのに好適に用いられる。このような被冷却物は、通常、上方に開口した容器に入れられて、処理槽に出し入れされる。この容器は、熱伝導率の高いステンレスやアルミニウムなどの金属から形成するのがよい。前記容器の上部開口には、所望により、気体(蒸気)は通すが液体(水)は通さない透湿防水性素材の蓋をしてもよい。
【0019】
前記処理槽は、内部空間が被冷却物の冷却空間として機能する中空構造であり、扉またはシャッターなどにより開閉可能とされる。この処理槽には、減圧手段と復圧手段とが設けられる。
【0020】
前記減圧手段は、前記処理槽内の空気を真空引きして、処理槽内を減圧する手段であり、真空ポンプまたはエジェクタなどからなる。これらは、複数種類のものを組み合わせてもよい。この減圧手段は、減圧ラインを介して、処理槽の内部空間に接続されている。従って、減圧手段により減圧ラインを介して処理槽内の空気を外部へ吸引排出して、処理槽内を減圧することができる。処理槽内の減圧の有無は、減圧手段自体の作動の有無により操作することができる。あるいは、減圧ラインの中途に減圧操作弁を設け、この減圧操作弁より真空ポンプ側を常時所定圧力に減圧しておき、前記減圧操作弁を開閉操作してもよい。
【0021】
一方、前記復圧手段は、減圧された前記処理槽内へ外気を導入して、真空状態を解除し復圧する手段である。この復圧手段により、前記処理槽内は、大気圧下に解放可能とされる。その際、衛生面を考慮して、フィルターを介して外気を導入するのがよい。復圧手段の復圧ラインは、復圧操作弁を介して前記処理槽の内部空間に接続されている。この復圧操作弁を開閉操作することで、前記処理槽の内部と外部との連通の有無が切り替えられる。従って、減圧手段を停止した状態で、前記復圧操作弁を開くことで、処理槽内の圧力を大気圧まで戻すことができる。
【0022】
前記復圧操作弁は、単なる開閉弁でもよいが、その開度を任意に調整可能な構成のものでもよい。後者の場合、減圧手段を作動させた状態で、復圧操作弁の開度を調整することで、減圧時の処理槽内の圧力ひいては温度を、任意に調整できる。但し、処理槽内の圧力や温度の調整方法は、特に問わず適宜に変更可能である。たとえば、復圧操作弁を閉じた状態で、処理槽内が設定圧力もしくは設定温度になるまで、または設定時間だけ減圧手段を作動させてもよい。その際、減圧手段の作動の有無を切り替えるなどにより、処理槽内を設定圧力または設定温度で設定時間だけ保持してもよい。
【0023】
本実施形態の真空冷却機には、さらに、被冷却物の撹拌手段が備えられている。この撹拌手段は、真空冷却中に被冷却物を撹拌する手段である。この撹拌処理は、処理槽内の減圧下では常時行ってもよいし、所望の時間だけ行うようにしてもよい。撹拌手段の構成は、特に問わないが、具体例として、下記五つの実施形態を挙げることができる。
【0024】
第一の実施形態として、前記撹拌手段は、前記被冷却物が入れられる容器内で回転する撹拌羽根を有する構成である。この撹拌羽根は回転軸に設けられ、この回転軸が駆動装置により回転される。
【0025】
第二の実施形態として、前記撹拌手段は、前記被冷却物が入れられる容器内に設けられる撹拌子と、この撹拌子を前記容器外から非接触で回転させる撹拌器(スターラ)とを有する構成である。典型的には、マグネット撹拌子とマグネチックスターラとの組合せから構成できる。この場合、被冷却物を入れた容器をマグネチックスターラ上に載せる一方、前記容器内にマグネット撹拌子を入れておき、処理槽内の減圧時にマグネチックスターラからの磁力で、容器内のマグネット撹拌子を可動させて、容器内の被冷却物を撹拌することができる。
【0026】
第三の実施形態として、前記撹拌手段は、前記被冷却物が入れられる容器内へ空気を導入する手段とできる。容器内への空気の導入は、ポンプなどを用いて強制的に吹き込んでもよいが、真空冷却時には処理槽内が減圧下になることを利用して、処理槽の内外の圧力差に基づき自然に空気を送り込むこともできる。
【0027】
この場合、中途部に開閉弁を設けた管路からなる空気導入ラインを、処理槽の内外を連通するように設ければよい。そして、この空気導入ラインは、一端部がフィルターを介して大気圧下に開放されており、他端部は前記容器内に開放される。これにより、前記減圧手段による前記処理槽内の減圧下で、前記開閉弁を開くことにより、処理槽の内外の圧力差により、フィルターを介した空気が容器内に導入される。空気導入ラインを介した前記容器内への空気導入は、前記容器の底部より行うのがよい。これにより、被冷却物内を気泡が上昇することで、被冷却物を撹拌することができる。
