説明

真空用ゲートバルブ

【課題】圧力差によるバルブプレートの変位を防止して、密閉状態を確実に保持すると共にバルブプレートの損傷を抑制する。
【解決手段】真空用ゲートバルブ10は、開口12aを有するケーシング12と、このケーシング12内を揺動して開口12aを開閉するバルブプレート14と、バルブプレート14のケーシング12への密着時においては弾性部材を介さず機構的にバルブプレート14の変位を許容しない位置調整手段を備えている。位置調整手段は、駆動源と、この駆動源により回転する回転体22と、この回転体22の回転により回転体22に対して相対的に昇降する昇降体24とから成り、この昇降体24はバルブプレート14に接してバルブプレート14の位置を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、半導体装置の処理チャンバに使用されて各種処理チャンバ内を真空にするための真空用ゲートバルブの改良に関し、特に、圧力差によるバルブプレートの変位や変形を防止して、密閉状態を確実に保持すると共にバルブプレートの損傷を抑制することに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程においては、エッチング装置やCVD(化学気相蒸着)による薄膜処理、PVD等の処理を行う各種処理チャンバ内を真空状態とするために、処理チャンバと吸引ポンプとの間にゲートバルブが使用される。この真空用ゲートバルブとしては、近年、スペース的に有利で、比較的簡易に製造することができることから、ケーシング内においてバルブプレートを横方向に揺動させる横旋回式のゲートバルブが多く採用されている。
【0003】
この横旋回式の真空用ゲートバルブにおいては、ケーシング内におけるバルブプレートの円滑な揺動を確保するため、バルブプレートとケーシングとの間にして若干の間隙が設定されている。従って、バルブプレートを開口を塞ぐ位置に移動させた後、その間隙を解消して密閉状態を確保するため、バルブプレートをケーシングに密着させることが必要となる。
【0004】
そのための手段としては、スペース的な制約を考慮してできるだけコンパクトに、また、ゲートバルブ全体の形状に大きな影響を与えないよう、バネにより付勢された押圧プレートにより、バルブプレートをケーシングに押圧することが考えられる(例えば、特許文献1参照)。しかし、バルブプレートは、大気圧と真空という圧力差が激しい臨界に設置されて、圧力による負荷がかかるため、弾性変形可能なバネにより押圧すると、バネの付勢力に抗してバルブプレートがケーシングから離反するように変位したり、バルブプレートが反る等して一部変形してケーシングとの間にギャップが生じ、完全な密閉状態を充分に維持することができない問題があった。
【0005】
また、この気圧差による負荷によって、特に密閉直前の位置において、バルブプレートに想定した以上の急激な変位が生じ、予期せぬスピードでバルブプレートがケーシングに衝突等して破損するおそれもあった。これらの問題には、とりわけ、近年におけるバルブプレートの大型化に伴い、バルブプレートが大面積で圧力負荷を受けることになるため、充分に対応することが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−185035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、上記の問題点に鑑み、圧力差によるバルブプレートの変位を防止して、密閉状態を確実に保持すると共にバルブプレートの損傷を抑制することができる真空用ゲートバルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するための第1の手段として、開口を有するケーシングと、このケーシング内を揺動して開口を開閉するバルブプレートとを備えた真空用ゲートバルブにおいて、バルブプレートが開口に対し全閉位置にあるときにバルブプレートをケーシングに密着させる位置調整手段を更に備え、この位置調整手段は、バルブプレートのケーシングへの密着時においては弾性部材を介さず機構的にバルブプレートの変位を許容しない一方、バルブプレートのケーシングへの密着時を除いてはバルブプレートの揺動を許容することを特徴とする真空用ゲートバルブを提供するものである。
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するための第2の手段として、上記第1の解決手段において、位置調整手段は、駆動源と、この駆動源により回転する回転体と、この回転体の回転により回転体に対して相対的に昇降する昇降体とから成り、この昇降体はバルブプレートに接してバルブプレートの位置を調整することを特徴とする真空用ゲートバルブ
