説明

真空蒸着装置及びワーク装着ユニット

【課題】チャンバ内の真空状態を保ったまま連続的にワークの表裏に蒸着を施すことができる真空蒸着装置を提案するものである。
【解決手段】真空蒸着装置のチャンバ内に配置されたドームの傾斜面に形成された複数のワーク装着部18にワーク装着ユニット20が装着される。ワーク装着ユニット20は、ガラス板21が固定されたワークホルダ22を一対の回転軸によって回転自在に支持したホルダ支持枠25と、ホルダ支持枠25の回転を係止する係止部材60を備えたボールガイド枠50とから構成される。ボールガイド枠50には鋼球58が載置され、リブ56によって載置された位置に保持される。ドームの回転速度を速くすると、遠心力によって鋼球58がリブ56を乗り越え、係止部材60のボール衝突部62に衝突すると、係止爪63がワークホルダ22の係止位置から移動してワークホルダ22が反転する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円形、角形等の板状に形成された被蒸着物(ワーク)の表裏に、蒸着物質を成膜する真空蒸着装置及びワーク装着ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス基板等の薄板基板や、半導体ウエハ等のワークの表面に蒸着物質を積層するために真空蒸着装置が用いられる。一般的な真空蒸着装置は、チャンバ内に設けられた蒸着源から放出された蒸着物質をガラス板などのワークの表面に均一に付着させる。蒸着源は複数設けられ、シャッタにより異なる蒸着物質を蒸着させることができる。1度に多数のワークに蒸着させるために、真空チャンバ内には略傘型の形状をした回転式のドームが設けられ、回転軸を中心に回転する。このドームの傘の部分に所定数のワークが装着される。チャンバの下部には真空ポンプに接続されたダクトが設けられ、真空ポンプによってチャンバ内が真空状態にされる。
【0003】
ここで、ワークが前記ドームに単に保持・固定された状態の場合は、ワークの片面にだけ蒸着膜が形成される。蒸着膜を両面に蒸着させる場合は、前記チャンバを開いて前記ワークを裏返した後に、再びチャンバ内を真空にしてから蒸着しなければならず、大変、手間が掛かる。また、前記ワークが非常に薄いガラス板の場合は、ガラス板に反りが生じることがある。この問題を解決するために、本出願人は、チャンバ内の真空状態を保ったままでワークの表裏両面に蒸着膜を形成することができる真空蒸着装置として、下記特許文献1に示す構成を提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4140270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1記載の装置は、チャンバ内でワークを反転させるためにモータなどの駆動手段を備えなければならず、今までの装置を改造するにしても大掛かりな変更が必要であり、スペース的にも、コスト的にも大きな負担を強いられることになる。
【0006】
上記問題点に鑑み、本発明は、ワークの反転にモータなどの駆動手段を必要とせずに、チャンバ内の真空状態を保ったまま連続的にワークの表裏に蒸着を施すことができる真空蒸着装置を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるワーク装着ユニットは、真空蒸着装置のチャンバ内で垂直軸の軸回りに2つ以上の異なる速度に切り替えて回転されるドームに装着されるとともに、蒸着膜が形成される2つの蒸着面を有するワークが前記ドームの傾斜面に沿って配置される。ワーク装着ユニットは、前記ワークが着脱自在に保持されるとともに前記蒸着面の1つを蒸着源に向けた初期位置と別の蒸着面を前記蒸着源に向けた反転位置とに変位自在とされたワークホルダと、前記ドームが第1の速度で回転するときは前記ワークホルダを前記初期位置に保持し、前記ドームが前記第1の速度より速い第2の速度で回転するときには遠心力によって前記ワークホルダを前記反転位置に移動させるウエイトと、前記ワークホルダを回転自在に軸支するとともに、前記ウエイトを前記遠心力の作用する方向に移動自在にガイドするガイド部材を有するホルダ支持枠と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
