説明

真空密着焼付装置

【課題】 原板の画像パターンを感光性スクリーンに正確に焼付けることができ、しかも、優れた作業性の得られる真空密着焼付装置の提供。
【解決手段】 内部に露光用光源が配置された筺体と、この筺体に設けられた透光板上に載置される、原板およびスクリーン枠体に感光性スクリーンが張られてなる感光体材料の感光性スクリーンを真空密着させる減圧手段および押圧手段とを備えた真空密着焼付装置であって、押圧手段は、前記スクリーン枠体内に収容されて、感光性スクリーンにおける有効領域を囲むよう当該感光性スクリーンに当接されて配置されるシール部材と、このシール部材の中央開口を覆うよう設けられた可変形性を有するシート体とにより構成され、押圧手段および感光性スクリーンによって囲まれる密閉空間内が減圧されることにより感光性スクリーンと原板とが真空密着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の画像パターンが形成された原板と感光体材料とを真空密着させて前記画像パターンを感光体材料に焼付ける真空密着焼付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、スクリーン目を通してインキを押し出して印刷を行うスクリーン印刷は、局面体や剛体などのような従来の印刷法では困難なものにも画像を形成することができること、インキ層の厚い画像を形成することができること、使用できるインキの範囲が広いこと等の特長を有していることから、紙類以外に、例えばプラスチック、セラミック、ガラス、布などへの画像形成に利用されている。
【0003】
スクリーン印刷で用いられるスクリーン印刷版は、例えば金属製のスクリーン枠体に、例えば絹布、ナイロンスクリーン、ポリエステルスクリーン、金属スクリーンなどからなるスクリーンを張り、このスクリーンに重クロム酸コロイド感光液または感光性樹脂を塗布して感光性スクリーンとした感光体材料を原板に密着させた状態において、焼付け、現像(感光部分又は未感光部分の溶出)を行うことにより得られる。
【0004】
図8は、従来における真空密着焼付装置の一例における構成の外観を示す説明図、図9は、図8に示す真空密着焼付装置の内部構成を示す説明用断面図である。
この真空密着焼付装置は、一方が開口する箱状の筺体70を備えており、この筺体70の内部には、露光用光源71が配置されている。
筺体70の開口部には、例えばガラス板などの透明材料からなる透光板72が設けられており、筺体70の上面の四周には、例えばゴムなどの弾性体からなる土手枠75が周設され、更に、土手枠75に当接するように枠体76が設けられている。
枠体76には、弾性シート77が枠体76の中央開口を覆うよう全面にわたって覆設されていると共に、弾性シート77、枠体76、土手枠75および透光板72によって囲まれる内部空間S4に連通する吸引用貫通孔78が枠体76を貫通して形成されている。
枠体76は、その後縁部(図8において右側)が蝶番79Aなどによって筺体70に固定されており、枠体76の前縁部(図8において左側)が開閉自在になっている。図8において、79Bは、枠体76の前縁部を開放するための取っ手である。
【0005】
この真空密着焼付装置においては、次のようにして、スクリーン印刷版が作製される。すなわち、枠体76を回動させて枠体76の前縁部を開放した状態において、所定の画像パターンが形成された原板80を透光板72上に載置し、さらに、原板80の上面に、上述したスクリーン枠体85に感光性スクリーン86が張られてなる感光体材料をそのスクリーン面が原板80に接するよう載置する。
そして、内部空間S4を密閉した後、吸引用貫通孔78に接続された真空ポンプなどの減圧手段によって内部空間S4内の空気が吸引されることにより、内部空間S4内が減圧状態とされる。これにより、図10に示すように、弾性シート77が延伸して弾性シート77の周縁部分が透光板72に密着する状態とされると共に、弾性シート77によってスクリーン枠体85および感光性スクリーン86が上方から押圧されることにより、感光性スクリーン86、原板80および透光板72の三者が互いに真空密着した状態とされる。
吸引状態が維持された状態において、露光用光源71が点灯されて露光用光源71から放射された光が透光板72を介して、感光性スクリーン86に照射されることにより、原板80の画像パターンが感光性スクリーン86に焼付けられる。