を提供するものである。
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するための第3の手段として、上記第2の解決手段において、駆動源は、昇降体がバルブプレートをゲートバルブに密着させる位置にあるときは、昇降体が変位しないように制止させることを特徴とする真空用ゲートバルブを提供するものである。
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するための第4の手段として、上記第2又は第3のいずれかの解決手段において、回転体は、環状レールとこの環状レールから突出するピンを有し、昇降体は、回転体の環状レールに係合して環状レールに沿って回転するリング状本体とリング状本体に形成され回転体のピンが挿入される長孔を有し、この長孔は少なくとも一部が回転体に対して傾斜して形成され、昇降体は、回転体のピンが回転体の回転により昇降体の傾斜した長孔内を移動することにより回転体に対して昇降することを特徴とする真空用ゲートバルブを提供するものである。
【0012】
本発明は、上記の課題を解決するための第5の手段として、上記第4の解決手段において、昇降体に形成された長孔は、始端と終端において水平に形成されていることを特徴とする真空用ゲートバルブを提供するものである。
【0013】
本発明は、上記の課題を解決するための第6の手段として、上記第4又は第5のいずれかの解決手段において、昇降体に形成された長孔は、始端と終端に連続する部分が、他の部分よりも緩やかに傾斜して形成されていることを特徴とする真空用ゲートバルブを提供するものである。
【0014】
本発明は、上記の課題を解決するための第7の手段として、上記第4乃至第6のいずれかの解決手段において、駆動源は、回転体のピンを昇降体の傾斜した長孔内の所定の位置に制御してバルブプレートとケーシングとの間のギャップを調整し、開口に連通する処理室内の圧力を制御することを特徴とする真空用ゲートバルブを提供するものである。
【0015】
本発明は、上記の課題を解決するための第8の手段として、上記第4乃至第7のいずれかの解決手段において、回転体のピン及び昇降体の長孔が、複数形成されていることを特徴とする真空用ゲートバルブを提供するものである。
【0016】
本発明は、上記の課題を解決するための第9の手段として、上記第2乃至第8のいずれかの解決手段において、昇降体は、バルブプレートの全周にわたってバルブプレートをケーシングに密着させることを特徴とする真空用ゲートバルブを特徴とする真空用ゲートバルブを提供するものである。
【0017】
本発明は、上記の課題を解決するための第10の手段として、上記第2乃至第9のいずれかの解決手段において、回転体及び昇降体は、開口周縁に配置されてケーシング内に収納されていることを特徴とする真空用ゲートバルブを提供するものである。
【0018】
本発明は、上記の課題を解決するための第11の手段として、上記第2乃至第10のいずれかの解決手段において、ケーシングは開閉自在に形成され、回転体及び昇降体は、開閉自在なケーシングによりケーシング内に着脱自在に収納されていることを特徴とする真空用ゲートバルブを提供するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、上記のように、位置調整手段は、バルブプレートのケーシングへの密着時においては弾性部材を介さず機構的にバルブプレートの変位を許容しないため、バルブプレートが圧力による負荷を受けても、ケーシングから離反したり、一方向に反る等してケーシングとの間にギャップが生じることがないため、密閉状態を確実に保持することができる実益がある。
【0020】
本発明によれば、上記のように、駆動源は、昇降体がバルブプレートをゲートバルブに密着させる位置にあるときは、昇降体が変位しないように制止するため、昇降体は、機構的に駆動源が自ら逆回転等しない限り、バルブプレートのケーシングの密着状態を保持することができる実益がある。
【0021】
本発明によれば、上記のように、昇降体は、回転体に係合して回転体の回転により昇降するため、幅方向に不必要なスペースを要することなく、上下方向からバルブプレートをケーシングに密着又は開放することができ、バネを用いた場合と同様の省スペース化を図りつつ密閉状態を保持することができる実益がある。
【0022】
本発明によれば、上記のように、回転体のピンの移動により昇降体を昇降させる長孔が、始端と終端において水平に形成されているため、バルブプレートが圧力による上下方向からの負荷を受けても、全開又は全閉の位置において回転体のピンが長孔内で変位することがなく、密閉状態を確実に確保することができる実益がある。