前記ホルダ支持枠は、前記ワークホルダに形成された位置決め突起が当接し、前記ワークホルダを前記反転位置に保持するストッパを備えるようにすると良い。前記ワーク装着ユニットは、前記ワークホルダを前記反転位置の方向に付勢する反転バネと、前記反転バネによる付勢力に抗して前記ワークホルダを前記初期位置に係止するとともに、前記遠心力によって移動する前記ウエイトに押圧されて前記ワークホルダの係止を解除する係止部材と、を備えるようにすると良い。
【0009】
前記ウエイトは所定の質量を有するボールであり、前記ガイド部材は、前記遠心力の作用する方向に沿って立設された一対の壁部と、前記壁部を前記傾斜面側で連設する底板部とからなる樋状部材であって、前記底板部の前記垂直軸側には前記ボールを載置するボール載置部が設けられ、前記係止部材は、前記樋状部材の底板部に載置され、前記ボール載置部から落下した前記ボールが転動するとともに前記遠心力の作用する方向に摺動自在なボール転動部と、前記ボール転動部の前記ボール載置部から遠い側に立設され転動する前記ボールが衝突するボール衝突部と、前記ワークホルダに当接して前記ワークホルダの回転を阻止する係止爪とから構成されるようにすると良い。
【0010】
あるいは、前記ホルダ支持枠に設けられ、前記位置決め突起が係合して前記ワークホルダを前記初期位置で保持する第1ストッパと、前記ワークホルダを前記反転位置で保持する第2ストッパとを備え、前記ウエイトが、自身の重力によって前記位置決め突起と前記第1ストッパとが係合する方向に前記ワークホルダを回転させる第1位置と、前記位置決め突起と前記第2ストッパとが係合する方向に前記ワークホルダを回転させる第2位置との間で移動自在にガイドされるようにすると良い。
【0011】
前記ワークホルダを一対の回転軸によって回転自在に軸支し、前記一対の回転軸の一方に固定されて前記ワークホルダと一体に回転する第1歯車と、前記第1歯車と噛合し前記ホルダ支持枠に回転自在に軸支された第2歯車とを備え、前記第2歯車は一端側に前記ウエイトが固定されたアーム部材の他端側に固定されるようにすると良い。前記ウエイトが前記第1位置にあって前記ドームが前記第1の速度で回転するときは前記第1位置にある前記ウエイトの重力によって前記ワークホルダが前記初期位置に保持され、前記第2の速度で回転するときには遠心力によって前記ウエイトが前記第2位置に移動して前記第2歯車が回動し、前記位置決め突起が前記第2ストッパと係合して前記ワークホルダが前記反転位置となるようにすると良い。
【0012】
本発明による真空蒸着装置は、前記いずれかのワーク装着ユニットを備え、前記ドームを第1の速度で回転させながら1つの蒸着面への蒸着が行われ、その後、前記ドームを前記第2の速度で回転させワークを反転させた後、他の蒸着面への蒸着が行われることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明による真空蒸着装置は、前記ワーク装着ユニットを備えることによって、ドームの回転速度を変えるだけで、チャンバ内の真空状態を保ったまま、連続的にワークの表裏に蒸着を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明による真空蒸着装置の構成を示す模式図である。
【図2】ワーク装着ユニットの斜視外観図である。
【図3】ワーク装着ユニットの構成を示す模式図である。
【図4】ワークホルダの構成を示す分解斜視図である。
【図5】ワークホルダとホルダ支持枠の構成を示す分解斜視図である。
【図6】ワーク装着ユニットの分解斜視図である。
【図7】ワーク装着ユニットの作用を説明する模式図である。
【図8】ワーク装着ユニットの作用を説明する模式図である。
【図9】ワーク装着ユニットの作用を説明する模式図である。
【図10】ワーク装着ユニットの作用を説明する模式図である。
【図11】ワーク装着ユニットの作用を説明する模式図である。
【図12】ワーク装着ユニットの作用を説明する模式図である。
【図13】ボール載置部の別の実施形態を示す斜視外観図である。
【図14】ボール載置部の別の実施形態を示す模式図である。
【図15】ワークホルダの取り付け方向を変えた例を示す図である。
【図16】ワーク装着ユニットの別の実施形態を示す斜視外観図である。
【図17】別のワーク装着ユニットの分解斜視図である。
【図18】第2歯車ユニットの分解斜視図である。
【図19】別のワーク装着ユニットの作用を説明する模式図である。