焼付け終了後、真空状態を解除して図9の状態に戻した後、枠体76の前縁部を開放して感光体材料を取り出し、感光性スクリーン86を現像することにより、スクリーン印刷版を得ることができる。
【0006】
しかし、上記構成の真空密着焼付装置において行われるスクリーン印刷版の製造方法においては、スクリーン枠体85を弾性シート77により押圧するとき、実際上、スクリーン枠体85を均一に押圧することができないため、スクリーン枠体85に歪みが生じ、これに伴って感光性スクリーン86においても歪みが生じるので、感光性スクリーン86と原板80とを十分に高い密着度で密着させることができず、その結果として、原板80の画像パターンを感光性スクリーン86に正確に焼付けることができない、すなわち焼付不良を起こす、という問題がある。
【0007】
このような問題を解決するために、先に本出願人は、スクリーン印刷版を作製するに際して用いられるスクリーン押圧具およびこれを用いたスクリーン印刷版の製造方法を開示している(特許文献1参照)。
具体的には、図11に示すように、透光板72上に原板80と感光体材料とを重ねて載置した状態において、その上から、本体91と本体91に固定された天板92とからなる押圧具90をスクリーン枠体85内に収納し、図9に示すものと同様に、透光板72、土手枠75、枠体76および弾性シート77で囲まれた内部空間S4内が、吸引用貫通孔78に接続された減圧手段によって減圧状態(真空状態)とされることにより、図12に示すように、弾性シート77によって押圧具90が上方から押圧され、押圧具90を介して感光性スクリーン86と原板80とが真空密着した状態とされる。
このような構成によれば、押圧具90が弾性シート77とスクリーン枠体85との間に介在することにより、感光性スクリーン86と原板80とを密着させる際に、スクリーン枠体85を弾性シート77によって直接押圧することがないため、スクリーン枠体85に歪みが生ずることがなく、原板80と感光性スクリーン86とを十分に高い密着度で密着させることができる結果、焼付け不良が生ずることを防止することができる、とされている。
【特許文献1】特開平9−269598号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されている技術によれば、スクリーン枠体85に歪みが生じることを防止して感光性スクリーン86と原板80とを高い密着度で密着させることができるものの、押圧具90として、例えば金属製のものが用いられており、重量が大きいことから、透光板72が破損するおそれがある。
また、このような重量物を透光板72上に配置せねばならないことから、作業者の手間がかかり、十分な生産性を得ることができず、作業性の面においても課題がある。
【0009】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、簡便な構造によって、感光性スクリーンと原板との密着性を向上させることができ、従って、原板の画像パターンを正確に焼付けることができ、しかも、優れた作業性を得ることのできる真空密着焼付装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の真空密着焼付装置は、内部に露光用光源が配置された筺体と、この筺体に設けられた透光板上に載置される、所定の画像パターンが形成された原板およびスクリーン枠体に感光性スクリーンが張られてなる感光体材料における感光性スクリーンを真空密着させる減圧手段および押圧手段とを備えてなり、
押圧手段は、前記スクリーン枠体内に収容されて、感光性スクリーンにおける原板のパターンが焼付けられるべき有効領域を囲むよう、当該感光性スクリーンに当接されて配置されるシール部材と、このシール部材の中央開口を覆うよう当該シール部材に固定された可変形性を有するシート体とにより構成されており、
シート体、シール部材および感光性スクリーンによって囲まれる密閉空間内が減圧手段によって減圧されることにより、感光性スクリーンと原板とが真空密着されることを特徴とする。
【0011】
本発明の真空密着焼付装置は、光放射用開口を有し、内部に露光用光源が配置された筺体を備えてなり、この筺体には、所定の画像パターンが形成された原板が光放射用開口を覆うよう収容される原板配置用空間を有する原板保持部が設けられており、当該原板保持部には、減圧手段が接続された、前記原板配置用空間に連通する貫通孔が形成されており、
