説明

真空浸漬装置および真空浸漬方法

【課題】 短時間で安定した浸漬を行うための浸漬装置と浸漬方法を提供する。特に炊飯米への水の含浸を、短時間で安定して衛生的に、食味を落とさずに行う。
【解決手段】 穀物1が浸漬水2に浸されて収容される処理槽3、処理槽3内の減圧手段8、処理槽3内の復圧手段9、処理槽3内の圧力または温度を検出するセンサ16を備える。減圧手段8による処理槽3内の減圧時、前記センサ16の検出信号に基づき復圧手段9を制御して、処理槽3内を設定された圧力ひいては温度に減圧して、設定時間だけ保持して穀物を浸漬する。処理槽3の上部と下部とを接続するバイパス路17と、このバイパス路17を介して浸漬水2を強制循環させる循環ポンプ18とを備えており、処理槽3内の減圧時に浸漬水2を循環させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、米や豆などの各種穀物を水に浸しておくのに用いられる浸漬装置と浸漬方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、炊飯前には適宜の時間だけ、研いだ米を水に浸すことが行われている。従来、この浸漬は、単に大気圧下で米を水に、任意の時間だけ浸すだけであった。
【特許文献1】特開平6−113762号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の方法では、大気圧下で浸漬するため、米への水の含浸に長時間を要した。さらに、従来の方法では、浸漬水の水温が高い場合、衛生面や食味面で不都合を生じさせるおそれがあった。
【0004】
しかも、水道水の温度は一定しないので、同じ米と浸漬時間でも、季節や場所などにより、浸漬の効果が一定しなかった。そのため、水温が低いと、長時間の浸漬が必要であり、逆に水温が高いと、短時間の浸漬で済むが、衛生面や食味面で不都合を生じさせるおそれがあった。
【0005】
この発明が解決しようとする課題は、短時間で衛生的に食味を落とさずに浸漬するための浸漬装置と浸漬方法を提供することにある。また好ましくは、水温に左右されずに安定した浸漬が可能な浸漬装置と浸漬方法を提供することにある。特に、米や豆などへの水の含浸を、短時間で安定して衛生的に、食味を落とさず行うことができる浸漬装置と浸漬方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、穀物が浸漬水に浸されて収容される処理槽と、この処理槽内の減圧手段と、前記処理槽内の復圧手段と、前記減圧手段による前記処理槽内の減圧時、前記減圧手段および前記復圧手段の一方または双方を制御する制御手段とを備えることを特徴とする真空浸漬装置である。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、減圧された処理槽内で浸漬するので、浸漬時間の短縮を図ることができる。さらに、処理槽内を減圧して真空冷却することで、比較的低温で浸漬することになり、衛生的で、食味も落とさない。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記制御手段は、前記減圧手段による前記処理槽内の減圧時、前記減圧手段および前記復圧手段の一方または双方を制御して、前記処理槽内またはそこに収容される前記穀物もしくは前記浸漬水を、設定された圧力または温度に減圧して設定時間だけ保持することを特徴とする請求項1に記載の真空浸漬装置である。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、減圧された処理槽内で浸漬するので、浸漬時間の短縮を図ることができる。さらに、処理槽内を設定圧力(つまり設定温度)まで減圧して真空冷却することで、液温に左右されず、また浸漬水の気泡も除去されるので、安定して確実な含浸を行うことができる。また、真空冷却効果により、低温で浸漬するので、衛生的で食味面でも好ましい。