【図20】別のワーク装着ユニットの作用を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に示すように、本発明による真空蒸着装置10は、内部を真空にされたチャンバ11内に垂直軸12の軸回りに回転する傘状の傾斜面13を有するドーム15が設けられ、前記ドーム15の下部位置に蒸着源16が配置される。前記ドーム15は回転する速度が遅い第1の速度とそれより速い第2の速度で回転できるように回転速度の切替えが可能になっている。前記傾斜面13には複数のワーク装着部18が傾斜面の傾斜(例えば、30°)に沿って形成されている。前記ワーク装着部18にはワーク装着ユニット20が装着される。
【0016】
図2及び図3に示すように、ワーク装着ユニット20は、表裏に蒸着面を有するガラス板(ワーク)21が固定されたワークホルダ22を一対の回転軸23,24によって回転自在に支持したホルダ支持枠25が前記ワーク装着部18に挿入され、ホルダ支持枠25の取付アーム26に形成された取付孔27に挿通されるネジ28によって、前記傾斜面13の傾斜に沿って取り付けられる。前記回転軸23,24の中心線30は、前記垂直軸12から外周方向に向かう放射状の線(即ち、前記ドーム15が回転したときに遠心力の作用する方向)31と垂直となるように配置される。
【0017】
図4及び図5に示すように、前記ガラス板21はワークホルダベース33とワークホルダカバー34の間に着脱自在に保持され、ワークホルダカバー34に形成された孔35に挿通されたネジ36がワークホルダベース33に形成されたネジ穴37と螺合して前記ガラス板21とワークホルダベース33とワークホルダカバー34とが一体となる。前記ワークホルダベース33とワークホルダカバー34の中央にはそれぞれ開口38,39が形成され、前記蒸着源16から放出される蒸着物質17を通して、前記ガラス板21の表裏に形成されたそれぞれの蒸着面に前記蒸着物質17を蒸着させる。
【0018】
前記ワークホルダベース33には、前記ホルダ支持枠25に形成された回転孔41,42に挿通された前記回転軸23,24が装着されるネジ穴43,44と、前記回転軸23,24を中心にして回転したときに前記ホルダ支持枠25に形成されたストッパ45と係合する位置決め突起46と、前記回転軸24が挿通されて支持される反転バネ47の一端が係止される溝48とが形成される。前記ワークホルダ22は、前記開口38を前記蒸着源16に向けた初期位置と前記開口39を前記蒸着源16に向けた反転位置とに変位自在に保持される。
【0019】
図6及び図3に示すように、前記ワーク装着ユニット20は、前記ワークホルダ22が取り付けられたホルダ支持枠25が取り付けられた後に、ボールガイド枠(ガイド部材、樋状部材)50が、前記ホルダ支持枠25の取付アーム51に形成されたネジ穴52と螺合するネジ53によって前記ホルダ支持枠25に固定される。前記ボールガイド枠50は前記放射状の線31と平行な方向に長い長方形をした一対の壁部54と前記壁部54を前記傾斜面13側で連設する底板部55を有する樋状に形成され、前記底板部55の前記垂直軸12側には所定の質量を有する鋼球(ボール、ウエイト)58が転動しないように載置されるリブ(ボール載置部)56が設けられる。
【0020】
前記底板部55の前記リブ56より前記ドーム15の外周方向には係止部材60が載置される。前記係止部材60には、前記リブ56を乗り越えて落下する前記鋼球58が転動するボール転動部61と、前記ボール転動部61の前記リブ56から遠い側に立設されたボール衝突部62と、前記ワークホルダ22の縁に当接して前記ワークホルダ22の回転を係止する係止爪63とが形成される。前記係止部材60は、前記ボール転動部61と前記係止爪63を連設する連設部64が前記壁部54と底板部55の間に形成されたガイド溝65に係合して前記外周方向に摺動する。
【0021】
次に本発明による作用・効果について説明する。図7に示すように、前記ドーム15の傾斜面13の傾斜に沿って取り付けられたワーク装着ユニット20の前記ボールガイド枠50は、前記傾斜面13と同じ傾斜、例えば、30°に傾いているが、前記鋼球58は、前記リブ56によって前記ボールガイド枠50の前記垂直軸12側に載置されている。係止部材60は、前記係止爪63が反転バネ47によって時計回りの方向に付勢された前記ワークホルダ22の縁と当接するように前記垂直軸12側に寄せて配置される。前記係止爪63が前記ワークホルダ22によって押し上げられ、前記連設部64が前記ガイド溝65の前記壁部54に押圧されて摩擦が生じる。この摩擦によって、前記係止部材60は前記ドーム15が回転して遠心力が作用しても前記外周方向に移動することはない。
【0022】
