説明

真空計システム及び真空処理システム並びに冷陰極電離真空計

【課題】真空計内部における皮膜形成を抑制すること。
【解決手段】真空処理装置にバルブ2を介して取り付けられ、該真空処理装置内の圧力を計測する冷陰極電離真空計1と、バルブ2の開閉制御を行う第1制御機器21と、冷陰極電離真空計1と通信線及び電源用ケーブルを介して接続されるとともに第1制御機器21と信号線を介して接続され、第1制御機器21からバルブ2の開閉制御信号が入力される第2制御機器22とを備え、バルブ2が開状態にあるときに、冷陰極電離真空計1の放電が開始されて計測が実施され、バルブ2が閉状態にあるときに、冷陰極電離真空計1の放電が停止されて計測が終了される真空計システムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空計システム及び真空処理システム並びに冷陰極電離真空計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷陰極電離真空計は、陽極と陰極とを有し、陰極から放出した電子が測定子容器内における気体に衝突することで測定子容器内の気体をイオン化し、イオン化気体が陽極に捕集されることにより発生する電流を測定して、圧力を測定する装置であり、加熱されたフィラメントを用いない測定素子構造である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−6431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
冷陰極電離真空計においては、計測対象の真空容器から測定子容器内に流入し存在する残留ガス(例えば、製膜装置に適用された場合においては、水素、シラン、ジボラン、ホスフィン等の製膜ガス)が、放電時に電子衝撃を受けて分解、イオン化し、陰極や陽極に電気を通しにくい皮膜を形成する。このような残留ガスによる皮膜は、残留ガス濃度、放電時の圧力、放電時間が大きいほど多く形成される。
【0005】
上記真空計の陰極および陽極における皮膜形成は、測定感度の低下を招き、装置の信頼性を低下させる。また、計測感度の低下で、真空遷移時には過剰の真空遷移時間が必要となることから、当該真空計が取り付けられている真空処理装置、例えば、プラズマCVD装置などの稼働率を低下させる要因となる。更に、上記真空計の電極が汚れるために真空計取替えのメンテナンスが頻繁に実施され、真空処理装置の更なる稼働率低下を招いていた。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、真空計内部における皮膜形成を抑制することのできる真空計システム及び真空処理システム並びに冷陰極電離真空計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、真空処理装置にバルブを介して取り付けられ、該真空処理装置内の圧力を計測する冷陰極電離真空計と、前記バルブの開閉制御を行う第1制御手段と、前記冷陰極電離真空計と通信線及び電源用ケーブルを介して接続されるとともに前記第1制御手段と信号線を介して接続され、前記第1制御手段から前記バルブの開閉制御信号が入力される第2制御手段とを備え、前記バルブが開状態にあるときに、前記冷陰極電離真空計の放電が開始されて計測が実施され、前記バルブが閉状態にあるときに、前記放電が停止されて計測が終了される真空計システムを提供する。
【0008】
冷陰極電離真空計における皮膜形成について詳細に検討を進めたところ、冷陰極電離真空計と計測対象の真空容器との間にバルブを設けて、計測時以外はガスの通過を遮断することとしていても、冷陰極電離真空開において常時に放電を維持する形態のために、計測時以外にも残留ガスの分解が行なわれて陰極や陽極に皮膜が形成され続け、皮膜が多く形成されることが判明した。
そこで、本発明は、上記のように、真空処理装置と冷陰極電離真空計との間に介在するバルブの開閉に連動して冷陰極電離真空計における放電の実行及び停止を制御することとした。これにより、冷陰極電離真空計における放電期間を従来のように常時に放電維持するのではなく、バルブが開状態にある期間、すなわち、真空処理装置の内圧の測定に使用される期間に限ることができる。この結果、バルブを閉じて真空処理装置内のガスが流通させないとともに、冷陰極電離真空計内の若干量の残留ガスについても放電する期間を大幅に短縮することができ、冷陰極電離真空計における陰極および陽極における皮膜形成を効果的に抑制することが可能となり、冷陰極電離真空計におけるメンテナンス時期を遅らせることができ、真空処理装置の稼働率向上を図ることができる。