しかも、設定圧力にて設定時間だけ浸漬することで、安定した確実な浸漬を行うことができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記処理槽内またはそこに収容される前記穀物もしくは前記浸漬水の圧力または温度を検出するセンサをさらに備え、この圧力センサまたは温度センサの検出信号に基づき、前記制御手段は、前記減圧手段による前記処理槽内の減圧時、前記減圧手段および前記復圧手段の一方または双方を制御して、前記処理槽内またはそこに収容される前記穀物もしくは前記浸漬水を、設定された圧力または温度に減圧して設定時間だけ保持することを特徴とする請求項2に記載の真空浸漬装置である。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、圧力センサまたは温度センサを用いて、前記処理槽内またはそこへの収容物の圧力または温度に基づき、浸漬処理を行うことができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、前記穀物および/または前記浸漬水の循環手段をさらに備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の真空浸漬装置である。
【0013】
処理槽内の浸漬水は、液面高さに起因して上部と下部とで圧力差を生じる。そして、この圧力ヘッド差により、減圧時の脱気度や真空冷却にムラを生じるおそれがあるが、請求項4に記載の発明によれば、穀物や浸漬水を循環することで、そのような不都合を防止することができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、前記循環手段は、前記処理槽の上部と下部とを接続するバイパス路と、このバイパス路を介して前記浸漬水を強制循環させるポンプとを備えていることを特徴とする請求項4に記載の真空浸漬装置である。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、バイパス路を介して浸漬水を強制循環させることができ、簡易な構成で、圧力ヘッド差による減圧時の脱気度や真空冷却のムラを防止することができる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、処理槽内で穀物を浸漬水に浸漬する方法であって、前記処理槽内またはそこに収容される前記穀物もしくは前記浸漬水を、設定された圧力または温度に減圧して設定時間だけ保持して浸漬することを特徴とする真空浸漬方法である。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、減圧された処理槽内で浸漬するので、浸漬時間の短縮を図ることができる。さらに、処理槽内を設定圧力(つまり設定温度)まで減圧して真空冷却することで、液温に左右されず、また浸漬水の気泡も除去されるので、安定して確実な含浸を行うことができる。また、真空冷却効果により、低温で浸漬するので、衛生的でも食味面でも好ましい。しかも、設定圧力にて設定時間だけ浸漬することで、安定した確実な浸漬を行うことができる。
【0018】
さらに、請求項7に記載の発明は、前記処理槽内の減圧時、前記穀物および/または前記浸漬水を循環することを特徴とする請求項6に記載の真空浸漬方法である。
【0019】
処理槽内の浸漬水は、液面高さに起因して上部と下部とで圧力差を生じる。そして、この圧力ヘッド差により、減圧時の脱気度や真空冷却にムラを生じるおそれがあるが、請求項7に記載の発明によれば、穀物や浸漬水を循環することで、そのような不都合を防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、短時間で衛生的に食味を落とさずに浸漬可能な浸漬装置と浸漬方法を提供することができる。また、設定圧力または設定温度で設定時間だけ保持して浸漬すれば、水温に左右されずに安定した浸漬が可能となる。これにより、たとえば米や豆などへの水の含浸を、短時間で安定して衛生的に、食味を落とさず行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。
本実施形態の真空浸漬装置は、密閉空間を形成する処理槽と、この処理槽内の減圧手段と、減圧された処理槽内の復圧手段とを主要部として備える。前記処理槽は、それ自体が浸漬容器であってもよいし、別途に浸漬容器が出し入れされる構成であってもよい。すなわち、浸漬しようとする穀物とそのための浸漬水は、処理槽に直接に投入してもよいし、浸漬容器に入れた後、その浸漬容器を処理槽内に収容してもよい。