図8に示すように、前記ワーク装着ユニット20が前記傾斜面13に取り付けられ前記ドーム15が第1の速度で回転する。前記ドーム15の下部位置に配置された蒸着源16から蒸着物質17が放射され、前記初期位置に保持された前記ワークホルダ22の前記開口38から露呈している前記ガラス板21の蒸着面の1つに蒸着が施される。前記ガラス板21の蒸着面の1つへの蒸着が済むと、一旦、蒸着源16からの蒸着物質の放出が停止され、前記ドーム15の回転速度が前記第1の速度より速い第2の速度に切り替えられる。図9に示すように、前記回転するドーム15の遠心力によって鋼球58が前記リブ56を乗り越え、前記係止部材60のボール転動部61の右端に落下する。落下した鋼球58は前記遠心力と傾斜によって前記ボール転動部61上を左へ転動して前記ボール衝突部62に衝突し、前記係止部材60を左に移動させる。
【0023】
図10に示すように、前記係止部材60が左へ移動して前記係止爪63が前記ワークホルダ22との係合位置から外れると、前記ワークホルダ22は前記反転バネ47の付勢力によって時計回りの方向に回転する。図11に示すように、前記ワークホルダ22は、前記ワークホルダベース33に形成された前記位置決め突起46が前記ホルダ支持枠25に形成されたストッパ45に当接し、180°回転した前記反転位置に保持される。図12に示すように、前記ワークホルダ22の反転後、再度、前記蒸着源16から蒸着物質17が放射され、前記開口39を通して、前記ガラス板21の別の蒸着面への蒸着が行われる。このように本発明による真空蒸着装置10は、前記ドーム15の回転速度を変えるだけで、前記チャンバ11内の真空状態を保ったまま、連続的に前記ガラス板21の表裏に蒸着を施すことができる。
【0024】
なお、前記実施形態において、前記係止部材60は、前記係止爪63が前記ワークホルダ22によって押し上げられ、前記連設部64が前記ガイド溝65の前記壁部54に押圧されて摩擦が生じ、この摩擦によって、前記係止部材60は前記ドーム15が回転して遠心力が作用しても動かないように構成したが、前記係止部材60を前記リブ56側に押圧するバネを設けるようにしても良い。また、第2の速度による遠心力によって移動するウエイトとして鋼球58を用いたが、鋼球58の代わりに、他の材質のボール(球体)を用いても良く、球体ではなく、円筒体や多面体や立方体であっても良い。
【0025】
前記実施形態は、ボールガイド枠50に設けるボール載置部としてリブ56を用いたが、図13及び図14に示すように、三角形の2本のレール68であっても良く、前記鋼球58が前記第1の速度による遠心力では前記初期位置に維持され、前記第2の速度による遠心力によって移動するものであれば、他の形状であっても良く、例えば、前記ウエイトとして立方体を用い、前記ボール載置部として摩擦板を用いても良い。
【0026】
前記実施形態は、前記回転軸23,24の中心線30が前記放射状の線31と垂直になるように前記ホルダ支持枠25に取り付けたが、前記ワークホルダ22の回転の向きはこれに限ることはなく、図15に示すように、前記中心線30が前記放射状の線31と平行になるように、前記ワークホルダ22をホルダ支持枠69に取り付ける構成にしても良い。
【0027】
次に、別の実施形態について説明する。前記実施形態と同じ部材は同じ符号を付すとともに説明を省略する。図16に示すように、ワーク装着ユニット70を構成するホルダ支持枠71には前記ワークホルダ22を反転させる反転機構72を保持する保持部73が設けられる。前記ホルダ支持枠71には一対の回転軸23,74(図17参照)によって前記ワークホルダ22が回転自在に支持され、前記ワークホルダ22は前記回転軸23,74の中心線30が前記放射状の線31と垂直となるように前記ホルダ支持枠71に取り付けられる。
【0028】
図17及び図18に示すように、前記ホルダ支持枠71には、前記ワークホルダ22に形成された前記位置決め突起46と係合して前記ワークホルダ22を初期位置で保持する第1ストッパ75と、前記ワークホルダ22が前記初期位置から180°回転した反転位置で前記位置決め突起46と係合する第2ストッパ76とが形成される。前記回転軸74には第1歯車77が圧入され、前記第1歯車77が180°回転すると前記ワークホルダ22が180°回転する。前記第1歯車77は噛合する第2歯車78とともに前記保持部73と前記保持部73にネジ79によって固定される保持板80によって回転自在に挟持される。
【0029】