【0009】
上記真空計システムにおいて、前記電源用ケーブルの途中に設けられ、前記第1制御手段からの制御信号に基づいて、前記第2制御手段から前記冷陰極電離真空計への電源供給を遮断する電源遮断手段を備え、前記第1制御手段は、前記バルブの開閉制御信号に同期した制御信号を前記電源遮断手段に出力することとしてもよい。
【0010】
このような構成によれば、第2制御手段と冷陰極電離真空計との間の電源用ケーブルの途中に設けられた電源遮断手段により、第2制御手段から冷陰極電離真空計への電源供給が遮断され、冷陰極電離真空計における放電の実行及び停止が制御されることとなる。これにより、リレーユニットなどによる電源遮断手段という簡素な構成により、冷陰極電離真空計における放電の実行及び停止を制御することが可能となる。
【0011】
上記真空計システムにおいて、前記第2制御手段は、前記第1制御手段から入力される前記バルブの開閉制御信号に基づいて、前記電源用ケーブルを通じた前記冷陰極電離真空計への電源の供給及び遮断を制御する手段を具備することとしてもよい。
【0012】
このような構成によれば、第2制御手段の内部に設けた電源の供給及び遮断をする手段の作動により、第2制御手段から冷陰極電離真空計への電源の供給及び遮断が制御され、冷陰極電離真空計における放電の実行及び停止が制御されることとなる。これにより、一層に簡素な構成により、冷陰極電離真空計における放電の実行及び停止を制御することが可能となる。
【0013】
上記真空計システムにおいて、前記第2制御手段は、前記第1制御手段から入力される前記バルブの開閉制御信号に基づく放電制御信号を前記冷陰極電離真空計へ出力し、前記冷陰極電離真空計は、前記放電制御信号に基づいて前記放電を実施するための電源供給の動作制御手段を具備し、前記放電の実行及び停止を制御することとしてもよい。
【0014】
このような構成によれば、第2制御手段から冷陰極電離真空計に対して、バルブの開閉制御信号に基づく放電制御信号を送信し、冷陰極電離真空計において、当該放電制御信号に基づいて放電を実施するための電源供給手段を作動させて、前記放電の実行及び停止が制御されることとなる。これにより、バルブの開閉に連動して放電の実行及び停止を制御することが可能となる。また、上記構成によれば、冷陰極電離真空計における放電停止期間においても、第2制御手段からの電源供給が維持されるため、冷陰極電離真空計の健全性に関する情報を冷陰極電離真空計から第2制御手段へ送信することが可能となる。これにより、ユーザに対する冷陰極電離真空計の状態提示が可能となる。
【0015】
本発明は、真空処理装置と、前記真空処理装置の圧力を計測する上記いずれかの真空計システムとを備える真空処理システムを提供する。
【0016】
本発明は、真空処理装置にバルブを介して取り付けられ、該真空処理装置内の圧力を計測する冷陰極電離真空計であって、前記バルブが開状態にあるときに放電が開始されて計測が実施され、前記バルブが閉状態にあるときに、前記放電が停止されて計測が終了される冷陰極電離真空計を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、冷陰極電離真空計内部における皮膜形成を抑制し、測定感度の低下を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係る真空処理システムの概略構成を示した図である。
【図2】図1に示した冷陰極電離真空計の圧力測定子部分の概略構成例を示した断面模式図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る真空計システムの概略構成を示した図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る真空計システムの各部から出力される信号のタイミングチャートである。
【図5】本発明の第2実施形態に係る第2制御機器の概略内部構造を示したブロック図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る真空計システムの各部から出力される信号のタイミングチャートである。