【0022】
本実施形態では、処理槽自体が浸漬容器を兼ねており、上方に開口した容器本体の上部開口に、蓋体が開閉可能に設けられる。さらに、処理槽の下部には、浸漬水を排出するための排水ラインが接続されている。また、処理槽には、所望により、浸漬水の給水ラインを設けてもよい。
【0023】
前記減圧手段は、前記処理槽内の空気を真空引きして、処理槽内を減圧する手段であり、真空ポンプまたはエジェクタなどからなる。これらは、複数種類のものを組み合わせてもよい。この減圧手段は、減圧ラインを介して、処理槽の内部空間に接続されている。従って、減圧手段により減圧ラインを介して処理槽内の空気を外部へ吸引して、処理槽内を減圧することができる。処理槽内の減圧の有無は、減圧手段自体の駆動の有無により操作することができる。あるいは、減圧ラインの中途に減圧操作弁を設け、この減圧操作弁より真空ポンプ側を常時所定圧力に減圧しておき、前記減圧操作弁を開閉操作してもよい。
【0024】
一方、前記復圧手段は、減圧された前記処理槽内へ外気を導入して、真空状態を解除し復圧する手段である。この復圧手段により、前記処理槽内は、大気圧下に解放可能とされる。その際、衛生面を考慮して、フィルターを介して外気を導入するのがよい。復圧手段の復圧ラインは、復圧操作弁を介して前記処理槽の内部空間に接続されている。この復圧操作弁を開閉操作することで、前記処理槽内と外部との連通の有無が切り替えられる。
【0025】
前記復圧操作弁は、単なる開閉弁でもよいが、本実施形態では、その開度を任意に調整可能に構成されている。従って、減圧手段を駆動した状態で、復圧操作弁の開度を調整することで、処理槽内の圧力ひいては温度を、任意に調整できる。また、減圧手段を停止した状態で、復圧操作弁を開くことで、処理槽内の圧力を大気圧まで戻すことができる。
【0026】
ところで、処理槽内の圧力や温度の調整は、減圧手段による減圧時に処理槽内へ外気を導入して行うが、前記減圧手段の吸込み口へ外気を導入するようにしてもよい。また、外気を導入せずに、減圧手段の駆動の有無を切り替えたり、あるいは設定された下限の圧力または温度になると処理槽を加熱したりしてもよい。さらに、減圧手段の能力を可変しつつ、復圧手段を調整してもよい。
【0027】
前記処理槽には、処理槽内またはそこに収容される前記穀物や浸漬水の温度または圧力を検出するために、温度センサまたは圧力センサの内、少なくとも一方が設けられている。本実施形態では、処理槽内の圧力ひいては温度を圧力センサにより検出する構成としているが、温度センサを用いてもよい。温度センサを用いる場合、それにより検出した処理槽内の温度に基づき、圧力センサの場合と同様の制御が可能である。また、穀物や浸漬水などの品温を直接に計測して制御するようにしてもよい。
【0028】
本実施形態の真空浸漬装置は、米や豆などの各種穀物を、水に浸しておくのに利用される。特に、炊飯前の米の浸漬に好適に使用される。そのために、処理槽内には、穀物と浸漬水が収容されて密閉される。そして、減圧手段により処理槽内を設定圧力まで減圧して、その設定圧力にて設定時間だけ保持する。この設定圧力は、設定された一の圧力値であってもよいし、ある程度の幅のある圧力域であってもよい。しかも、設定圧力および設定時間は、浸漬する対象物などに応じて変更可能とするのが好ましい。設定された減圧下での浸漬が設定時間だけなされた後、復圧操作弁を開いて真空状態を解除して、浸漬を終了する。
【0029】
このように減圧下で浸漬するので、穀物への浸漬水の含浸を促進して、浸漬時間を短縮することができる。しかも、浸漬水から脱気できるので、浸漬不良を防止できる。また、設定圧力まで減圧して、浸漬水を設定温度まで真空冷却して行うので、水温の変化に左右されず、安定した浸漬が可能となる。つまり、水温が目的真空度の飽和温度よりも高い限り、真空度を制御して水温の管理ができる。さらに、真空冷却により比較的低温で浸漬を行うので、雑菌繁殖を抑えて衛生的であるとともに、タンパク質やデンプン質などの分解を抑えて食味面での劣化を防止できる。このようなことから、水分量の減った古米でも、食味を向上することができる。
【0030】
