説明

真空引き兼封止方法、ガス注入兼排気工具、ろう付け排気工具

【課題】大掛かりな設備を用いずに真空二重容器を真空引きし封止する。
【解決手段】内瓶153側に凹んでいる凹部155と、凹部155に設けられ内周面に雌ネジ部157が形成されたポート156とを有する真空二重容器151に対する真空引き及び封止は、ガス注入兼排気工具101をポート156に取り付け、ガス注入兼排気工具101を介して真空二重容器151を真空引きするとともに加熱し(ベーキング工程)、ガス注入兼排気工具101を介して真空二重容器151に不活性なガスを注入し、ガス注入兼排気工具101を真空二重容器151から取り外してポート156にキャップ栓をし、凹部155にろう材を配置してろう付け排気工具301をポート156に取り付け、ガス注入兼排気工具101を介して真空二重容器151を真空引きし、ガス注入兼排気工具101のガラス体308を通してろう材を加熱しポート156を封止することにより実現される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大掛かりな設備を用いずに真空二重容器の真空引きを行なう真空引き兼封止方法、並びに、これに用いられる不活性なガスを注入するためのガス注入兼排気工具、及び、ろう付け排気工具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、魔法瓶の外瓶の外側面と内瓶の内側面とを不活性なガスに晒し、加熱しながら閉空間を真空にし、魔法瓶底面から突出するチップ管を封止することが記載されている。
【0003】
特許文献2には、魔法瓶の内部空間を、加熱して真空にし、魔法瓶底面の凹箇所に設けられた排気孔を、金属板を用いて封止することが記載されている。魔法瓶底面の凹箇所に排気孔を設けることは、特許文献3にも記載されている。
【0004】
特許文献4には、[加熱による吸着ガスの追い出し]→[不活性なガスの封入]→[不活性なガスの追い出し]という工程が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−065393号公報
【特許文献2】特開2004−057675号公報
【特許文献3】特開平11−137451号公報
【特許文献4】特開2004−060852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明者は、巨大な真空部屋の中に真空二重容器を配置して行われる一般的な真空引きの作業工程(特許文献1参照)に疑問を抱き、真空二重容器での真空引きを大掛かりな設備を用いずに手軽に実現したいと考えた。そして、以下のような新たな真空二重容器の真空引き兼封止の作業工程を想定した。
(1)真空二重容器(いわゆる魔法瓶)の容器外側底面に、内側にくぼむような凹みを設け、この凹みに真空引きのポートを設ける。
(2)真空二重容器の外瓶と内瓶との間の空間(閉空間)に水素等が入り込むと、真空二重容器の劣化の要因となる。そこで、アルゴン等の不活性なガスを注入し、閉空間内の水素等の気体分子を追い出すようにし、その後に、閉空間の真空引きを行なってポートを封止する。
【0007】
ここで、大掛かりな設備を用いずに上記のような作業工程を進めるにあたり、ポートに対して、[1]不活性なガスを注入するための工具(ガス注入兼排気工具)、[2]真空引きのための工具(ろう付け排気工具)を手作業で着脱できるようにできるようなことが重要である。
【0008】
本発明の目的は、大掛かりな設備を用いずに真空二重容器を真空引きし封止することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の真空引き兼封止方法は、外瓶と内瓶とからなり、外瓶に設けられ内瓶側に凹んでいる凹部と、内瓶から離反する方向に凹部から突出する第1部分と内瓶から近づく方向に凹部から突出する第2部分との少なくともいずれかを有するポートと、ポートの内周面に形成される雌ネジ部とを有する真空二重容器に対して行なう真空引き兼封止方法であって、(a)ガス源が着脱自在に取り付けられる取付部と、前記ガス源からのガスが通過するガス流路とを含むガス噴出部と、(b)前記ポートの雌ネジ部に螺合自在の連結用雄ネジ部と、前記連結用雄ネジ部の端部から延びる通気路とを含むコネクタ部と、(c)前記ガス流路と前記通気路とが連通するように前記ガス噴出部と前記コネクタ部とを連結する操作部とを備えるガス注入兼排気工具を、前記ポートに取り付ける第1取付工程と、前記第1取付工程に続いて、前記ガス注入兼排気工具を介して前記真空二重容器を真空引きするとともに加熱するベーキング工程と、前記ベーキング工程に続いて、前記ガス注入兼排気工具を介して前記真空二重容器に不活性なガスを注入する注入工程と、前記注入工程に続いて、前記ガス注入兼排気工具を前記真空二重容器から取り外し、前記ポートにキャップ栓をするキャップ工程と、前記キャップ工程に続いて、前記凹部にろう材を配置し、(p)真空ポンプにより吸引するための吸引路と、(q)前記吸引路と前記ポートとを繋ぐ連絡路と、(r)前記連絡路と前記ポートとの連通する際の漏れを防ぐシール部と、(s)前記連絡路の外壁の一部を構成し、連絡路内に配置されたろう材を溶融させるための光を透過させる透光部とを備えるろう付け排気工具を、前記ポートに取り付ける第2取付工程と、前記第2取付工程に続いて、前記ガス注入兼排気工具を介して前記真空二重容器を真空引きする真空引き工程と、前記真空引き工程に続いて、前記ガス注入兼排気工具の透光部を通して前記ろう材を加熱し、前記ポートを封止するろう付け工程と、を備える。
