説明

真菌および酵母種の同定用診断標的としてのSWI5遺伝子

本発明はSWI5遺伝子、それに対応するmRNA、特異的なプローブ、プライマーおよびそれに関連したオリゴヌクレオチド、並びに真菌および酵母種の検出および/または識別用の診断アッセイへの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一つ以上の真菌および酵母種の同定に使用するための核酸プライマーおよびプローブに関する。より詳細には、本発明は、SWI5遺伝子、それに関連した対応するRNA、特異的なプローブ、プライマーおよびオリゴヌクレオチド並びに真菌および酵母種間の検出および/または識別のための診断アッセイへの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
酵母および真菌の感染は、免疫不全患者の間で疾患率および大量死の主要な原因を意味する。酵母および真菌感染のリスクがある免疫不全患者の数は毎年増え続け、疾患を引き起こす真菌および酵母の因子のスペクトルも同様である。真菌感染、特に侵襲性の真菌感染による大量死は、特定のリスク群で30%以上である。数々の有効な抗真菌剤が増えているが、しかし抗真菌薬に対する内因性および出現抵抗の両方の認識によるものである。これら因子は、実験室試験における費用抑制の増大した必要性の一因となり、試験手順で実験室統合につながる。
【0003】
侵襲性真菌感染は増加している。2003年には900万人ものリスクを抱えた患者がいると見込まれ、そのうち120万人の感染は進行している。カンジダ種およびアスペルギルス種が、免疫低下患者に感染する最も顕著な病原菌としてランクされている。特に、感染が、泌尿器、呼吸器系および血流においてステント、カテーテルおよび整形の継ぎ目の挿入部位では普通である。およそ、10%の既知のカンジダ種がヒトへの感染にかかわる。侵襲性カンジダ症は、カンジダが血流に進入する際に起こり、アメリカ合衆国において8/100,000の人口確率で発生すると見込まれ、その死亡率は40%である。カンジダ・アルビカンスは血流感染の4番目に最も一般的な原因である。アスペルギルスは、通常一部の患者において生命を危うくする侵襲性感染まで進行し得る肺性の感染として発生し、そしてその死亡率は90%以上である。新生の真菌症因子は、フサリウム属種、シドスポリウム属種、接合菌類とトリコスポロン種を含む("Stakeholder Insight: Invasive fungal infections", Datamonitor, 2004年1月)。
【0004】
移植および外科術後患者、新生児、癌患者、糖尿病患者およびHIV/AIDの者を含む免疫不全患者は、侵襲性真菌感染を発現するリスクが高い(Datamonitor report: Stakeholder opinion -Invasive fungal infections, options outweigh replacements 2004)。多くの重度の敗血症のケースが毎年報告されている。医学的マネージメントの改善にもかかわらず、敗血症はまだ集中治療医学における最大の挑戦の一つを構成する。敗血症を引き起こすのに関与する微生物(バクテリア、真菌、酵母)は、乏しい感度(25〜82%)の微生物学的培養法を用いて病院検査室で伝統的に検出され、該方法は極めて時間がかかり、通常完了するのに2〜5日、そして真菌感染の診断には最大8日かかる。酵母や真菌により起こる感染の確定診断は、大抵特異的因子の臨床上の検体からの回収および識別、または明確な形態的特徴を有する真菌の顕微鏡による確認のいずれかに基づいている。
【0005】
しかしながら、これらの方法では感染因子に関して決定的な証明を得ることができない多くのケースがある。この場合、特異的なホスト抗体応答の検出を用いることができるが、これは再び患者の免疫状態の影響を受ける。バクテリアおよび真菌により通常生ずる血流感染の検出および同定では時間が重要である。効果的な治療は、速やかにかつ効率的に感染源を見つけ、抗生物質または抗真菌薬ついての適切な決断をなすことに依存する。病原菌を正しく同定した後だけに、特異的な抗生物質または抗真菌薬を用いる標的治療を始めることができる。多くの医師は、酵母および真菌の早期診断のためにより良好な生体外での増幅および直接検出の診断方法の発達を知りたがっている("Stakeholder Insight: Invasive fungal infections", Datamonitor, 2004年1月)。最近、ロシュ社は臨床上サンプルにおけるバクテリア、真菌および酵母のDNAの検出用のリアルタイムPCR系アッセイを販売した(Septifast*11)。したがって、臨床部門の生物分析用途に対し臨床的に重要なバクテリアおよび真菌の病原体用の新規で迅速な診断試験の開発が明らかに必要である。これが、核酸診断法(NAD)試験の用途に対する新規な真菌および酵母核酸標的を同定するように本発明者らを導いた。
【0006】
真菌および酵母核酸を基にした診断法は、リボソームRNA(rRNA)遺伝子、RNA転写物およびその関連するDNA/RNA領域に重く焦点を置いている。rRNA遺伝子は、すべての真菌種に高度に保存され、また分岐かつ独特な遺伝子間転写スペーサー領域を含有する。リボソームrRNAは3つの遺伝子、すなわち大きいサブユニット遺伝子(28S)、小サブユニット遺伝子(18S)および5.8S遺伝子を含む。28Sと18SrRNA遺伝子が5.8SrRNAと二つの内部転写スペーサー(ITS1およびITS2)によって分離されている。ITS領域は多数の配列多型を含むため、多くの研究者がこれらを標的とすることに集中した(Atkins and Clark, 2004)。rRNA遺伝子はまた、真菌ゲノム中に10コピー以上を有する多コピー遺伝子である。
【0007】
多くのグループが、真菌および酵母感染用の新たなアッセイを発展させることに取り組んでいる。米国特許出願公開第2004/044193号明細書は、多数の態様の中でカンジダ・アルビカンスの転写因子CaTEC1、そのインヒビター、カンジダ感染に関連する疾患の診断および治療方法、ヌクレオチド配列、タンパク質、ホスト細胞および/または抗体を含む診断用および医薬品用の組成物に関するものである。国際公開第0183824号は、カンジダ・アルビカンスおよび/またはカンジダ・デゥブィニエンシスからリボソーム核酸を検出するためのハイブリダイゼーション分析プローブおよび修飾オリゴヌクレオチドに関するものである。米国特許第6017699号明細書および米国特許第5426026号明細書は、五つの医学的に重要なカンジダ種からDNAを増幅および種分化するのに使用できるDNAプライマーのセットに関するものである。米国特許第6747137号明細書は、カンジダ感染の診断に有用な配列を開示する。様々な酵母および真菌種の診断のために、欧州特許第0422872号明細書と米国特許第5658726号明細書は、18SrRNA遺伝子を基にしたプローブを開示し、米国特許第5958693号明細書は、28SrRNAを基にしたプローブを開示する。米国特許第6017366号明細書は、様々なカンジダ種に対する核酸を基にした診断に使用するためのキチンシンターゼ遺伝子を基にした配列を開示する。
【0008】
より早くより正確な診断方法の発展が、特に変異ゲノム配列を有する耐性の毒性株の増大した母集団を生じさせる現代の抗真菌治療により起こる選択圧を考慮すると、必要であること明らかである。感染の微生物原因を早期に診断し得る方法は、感染を治療するための特異的に狭いスペクトルの抗生物質または抗真菌薬の選択を可能にする(Datamonitor report: Stakeholder opinion -Invasive fungal infections, options outweigh replacements 2004; Datamonitor report: Stakeholder Opinion-Sepsis, under reaction to an overreaction, 2006)。
【0009】
SWI5は、有糸分裂/Gap1(間期)スイッチに含まれる遺伝子を活性化する転写因子であり、細胞周期のGl期に発現する(Butler and Thiele 1991;Aerne et al, 1998;Akamatsu et al, 2003; Ellermeier et al, 2004;MacCallum et al, 2006)。SWI5の128の配列が、6つのアスペルギルス種のSWI5配列に関する配列およびネオサルトリア・フィシェリの1つのSWI5配列を包含するNCBI遺伝子バンクのデータベースで入手可能である。PCRプライマーが、アスペルギルス種のSWI5遺伝子用の配列情報を生成するために設計および適用された。SWI5は、いくつかのカンジダ種、例えばカンジダ・グラブラタ(MacCallum et al, 2006)に存在するが、他のもの、例えばカンジダ・アルビカンスには存在しない。従って、選択したカンジダ種の分子同定のためにSWI5を使用する可能性が存在する。