ところで、処理槽内の浸漬水は、液面高さに起因して上部と下部とで圧力差を生じるので、減圧時の脱気度や真空冷却にムラを生じるおそれがある。そこで、真空浸漬中には、処理槽内の穀物や浸漬水を循環するのが好ましい。具体的には、処理槽の上部と下部とをバイパス路で接続し、このバイパス路に設けた循環ポンプで浸漬水を強制循環すればよい。この浸漬水の循環は、処理槽の下部から浸漬水をバイパス路へ取り出し、処理槽の上部へ戻してもよいが、これとは逆に処理槽の上部から浸漬水をバイパス路へ取り出し、処理槽の下部へ戻すのが好ましい。なぜなら、穀物は処理槽の下部へ溜まるため、浸漬水の取り出しは処理槽の上部からの方が楽で確実にできる上、そのようにして上部から取り出した水を、循環ポンプで処理槽下部から噴き上げることで、処理槽内を流動化させることができるからである。
【0031】
以上においては、処理槽内またはそこに収容される穀物もしくは浸漬水を、設定圧力または設定温度まで減圧して、設定時間だけ保持して浸漬する例を示したが、浸漬時に処理槽内を減圧する構成ならば、その減圧操作をどのように行うかは適宜変更可能である。たとえば、設定圧力までまたは設定時間だけ、減圧手段を作動させた後、すぐに復圧することを繰り返すよう制御してもよい。あるいは、単に減圧手段の作動を継続しつつ浸漬してもよく、この場合は圧力センサや温度センサを省略できる。
【実施例】
【0032】
以下、この発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の真空浸漬装置の一実施例を示す概略構成図である。本実施例の真空浸漬装置は、米や豆類などの穀物1を水2に浸けておくのに用いられる。そのために、これら穀物1や浸漬水2を入れるための浸漬容器としての処理槽3を備える。本実施例の処理槽3は、上方に開口した有底円筒状の容器本体4と、この容器本体4の上部開口に着脱可能に設けられる蓋体5とから構成される。蓋体5は、容器本体4に対し気密状態で蓋をする。そのため、容器本体4に蓋体5がなされた状態では、処理槽3内に密閉空間が形成される。
【0033】
容器本体4の底部には、排水ライン6が接続されており、この排水ライン6には排水操作弁7が設けられている。この排水操作弁7を開閉操作することで、処理槽3内の水を外部へ排出することができる。本実施例では、処理槽3の底部にパンチングメタルなどを設けることで、処理槽3内に穀物1と浸漬水2を入れた状態で排水操作弁7を開いても、浸漬水2のみを排水できるように構成されている。
【0034】
処理槽3の上部には、減圧手段8と復圧手段9が接続されている。具体的には、図示例では処理槽3の蓋体5の上部中央に設けられる管路10を介して、減圧手段8と復圧手段9が処理槽3に接続される。本実施例では、減圧手段8の減圧ライン11と復圧手段9の復圧ライン12は、処理槽3側の末端部において共通の管路10とされる。
【0035】
減圧手段8は、真空ユニット13を備え、この真空ユニット13は減圧ライン11を介して処理槽3と接続される。真空ユニット13は、典型的には、真空ポンプ(不図示)を備えて構成されるが、これに代えてまたはこれに加えて、蒸気エジェクタなどを備えていてもよい。
【0036】
一方、復圧手段9は、減圧された処理槽3内へ外気を導入して、真空状態を解除し復圧する手段である。具体的には、外気は、フィルター14を介して取り込まれ、復圧ライン12を介して処理槽3内へ供給可能とされている。復圧ライン12の中途には、外気と処理槽3内との連通の有無を切り替える復圧操作弁15が設けられている。従って、復圧操作弁15を閉じた状態で、減圧手段8により処理槽3内を減圧した後、減圧手段8による減圧を停止して、復圧操作弁15を開ければ、処理槽3内の真空状態を解除して大気圧下に戻すことができる。
【0037】
ところで、復圧操作弁15は、比例制御弁のように、その開度が任意に調整可能に構成されている。従って、減圧手段8による処理槽3内の減圧時に、復圧操作弁15の開度を調整することで、処理槽3内の圧力を任意に調整可能である。この場合、処理槽3内の減圧時、真空ユニット13は一定の能力で作動させ続けるだけでよい。
【0038】
本実施例の処理槽3には、処理槽3内の圧力を検出するための圧力センサ16が備えられている。従って、この圧力センサ16の出力に基づき、前記復圧操作弁15の開度を調整しつつ、減圧手段8による減圧操作を行うことで、処理槽3内の圧力調整を容易に行うことができる。