【0023】
本発明によれば、上記のように、回転体のピンの移動により昇降体を昇降させる長孔は、始端と終端に連続する部分が、他の部分よりも緩やかに傾斜して形成されているため、特に、初動や終動の速度を規制して急激にバルブプレートが変位することを防止することができ、バルブプレートとケーシングとの激しい衝突を回避して、バルブプレートやケーシングの損傷を抑制することができる実益がある。
【0024】
本発明によれば、上記のように、駆動源により回転体のピンを昇降体の傾斜した長孔内の所定の位置に制御してバルブプレートとケーシングとの間のギャップを調整し、開口に連通する処理室内の圧力を制御することができるため、単なる開閉のためのゲート弁としてのみならず、同時に圧力調整弁としての機能をも発揮することができる実益がある。
【0025】
本発明によれば、上記のように、昇降体は、バルブプレートの全周にわたってバルブプレートをケーシングに密着させているため、圧力差による負荷を受けても、バルブプレートが、例えば、先端方向等の一方向にのみ反って、バルブプレートとケーシングとの間に間隙が生ずることがなく、密閉状態を確実に保持することができる実益がある。
【0026】
本発明によれば、上記のように、回転体及び昇降体は、開口周縁に配置されてケーシング内に収納されているため、ケーシングの大きさや形状に大きな変更を加えることなく、省スペース化を図りつつ密閉状態を保持することができる実益がある。
【0027】
本発明によれば、上記のように、回転体及び昇降体は、開閉自在なケーシングによりケーシング内に着脱自在に収納されているため、回転体及び昇降体の点検や保守、修理等のメンテナンス、また、交換を容易に行うことができる実益がある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の真空用ゲートバルブの開位置における概略断面図である。
【図2】本発明の真空用ゲートバルブの概略斜視図である。
【図3】本発明に用いられる位置調整手段の斜視図である。
【図4】本発明に用いられる回転体と昇降体のバルブプレートが開位置にあるときの斜視図である。
【図5】本発明に用いられる回転体と昇降体のバルブプレートが閉位置にあるときの斜視図である。
【図6】本発明に用いられる回転体と昇降体の一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明を実施するための形態を図面を参照しながら詳細に説明すると、図1及び図2は本発明の真空用ゲートバルブ10を示し、この真空用ゲートバルブ10は、例えば、図示しない半導体装置の製造工程で使用される処理チャンバと、この処理チャンバ内を真空とするための図示しない吸引ポンプとの間に設置され、処理チャンバ内を密閉して真空に保持するために使用される。
【0030】
この本発明の真空用ゲートバルブ10は、図1及び図2に示すように、開口12aを有するケーシング12と、このケーシング12内を揺動して開口12aを開閉するバルブプレート14と、このバルブプレート14を駆動するモーター16と、バルブプレート14が開口12aに対し全閉位置にあるときにバルブプレート14をケーシング12に密着させて処理チャンバ内を真空に保持する位置調整手段18とを備えている。
【0031】
(1.動力伝達手段)
本発明においては、この位置調整手段18は、図1乃至図6に示すように、バルブプレート14のケーシング12への密着時においては弾性部材を介さず機構的にバルブプレート14の変位を許容しない構造となっている。従って、バルブプレート14が、大気圧と真空との臨界において圧力による負荷を受けても、ケーシング12から離反したり、一方向に反る等してケーシング12との間にギャップが生じることがないため、密閉状態を確実に保持することができる。
【0032】
具体的には、この位置調整手段18は、特に図2乃至図6に示すように、駆動源20と、この駆動源20により回転する回転体22と、この回転体22の回転により回転体22に対して相対的に昇降する昇降体24とから成っている。
【0033】
これらの回転体22及び昇降体24は、図2に特に示すように、ケーシング12の開口12a周縁に配置されて、このケーシング12内に収納されている。従って、図2に示すように、ケーシング12の大きさや形状に従来の設計から大きな変更を加えることなく、省スペース化を図りつつ密閉状態を保持することができる。一方、駆動源20は、図2に示すように、ケーシング12の外側においてケーシング12に取り付けられ、後述する動力伝達手段としての駆動ギア30及び回転ギア28により、ケーシング12内部の回転体22に動力を伝達する。このため、駆動源20の修理、点検等のメンテナンスや交換を容易に行うことができる。