【0010】
本発明のガス注入兼排気工具は、外瓶と内瓶とからなり、外瓶に設けられ内瓶側に凹んでいる凹部と、内瓶から離反する方向に凹部から突出する第1部分と内瓶から近づく方向に凹部から突出する第2部分との少なくともいずれかを有するポートと、ポートの内周面に形成される雌ネジ部とを有する真空二重容器に対して用いられるガス注入兼排気工具であって、ガス源が着脱自在に取り付けられる取付部と、前記ガス源からのガスが通過するガス流路とを含むガス噴出部と、前記ポートの雌ネジ部に螺合自在の連結用雄ネジ部と、前記連結用雄ネジ部の端部から延びる通気路とを含むコネクタ部と、前記ガス流路と前記通気路とが連通するように前記ガス噴出部と前記コネクタ部とを連結する操作部と、を備える。
【0011】
本発明のろう付け排気工具は、外瓶と内瓶とからなり、外瓶に設けられ内瓶側に凹んでいる凹部と、内瓶から離反する方向に凹部から突出する第1部分と内瓶から近づく方向に凹部から突出する第2部分との少なくともいずれかを有するポートと、ポートの内周面に形成される雌ネジ部とを有する真空二重容器に対して用いられるろう付け排気工具であって、真空ポンプにより吸引するための吸引路と、前記吸引路と前記ポートとを繋ぐ連絡路と、前記連絡路と前記ポートとの連通する際の漏れを防ぐシール部と、前記連絡路の外壁の一部を構成し、連絡路内に配置されたろう材を溶融させるための光を透過させる透光部と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、大掛かりな設備を用いずに真空二重容器を真空引きし封止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】ガス注入兼排気工具の正面図である。
【図2】ガス注入兼排気工具及び真空二重容器の断面図である。
【図3】ガス噴出治具及び可動治具の分解斜視図である。
【図4】コネクタ治具の分解斜視図である。
【図5】コネクタ治具を真空二重容器に取り付けた状態での断面図である。
【図6】ガス噴出治具を真空二重容器に取り付けた状態での断面図である。
【図7】真空引き工具の平面図である。
【図8】図7のC−C線断面図である。
【図9】ろう付け排気工具の分解斜視図である。
【図10】フランジ材の平面図である。
【図11】フランジ材を示す、図7のK矢視図である。
【図12】蓋材の底面図である。
【図13】真空引き兼封止システムの配管図である。
【図14】真空引き兼封止方法の流れを示すフローチャートである。
【図15】図14に続く、真空引き兼封止方法の流れを示すフローチャートである。
【図16】図15に続く、真空引き兼封止方法の流れを示すフローチャートである。
【図17】図16に続く、真空引き兼封止方法の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明者が考えた、真空二重容器の真空引き兼封止の作業工程の概要は、以下のとおりである。
(1)真空二重容器(いわゆる魔法瓶)の容器外側底面に、内側にくぼむような凹みを設け、この凹みに真空引きのポートを設ける。
(2)真空二重容器の外瓶と内瓶との間の空間(閉空間)に水素等が入り込むと、真空二重容器の劣化の要因となる。そこで、アルゴン等の不活性なガスを注入し、閉空間内の水素等の気体分子を追い出すようにし、その後に、閉空間の真空引きを行なってポートを封止する。
【0015】
発明者が考えた上記の作業工程では、ポートに対して、[1]不活性なガスを注入するための工具(ガス注入兼排気工具)、[2]真空引きのための工具(ろう付け排気工具)を手作業で着脱することになる。本実施の形態では、まず、概要を述べ、ガス注入兼排気工具101について述べ、次に、ろう付け排気工具301について述べ、最後に、ガス注入兼排気工具101及びろう付け排気工具301を用いた真空引き兼封止方法について述べる。
【0016】
実施の一形態を、図1ないし図17に基づいて説明する。
【0017】
[概要]
まず、図1及び図2に基づいて、本実施の形態の概要を述べる。ここでは、真空二重容器151についても述べる。図1は、ガス注入兼排気工具101の正面図である。図2は、ガス注入兼排気工具101及び真空二重容器151の断面図である。真空二重容器151は、外瓶152と、この外瓶152内に収容された内瓶153とからなる。外瓶152や内瓶153は、一例として、SUS304のようなステンレス鋼から構成される。外瓶152と内瓶153とはそれぞれの口部(いずれも図示せず)が互いに接合されており、外瓶152と内瓶153との間に内部空間154が形成される。また、内瓶153の外周には、輻射防止用の銅箔(図示せず)が巻きつけられる。なお、内部空間154に、ゲッター材(図示せず)が配置される。
【0018】
本実施の形態では、真空二重容器151は、その開口側(図示せず)を下側に向けて作業台等に載置され、真空二重容器151の底面154Aを上方に向けられる。外瓶152には、底面154Aから内瓶153側に凹んだ凹部155が設けられる。凹部155からは、真空二重容器151の外側に向けて、ポート156が突出する。ポート156の先端は、底面154Aのなす面よりも外側に突出していない。ポート156の内周面には、雌ネジ部157が設けられる。
【0019】