【0039】
処理槽3内に収容される浸漬水2を循環させるために、処理槽3の上部と下部とは、バイパス路17で接続するのが好ましい。本実施例では、容器本体4の上部と、排水ライン6の上部との間をバイパス路17で接続しており、このバイパス路17の中途には循環ポンプ18が設けられている。処理槽3内を減圧して穀物1を真空浸漬する際には、このバイパス路17を介して浸漬水2を循環させる。その際、バイパス路17の下部から上方へ向けて浸漬水2を循環させてもよいが、本実施例では、バイパス路17の上部から下方へ向けて浸漬水2を循環ポンプ18で送る構成とされている。そのために、バイパス路17の上部は、浸漬水2の水面よりも常時下方になる位置に設けられる。
【0040】
さらに、真空浸漬装置には、減圧手段8や復圧手段9などを制御する制御器(制御手段)19が備えられている。本実施例では、排水操作弁7、真空ユニット13、復圧操作弁15、前記圧力センサ16、循環ポンプ18は、制御器19に接続されており、この制御器19にて各種制御が可能とされる。具体的には、制御器19は、圧力センサ16からの検出信号に基づいて、復圧操作弁15の開度を調整しつつ、真空ユニット13による処理槽3内の減圧レベルを調整したり、同じく圧力センサ16からの検出信号に基づいて、復圧操作弁15による処理槽3内の復圧完了を確認したりする。このように、制御器19は、所定のプログラムに従い、復圧操作弁15などの開閉を制御したり、真空ユニット13の駆動を制御したりする。
【0041】
図2は、前記真空浸漬装置を用いた真空浸漬方法を含んだ食材調理方法の一例を示すフローチャートである。この図に示すように、米や豆類などは、まず洗浄工程(ST1)にて洗浄される。この洗浄は、処理槽3を利用して行うこともできるし、処理槽3とは別の容器を用いて行うこともできる。但し、この洗浄工程(ST1)は、無洗米の場合などは、省略することができる。
【0042】
次に、前記真空浸漬装置を用いた浸漬工程(ST2)へ移行する。具体的には、処理槽3内に穀物1とともに浸漬水2を入れて浸漬を行う。本実施例では、処理槽3内を密閉して減圧手段8を駆動しつつ、復圧手段9の復圧操作弁15を操作することで、設定圧力まで処理槽3内を減圧し、その設定圧力にて設定時間だけ保持して浸漬する。この真空浸漬時には、バイパス路17の循環ポンプ18を駆動することにより、浸漬水2(必要に応じてさらに穀物1)を循環させるのがよい。
【0043】
このようにして、設定圧力にて設定時間だけ浸漬がなされるが、真空状態で浸漬を行うことで、穀物1への浸漬水2の含浸を促進して、浸漬時間を短縮することができる。しかも、浸漬水2から脱気できるので、気泡による浸漬不良を防止できる。また、設定圧力まで減圧することで、浸漬水2の温度を設定温度にすることができ、水温に左右されずに、安定した浸漬が可能となる。さらに、真空冷却により比較的低温で浸漬を行うので、雑菌繁殖を抑えて衛生的であるとともに、タンパク質やデンプン質などの分解を抑えて食味面での劣化を防止できる。しかも、この真空浸漬時にバイパス路17を介して浸漬水2の循環を図ることで、液面高さに起因する圧力差による脱気度や真空冷却のムラを防止することができる。
【0044】
浸漬工程(ST2)が終了すると、真空ユニット13および循環ポンプ18を停止するとともに復圧操作弁15を開いて、処理槽3内を大気圧まで戻した後、計量充填工程(ST3)へ移行する。この工程では、浸漬後の穀物の計量を行い、調理容器(不図示)へ設定量だけ充填する。その後の注水工程(ST4)では、浸漬水から出された穀物に調理用の水などを加える。そして、その後の加熱調理工程(ST5)において、浸漬後の穀物の加熱調理がなされる。但し、おこわなどの蒸し調理をする場合には、前記注水工程(ST4)は省略される。また、調理容器は、処理槽3とは別であってもよいし、処理槽3自体が調理容器を兼ねていてもよい。
【0045】
