真菌ストレスタンパク質HSP90と結合する新規な抗体分子および核酸
アミノ酸スペーサーにより連結されたVHドメインとVLドメインを含むscFvペプチドが開示される。VHドメインは、配列番号64の配列と少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む。VLドメインは、配列番号66の配列と少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む。scFvペプチドはまた、VHドメインのC28に相当する位置にアミノ酸置換または欠失も含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真菌ストレスタンパク質hsp90と特異的に結合する新規な抗体分子、このようなペプチドをコードする核酸および医薬組成物ならびにその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
hsp90真菌ストレスタンパク質と結合する抗体フラグメントならびにその治療的使用は、例えばWO01/76627またはWO05/102386に記載されている。Mycograb(登録商標)(Efungumab)としても知られるこの抗体フラグメントは、リンカーペプチドにより連結された免疫グロブリンのVHドメインとVLドメインを含む融合タンパク質である。このような抗体フラグメントは「一本鎖可変フラグメント」(scFv)としても知られる。Mycograb(登録商標)は大腸菌(E.coli)での発酵により封入体の形態で産生され、細胞塊から抽出され、再折りたたみされた後、変性条件下でクロマトグラフィー工程により精製される。自然条件下で行われた特徴付け研究では、efungumabタンパク質には多量体または凝集塊(ここでは「多量体」と「凝集塊」は互換的に用いられる)を形成する傾向があることが示された。このような凝集塊、特に高分子量凝集塊は、治療的使用に望ましいものではない可能性がある。よって、治療的使用には、高分子量凝集塊を排除もしくは低減すること、またはこのような凝集塊の大多数に含まれる単量体の数を一定の範囲、例えば10〜100個の単量体、例えば11〜73個または26〜57個の単量体となるように凝集を制御することが望ましい可能性がある。
【発明の概要】
【0003】
今回、本発明は、例えば折りたたみ特性および/または凝集塊の形成に関して有利な特性を有する、hsp90真菌ストレスタンパク質と結合する、改良されたscFvペプチドを提供する。よって、本発明のペプチドは治療的使用に特に有用である。
【0004】
本発明の第一の局面によれば、アミノ酸スペーサーにより連結されたVHドメインとVLドメインを含み、該VHドメインが配列番号64の配列と少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含み、そして該VLドメインが配列番号66の配列と少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むscFvペプチドが提供され、ここで、該scFvペプチドは:
(a)VHドメインのC28、I29、H68、N85、C97およびその組合せからなる群から選択されるものに相当する位置におけるアミノ酸置換または欠失;
(b)VLドメインのV2、V3、F10、F14、A39、N76およびその組合せからなる群から選択されるものに相当する位置におけるアミノ酸置換または欠失;
(c)アミノ酸スペーサーが配列(GGGGS)n(式中、nは4〜6の間である)を含むこと;
(d)VHドメインが、配列番号68の配列またはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むN末端pelBシグナル配列をさらに含むこと;
(e)VLドメインが、VHドメインのN末端側末端に位置すること;および
(f)特徴(a)〜(e)の組合せ
からなる群から選択される付加的特徴を含む。
【0005】
VHドメインは配列番号64の配列と少なくとも90%、95%、99%または100%の同一性を有する配列を含むことが好ましい。また、VLドメインは配列番号66の配列と少なくとも90%、95%、99%または100%の同一性を有する配列を含むことも好ましい。付加的特徴は配列同一性のレベルとは無関係に存在すると理解すべきである。例えば、付加的特徴がC28位でのアミノ酸置換であれば、VHドメインが配列番号64と80%の配列同一性しかない配列を含む態様であっても、この置換が存在する。
【0006】
好都合には、VHドメインのアミノ酸置換はC28Y、C28S、I29S、H68R、N85S、C97Y、C97Sおよびその組合せからなる群から選択される。置換C28Yが特に好ましい。
【0007】
有利には、VLドメインのアミノ酸置換はV2I、V3Q、F10S、F14S、A39K、N76Sおよびその組合せからなる群から選択される。
【0008】
好ましくは、scFvペプチドは、配列番号8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60および62(配列中、Xaaはシステイン以外のアミノ酸残基を表し、N末端メチオニン残基は所望により切断されていてもよい)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。Xaaはチロシン残基を表すことが好ましい。
【0009】
一態様では、XaaはTyr(Y)である。別の態様では、XaaはAla(A)、Leu(L)、Ile(I)、Val(V)、Pro(P)またはMet(M)であり;さらに別の態様では、XaaはPhe(F)またはTry(W)であり;さらに別の態様では、XaaはGly(G)であり;さらに別の態様では、XはSer(S)またはThr(T)であり;さらに別の態様では、XaaはGlu(E)またはAsp(D)であり;さらに別の態様では、XaaはGln(Q)またはAsn(N)であり;さらに別の態様では、XaaはArg(R)、Lys(K)またはHis(H)である。
【0010】
好ましくは、scFvペプチドは、C末端に精製タグ、より好ましくは、6ヒスチジン残基の配列をさらに含む。
【0011】
本発明の別の態様によれば、配列番号8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60および62で示されるアミノ酸配列からなる、または本質的になるscFvペプチドが提供され、該ペプチドは、所望により、例えばHisタグなどの精製タグを含んでもよい(例えば、配列番号10、22または34で示される通り)。
【0012】
精製タグは一般にその分子の治療効果には寄与せず、従って、本発明のscFvフラグメントの精製後に除去可能である。
【0013】
本発明の別の態様によれば、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60および62で示されるアミノ酸配列を含むscFvペプチドが提供される。一態様では、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60および62で示されるアミノ酸配列からなる、または本質的になるscFvペプチドが提供され、該ペプチドは、所望により、例えばHisタグなどの精製タグを含んでもよい(例えば、配列番号2、4または20で示される通り)。
【0014】
当業者により容易に認識される通り、本発明のペプチドの最初のMet残基はまた、大腸菌で発現させる場合には、例えば大腸菌MAP(メチオニンアミノペプチダーゼ)によりin vivoで切断され得る。
【0015】
本発明のscFvペプチドは、例えば、アミノ酸配列(GGGGS)n(配列中、nは1〜12の整数、例えば、1、2、3、4または5である)を有するアミノ酸スペーサー(用語「スペーサー」と「リンカー」は互換的に用いられる)により連結された2つのドメインを含む。VHで示される一方のドメインは、抗体フラグメントの重鎖部分(例えば、配列番号2および配列番号30で示されるアミノ酸配列のscFvフラグメントのアミノ酸残基2〜122、または配列番号32のアミノ酸残基132〜152に相当)に相当する。VLで示される他方のドメインは、抗体フラグメントの軽鎖部分(例えば、配列番号2のアミノ酸残基138〜246、または配列番号12のアミノ酸残基138〜246、または配列番号32のアミノ酸残基2〜110に相当)に相当する。VHまたはVLドメインは本発明のscFvペプチドのN末端に位置してもよく、すなわち、これらの分子は次のように連結され得る:VH−リンカー−VLまたはVL−リンカー−VH。
【0016】
任意選択のpelBシグナル配列は、大腸菌で発現されるとき、該ペプチドの溶解度を高めるために、周辺細胞質膜への該ペプチドの細胞下局在をもたらす。
【0017】
一態様では、配列番号30または32で示されるアミノ酸配列を含むscFvフラグメントが提供される。別の態様では、配列番号30または32で示されるアミノ酸配列からなる、または実質的になるscFvペプチドが提供され、該ペプチドは、所望により、例えばHisタグなどの精製タグを含んでもよい。
【0018】
一局面において、本発明は、次の位置:C29X、I30X、H69X、N86X、C98X、V139X、V140X、F147X、F151X、A176X、N213X(ここで、Xは配列番号2で示されるもの以外のアミノ酸を表す(番号は配列番号2で示される通りであり、他の突然変異体の相当するアミノ酸位置は容易に同定可能である))の1個所以上に少なくとも1個のアミノ酸置換を有する、VHおよびVLドメインと本発明のリンカーとを含むscFvフラグメント(例えば、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、30、32または34で示される通り)を提供する。好ましい態様において、本発明は、以下のアミノ酸置換:C29YまたはC29S、I30S、H69R、N86S、C98YまたはC98S、V139I、V140Q、F147S、F151S、A176K、N213Sの少なくとも1つを有するscFvフラグメントを提供する。この局面に関してのアミノ酸の番号はN末端メチオニン残基を含むと認識すべきである。
【0019】
一態様では、配列番号24、26または28で示されるアミノ酸配列を含むscFvフラグメントが提供される。別の態様では、配列番号24、26または28で示されるアミノ酸配列からなる、または本質的になるscFvペプチドが提供され、該ペプチドは、所望により、例えばHisタグなどの精製タグを含んでもよい。
【0020】
本発明のペプチドは治療薬として有用である。よって、本発明の一局面では、例えば、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60および62(配列中、Xaaは上記の通り定義される)で示されるアミノ酸配列を含む本発明のscFvペプチドを、薬学上許容される賦形剤、希釈剤または担体と組み合わせて含む医薬組成物が提供される。好適な賦形剤の詳細は、Remington's Pharmaceutical Sciences and US Pharmacopoeia, 1984, Mack Publishing Company, Easton, PA, USAに示されている。賦形剤の例としては、医薬級(Ph Eur)尿素およびL−アルギニン(Ph Eur)が挙げられる。例えば、本発明のscFvペプチドの典型的な製剤は、10mgの純粋なscFvペプチド、150mgの医薬級(Ph Eur)尿素および174mg L−アルギニン(Ph Eur)を5mlの水で再構成したものである。
【0021】
本発明のscFvペプチドまたは医薬組成物は、0.1〜10mg/kg患者体重の範囲の用量で投与することができる。0.5〜5mg/kg体重の範囲の用量が好ましく、約1mg/kgの投与量が特に好ましい。該医薬組成物は経口投与が可能である。
【0022】
本発明のペプチドは、例えば、WO01/76627またはWO05/102386(それぞれ出典明示により本明細書の一部とされる)に開示されている通り真菌感染の処置に有用である。例えば、本発明のペプチドは、浸潤性カンジダ症または浸潤性アスペルギルス症または浸潤性髄膜炎などの全身性真菌感染症、例えば、病原性カンジダ属カンジダ・アルビカンス(C. albicans)、カンジダ・トロピカリス(C. tropicalis)およびカンジダ・クルセイ(C. krusei)ならびに低病原性カンジダ・パラプシロシス(C. parapsilosis)およびトルロプシス・グラブラタ(Torulopsis glabrata)の処置に有用である。本発明のペプチドはまた、カンジダ、クリプトコッカス、ヒストプラズマ、アスペルギルス、トルロプシス、ムコール症、ブラストミセス症、コクシジオイデス症、パラコクシジオイデス症の生物体またはマラリアによる感染症の処置にも有用である。よって、本発明は、例えば、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60および62(配列中、Xaa上記の通り定義される)で示されるアミノ酸配列を含む、有効量の本発明のscFvペプチドを患者に投与することを含む、真菌感染患者の処置方法を提供する。N末端Metは所望により切断されていてもよい。
【0023】
本発明のペプチドは組合せ療法に特に有用である。よって、別の局面において、本発明は、例えば、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60および62(N末端Metは所望により切断されていてもよい)(配列中、Xaaは上記の通り定義される)で示されるアミノ酸配列を含む本発明のscFvペプチドと、例えば、ポリエン抗真菌剤またはエキノカンディン抗真菌剤またはアゾール抗真菌剤などの抗真菌剤を含む組成物または組合せ製剤を提供する。本発明のscFvペプチドの組合せ相手として有用な抗真菌剤の例としては、例えば、アムホテリシンB、アムホテリシンBの誘導体、例えば、AmBisome、アムホテリシン−B脂質複合体(Abelcet)、アムホテリシン−Bコロイド分散物(Amphocil)およびアムホテリシン−B脂質内エマルション;ナイスタチン;5−フルオロシトシン;カスポファンギン(caspofungin)、アニジュラファンギン(anidulafungin)、ミカファンギン(micafungin)、LY303366;イサブコナゾール、ボリコナゾール、イトラコナゾール、フルコナゾール、ミコナゾール、ケトコナゾール、ポサコナゾール、アニジュラファンギン、ミカファンギン、グリセオフルビン、テルビナフィンなどのアゾール類が挙げられる。このような組合せは一定用量組合せであってもよいが、一般には、scFvペプチドとその組合せ相手は一定用量組合せとしてはパッケージングされない。本発明の組合せ製剤は真菌感染症の処置において同時、個別または逐次使用のためのものであり得る。本発明のペプチドはまた、例えば、アムホテリシンBと5−フルオロシトシン、ファンギンとアムホテリシンBまたはエキノカンディンとアゾールなど、1種以上の抗真菌剤と組み合わせて使用してもよい。