【発明の概要】
【0010】
(定義)
「合成オリゴヌクレオチド」は、ゲノムDNAまたは生物体に直接由来しない2つ以上のヌクレオチド塩基の核酸ポリマーの分子を参照する。合成オリゴヌクレオチドの用語は、化学的に作製または生体外で酵素的に合成したDNA、RNAおよびDNA/RNAハイブリッド分子を含むことを意図するものである。
【0011】
「オリゴヌクレオチド」は、共有結合で結合した二つ以上のヌクレオチドサブユニットを有するヌクレオチドポリマーである。オリゴヌクレオチドは、普通約10から約100のヌクレオチド類である。ヌクレオチドサブユニットの糖類は、リボース、デオキシリボースまたはOMeのような修飾誘導体とすることができる。複数のヌクレオチドサブユニットを、リン酸ジエステルリンケージ、修飾されたリンケージのようなリンケージによるか、又は相補的標的ヌクレオチド配列へのオリゴヌクレオチドのハイブリッド形成を阻害しない非ヌクレオチド部分により結合することができる。修飾されたリンケージは、標準のリン酸ジエステルリンケージをリン酸チオエートリンケージ、メチルホスホネートリンケージまたは中性のペプチドリンケージのような異なったリンケージで置換したものを含む。また、窒素含有塩基類似物を本発明に係るオリゴヌクレオチドの成分としてもよい。
【0012】
「標的核酸」は、標的核酸配列を含む核酸である。「標的核酸配列」、「標的ヌクレオチド配列」または「標的配列」は、相補的なオリゴヌクレオチドにハイブリッド形成し得る特異なデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド配列である。
【0013】
「オリゴヌクレオチドプローブ」は、標的核酸配列に十分に相補的なヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドで、高い厳しさのハイブリッド形成条件下で検出可能なハイブリッドプローブ:標的デュプレックスを形成することができる。オリゴヌクレオチドプローブは単離化学種で、高い厳しさのハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成を妨げない限り標的領域外の付加的ヌクレオチドを含んでもよい。非相補的な配列、例えばプロモーター配列、制限エンドヌクレアーゼ認識部位または触媒活性サイトのような所望の二次または三次構造を付与する配列を用いて、発明したプローブを用いる検出を容易にすることができる。オリゴヌクレオチドプローブを任意にラジオアイソトープ、蛍光性部分、化学発光、ナノ粒子部分、酵素またはリガンドのような検出可能部分で標識付けし、これを用いて、標的配列に対するプローブのハイブリッド形成を検出または確認することができる。オリゴヌクレオチドプローブは、約10から約100ヌクレオチド長のサイズ範囲にあるのが好ましいが、プローブは約500ヌクレオチド長と同等又はそれ以上、または10ヌクレオチド長未満とする事が可能である。
【0014】
「ハイブリッド」または「デュプレックス」は、二つの単鎖核酸配列間にワトソン・クリック塩基対又は相補的な塩基間の非標準塩基対により形成した複合体である。「ハイブリッド形成」は、核酸の二つの相補鎖を一緒にして二重鎖構造(「ハイブリッド」または「デュプレックス」)を形成する方法である。「真菌」又は「酵母」は、真菌界の生物体を意味し、また子嚢真菌門のあらゆる生物体に向ける。
【0015】
「相補性」は、DNAまたはRNAの単鎖の塩基配列によって得た物性で、ハイブリッド又は二本鎖DNA:DNA、RNA:RNA又はDNA:RNAを当該鎖上のワトソン・クリック塩基対間の水素結合により形成することができる。アデニン(A)は、通常チミン(T)またはウラシル(U)を補完し、一方グアニン(G)は通常シトシン(C)を補完する。
【0016】
「厳しさ」の用語は、ハイブリッド形成およびその後の処理工程中にある温度、イオン強度および溶媒組成を述べるのに使用する。当業者は、「厳しさ」の条件がこれらパラメーターを個別にまたは一緒に変えることにより変更し得ることを認識する。高い厳しさの条件下では、高度に相補的な核酸ハイブリッドのみが形成され、十分程度の相補性を持たないハイブリッドは形成されない。従って、アッセイ条件の厳しさは、ハイブリッドを形成する二つの核酸鎖間で必要な相補性の値を決定する。厳しさの条件を選択して標的と非標的核酸で形成されたハイブリッド間の安定性の違いを最大化する。
【0017】
「高い厳しさ」の条件では、核酸塩基対化が高頻度の相補塩基配列を有する核酸フラグメント間でのみ起きる(例えば、高い厳しさ条件下でのハイブリッド形成が約85−100%の同一性、好ましくは約70−100%の同一性のホモログ間で起き得る)。中間の厳しさの条件では、核酸塩基対化が中間頻度の相補塩基配列を有する核酸の間で起こる(例えば、「中間厳しさ」の条件下でのハイブリッド形成が約50−70%の同一性のホモログ間で起こり得る)。従って、「弱い」または「低い」厳しさの条件が、遺伝子的に様々な生物から得た核酸では、相補的な配列の頻度が通常低いので、しばしば要求される。
【0018】
「高い厳しさ」の条件は、約500ヌクレオチド長のプローブを用いる場合、5xSSPE(43.8g/l NaCl、6.9g/l NaH2PO4H2Oおよび1.85g/l EDTA、NaOHで7.4にph調整)、0.5%SDS、5xデンハード試薬および100μg/mlの変性サーモン精液DNAからなる溶液中42℃で結合またはハイブリッド形成し、引き続き0.1xSSPE、1.0%SDSを含む溶液中42℃で洗浄することと同等のものである。
【0019】
「中間厳しさ」の条件は、約500ヌクレオチド長のプローブを用いる場合、5xSSPE(43.8g/l NaCl、6.9g/l NaH2PO4H2Oおよび1.85g/l EDTA、NaOHで7.4にph調整)、0.5%SDS、5xデンハード試薬および100μg/mlの変性サーモン精液DNAからなる溶液中42℃で結合またはハイブリッド形成し、引き続き1.0xSSPE、1.0%SDSを含む溶液中42℃で洗浄することと同等のものでである。
【0020】
「低い厳しさ」の条件は、約500ヌクレオチド長のプローブを用いる場合、5xSSPE(43.8g/l NaCl、6.9g/l NaH2PO4H2Oおよび1.85g/l EDTA、NaOHで7.4にph調整)、0.1%SDS、5xデンハード試薬(50xデンハードは500ml当たり5gのフィコール(タイプ400、ファルマシア社)、5gのBSA(フラクションV、シグマ社)を含む)および100マイクロg/mlの変性サーモン精液DNAからなる溶液中42℃で結合またはハイブリッド形成し、引き続き5xSSPE、0.1%SDSを含む溶液中42℃で洗浄することと同等のものである。
【0021】
核酸生体外増幅を基にした技術との関連では、「厳しさ」を生体外増幅技術に特有の温度条件およびイオン性バッファ条件を適用することにより達成する。例えば、PCRおよびリアルタイムPCRとの関連では、「厳しさ」がオリゴヌクレオチドプライマーのハイブリッド形成用で、かつプローブのリアルタイムPCRハイブリッド形成に関する特異的な温度およびイオン性バッファ強度を標的核酸の生体外増幅のために標的核酸へ適用することによって達成される。
【0022】
当業者は、本発明の実質的に対応するプローブが付託された配列から変わり、同じ標的核酸配列に対しまだハイブリッド形成し得ることを理解するであろう。かかる核酸からの変化が、配列中の同一塩基の百分率、すなわちプローブとその標的配列との間で完璧に相補的な塩基の百分率を単位として提示することができる。本発明のプローブは、これら百分率が100%から80%または約10塩基標的配列における0塩基不一致から約10塩基標的配列における約2塩基不一致である場合に、核酸配列に実質的に対応する。好ましい実施態様では、百分率が約100%から約85%である。より好ましい実施態様では、百分率が約90%から約100%であり、他の好ましい実施態様では百分率が約95%から約100%である。「十分に相補的」または「実質的に相補的」とは、高い厳しさのハイブリッド形成条件下で検出のために安定であるハイブリッドを形成するに十分な量の近接する相補的なヌクレオチドを有する核酸を意味する。
【0023】