前記第1歯車77は第2歯車ユニット81とともに前記反転機構72を構成する。第2歯車ユニット81は、前記第2歯車78と、両端に嵌合孔83,84が形成されたアーム部材85と、前記第2歯車78と同じ厚さのスペーサ86と、ウエイト87によって構成される。前記第2歯車78に固定された軸88の両側の根元部には前記嵌合孔83が嵌合される嵌合部89がそれぞれ形成され、前記第2歯車78には前記アーム部材85を固定するカシメ孔90が形成される。2つの前記嵌合部89に2つの前記アーム部材85のそれぞれ一方の前記嵌合孔83を嵌合させ、2つの前記アーム部材85によって前記第2歯車78を両側から挟むように配置して、前記アーム部材85に形成されたカシメ孔91と前記カシメ孔90とにカシメ軸92を連通させ、2つの前記アーム部材85の一端側に前記第2歯車78を固定する。
【0030】
ネジ93は、前記ウエイト87に形成された孔94と、前記アーム部材85の他端側の嵌合孔84と、前記スペーサ86に形成された孔95と、2つ目の前記アーム部材85の嵌合孔84と、2つ目の前記ウエイト87に形成された孔94とに順次に挿通され、ナット96と螺合して、これらを固定する。このように構成された前記ウエイト87は、自身の重力によって前記第2歯車78を回転させるとともに、前記位置決め突起46が前記第1ストッパ75を押圧する第1の方向に前記第2歯車78を回転させて前記ワークホルダ22を前記初期位置とする第1位置と、前記位置決め突起46が前記第2ストッパ76を押圧する第2の方向に前記第2歯車78を回転させて前記ワークホルダ22を前記反転位置とする第2位置との間で移動自在とされる。
【0031】
図19に示すように、前記ウエイト87は、自身の重力がAの方向に作用して前記第2歯車78を時計回りの方向Bに回転させる。前記第2歯車78の回転は前記第1歯車77に伝達され、前記第1歯車77は反時計回りの方向Cに回転して、前記ワークホルダ22を反時計回りの方向に回転させる。前記ワークホルダ22は前記位置決め突起46を前記第1ストッパ75に押圧させて、前記ワークホルダ22を前記初期位置に保持する。この状態で前記ドーム15が第1の速度で回転し、前記蒸着源16から蒸着物質が放出されて、前記ガラス板21の蒸着面の1つに蒸着が施された後に、前記ドーム15の回転速度が前記第1の速度より速い第2の速度に切り替えられる。
【0032】
図20に示すように、回転する前記ドーム15の遠心力によって前記ウエイト87が前記第1位置からDの方向に移動する。前記第2歯車78は反時計回りの方向Eに回転し、前記第1歯車77を時計回りの方向Fに回転させる。前記ワークホルダ22は時計回りの方向に回転させられ、前記ワークホルダ22に形成された前記位置決め突起46が前記第2ストッパ76に当接する。前記ワークホルダ22は前記初期位置から180°回転した反転位置に保持される。前記ワークホルダ22が前記反転位置に保持されると、再び、前記蒸着源16から蒸着物質が放出されて、前記ワークホルダ22に装着された前記ガラス板21の別の蒸着面に蒸着が施される。
【0033】
前記実施形態は、ワークホルダ22をワークホルダベース33とワークホルダカバー34とで構成し、前記ガラス板21をその間に収容するようにしたが、ワークホルダ22の構成はこれに限るものではなく、蒸着させるワークの形状に最適な取り付け方法を、適宜、採用しても良い。
【符号の説明】
【0034】
10 真空蒸着装置
11 チャンバ
12 垂直軸
13 傾斜面
15 ドーム
16 蒸着源
17 蒸着物質
18 ワーク装着部
20,70 ワーク装着ユニット
21 ガラス板(ワーク)
22 ワークホルダ
23,24,74 回転軸
25,69,71 ホルダ支持枠
26,51 取付アーム
30 中心線
31 放射状の線(遠心力の作用する方向)
33 ワークホルダベース
34 ワークホルダカバー
38,39 開口
41,42 回転孔
43,44 ネジ穴
45 ストッパ
46 位置決め突起
47 反転バネ
48 溝
50 ボールガイド枠(ガイド部材、樋状部材)
54 壁部
55 底板部
56 リブ(ボール載置部)
58 鋼球(ボール、ウエイト)
60 係止部材
61 ボール転動部
62 ボール衝突部
63 係止爪
64 連設部
65 ガイド溝
68 三角形の2本のレール(ボール載置部)
72 反転機構
73 保持部
75 第1ストッパ
76 第2ストッパ
77 第1歯車
78 第2歯車
80 保持板
81 第2歯車ユニット
85 アーム部材
86 スペーサ
87 ウエイト