なお、別の実施の形態として、ポート156が、凹部155から真空二重容器151の内瓶153側に向けて内部空間154内に突出するようにしてもよい。
【0020】
さらに別の実施の形態として、ポート156が、凹部155から真空二重容器151の外側に向かう部分と、凹部155から真空二重容器151の内瓶153側に向けて内部空間154内に突出する部分とを有していても良い。
【0021】
本実施の形態では、このような真空二重容器151に対して、ガス注入兼排気工具101をポート156に取り付け、ガス注入兼排気工具101を介して真空二重容器151を真空引きするとともに加熱し(ベーキング工程)、ガス注入兼排気工具101を介して真空二重容器151に不活性なガスを注入し、ガス注入兼排気工具101を真空二重容器151から取り外してポート156にキャップ栓をし、凹部155にろう材を配置してろう付け排気工具301(図7等参照)をポート156に取り付け、ガス注入兼排気工具101を介して真空二重容器151を断熱効果を得るための所定の真空度となるまで真空引きし、ガス注入兼排気工具101のガラス体308を通してろう材を加熱しポート156を封止することにより、大掛かりな設備を用いずに真空二重容器を真空引きし封止する。このような工程の概要は、図13〜図17に基づいて後述する。
【0022】
[ガス注入兼排気工具]
以下、図1〜図6に基づいて、ガス注入兼排気工具101について述べる。まず、図1及び図2を参照する。ガス注入兼排気工具101は、ベーキング工程(後述)に耐えうることができる程度に耐熱性を有した鉄、ニッケル、ステンレス鋼等の金属素材で形成される。ガス注入兼排気工具101は、ガス噴出部としてのガス噴出治具102と、コネクタ部としてのコネクタ治具103と、操作部としての可動治具104とを有する。また、ガス注入兼排気工具101を真空二重容器151のポートに連結するために、第1ガスケット105と、第2ガスケット106とが用いられる。第1ガスケット105及び第2ガスケット106は、いずれも、リング形状の平板である。第1ガスケット105及び第2ガスケット106は、無酸素銅で形成されることが好ましい。
【0023】
図3は、ガス噴出治具102及び可動治具104の分解斜視図である。図1、図2及び図3を参照する。ガス噴出治具102は、治具本体111に封止部材112を溶接等により固定取付して構成される。
【0024】
治具本体111は、金属素材で形成される部材である。治具本体111は、長尺の円筒部113を有する。円筒部113の一方の端面からは、先細部114が突出する。円筒部113の他方の端面には、アルゴンガスや窒素、二酸化炭素等の不活性なガスのガス源(図13参照)を取り付けたり取り外したりすることができる取付部115が設けられる。治具本体111には、取付部115と円筒部113と先細部114とのいずれをも貫通するように治具本体111の長さ方向に延びるガス流路116が形成される。ガス流路116の内径は、ボルト体121のボルト頭129(図4等参照)よりも大きいことが望ましい。また、封止部材112は、金属素材で形成され短筒形状をなす。封止部材112の内径は、円筒部113の外径と同じである。
【0025】
可動治具104は、金属の部材で形成され、短筒形状をなす。可動治具104の一方の端面には、円筒部113の外周に嵌り込む嵌合孔117を有してそれより外側を閉じる封止部118が形成される。可動治具104の他方の端面は嵌合孔117よりも大きく開口しており、可動治具104の内周には、円柱治具122の雄ネジ部123(図4も参照)に螺合する雌ネジ部119が形成される。円筒部113の外周には、円筒部113の長さ方向に延びる平面部120が、円筒部113を断面視で見たときに対称なる二箇所に設けられる。
【0026】
ガス噴出治具102は、以下のようにして形成される。まず、可動治具104を嵌合孔117に円筒部113を嵌め込むことで、円筒部113の外周に位置付ける。続いて、封止部材112を、円筒部113の外周で先細部114側の端部に位置揃えされるように嵌挿させる。続いて、封止部材112と円筒部113とを溶接等により固定する。これにより、可動治具104は、円筒部113の長さ方向にスライド自在となり、さらに、円筒部113の周回り方向に回転自在となりつつも、取付部115と封止部材112とによって可動治具104から脱落しないようになる。ここに、封止部材112は、抜止部としての役割を果たす。
【0027】
図4は、コネクタ治具103の分解斜視図である。図1、図2及び図4を参照する。コネクタ治具103は、ボルト体121を円柱治具122に組み付けて構成される。
【0028】
円柱治具122は、金属素材で形成され、円柱状をなし、縁部分が面取りされている。円柱治具122の外周には、可動治具104の雌ネジ部119が螺合する雄ネジ部123と、円柱治具122の長さ方向に延びる平面部124とが形成される。平面部124は、円柱治具122を断面視で見たときに対称なる二箇所に設けられる。円柱治具122の一方の端部には、ガス噴出治具102の先細部114(図3も参照)が入り込む第1挿入孔125が形成される。第1挿入孔125には、第2ガスケット106(図2、図5、図6参照)やボルト体121も挿入される。また、円柱治具122の他方の端部には、真空二重容器151のポート156が入り込む第2挿入孔126が形成される。また、円柱治具122には、その軸芯に沿って、第1挿入孔125と第2挿入孔126とを貫通する雌ネジ孔127が設けられる。