二つ以上の核酸またはポリペプチド配列との関連での用語「同一」またはパーセント「同一」は、後述するデフォルトパラメーターを有するBLASTまたはBLAST2.0配列比較アルゴリズムを用いるか、または手動配置および視覚検査により測定して、同じであるアミノ酸残基またはヌクレオチドの同じかまたは特定の百分率(すなわち、比較ウィンドウまたは指定領域において最大一致のために比較および配列した際の特定領域に対し90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはより高い同一性)を有する二つ以上の配列またはサブ配列を指す(例えば、NCBIウェブサイトncbi.nlm.nih.gov/BLAST/等参照)。かかる配列を「実質的に同一」とする。この定義はまた、テスト配列の相補体に引用するか、または適用することができる。この定義はまた、削除および/または追加した配列並びに置換した配列も含む。後述するように、好ましいアルゴリズムは間隙等の説明をすることができる。同一性は、好ましくは少なくとも約25アミノ酸またはヌクレオチド長さである領域、より好ましくは50〜100アミノ酸またはヌクレオチド長さである領域に存在する。
【0024】
配列比較に関して、通常一つの配列が参照配列として作用し、これに対しテスト配列を比較する。配列比較アルゴリズムを使用するときは、テストおよび参照配列をコンピュータに入れ、所要に応じて配列座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメーターを指令する。好ましくは、初期設定パラメーターを用いるか、または代替パラメーターを指定することができる。次に、配列比較アルゴリズムが、プログラムパラメータを基にして参照配列に対するテスト配列のパーセント配列同一性を計算する。
【0025】
ここで用いる「比較ウィンドウ」は、20〜600、通常約50〜約200、より一般的には約100〜約150からなる群から選択した数の連続位置のいずれか一つの部分への言及を含み、ここで二つの配列を最適に整えた後、ある配列を同一数の連続位置の参照配列と比較することができる。比較のための配列の配置方法は当業界で周知である。比較のための配列の最適な配置を、例えばスミスとウォーターマンAdv. Appl. Math. 2:482 (1981)の部分的相同性アルゴリズムによるか、ニードルマンとワンチJ. MoI. Biol. 48:443 (1970) の相同性配置アルゴリズムによるか、ピアースンとリプマンProc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444 (1988)の類似方法の検索によるか、これらアルゴリズムのコンピュータ処理遂行(GAP, BESTFIT, FASTA, and TFASTA in the Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WI)によるか、または手動配置および視覚検査(Current Protocols in Molecular Biology (Ausubel et al., eds. 1987-2005, Wiley Interscience参照)によって実施できる。
【0026】
パーセント配列同一性および配列類似性を決定するのに適したアルゴリズムの好ましい例は、BLASTおよびBLAST2.0アルゴリズムであり、これはアルツシュル他のNuc.Acids Res. 25:3389-3402 (1977)およびAltschul et al, J. MoI. Biol. 215:403-410 (1990)にそれぞれ記載されている。BLASTおよびBLAST2.0をここに記述したパラメーターで用いて、本発明の核酸およびタンパクのパーセント配列同一性を決定する。BLAST分析を行うためのソフトウェアはNational Center for Biotechnology Informationを通じて公に入手可能である。このアルゴリズムは、データベース配列における同じ長さのワードで並べた際にある正の値の限界値Tを合致または満足する問い合わせ配列における長さWの短いワードを識別することによって先ず高いスコアの配列対(HSP)を識別することを包含する。Tは近傍ワードスコア閾値として引用する(Altschul et al., supra)。これら初期近傍ワードヒットは、それらを含むより長いHSPを見出すための検索開始用のシーズとして作用する。累積的な配置スコアを増大することができる限り、ワードヒットはそれぞれの配列に沿って両方向に伸張する。ヌクレオチド配列に関しては、累積的なスコアがパラメータM(一対の合致残基の得点スコアであり、常に>0)およびN(不適合残基のペナルティスコア、常に<0)を用いて算出される。アミノ酸配列に関しては、スコアマトリックスを用いて累積的なスコアを算出する。各方向のワードヒットの伸長は、累積的配置スコアがその最大達成値から量Xだけ下落するか、累積的なスコアが一つ以上の負のスコア残基配置の蓄積によりゼロ以下となるか、またはいずれかの配列の端に到達したときに中断される。BLASTアルゴリズムパラメータW、TおよびXは、配置の感度および速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)は、規定値として11のワード長さ(W)、10の期待値(E)、M=5、N=-4および両鎖の比較を使用する。アミノ酸配列に関して、BLASTPプログラムは、規定値として3のワード長さ、10の期待値(E)、BLOSUM62スコアマトリックス(Henikoff & Henikoff, Proc. Natl. Acad. ScL USA 89:10915 (1989)を参照)、50の配列(B)、10の期待値(E)、M=5、N=-4および両鎖の比較を使用する。
【0027】
「核酸」は、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドおよびその一本鎖または二本鎖形のポリマー、およびその相補体である。この用語は、既知のヌクレオチド類似体または修正された骨格残基またはリンケージを含む核酸を包含し、合成、天然物および非天然物であり、参照核酸と類似の結合特性を有し、参照ヌクレオチドに類似した方法で代謝される。かかる類似体の例としては、ホスホロチオエート、ホスホロアミド酸塩、メチルホスホン酸塩、不斉メチルホスホン酸塩、2-O-メチルリボヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
「核酸ハイブリッド」または「プローブ:標的デュプレックス」は二本鎖で、水素結合した構造、好ましくは約10〜約100のヌクレオチド長、より好ましくは14〜50のヌクレオチド長である構造を意味するが、これはある程度オリゴヌクレオチドプローブの全体長さに依存する。該構造は、例えば化学発光または蛍光検出、オートラジオグラフィー、電気化学的分析またはゲル電気泳動によって検出されるに十分安定である。このようなハイブリッドは、RNA:RNA、RNA:DNAまたはDNA:DNAデュプレックス分子を含む。
【0029】
「RNAおよびDNA等価物」は、同じ相補的な塩基対ハイブリッド形成特性を有するRNAおよびDNA分子に関連する。RNAおよびDNA等価物は、異なる糖類(すなわちリボース対デオキシリボース)を有し、RNAのウラシルおよびDNAのチミンの存在により相違し得る。RNAおよびDNA等価物間の違いは、等価物が同じ程度の特定配列に対する相補性を有するので、実質的に対応する核酸配列の違いに寄与しない。
【0030】
「優先的にハイブリッド形成する」とは、高い厳しさのハイブリッド形成条件下でオリゴヌクレオチドプローブがその標的核酸をハイブリッド形成して、安定なプローブ:非標的ハイブリッド(他の生物由来の非標的核酸の存在を示す)を形成することなく安定なプローブ:標的ハイブリッド(標的核酸の存在を示す)を形成することを意味する。従って、プローブは非標的核酸に比べて十分に大きな範囲で標的核酸をハイブリッド形成し、当業者がこれら種(例えばカンジダ)の存在を正確に検出し、他の生命体から区別することができる。優先的なハイブリッド形成は、従来既知で、ここに記載した技術を用いて測定することができる。
【0031】
「セラノスティクス診断」法とは、疾患を診断し、正しい治療レジームを選択し、治療への患者の反応をモニタする診断テストの使用を意味する。本発明のセラノスティクス診断は、患者から集めたサンプル、標本または検体への本発明のNAD分析の使用に基づいてもよい。
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
本発明の目的は、一つ以上の酵母および真菌類の種を検出し、同定するための配列および/または診断アッセイを提供することにある。本発明者らは、SWI5遺伝子配列を使用してアスペルギルス属SWI5遺伝子に特異的なプライマーおよびプローブを設計した。かかるプライマーは、酵母および真菌類の種の検出および、カンジダ属およびアスペルギルス属種間の識別を可能にする。例えば、本発明は、異なるカンジダ属種間および異なるアスペルギルス属種の中の区別を可能にできるプライマーおよびプローブを更に提供する。