【0024】
別の態様において、本発明は、有効量の、例えば、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60および62(N末端Metは所望により切断されていてもよい)(配列中、Xaaは上記の通り定義される)で示されるアミノ酸配列を含む本発明のscFvペプチドと少なくとも1つの上記抗真菌剤を患者に投与することを含む真菌感染患者の処置方法を提供する。好ましい組合せ相手はアムホテリシンBまたはアムホテリシンBの誘導体、カスポファンギン、アニジュラファンギン、ミカファンギン、ボリコナゾール、イトラコナゾールである。これらの組合せ相手は同時、個別または逐次投与することができる。
【0025】
本発明の一態様では、感染を引き起こす真菌は、本発明のペプチドの抗真菌性組合せ相手に対して耐性であるか、または部分的に耐性がある。
【0026】
本発明のペプチドはまた、癌、または例えばそれぞれ出典明示により本明細書の一部とされるWO06/003384またはWO07/077454(PCT/GB2007/000029)に開示されている自己免疫疾患または敗血症などのTNFαおよび/またはIL−6のレベルの上昇が関与する症状の処置にも有用である。例えば、本発明のペプチドは、例えば、リンパ性(Iymphoid)(リンパ球性(Iymphocytic))白血病(CLL)、急性骨髄性(骨髄芽球性)白血病(leukeemia)(AML)、急性リンパ性(Iymphoid)(リンパ芽球性(IymphoBlastic))白血病(leukeemia)(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、乳癌、結腸癌、前立腺癌、多発性骨髄腫などの白血病の処置;またはヒトhsp90を標的とする敗血症(WO07/077454)の処置に有用である。よって、本発明は、有効量の、例えば、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60および62(N末端Metは所望により切断されていてもよい)(配列中、Xaaは上記の通り定義される)で示されるアミノ酸配列を含む本発明のscFvペプチドを患者に投与することを含む、癌疾患、またはTNFαおよび/もしくはIL−6のレベルの上昇が関与する症状(例えば、自己免疫疾患、SIRSまたは敗血症)を有する患者の処置方法を提供する。
【0027】
いくつかの態様では、自己免疫疾患はクローン病、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎または全身性紅斑性狼瘡である。
【0028】
本発明のペプチドは、抗癌剤との組合せ療法に有用である。好適な抗癌剤の例としては、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、ハーセプチン、ドセタキセル、シスプラチン、イマチニブ(グリベック(Gleevec)(登録商標))、パクリタキセル、シタラビンまたはヒドロキシ尿素が挙げられる。よって、本発明は、例えば、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60および62(N末端Metは所望により切断されていてもよい)(配列中、Xaaは上記の通り定義される)で示されるアミノ酸配列と、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、ハーセプチン、ドセタキセル、シスプラチン、イマチニブ、パクリタキセルおよびヒドロキシ尿素からなる群から選択される抗癌剤とを含む、本発明のscFvペプチドを含む組成物または組合せ製剤を提供する。また、例えば、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60および62(N末端Metは所望により切断されていてもよい)(配列中、Xaaは上記の通り定義される)で示されるアミノ酸配列を含むペプチドなどの、有効量の本発明のscFvとドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、ハーセプチン、ドセタキセル、シスプラチン、イマチニブ、パクリタキセルおよびヒドロキシ尿素からなる群から選択される少なくとも1種の抗癌剤を、それを必要とする患者に投与することを含む、癌疾患を有する患者の処置方法も提供される。
【0029】
本発明の別の態様によれば、記載されているscFvペプチドをコードする改良された核酸分子、および例えば大腸菌でこのようなscFvペプチドを発現させるのに特に有用な改良された核酸構築物が提供される。本発明の核酸構築物は、大腸菌において、例えば、発現されたscFvペプチドの均質性および力価に関して、scFvペプチドの改良された発現をもたらす。
【0030】
好ましくは、この核酸分子は、scFvペプチドをコードする配列の3’末端に位置する配列(taa)n(配列中、nは1または2である)をさらに含む。
【0031】
本発明の別の局面によれば、配列番号64の配列と少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むVHドメインと、配列番号66の配列と少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むVLドメインをコードする配列を含み、かつ、VHまたはVLドメインをコードする配列の3’末端に位置する配列(taa)n(配列中、nは1または2である)をさらに含む核酸分子が提供される。3’末端に複数の停止コドンを設けることで誤った読み過ごし事象が避けられる。
【0032】
別の局面において、本発明は、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59または61(配列中、nnnはCys以外のアミノ酸をコードするコドンを表す)で示されるヌクレオチド配列を含む核酸分子、例えば、DNAまたはRNA分子を提供する。例えば、一態様では、nnnは例えばTATなどTyrをコードし得る。別の局面において、本発明は、配列番号1、3、5、11、15または19で示されるヌクレオチド配列を含む核酸分子を提供する。当業者に認識される通り、核酸配列は、コードされるアミノ酸配列を変化させずに容易に改変することができる。1個以上(例えば、10、20、50または100まで)のこのようなサイレント突然変異を伴う配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59または61で示されるヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列に基づく核酸分子も、本発明の範囲内に含まれる。さらに、(i)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59または61と少なくとも80%の同一性、好ましくは、少なくとも90%、95%、99%または100%の同一性を有するか;あるいは(ii)高ストリンジェンシー条件下で、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59または61で示される配列を有する核酸分子とハイブリダイズする核酸分子も含まれる。高ストリンジェンシー条件とは、当業者には容易に理解され、例えば、6×SSC/0.05%ピロリン酸ナトリウム中、37℃(14塩基のオリゴの場合)、48℃(17塩基のオリゴの場合)、55℃(20塩基のオリゴの場合)、また60℃(23塩基のオリゴの場合)で洗浄することを指し得る。様々な組成の核酸に対するこのようなストリンジェンシー条件の好適な範囲はKrause and Aaronson (1991) Methods in Enzymology, 200:546-556に記載されている。
【0033】
一態様において、本発明は、例えば、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59または61で示される本発明の核酸分子のヌクレオチド配列を含むベクター分子を提供する。好ましくは、このようなベクター分子は、例えば大腸菌で、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59または61で示される核酸分子を発現させるのに好適である。好適な発現ベクターは当業者であれば容易に分かる。好適なベクターの例としては、例えば、pGEXまたはpETが挙げられる。別の態様では、このようなベクター分子を含む宿主細胞、例えば大腸菌を提供する。
【0034】
別の態様では、好適な転写制御エレメントの制御下に、例えば、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59または61に記載される本発明の核酸分子を含む発現ベクターが組み込まれている宿主細胞を、その宿主細胞、例えば大腸菌での該ペプチドの発現に十分な条件下で培養し、それにより、該ペプチドを産生させ、そして該細胞により産生されたペプチドを回収することを含む、例えば、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60または62(N末端Metは所望により切断されていてもよい)(配列中、Xaaは上記の通り定義される)で示されるアミノ酸配列を含む本発明のscFvペプチドの産生方法が提供される。
【0035】
2つの配列間の「同一性」パーセンテージは、BLASTPアルゴリズムバージョン2.2.2(Altschul, Stephen F., Thomas L. Madden, Alejandro A. Schaffer, Jinghui Zhang, Zheng Zhang, Webb Miller, and David J. Lipman (1997), “Gapped BLAST and PSI-PLAST: a new generation of protein database search programs”, Nucleic Acids Res. 25:3389-3402)を用い、デフォルトパラメーターを使用して決定される。特に、BLASTアルゴリズムは、URL http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/にてインターネットでアクセス可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】野生型Mycograb scFvペプチドおよびMycograb突然変異体の配列を模式的に示す図である。個々のペプチドをコードする核酸分子の停止コドンもC末端に示されている。
【図2】実施例2のELISAアッセイの原理を示す図である。
【図3】黒棒が試験した全ての突然変異体のNLSによる可溶化後の収率を示すグラフである。エラーバーはサンプルを2回分析した際の標準偏差を示す。白棒は試験した全ての突然変異体のNLS再折りたたみ後の質量収支をグラフで表したものである。突然変異体は再折りたたみ回収値の増加に従ってランク付けされている。
【図4】選択された5つの突然変異体について、可溶化剤として尿素およびDTTを用いた場合(A)、および可溶化剤としてGuHClおよびDTTを用いた場合(B)の、折りたたみ後の回収率を示したグラフである。白棒:IB.SOL溶液中に見られるタンパク質の質量を計算(式1)に用いた場合の回収率。黒棒:IB.RES溶液中に見られるタンパク質の質量を計算に用いた場合の再折りたたみ回収率。
【図5】全ての試験した突然変異体についての、4%NLS添加後、目に見える可溶化溶液の透明化が始まるまでに要した時間(白棒)と、それ以上の透明化が見られなくなるまでに要した時間(黒棒)を示したグラフである。突然変異体は開始時間に従って昇順でランク付けされている。
【図6】可溶化の応答開始に関する変動性のチャートであり、システインの数、リンカーエレメントの数および重鎖(vh)または軽鎖(vl)フラグメントがN末端にあったかどうかを示す。1:突然変異体Myc 106は可溶化の開始が最も早かったが、5つのシステインを含んでいた。
【図7】突然変異体MYC 135、Myc 130、Myc 133、Myc 119、 Myc 123野生型およびMyc 116のREF endサンプルのクロマトグラムを重ね合わせたものを示す。
【図8】突然変異体MYC 134、Myc 137、Myc 138、Myc 106 Myc 136、Myc 123およびMyc 139のREF endサンプルのクロマトグラムを重ね合わせたものを示す。
【図9】突然変異体の応答保持時間に対するスケール化評価値および以下のパラメーター:リンカー長、システインの数およびVh/Vl配置の予測プロファイラーを示す。スケール化評価値は、パラメーターが中点(x軸上の予測プロファイラープロットの赤い数字)から最高レベルまで上昇する際に保持時間がどの程度変化するかを予測する。
【図10】試験した突然変異体に関して、RP−HPLC(RPC2)で測定した保持時間に対してリンカー長をプロットしたものである。MYC 130の早い保持時間を他の突然変異体と比較して強調してある。
【図11】ピーク2のピーク面積の評価のため、図7および8の全てのREF.ENDサンプルを標準化して重ね合わせたものを示す。
【図12】8M尿素+DTT、8M尿素、6M GuHCl+DTTおよび6M GuHClで可溶化したMYC 119のREF.EndサンプルのRP−HPLC2クロマトグラムを重ね合わせたものを示す(20mM Tris、2mMシステイン、1%NLS、pH9.0で1:50希釈)。
【図13】6M尿素および5mM DTTで可溶化し、次いで、1:10希釈により再折りたたみした後のMYC 119のREF.EndサンプルのRPC 2クロマトグラムを示す。