【0034】
また、このケーシング12は、特に図1に示すように、ケーシング本体12Aと、このケーシング本体12Aに、ボルト等により、着脱自在に取り付けられるカバー12Bとから成っている。従って、ケーシング12は、カバー12Bの着脱により、開閉自在に形成されている。回転体22及び昇降体24は、図1に示すように、この開閉自在なケーシング12によりケーシング12内に着脱自在に収納されている。このため、回転体22及び昇降体24の点検や保守、修理等のメンテナンス、また、交換を容易に行うことができる。
【0035】
(2.駆動源)
駆動源20としては、図2乃至図6に示すように、バルブプレート14の揺動のために設置されたモーター16とは別に、密閉用モーター26を使用することが望ましい。バネ等の使用状況に左右される駆動源ではなく、駆動の要否を直接的に制御することができる駆動源とすることで、バルブプレート14の位置を適切に調整するためである。
【0036】
この場合、この駆動源20である密閉用モーター26は、後述する回転体22及び昇降体24の動作により、昇降体24がバルブプレート14をゲートバルブ12に密着させる位置にあるときは、その位置から昇降体24が変位しないように制止して、昇降体24の昇降を規制している。即ち、昇降体24は、密閉用モーター26が作動しない限り変位することはなく、密閉用モーター26が逆回転しない限り、密閉位置から開放位置へ移動せずに、密閉状態を確実に保持することができる。
【0037】
(3.回転体)
回転体22は、図2乃至図6に示すように、環状レール22Aと、この環状レール22Aから突出する複数のピン22Bを有している。この回転体22の環状レール22の側面には、図2乃至図6に示すように、ギア溝22aが形成されている。回転体22は、このギア溝22aに噛み合う回転ギア28と、この回転ギア28に噛み合い密閉用モーター26の回転軸に取り付けられる駆動ギア30により、密閉用モーター26の駆動力が伝達されて回転する。なお、このギア溝22aは、図3に示すように、回転体22を回転させることが必要な範囲において形成すれば足りる。
【0038】
環状レール22Aは、図4及び図5に示すように、内部に溝を有する断面逆凹字状の形状を有し、その内壁面から内側へ向かって突出するように複数のピン22Bが設置されている。従って、このピン22Bは環状レール22Aと共に一体的に回転する。なお、このピン22は、強度を確保するため、断面逆凹字状の環状レール22の両壁面にわたって設置することが望ましいが、その場合でも、昇降体24の組付けのために、環状レール24Aに着脱自在に取り付けることが望ましい。
【0039】
また、この環状レール22Aの上面には、図3乃至図5に示すように、位置調整手段18である回転体22及び昇降体24をケーシング12内に保持するためのスクリュー32が貫通すると共にこのスクリュー32に沿って回転体22が回転することを許容する湾曲長孔22bが形成されている。このため、複数のスクリュー32は、環状の回転体22の輪郭に沿って所定の間隔を開けて配置される。
【0040】
(4.昇降体)
一方、昇降体24は、図3乃至図6に示すように、回転体22の環状レール22Aに係合してこの環状レール22Aに沿って回転するリング状本体24Aと、このリング状本体24Aに形成され回転体22のピン22Bが挿入される長孔24aを有している。このリング状本体24Aは、断面が略凸状の形状を有し、上方に延びる壁面部が回転体22の環状レール22A内部の溝に挿入されて回転体22と機構的に係合する。なお、長孔24aは、回転体22のピン22Bに応じた個数に設定する。
【0041】
長孔24aは、図4及び図5に特に示すように、少なくとも一部が回転体22に対して傾斜して形成されている。このため、昇降体24は、回転体22のピン22Bが回転体22の回転によりこの昇降体24の傾斜した長孔24a内を移動することにより、回転体22に対して相対的に昇降することができる。
【0042】
より具体的には、図4及び図6(A)に示すように、バルブプレート14をケーシング12に密着させない開放時においては、回転体22のピン22Bが長孔24aの最下位にある始端に位置し、回転体22と昇降体24とが最も近接した状態にある。この位置に置いては、図6(A)に示すように、昇降体24はバルブプレート14から離反し、バルブプレート14の揺動を許容することができる。
【0043】
一方、この図4及び図6(A)に示す開位置の状態から、回転体22が、長孔24aの傾斜の上昇方向(図4の左方向)へ回転すると、昇降体24は、図5及び図6(B)に示すように、長孔24a内を移動するピン22Bにより押し下げられ、この長孔24aの傾斜に沿って次第に下降し、最終的に長孔24aの最上位にある終端に達することにより、バルブプレート14に接してバルブプレート14をケーシング12に押し付け、密閉状態とすることができる。