【課題を解決するための手段】
【0033】
本発明は、SWI5遺伝子またはその対応するmRNAの少なくとも一部に結合し得るオリゴヌクレオチドプローブを備える真菌および/または酵母類の種の検出および同定用診断キットを提供する。オリゴヌクレオチドプローブは、SWI5遺伝子またはその対応するmRNAの少なくとも一部に対して実質的に相同的または実質的に相補的な配列を有し得る。従って、これは相補DNAまたはRNA分子と結合またはハイブリッド形成することができる。SWI5遺伝子は、真菌類のSWI5遺伝子であってもよい。SWI5遺伝子は、酵母のSWI5遺伝子であってもよい。核酸分子は、合成でもよい。本キットは、一つ以上のかかるプローブを備えてもよい。特に、該キットは、複数個のこのようなプローブを備えることができる。加えて、かかるキットは、例えば細菌種またはウイルスのような他の生物用の付加的なプローブを備えてもよい。
【0034】
同定された配列は、生体外DNA/RNA増幅に基づいた検出システムのみならず、シグナル増幅に基づいた検出システムにも適している。さらに、適当な標的として同定された本発明の配列は、有利で、本発明の態様をグループまたは種特異的標的に指向させ得るある領域において重要な遺伝子内配列異質性を有することと、また本発明の態様を真菌および酵母類の診断用の直接的な核酸検出技術、シグナル増幅核酸検出技術および核酸生体外増幅技術での使用のための遺伝子特異性の真菌および酵母類プライマーおよびプローブに指向させ得るある領域で重要な配列均一性を有することの利点を付与する。SWI5配列が診断検査法のマルチ試験機能およびオートメーションを可能にする。
【0035】
本発明の配列の利点の1つは、密接に関連した酵母および真菌類の種間の遺伝子内SWI5ヌクレオチド配列多様性が真菌および酵母の検出用診断検査での使用のための特異的なプライマーおよびプローブを設計することを可能にするということである。SWI5ヌクレオチド配列の両方のDNAおよびRNAを、診断検査における直接検出、シグナル増幅検出および生体外増幅技術で用いることができる。SWI5配列が診断検査法におけるマルチ試験機能およびオートメーションを可能にする。
【0036】
本キットは、SWI5遺伝子の少なくとも一部の増幅用の一つのプライマーを更に備えてもよい。該キットは、SWI5遺伝子の一部用のフォワードおよびリバースプライマーを適当に含む。
【0037】
SWI5遺伝子の一部分は、塩基対位置1〜2319までの遺伝子領域の一部と等価としてもよい。
【0038】
アスペルギルス・フミガタスの塩基対位置1から塩基対位置2319と等価である位置は、他の生物においても見出すことができるが、必ずしも同じ位置である必要はない。
【0039】
SWI5遺伝子の一部分は、アスペルギルス種のSWI5遺伝子の2つの領域と等価としてもよい。その二つの領域とは、アスペルギルス・フミガタスの塩基対位置38から塩基対位置472(領域1)およびアスペルギルス・フミガタスの塩基対位置1423から塩基対位置1627(領域3)である。
【0040】
アスペルギルス・フミガタスの塩基対位置38から塩基対位置472および塩基対位置1423から1627に等価な位置は、他の生物においても見出すことができるが、必ずしも同じ位置である必要はない。
【0041】
当該キットはまた、追加のプローブを含んでもよい。
【0042】
かかるプローブは、配列番号17、18、42、45、48、51、54、61、64または67の群から選択した配列、またはその配列に実質的に相同的または実質的に相補的で、SWI5遺伝子用プローブとしても作用し得る配列を有することができる。
【0043】
本キットは、少なくとも一つのフォワード生体外増幅プライマーおよび少なくとも一つのリバース生体外増幅プライマーを含んでもよい。かかるプライマーは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、36、38、40、43、46、49、52、55、58、59、62または65によって優先的にハイブリッド形成するのと同じヌクレオチド配列に優先的にハイブリッド形成するフォワードプライマーおよび/または配列番号2, 4, 6, 8, 10, 12, 14, 16, 37, 39, 41, 44, 47, 50, 53, 56, 57, 60, 63 or 66,によって優先的にハイブリッド形成するのと同じヌクレオチド配列に優先的にハイブリッド形成するリバースプライマーまたは、これに対し実質的に相同または相補的で、フォワード若しくはリバース増幅プライマーとしても作用し得る配列を含んでもよい。
【0044】
本診断キットは、直接的な核酸検出技術、シグナル増幅核酸検出技術、およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、核酸配列ベース増幅(NASBA)、鎖置換増幅(SDA)、転写媒体増幅(TMA)、分岐DNA技術(bDNA)およびローリングサークル増幅技術(RCAT)の一つ以上から選択した核酸生体外増幅技術、または他の生体外酵素増幅技術に基づくものとすることができる。
【0045】
本発明はまた、配列番号1から配列番号95からなる群およびそれに対し実質的に相同またはその一部に実質的に相補的で、かつSWI5遺伝子に基づいた診断法の機能を有する配列から選択した核酸分子を提供する。当該核酸分子は、配列番号1から配列番号95の核酸分子の一部に実質的に相同または実質的に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドを含んでもよい。本発明はまた、下記の工程:
(i) 試験サンプルを適切な条件下で上述した少なくとも一つのオリゴヌクレオチドプローブと混合する工程、
(ii) 前記オリゴヌクレオチドを有する試験サンプル中に存在し得るあらゆる核酸を高い厳しさの条件下でハイブリッド形成してプローブ:標的デュプレックスを形成する工程、
(iii) プローブ:標的デュプレックスが存在するかを求め、デュプレックスの存在が試験サンプル中の標的生物の存在を積極的に同定する工程を備えることを特徴とする試験サンプル中の標的生物を検出する方法を提供する。
【0046】
本発明の核酸分子およびキットを、一つ以上の真菌種および/または酵母の存在を検出して、患者内の真菌種および/または酵母の滴定濃度を測定する診断アッセイか、若しくは患者内の真菌種および/または酵母の滴定濃度を減らすかまたは環境中の真菌種および/または酵母汚染を測定するように設計した治療レジームの効率を評価する方法に用いてもよい。かかる環境は、病院、食品サンプル、例えば水のような環境サンプル、製造過程中のサンプルのような産業サンプル、または生物汚染度または質の評価を必要としている最終製品でもよい。
【0047】
本発明のキットおよび核酸分子は、SWI5遺伝子機能を崩壊させるのに用いることができる一つ以上の崩壊剤の同定および/または特徴評価に用いることができる。崩壊剤は、アンチセンスRNA、PNAおよびsiRNAからなる群から選択することができる。
【0048】
本発明のある実施態様においては、種特異的なプローブを含む核酸分子を用いて、同じ属の種を識別することができる。
【0049】
本発明のオリゴヌクレオチドは、真菌種および酵母の標的生物の核酸を検出するための組成物で提供してもよい。かかる組成物はまた、組成物の意図した使用に見合ったバッファ、酵素、洗剤、塩類等を含むことができる。また、ここに記載する少なくとも一つの合成オリゴヌクレオチドを含むような本発明の組成物、キットおよび方法が、合成オリゴヌクレオチドの代わりにまたは一緒に合成ヌクレオチド断片と実質的に同じ配列を有する天然オリゴヌクレオチドを含んでもよいと想定される。
【0050】
本発明はまた、少なくとも一つのフォワード生体外増幅プライマーおよび少なくとも一つのリバース生体外増幅プライマーを含む標的真菌種および/または酵母類生物用の生体外増幅診断キットを提供し、ここで前記フォワード増幅プライマーを一つ以上の配列またはそれに実質的に相同または相補的で、フォワード増幅プライマーとしても作用し得る配列からなる群から選択し、また前記リバース増幅プライマーを一つ以上の配列またはそれに実質的に相同または相補的で、リバース増幅プライマーとしても作用し得る一つ以上の配列からなる群から選択する。
【0051】
本発明はまた、候補真菌種および/または酵母の種の存在を検出するための診断キットを提供し、候補真菌種および/または酵母の種のSWI5遺伝子の配列に実質的に相補的または実質的に相同である配列からなる一つ以上のDNAプローブを備える。
【0052】