【0029】
ボルト体121は、円柱治具122の雌ネジ孔127に螺合するボルト軸128と、ボルト軸128の端部に位置するボルト頭129とを有する。ボルト頭129は、図4に示すように、短い円柱状をなしていてもよいが、短い角柱状(例えば、六角柱状)をなしていてもよい。ボルト頭129の端面には、六角レンチ(図示せず)を挿入させてボルト体121を雌ネジ孔127に螺合させるためのレンチ孔130が形成される。ボルト体121では、レンチ孔130からボルト軸128の軸芯に沿って延びボルト軸128の先端に開口する通気路131が設けられる。
【0030】
コネクタ治具103は、平面部124の第1挿入孔125に、ボルト体121をボルト軸128側から挿入し、ボルト軸128を雌ネジ孔127に螺合させ、雌ネジ孔127の先端を円柱治具122の第2挿入孔126側の端面よりも外側に突出させる。ボルト体121を雌ネジ孔127に螺合させる際には、六角レンチ(図示せず)を第1挿入孔125から導入し、六角レンチの先端(図示せず)をレンチ孔130に嵌め込んで、六角レンチの把持部分(図示せず)を旋回させるようにする。この際、必ずしも、ボルト頭129を第1挿入孔125の内底面に接触させるまでボルト体121を締め込む必要はない。
【0031】
以下、図5、図6及び図2に基づいて、ガス注入兼排気工具101を真空二重容器151に取り付ける手順を述べる。図5は、コネクタ治具103を真空二重容器151に取り付けた状態での断面図である。まず、作業者は、真空二重容器151を、その開口側(図示せず)を下側に向けて作業台等に載置し、凹部155を上方に位置付け、ポート156が上方に突出するようにする。続いて、作業者は、第1ガスケット105を凹部155に載置して、第1ガスケット105の内側にポート156が位置付けられるようにする。続いて、作業者は、円柱治具122から突出するボルト軸128の先端を、ポート156内の雌ネジ部157に螺合させる。ここに、ボルト軸128は、連結用雄ネジ部としての役割を果たす。このとき、作業者は、円柱治具122に設けられた二つの平面部124を手で挟み込むことにより、容易に円柱治具122を回転させることができる。
【0032】
図6は、ガス噴出治具102を真空二重容器151に取り付けた状態での断面図である。図5に示した状態に続いて、作業者は、第1挿入孔125の内周面とボルト頭129の外周面との間に形成された隙間S(図5参照)に、第2ガスケット106を配置する。第1挿入孔125は上方に開口しており、作業者は、第2ガスケット106を第1挿入孔125に投げ込めばよい。続いて、作業者は、可動治具104を手に持って先細部114と封止部材112とが露出するように可動治具104を上方に持ち上げ、円筒部113から突出する先細部114の先端を第1挿入孔125から挿入し、先細部114の端面を第2ガスケット106に接触させる。これにより、第1ガスケット105は、凹部155の内底面と円柱治具122の端面とに強固に挟まれる。
【0033】
再び、図2を参照する。図5に示した状態に続いて、作業者は、可動治具104を下方に動かして、雌ネジ部119を円柱治具122の雄ネジ部123に螺合させる。このとき、作業者は、可動治具104に設けられた二つの平面部120を手で挟み込むことにより、容易に可動治具104を回転させることができる。可動治具104が下方に動くと、可動治具104の内底面が封止部材112の上面を下方に押す。これに伴って、円筒部113は下方に動き、第2ガスケット106が第1挿入孔125の内底面と先細部114の端面との間に強固に挟まれる。
【0034】
以上に述べた手順を踏むことにより、ガス注入兼排気工具101は真空二重容器151に取り付けられ、ガス流路116と通気路131とポート156と真空二重容器151の内部空間154とがエア漏れすることなく連通する。
【0035】
ガス注入兼排気工具101を真空二重容器151に取り付けた状態で、作業者が、真空二重容器151とガス注入兼排気工具101の一部分(例えば、コネクタ治具103、可動治具104、及び、円筒部113におけるコネクタ治具103側の部分)を加熱炉に入れ、真空ポンプ(図13参照)を駆動するとともに、真空二重容器151を加熱する(ベーキング工程)ことで、真空二重容器151の内部空間154の内部や、外瓶152や内瓶153での内部空間154側の内周面に含まれている水分や油分が、ポート156、通気路131、ガス流路116の順に通過して排出され、結果として、外瓶152や内瓶153での外側表面及び内部空間154側の内周面の酸化被膜形成を防止することができる。その後、バルブ(図13参照)を切り替えて、ガス源(図13参照)からの不活性なガス(例えば、アルゴンガス)を真空二重容器151の内部空間154内に送り込むことができる。
【0036】
このように、真空二重容器151のポート156の内周面に形成される雌ネジ部157に対してボルト体121のボルト軸128を螺合させることで、真空二重容器151での内部空間154の真空引きを行ったり、内部空間154に不活性なガスを送り込んだりすることが可能になる。
【0037】
なお、コネクタ治具103を真空二重容器151のポート156から取り外す際、作業者は、上記とは逆の手順で作業を進めることになる。即ち、可動治具104を回してコネクタ治具103から外し、可動治具104を上方に持ち上げ、その状態でコネクタ治具103を回してコネクタ治具103でのボルト軸128の先端をポート156の雌ネジ部157から外す。