前記原板は、透光性材料からなり、当該原板の側面と原板配置用空間を形成する原板保持部の内周面との間に間隙が形成される状態で、原板保持部によって保持され、
スクリーン枠体に感光性スクリーンが張られてなる感光体材料が当該原板上に載置された状態において、前記間隙を含む、感光性スクリーン、原板および原板保持部によって形成される密閉空間内が減圧されることにより、感光性スクリーンと原板とが真空密着されることを特徴とする。
【0012】
本発明の真空密着焼付装置においては、原板保持部は、弾性体からなり、原板配置用空間を形成する内端面に、光放射用開口の開口縁の周囲に一体に形成された内側突起部を有すると共に、一面における原板配置用空間の開口縁の周囲に一体に形成された外側突起部を有し、
原板が内側突起部に当接されて配置されると共に感光体材料が外側突起部に当接されて配置される構成とされていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る本発明の真空密着焼付装置によれば、感光性スクリーンと原板とを真空密着させる押圧手段が、スクリーン枠体内において、感光性スクリーンの有効領域を囲むよう配置されたシール部材と、このシール部材に固定された可変形性を有するシート体とにより構成されており、シート体、シール部材および感光性スクリーンによって囲まれた密閉空間を減圧手段によって減圧することによって、感光性スクリーンの有効領域をシート体によって押圧し、感光性スクリーンと原板とを真空密着させる構成とされていることにより、シート体による押圧力が加えられるものが感光性スクリーンであり、当該押圧力がスクリーン枠体に対して加えられることがないので、スクリーン枠体に歪みが生ずることに伴って感光性スクリーンに歪みが生じることを防止することができる結果、原板と感光性スクリーンとを高い密着度で密着させることができ、従って、原板の画像パターンを感光性スクリーンに対して正確に焼付けることができる。
しかも、押圧手段が、シール部材およびシート体からなる極めて簡単な構造であり、重量がそれほど大きくないものであるため、透光板が破損するという問題が生ずることがなく、例えばセッティング作業等を容易に行うことができ、優れた作業性を得ることができる。
【0014】
請求項2に係る本発明の真空密着焼付装置によれば、原板が所定の状態で収容される原板配置用空間を有し、当該原板配置用空間に連通する貫通孔が形成された原板保持部が筺体に形成されており、原板の側面と原板保持部の内周面との間に形成される空隙を含む、感光性スクリーン、原板および原板保持部によって囲まれた密閉空間内を減圧することによって、感光性スクリーンと原板とを真空密着させる構成とされていることにより、スクリーン枠体に外力が加えられることがないので、スクリーン枠体に歪みが生ずることに伴って感光性スクリーンに歪みが生じることを防止することができる結果、原板と感光性スクリーンとを高い密着度で密着させることができ、従って、原板の画像パターンを感光性スクリーンに対して正確に焼付けることができる。
しかも、原板として透光性材料からなるものが用いられていることにより透光板が不要となると共に、感光性スクリーンと原板とを密着させるための押圧手段が不要であるので、部品点数を減少させることができ、所定の真空密着焼付装置を有利に製造することができる。
【0015】
請求項3に係る本発明の真空密着焼付装置によれば、原板保持部における内側突起部および外側突起部がシール部材として機能するので、感光性スクリーン、原板および原板保持部によって囲まれる密閉空間を十分に高い気密性を有するものとして形成することができ、感光性スクリーンと原板とを高い密着度で密着させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明について図面を参照して詳細に説明するが、先ず、原板の画像パターンが転写されてスクリーン印刷版とされる感光体材料について説明する。
【0017】
図1は、本発明の真空密着焼付装置において用いられる感光体材料の構成を示す平面図、図2は、図1におけるA−A線の断面図である。
この感光体材料10は、例えば金属よりなる矩形枠状のスクリーン枠体11と、このスクリーン枠体11の他面(図2においては下面)に、スクリーン枠体11の中央開口を覆うよう全面にわたって設けられた感光性スクリーン12とにより構成されている。