【図14】6M尿素で可溶化し、それぞれ1:10および1:50希釈により再折りたたみした後のMYC 119のREF.IMサンプルおよびREF.ENDサンプルのSDS Page分析後のゲルの画像である。レーン1〜8:非還元SDS Page、レーン9〜14:還元SDS Page。R=還元;n−r=非還元。
【図15】6M尿素(黒)および4%NLS(青)で可溶化した後の突然変異体MYC 119からの封入体サンプルのRP−HPLCのクロマトグラムを重ね合わせたもの(RPC2)である。
【図16】左のゲル:突然変異体MYC 118、119、130、133、134、135および137の還元(r)SDS−Pageと、右のゲル:同じサンプルの非還元(n−r)SDS Pageの画像を示す。
【図17】左のゲル:突然変異体MYC 106、123 wt、136、138、139および140の還元SDS−Pageと、右のゲル:同じサンプルの非還元SDS Pageの画像を示す。
【図18】突然変異体Myc 118、Myc 119、Myc 130、Myc 133およびMyc 135のREF.EndサンプルのSEC HPLC 0.5%NLSクロマトグラムを重ね合わせたものである。これらの突然変異体由来のIBをベンチスケールで単離した。
【図19】突然変異体Myc 134、Myc 136、Myc 137、Myc 138、Myc 139、Myc 140、Myc 106およびMyc 123野生型のREF.EndサンプルのSEC HPLC 0.5%NLSクロマトグラムを重ね合わせたものである。これらの突然変異体由来のIBをパイロットプラントに単離した。
【図20】全ての突然変異体のREF.Endサンプルの理論的MWに対する測定したMWの分散プロットおよび直線回帰(連続直線)を示す。当てはめに関する95%信頼区間も示されている(破線)。左上の点はMYC 130を示す。破線内の点は95%CIの範囲内であり、従って、野生型との有意な違いはない。両破線より下の点は、予測値よりも低い平均MWを有する突然変異体を表し、両破線より上の点は、予測値よりも高い平均MWが測定された突然変異体を表す。
【図21】50mM Tris pH9.0バッファーに対するUFDF後のMyc 119、Myc 106−origami、Myc 123 wtおよびMyc 137のREF.ENDサンプルのSEC−HPLC(形式)クロマトグラムを示す。各容量再構成の後にサンプルを採取した。UFDF処理後のサンプル(5)、1回目(3)、3回目(4)および最後(5)の「バッファー交換」工程後。
【図22】全ての試験した突然変異体のREF.IM、REF.3TおよびREF.ENDサンプルのRP−HPLC 2クロマトグラムを示す。
【0037】
配列表の簡単な説明
配列番号1は、Myc123である。
配列番号2は、配列番号1によりコードされているペプチド配列である。
配列番号3は、Myc102、Mycograb−6H−TAAである。
配列番号4は、配列番号3によりコードされているペプチド配列である。
配列番号5は、Myc101、Mycograb−TAAである。
【0038】
配列番号6は、配列番号5によりコードされているペプチド配列である。
配列番号7は、MycC29X−TAA、例えば、Myc105、MycC29Y−TAAである。
配列番号8は、配列番号7によりコードされているペプチド配列である。
配列番号9は、MycC29X−6H−TAA、例えば、Myc106、MycC29Y−6H−TAA、Myc113、MycoC29S−6H−TAAである。
配列番号10は、配列番号9によりコードされているペプチド配列である。
【0039】
配列番号11は、Myc107、Myco−4−TAAである。
配列番号12は、配列番号11によりコードされているペプチド配列である。
配列番号13は、MycoC29X−4−TAA、例えば、Myc108、MycoC29Y−4−TAA;Myc114、MycoC29S−4−TAAである。
配列番号14は、配列番号13によりコードされているペプチド配列である。
配列番号15は、Myc109、N−Myco−4−TAAである。
【0040】
配列番号16は、配列番号15によりコードされているペプチド配列である。
配列番号17は、N−MycoC29X−4−TAA、例えば、Myc110、N−MycoC29Y−4−TAAである。
配列番号18は、配列番号17によりコードされているペプチド配列である。
配列番号19は、Myc111、N−Myco−6H−TAAである。
配列番号20は、配列番号19によりコードされているペプチド配列である。
【0041】
配列番号21は、N−MycoC29X−6H−TAA、例えば、Myc112、N−MycoC29Y−6H−TAAである。
配列番号22は、配列番号21によりコードされているペプチド配列である。
配列番号23は、Myc115、MycYSSSである。
配列番号24は、配列番号23によりコードされているペプチド配列である。
配列番号25は、Myc116、MycYSIQSSである。
【0042】
配列番号26は、配列番号25によりコードされているペプチド配列である。
配列番号27は、Myc117、MycSIQKSである。
配列番号28は、配列番号27によりコードされているペプチド配列である。
配列番号29は、Myc118、VH−2Bam−2VLである。
配列番号30は、配列番号29によりコードされているペプチド配列である。
【0043】
配列番号31は、Myc119、VL−2Bam−2VHである。
配列番号32は、配列番号31によりコードされているペプチド配列である。
配列番号33は、Myc145、MycC98X−6H−TAAである。
配列番号34は、配列番号33によりコードされているペプチド配列である。
配列番号35は、Myc129(MycYSRIQSS)である。
【0044】
配列番号36は、配列番号35によりコードされているペプチド配列である。
配列番号37は、Myc130(MycYSRSIQSSKS)である。
配列番号38は、配列番号37によりコードされているペプチド配列である。
配列番号39は、Myc133である。
配列番号40は、配列番号39によりコードされているペプチド配列である。
【0045】
配列番号41は、Myc134である。
配列番号42は、配列番号41によりコードされているペプチド配列である。
配列番号43は、Myc135である。
配列番号44は、配列番号43によりコードされているペプチド配列である。
配列番号45は、Myc136である。
【0046】
配列番号46は、配列番号45によりコードされているペプチド配列である。
配列番号47は、Myc137である。
配列番号48は、配列番号47によりコードされているペプチド配列である。
配列番号49は、Myc138である。
配列番号50は、配列番号49によりコードされているペプチド配列である。
【0047】
配列番号51は、Myc139である。
配列番号52は、配列番号51によりコードされているペプチド配列である。
配列番号53は、Myc140である。
配列番号54は、配列番号53によりコードされているペプチド配列である。
配列番号55は、Myc141である。
【0048】
配列番号56は、配列番号55によりコードされているペプチド配列である。
配列番号57は、Myc142である。
配列番号58は、配列番号57によりコードされているペプチド配列である。
配列番号59は、Myc143である。
配列番号60は、配列番号59によりコードされているペプチド配列である。
【0049】
配列番号61は、Myc144である。
配列番号62は、配列番号61によりコードされているペプチド配列である。
配列番号63は、野生型Myc123 scFvペプチドの重鎖をコードするヌクレオチド配列である。
配列番号64は、配列番号63によりコードされているペプチド配列である。
配列番号65は、野生型Myc123 scFvペプチドの軽鎖をコードするヌクレオチド配列である。
【0050】
配列番号66は、配列番号65によりコードされているペプチド配列である。
配列番号67は、pelBシグナル配列のヌクレオチド配列である。
配列番号68は、配列番号67によりコードされているペプチド配列である。
配列番号69は、配列番号2のscFvペプチド(Mycograb)が特異的であるカンジダhsp90由来のエピトープである。
配列番号70は、実施例2の結合アッセイで用いたスクランブルペプチドのエピトープである。
【実施例】
【0051】
実施例1
大腸菌宿主細胞を発現ベクターで形質転換させ、浸漬培養で培養する。適当なOD600において、誘導プロモーター(すなわち、tac、trcまたはT7−lacプロモーター)の抑制または活性化によりscFvの発現を誘導する。この誘導により宿主細胞内にscFvが蓄積され、主として凝集scFvからなる不溶性の封入体が生産される。適当な発現期間の後、遠心分離により細胞を採取し、破砕する。次に、不溶性の封入体を重量的手段により単離する。
【0052】
配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59または61で示されるDNA配列を大腸菌に適した発現ベクター(すなわち、pET)に挿入する。このタンパク質を大腸菌宿主内で発現させた後、アフィニティークロマトグラフィーにより精製する。標準的な分子生物学プロトコールを用いる(例えば、Harlow & Lane, 前掲; Sambrook, J. et al., 1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York; Sambrook, J. & Russell, D., 200 1, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbors参照)。
【0053】
これらのscFvペプチドは、細胞内発現の後、大腸菌細胞内に封入体の形態で蓄積される。精製のため、封入体を単離し、生成物を可溶化および再折りたたみにより抽出する。イオン交換クロマトグラフィーおよび固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)により95%を超える純度までの精製が達成される。
【0054】
実施例2 ELISA活性アッセイ
1. 概要
MYC123(「野生型」Mycograb)および突然変異体Mycograbペプチドの結合活性をELISAにて、抗原としてhsp 90のペプチドエピトープを用いて検出した。Mycograbまたは突然変異体Mycograbはビオチン化ペプチドに結合するようになり、次に、これをストレプトアビジンがコーティングされたマイクロタイタープレートに結合させた。スクランブルペプチドを対照配列として用いた。検出はMYC123タンパク質のHis領域に結合するペルオキシダーゼコンジュゲート抗His抗体を用いて行った。ペルオキシダーゼをABTS基質と反応させて緑色物質を生成し、その吸収を405nmで測定した。この405nmでの吸収は溶液中のMYC123の活性と比例する。活性を参照標準の6点検量曲線から決定し、参照に対する活性%として示した。
【0055】
ELISAの原理を、ストレプトアビジン1がプレートにコーティングされ、ビオチン2と結合する図2に示す。そして、ビオチン2は、MYC123 scFvペプチド5のHsp90結合部位4に存在するHsp 90ペプチド3と結合する。このscFvペプチド5はHisタグ6を有し、これに抗His−ペルオキシダーゼ検出抗体7が結合する。
【0056】
2. 手順の原理および供給源
用いたELISAは、Mycograbまたは突然変異体Mycograbが、ビオチン化抗原ペプチド(ビオチン−NKILKVIRKNIVKK−カンジダHsp90由来のエピトープ配列)がコーティングされたストレプトアビジン表面マイクロプレートを用いて捕捉される直接検出アッセイであった。次に、Mycograbまたは突然変異体Mycograbの存在を、セイヨウワサビ・ペルオキシダーゼにコンジュゲートされた抗Hisタグ抗体を用いて検出した。その後、セイヨウワサビ・ペルオキシダーゼの基質であるABTSをウェルに加え、存在するMycograbの濃度を405nmで測定した吸光度と比例させた。Mycograbまたは突然変異体Mycograbのサンプルの活性を、既存のMycograb薬品参照材料を用いて作製した標準曲線から直接求めた。
【0057】
3. 材料
3.1 機器
Streptawell High Bindマイクロタイタープレートは、Roche(カタログ番号11989685001)から供給された。アッセイはBio-Radモデル680マイクロプレートリーダーを用いて行った。ハードウエアの制御はMicroplate Manager Softwareバージョン5.2.1(Bio-Rad, USA)を用いて行った。データ分析はMicrosoft Excelを用いて行った。
【0058】
3.2 化学薬品および試薬
3.2.1 化学薬品
化学薬品は、特に断りのない限り、全て分析等級のものであった。
【表1】
【0059】
3.2.2 試薬
ブロッキングバッファーストック1(Milli−Q水中5%w/v BSA)
BSA 2.5g
2.5gのBSAを秤取り、50mLのMilli−Q水に加えた。4℃で1週間保存した。
【0060】
1M Trisバッファー pH7.8
Tris 121.24g
121.24gのTrisを秤取り、950mlのMilli−Q水に攪拌しながら溶かした。pHを確認し、pH7.8となるまで濃塩酸を滴下して調整した。Milli−Q水で1リットルとした。0.22μmフィルター(Sartorius)で濾過し、室温で最大1か月保存した。
【0061】
サンプル希釈バッファー(20mM Tris pH7.8 0.1%w/v BSA)
1mLの1M Tris保存溶液を48mlのMilli−Q水および1mlのブロッキングバッファーストック1溶液に加えた。実験の度に新しくした。
【0062】
洗浄バッファー(PBS+Tween 20 0.1%v/v)
PBSタブレット5錠を900mLのMilli−Q水に溶かし、1mLのTween 20を加え、タブレットが溶けるまで攪拌し、Milli−Q水で1000mLとした。4℃で1週間まで保存した。
【0063】
ブロッキングバッファーストック2(洗浄バッファー+5%w/v BSA)
BSA 2.5g
2.5gのBSAを秤取り、50mLの洗浄バッファーに溶かした。4℃で最大1週間保存した。