【0038】
[ろう付け排気工具]
以下、図7〜図12に基づいて、ろう付け排気工具301について述べる。図7は、ろう付け排気工具301の平面図である。図8は、図7のC−C線断面図である。図9は、ろう付け排気工具301の分解斜視図である。図10は、フランジ材303の平面図である。図11は、フランジ材303を示す、図7のK矢視図である。図12は、蓋材302の底面図である。
【0039】
ろう付け排気工具301は、蓋材302と、フランジ材303と、真空ノズル304と、第1冷却水ノズル305と、第2冷却水ノズル306と、シール部としての封止用Oリング307と、透光部としてのガラス体308と、シール材309とを有する。一例として、蓋材302とフランジ材303と、真空ノズル304と、第1冷却水ノズル305と、第2冷却水ノズル306とは、SUS304のステンレス鋼により形成される。
【0040】
図8、図9、図10及び図11を参照し、フランジ材303について説明する。フランジ材303は、円板状をなしている。フランジ材303の中心には、その上面311から下面312に向かうにつれて窄まるテーパ孔部313と、このテーパ孔部313の下端部から下面312に向けて円柱状に開口する円柱孔部314とが開口している。
【0041】
フランジ材303において、円柱孔部314の下縁からは、真空二重容器151の凹部155に嵌り込むリング状の係合部315が突出している。フランジ材303の下面312には、係合部315と同心円状に設けられるOリング溝316が設けられる。Oリング溝316には、封止用Oリング307が嵌め込まれる。封止用Oリング307は、一例として、フッ素化ゴムから形成される。
【0042】
フランジ材303において、テーパ孔部313の中腹からは、吸引路317が、フランジ材303の側面に向かって上面311や下面312と平行に放射状に延びている。ここで、テーパ孔部313と円柱孔部314とは、特許請求の範囲で言うところの「連絡路」を構成する。そして、ガラス体308は、この連絡路の外壁の一部を構成することになる。
【0043】
フランジ材303の上面311には、段部318が形成されている。この段部318は、テーパ孔部313の上縁から円形の外側方向に少々の余白をリング状に残し、このリング状部分を下面312に段状に下がった形状をなしている。段部318には、平面視にてテーパ孔部313や円柱孔部314と同心円状に延びる、平面視「C」字状の流水溝319が設けられる。流水溝319は、吸引路317に連通していない。流水溝319の両端部のそれぞれからは、第1流水路320と第2流水路とが、フランジ材303の側面に向かって上面311や下面312と平行に放射状に延びている。
【0044】
図7、図8、図9、図10及び図11を参照し、真空ノズル304、第1冷却水ノズル305及び第2冷却水ノズル306について述べる。真空ノズル304は、筒状の部材である。真空ノズル304の一端側は先細となって、フランジ材303の側面に開口する吸引路317に連通するように溶接取付される。真空ノズル304の他端側には、雌ネジ部321が形成される。この雌ネジ部321には、真空引用パイプ(図示せず)が螺合取付される。第1冷却水ノズル305は、真空ノズル304と同様の構造を有し、筒状の部材であって、その一端側は先細となって、フランジ材303の側面に開口する第1流水路320に連通するように溶接取付され、他端側には雌ネジ部が形成される。第2冷却水ノズル306は、真空ノズル304や第1冷却水ノズル305と同様の構造を有し、筒状の部材であって、その一端側は先細となって、フランジ材303の側面に開口する雌ネジ部321に連通するように溶接取付され、他端側には雌ネジ部が形成される。
【0045】
図7、図8、図9及び図12を参照し、蓋材302について述べる。蓋材302は、リング状の平板である。蓋材302の下面322は、図8に示すように、フランジ材303の段部318に嵌り込む。蓋材302の下面322には、逃がし溝323が、フランジ材303の流水溝319の外周縁に沿うように延びている。逃がし溝323は、流水溝319を水が流れる際の空気の逃げ道等になる。
【0046】
蓋材302の中心には、その上面324から下面322にかけて、円柱状に開口する中心孔部325が開口している。蓋材302の上面324には、円盤状のガラス体308が嵌り込むガラス嵌込部326が形成される。ガラス嵌込部326は、蓋材302の上面324よりも下面322側に落ち込んでおり、平面視において中心孔部325と同心円状に広がる。ガラス嵌込部326の外周には、下面322側に凹んで形成されるシール材溝327が設けられる。シール材溝327には、シール材309が嵌めこまれる。シール材309は、蓋材302とガラス嵌込部326に嵌挿されたガラス体308との間に挟まれる。シール材309は、一例として、フッ素化ゴムから形成される。
【0047】
ろう付け排気工具301は、フランジ材303の段部318と、蓋材302の下面322とを接しさせた状態で、蓋材302とフランジ材303とを溶接して結合することにより構成される。
【0048】