【0028】
第四の実施形態として、前記撹拌手段は、前記被冷却物の下部を加熱し、前記被冷却物中に気泡を生じさせることで前記被冷却物を撹拌する加熱器とすることができる。この加熱器は、被冷却物の底部を局所的に加熱することにより、その箇所の被冷却物の蒸発を促し、これにより発生した気泡が上昇することで、被冷却物を撹拌するものである。
【0029】
第五の実施形態として、前記撹拌手段は、前記被冷却物が入れられる容器の上部と下部とを接続するバイパス路と、このバイパス路を介して前記液物食材を強制循環させる循環ポンプとを有する構成である。この循環は、容器の下部から液物食材をバイパス路へ取り出し、容器の上部へ戻してもよいが、これとは逆に、容器の上部から液物食材をバイパス路へ取り出し、容器の下部へ戻してもよい。後者の場合、液物食材に具材などの固体分が含まれていても、その固体分は容器の下部へ溜まろうとするため、液体分の取り出しは容器の上部から容易で確実になされる上、そのようにして上部から取り出した液体分を、循環ポンプで容器下部から噴き上げることで、容器内の被冷却物を撹拌することができる。
【0030】
前記減圧手段や復圧手段などは、制御手段(制御器)により制御される。この制御手段は、減圧手段を制御して処理槽内を減圧して、処理槽内の被冷却物を真空冷却した後、復圧手段を制御して大気圧まで復圧させて処理を完了する。また、制御手段は、減圧手段による処理槽内の減圧下における少なくとも一時期に、前記撹拌手段を制御して、被冷却物の撹拌を行う。具体的には、前記撹拌手段の前記駆動装置、前記マグネチックスターラ、前記空気導入用ポンプ、前記開閉弁、前記加熱器、または前記循環ポンプの作動を制御する。
【0031】
このような被冷却物の撹拌を伴った真空冷却処理は、所定のプログラムに従って行われる。さらに、前記処理槽には所望により、処理槽内またはそこに収容される被冷却物の温度または圧力を検出するために、温度センサおよび圧力センサの一方または双方を設けてもよい。このようなセンサを設けた場合には、処理槽内の圧力や被冷却物の温度などを用いて、前記制御手段による各種制御を行うことができる。
【実施例1】
【0032】
以下、この発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の真空冷却機の実施例1を示す概略構成図である。本実施例の真空冷却機は、粘性の有無を問わず一部または全部が液体からなる液物食材1の冷却に好適に用いられる。図示例では、液物食材1は、上方に開口した容器2に入れられる。この容器2は、ステンレスなどから形成されている。
【0033】
本実施例の真空冷却機は、被冷却物としての液物食材1が入れられた容器2を収容する処理槽3と、この処理槽3内を減圧して液物食材1を真空冷却する減圧手段4と、減圧された処理槽3内を大気圧まで復圧する復圧手段5と、前記減圧手段4による真空冷却中に液物食材1を撹拌する撹拌手段6とを備える。
【0034】
本実施例の処理槽3は、扉(不図示)により開閉可能とされ、扉がなされた状態では、処理槽3内に密閉空間7が形成される。この密閉空間7は、減圧手段4により減圧されることで、液物食材1の冷却空間として機能する。
【0035】
減圧手段4は、真空ユニット8を備え、この真空ユニット8は減圧ライン(空気導出用配管)9を介して処理槽3と接続される。真空ユニット8は、典型的には、真空ポンプ(不図示)を備えて構成されるが、これに代えてまたはこれに加えて、蒸気エジェクタなどを備えていてもよい。
【0036】
復圧手段5は、減圧された処理槽3内へ外気を導入して、真空状態を解除し復圧する手段である。具体的には、外気は、フィルター10を介して取り込まれ、復圧ライン(外気導入用配管)11を介して処理槽3内へ供給可能とされている。復圧ライン11の中途には、外気と処理槽3内との連通の有無を切り替える復圧操作弁12が設けられている。従って、復圧操作弁12を閉じた状態で、真空ユニット8により処理槽3内を減圧した後、真空ユニット8による減圧を停止して、復圧操作弁12を開ければ、処理槽3内の真空状態を解除して大気圧下に戻すことができる。