【図7】本発明の第3実施形態に係る冷陰極電離真空計の駆動系に関する構成を示したブロック図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係る真空計システムの各部から出力される信号のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の第1実施形態に係る真空計システム及び真空処理システム並びに冷陰極電離真空計について図面を参照して説明する。以下の説明では、真空処理装置としてプラズマCVD装置などの製膜装置を例示して説明するが、本発明は、この限りではない。例えば、スパッタリング装置、アッシング装置、ドライエッチング装置などの公知の真空処理装置に広く適用することができる。
【0020】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る真空処理システム10の概略構成を示した図である。図1に示すように、真空処理システム10において、冷陰極電離真空計1は、バルブ2を介して真空処理装置である製膜装置3に取り付けられている。
図1に示した真空処理システム10における真空排気は、まず、大気圧からドライポンプ4による粗引排気ライン5で排気が行われ、圧力が10Paから100Pa前後になると、粗引排気ライン5から高真空排気ライン6へ切り替えられ、ターボ分子ポンプ7およびドライポンプ4による高真空排気ライン6で10−5Paから10−8Paの範囲における真空引きが行われる。
【0021】
低真空領域における製膜装置3内の圧力計測はピラニ真空計8にて行われ、高真空排気ライン切替後の高真空領域における製膜装置3内の圧力計測は冷陰極電離真空計1により行われる。なお、製膜中の圧力は、バルブ2を閉じて冷陰極電離真空計1を用いずに、バラトロン真空計9で計測され、所定の圧力になるよう真空排気系統のCV弁11を調整することで制御される。
【0022】
図2は、冷陰極電離真空計1の圧力測定子部分の概略構成例を示した断面模式図である。図2に示す冷陰極電離真空計1は、逆マグネトロン型真空計であり、陰極である測定子容器12と、その内部に形成された放電空間13に置かれた陽極14とを有している。製膜装置3内(図1参照)の圧力計測時においては、バルブ2(図1参照)が開状態とされることにより、製膜装置3内の気体がフィルタ部15を介して測定子容器内に流入されて製膜装置3内と放電空間13とが通気可能な状態とされ、この状態で製膜装置3内の圧力が測定される。
圧力測定時においては、高圧電源16から陰極としての測定子容器12と陽極14との間に高電圧(例えば、3000V以上6000V以下)を印加し、放電空間13内に放電を発生させ、放電中に流れた電流を電流検出部17により測定することにより製膜装置3内の圧力が計測される。この高圧電源16は、例えば24Vの直流電源を図示しない昇圧部で高電圧出力とすることができる。また周囲にマグネット18を設置して磁場で囲むことでマグネトロン効果により放電を維持する効果がある。
【0023】
図3は、本実施形態に係る真空計システムの概略構成を示した図である。本実施形態に係る真空計システムは、第1制御機器(第1制御手段)21と、第2制御機器(第2制御手段)22とを備えている。
第1制御機器21、第2制御機器22は、例えば、CPU、RAM、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体等を搭載しており、該記憶媒体に格納されているプログラムをRAMに読み出して実行することにより、後述する各種制御等を実現させるものである。
【0024】
第1制御機器21は、冷陰極電離真空計1と製膜装置3との間に介在するバルブ2の開閉制御を行う。具体的には、バルブ2は、空気圧によって開閉する空圧バルブである。第1制御機器21とバルブ2との間には、電磁弁23が介在しており、第1制御機器21が電磁弁23にバルブ2の開閉を制御する開閉制御信号を出力し、この開閉制御信号に基づいて電磁弁23が作動してバルブ2に送る空気圧を制御することにより、バルブ2の開閉が制御される。
【0025】