【0064】
ペプチド希釈バッファー(PBS+0.1%v/v Tween 20+0.1%w/v BSA)
1mLのブロッキングバッファーストック2を49mLの洗浄バッファーに加えた。実験の度に新しくした。
【0065】
抗原ペプチド溶液
ビオチン-NKILKVIRKNIVKKペプチド 10mg
発注合成した抗原ペプチドの2mg/ml溶液を、10mgのペプチドを秤取り、5mlのMilli−Q水に溶かすことにより作製した。50〜100μlのアリコートを1.5mlのエッペンドルフ管に分注し、最大1年間−80℃で冷凍保存した。
【0066】
抗原ペプチド作業溶液(ペプチド希釈バッファー中4μg/mLペプチド)
25μLの抗原ペプチド溶液(2mg/mL)を12.475mLのペプチド希釈バッファーに加え、4μg/mLの溶液とした。実験の度に新しくした。
【0067】
3.2.3 サンプル調製
対照品
1×10mgのMycograb参照バッチ(BN270603)を5mlのMilli−Q水に再懸濁させ、バイアル内の全ての粉末が確実に取り込まれ、溶解するよう穏やかに混合した。13,000rpmで5分間遠心分離して粒状物質を除去した。次に、この溶液のタンパク質濃度を標準的なUVタンパク質濃度法に従って測定した。
【0068】
試験品
1×10mgのMycograbまたは突然変異体Mycograb試験材料を5mlのMilli−Q水に再懸濁させ、対照品と同様に処理した。
【0069】
検量曲線標準
対照品材料をサンプル希釈バッファーで希釈し、上限濃度5μg/mLのサンプル5mLを得た。次に、この溶液を用いて、それぞれ最終容量2mLで、濃度範囲5〜0.156μg/mLにわたり2倍連続希釈サンプルを作製した。
【0070】
4. 手順
1. 2mg/mlの抗原ペプチド保存溶液のアリコートを冷凍庫から取り出し、0.1%(w/v)BSAおよび0.1%(v/v)Tween 20を含有するPBSバッファーで1:500希釈し(バッファー12.5ml中、ペプチド25μl)、4μg/mlペプチドの作業溶液を作製した。96ウェルのhigh bind StreptaWellプレート(Roche)のB〜H行を0.1%(w/v)BSA PBS−0.1%(v/v)Tween 20中、4μg/mlのビオチン-NKILKVIRKNIVKKペプチド100μlでコーティングした。ウェル当たり100μlの0.1%(w/v)BSA PBS−0.1%(v/v)Tween 20をA行の全てのウェルに加えた。その後、このプレートを一晩4℃で保存した。
【0071】
2. 次に、このプレートのウェルをThermo WellWash ACにて、PBS 0.1%(v/v)Tween 20バッファー200μlで30秒3回洗浄した。
【0072】
3. ローディングに先立ち、再懸濁させたMycograbバイアル保存溶液から20mM Trisバッファー pH7.8、0.1%(w/v)BSAで5μg/mlに希釈することにより、Mycograbおよび突然変異体Mycograbサンプルを作製した。次に、Mycograb(登録商標)サンプルをこの最初の5μg/ml溶液から、20mM Trisバッファー pH7.8、0.1%(w/v)BSAで、0.15625μg/mlまで2倍連続希釈することにより調製した。個々の希釈は全て、実験に必要な量に応じて、1.5mlのエッペンドルフ管(VWRカタログ番号211−2139)か、7mlのBijouxコンテナ(VWRカタログ番号215−0328)かのいずれかで行った。その後、各希釈溶液サンプル100μlをプレートにトリプリケートで添加した。100μl 20mM Tris pH7.8、0.1%(w/v)BSAを含有するブランクウェルの対照セットもH行に含めた。
【0073】
4. このプレートを室温で1時間放置した後、ステップ2に記載の通り、ウェルをPBS−0.1%(v/v)Tween 20で3回洗浄した。
【0074】
5. 100μlのマウスモノクローナル抗His HRPコンジュゲート(Sigma A7058)を各ウェルに0.1%(w/v)BSA PBS−0.1%(v/v)Tween 20中1:2000濃度で添加し、室温で1時間放置した。
【0075】
6. 次に、ウェルを上記の通り洗浄し、結合したMycograb(登録商標)を、100μlのABTS(登録商標)試薬を添加することにより検出した。この発色を405nmで読み、2つ目の検量曲線で最高濃度のサンプルの吸光度が1.3AUに達した際に読み取りを行った。Mycograb(登録商標)の濃度はA405nmでの吸収に比例した。
【0076】
7. 参照材料のA405nmでの吸光度結果をエクセルのスプレッドシートに移し、6点二次検量曲線関数y=a+bx+cx2を、Mycograb(登録商標)の濃度(μg/ml)に対し、(参照サンプルA405nm−ブランク)からプロットし、相関係数≧0.99であった。「ホック」効果の存在が見られれば、最高濃度点をグラフから除き、5点検量曲線とした。いくつかの状況では、3回の測定当たり異常値が1個を超えないならば、プレート当たり2個ずつのウェルの外れ値(目により決定)をデータ分析から除いた。適当な吸光度平均を用い、サンプル中の見掛けの濃度を計算する非直線回帰分析を用い、活性%を計算した。
【0077】
この試験で得られたELISA結果を表1に示す。
【表2】
【0078】
サンプル1および3〜6は封入体の予備精製、再折りたたみおよび洗剤NLSの除去(Dowexクロマトグラフィーまたはダイアフィルトレーションによる)の後に得られた処理中間体である(最終薬剤物質ではない)。サンプル2は、Biomeva/Thymoorganにより製造され、第III相治験に用いられた元の野生型薬剤である。元の薬品の仕様(specification)は参照標準の75〜125%であった。全てのサンプルが活性である(結合する)と判断された。
【0079】
実施例3 クリプトコックス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)の最小阻害濃度の決定
概要
MICアッセイでは、モデル生物としてクリプトコックス・ネオフォルマンスを用い、MYC123の抗真菌活性を決定した。このアッセイでは抗真菌活性を評価し、臨床状況でのMYC123の作用を模倣することができる。
【0080】
MYC123のMICは、the National Committee for Clinical Laboratory Standards document M27-A2 (2002)に従い、培養液の微量希釈により測定した。簡単に言うと、RPMI培地に103CFU/mlのクリプトコックス・ネオフォルマンスを接種した。MYC123を培地に漸減濃度で添加した(1024μg/ml、512μg/ml、256μg/ml・・・)。これらのMICプレートを37℃で72時間インキュベートした。エンドポイントは、光学的に透明なウェルとなる濃度(MIC−0)および増殖対照と比べて濁度の顕著な低下をもたらす濃度(≧50%増殖阻害、MIC−2)として判定した。
【0081】
方法
予備アッセイの調製
セーフティーキャビネット:SABプレートにクリプトコックス・ネオフォルマンスを接種し、35℃で48〜72時間インキュベートした。プレートをパラフィルムで封じた。
【0082】
ベンチ:
RPMIを調製した。抗真菌剤はNCCLS法に従って調製し(M27−A2)、RPMI増殖培地中全部で11種類の濃度とした。濃度は1つのMICに必要な終濃度の2倍とした。
【0083】
MICプレート
U型96ウェルプレートにて、試験する最高薬剤濃度100μl(必要濃度の2倍)をA行およびB行のウェル1に加えた(アッセイはデュプリケートで行った)。これをプレートの列に、例えば、行AとBのウェル2に次の濃度、行AとBのウェル3に次の濃度というように、漸減濃度で反復した。ウェル12は増殖培地のみを含んだ。
【0084】
セーフティーキャビネット:接種物の調製−直接コロニー懸濁液。クリプトコックス・ネオフォルマンスの直接コロニー懸濁液を、RMPI培地で48〜72時間プレートから作製した。これを0.5 MacFarlands標準(およそ1×106〜5×106cfu/ml)に調整した。1:50希釈液を作製した。さらに1:20希釈液(およそ1×103〜5×103cfu/ml、必要接種量の2倍)を作製した。
【0085】
セーフティーキャビネット:プレートの接種。プレートはウェル12からウェル1へと用いた。これにより薬剤の持ち越しを避けた。100μlの接種懸濁液を各ウェルにピペットで入れた(最終接種量0.5×103〜2.5×103cfu/ml)。プレートをパラフィルムで封じた。
【0086】
インキュベーション
これらのMICプレートを37℃で72時間インキュベートした。接種を確認するため、接種懸濁液を連続希釈し、これらの希釈液10μlをSABプレートにプレーティングし、37℃で72時間インキュベートした。
【0087】
読み取り結果
読み取りミラーを用い、増殖を「薬剤無しの」対照(ウェル12)と比較し、次のように増殖をスコア付けした。
0−光学的に透明
1−やや濁りがある
2−著しい増殖の低下(およそ50%)
3−若干の濁度低下
4−濁度の低下無し
本研究では表2に示されるようなMIC結果が得られた。
【表3】
【0088】
サンプル1および3〜6は封入体の予備精製、再折りたたみおよび洗剤NLSの除去(Dowexクロマトグラフィーまたはダイアフィルトレーションによる)の後に得られた処理中間体である(最終薬剤物質ではない)。サンプル2は、Biomeva/Thymoorganにより製造され、第III相治験に用いられた元の野生型薬品であった。
【0089】
これらのサンプルに関して得られたMIC結果を、対応するバッファーに関して得られた結果と比較した。サンプル3を除く全てのサンプルが参照070602と比較して活性があるとみなされた。サンプル3およびバッファー6からは同じ結果が得られ、MYC123不含バッファーがこの試験生物に有毒であったことを示す。サンプル1および4〜6の値はTrisバッファーの値とかけ離れており、これはデータの高い信頼性を示す。
【0090】
実施例4
概要
Mycograb突然変異体の目的は、野生型Mycograbに比べて構造特性が改良された突然変異体scFvペプチドを得ることであった。点突然変異、特に遊離システインのチロシンによる置換により、凝集および下流プロセシングの際の不適切なジスルフィド結合の形成が軽減されるはずであると考えられた。また、重鎖フラグメントの配向を軽鎖フラグメントと入れ替え、HISタグを除去することが、Mycograb分子の天然の3D構造の形成に有益であるとも考えられた。
【0091】
クローニングした後に、発酵の前にこれらの構築物の配列決定を行った。封入体(IB)の単離のため、およびさらなる下流プロセシングのために十分な材料を得るために発酵をスケールアップした。これらの突然変異体の発現構築物を、再折りたたみの最終工程まで、適合させたBiomevaプロセスに従って精製した。
【0092】
一定範囲の突然変異体Mycograbペプチドの物理的パラメーターを実施例5〜12に示す通りに試験した。
【0093】
試験した突然変異体およびそれらの突然変異の概要を表3に示す。比較のため、試験に野生型を含めた。
【表4】
【0094】
試験アッセイに用いた方法論を以下に記載する。
【0095】
封入体(IB)の単離
LVA(Laborversuchsanstalt)にて突然変異体Myc 118、119、130、133およびMyc 135の振盪フラスコから得られた4Lの発酵液を、高圧ホモジナイザー(LAB 40−15 RBFI)を用い、RPP4中、700バールで2サイクル、各々15分間で破砕した。IBを、4℃、10000rpmで20分間、実験室規模でボトル遠心機を用い、細胞残渣から分離した。IBを実験室用の水(WFL)で2回洗浄し、その後、WFL中20%(w/v)の懸濁液を調製した。この懸濁液のアリコートを−20℃で保存した。
【0096】
IBを、突然変異体Myc 134、137、138、106、136、139、140およびMyc 123(wt)から、これらの突然変異体の発酵をバイオリアクターにて30L規模で行ったため、RPP4中パイロットスケールで単離した。ディスクスタック遠心機を用い、細胞残渣からIBを分離した。WFIで20%の懸濁液(w/v)を調製した。この懸濁液のアリコートを−20℃で保存した。
【0097】
可溶化
NLSによる可溶化(適合させたBiomevaプロセスに従う)。20%IB懸濁液の可溶化は、タンパク質濃度8mg/mlとなるまでWFLで希釈した後、100mM Tris/塩基、4%NLS、pH9.0バッファーで1:2希釈することにより行った。この溶液をビーカー中、室温で、透明となるまで、しかしながら少なくとも30分間攪拌した。透明化の開始および終了までの時間を記録した。
【0098】
尿素、GuHCl、DTTのよる別の可溶化。この別の可溶化戦略は、20mM Tris 8M尿素+/−5mM DTTまたは20mM Tris、6M GuHCl+/−5mM DTT(双方ともpH9.0)を用いた20%IB懸濁液の各量の1:10希釈により行った。尿素およびGuHClの得られた濃度は、IB懸濁液の容量によってそれぞれ7.2Mおよび5.2Mであった。
【0099】
可溶化されたIBの再折りたたみ
NLSによる再折りたたみ。再折りたたみは、この可溶化溶液を50mM Tris/塩基バッファーで1:4希釈することにより行った。NLSの終濃度は0.5%であった。再折りたたみは50μM CuCl2の添加により開始させた。サンプルを採取し、CuCl2添加前と添加後、次いでCuCl2添加後およそ24、48、72および96時間に直ぐにRPC2分析した。
【0100】
尿素、GuHClによる可溶化後の再折りたたみ。8M尿素または6M GuHCl+/−DTTによる可溶化後のMycograb溶液の再折りたたみは、20mM Tris/塩基、1%NLSおよび2mM Cystinを含有するバッファーpH9.0で1:50希釈することにより行った。
【0101】
いくつかの突然変異体では、尿素による可溶化後のMycograb溶液の希釈は、20mM Tris/塩基、0.5M L−アルギニンおよび2mM Cystinを含有するバッファーpH 9.0で1:10希釈することによっても行った。
この再折りたたみ溶液をそれぞれ4℃で96時間または室温で24時間攪拌した。
【0102】