感光性スクリーン12は、例えばステンレス鋼よりなる金属メッシュ(スクリーン)の表面に重クロム酸コロイド感光液または感光性樹脂が塗布されて構成されており、感光性スクリーンを構成する感光性樹脂としては、従来より好適に用いられている材料のいずれのものも用いることができる。
【0018】
<第1の実施形態>
図3は、本発明の第1の実施形態に係る真空密着焼付装置の一例における構成の概略を示す説明用断面図である。
この真空密着焼付装置は、全体が箱型形状であって、一面の壁(図3においては上壁)に、透光板25が嵌めこまれる透光板装着部21が形成された筐体20を備えており、この筐体20の内部に、透光板装着部21における内端面の中央位置に形成された光放射用開口22と対向して露光用光源26が配置されている。
【0019】
この真空密着焼付装置においては、所定の画像パターンが形成された原板15を透光板25上に載置し、さらに、上記感光体材料10をその感光性スクリーン12が原板15に当接されるよう原板15上に載置した状態で、感光性スクリーン12と原板15とを真空密着させるが、スクリーン枠体11の中央開口内に収容されて配置され、感光性スクリーン12と原板15とを真空密着させる際に感光性スクリーン12を押圧する押圧手段30を備えている。
上述したように、感光体材料10はスクリーン枠体11に感光性スクリーン12が張られてなるものであるが、この実施例においては、図1および図2に示すように、感光性スクリーン12の、スクリーン枠体11の中央開口を介して外面に露出される枠体内領域における中央部が原板15の画像パターンが焼付けられる有効領域13Aとされると共に、この有効領域13Aの周囲を囲む周縁部がブランク領域13Bとされる。
感光性スクリーンの有効領域13Aの大きさは、例えば枠体内領域の大きさの例えば50%程度とされている。
【0020】
押圧手段30について具体的に説明すると、スクリーン枠体11の中央開口内において、有効領域13Aの周囲を囲むようブランク領域13Bに当接される例えばOリング等の弾性体31およびこの弾性体31が他面に固定された金属製の押圧枠体32よりなるシール部材と、この押圧枠体32の中央開口を覆うよう押圧枠体32の一面(図3において上面)上に全面にわたって設けられた、可変形性を有するシート体34とにより構成されている。
【0021】
押圧枠体32には、その中央開口の内部空間に連通すると共に側面に開口する吸引用貫通孔33が形成されており、この貫通孔33には、例えば真空ポンプなどの減圧手段38が接続されている。
【0022】
シート体34は、ゴム硬度が例えば50〜60であって、大ひずみ弾性特性に優れると共に、引張永久ひずみ性が少ない材質よりなり、このような材質の具体例としては、例えばクロロプレン系もしくはクロロエチレン系の合成ゴム等を例示することができる。
シート体34の厚みは、通常の状態において、例えば1.5〜3.2mmであることが好ましい。これにより、シート体34を、確実に所期の可変形性を有するものとして構成することができる。
【0023】
以下に、上記構成の真空密着焼付装置によるスクリーン印刷版の作製方法について説明する。
先ず、原板15が透光板25上に載置され、更にその上に、感光体材料10がその感光性スクリーン12の他面(スクリーン面)が原板15の一面に当接されるよう載置される。そして、押圧手段30がスクリーン枠体11の中央開口内に収納されて配置される。すなわち、感光性スクリーン12の枠体内領域におけるブランク領域13Bに、一面にシート体34が張られてなると共に他面に弾性体31が固定された押圧枠体32が配置され、これにより、感光性スクリーン12の有効領域13Aの上方に、シート体34、押圧枠体32、弾性体31および感光性スクリーン12によって囲まれた密閉空間S1が形成される。
次いで、押圧枠体32における吸引用貫通孔33に接続された減圧手段38によって、密閉空間S1内の空気が吸引されて減圧されることにより、図4に示すように、シート体34が延伸されてその中央部が感光性スクリーン12の有効領域13Aに密着され、この状態からさらに、シート体34によって有効領域13Aが押圧されて感光性スクリーン12および原板15が透光板25に対して真空密着される。