【0044】
この場合、この長孔24aは、その始端と終端において、図4及び図5に示すように、水平に形成され、昇降体24に働く上下方向の力を受け止めることができるため、全開又は密閉状態にある全閉状態において、昇降体24が密着するバルブプレート14に圧力差による負荷が加わっても、回転体22のピン22Bが昇降体24の長孔24a内で変位することがない。このため、回転体22のピン22Bを所定の位置に確実に保持することができ、駆動源26である密閉用モーター26の駆動停止と相俟って、密閉状態において、バルブプレート14がケーシング12から離反等することがなく、弾性部材を介することなく機構的にバルブプレート14を所定の位置に保持して、密閉状態を確保することができる。
【0045】
このように、昇降体24は、回転体22に係合して回転体22の回転により昇降するため、図2乃至図5に示すように、幅方向に不必要なスペースを要することなく、上下方向からバルブプレート14をケーシング12に密着又は開放することができ、バネを用いた場合と同様の省スペース化を図りつつ密閉状態を保持することができる。
【0046】
また、昇降体24のリング状本体24Aは、環状であるため、円板状のバルブプレートの輪郭に沿って、バルブプレート14の全周にわたってバルブプレートに接して、バルブプレートをケーシングに密着させることができ、圧力差による負荷を受けても、バルブプレート14が、例えば、先端方向等の一方向にのみ反って、バルブプレート14とケーシング12との間に間隙が生ずることがなく、密閉状態を確実に保持することもできる。
【0047】
また、この昇降体24に形成された長孔24aは、図4及び図5に示すように、水平に形成された始端と終端に連続する部分が、他の部分よりも緩やかに傾斜して形成することが望ましい。これにより、バルブプレート14が圧力による負荷を受けても、特に、初動や終動の速度を規制して急激にバルブプレート14が変位することを防止することができ、バルブプレート14とケーシング12との激しい衝突を回避して、バルブプレート14やケーシング12の損傷を抑制することができる。
【0048】
一方、駆動源20である密閉用モーター26は、水平に形成された始端と終端を除いた位置における回転体22のピン22Bの位置を制御することもできる。具体的には、駆動源20である密閉用モーター26は、回転体22のピン22Bを昇降体24の傾斜した長孔24a内の所定の位置に制止させる等して制御することができ、これにより、バルブプレート14とケーシング12との間のギャップを調整し、開口12aに連通する処理室内の圧力を制御することもできる。これにより、バルブプレート14は、単なる開閉のためのゲート弁としてのみならず、同時に圧力調整弁としての機能をも発揮することができる。
【0049】
なお、この昇降体24の昇降距離は、長孔24aの最上位と最高位との標高差により決定されるが、一般的には、その差を焼く2.5mm程度に設定すれば、バルブプレート14を確実にケーシングに密着させることができる。
【0050】
(5.その他)
なお、バルブプレート14は、図1に示すように、位置調整手段18によりケーシングに密着状態から解放されているときは、ケーシング12との間にギャップが生じるように設定されている。これにより、バルブプレート14が、揺動時にケーシング12等に接触したり、また、その結果、破損等することを防止して、円滑な揺動を確保することができる。即ち、位置調整手段18は、このバルブプレート14の自由状態での位置設定に抗して、バルブプレート14をケーシング12に密着させるものである。
【0051】
また、図示の実施の形態では、回転体22のピン22B及び昇降体24の長孔24aが、8つ形成されているのが示されているが、その設置個数には特に限定はない。但し、円滑で、均等な回転、昇降を確保するためには、少なくとも、相対向する方向に2組以上の、複数に設定することが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、特に、半導体装置におけるエッチング装置やCVDによる薄膜処理、PVD、更には、フラットパネルディスプレイの製造等に使用される処理チャンバ等に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
10 真空用ゲートバルブ
12 ケーシング
12A ケーシング本体
12B カバー
12a 開口
14 バルブプレート
16 モーター