再折りたたみの動態
必要な再折りたたみ時間を決定するため、突然変異体Myc 119の再折りたたみ動態を記録した。Myc119の20%IB懸濁液のサンプルを上記の通り可溶化した。再折りたたみは、サンプルをそれぞれの時間間隔で採取し、RPC2により分析した以外、上記の通り行った。
【0103】
UF/DFによる再折りたたみ溶液からのNLSの除去。突然変異体Myc119、Myc 137、Myc 106およびMyc 123(wt)を上記の通り可溶化し、再折りたたみした。再折りたたみ後、REF.END溶液のバッファー交換を、Amicon stir cellを用いて分子量カットオフ10kDaで行った。各ターンオーバー容量後のNLS濃度をRP−HPLCで測定した。50mlのREF.END溶液を25mlまで濃縮した後、ダイアフィルトレーションバッファーで再び50mlとした。この手順を4回行った。NLS除去後の凝集傾向を、フォーミュレーションバッファーを流すSEC−HPLCで測定した。
【0104】
SDS Page分析
SDS Pageは、NuPAGE 4−12 BisTrisゲルと泳動バッファーとしてMOPSを用いて行った。泳動時間は200ボルトで65分であった。質量0.2〜0.4μgのMycograbを各レーンに適用した。電気泳動後、ゲルを銀で染色した。還元SDS Pageでは、100mMのDTTをサンプルに加えた。
【0105】
結果
突然変異体の発現構築物を、表4に挙げられている分析方法を用い、下流手順の種々の段階で分析した。
【表5】
【0106】
表5は、突然変異体の評価に用いた、表4に挙げられている分析方法の説明を示す。特定のアッセイの特異性を記載した注釈も含まれている。
【表6】
【0107】
試験した突然変異体の個々のアッセイのさらなる詳細を以下の実施例5〜12にまとめ、考察する。
【0108】
実施例5 可溶化および再折りたたみ後の質量収支 − 結果としてのRPC1力価の測定
IBの可溶化および再折りたたみ前後のタンパク質濃度を力価アッセイで測定した。このアッセイではサンプル中に存在する全可溶性タンパク質を測定するので、質量収支は100%になるはずである。可溶化に関する質量収支を、式1を用いて計算した。
【数1】
式中、mg RPC1 IB.SOLは、RPC 1法による濃度測定値とIB SOL溶液の容量から計算したIBの可溶化溶液中のタンパク質の質量である。mg RPC1 IB.RESは、RPC 1法による濃度測定値と単離されたIBをDIに再懸濁させた後の溶液の容量から計算した20%IB懸濁液中の質量である。
【0109】
再折りたたみに関する質量収支は式2を用いて計算し、回収率%として表す。4%NLS、8M尿素+/−5mM DTTまたは6M GuHCl+/−5mM DTTのいずれかで可溶化したIBを、それぞれ3.3.1および3.3.2に記載のように希釈し、再折りたたみを行った。
【数2】
式中、mg RPC1 Ref.ENDは、再折りたたみ溶液の容量を掛けた再折りたたみ溶液中に見られるRP−HPLCでの濃度測定値によるタンパク質の質量である。mg RPC1 IB.SOLは、IB可溶化物中に見られるタンパク質の質量であり、%REFは再折りたたみ後の回収率である。
【0110】
式1および2により計算される通り、4%NLSでの可溶化とその後の全ての突然変異体の再折りたたみ後の質量収支は表3に示されている。生データは表6および7に見られる。
【0111】
表6は、全ての試験した突然変異体についての、IB_RES懸濁液のNLSで可溶化した後の回収率と、分析法RPC Iから計算した再折りたたみ後の回収率を示す。また、IB−RES溶液中のタンパク質濃度および分析法RPCIにより測定された再折りたたみ溶液中のタンパク質濃度も示す。表7は、尿素(SOL:尿素)での可溶化およびGuHCl(SOL:GuHCL)での可溶化後にIB_RES、IB_SOLおよびREF.ENDサンプルのRPCにより測定されたタンパク質濃度を示す。再折りたたみ時間は4℃で96時間であった。REF.END溶液を得るための希釈倍率は、IB_RESおよびIB_SOLでそれぞれ500および50であった。
【0112】
【表7】
【表8】
【0113】
可溶化の質量収支は試験した12種の突然変異体のうち10種で100%を超えていた。これは、IB懸濁液が粗サンプル型であり、結果として、サンプルを採取した際にIBが完全に溶けておらず、不均質な溶液となり、よって、全タンパク質濃度の過小評価に至ったためであり得る。データ変動は高く、2回分析した6つの突然変異体の相対標準偏差は2.6%(Myc 138)〜42.9%(Myc 133)の範囲であった。
【0114】
再折りたたみ後の回収率%は72%(Myc 138)〜99%(Myc 134)の間であった。予測回収率は100%である(可溶化後の回収率と同じ)。再折りたたみ後の回収率は全て100%より低く、分散は可溶化後の回収率ほど大きくなかった。これは、IB.SOLおよびREF.endサンプル中のタンパク質濃度の概算がIB.RESサンプルよりも精度が高いことを示す。しかしながら、回収率の計算は、主として、可溶化実験および再折りたたみ実験の対照として役立つ。
【0115】
8M尿素または6M GuHClを可溶化剤として用いた場合の可溶化溶液IB.SOLおよびIB懸濁液IB.RESに関する再折りたたみ収率を図4に示す。
【0116】
回収率は、おそらくサンプリング前の均質性が不十分なために、特にIB.SOLおよびIB.RESサンプルで、タンパク質濃度の測定に伴う問題を反映して44%から230%まで様々である。
【0117】
尿素可溶化後のREF.ENDサンプル中の濃度は、平均倍率で1.2倍高いが、GuHCl可溶化後のREF.END中の濃度に匹敵した(表6および7参照)。よって、希釈は一貫していた。
【0118】
実施例6 可溶化時間
NLSを用いた場合の可溶化時間を全ての突然変異体について試験した。溶液が透明になり始めるまでの時間とそれ以上の透明化が見られなくなるまでの時間を記録し、図5に示す。
2%NLSを用いるのに対し、尿素+/−DTTおよびGuHCl+/−DTTによる可溶化は2〜3倍速かった。
【0119】
システインの数と透明化が始まるのに要した時間との間には相関が見られた。突然変異体134(システイン5個)を除き、4個のシステイン残基を有する突然変異体は5個のシステイン残基を有する突然変異体よりも速く可溶化した。図6は、透明化の開始[分]が、N末端における重鎖または軽鎖フラグメントのアライメント、リンカーエレメントおよびシステイン残基の数、の3つのカテゴリーに対してプロットされている変数チャートを示す。図6の1で示されたMyc 134を除き、システイン4個のカテゴリーのデータ点は、システイン5個のカテゴリーのデータ点に比べて、早い可溶化開始時間に分散している。
【0120】
回帰モデル(Myc 134を除いてR2=0.72)では、5個ではなく4個のシステインを有するMycograb構築物では、可溶化の開始が20分から11.3分に短縮されることを予測した(モデルは示されていない)。
【0121】
実施例7 RPC 2−NLS再折りたたみ
Biomeva適合プロセス(実施例4に記載)に従って可溶化および再折りたたみされたMycograb REF.ENDサンプル突然変異体をRPC 2により分析した。
【0122】
野生型(MYC 123)を含む全ての試験した突然変異体からのREF.ENDサンプルを重ね合わせたものを図7および図8に示す。最初に突然変異体Myc 116をlab DSP−DEV 1でスクリーニングし、比較のためにこの重ね合わせに含めた。
【0123】
図7では、ベンチスケールで単離されたIBから作成されたREF.ENDサンプルのクロマトグラムを、図8では、パイロットプラントにおいてより大規模に単離されたIBから作成されたREF.ENDサンプルのクロマトグラムを示す。
【0124】
溶出プロフィールを、
1. ピーク1保持時間(疎水性を反映)、
2. ピーク1の形状(ピークが鋭い場合には、二量体の存在および単量体の均質性を反映)
3. 凝集塊/不純物ピーク(ピーク2)に対する単量体/二量体ピーク(ピーク1)の面積比(凝集塊/不純物含量を反映)
【0125】
保持時間ピーク1(疎水性を反映)
試験した突然変異体の単量体/二量体ピークの保持時間を表8に示す。
【表9】
【0126】
保持時間は分子構築物によって大きく異なる。予測通り、保持時間(疎水性を反映)がリンカー長とともに長くなるという傾向はない。1つのリンカーエレメントは4つのグリシンと1つのセリン残基からなる。グリシンは、親水性であるセリンとは対照的に疎水性である。しかしながら、リンカー中のグリシン含量は4倍高いので、RPC2において保持時間により測定して、疎水性は有意に高まらないと思われる。
【0127】
Myc 130の保持時間は、残りの突然変異体よりも短い。10個のアミノ酸がより親水性の高い(セリン5個)性質のアミノ酸で置換されたことから、分子の疎水性が低下し、その結果、保持時間は短くなる。このデータ点を統計分析から除くと、VLの配向がN末端である場合に、配向がC末端である場合に比べて保持時間に有意な違いを示すモデルが得られる。VLエレメントがN末端に位置する場合、それがC末端に位置する場合に比べて保持時間が0.41分増す。図9は、このモデルのスケール化評価値と予測プロファイラーを、因子としてのシステインの数、リンカー長および鎖フラグメントの配向と応答としての保持時間ともに示す。
【0128】
このモデルからはMyc 130の保持時間が除かれていることに注意すべきである。図10に示されているリンカー長に対する保持時間のプロットは、この構築物の保持時間が、上述のようにより親水性の高い性質をもたらす点突然変異のために、残りの突然変異体と比べて短いことを示す。
【0129】
ピーク1の形状
ショルダーが無いか、またはわずかしか無い鋭いピーク1は単量体Mycograbの均質性を反映する。ピークの形状は、全ての突然変異体からのREF.EndサンプルのRPC 2クロマトグラムの重ね合わせにより評価し、突然変異体Myc 137、Myc 138およびMyc 139に関して最も鋭いピークを決定した。ピーク1は野生型Myc 123よりも鋭く、ピーク1と2はほとんどベースラインで分離した。これは、これらの構築物が野生型より均質性の高い単量体/二量体タンパク質を発現することを示し得る。
【0130】
単量体/二量体ピークの面積比
図7(Myc 123 wt)に示される通り、Myc 116およびMYC123についての単量体/二量体に関する不純物/凝集塊含量が最も低かった。しかしながら、これらの2つのサンプルの分析は、別の研究室により3か月早く行われ、ピーク2の増加は経時的に顕著になった。試験した突然変異体のREF.Endサンプルと同じ月に調製および分析されたMyc 123からのREF.Endサンプルのクロマトグラムを図8に示す。図7に示されているMYC 123のクロマトグラムと図8に示されているものとの比較から、サンプル調製と分析法が厳密に再現性があるわけではないという結論に至る。
【0131】
凝集塊ピークに対する単量体/二量体ピークの面積比は、ピーク1を同じピーク極大に対して標準化することにより求めた。標準化後のピーク2のピーク面積は、視覚により面積評価を用い、大きさの増加に従ってランク付けした。標準化した概要を図11に示す。
【0132】
次のランク付けを確立した:Myc 116、Myc 139、Myc 136<Myc 119、Myc 12、Myc140<Myc137、Myc 135、Myc138<Myc 106<Myc 130<Myc 134<Myc118<Myc133。
【0133】
突然変異体Myc 106、134、136〜139のIBから作成したREF.EndサンプルのRPC 2クロマトグラムをパイロットプラントで処理したところ、ベンチスケールで単離された突然変異体Myc 118〜135のIBよりも低い不純物/凝集塊ピークを示した(図8参照)。
【0134】
実施例8 RPC 2尿素/GuHCl再折りたたみ
突然変異体Myc 118、119、130およびMyc 133を7.6M尿素+/−DTTおよび5.6M GuHCl+/−DTTを用いて溶解させ、再折りたたみバッファーで希釈することにより再折りたたみを開始させた。
【0135】
REF.Endサンプルは全て、RPC 2において単量体/二量体ピーク(ピーク1)を示さなかった。凝集塊および不純物であると思われる大きなピーク2が優勢である。突然変異体Myc 119からの再折りたたみ終了サンプルの代表的なRP HPLCクロマトグラムを図12に示す。このサンプルは実施例4に記載の通り調製した。
【0136】
単量体はおよそ10.5分に溶出すると予測された。それより早く溶出するピークは同定されず、0.5%NLSでの再折りたたみでは見られなかった。大きなピーク2は強い凝集を示す。尿素/GuHCl可溶化後の全てのREF.Endサンプルで、同様の溶出プロフィールが得られた。
【0137】
20mM Tris/塩基、0.5M L−アルギニンおよび2mM シスチンを含有するバッファーpH9.0で1:10希釈することにより再折りたたみを行った場合にも同様の溶出プロフィールが得られた。代表的なクロマトグラムを図13に示す。
【0138】
この強い凝集傾向を非還元条件下でのSDS−Pageにより確認し、REF.Endサンプルでは大きな強いHMWスミア(smear)が検出され、尿素可溶化後、目に見える単量体バンドは無かった。その後、このスミアは、サンプルが還元され、単量体Mycograbバンドが現れた際に消失した。図14では、尿素可溶化後の還元および非還元REF.EndサンプルのSDS Page分析を示す。レーン4〜7は、非還元条件下、2種類の異なる濃度でのMYC 119のREF.IMサンプルとREF.Endサンプルを示す。レーン10〜13は、還元条件下での同じサンプルを示す。この凝集塊スミアは、このサンプルが還元され、単量体ならびに二量体バンドは目に見えるようになった際に消失した。
【0139】
尿素およびGuHClは、タンパク質の凝集を避けることができない低濃度(尿素では、1:50希釈の場合0.14M、1:10希釈の場合0.72M;GuHClでは、1:50希釈の場合0.11M、1:10希釈の場合0.56Mであった)で再折りたたみ溶液中に存在した。図12に示される通り、DTTの使用は、比較可能であると見られるDTTを用いても用いなくても、RP−HPLCクロマトグラム(RPC 2)として凝集に有意な影響を及ぼすとは思われない。