アスペルギルス属またはカンジダ・グラブラタSWl5ポリヌクレオチドの検出に有用なキットは、配列番号17、18、42、45、48、51、54、61、64若しくは67から選択したオリゴヌクレオチドプローブ、または配列番号17、18、42、45、48、51、54、61、64若しくは67によって優先的にハイブリッド形成するのと同じヌクレオチド配列に優先的にハイブリッド形成するプローブを備える。該キットは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、36、38、40、43、46、49、52、55、58、59、62若しくは65から選択したフォワードプライマー、または配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、36、38、40、43、46、49、52、55、58、59、62若しくは65によって優先的にハイブリッド形成するのと同じヌクレオチド配列に優先的にハイブリッド形成するプローブおよび/または配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、37、39、41、44、47、50、53、56、57、60、63若しくは66から選択したリバースプライマーまたは配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、37、39、41、44、47、50、53、56、57、60、63によって優先的にハイブリッド形成するのと同じヌクレオチド配列に優先的にハイブリッド形成するプローブを更に備えてもよい。
【0053】
アスペルギルス・フミガタスSWl5ポリヌクレオチドの検出若しくは同定用キットは、配列番号17、18、42および54または配列番号17、18、42または54によって優先的にハイブリッド形成するのと同じヌクレオチド配列に優先的にハイブリッド形成する配列から選択したオリゴヌクレオチドプローブを備え、また配列番号43、55、58または配列番号43、55、58によって優先的にハイブリッド形成するのと同じヌクレオチド配列に優先的にハイブリッド形成する配列から選択したフォワードプライマーと、配列番号44、56、57または配列番号44、56、57によって優先的にハイブリッド形成するのと同じヌクレオチド配列に優先的にハイブリッド形成する配列から選択したリバースプライマーとを更に備える
【0054】
アスペルギルス・フラバスSWl5ポリヌクレオチドの検出若しくは同定用キットは、配列番号45、61または配列番号45、61によって優先的にハイブリッド形成するのと同じヌクレオチド配列に優先的にハイブリッド形成する配列から選択したオリゴヌクレオチドプローブを備え、また配列番号46、59および配列番号46、59によって優先的にハイブリッド形成するのと同じヌクレオチド配列に優先的にハイブリッド形成する配列から選択したフォワードプライマーと、配列番号47、60および配列番号47、60によって優先的にハイブリッド形成するのと同じヌクレオチド配列に優先的にハイブリッド形成する配列から選択したリバースプライマーとを更に備える
【0055】
アスペルギルス・ニガーSWl5ポリヌクレオチドの検出若しくは同定用キットは、配列番号48、67および配列番号48、67によって優先的にハイブリッド形成するのと同じヌクレオチド配列に優先的にハイブリッド形成する配列から選択したオリゴヌクレオチドプローブを備え、また配列番号48、65および配列番号48、65によって優先的にハイブリッド形成するのと同じヌクレオチド配列に優先的にハイブリッド形成する配列から選択したフォワードプライマーと、配列番号49、66および配列番号49、66によって優先的にハイブリッド形成するのと同じヌクレオチド配列に優先的にハイブリッド形成する配列から選択したリバースプライマーとを更に備える
【0056】
アスペルギルス・テレウスSWl5ポリヌクレオチドの検出若しくは同定用キットは、配列番号51、64および配列番号51、64によって優先的にハイブリッド形成するのと同じヌクレオチド配列に優先的にハイブリッド形成する配列から選択したオリゴヌクレオチドプローブを備え、また配列番号52、62および配列番号52、62によって優先的にハイブリッド形成するのと同じヌクレオチド配列に優先的にハイブリッド形成する配列から選択したフォワードプライマーと、配列番号53、63および配列番号53、63によって優先的にハイブリッド形成するのと同じヌクレオチド配列に優先的にハイブリッド形成する配列から選択したリバースプライマーとを更に備える
【0057】
本発明はまた、SWI5遺伝子またはそれのmRNA転写体、真菌類のSWI5遺伝子またはそのmRNA転写体、酵母SWI5遺伝子またはそのmRNA転写体、配列番号1から配列番号95の一つ以上からなる群から選択した一つ以上に実質的に相同または実質的に相補的なヌクレオチド配列を有する一つ以上の合成オリゴヌクレオチドを提供する。
【0058】
ヌクレオチドは、DNAを含んでもよい。ヌクレオチドは、RNAを含んでもよい。ヌクレオチドは、DNA、RNAおよびPNAの混合物を含んでもよい。ヌクレオチドは、合成ヌクレオチドを含んでもよい。本発明の配列(および本発明の方法、キット、組成物およびアッセイに関する配列)は、SWI5遺伝子のコード化領域の一部に実質的に相同であるように選択してもよい。該遺伝子は、標的真菌または酵母類の生物からの遺伝子であってもよい。本発明の配列は、該配列の一部分にプローブ:標的デュプレックスを形成し得るに十分であることが好ましい。
【0059】
本発明はまた、標的真菌または酵母類の生物用診断キットを提供するもので、本発明のオリゴヌクレオチド(合成でもよい)に実質的に相同または実質的に相補的なオリゴヌクレオチドプローブを備える。生体外増幅プライマーとしての使用に適した配列が、オリゴヌクレオチドプローブとしての使用にも適しているのはいうまでもなく、増幅プライマーが約15ヌクレオチドから約30ヌクレオチド(より好ましくは約15〜約23、最も好ましくは約20〜約23)間の相補的な部分を有することが好ましく、本発明のオリゴヌクレオチドプローブが任意適当な長さでもあってもよい。当業者は、異なるハイブリッド形成および/またはアニーリングの条件が選択したオリゴヌクレオチドプローブの長さ、性質および構造(例えばライトサイクラー用ハイブリッド形成プローブ対、Taqman5´エクソヌクレアーゼプローブ、ヘアピンループ構造等)および配列に依存していることがわかるであろう。
【0060】
本発明のキットおよびアッセイはまた、オリゴヌクレオチドプローブを表面に固定して提供してもよい。このような表面は、ビーズ、膜、カラム、計量棒、ナノ粒子、診断プレートのウェルまたは反応チューブの内側のような反応室の内面、キャピラリーまたは容器等とすることができる。
【0061】
標的真菌類の生物は、アスペルギルス・フミガタス、ネオサルトリア・フィシェリ、アスペルギルス・クラバトゥス、アスペルギルス・ニガー、アスペルギルス・テレウス、アスペルギルス・フラヴァス、アスペルギルス・ベルシコロールおよびアスペルギルス・ニドランスからなる群から選択することができる。
【0062】
標的酵母生物は、カンジダ属種、カンジダ・グラブラタでよい。
【0063】
これらの状況下で、本発明の増幅プライマーおよびオリゴヌクレオチドプローブは、一つ以上若しくは大部分または実質的に全ての標的酵母生物集団の所望生物を同定し得るように遺伝子特異的または属特異的な領域に設計されてもよい。
【0064】
標的真菌類の生物は、すでに実験的に示した所定セットのプライマー用のアスペルギルス属種であり、より好ましくはアスペルギルス・フミガタス、アスペルギルス・クラバトゥス、アスペルギルス・ニガー、アスペルギルス・テレウス、アスペルギルス・フラヴァス、アスペルギルス・ベルシコロールおよびアスペルギルス・ニドランスからなる群から選択することができる。
【0065】
試験サンプルは、標的真菌および/または酵母類の生物の細胞を含んでもよい。本方法はまた、前記試験サンプルに存在し得る標的真菌および/または酵母類生物のあらゆる細胞から核酸を解放する工程を備えることができる。理想的には、試験サンプルが、患者から得たサンプル(綿棒、血液、尿、唾液、気管支の洗浄歯の試験片、皮膚試験片、頭皮試験片、移植器官生検、大便、粘液または排泄物サンプルなど)の溶解物である。試験サンプルは、食品サンプル、水サンプル、環境サンプル、最終製品、最終製品または製造過程の産業試料であってもよい。
【0066】
本発明はまた、一つ以上の酵母または真菌類の種の存在の診断アッセイへの配列番号1から配列番号35のいずれか一つの使用を提供する。当該種は、カンジダ・グラブラタ、アスペルギルス・フミガタス、ネオサルトリア・フィシェリ、アスペルギルス・クラバトゥス、アスペルギルス・ニガー、アスペルギルス・テレウス、アスペルギルス・フラヴァス、アスペルギルス・ベルシコロールおよびアスペルギルス・ニドランスからなる群から選択してもよい。
【0067】