第2制御機器22は、第1制御機器21と信号線を介して接続されており、第1制御機器21からバルブ2の開閉制御信号が入力される。また、第2制御機器22は、通信線及び電源用ケーブルを介して冷陰極電離真空計1と接続されている。具体的には、第2制御機器22は、RS−232Cを介して冷陰極電離真空計1と接続されており、RS−232Cのうちの一本の通信線が本実施形態においては24Vの電圧を供給する電源用ケーブルとして用いられ、他の通信線で計測信号を通信している。なお、供給する電圧は周辺機器の動作範囲であれば任意の電圧で良く24Vに限定するものではない。
【0026】
電源用ケーブルには、第1制御機器21からの制御信号Srに基づいて冷陰極電離真空計1への電源供給及び電源遮断を切り替えるリレーユニット(電源遮断手段)24が設けられている。
【0027】
図4は、第1制御機器21から電磁弁23に出力されるバルブ2の開閉制御信号Sv、第2制御機器22から電源用ケーブルに出力される24Vの電圧信号Vpgin、リレーユニット(R/U)24の制御信号Sr、リレーユニット24から冷陰極電離真空計1に供給される電圧信号Vpgout、および冷陰極電離真空計1における放電のタイミングが示されたタイミングチャートである。
【0028】
以下、図4を用いて図3に示した真空計システムの動作タイミングについて説明する。
まず、製膜装置3において真空引きが開始されると、第1制御機器21から電磁弁23に出力される開閉制御信号Svがオン状態(開状態)とされ、これに同期して、第1制御機器21からリレーユニット24に出力される制御信号Srがオン状態となる。ここで、第2制御機器22からは電源用ケーブルに24Vの電圧が常時供給されているので、電圧信号Vpginは常にオン状態、すなわち、24Vを保っている。
【0029】
また、リレーユニット24における制御信号Srがオン状態となることで、第2制御機器22から出力された24Vの電圧信号はリレーユニット24を介して冷陰極電離真空計1に供給される。これにより、冷陰極電離真空計1には電源が供給されることとなり、放電が実行される(Vpgoutがオン状態)。
【0030】
具体的には、冷陰極電離真空計1においては、上記バルブ2が開状態とされることで、図2に示した放電空間13に製膜装置内の気体が流入する。そして、24Vの電圧から放電開始電圧まで昇圧されると放電が開始され、そのときの放電電流が電圧検出部17によって検出されることにより、真空度が測定される。このとき、計測された真空度は、通信線を介して冷陰極電離真空計1から第2制御機器22へ通知される。そして、所定の真空度に達すると、第2制御機器22から第1制御機器21へ制御信号Stを出力して、高真空排気を完了する。すると、製膜装置3に設けられた処理基板が通過できるゲート弁(図示略)が開けられ、基板搬送装置(図示略)により製膜装置3内に基板が搬入され、ゲート弁が閉じられる。
【0031】
基板搬入が完了してから所定期間後(例えば、5秒後)において、第1制御機器21から電磁弁23に出力される開閉制御信号Svがオフ状態(閉状態)とされる。これにより、バルブ2が閉状態とされることで、製膜装置3と冷陰極電離真空計1における放電空間13との気体流通が遮断され、冷陰極電離真空計1内に製膜装置3内の気体が流入しなくなる。
また、上記開閉制御信号Svに同期して、リレーユニット24の制御信号Srがオフ状態とされる。これにより、リレーユニット24から冷陰極電離真空計1への電源供給が遮断され、冷陰極電離真空計1における放電が停止され、真空度の測定が終了される(Vpgoutがオフ状態)。
【0032】
この状態において、製膜装置3においては、製膜材料ガス供給が開始され、バラトロン真空計9で製膜装置3内の圧力を調整し、放電電極(図示略)にプラズマが発生させられることにより、基板上に製膜がされる製膜工程が実施される。そして、製膜が終了して、プラズマがオフとされると、それから所定期間後にバルブ2の開閉制御信号がオン状態とされるとともに、これに連動して、リレーユニット24の制御信号もオン状態とされる。これにより、冷陰極電離真空計1への電源供給が再開されて真空度を測定する(Vpgoutがオン状態)。そして、この状態で真空引きが開始され、高真空到達後にゲート弁(図示略)が開けられて基板が搬出され、以降、上記と同様の制御が繰り返し行われることとなる。
【0033】