【0140】
REF.Endサンプルとは対照的に、尿素で溶解させたIB.SOLサンプルのRPC 2クロマトグラムは、2%NLSに溶解させたIB.SOLサンプルと、ピーク形状に関して比較可能であった。図15はHPLCクロマトグラムの重ね合わせを示す。
【0141】
非還元IB.SOLサンプルのSDS−Page分析は、サンプルを尿素で溶解させたとき、2%NLSに溶解させたIB.SOLサンプルの場合よりも強いHMWバンドを示した。これは図14に示され、レーン3では、サンプルは尿素で可溶化し、レーン8では、サンプルは2%NLSで可溶化した。IB.SOLサンプルのクロマトグラムのピーク2の重ね合わせはNLS中よりも尿素中の方がいっそう小さいので、RP−HPLCのピーク2からは凝集塊含量についての示唆が得られないと結論付けることができる。
【0142】
その後の再折りたたみでは単量体ピークは得られず、タンパク質は完全に凝集する。
【0143】
実施例9 還元および非還元SDS−PAGE
還元および非還元SDS−Pageを行い、REF.Endサンプル中の不純物および凝集塊含量を求めた。還元SDS−Pageを用いた場合、Mycograb種は単量体および二量体バンドを現し、サンプル中の宿主細胞不純物含量は、非還元SDS−Pageゲルと比べた場合、凝集種から識別可能であった。非還元SDS Pageは、単量体、二量体および凝集塊を示した。非還元SDS−Pageの銀染色ゲルを還元SDS−Page分析と比較すると、凝集種の量が半定量的に評価することができた。全ての試験した突然変異体のREF.ENDサンプルの還元および非還元SDS−Pageを図16および図17に示す。
【0144】
図16の左側のゲルは、突然変異体MYC 118、119、130、133、134、135、137からのREF.Endサンプルの還元SDS−Pageを示す。30kDaのバンドは単量体Mycograbであり、これは全サンプルで優勢であった。この単量体バンドの移動によれば、突然変異体MYC 134で発現されたMycograbはこのゲルで分析された他の突然変異体よりも大きな分子量を有するものと予測された。程度は低いが、同様のことがMYC 135でも検出された。表9によれば、MYC 134は図16に示されている突然変異体の中で最も大きな理論的分子量を有し、MYC 135がこれに次いだ。
【0145】
非還元SDS−Pageゲルでは、凝集種ならびに二量体が確認された。レーン13(MYC 134)および15(MYC 137)では、HMWバンドが他のレーンの場合よりも弱い。これは最も低い凝集種含量を示すが、この単量体のバンドもより弱い。
【0146】
図16に示されているMyc 133を除いた全ての突然変異体で、互いに比較した際に移動時間と強度の異なる二本のバンドが見られた。これらのバンドの同定は難しかったが、これは天然様構造のMycograb単量体であったと推測された。
【0147】
図17は、突然変異体MYC 106、136、138、139、140および野生型MYC 123のREF.Endサンプルの還元および非還元SDS Pageを示す。異なる構築物のMWの違いは単量体バンドの移動の違いによって同定できた。レーン5および7のバンドは、レーン2、3、6および表9に挙げられている理論的MWと一致する4のバンドよりもやや小さいMWで現れた。
【0148】
ゲルに適用されたタンパク質の質量は一貫しておらず、REF.Endサンプル中の濃度測定は精度が十分でなかったために単量体バンドの強度は様々であった。よって、不純物含量の半定量的分析は不可能であった。しかしながら、単量体バンドの濃さがMyc 140の一つと同等であるが、他のバンドの強度が幾分高いため、Myc 106のREF.endサンプルの不純物含量がさらに高いことは明らかであった。
【0149】
SDS−Page分析は、Myc 106 origamiのREF.Endサンプルがより高いHCPおよび生成物関連の不純物を含有していることを示した。しかしながら、これはRPC2分析法によっては確認されず、ピーク2の面積は他の突然変異体と同じ範囲であった。
【0150】
実施例10 SEC 0.5%NLS:REF.RNDサンプルにおけるMycograb種の分子量の測定
適合されたBiomeva法(実施例4参照)に従って調製された全REF.ENDサンプルを0.5%NLS中、SEC−HPLCで分析し、平均分子量を求めた。SECクロマトグラムの重ね合わせを図18および図19に示す。
【0151】
平均分子量は48.6kDa〜65.8kDaの範囲であった。ピークの幅の広さはサンプルの種の不均質性を反映する。REF.Endサンプルにおいて生成物のおよそ80%が単量体であったが、二量体およびさらにMWの大きな種、ならびに非生成物関連の不純物が存在しており、その結果、幅広の溶出ピークとなった。
【0152】
図18では、Myc 130の溶出プロフィールは、他の試験したサンプルと比較して前に来ていたために目立った。これは、構築物の性質(親水性が高い)によるサンプルの高い不均質性のため、または偶発的にサンプルの処理が異なったためである可能性があった。
【0153】
図18に示されているサンプルは同時に調製し、分析まで4℃で5日間保存した。図19に示されているサンプルも同時に調製し、4℃で分析まで一晩保存した。これらの構築物のMWは同様の範囲内であったので、サンプルは4℃で安定であるものと思われた。
【0154】
Myc 130が前に来ていたのは、他の検討サンプルと比較して凝集種の量が多いためである可能性がある。しかしながら、対応するRPC 2クロマトグラムのピーク2は目立って大きいものではないが、SEC 0.5%NLSにより測定された高い分子量とRPC2で測定された大きなピーク2のピーク面積の間にはときどき相関があるだけであることが認められた。
【0155】
さらに、Myc 130のSDS−pageは、サンプルのより高い不純物含量および不均質性の増加は示さなかった。カラムの過負荷および分析中の温度の上昇などのSECの前進をもたらす他の要因は、全サンプルを同じ日に分析したので除外可能である。
RPC2においてMyc 130では保持時間が極めて短かった。
【0156】
REF.Endサンプルの平均MWは二量体、凝集塊および不純物の量が増すにつれ大きくなった。種々の突然変異体で発現された単量体Mycograbの計算MWは、異なるリンカー長および他の突然変異のために26〜27kDaの間であった。アミノ酸から計算された理論MW、SECにより決定されたREF.EndサンプルのMW、アミノ酸の数、リンカー長、およびシステインの数を挙げた表が表9に示されている。
【表10】
【0157】
理論的MWを、SECにより決定されたMWに対してプロットし、Myc 130のデータ点を除いた際の相関係数0.77を有する直線関係を見出した。
【0158】
図20の下の破線の右側に点で現される突然変異体Myc 106、Myc 138およびMyc 135は、野生型よりも小さな平均MWを有していた。上の破線の左側に点で現される突然変異体Myc 133、136および139は、野生型よりも大きな平均MWを有していた。しかしながら、アッセイの変動性は考慮しなければならない。さらに、図19から、注入されるタンパク質の量はいくつかのサンプルでピーク面積と常に同じとは限らなかった。共有結合的凝集塊の形成は、5つのシステインを有するMycograbに比べて4つのシステインを有する突然変異体では、分子間SS端の形成後に、4つのシステインを有する突然変異体の遊離のシステインに使用可能なものはないので、低下するはずである。システインを4つだけ有する突然変異体であっても再折りたたみの際に分子間共有結合的凝集塊が形成されるが、おそらくその量は5つのシステインを有する突然変異体でよりも少ない。
【0159】
実施例11 SEC形成:凝集傾向を評価するための再折りたたみ溶液からのUF/DFによるNLS除去
Mycograb突然変異体の凝集傾向を評価するため、NLS濃度は、攪拌細胞を用いた限外濾過/ダイアフィルトレーションによるREF.End溶液より平均5分の1だけ低下した。ダイアフィルトレーションの際に用いた全バッファー量を保持液量で割ったものがダイアファクターであり、2.5であった。
【0160】
この実験の原理は、溶解剤NLSが、凝集がそれ以上回避できない濃度まで低下される際の突然変異体の凝集傾向を調べることであった。
【0161】
凝集塊の形成はSEC−HPLC方式で評価可能であると予想された。溶出バッファーは0.5M尿素バッファーを含んだが、NLSは凝集を抑制しなかった。
分子量の増加を凝集傾向の指標として用いたところ、突然変異体の比較が可能であった。
【0162】
第一の実験セットに関して突然変異体Myc 137、Myc 106、Myc 119および野生型Myc 123を選択した。表10は、UFDF前後のフォーミュレーションバッファーにてSEC−HPLC実施により測定された分子量(MW)(kDa)と突然変異体MYC 119、137、106およびMYC 123からのREF.EndサンプルのRP−HPLCにより測定されたNLS濃度(%)を示す。NLS低下倍率は、UFDF前のサンプルのNLS濃度(#2)をUFDF後のNLS濃度(#3)で割ることで計算した。SEC HPLC 0.5%NLSに基づくMW増加率%は、それぞれの突然変異体で、REF.ENDサンプル(#1)のMWとUFDF後のMW(#3)から計算した。
【表11】
*分子量は、流れるバッファー中に0.%NLSを含有する分析的SEC HPLC法(SEC HPLC 0.5% NLS)で測定した。
**表9からのデータ
【0163】
UFDF前のサンプルのSEC HPLC(フォーミュレーションバッファーで流す)により測定された見掛けの高分子量は、分析中のタンパク質の凝集によるものであった。
【0164】
UFDF前のサンプルはなお0.5%NLSを含んでいた。サンプルがカラムを移動するにつれ、NLSはこのタンパク質よりも強く保持されるようになり、結果として凝集が起こった。よって、この分析法は、NLSを含有するサンプルの分子量の決定に適していなかった。
【0165】
REF.Endサンプル中のMycograbの分子量を測定するためには、流れるバッファー中0.5%NLSを用いたSEC HPLCを使用した。UFDFによりREF.Endサンプル中のNLSを除去した後のMWの増加は、表10に関して上記の通り計算した。値は表10の6行目に示されている。MYC 123は最小のMW増加を示し、MYC 119は400%という最大の増加を示した。
【0166】
これらのデータに基づけば、MYC 123はMYC 119より凝集傾向が小さい。しかしながら、分析的SEC HPLCはタンパク質構造と凝集塊の形成に影響を及ぼし得ると考えなければならない。さらに、MWの増加は2つの異なる分析法から得られたデータから計算され、サンプルのMWは、2つの方法で決定される場合に同じであるかどうかは評価することはできない。
【0167】
表11では、突然変異体を、突然変異と共にNLS除去後のMWの増加に従ってランク付けした。3×リンカーエレメントを有する2つの突然変異体が、4×リンカーエレメントを有する突然変異体に比べて有意に低いMW増加率%を有することは、注意すべきである。
【表12】
【0168】
図21は、UFDF前と各容量再構成後のサンプルから得られたSEC HPLCクロマトグラムの重ね合わせを示す。溶出ピークの形状は、NLS濃度の低下によって有意に変化しなかった。結論として、サンプルのMWもNLSが少なくなっても一定のままであった。これは、それ未満では凝集が誘発されるがそれ以上進行しない界面活性剤の濃度下限界があることを示唆し得る。しかしながら、サンプルのMWに対する分析法の影響は分かっておらず、それはなぜ全てのサンプルが類似のMWを有するかという理由であるかもしれない。
【0169】
NLS濃度は、2.5のダイアボリュームに相当する5倍量再構成の後、平均(n=5)0.124%の濃度まで低下した。理論上、NLSのR=0では、計算された残留NLS濃度は0.020%であるはずである。理論的に残留するNLS濃度の計算には式3を用いた。
【数3】
式中、cretentatは保持液のNLS濃度であり、cfeedは供給溶液のNLS濃度である。Rは保持物、すなわち、膜によって保持される溶質の画分である。VCFは、容量濃縮倍率であり、Nは、ダイアフィルトレーションの際に操作に導入された全バッファー量である2倍容量を保持液量で割ったものである。
【0170】
保持物中のNLSの理論濃度と測定濃度の間の矛盾は、膜によるNLSの保持が0より大きいということを示す。これはNLSとタンパク質、膜および/またはその他の成分の間の相互作用によるものであり得る。変形する能力も望ましくない保持をもたらし得る。
【0171】
実施例12 Pep−Map分析
全突然変異体のREF.Endサンプルを、ペプチドマップを用いてジスルフィド架橋に関して分析した。分析前に、サンプルをヨードアセトアミドでアルキル化し、トリプシンで消化し、LC−MSを行った。単一ペプチドのUVピークを、質量分析を用いて同定した。遊離のSH基を有するペプチドは適切、また不適切にS−S結合を形成するとともに、二量体ペプチドは、可能であればいつでも半定量的に測定した。
【0172】
5つのシステインを有する適切に折りたたまされた構築物は、それぞれT3およびT9に相当するCys 23およびCys 97の間でS−S結合を形成する。このT3−T9結合は軽鎖に存在する。他のジスルフィド結合は、T12およびT17に相当する重鎖のCys 159とCys 224の間にある。5番目のシステインはCys28上にあり、T4ペプチドに相当する。
【0173】
4つのシステインを有する構築物は常にCys 28残基を欠き、適切なS−S橋は5つのシステインを有する構築物の場合と同様である。
【0174】
突然変異体118、119、130、135、133、134、137およびC28Y+HIS(106)ならびにC28Y−HIS(108)をlab AL1で分析した。突然変異体106 origami、136、138、139、140および野生型123は、異なるデバイスを用いて分析的lab AL2で分析した。AL1の質量分析計の感度はAL2の場合よりも大きく、従って、AL2で分析された突然変異体の半定量的分析は得ることができなかった。しかしながら、適切に形成されたS−S橋が存在するかどうかは決定することができた。
【0175】