図3は、前記真空浸漬装置を用いた真空浸漬方法を含んだ食材調理方法の他の例を示すフローチャートである。この例では、所望により穀物の洗浄(ST6)がなされた後、計量充填工程(ST7)がなされる。このようにして所望量だけ処理槽3に穀物1を入れた後、注水工程(ST8)にて浸漬水が入れられて浸漬工程(ST9)へ移行する。この浸漬工程(ST9)において、上述したように設定圧力において設定時間だけ保持される。そして、浸漬完了後には、所望により排水(ST10)および注水(ST11)をなした後、加熱調理(ST12)がなされる。
【0046】
本発明の真空浸漬装置および真空浸漬方法は、上記実施例の構成に限らず適宜変更可能である。特に、浸漬対象は、米や豆類に限らず各種の穀類に適用可能なことは言うまでもない。また、前記実施例では、真空浸漬時にバイパス路17を介して浸漬水2を循環させたが、バイパス路17や循環ポンプ18は、省略することも可能である。
【0047】
さらに、真空浸漬時に処理槽3内を設定圧力にて設定時間だけ保持する手段は、前記実施例の構成に限らず適宜変更可能である。具体的には、前記実施例では減圧手段8の作動を継続しつつ復圧操作弁15の開度を調整したが、復圧操作弁15は閉じたままで、単に減圧手段8をオンオフ制御して、処理槽3内を設定圧力に保持してもよい。また、真空ユニット13の能力を可変するとともに、復圧操作弁15の開度を制御器19により制御してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の真空浸漬装置の一実施例を示す概略構成図である。
【図2】図1の真空浸漬装置を用いた真空浸漬方法を含んだ食材調理方法の一例を示すフローチャートである。
【図3】図1の真空浸漬装置を用いた真空浸漬方法を含んだ食材調理方法の他の例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0049】
1 穀物
2 浸漬水
3 処理槽
8 減圧手段
9 復圧手段
16 圧力センサ
17 バイパス路
18 循環ポンプ
19 制御手段(制御器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀物が浸漬水に浸されて収容される処理槽と、
この処理槽内の減圧手段と、
前記処理槽内の復圧手段と、
前記減圧手段による前記処理槽内の減圧時、前記減圧手段および前記復圧手段の一方または双方を制御する制御手段と
を備えることを特徴とする真空浸漬装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記減圧手段による前記処理槽内の減圧時、前記減圧手段および前記復圧手段の一方または双方を制御して、前記処理槽内またはそこに収容される前記穀物もしくは前記浸漬水を、設定された圧力または温度に減圧して設定時間だけ保持する
ことを特徴とする請求項1に記載の真空浸漬装置。
【請求項3】
前記処理槽内またはそこに収容される前記穀物もしくは前記浸漬水の圧力または温度を検出するセンサをさらに備え、
この圧力センサまたは温度センサの検出信号に基づき、前記制御手段は、前記減圧手段による前記処理槽内の減圧時、前記減圧手段および前記復圧手段の一方または双方を制御して、前記処理槽内またはそこに収容される前記穀物もしくは前記浸漬水を、設定された圧力または温度に減圧して設定時間だけ保持する
ことを特徴とする請求項2に記載の真空浸漬装置。
【請求項4】
前記穀物および/または前記浸漬水の循環手段をさらに備える
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の真空浸漬装置。
【請求項5】
前記循環手段は、前記処理槽の上部と下部とを接続するバイパス路と、このバイパス路を介して前記浸漬水を強制循環させるポンプとを備えている
ことを特徴とする請求項4に記載の真空浸漬装置。
【請求項6】
処理槽内で穀物を浸漬水に浸漬する方法であって、
前記処理槽内またはそこに収容される前記穀物もしくは前記浸漬水を、設定された圧力または温度に減圧して設定時間だけ保持して浸漬する
ことを特徴とする真空浸漬方法。
【請求項7】
前記処理槽内の減圧時、前記穀物および/または前記浸漬水を循環する
ことを特徴とする請求項6に記載の真空浸漬方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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