以上説明してきたように、本実施形態に係る真空計システム及び真空処理システム10並びに冷陰極電離真空計1によれば、リレーユニット24などの電源遮断手段を第2制御機器22と冷陰極電離真空計1との間の電源用ケーブルの途中に設け、製膜装置3などの真空処理装置と冷陰極電離真空計1との間に設けられ、真空処理装置内と冷陰極電離真空計1の放電空間とを流通及び遮断させるバルブ2の開閉に連動して、冷陰極電離真空計1への電源の供給及び遮断を制御させる。これにより、製膜処理が実施されている期間において冷陰極電離真空計1の放電を停止させることができる。
【0034】
すなわち、冷陰極電離真空計1は、印加電圧が高く(例えば、3000V以上6000V以下)、冷陰極電離真空計1の起動に数秒程度の時間を要するために、真空度を計測するタイミングに頻繁に電源をオンにしてもすぐには真空度の計測ができないため、また、制御系の複雑化を避けるために、非計測期間の電源をオフにすることが運用上されていない。したがって、従来においては、真空処理装置の真空度を計測するために、冷陰極電離真空計1を一度起動させてしまうと、電源オン状態が維持され、放電が常に行われていた。つまり、図4に示したタイミングチャートに照らせば、1回目の真空引きが開始されるタイミングで冷陰極電離真空計1の放電が開始されると、その放電は、全ての基板における製膜処理が終了するまで維持されていた。
【0035】
これに対し、本実施形態に係る真空計システムでは、図4に示したように、冷陰極電離真空計による真空度測定の期間以外は、放電への電源供給をオンとオフするという簡素な制御で放電を停止させる(Vpgoutがオフの期間)。ここで、製膜処理のタクトタイム(図4に示すように、ある基板を対象とした真空引きが開始されてから、次の基板を対象とした真空引きが開始されるまでの1サイクルの期間)に対する冷陰極電離真空計1の使用期間は50%にも満たない。また、通常のバッチ式基板処理では、タクトタイムが3分程度と比較的長い時間を要していることから、冷陰極電離真空計1の電源をオンにして真空度を計測できるタイミングが数秒程度ずれても、全体の処理工程に及ぼす影響はほとんど発生しない。したがって、真空度の測定が必要とされる期間以外の期間は、冷陰極電離真空計1における放電を停止させることにより、従来に比べて放電時間を大幅に短縮することができ、放電による陰極および陽極への皮膜形成を効果的に抑制することができる。この結果、冷陰極電離真空計1のメンテナンスの間隔を延ばすことができ、当該冷陰極電離真空計が適用される真空処理装置の稼働率を向上させることが可能となる。
【0036】
以下の表1は、本実施形態に係る真空計システムの効果を示したものである。表1には、従来の運用のように常時放電をさせた場合と、本発明の真空計システムによる放電を行った場合における放電不良頻度、メンテナンス頻度、放電不良による稼働率低下割合、及び稼働率上昇値が示されている。
【0037】
【表1】

【0038】
上記表1において、放電不良頻度は以下の式で計算される。
【0039】
放電不良頻度[%]=放電不良発生時間/真空処理装置の稼働時間×100
【0040】
ここで、放電不良発生時間とは、プラズマ処理が終了後に高真空排気を行い、冷陰極電離真空計1が所定の計測時間以上に計測を継続している時間である。具体的には、図1におけるRVが閉、ならびにMVが開となって高真空排気が開始されてから冷陰極電離真空計1がオフとなるまでの時間が所定の正常時間より長い場合の時間の差であり、本実施形態においては、この時間の差が5秒以上長い場合をカウントしたものである。または、第2制御機器22の表示部(図示略)が異常値を示した時間も併せて放電不良発生時間に含めている。
【0041】
また、メンテナンス頻度[%]は、以下の式で計算される。
【0042】
メンテナンス頻度[%]=1回当たりのメンテナンス時間×年間メンテナンス回数/真空処理装置の年間稼働時間
【0043】
ここで、本発明におけるメンテナンス頻度は、0.10[%]とされているが、これは例えば年間におい通常に実施される定期メンテナンスの頻度に相当し、冷陰極電離真空計1に皮膜が形成されることなどによる不良に起因したメンテナンスが起因した頻度ではない。
【0044】
また、放電不良による稼働率低下割合は、放電不良頻度[%]+メンテナンス頻度[%]で計算される。
【0045】
改善による稼働率上昇率は、以下の式で計算される。
【0046】