得られたデータのまとめを表12に示す。これらの結果は、SH、架橋システインおよび二量体システインの3つのカテゴリーからなる。遊離システインは、ジスルフィド結合を形成しなかったSH基を示す。架橋システインは分子内ジスルフィド結合であり、二量体システインは分子間ジスルフィドを表す。Wは個々のペプチドの弱いシグナルが検出されたことを示し、Xは強いシグナルを与えるペプチドを表す。AL 2で分析した突然変異体に*を付す。
【表13】
【0176】
「適切に」折りたたまれた、5つのシステインを有するMycograbは、T4ペプチドにおける遊離SHの有意なシグナルを与えるはずである。さらに、適切なジスルフィドT3−T9およびT12−T17の強いシグナルが予測され、不適切なSS結合は存在しないはずである。最後に、分子間SS結合も存在しないはずである。
【0177】
「適切に」折りたたまれた、4つのシステインを有するMycograbは、遊離SH基を含まないはずである。適切なS−S結合T3−T9およびT12−T17だけが検出されるはずである。さらに、分子間SS結合は存在しないはずである。
【0178】
表12は、野生型もいずれの突然変異体も適切なS−S結合の強いシグナルだけを示すわけではなかった。REF.Endサンプルは様々な折りたたみで、共有結合的に凝集した集団からなり、従って、ジスルフィド結合と遊離SH基の、全ての可能な組合せの混合物が存在すると考えるべきである。しかしながら、有望な突然変異体は、MYC 137に場合である適切なS−S橋と突然変異体C28Y+HISおよびC28Y−HISの双方の有意なシグナルを少なくとも示すはずである。
【0179】
5例では、不適切なS−S結合のみが見られ、適切なジスルフィド結合に対するシグナルは得られないか、または弱いものに過ぎなかった。
【0180】
MYC 123、MYC 138、MYC 139およびMYC 140のシグナルは極めて弱く、これらのサンプルを再分析しても高いシグナルは得られなかった。Mycograb特異的ペプチドが見られたが、システイン含有ペプチドはシグナルを生じなかったか、または弱いシグナルしか生じなかった。これは、切断部位が構造的に遮断されているためにトリプシンによるタンパク質の個々の部分に消化が不十分であることによる可能性がある。また、リンカー長が長い(3×に対して5×および6×)突然変異体ほど消化しにくくなり、結果として、溶出の遅いペプチドのシグナルは検出できないか、または検出するのが困難になるということも注意すべきである。
【0181】
興味深いことに、共有結合的ジスルフィドは、1つの例外があるが、Cys 97残基に相当する2つのT9ペプチド間でのみ形成された。
【0182】
突然変異体Myc 118、119、130、133、137ならびに突然変異体C28Y+HISおよびC28Y−HISは、野生型よりも適切なS−S結合に対して強いシグナルを生じた。しかしながら、Myc 123は感度の低い違う質量分析計で分析されたので、シグナル強度は比較できないと考えるべきである。Myc 123のペプチドからのシグナルは、突然変異体106 origami、136、138、139および140からのシグナルと比較可能である。これらの構築物の中に適切なジスルフィド橋が得られたものはなかった。不適切ジスルフィドのシグナルのみが見られた。
【0183】
Myc 137、Myc C28Y+HISおよびMyc C28Y−HISのPepマップ結果が、適切な両ジスルフィド橋の有意なシグナルを伴い、最も有望であった。突然変異体Myc 118、Myc 119およびMyc 133もまた、ジスルフィド橋様の一定量の天然型を示したが、T12−T17のシグナルは弱かった。
【0184】
突然変異体Myc 130はT12−T17 SS結合の強いシグナルを示したが、第二の適切なジスルフィドは見られなかった。
【0185】
結論
分析結果の相関
Porosカラム(RPC1)を用いた力価アッセイによって測定して、再折りたたみ後の最良の回収率はMYC 123(wt)およびMYC 134で得られた。
【0186】
カオトロピック剤によるIBの可溶化はNLSによる可溶化よりも速かった。尿素またはNLSで可溶化したIBのRPC 2クロマトグラムを比較した。しかしながら、SDS Pageは、尿素で可溶化されたIBに比べて凝集塊スミアが減ったことから、NLSの強い溶解力を示した(図14参照)。
【0187】
カオトロピック剤による可溶化後の希釈およびシステイン、L−アルギニン、1%NLSおよび低濃度の尿素/GuHClなどの種々の添加剤の使用による再折りたたみはRPC 2において単量体ピークを示さなかった(図12および図13参照)。SDS Page、非還元およびRPC 2クロマトグラムにより確認された完全に凝集したタンパク質は大きなピーク2を示した。
【0188】
SEC HPLC 0.5%NLSによるMWの測定は、1つの外れ値を除いたとき、理論的に計算されたMWとR2 0.77で相関していた。SDS PAGEの解像度はMWの微妙な違いを全て検出するには不十分であったが、理論的には0.6kDa、kSEC HPLC(それぞれMYC 134およびMYC 118)で測定する場合は14kDa異なるMWの2つの突然変異体の間で移動時間の違いが見られた。
【0189】
RPC 2クロマトグラフィーは、10個の疎水性アミノ酸がより親水性の高いもので置換された突然変異体(MYC 130)の疎水性の低下を確認することができた。このリンカーエレメントは固定相の結合部位には容易に接近することができないので、保持挙動には影響を及ぼさなかった。また、リンカー長の長い構築物のPepマップ分析では、リンカー長の短い構築物に比べて対象ペプチドに対して弱いシグナルしか得られないことも認められた。リンカーエレメントは消化酵素には容易には接近できないことが明らかであった。
【0190】
MYC 137、138および139のRPC2クロマトグラムは、他の試験した突然変異体に比べてMycograb単量体に当たる最も鋭いピークを示し、このサンプルの高い均質性を示唆した。
【0191】
Pepマップ分析は、4つのシステインを有する突然変異体のREF.Endサンプルには遊離SH基がほとんど存在しないことを示した。これは、ジスルフィド橋(不適切なものおよび適切なもの)のほぼ完全な形成ならびに共有結合的凝集塊の形成を示す。5つのシステインを有する突然変異体では、種々の遊離SH基に関して弱いシグナルが得られたが、突然変異体Myc 118、Myc 119およびMyc 133だけは、「天然」単量体においては依然として還元されているはずの5番目のシステインの位置、すなわちT4に遊離SH基を有していた。このことは、5つのシステインを有する突然変異体は全て遊離SH基のシグナルを生じるが、そのうち3つだけで、遊離SH基が検出されたことから、T4ペプチド上のSH基はSS結合を好ましく形成するということを示す。
【0192】
SEC HPLCによって測定されたMWは、サンプル中のバッファーマトリックスに極めて依存的である。SEC HPLC法の組合せはサンプルのバッファーと同様に流れるバッファーによって確立しなければならなかった。MWのマトリックス依存性は、処理工程間でのMWの比較を困難にする(表10)。
【0193】
UFDF実験は、NLSがある程度、サンプル溶液に保持され、効率的に除去できないことを示した。
【0194】
突然変異体MYC C28Y +HIS、C28Y−HISおよびMYC 137のPepマップで得られた結果は特に有望であった。これらの結果は、HISタグとシステインを4つだけ有する突然変異体が特に好ましいことを示す。このHISタグは、効率の高い精製ステップであるIMACを用いた精製に必要である。システインを4つだけ有する構築物は適切なジスルフィドとより少ない共有結合的凝集塊を形成する可能性が高い。
【0195】
突然変異の効果
突然変異の最も有益な効果は5番目のシステインの除去に起因し得る。適切なジスルフィド結合の数は5つのシステインを有する構築物に比べて増加した。さらに、IBの溶解度も5つのシステインを有する構築物に比べて高まった。
【0196】
重鎖フラグメントと軽鎖フラグメントの配向を入れ替えると、RPC 2における保持時間に小さな影響があり、VLエレメントがC末端にある場合には、N末端配向の場合に比べて保持時間が短くなった。
【0197】
NLS除去後のペプチドの凝集傾向は、リンカーエレメントの数とともに高まる可能性がある。
【技術分野】
【0001】
本発明は、真菌ストレスタンパク質hsp90と特異的に結合する新規な抗体分子、このようなペプチドをコードする核酸および医薬組成物ならびにその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
hsp90真菌ストレスタンパク質と結合する抗体フラグメントならびにその治療的使用は、例えばWO01/76627またはWO05/102386に記載されている。Mycograb(登録商標)(Efungumab)としても知られるこの抗体フラグメントは、リンカーペプチドにより連結された免疫グロブリンのVHドメインとVLドメインを含む融合タンパク質である。このような抗体フラグメントは「一本鎖可変フラグメント」(scFv)としても知られる。Mycograb(登録商標)は大腸菌(E.coli)での発酵により封入体の形態で産生され、細胞塊から抽出され、再折りたたみされた後、変性条件下でクロマトグラフィー工程により精製される。自然条件下で行われた特徴付け研究では、efungumabタンパク質には多量体または凝集塊(ここでは「多量体」と「凝集塊」は互換的に用いられる)を形成する傾向があることが示された。このような凝集塊、特に高分子量凝集塊は、治療的使用に望ましいものではない可能性がある。よって、治療的使用には、高分子量凝集塊を排除もしくは低減すること、またはこのような凝集塊の大多数に含まれる単量体の数を一定の範囲、例えば10〜100個の単量体、例えば11〜73個または26〜57個の単量体となるように凝集を制御することが望ましい可能性がある。
【発明の概要】
【0003】
今回、本発明は、例えば折りたたみ特性および/または凝集塊の形成に関して有利な特性を有する、hsp90真菌ストレスタンパク質と結合する、改良されたscFvペプチドを提供する。よって、本発明のペプチドは治療的使用に特に有用である。
【0004】
本発明の第一の局面によれば、アミノ酸スペーサーにより連結されたVHドメインとVLドメインを含み、該VHドメインが配列番号64の配列と少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含み、そして該VLドメインが配列番号66の配列と少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むscFvペプチドが提供され、ここで、該scFvペプチドは:
(a)VHドメインのC28、I29、H68、N85、C97およびその組合せからなる群から選択されるものに相当する位置におけるアミノ酸置換または欠失;
(b)VLドメインのV2、V3、F10、F14、A39、N76およびその組合せからなる群から選択されるものに相当する位置におけるアミノ酸置換または欠失;
(c)アミノ酸スペーサーが配列(GGGGS)n(式中、nは4〜6の間である)を含むこと;
(d)VHドメインが、配列番号68の配列またはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むN末端pelBシグナル配列をさらに含むこと;
(e)VLドメインが、VHドメインのN末端側末端に位置すること;および
(f)特徴(a)〜(e)の組合せ
からなる群から選択される付加的特徴を含む。
【0005】
VHドメインは配列番号64の配列と少なくとも90%、95%、99%または100%の同一性を有する配列を含むことが好ましい。また、VLドメインは配列番号66の配列と少なくとも90%、95%、99%または100%の同一性を有する配列を含むことも好ましい。付加的特徴は配列同一性のレベルとは無関係に存在すると理解すべきである。例えば、付加的特徴がC28位でのアミノ酸置換であれば、VHドメインが配列番号64と80%の配列同一性しかない配列を含む態様であっても、この置換が存在する。
【0006】
好都合には、VHドメインのアミノ酸置換はC28Y、C28S、I29S、H68R、N85S、C97Y、C97Sおよびその組合せからなる群から選択される。置換C28Yが特に好ましい。
【0007】
有利には、VLドメインのアミノ酸置換はV2I、V3Q、F10S、F14S、A39K、N76Sおよびその組合せからなる群から選択される。
【0008】
好ましくは、scFvペプチドは、配列番号8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60および62(配列中、Xaaはシステイン以外のアミノ酸残基を表し、N末端メチオニン残基は所望により切断されていてもよい)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。Xaaはチロシン残基を表すことが好ましい。
【0009】
一態様では、XaaはTyr(Y)である。別の態様では、XaaはAla(A)、Leu(L)、Ile(I)、Val(V)、Pro(P)またはMet(M)であり;さらに別の態様では、XaaはPhe(F)またはTry(W)であり;さらに別の態様では、XaaはGly(G)であり;さらに別の態様では、XはSer(S)またはThr(T)であり;さらに別の態様では、XaaはGlu(E)またはAsp(D)であり;さらに別の態様では、XaaはGln(Q)またはAsn(N)であり;さらに別の態様では、XaaはArg(R)、Lys(K)またはHis(H)である。
【0010】
好ましくは、scFvペプチドは、C末端に精製タグ、より好ましくは、6ヒスチジン残基の配列をさらに含む。
【0011】
本発明の別の態様によれば、配列番号8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60および62で示されるアミノ酸配列からなる、または本質的になるscFvペプチドが提供され、該ペプチドは、所望により、例えばHisタグなどの精製タグを含んでもよい(例えば、配列番号10、22または34で示される通り)。
【0012】
精製タグは一般にその分子の治療効果には寄与せず、従って、本発明のscFvフラグメントの精製後に除去可能である。