【0037】
本実施例の撹拌手段6は、液物食材1が入れられた容器2内で回転する撹拌羽根13と、この撹拌羽根13を回転させる駆動装置14とを備える。前記撹拌羽根13は回転軸15に設けられ、この回転軸15は容器2内に差し込まれて、撹拌羽根13が液物食材1内に配置される。図示例では、容器2の上部開口から回転軸15が容器2内に差し込まれており、この回転軸15は駆動装置14にて回転駆動可能とされる。
【0038】
また、真空冷却機には、前記減圧手段4、前記復圧手段5、および前記撹拌手段6を制御する制御器(制御手段)16が備えられており、この制御器16にて各種制御が可能とされる。具体的には、制御器16は、前記真空ユニット8、前記復圧操作弁12、および前記駆動装置14に接続されており、所定のプログラムに従い、真空ユニット8の作動を制御したり、復圧操作弁12の開閉を制御したり、撹拌羽根13の駆動装置14の作動を制御したりする。
【0039】
さらに、真空冷却機には、所望により、処理槽3内の圧力を検出する圧力センサ(不図示)や、処理槽3内に収容される液物食材1の温度を検出する温度センサ(不図示)などを備え付けてもよい。このようなセンサを設けた場合には、その検出圧力または検出温度に基づき、前記減圧手段4や前記復圧手段5などの動作タイミングを制御したり、前記復圧操作弁12の開度を調整したりして、処理槽3内の圧力調整を容易に行うことができる。
【0040】
次に、本実施例1の真空冷却機の使用について説明する。真空冷却機の使用に際しては、被冷却物としての液物食材1を容器2に入れ、この容器2を処理槽3内に収容して、処理槽3を密閉する。そして、真空ユニット8を作動させて、処理槽3内を減圧する。これにより、処理槽3内に収容された液物食材1は、真空冷却される。真空冷却中には、駆動装置14を作動させて撹拌羽根13を回転させることで、液物食材1の撹拌が図られる。これにより、迅速で均一な冷却がなされる。その後、真空ユニット8および駆動装置14の作動を停止して、復圧操作弁12を開けて処理槽3内を大気圧まで戻し、真空冷却処理を終了する。
【0041】
本実施例の真空冷却機および真空冷却方法によれば、液深が深くなる容器2に液物食材1を入れて真空冷却を行っても、短時間で均一に冷却することができる。また、高粘度の液物食材1においても、短時間に、内部まで均一に冷却することができる。
【実施例2】
【0042】
図2は、本発明の真空冷却機の実施例2を示す概略構成図である。本実施例2の真空冷却機も、基本的には前記実施例1と同様の構成である。従って、以下では、実施例1と異なる部分を中心に説明し、対応する箇所には同一の符号を付して説明する。なお、図2においては、減圧手段4、復圧手段5、および制御手段16を省略して示している。
【0043】
本実施例2では、撹拌手段6は、撹拌子17と撹拌器(スターラ)18とからなる。具体的には、液物食材1が収容された容器2内に入れられるマグネット撹拌子17と、このマグネット撹拌子17を前記容器2外から非接触で回転させるマグネチックスターラ(マグネチックスタープレート)18とからなる。
【0044】
本実施例2では、処理槽3内の下部に、テーブル状のマグネチックスターラ18が配置され、このマグネチックスターラ18上に、液物食材1が入れられた容器2が載せられる。そして、真空ユニット8(図2では不図示)による処理槽3内の減圧下において、マグネチックスターラ18を制御器16(図2では不図示)により制御して、容器2内のマグネット撹拌子17を可動させ、容器2内の液物食材1を撹拌することができる。
【実施例3】
【0045】
図3は、本発明の真空冷却機の実施例3を示す概略構成図である。本実施例3の真空冷却機も、基本的には前記実施例1と同様の構成である。従って、以下では、実施例1と異なる部分を中心に説明し、対応する箇所には同一の符号を付して説明する。なお、図3においては、減圧手段4、復圧手段5、および制御手段16を省略して示している。
【0046】