改善による稼働率上昇率=従来の稼働率低下割合−本発明の稼働率低下割合
【0047】
上記のように、表1から製膜装置の稼働率が従来に比べて向上していることが検証された。
【0048】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態に係る真空計システム及び真空処理システム並びに冷陰極電離真空計について図を参照して説明する。
上述した第1実施形態では、電源用ケーブルにリレーユニット24を設け、このリレーユニット24により、第2制御機器22から冷陰極電離真空計1への電源供給を遮断することにより、冷陰極電離真空計1における放電の実行及び停止を制御していた。したがって、リレーユニット24などを設ける必要性が生じ、コストアップや装置の大型化を招く可能性があった。
この点を解消するべく、本実施形態では、第2制御機器22内において、冷陰極電離真空計1への電源供給の制御を行うこととしている。
以下、本実施形態に係る真空計システム及び真空処理システム並びに冷陰極電離真空計について上記第1実施形態と共通する点については説明を省略し、異なる点について主に説明する。
【0049】
図5は、本実施形態に係る第2制御機器22´の概略内部構造を示したブロック図である。図5に示すように、第1制御機器21と通信を行うための第1インターフェース31と、冷陰極電離真空計1との間で通信を行うとともに、冷陰極電離真空計1へ電力供給を行うための第2インターフェース32とが設けられている。電源33から供給される交流電圧は、AC/DC変換器34により直流電圧に変換されて第2インターフェース32に出力される構成とされている。電源33と第2インターフェース32内に設けられた冷陰極電離真空計1への電力供給のアース側経路との間には、電源供給を遮断する切替部35が設けられている。切替部35の一例としては、例えば、バイポーラトランジスタ、FET、IGBTなどの公知のスイッチング素子が挙げられる。
【0050】
上記切替部35は、第1インターフェース31を介して入力されるバルブ2の開閉制御信号により制御されるようになっている。具体的には、第1インターフェース31を介して入力されたバルブ2の開閉制御信号が変圧器(例えば、DC/DCコンバータ)36を介して切替部35(例えば、バイポーラトランジスタのベース)に印加されるような構成とされている。
【0051】
これにより、例えば、バルブ2の開閉制御信号としてオン信号が入力された場合には、このオン信号の電圧が変圧器36によってバイポーラトランジスタのベース電圧に適した電圧に変換され、切替部35のベースにVbが印加される。これにより、切替部35(バイポーラトランジスタ)がオン動作となり、アース側のラインが導通する。これにより、電源33からの電圧が第2インターフェース32、電源用ケーブルを介して冷陰極電離真空計1へ供給される電源のアース側が接続されるので、冷陰極電離真空計1へ電流が導通し、計測が可能となる。
【0052】
ここで、電源用ケーブルとしては、例えば、上述した第1実施形態と同様に、RS−232Cのうちの一本の通信線が使用される。
また、バルブ2の開閉制御信号としてオフ信号が第1インターフェース31から入力された場合には、トランジスタのゲートにオン電圧が印加されないこととなり、バイポーラトランジスタがオフする。これにより、第2インターフェース32内に設けた電力供給Voutのアース側電流経路がオフとなることで電源供給が遮断され、冷陰極電離真空計1への電源供給が遮断される。
【0053】
このように、本実施形態では、バルブ2の開閉制御信号を切替部35の制御信号として用いることにより、電源33から第2インターフェース32への電圧の供給及び遮断を制御して、冷陰極電離真空計1への電源供給を制御している。
【0054】
また、第2制御機器22の制御部(例えば、CPU、ICなどのデジタル素子で構成されている)37に第1インターフェース31から入力されるバルブ2の開閉制御信号、第2インターフェース32から入力される冷陰極電離真空計1の状態信号が入力されるようになっている。また、デジタル素子の電源は、AC/DC変換器34から出力される24Vの電圧から採るような構成とされている。
【0055】
制御部37は、表示部38に接続されており、第2インターフェース32から入力される冷陰極電離真空計1の状態を表示部38に表示させる。これにより、冷陰極電離真空計1に電源供給されている期間に限って冷陰極電離真空計1の動作状態をユーザに通知することが可能となる。