本発明はまた、臨床検査、セラノスティクス診断、食品の安全診断、工業細菌学診断、環境モニタリング、獣医学的診断、バイオ・テロリズム診断での使用のために本発明の合成オリゴヌクレオチドの一つ以上を含むキットを提供する。当該キットは、適切なサンプル収集計測器、試薬容器、バッファ、標識化成分、溶液、洗剤および補助溶液からなる群から選択した物品の一つ以上を含むこともできる。本発明はまた、セラノスティクス診断、食品安全性診断、工業細菌学診断、環境モニタリング、獣医学的診断、バイオ・テロリズム診断への本発明の配列、組成物、ヌクレオチド断片、アッセイおよびキットの使用を提供する。
【0068】
核酸分子、組成物、キットまたは方法を、真菌および/または酵母の種の検出用診断核酸ベースアッセイに用いてもよい。
【0069】
核酸分子、組成物、キットまたは方法を診断アッセイに用いて、患者の真菌および/または酵母類の滴定濃度を測定することができる。滴定濃度を生体外で計量してもよい。
【0070】
核酸分子、組成物、キットまたは方法を、患者の真菌および/または酵母類滴定濃度を減らすように設計された治療レジームの有効性を評価する方法に用いることができ、これは治療レジームの一つ以上のキー段階で患者の真菌および/または酵母類滴定濃度を評価(生体内方法または生体外方法によって)する工程を備える。適切なキー段階は、治療前、治療の間、および治療後を含んでもよい。治療レジームは、調合薬のような抗真菌薬を含んでもよい。
【0071】
核酸分子、組成物、キットまたは方法を、例えば病院において潜在的な真菌および/または酵母類汚染を測定するための診断アッセイに用いてもよい。
【0072】
核酸分子、組成物、キットまたは方法を、SWI5遺伝子機能を崩壊させるのに用い得る一つ以上の崩壊剤の同定および/または特徴評価に用いてもよい。適当な崩壊剤を、アンチセンスRNA、PNA、siRNAからなる群から選択することができる。
【0073】
本発明を、以下の図を参照して説明する。以下の詳細な説明および添付の図は単に例示および説明であり、本発明の更なる説明を提供することを目的とし、いかなる形であれ本発明の範囲を制限しない。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】アスペルギルス・フミガタスのSWI5遺伝子における選択したプライマー結合部位。標的領域(1、2および3)に下線を引く(標的領域1の位置:38〜472、標的領域2の位置:1034-1241、標的領域3の位置:1423-1627)。
【図2】SWI5(標的領域1)の増幅断片におけるアスペルギルス・フミガタスのプローブPl-AspSWI5-l(下線および太字)の結合部位。PCRプライマーAspSWI5-l-F/AspSWI5-l-Rを強調する。
【図3】SWI5(標的領域3)の増幅断片におけるアスペルギルス・フミガタスプローブPl-AspSWI5-3(下線および太字)の結合部位。PCRプライマーAspSWI5-3-F/AspSWI5-3-Rを強調する。
【図4】TaqManプローブPl-AspSWI5-lを有するSWI5遺伝子の領域1に基づくアスペルギルス・フミガタス用のリアルタイムPCRアッセイからの増幅プロット図であり、アッセイの特異性を、6種の密接に関連したアスペルギルス属種およびカンジダ・アルビカンス由来のDNAのパネルに対して試験した。試験した3つのアスペルギルス・フミガタス株を検出し、他の試験した種からのDNAとの交差反応は見られなかった。
【図5】TaqManプローブPl-AspSWI5-3を有するSWI5遺伝子の領域3に基づくアスペルギルス・フミガタス用のリアルタイムPCRアッセイからの増幅プロット図であり、アッセイの特異性を、6種の密接に関連したアスペルギルス属種およびカンジダ・アルビカンス由来のDNAのパネルに対して試験した。試験した3つのアスペルギルス・フミガタス株を検出し、他の試験した種からのDNAとの交差反応は見られなかった。
【図6】アスペルギルス・フミガタス、アスペルギルス・フラバス、アスペルギルス・ニガーおよびアスペルギルス・テレウス用のSWi5アッセイの排他性。排他性アッセイが、変性および95℃で5秒間および60℃で10秒間のアニーリングを含む50サイクルの熱サイクル条件であらかじめ行われた。プローブは、交差反応を観察することなく設計目的種のみを検出した。
【図7】アスペルギルス・フミガタス Afum_SWI5_lアッセイの検出限界。アスペルギルス・フミガタスアッセイAfum_SWI5_lのLODが、50サイクルについて95℃で5秒間および60℃で10秒間のアニーリングであらかじめ行われた。
【図8】SWI5 アスペルギルス・テレウス、Aterr_SWI5_lの検出限界。結果は、アスペルギルス・テレウスAterr_SWI5_lアッセイ用のLODを示す。熱サイクル条件は、50サイクルについて95℃で5秒間および60℃で10秒間のアニーリングを含む。一反応当たり105細胞等価物のLODが得られた。
【図9】アスペルギルス・フミガタス Afum_SWI5_2の検出限界。グラフは、アスペルギルス・フミガタスAfum_SWI5_2アッセイに対しあらかじめ行ったLODアッセイで得られた結果を示す。グラフaに示した結果は、50サイクルについて変性に続いて95℃で10秒および60℃で30秒のアニーリングをそれぞれ行って得られた。グラフbに示した結果は、40サイクルについて変性に続いて95℃で5秒および60℃で20秒のアニーリングをそれぞれ行って得られた。得られたLODは、100細胞等価であった。
【図10】アスペルギルス・フラバス、アスペルギルス・ニガーおよびアスペルギルス・テレウス用のSWI5_2アッセイの検出限界。アニーリングは、45サイクルについて95℃で5秒および60℃で10秒であった。グラフcに示したアスペルギルス・ニガーアッセイは、10細胞等価のLODを有する唯一の成功したアッセイであった。
【図11】SWI5配列情報のマスターアライメント。
【発明を実施するための形態】
【0075】
(実施例1)
(材料および方法)
(細胞培養)
アスペルギルス属種を、サブロー・ブロス(4%のwt/volブドウ糖、1%のwt/volペプトン、1.5%の寒天)または寒天中で25℃で3-4日間培養した。
【0076】
(DNA 抽出)
アスペルギルス属種を、DNA単離前にリチカーゼまたはザイモラーゼ酵素で予備処理した。DNAをアスペルギルス属種からメーカープロトコルに従ってMagNA pure 酵母およびバクテリア単離キットIIIと組み合わせたMagNA Pureシステム(Roche Molecular Systems社)を用いて単離した。
【0077】
(アスペルギルス種のSWI5遺伝子領域のDNAシークエンシング)
アスペルギルス種用のSWI5遺伝子の公的に入手可能な配列を、NCBI遺伝子バンクデータベースから取得し、Clustal Wを用いて整列した。PCRプライマーの組合せを用いて、アスペルギルス・フミガタスの塩基対1〜塩基対2319に等価なアスペルギルス種のSWI5のサブ領域を増幅した。例えば、PCRプライマーAspSWI5-1-F/ AspSWI5-1-Rが、アスペルギルス・フミガタスXM_749401.1の塩基対位置38から472に等価なアスペルギルス種の領域を増幅するように設計された(領域1、図1)。PCRプライマーAspSWI5-2-F/AspSWI5-2-Rが、アスペルギルス・フミガタスの塩基対位置1034から1241に等価なアスペルギルス属種の領域を増幅するように設計された(領域2、図1)。AspSWI5-3-F/AspSWI5-3-Rが、アスペルギルス・フミガタスXM_749401.1の塩基対位置1423から1627に等価なアスペルギルス属種の領域を増幅するように設計された(領域3、図1)。SWI5遺伝子領域を、アスペルギルス属種の範囲において表2に概説した試薬および表3に記載した熱サイクル条件またはその変更を用いるiCycler BioRad PCR機械またはPTC200 Peltier 熱サイクル機(MJ Research社)で増幅した。PCR反応生成物を、シークエンシングのためにドイツのSequiserve社に送られるメーカーの説明書によるRoche 高純度PCR 生成物精製キットまたはExoSAP-ITキット(USB)で精製し、フォワード増幅プライマーAspSWI5-l-FまたはAspSWI5-3-Fを用いて配列決定した。
【0078】
DNA配列情報が次のように生成された。アスペルギルス属領域1配列情報が5つのアスペルギルス属種(アスペルギルス・フミガタス、アスペルギルス・ニドランス、アスペルギルス・クラバトゥス、アスペルギルス・ニガー、アスペルギルス・フラヴァス)およびネオサルトリア・フィシェリについて生成された。アスペルギルス属領域3配列情報が3つのアスペルギルス属種(アスペルギルス・フミガタス、アスペルギルス・ニドランス、アスペルギルス・ニガー)およびネオサルトリア・フィシェリについて生成された。
【0079】
【表1】