そして、減圧手段38が作動されたままの状態、すなわち、感光性スクリーン12と原板15とが真空密着された状態が維持された状態において、露光用光源26が点灯され、この露光用光源26からの放射光が透光板25および原板15を介して感光性スクリーン12に照射(露光)されることにより、原板15の画像パターンが感光性スクリーン12の有効領域13Aに焼付けられる。
【0024】
その後、画像パターンの潜像が形成された感光性スクリーンに対して適宜の現像処理が行われることにより、光照射部分のみが現像液に溶解されて、あるいは光照射部分以外の部分のみが現像液に溶解され、これにより、スクリーン印刷版が得られる。
【0025】
上記構成の真空密着焼付装置によれば、感光性スクリーン12と原板15とを真空密着させる押圧手段30が、スクリーン枠体11の中央開口内において、感光性スクリーン12の枠体内領域におけるブランク領域13B上に、弾性体31が介在する状態で、感光性スクリーン12の有効領域13Aを囲むよう配置される押圧枠体32と、この押圧枠体32に設けられたシート体34とにより構成されており、シート体34、弾性体31、押圧枠体32および感光性スクリーン12によって囲まれた密閉空間S1を減圧手段38によって減圧することによって、感光性スクリーン12の有効領域13Aをシート体34によって押圧し、感光性スクリーン12と原板15とを真空密着させる構成とされていることにより、シート体34による押圧力が加えられるものが感光性スクリーン12であり、当該押圧力がスクリーン枠体11に対して加えられることがないので、スクリーン枠体11に歪みが生ずることに伴って感光性スクリーン12に歪みが生じることを防止することができる結果、原板15と感光性スクリーン12とを高い密着度で密着させることができ、従って、原板15の画像パターンを感光性スクリーン12に対して正確に焼付けることができる。
しかも、押圧手段30が、弾性体31、押圧枠体32およびシート体34とからなる極めて簡単な構造であり、重量がそれほど大きくないものであるため、透光板25が破損するという問題が生ずることを確実に防止することができることに加え、例えばセッティング作業等を容易に行うことができ、優れた作業性を得ることができる。
【0026】
<第2の実施形態>
図5は、本発明の第2の実施形態に係る真空密着焼付装置の一例における要部の構成の概略を示す説明用部分断面図である。
この真空密着焼付装置は、全体が箱型形状であって、一面の壁(図5においては上壁)に、原板50が所定の状態で収容されて配置される原板配置用空間を有する原板保持部41が形成された金属製の筐体40を備えており、この筐体40の内部に、原板配置用空間を形成する内端面の中央位置に形成された光放射用開口43と対向して露光用光源(図示せず)が配置されている。
筐体40における原板保持部41には、原板配置用空間に連通すると共に原板保持部41の側面に開口する吸引用貫通孔44が形成されており、この吸引用貫通孔44には、例えば真空ポンプなどの減圧手段(図示せず)が接続されている。
【0027】
この真空密着焼付装置においては、原板50として、例えば石英ガラスなどの透光性材料からなり、例えば一面に所定の画像パターンが形成されてなるものが用いられる。ここに、画像パターンは、例えばクロムもしくはエマルジョンからなる蒸着膜により形成することができる。
原板50は、原板保持部41の原板配置用空間内において、原板50の側面と原板配置用空間を形成する内周面との間に間隙42が形成されると共に、原板50の一面が原板保持部41の一端面(図においては上端面)と同一平面レベルに位置される状態あるいは原板保持部41の一端面の平面レベルより上方のレベル位置に位置される状態で、図示しない原板保持手段によって保持されている。この実施例においては、原板50の他面と原板保持部41の内端面との間に介在する状態で、光放射用開口43の周囲に、弾性体からなる枠状のシール部材45が周設されており、原板50の一面が原板保持部41の一端面の平面レベルより上方のレベル位置に位置された状態とされている。
【0028】
また、原板保持部41の一端面における原板配置用空間の開口縁の周囲に、弾性体からなる枠状のシール部材46が周設されている。
【0029】
このような構成の真空密着焼付装置においては、スクリーン印刷版を作製するに際して、上記感光体材料10がその感光性スクリーン12の他面(スクリーン面)における周縁部分がシール部材46に当接されて載置され、原板50と原板保持部41との間の間隙42を含む、感光性スクリーン12、原板50および原板保持部41によって囲まれた密閉空間S2が形成される。