18 位置調整手段
20 駆動源
22 回転体
22A 環状レール
22B ピン
22a ギア溝
22b 湾曲長孔
24 昇降体
24A リング状本体
24a 長孔
26 密閉用モーター
28 回転ギア
30 駆動ギア
32 スクリュー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有するケーシングと、前記ケーシング内を揺動して前記開口を開閉するバルブプレートとを備えた真空用ゲートバルブにおいて、前記バルブプレートが前記開口に対し全閉位置にあるときに前記バルブプレートを前記ケーシングに密着させる位置調整手段を更に備え、前記位置調整手段は、前記バルブプレートの前記ケーシングへの密着時においては弾性部材を介さず機構的に前記バルブプレートの変位を許容しない一方、前記バルブプレートの前記ケーシングへの密着時を除いては前記バルブプレートの揺動を許容することを特徴とする真空用ゲートバルブ。
【請求項2】
請求項1に記載された真空用ゲートバルブであって、前記位置調整手段は、駆動源と、前記駆動源により回転する回転体と、前記回転体の回転により前記回転体に対して相対的に昇降する昇降体とから成り、前記昇降体は前記バルブプレートに接して前記バルブプレートの位置を調整することを特徴とする真空用ゲートバルブ。
【請求項3】
請求項2に記載された真空用ゲートバルブであって、前記駆動源は、前記昇降体が前記バルブプレートを前記ゲートバルブに密着させる位置にあるときは、前記昇降体が変位しないように制止させることを特徴とする真空用ゲートバルブ。
【請求項4】
請求項2又は請求項3のいずれかに記載された真空用ゲートバルブであって、前記回転体は、環状レールと前記環状レールから突出するピンを有し、前記昇降体は、前記回転体の環状レールに係合して前記環状レールに沿って回転するリング状本体と前記リング状本体に形成され前記回転体のピンが挿入される長孔を有し、前記長孔は少なくとも一部が前記回転体に対して傾斜して形成され、前記昇降体は、前記回転体のピンが前記回転体の回転により前記昇降体の傾斜した長孔内を移動することにより前記回転体に対して昇降することを特徴とする真空用ゲートバルブ。
【請求項5】
請求項4に記載された真空用ゲートバルブであって、前記昇降体に形成された長孔は、始端と終端において水平に形成されていることを特徴とする真空用ゲートバルブ。
【請求項6】
請求項4又は請求項5のいずれかに記載された真空用ゲートバルブであって、前記昇降体に形成された長孔は、始端と終端に連続する部分が、他の部分よりも緩やかに傾斜して形成されていることを特徴とする真空用ゲートバルブ。
【請求項7】
請求項4乃至請求項6のいずれかに記載された真空用ゲートバルブであって、前記駆動源は、前記回転体のピンを前記昇降体の傾斜した長孔内の所定の位置に制御して前記バルブプレートと前記ケーシングとの間のギャップを調整し、前記開口に連通する処理室内の圧力を制御することを特徴とする真空用ゲートバルブ。
【請求項8】
請求項4乃至請求項7のいずれかに記載された真空用ゲートバルブであって、前記回転体のピン及び前記昇降体の長孔が、複数形成されていることを特徴とする真空用ゲートバルブ。
【請求項9】
請求項2乃至請求項8のいずれかに記載された真空用ゲートバルブであって、前記昇降体は、前記バルブプレートの全周にわたって前記バルブプレートを前記ケーシングに密着させることを特徴とする真空用ゲートバルブ。
【請求項10】
請求項2乃至請求項9のいずれかに記載された真空用ゲートバルブであって、前記回転体及び前記昇降体は、前記開口周縁に配置されて前記ケーシング内に収納されていることを特徴とする真空用ゲートバルブ。
【請求項11】
請求項2乃至請求項10のいずれかに記載された真空用ゲートバルブであって、前記ケーシングは開閉自在に形成され、前記回転体及び前記昇降体は、前記開閉自在なケーシングにより前記ケーシング内に着脱自在に収納されていることを特徴とする真空用ゲートバルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−117488(P2011−117488A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273433(P2009−273433)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【特許番号】特許第4630994号(P4630994)
【特許公報発行日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(507307008)プログレッシオ合同会社 (6)
【Fターム(参考)】