【0080】
【表2】

【0081】
【表3】

【0082】
【表4】

【0083】
【表5】

【0084】
【表6】

【0085】
(結果)
(プライマーおよびプローブ設計)
アスペルギルス種のSWI5遺伝子用の公的に入手可能な配列情報を、アスペルギルス種のSWI5遺伝子の新しく作製した配列情報で整列させ、バイオ情報科学ツールを用いて分析した。種特異性のプローブを、アスペルギルス・フミガタスで収集されたSWI5配列情報に基づいて設計した(領域1および3)(表4)。図2および3は、アスペルギルス・フミガタスの増幅および検出用のPCRプライマーおよびTaqMan DNAプローブの相対位置を示す。
【0086】
(リアルタイムPCR)
アスペルギルス・フミガタスの同定用のTaqManプローブの特異性は、表5および6に概説した試薬および熱サイクル条件を用いるライトサイクラーに対するリアルタイムPCRアッセイで証明された。SWI5遺伝子領域1に基づくアスペルギルス・フミガタスアッセイに関して、PCRプライマーAspSWI5-l-F/AspSWI5-l-RをTaqManプローブ、Pl-AspSWI5-lと組合わせた。SWI5遺伝子領域3に基づくアスペルギルス・フミガタスアッセイに関して、PCRプライマーAspSWI5-3-F/AspSWI5-3-RをTaqManプローブ、Pl-AspSWI5-3と併用した。
【0087】
アスペルギルス・フミガタスの検出用アッセイの特異性は、密接に関連したアスペルギルス種およびカンジダ・アルビカンスの範囲からのDNAをアスペルギルス・フミガタスのリアルタイムPCRアッセイに含めることによって確認された。該アッセイは、アスペルギルス・フミガタスを検出したが、試験したカンジダ・アルビカンスまたは他のいかなるアスペルギルス属種由来のDNAを検出しないか、もしくは交差反応しなかった。図4−5は、SWI5領域1および3に基づくアスペルギルス・フミガタスリアルタイムPCRアッセイおよびアスペルギルス・フミガタス用アッセイの特異性を示す。
【0088】
(実施例2)
アスペルギルス・ニドランス、アスペルギルス・ニガーおよびアスペルギルス・テレウスを増幅する追加プライマーを設計した。これらプライマーは、配列決定されたこれらの種からPCR生成物を作製した。該プライマーの配列を表7に概説する。AnigSWI5プライマーセットは、位置43〜512を増幅して長さが469塩基対のPCR生成物を生ずるように設計され、AterrSWI5プライマーセットは、469塩基対のPCR生成物を生ずる位置44〜450を増幅し、またAnidSWI5プライマーは、406塩基対のPCR生成物を生ずる位置40〜510を増幅した。
【0089】
8つのアスペルギルス種を表す30株(表8)が、4つの異なるプライマーセットでうまく配列決定された。
【0090】
【表7】

【0091】
【表8】

【0092】
8種のアスペルギルス属を表す30配列が生成された。これら配列を付表1にリストする。アライメントはClustal Wソフトウェアを使用して作製し、相同性および配列差を同定した(図11)。
【0093】
(結果)
(プライマーおよびプローブの設計)
生成された配列情報が、Clustal Wを用いて整列された。リアルタイムPCRアッセイ用の潜在的なプライマーおよびプローブが、アスペルギルス・フミガタス、アスペルギルス・フラバス、アスペルギルス・ニガーおよびアスペルギルス・テレウスを増幅および検出するように設計された。これらプライマーおよびプローブを表9に概説する。これらのアッセイをLC480で評価した。
【0094】
プローブAfum_SWI5_l、Aflav_SWI5_l、Anig_SWI5_lおよびAterr_SWI5_lを含むアッセイが、50サイクルについて95℃で10秒および60℃で30秒のアニーリングを含む熱サイクリング条件下で特異的であることがわかった(図6)。該アッセイで試験した種は、アスペルギルス・フミガタス、アスペルギルス・フラバス、アスペルギルス・ニガー、アスペルギルス・テレウス、アスペルギルス・カンジダス、アスペルギルス・クラバタス、アスペルギルス・グラウクス、アスペルギルス・ニドランス、アスペルギルス・ベルシコロルおよびネオサルトリア・フィシェリであった。
【0095】
これらアッセイのLODを調べるために、50サイクルについて95℃で5秒間および60℃で10秒間のサイクル条件を試験した。これは、全アッセイ時間を減らすために行った。10細胞等価物のLODをアスペルギルス・フミガタスのAfum_SWI5アッセイに関して得た(図7)。しかしながら、他の3つのアッセイは同じように機能しなかった。アスペルギルス・テレウスのAterr_SWI5_lアッセイは、105細胞等価物のLODをもたらした(図8)。アスペルギルス・ニガーおよびアスペルギルス・フラバスのアッセイはLODを生じなかった(データは非提示)。
【0096】
アッセイを改良するために、新しいプライマーおよびプローブ(表9)を目的の種のSWI5ターゲットの検出のために設計した。新しいアスペルギルス・フミガタスアッセイAfum_SWI5_2の検出限界は、50サイクルについて95℃で10秒および60℃で30秒のアニーリングを含む熱サイクル条件下での一反応当たり2.5細胞等価物であることがわかった(図9a)。
【0097】
Afum_SWI5_2アッセイのアニーリング時間を減らした場合、一反応当たり100細胞のLOD(図9b)を得た。アスペルギルス・ニガーアッセイAnig_SWI5_2は、一反応当たり5細胞の検出限界を有する可能性を示した(図10)。
【0098】
【表9】

【0099】
【表10】

【0100】
【表11】

【0101】
(考察)
免疫不全患者間の酵母および真菌感染の数は拡大している。この増加の一因は、多くの酵母および真菌種の抗真菌剤に対する耐性の増加である。従って、真菌および酵母種の早期の診断を可能にする速くて正確な診断法を開発する必要がある。早期の診断は、感染を治療するために特異的な狭いスペクトルの抗生物質または抗真菌薬を選択することができることにある。本発明は、一つ以上の真菌および酵母類の種を検出および同定するための配列および/または診断アッセイを提供する。本発明者らは、アスペルギルス種のSWI5遺伝子の配列を利用して、この遺伝子の領域に特異的なプライマーおよびプローブを設計する。SWI5遺伝子は、Gl相においてかつGl/M境界で発現する遺伝子の転写活性化に必須である亜鉛フィンガーDNA結合タンパク質をコード化する。配列が密接に関連した酵母および真菌種の間に保存される。SWI5配列は、ある領域において重要な遺伝子内配列異質性を有する一方、他の領域において重要な均質性を有するが、その特性が酵母および真菌種の特異的な標的の検出のために行われるプライマーおよびプローブの設計および属特異的な診断標的の検出のそれぞれにSWI5を理想的な候補とする。本発明は、酵母および真菌類の種の検出を可能にする。
【0102】
本発明に関してここに用いる「備える/からなる」および「有する/含む」の用語は、表明した特徴、整数、工程または成分の存在を特定するのに用いるが、一つ以上の他の特徴、整数、工程、成分またはそのグループの存在または追加を排除するものではない。
【0103】
明確にするため、別々の実施態様と関連して記載した本発明の特定の特徴は、単一実施態様に組合せて提供してもよいと認識している。反対に、簡潔さのために、単一実施態様と関連して記載した本発明の多様な特徴は、別々にまたは任意適当な補助組み合わせで提供してもよい。
【0104】
本発明は、一つ以上の酵母または真菌種を検出および同定するための配列および/または診断アッセイを提供する。本発明者らは、SWl 5遺伝子配列を用いてアスペルギルスおよびカンジダ・グラブラタSW15ポリヌクレオチド配列に特異的であるプライマーおよびプローブを設計した。かかるプライマーは、酵母および真菌種の検出を可能にするだけではなく、アスペルギルス種の同定およびアスペルギルス種およびカンジダ・グラブラタ間の識別をも可能にする。更に本発明は、アスペルギルス種およびカンジダ・グラブラタの同定を可能にするプライマーおよびプローブを提供する。
【0105】
ここで引用した全ての特許、特許出願、刊行物および登録番号は、その全体を参照して援用する。
【0106】
ここに開示したいかなる配列もPatentln3.3ソフトウェアの付属の配列リストのその副本と異なる限り、本明細書の本文の範囲内の配列は正しいバージョンである。
【0107】
(配列番号)
Nまたはx=あらゆるヌクレオチド;w=a/t、m=a/c、r=a/g、k=g/t、s=c/g、y=c/t、h=a/t/c、v=a/g/c、d=a/g/t、b=g/t/c。場合によっては、特異的な変質オプションを括弧において示す:例えば:(a/g)は、AかGである。
【0108】


