次いで、原板保持部41における吸引用貫通孔44に接続された減圧手段によって、密閉空間S2内の空気が吸引されて減圧されることにより、図6に示すように、感光体材料10全体が下方に引っ張られてシール部材46が圧潰され、これにより、感光性スクリーン12と原板50とが密着され、この状態からさらに、感光体材料10全体が下方に引っ張られることにより、感光性スクリーン12が原板50に対して真空密着される。
そして、減圧手段が作動されたままの状態、すなわち、感光性スクリーン12と原板50とが真空密着された状態が維持された状態において、露光用光源が点灯され、この露光用光源からの放射光が原板50を介して感光性スクリーン12に照射(露光)されることにより、原板50の画像パターンが感光性スクリーン12に焼付けられる。
その後、画像パターンの潜像が形成された感光性スクリーンに対して適宜の現像処理が行われることにより、光照射部分のみが現像液に溶解されて、あるいは光照射部分以外の部分のみが現像液に溶解され、これにより、スクリーン印刷版が得られる。
【0030】
上記構成の真空密着焼付装置によれば、原板50が所定の状態で収容される原板配置用空間を有し、当該原板配置用空間に連通する吸引用貫通孔44が形成された原板保持部41が筺体40に形成されており、原板50の側面と原板保持部41の内周面との間に形成される間隙42を含む、感光性スクリーン12、原板50および原板保持部41によって囲まれた密閉空間S2内を減圧することによって、感光性スクリーン12と原板50とを真空密着させる構成とされていることにより、感光体材料10におけるスクリーン枠体11それ自体に外力が加えられることがないので、スクリーン枠体11に歪みが生ずることに伴って感光性スクリーン12に歪みが生じることを防止することができる結果、原板50と感光性スクリーン12とを高い密着度で密着させることができ、従って、原板50の画像パターンを感光性スクリーン12に対して正確に焼付けることができる。
しかも、原板50として透光性材料からなるものが用いられていることにより第1実施形態に係るものにおいては必要である透光板が不要となると共に、感光性スクリーン12と原板50とを密着させるための押圧手段が不要となるので、部品点数を減少させることができ、所定の真空密着焼付装置をコスト的に有利に製造することができる。
【0031】
以上、本発明の実施形態について説明したが、第2の実施形態に係る真空密着焼付装置においては、原板保持部とシール部材とが一体に構成されたのものとされていてもよく、この場合には、筐体の本体と原板保持部が別体のものとして構成される。
具体的には、図7に示すように、筐体60として、金属よりなる一方が開口する箱型形状の本体61の開口縁部に、原板保持部を構成する平板状の原板保持部材62が設けられてなるものが用いられ、この原板保持部材62は、弾性体からなり、中央部に原板50が収容される原板配置用空間が形成されている。図7において、63は光放射用開口、64は減圧手段が接続される吸引用貫通孔である。
この原板保持部材62には、原板配置用空間を形成する内端面における光放射用開口63の周囲に内側突起部65が形成されていると共に、一端面における原板配置用空間の開口の周囲に外側突起部66が形成されており、この内側突起部65および外側突起部66がシール部材として機能して、原板50上に載置される感光体材料10における感光性スクリーン12、原板50および原板保持部材62によって囲まれる密閉空間S3の気密性が確保される。
このような構成の真空密着焼付装置によっても、図5に示す構成のものと同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の真空密着焼付装置において用いられる感光体材料の構成を示す平面図である。
【図2】図1におけるA−A線の断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る真空密着焼付装置の一例における構成の概略を示す説明用断面図である。
【図4】図3に示す真空密着焼付装置の、感光性スクリーンおよび原板を透光板に密着させた状態を示す説明用断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る真空密着焼付装置の一例における要部の構成の概略を示す説明用部分断面図である。