88 軸
89 嵌合部
90,91 カシメ孔
92 カシメ軸


【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空蒸着装置のチャンバ内で垂直軸の軸回りに2つ以上の異なる速度に切り替えて回転されるドームに装着され、蒸着膜が形成される2つの蒸着面を有するワークが前記ドームの傾斜面に沿って配置されるワーク装着ユニットであって、
前記ワークが着脱自在に保持されるとともに、前記蒸着面の1つを蒸着源に向けた初期位置と、別の蒸着面を前記蒸着源に向けた反転位置とに変位自在とされたワークホルダと、
前記ドームが第1の速度で回転するときは前記ワークホルダを前記初記位置に保持し、前記ドームが前記第1の速度より速い第2の速度で回転するときには遠心力によって前記ワークホルダを前記反転位置に移動させるウエイトと、
前記ワークホルダを回転自在に軸支するとともに、前記ウエイトを前記遠心力の作用する方向に移動自在にガイドするガイド部材を有するホルダ支持枠と、
を備えたことを特徴とするワーク装着ユニット。
【請求項2】
前記ホルダ支持枠は、前記ワークホルダに形成された位置決め突起が当接し、前記ワークホルダを前記反転位置に保持するストッパを備えたことを特徴とする請求項1記載のワーク装着ユニット。
【請求項3】
前記ワークホルダを前記反転位置の方向に付勢する反転バネと、
前記反転バネによる付勢力に抗して前記ワークホルダを前記初期位置に係止するとともに、前記遠心力によって移動する前記ウエイトに押圧されて前記ワークホルダの係止を解除する係止部材と、
を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載のワーク装着ユニット。
【請求項4】
前記ウエイトは所定の質量を有するボールであり、
前記ガイド部材は、前記遠心力の作用する方向に沿って立設された一対の壁部と、前記壁部を前記傾斜面側で連設する底板部とからなる樋状部材であって、
前記底板部の前記垂直軸側には前記ボールを載置するボール載置部が設けられ、
前記係止部材は、前記樋状部材の底板部に載置され、前記ボール載置部から落下した前記ボールが転動するとともに前記遠心力の作用する方向に摺動自在なボール転動部と、前記ボール転動部の前記ボール載置部から遠い側に立設され転動する前記ボールが衝突するボール衝突部と、前記ワークホルダに当接して前記ワークホルダの回転を阻止する係止爪とからなることを特徴とする請求項3記載のワーク装着ユニット。
【請求項5】
前記ホルダ支持枠に設けられ、前記位置決め突起が係合して前記ワークホルダを前記初期位置で保持する第1ストッパと、前記ワークホルダを前記反転位置で保持する第2ストッパとを備え、
前記ウエイトは、自身の重力によって前記位置決め突起が前記第1ストッパと係合する方向に前記ワークホルダを回転させる第1位置と、前記位置決め突起が前記第2ストッパと係合する方向に前記ワークホルダを回転させる第2位置との間で移動自在にガイドされたことを特徴とする請求項2記載のワーク装着ユニット。
【請求項6】
前記ワークホルダを回転自在に軸支する一対の回転軸の一方に固定されて、前記ワークホルダと一体に回転する第1歯車と、
前記ホルダ支持枠に回転自在に軸支されるとともに前記第1歯車と噛合して前記第1歯車に回転力を伝達する第2歯車と、
一端側に前記第2歯車が固定され、他端側に前記ウエイトが固定されたアーム部材と、
を備え、
前記ウエイトが前記第1位置にあって前記ドームが前記第1の速度で回転するときは前記第1位置にある前記ウエイトの重力によって前記ワークホルダが前記初期位置に保持され、前記第2の速度で回転するときには遠心力によって前記ウエイトが前記第2位置に移動して前記第2歯車が回動し、前記位置決め突起が前記第2ストッパと係合して前記ワークホルダが前記反転位置とされることを特徴とする請求項5記載のワーク装着ユニット。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれか記載のワーク装着ユニットを備え、
前記ドームを第1の速度で回転させながら前記ワークの蒸着面の1つに蒸着が施され、その後、前記ドームを前記第2の速度で回転させワークを反転させた後、他の蒸着面に蒸着が施されることを特徴とする真空蒸着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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