【0056】
図6は、第1制御機器21から出力されるバルブ2の開閉制御信号Sv、第2制御機器内における切替部35の入力信号(ここでは、バイポーラトランジスタのベース電圧信号)Vb、第2インターフェース32から出力される電源信号Vout、および冷陰極電離真空計1における放電のタイミングが示されたタイミングチャートである。
【0057】
ここで、バルブ2の開閉制御信号Svについては、図4に示した第1実施形態に係るバルブ2の開閉制御信号Svと同様である。図4に示すように、バルブ2が開状態にある場合には、切替部35であるスイッチング素子のベースに対してオン電圧が供給されることにより、第2制御機器22´から冷陰極電離真空計1に電源が供給され、放電が実施され、真空度が計測される。一方、バルブ2の開閉制御信号がオフ状態となると、切替部35のスイッチング素子のベースに対してオン電圧が供給されなくなるため、第2制御機器22´から冷陰極電離真空計1への電源供給が停止され、放電が停止され真空度の計測が終了する。
【0058】
以上説明してきたように、本実施形態に係る真空計システム及び真空処理システム並びに冷陰極電離真空計によれば、第2制御機器内において、冷陰極電離真空計1への電源供給を制御するので、第2制御機器内の制御基板にスイッチング素子等を追加するなどの簡便な改良により、冷陰極電離真空計1における放電を容易に制御することが可能となる。
【0059】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態に係る真空計システム及び真空処理システム並びに冷陰極電離真空計について図を参照して説明する。
上述した第1実施形態では、第2制御機器22と冷陰極電離真空計1とを接続する電源用ケーブル設けられたリレーユニット24により、冷陰極電離真空計1への電源供給を制御していたが、本実施形態では、冷陰極電離真空計内に設けられた、放電を実施するための電源供給の動作制御手段により、放電を制御することとしている。
【0060】
以下、本実施形態に係る真空計システム及び真空処理システム並びに冷陰極電離真空計について上記第1実施形態と共通する点については説明を省略し、異なる点について主に説明する。
【0061】
図7は、本実施形態に係る冷陰極電離真空計の駆動系に関する構成を示したブロック図である。本実施形態においては、第1制御機器21から出力されたバルブ2の開閉制御信号に基づく放電制御信号が第2制御機器において生成され、この放電制御信号が冷陰極電離真空計1´へ送信される。
【0062】
冷陰極電離真空計1´では、放電制御信号がインターフェース41を介して制御部(例えば、CPUやASICなどの制御用デジタル素子)42に入力される。制御部42は、放電制御信号がオンの場合には、放電を実施する電源供給の動作を行い、昇圧部43に出力する昇圧制御信号をオン状態とすることで、昇圧部43による昇圧を実行させる。昇圧部43により昇圧された高電圧は、高電圧出力部44に印加される。これにより、図2に示した放電空間13に放電が実行されることとなる。また、バルブ2の開閉制御信号がオフ状態になった場合には、放電制御信号もオフ状態とされる。これにより、処理部42は、昇圧部43に対してオフ状態の昇圧制御信号を出力することで、昇圧部43における昇圧を停止させる。これにより、高電圧が生成されなくなり、放電が停止される。
【0063】
図8は、第1制御機器21から出力されるバルブ2の開閉制御信号Sv、該バルブ2の開閉制御信号に基づいて第2制御機器で生成される放電制御信号Sv´、冷陰極電離真空計1の処理部42から昇圧部43に出力される昇圧制御信号Sdおよび放電のタイミングが示されたタイミングチャートである。
ここで、バルブ2の開閉制御信号Svについては、図4に示した第1実施形態に係るバルブ2の開閉制御信号Svと同様である。図4に示すように、バルブが開状態にある場合には、冷陰極電離真空計1´の処理部42から昇圧部43にオン状態の昇圧制御信号Sdが出力されることにより、放電が実施されて真空度が測定される。一方、バルブ2が閉状態にある場合には、冷陰極電離真空計1の処理部42から昇圧部43にオフ状態の昇圧制御信号Sdが出力されることにより、放電が停止され真空度の測定が終了する。