以下、図8に基づいて、ろう付け排気工具301を用いて真空二重容器151のポート156をろう付けする手順を述べる。ろう付け作業の前提として、真空二重容器151では、図14〜図17に示される工程によって、真空二重容器151のポート156にキャップ栓(図15参照)が嵌められて不活性なガスがポート156から漏れ出さないようになっているものとする。また、ろう付け排気工具301の真空ノズル304の雌ネジ部321には、真空ポンプ(図示せず)に繋がるパイプ(図示せず)が、Oリング(図示せず)を介して螺合されているものとする。また、ろう付け排気工具301の第1冷却水ノズル305及び第2冷却水ノズル306のそれぞれには、流水ポンプ(図示せず)に繋がるパイプ(図示せず)が、シール材(図示せず)を介して螺合されているものとする。
【0049】
作業者は、まず、真空二重容器151の凹部155にろう材(図16参照)を載置する。続いて、作業者は、真空二重容器151のポート156に嵌められているキャップ栓を取り外し、その直後に、ろう付け排気工具301の係合部315を真空二重容器151の凹部155に嵌め込み、封止用Oリング307を真空二重容器151の底面154Aに押しあてて、この状態で真空ポンプを駆動する。これにより、真空二重容器151の内部空間154内の不活性なガスが、ポート156、円柱孔部314、テーパ孔部313、吸引路317を通り、真空ノズル304を経て、真空ポンプに吸引される。ここで、封止用Oリング307は、円柱孔部314とポート156とを連通する際の漏れを防ぐ。吸引圧による負圧により、このとき、ガラス体308は、真空二重容器151側に強く吸い寄せられ、シール材309によるろう付け排気工具301の内外の密閉が確実になる。
【0050】
続いて、作業者は、光源を用いて、光源からの光を、ガラス体308を通して、凹部155に載置されたろう材に当てる。光源には、近赤外線ヒーターの点集光タイプのものを用い、光源をろう材に照射することにより、ろう材が溶融し、ポートが封止される。このとき、作業者は、水流ポンプを駆動させて流水溝319内に流水を通過させる。これにより、蓋材302やフランジ材303、封止用Oリング307、ガラス体308、シール材309等の熔解や破損、さらには、ろう付け排気工具301が接する真空二重容器151(特にその外瓶152で凹部155の近傍)の熱による歪曲を防ぐことができる。
【0051】
続いて、作業者は、ろう付け排気工具301を持ち上げてろう付け排気工具301を真空二重容器151から離反させる。
【0052】
真空二重容器151の内部空間154が不活性なガスで満たされた後では、作業者は、加熱炉(図13参照)の外でも、不活性なガスの真空引きの作業とポート156の封止の作業とを行なうことができ、しかもこれらを一度に行なうことができる。即ち、ベーキング工程を終え、ポート156がキャップ栓で閉じられている状態の真空二重容器151をろう付け排気工具301に取り付け、そこで真空ポンプ(図13参照)を駆動して真空二重容器151の内部空間154内の不活性なガス(例えば、アルゴンガス)を真空引きし、その後、真空ポンプを停止したりバルブ(図13参照)を閉じたりして、光源でろう材を溶融にすることで、ポート156を封止できる。その後、作業者は、真空二重容器151からろう付け排気工具301を取り外すことになる。
【0053】
[真空引き兼封止方法]
これまでに述べたガス注入兼排気工具101及びろう付け排気工具301を用いて行なう真空二重容器151の真空引き兼封止方法について述べる。図13は、真空引き兼封止システムの配管図である。図14〜図17は、真空引き兼封止方法の流れを示すフローチャートである。図13において、ガス注入兼排気工具101は「ベーキング用真空排気工具」として示されることがあり、ろう付け排気工具301は「ろう付け用真空排気工具」として示されることがあり、真空二重容器151は「ワーク」として示されることがあり、光源は「集光ヒーター」として示されることがある。これらの表記は、図14〜図17でも用いられることがある。
【0054】
本実施の形態で述べる真空引き兼封止方法は、上述したような、外瓶152と内瓶153とからなり、外瓶152に設けられ内瓶153側に凹んでいる凹部155と、内瓶153から離反する方向に凹部155から突出するポート156と、ポート156の内周面に形成される雌ネジ部157とを有する真空二重容器151に対して行なうものであり、
(A)ガス注入兼排気工具101を、ポート156に取り付ける工程(第1取付工程)と、
(B)第1取付工程に続いて、ガス注入兼排気工具101を介して真空二重容器151を真空引きするとともに加熱する工程(ベーキング工程)と、
(C)ベーキング工程に続いて、ガス注入兼排気工具101を介して真空二重容器151にアルゴンガス等の不活性なガスを注入する工程(注入工程)と、
(D)注入工程に続いて、ガス注入兼排気工具101を真空二重容器151から取り外し、ポート156にキャップ栓をする工程(キャップ工程)と、
(E)キャップ工程に続いて、凹部155にろう材を配置し、ろう付け排気工具301をポート156に取り付ける工程(第2取付工程)と、
(F)第2取付工程に続いて、ガス注入兼排気工具101を介して真空二重容器151を真空引きする工程(真空引き工程)と、
(G)真空引き工程に続いて、ガス注入兼排気工具101のガラス体308を通してろう材を加熱し、ポート156を封止する工程(ろう付け工程)と、
を含んでいる。真空引き兼封止方法の詳細は、図14〜図17に沿って示す。このような真空引き兼封止方法によれば、大掛かりな設備を用いずに真空二重容器を真空引きし封止することができる。
【0055】