【図6】図5に示す真空密着焼付装置の、感光性スクリーンおよび原板を透光板に密着させた状態を示す説明用部分断面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る真空密着焼付装置の他の例における要部の構成の概略を示す説明用部分断面図である。
【図8】従来における真空密着焼付装置の一例における構成の外観を概略的に示す説明図である。
【図9】図8に示す真空密着焼付装置の内部構成を概略的に示す説明用断面図である。
【図10】図8に示す真空密着焼付装置の、感光性スクリーンおよび原板を透光板に密着させた状態を示す説明用断面図である。
【図11】従来における真空密着焼付装置の他の例における構成の概略を示す説明用断面図である。
【図12】図11に示す真空密着焼付装置の、感光性スクリーンおよび原板を透光板に密着させた状態を示す説明用断面図である。
【符号の説明】
【0033】
10 感光体材料
11 スクリーン枠体
12 感光性スクリーン
13A 有効領域
13B ブランク領域
15 原板
20 筐体
21 透光板装着部
22 光放射用開口
25 透光板
26 露光用光源
30 押圧手段
31 弾性体
32 押圧枠体
33 吸引用貫通孔
34 シート体
38 減圧手段
S1 密閉空間
40 筐体
41 原板保持部
42 間隙
43 光放射用開口
44 吸引用貫通孔
45 シール部材
46 シール部材
50 原板
S2 密閉空間
60 筐体
61 本体
62 原板保持部材
63 光放射用開口
64 吸引用貫通孔
65 内側突起部
66 外側突起部
S3 密閉空間
70 筺体
71 露光用光源
72 透光板
75 土手枠
76 枠体
77 弾性シート
78 吸引用貫通孔
79A 蝶番
79B 取っ手
80 原板
85 スクリーン枠体
86 感光性スクリーン
S4 内部空間
90 押圧具
91 本体
92 天板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に露光用光源が配置された筺体と、この筺体に設けられた透光板上に載置される、所定の画像パターンが形成された原板およびスクリーン枠体に感光性スクリーンが張られてなる感光体材料における感光性スクリーンを真空密着させる減圧手段および押圧手段とを備えてなり、
押圧手段は、前記スクリーン枠体内に収容されて、感光性スクリーンにおける原板のパターンが焼付けられるべき有効領域を囲むよう、当該感光性スクリーンに当接されて配置されるシール部材と、このシール部材の中央開口を覆うよう当該シール部材に固定された可変形性を有するシート体とにより構成されており、
シート体、シール部材および感光性スクリーンによって囲まれる密閉空間内が減圧手段によって減圧されることにより、感光性スクリーンと原板とが真空密着されることを特徴とする真空密着焼付装置。
【請求項2】
光放射用開口を有し、内部に露光用光源が配置された筺体を備えてなり、この筺体には、所定の画像パターンが形成された原板が光放射用開口を覆うよう収容される原板配置用空間を有する原板保持部が設けられており、当該原板保持部には、減圧手段が接続された、前記原板配置用空間に連通する貫通孔が形成されており、
前記原板は、透光性材料からなり、当該原板の側面と原板配置用空間を形成する原板保持部の内周面との間に間隙が形成される状態で、原板保持部によって保持され、
スクリーン枠体に感光性スクリーンが張られてなる感光体材料が当該原板上に載置された状態において、前記間隙を含む、感光性スクリーン、原板および原板保持部によって形成される密閉空間内が減圧されることにより、感光性スクリーンと原板とが真空密着されることを特徴とする真空密着焼付装置。
【請求項3】
原板保持部は、弾性体からなり、原板配置用空間を形成する内端面に、光放射用開口の開口縁の周囲に一体に形成された内側突起部を有すると共に、一面における原板配置用空間の開口縁の周囲に一体に形成された外側突起部を有し、
原板が内側突起部に当接されて配置されると共に感光体材料が外側突起部に当接されて配置されることを特徴とする請求項2に記載の真空密着焼付装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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