【0064】
以上説明してきたように、本実施形態に係る真空計システム及び真空処理システム並びに冷陰極電離真空計によれば、冷陰極電離真空計1´において放電の実行及び停止を制御するので、冷陰極電離真空計1´における制御基板を一部改良するという簡便な作業により、冷陰極電離真空計1´における放電を制御することができる。
【0065】
また、例えば、上述した第1または第2実施形態においては、冷陰極電離真空計1への電源供給を完全に遮断することにより放電を停止させるため、計測を実施していない電源が遮断されている期間においては、冷陰極電離真空計1から第2制御機器22へ通信信号などが全く戻ってこないこととなる。このため、第2制御機器22では、冷陰極電離真空計1の健全性の状態などが把握できず、例えば、次の計測にあたり電源を供給しても計測値が通信できないような不具合が発生した場合でも、その原因を確認できない可能性がある。
これに対し、本実施形態においては、冷陰極電離真空計1´に電源が供給されている状態を保持することができるため、冷陰極電離真空計1´から第2制御機器に対して、冷陰極電離真空計1´の健全性に関する情報などを定期的に通知することが可能となる。これにより、第2制御機器において、冷陰極電離真空計1´の状態をユーザに通知することが可能となる。
【符号の説明】
【0066】
1,1´ 冷陰極電離真空計
2 バルブ
3 製膜装置
21 第1制御機器
22,22´ 第2制御機器
23 電磁弁
24 リレーユニット
31 第1インターフェース
32 第2インターフェース
33 電源
34 AC/DC変換器
35 切替部
36 変圧器
37 制御部
38 表示部
41 インターフェース
42 制御部
43 昇圧部
44 高電圧出力部
45 測定子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空処理装置にバルブを介して取り付けられ、該真空処理装置内の圧力を計測する冷陰極電離真空計と、
前記バルブの開閉制御を行う第1制御手段と、
前記冷陰極電離真空計と通信線及び電源用ケーブルを介して接続されるとともに前記第1制御手段と信号線を介して接続され、前記第1制御手段から前記バルブの開閉制御信号が入力される第2制御手段と
を備え、
前記バルブが開状態にあるときに、前記冷陰極電離真空計の放電が開始されて計測が実施され、前記バルブが閉状態にあるときに、前記放電が停止されて計測が終了される真空計システム。
【請求項2】
前記電源用ケーブルの途中に設けられ、前記第1制御手段からの制御信号に基づいて、前記第2制御手段から前記冷陰極電離真空計への電源供給を遮断する電源遮断手段を備え、
前記第1制御手段は、前記バルブの開閉制御信号に同期した制御信号を前記電源遮断手段に出力する請求項1に記載の真空計システム。
【請求項3】
前記第2制御手段は、前記第1制御手段から入力される前記バルブの開閉制御信号に基づいて、前記電源用ケーブルを通じた前記冷陰極電離真空計への電源の供給及び遮断を制御する手段を具備する請求項1に記載の真空計システム。
【請求項4】
前記第2制御手段は、前記第1制御手段から入力される前記バルブの開閉制御信号に基づく放電制御信号を前記冷陰極電離真空計へ出力し、
前記冷陰極電離真空計は、前記放電制御信号に基づいて前記放電を実施するための電源供給の動作制御手段を具備し、前記放電の実行及び停止を制御する請求項1に記載の真空計システム。
【請求項5】
真空処理装置と、
前記真空処理装置の圧力を計測する請求項1から請求項4のいずれかに記載の真空計システムと
を備える真空処理システム。
【請求項6】
真空処理装置にバルブを介して取り付けられ、該真空処理装置内の圧力を計測する冷陰極電離真空計であって、
前記バルブが開状態にあるときに放電が開始されて計測が実施され、前記バルブが閉状態にあるときに、前記放電が停止されて計測が終了される冷陰極電離真空計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−181067(P2012−181067A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43262(P2011−43262)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】