本実施例3では、撹拌手段6は、液物食材1が入れられた容器2内に空気を導入する手段である。具体的には、本実施例3の容器2の底面には、空気導入ライン(空気導入用配管)19が接続されている。この空気導入ライン19は、一端部がフィルター20を介して大気圧下に開放されており、他端部は容器2の内側底面の中央部に開放されている。また、空気導入ライン19の中途には、開閉弁21が設けられており、この開閉弁21を操作することで、容器2内と外気との連通の有無が切り替えられる。
【0047】
本実施例2では、真空ユニット8(図3では不図示)による処理槽3内の減圧下において、前記開閉弁21が開かれる。これにより、処理槽3の内外の圧力差により、フィルター20を介した空気が容器2内に自然に導入され、この導入された空気が気泡となって液物食材1内を上昇することで、液物食材1の撹拌がなされる。ところで、処理槽3の内外の圧力差により自然に空気を導入する以外に、コンプレッサー(不図示)などを用いて、空気を加圧して液物食材1内に吹き込むことで撹拌を図ってもよい。
【0048】
図4は、本実施例3の変形例を示す概略構成図である。図3の実施例では、空気導入ライン19の他端部は容器2自体に接続したが、図4の変形例では、空気導入ライン19の他端部22は容器2と接続されていない。従って、本変形例では、空気導入ライン19の他端部22は、液物食材1が入れられた容器2に沈められて使用される。空気導入ライン19と容器2とを別体とすることで、処理槽3に対する容器2の出し入れが容易で、また各種の容器2が使用可能となる。
【0049】
ところで、図3や図4に示す実施例では、撹拌のために送り込む空気が、真空引きによる処理槽3内の減圧を阻害しないように、空気の導入量や導入時期が制御される。具体的には、処理槽3内の減圧がある程度進んでから、開閉弁21を開いて液物食材1の撹拌が図られる。
【実施例4】
【0050】
図5は、本発明の真空冷却機の実施例4を示す概略構成図である。本実施例4の真空冷却機は、基本的には前記実施例1と同様の構成である。従って、以下では、実施例1と異なる部分を中心に説明し、対応する箇所には同一の符号を付して説明する。なお、図5においては、減圧手段4、復圧手段5、および制御手段16を省略して示している。
【0051】
本実施例4では、撹拌手段6は加熱器23からなり、この加熱器23は容器2の下部に配置されている。図示例では、加熱器23は、容器2内に配置されているが、容器2外において容器2の底面に配置してもよい。
【0052】
この加熱器23は、真空ユニット8(図5では不図示)による処理槽3内の減圧下において作動され、加熱器23の周囲の液物食材1を加熱する。これにより、その箇所の液物食材1を蒸発させ、その蒸発により生じた気泡が上昇することで、液物食材1を撹拌することができる。
【実施例5】
【0053】
図6は、本発明の真空冷却機の実施例5を示す概略構成図である。本実施例5の真空冷却機は、基本的には前記実施例1と同様の構成である。従って、以下では、実施例1と異なる部分を中心に説明し、対応する箇所には同一の符号を付して説明する。なお、図6においては、減圧手段4、復圧手段5、および制御手段16を省略して示している。
【0054】
本実施例5では、撹拌手段6は、液物食材1が入れられる容器2の上部と下部とを接続するバイパス路24と、このバイパス路24の中途に設けられバイパス路24を介して液物食材1を強制循環させる循環ポンプ25とからなる。図示例では、容器2の上部から液物食材1をバイパス路24へ取り出し、循環ポンプ25を介して、容器2の下部へ戻しているが、循環方向はこれとは逆に、容器2の下部から液物食材1をバイパス路24へ取り出し、循環ポンプ25を介して、容器2の上部へ戻すようにしてもよい。
【0055】
本実施例5では、真空ユニット8(図6では不図示)による処理槽3内の減圧下において、循環ポンプ25により液物食材1を強制的に循環させる。これにより、容器2内の液物食材1は撹拌され、迅速で均一な真空冷却が図られる。
【0056】
本発明の真空冷却機および真空冷却方法は、前記各実施例の構成に限らず適宜変更可能である。たとえば、前記各実施例において、容器2からの被冷却物1の飛散を一層確実に防止するために、容器2の上部開口を透湿防水性素材のシート(不図示)にて覆って真空冷却してもよい。この透湿防水性素材は、蒸気は通すが水は通さない性質を有するので、容器2外への食材の飛散を確実に防止しつつ真空冷却を図ることができる。