上記のような真空引き兼封止方法を想到するに至るまでの発明者の考え、及び、発明者が重視した考えを以下に述べる。
【0056】
発明者は、真空断熱の2重容器を作成するに当たり、構想の段階で目指したものが5つあった。一つ目は、封止ポートを再利用可能なものにすることであった。これは、小規模な会社・製造現場で完成する手前で不良品が多く出た場合に、修正対応可能な手段がないとコスト増や後処理増等の問題が生じる可能性がある為である。この点、本実施の形態では、ポートがネジ式になっているために、もし失敗しても同じかそれ以上大きいサイズのネジをろう材もろとも開けてしまえば不適合製品を修正することができる。
【0057】
二つ目は、真空二重容器を多品種少量でも生産可能にすることであった。即ち、短時間で工具の脱着を行うことができ、且つワークの大きさや形状を問わずにベーキングしたり、封止したりできることが必要であった。通常は、炉の中に製品を入れてベーキング処理を行うが、もし製品の大きさが自由の女神のように巨大な大きさであっても、ラバーヒーターと断熱材さえ周囲に巻いてしまえば、真空断熱容器は作成可能となる。しかも、プロセスは全く同じままに作業が可能である。
【0058】
三つ目は、真空二重容器を、確実に高真空状態を維持した状態で封止できたかどうかを確認できるかということであった。通常、低真空で真空引きしたのちにゲッター材(内部に入れて加熱すると真空ポンプと同等の働きをするもので、例えば、気体を吸着するチタン、ジルコニウムなどの酸化化合物である)を入れ、内部の真空状態を維持することが行われる。この場合、真空断熱の性能を上げるためには封止段階での高真空状態を確認する必要がある。本実施の形態でも、ゲッターを使用するが、ゲッターの吸着する気体の量には限りがあるという実情から、本実施の形態では、封止段階での高真空状態を確認し、断熱性能・品質の向上を確認するようにしている。
【0059】
四つ目は、高温環境下で、真空二重容器の性能を維持できるようにすることであり、その為の、封止するろう材の溶融温度が極力高温のものでも使用できる封止工具と、ろう付け時の高温で歪まない封止ポートとの検討であった。周知の通り、18−8ステンレスは、一度熱による歪が発生した場合、元の状態に修正することが非常に困難である。本実施の形態において、真空二重容器の封止ポートが凹凸構造になっていることの理由の1つは、封止ポート周辺がろう付け排気工具によってきちんと水冷され、歪みが発生しないようにするためである。理由の2つ目は、ろう付け排気工具と真空二重容器の真空を維持している封止用Oリング(フッ素化ゴム)に熱損傷を与えないためである。その為、ろう付け排気工具と真空二重容器の封止ポートはインローになっている。
【0060】
ろう付け排気工具に関しては、特開平10−295561号公報に記載の真空構造体の排気装置の有する、封止の際のシールパッキンが高温に耐えられずに、低い温度で溶融するろう材を選択する必要があるという課題を、本実施の形態のろう付け排気工具では、水冷により工具の温度を下げることができること、光の入射角に沿った形状をしていること(図16参照)で、高温で溶融するロウ材を使用できるように解決している。このことにより、本実施の形態の真空二重容器は、その所定温度以下の使用環境であれば、封止しているろう材が溶融することがなく、内部の温度を保温することができる。この点、将来、高温環境下に設置するデバイスを高温から保護するのに役に立つことが考えられる。
【0061】
本実施の形態のろう付け排気工具は、水冷箇所が2重容器の外板と接触する構造になっており、熱による歪みを最小限に抑え、高温で溶融するろう材を使用できる。
【0062】
五つ目は、真空二重容器の封止ポートが、外側に出っ張らないようにすることであった。封止ポートは、真空二重容器の底面に位置するために、もし出っ張ってしまうと底面に全体を覆うカバーのようなものが必要になってしまう。というのも、出っ張り部分がコマの足、ヤジロベエの足のようになって、真空二重容器を安定して載置することができなくなってしまうからである。本実施の形態のように、ベーキング用排気工具(ガス注入兼排気工具)に中空のネジを使用することで、封止ポートにネジを作ることが出来れば容易に真空引きできる構造になっているが、その時は必ず封止ポートの上端が底面よりも凹でなければならない。本実施の形態では、ネジ部分が外側に凸になっているが、もちろん内側に凸にすることも可能である。
【0063】
発明者は、さらに、以下の点を主張する。本実施の形態では、真空二重容器の封止する手段として、ろう付けを採用している。ろう付けは、真空二重容器を封止する上で有利である。真空二重容器の封止方法としては、ろう付けの他に、溶接、ガスケットによる封止が考えられる。溶接では、封止ポートの構造が重要だが、コストが安く大量生産にも対応できる。真空炉の中で封止するのに最適といえる。ただし、多額の設備投資を要する。他方、ガスケットによる封止では、コストは安いが、真空漏れが頻発し信頼性に欠けるといえる。例えば、研究室などで使われる測定器などでは多く使われており、数年に一度は再度真空引きをする必要が出てくるという実情がある。この点、ろう付けによる封止では、封止ポートの構造が重要だが、コストが安く大量生産にも対応でき、真空炉の外で封止するのにも最適といえ、コストは高くならない。
【符号の説明】
【0064】
101 ガス注入兼排気工具
102 ガス噴出治具(ガス噴出部)