【0109】
(引用文献)
Aerne BL, Johnson AL, Toyn JH, Johnston LH.
Swi5 controls a novel wave of cyclin synthesis in late mitosis. MoI Biol Cell. 1998 Apr;9(4):945-56

Akamatsu Y, Dziadkowiec D, Ikeguchi M, Shinagawa H, Iwasaki H.
Two different Swi5 -containing protein complexes are involved in mating-type switching and recombination repair in fission yeast. Proc Natl Acad Sci U S A.,2003 Dec 23;100(26): 15770-5. Epub 2003 Dec 8

Butler G, Thiele DJ.
ACE2, an activator of yeast metallothionein expression which is homologous to SWI5. MoI Cell Biol. 1991 Jan;l l(l):476-85

MacCallum DM, Findon H, Kenny CC, Butler G, Haynes K, Odds FC.
Different consequences of ACE2 and SWI5 gene disruptions for virulence of pathogenic and nonpathogenic yeasts. Infect Immun. 2006 Sep;74(9):5244-8

Ellermeier C, Schmidt H, Smith GR.
Swi5 acts in meiotic DNA joint molecule formation in Schizosaccharomyces pombe. Genetics. 2004 Dec;168(4): 1891-8. Epub 2004 Sep 30

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SWI5遺伝子またはその対応mRNAの少なくとも一部に結合し得るオリゴヌクレオチドプローブを備えることを特徴とする真菌または酵母の種用の診断キット。
【請求項2】
前記SWI5遺伝子の一部が、アスペルギルス属SWI5遺伝子の塩基対位置1から塩基対位置2319の遺伝子領域の一部である請求項1から3のいずれかに記載のキット。
【請求項3】
前記SWI5遺伝子の一部が、アスペルギルス属SWI5遺伝子の塩基対位置38から塩基対位置472または塩基対位置1423から塩基対位置1627の遺伝子領域の一部である請求項1から3のいずれかに記載のキット。
【請求項4】
前記アスペルギルス属SWI5遺伝子の塩基対位置1から塩基対位置2319、塩基対位置38から塩基対位置472、および塩基対位置1423から塩基対位置1627の遺伝子領域の一部用のプローブを備える前記請求項のいずれかに記載のキット。
【請求項5】
前記プローブを配列番号17、18、42、45、48、51、54、61、64若しくは67またはこれと実質的に類似または相補的で、プローブとしても作用し得る配列から選択する前記請求項のいずれかに記載の診断キット。
【請求項6】
前記SWI5遺伝子の少なくとも一部の増幅用のプライマーを更に備える前記請求項のいずれかに記載のキット。
【請求項7】
前記SWI5遺伝子の一部用のフォワードプライマーおよびリバースプライマーを備える前記請求項のいずれかに記載のキット。
【請求項8】
少なくとも一つのフォワード生体外増幅プライマーおよび少なくとも一つのリバース生体外増幅プライマーを備え、前記フォワード増幅プライマーを配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、36、38、40、43、46、49、52、55、58、59、62または65からなる群またはそれに対し実質的に類似または相補的で、フォワード増幅プライマーとしても作用し得る配列から選択し、また前記リバース増幅プライマーを配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、37、39、41、44、47、50、53、56、57、60、63または66からなる群またはそれに対し実質的に類似または相補的で、リバース増幅プライマーとしても作用し得る配列から選択する前記請求項のいずれかに記載のキット。
【請求項9】
直接的な核酸検出技術、シグナル増幅核酸検出技術、およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、核酸配列ベース増幅(NASBA)、鎖置換増幅(SDA)、転写媒体増幅(TMA)、分岐DNA技術(bDNA)およびローリングサークル増幅技術(RCAT)の一つ以上から選択した核酸生体外増幅技術、または他の生体外酵素増幅技術に基づく請求項8に記載の診断キット。
【請求項10】
配列番号1から配列番号95からなる群およびそれに対し若しくはその一部に対し実質的に相同又は実質的に相補的で、SWI5遺伝子に基づいた診断の機能を有する配列から選択される核酸分子。
【請求項11】
請求項10に記載の核酸分子の一部と実質的に相同または実質的に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドを備える核酸分子。
【請求項12】
試験サンプル中の標的生物を検出するに当たり、
(i) 前記試験サンプルを適切な条件下でSWI5遺伝子またはその対応するmRNAの少なくとも一部に結合し得る少なくとも一つのオリゴヌクレオチドプローブと混合する工程と、
(ii) 前記オリゴヌクレオチドを有する試験サンプル中に存在し得るあらゆる核酸を高い厳しさの条件下でハイブリッド形成してプローブ:標的デュプレックスを形成する工程と、
(iii) プローブ:標的デュプレックスが存在するかを求め、該デュプレックスの存在が試験サンプル中の標的生物の存在を積極的に同定する工程とを備えることを特徴とする検出方法。
【請求項13】
前記プローブを、配列番号17、18、42、45、48、51、54、61、64または67からなる群またはそれに対し実質的に相同または実質的に相補的で、SWI5遺伝子用プローブとしても作用し得る配列から選択する請求項12に記載の方法。
【請求項14】
一つ以上の真菌および/または酵母種の存在を検出するための診断アッセイへの請求項10または11に記載の核酸分子の使用。
【請求項15】
患者内の真菌および/または酵母類の滴定濃度を測定するための診断アッセイへの請求項1〜9のいずれかに記載のキット若しくは請求項10または11に記載の核酸分子の使用。
【請求項16】
患者内の真菌および/または酵母類の滴定濃度を減らすように設計された治療レジームの有効性を評価するに当たり、
請求項1〜9のいずれかに記載されたキット若しくは請求項10または11に記載の核酸分子を前記治療レジームの一つ以上のキー段階で使用することを備える評価方法。
【請求項17】
環境中の真菌および/または酵母類の汚染を測定するための診断アッセイへの請求項1〜9のいずれかに記載のキット若しくは請求項10または11に記載の核酸分子の使用。
【請求項18】
前記環境が病院、食品サンプル、水のような環境サンプル、製造過程のサンプルのような産業サンプル、または生物汚染度または質の評価を必要とする最終製品である請求項17に記載の使用。
【請求項19】
SWI5遺伝子機能を崩壊させるのに用い得る一つ以上の崩壊剤の同定および/または特徴評価への請求項1〜9のいずれかに記載のキット若しくは請求項10または11に記載の核酸分子の使用。
【請求項20】
前記崩壊剤をアンチセンスRNA、PNA、siRNAからなる群から選択する請求項19に記載の使用。
【請求項21】
添付図を参照して実質的に本明細書に記載されたキット。
【請求項22】
添付図を参照して実質的に本明細書に記載された核酸。
【請求項23】
添付図を参照して実質的に本明細書に記載された方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2011−522556(P2011−522556A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513004(P2011−513004)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【国際出願番号】PCT/EP2009/057346
【国際公開番号】WO2009/150244
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(509237767)ナショナル ユニバーシティー オブ アイルランド, ゴールウェイ (12)
【Fターム(参考)】