【0057】
また、撹拌手段6は、真空冷却中に被冷却物1を撹拌する構成であれば、前記各実施例の構成に限定されず、適宜変更可能である。また、前記各実施例の撹拌手段6を組み合わせてもよい。たとえば、実施例1と実施例3とを組み合わせて、撹拌羽根13を回転させつつ、容器2の底部から気泡を吹き出すように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の真空冷却機の実施例1を示す概略構成図である。
【図2】本発明の真空冷却機の実施例2を示す概略構成図である。
【図3】本発明の真空冷却機の実施例3を示す概略構成図である。
【図4】実施例3の変形例を示す概略構成図である。
【図5】本発明の真空冷却機の実施例4を示す概略構成図である。
【図6】本発明の真空冷却機の実施例5を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0059】
1 被冷却物(液物食材など)
2 容器
3 処理槽
4 減圧手段
5 復圧手段
6 撹拌手段
13 撹拌羽根
17 撹拌子(マグネット撹拌子)
18 撹拌器(マグネチックスターラ)
19 空気導入ライン
20 フィルター
21 開閉弁
23 加熱器
24 バイパス路
25 循環ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被冷却物を収容する処理槽と、この処理槽内を減圧する減圧手段と、減圧された前記処理槽内を復圧する復圧手段と、前記被冷却物を撹拌する撹拌手段とを備える
ことを特徴とする真空冷却機。
【請求項2】
前記撹拌手段は、前記被冷却物としての液物食材が入れられる容器内で回転する撹拌羽根を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の真空冷却機。
【請求項3】
前記撹拌手段は、前記被冷却物としての液物食材が入れられる容器内に設けられる撹拌子と、この撹拌子を前記容器外から非接触で回転させる撹拌器とを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の真空冷却機。
【請求項4】
前記撹拌手段は、前記被冷却物としての液物食材が入れられる容器内へ空気を導入する手段である
ことを特徴とする請求項1に記載の真空冷却機。
【請求項5】
フィルターおよび開閉弁を介して、前記容器内への空気導入ラインが設けられており、
前記減圧手段による前記処理槽内の減圧下で前記開閉弁を開くことにより、前記処理槽の内外の圧力差に基づき、前記容器の下部から気泡を出して前記被冷却物を撹拌しつつ真空冷却する
ことを特徴とする請求項4に記載の真空冷却機。
【請求項6】
前記撹拌手段は、前記被冷却物としての液物食材の下部を加熱し、前記被冷却物中に気泡を生じさせることで前記被冷却物を撹拌する加熱器である
ことを特徴とする請求項1に記載の真空冷却機。
【請求項7】
前記撹拌手段は、前記被冷却物としての液物食材が入れられる容器の上部と下部とを接続するバイパス路と、このバイパス路を介して前記液物食材を強制循環させる循環ポンプとを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の真空冷却機。
【請求項8】
液物食材からなる被冷却物を処理槽内に収容し、この処理槽内の被冷却物を撹拌しつつ、前記処理槽内を減圧して前記被冷却物を真空冷却する
ことを特徴とする真空冷却方法。
【請求項9】
前記被冷却物が入れられる容器の下部に空気導入ラインを設け、前記処理槽内の減圧下で前記空気導入ラインを大気に開放することで、差圧により前記容器の下部から気泡を出して前記被冷却物を撹拌しつつ真空冷却する
ことを特徴とする請求項8に記載の真空冷却方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−292306(P2006−292306A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−115482(P2005−115482)
【出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】