103 コネクタ治具(コネクタ部)
104 可動治具(操作部)
105 第1ガスケット
106 第2ガスケット
112 封止部材(抜止部)
115 取付部
116 ガス流路
119 雌ネジ部
123 雄ネジ部
128 ボルト軸(連結用雄ネジ部)
131 通気路
151 真空二重容器
152 外瓶
153 内瓶
154 内部空間
155 凹部
156 ポート
157 雌ネジ部
301 ろう付け排気工具
307 封止用Oリング(シール部)
308 ガラス体(透光部)
313 テーパ孔部(連絡路)
314 円柱孔部(連絡路)
317 吸引路
319 流水溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外瓶と内瓶とからなり、外瓶に設けられ内瓶側に凹んでいる凹部と、内瓶から離反する方向に凹部から突出する第1部分と内瓶から近づく方向に凹部から突出する第2部分との少なくともいずれかを有するポートと、ポートの内周面に形成される雌ネジ部とを有する真空二重容器に対して行なう真空引き兼封止方法であって、
(a)ガス源が着脱自在に取り付けられる取付部と、前記ガス源からのガスが通過するガス流路とを含むガス噴出部と、(b)前記ポートの雌ネジ部に螺合自在の連結用雄ネジ部と、前記連結用雄ネジ部の端部から延びる通気路とを含むコネクタ部と、(c)前記ガス流路と前記通気路とが連通するように前記ガス噴出部と前記コネクタ部とを連結する操作部とを備えるガス注入兼排気工具を、前記ポートに取り付ける第1取付工程と、
前記第1取付工程に続いて、前記ガス注入兼排気工具を介して前記真空二重容器を真空引きするとともに加熱するベーキング工程と、
前記ベーキング工程に続いて、前記ガス注入兼排気工具を介して前記真空二重容器に不活性なガスを注入する注入工程と、
前記注入工程に続いて、前記ガス注入兼排気工具を前記真空二重容器から取り外し、前記ポートにキャップ栓をするキャップ工程と、
前記キャップ工程に続いて、前記凹部にろう材を配置し、(p)真空ポンプにより吸引するための吸引路と、(q)前記吸引路と前記ポートとを繋ぐ連絡路と、(r)前記連絡路と前記ポートとの連通する際の漏れを防ぐシール部と、(s)前記連絡路の外壁の一部を構成し、連絡路内に配置されたろう材を溶融させるための光を透過させる透光部とを備えるろう付け排気工具を、前記ポートに取り付ける第2取付工程と、
前記第2取付工程に続いて、前記ガス注入兼排気工具を介して前記真空二重容器を真空引きする真空引き工程と、
前記真空引き工程に続いて、前記ガス注入兼排気工具の透光部を通して前記ろう材を加熱し、前記ポートを封止するろう付け工程と、
を備える、真空引き兼封止方法。
【請求項2】
前記ろう付け工程では、前記ガス注入兼排気工具を水冷しながら前記ろう材を加熱する、
請求項1記載の真空引き兼封止方法。
【請求項3】
外瓶と内瓶とからなり、外瓶に設けられ内瓶側に凹んでいる凹部と、内瓶から離反する方向に凹部から突出する第1部分と内瓶から近づく方向に凹部から突出する第2部分との少なくともいずれかを有するポートと、ポートの内周面に形成される雌ネジ部とを有する真空二重容器に対して用いられるガス注入兼排気工具であって、
ガス源が着脱自在に取り付けられる取付部と、前記ガス源からのガスが通過するガス流路とを含むガス噴出部と、
前記ポートの雌ネジ部に螺合自在の連結用雄ネジ部と、前記連結用雄ネジ部の端部から延びる通気路とを含むコネクタ部と、
前記ガス流路と前記通気路とが連通するように前記ガス噴出部と前記コネクタ部とを連結する操作部と、
を備える、ガス注入兼排気工具。
【請求項4】
前記コネクタ部と前記凹部との間、及び、前記ガス噴出部と前記コネクタ部との間の少なくともいずれかにガスケットが挟まれる、
請求項3記載のガス注入兼排気工具。
【請求項5】
前記操作部は、前記ガス噴出部にスライド自在かつ回転自在に嵌合し、
前記ガス噴出部には、前記操作部を抜け止めするための抜止部が設けられ、
前記コネクタ部の外周には、雄ネジ部が形成され、
前記操作部は、前記コネクタ部の雄ネジ部に螺合する雌ネジ部を有する、
請求項3又は4記載のガス注入兼排気工具。
【請求項6】
外瓶と内瓶とからなり、外瓶に設けられ内瓶側に凹んでいる凹部と、内瓶から離反する方向に凹部から突出する第1部分と内瓶から近づく方向に凹部から突出する第2部分との少なくともいずれかを有するポートと、ポートの内周面に形成される雌ネジ部とを有する真空二重容器に対して用いられるろう付け排気工具であって、
真空ポンプにより吸引するための吸引路と、
前記吸引路と前記ポートとを繋ぐ連絡路と、
前記連絡路と前記ポートとの連通する際の漏れを防ぐシール部と、
前記連絡路の外壁の一部を構成し、連絡路内に配置されたろう材を溶融させるための光を透過させる透光部と、
を備える、ろう付け排気工具。
【請求項7】
前記連絡路の周囲に流水溝が形成される、
請求項6記載のろう付け排気工具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2013−90702(P2013−90702A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233444(P2011−233444)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(500409127)株式会社大道産業 (6)
【Fターム(参考)】