【0013】
本発明の別の態様によれば、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60および62で示されるアミノ酸配列を含むscFvペプチドが提供される。一態様では、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60および62で示されるアミノ酸配列からなる、または本質的になるscFvペプチドが提供され、該ペプチドは、所望により、例えばHisタグなどの精製タグを含んでもよい(例えば、配列番号2、4または20で示される通り)。
【0014】
当業者により容易に認識される通り、本発明のペプチドの最初のMet残基はまた、大腸菌で発現させる場合には、例えば大腸菌MAP(メチオニンアミノペプチダーゼ)によりin vivoで切断され得る。
【0015】
本発明のscFvペプチドは、例えば、アミノ酸配列(GGGGS)n(配列中、nは1〜12の整数、例えば、1、2、3、4または5である)を有するアミノ酸スペーサー(用語「スペーサー」と「リンカー」は互換的に用いられる)により連結された2つのドメインを含む。VHで示される一方のドメインは、抗体フラグメントの重鎖部分(例えば、配列番号2および配列番号30で示されるアミノ酸配列のscFvフラグメントのアミノ酸残基2〜122、または配列番号32のアミノ酸残基132〜152に相当)に相当する。VLで示される他方のドメインは、抗体フラグメントの軽鎖部分(例えば、配列番号2のアミノ酸残基138〜246、または配列番号12のアミノ酸残基138〜246、または配列番号32のアミノ酸残基2〜110に相当)に相当する。VHまたはVLドメインは本発明のscFvペプチドのN末端に位置してもよく、すなわち、これらの分子は次のように連結され得る:VH−リンカー−VLまたはVL−リンカー−VH。
【0016】
任意選択のpelBシグナル配列は、大腸菌で発現されるとき、該ペプチドの溶解度を高めるために、周辺細胞質膜への該ペプチドの細胞下局在をもたらす。
【0017】
一態様では、配列番号30または32で示されるアミノ酸配列を含むscFvフラグメントが提供される。別の態様では、配列番号30または32で示されるアミノ酸配列からなる、または実質的になるscFvペプチドが提供され、該ペプチドは、所望により、例えばHisタグなどの精製タグを含んでもよい。
【0018】
一局面において、本発明は、次の位置:C29X、I30X、H69X、N86X、C98X、V139X、V140X、F147X、F151X、A176X、N213X(ここで、Xは配列番号2で示されるもの以外のアミノ酸を表す(番号は配列番号2で示される通りであり、他の突然変異体の相当するアミノ酸位置は容易に同定可能である))の1個所以上に少なくとも1個のアミノ酸置換を有する、VHおよびVLドメインと本発明のリンカーとを含むscFvフラグメント(例えば、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、30、32または34で示される通り)を提供する。好ましい態様において、本発明は、以下のアミノ酸置換:C29YまたはC29S、I30S、H69R、N86S、C98YまたはC98S、V139I、V140Q、F147S、F151S、A176K、N213Sの少なくとも1つを有するscFvフラグメントを提供する。この局面に関してのアミノ酸の番号はN末端メチオニン残基を含むと認識すべきである。
【0019】
一態様では、配列番号24、26または28で示されるアミノ酸配列を含むscFvフラグメントが提供される。別の態様では、配列番号24、26または28で示されるアミノ酸配列からなる、または本質的になるscFvペプチドが提供され、該ペプチドは、所望により、例えばHisタグなどの精製タグを含んでもよい。
【0020】
本発明のペプチドは治療薬として有用である。よって、本発明の一局面では、例えば、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60および62(配列中、Xaaは上記の通り定義される)で示されるアミノ酸配列を含む本発明のscFvペプチドを、薬学上許容される賦形剤、希釈剤または担体と組み合わせて含む医薬組成物が提供される。好適な賦形剤の詳細は、Remington's Pharmaceutical Sciences and US Pharmacopoeia, 1984, Mack Publishing Company, Easton, PA, USAに示されている。賦形剤の例としては、医薬級(Ph Eur)尿素およびL−アルギニン(Ph Eur)が挙げられる。例えば、本発明のscFvペプチドの典型的な製剤は、10mgの純粋なscFvペプチド、150mgの医薬級(Ph Eur)尿素および174mg L−アルギニン(Ph Eur)を5mlの水で再構成したものである。
【0021】
本発明のscFvペプチドまたは医薬組成物は、0.1〜10mg/kg患者体重の範囲の用量で投与することができる。0.5〜5mg/kg体重の範囲の用量が好ましく、約1mg/kgの投与量が特に好ましい。該医薬組成物は経口投与が可能である。
【0022】
本発明のペプチドは、例えば、WO01/76627またはWO05/102386(それぞれ出典明示により本明細書の一部とされる)に開示されている通り真菌感染の処置に有用である。例えば、本発明のペプチドは、浸潤性カンジダ症または浸潤性アスペルギルス症または浸潤性髄膜炎などの全身性真菌感染症、例えば、病原性カンジダ属カンジダ・アルビカンス(C. albicans)、カンジダ・トロピカリス(C. tropicalis)およびカンジダ・クルセイ(C. krusei)ならびに低病原性カンジダ・パラプシロシス(C. parapsilosis)およびトルロプシス・グラブラタ(Torulopsis glabrata)の処置に有用である。本発明のペプチドはまた、カンジダ、クリプトコッカス、ヒストプラズマ、アスペルギルス、トルロプシス、ムコール症、ブラストミセス症、コクシジオイデス症、パラコクシジオイデス症の生物体またはマラリアによる感染症の処置にも有用である。よって、本発明は、例えば、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60および62(配列中、Xaa上記の通り定義される)で示されるアミノ酸配列を含む、有効量の本発明のscFvペプチドを患者に投与することを含む、真菌感染患者の処置方法を提供する。N末端Metは所望により切断されていてもよい。
【0023】
本発明のペプチドは組合せ療法に特に有用である。よって、別の局面において、本発明は、例えば、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60および62(N末端Metは所望により切断されていてもよい)(配列中、Xaaは上記の通り定義される)で示されるアミノ酸配列を含む本発明のscFvペプチドと、例えば、ポリエン抗真菌剤またはエキノカンディン抗真菌剤またはアゾール抗真菌剤などの抗真菌剤を含む組成物または組合せ製剤を提供する。本発明のscFvペプチドの組合せ相手として有用な抗真菌剤の例としては、例えば、アムホテリシンB、アムホテリシンBの誘導体、例えば、AmBisome、アムホテリシン−B脂質複合体(Abelcet)、アムホテリシン−Bコロイド分散物(Amphocil)およびアムホテリシン−B脂質内エマルション;ナイスタチン;5−フルオロシトシン;カスポファンギン(caspofungin)、アニジュラファンギン(anidulafungin)、ミカファンギン(micafungin)、LY303366;イサブコナゾール、ボリコナゾール、イトラコナゾール、フルコナゾール、ミコナゾール、ケトコナゾール、ポサコナゾール、アニジュラファンギン、ミカファンギン、グリセオフルビン、テルビナフィンなどのアゾール類が挙げられる。このような組合せは一定用量組合せであってもよいが、一般には、scFvペプチドとその組合せ相手は一定用量組合せとしてはパッケージングされない。本発明の組合せ製剤は真菌感染症の処置において同時、個別または逐次使用のためのものであり得る。本発明のペプチドはまた、例えば、アムホテリシンBと5−フルオロシトシン、ファンギンとアムホテリシンBまたはエキノカンディンとアゾールなど、1種以上の抗真菌剤と組み合わせて使用してもよい。
【0024】
別の態様において、本発明は、有効量の、例えば、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60および62(N末端Metは所望により切断されていてもよい)(配列中、Xaaは上記の通り定義される)で示されるアミノ酸配列を含む本発明のscFvペプチドと少なくとも1つの上記抗真菌剤を患者に投与することを含む真菌感染患者の処置方法を提供する。好ましい組合せ相手はアムホテリシンBまたはアムホテリシンBの誘導体、カスポファンギン、アニジュラファンギン、ミカファンギン、ボリコナゾール、イトラコナゾールである。これらの組合せ相手は同時、個別または逐次投与することができる。
【0025】
本発明の一態様では、感染を引き起こす真菌は、本発明のペプチドの抗真菌性組合せ相手に対して耐性であるか、または部分的に耐性がある。
【0026】
本発明のペプチドはまた、癌、または例えばそれぞれ出典明示により本明細書の一部とされるWO06/003384またはWO07/077454(PCT/GB2007/000029)に開示されている自己免疫疾患または敗血症などのTNFαおよび/またはIL−6のレベルの上昇が関与する症状の処置にも有用である。例えば、本発明のペプチドは、例えば、リンパ性(Iymphoid)(リンパ球性(Iymphocytic))白血病(CLL)、急性骨髄性(骨髄芽球性)白血病(leukeemia)(AML)、急性リンパ性(Iymphoid)(リンパ芽球性(IymphoBlastic))白血病(leukeemia)(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、乳癌、結腸癌、前立腺癌、多発性骨髄腫などの白血病の処置;またはヒトhsp90を標的とする敗血症(WO07/077454)の処置に有用である。よって、本発明は、有効量の、例えば、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60および62(N末端Metは所望により切断されていてもよい)(配列中、Xaaは上記の通り定義される)で示されるアミノ酸配列を含む本発明のscFvペプチドを患者に投与することを含む、癌疾患、またはTNFαおよび/もしくはIL−6のレベルの上昇が関与する症状(例えば、自己免疫疾患、SIRSまたは敗血症)を有する患者の処置方法を提供する。
【0027】
いくつかの態様では、自己免疫疾患はクローン病、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎または全身性紅斑性狼瘡である。
【0028】
本発明のペプチドは、抗癌剤との組合せ療法に有用である。好適な抗癌剤の例としては、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、ハーセプチン、ドセタキセル、シスプラチン、イマチニブ(グリベック(Gleevec)(登録商標))、パクリタキセル、シタラビンまたはヒドロキシ尿素が挙げられる。よって、本発明は、例えば、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60および62(N末端Metは所望により切断されていてもよい)(配列中、Xaaは上記の通り定義される)で示されるアミノ酸配列と、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、ハーセプチン、ドセタキセル、シスプラチン、イマチニブ、パクリタキセルおよびヒドロキシ尿素からなる群から選択される抗癌剤とを含む、本発明のscFvペプチドを含む組成物または組合せ製剤を提供する。また、例えば、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60および62(N末端Metは所望により切断されていてもよい)(配列中、Xaaは上記の通り定義される)で示されるアミノ酸配列を含むペプチドなどの、有効量の本発明のscFvとドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、ハーセプチン、ドセタキセル、シスプラチン、イマチニブ、パクリタキセルおよびヒドロキシ尿素からなる群から選択される少なくとも1種の抗癌剤を、それを必要とする患者に投与することを含む、癌疾患を有する患者の処置方法も提供される。
【0029】
本発明の別の態様によれば、記載されているscFvペプチドをコードする改良された核酸分子、および例えば大腸菌でこのようなscFvペプチドを発現させるのに特に有用な改良された核酸構築物が提供される。本発明の核酸構築物は、大腸菌において、例えば、発現されたscFvペプチドの均質性および力価に関して、scFvペプチドの改良された発現をもたらす。
【0030】
好ましくは、この核酸分子は、scFvペプチドをコードする配列の3’末端に位置する配列(taa)n(配列中、nは1または2である)をさらに含む。
【0031】
本発明の別の局面によれば、配列番号64の配列と少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むVHドメインと、配列番号66の配列と少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むVLドメインをコードする配列を含み、かつ、VHまたはVLドメインをコードする配列の3’末端に位置する配列(taa)n(配列中、nは1または2である)をさらに含む核酸分子が提供される。3’末端に複数の停止コドンを設けることで誤った読み過ごし事象が避けられる。
【0032】
別の局面において、本発明は、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59または61(配列中、nnnはCys以外のアミノ酸をコードするコドンを表す)で示されるヌクレオチド配列を含む核酸分子、例えば、DNAまたはRNA分子を提供する。例えば、一態様では、nnnは例えばTATなどTyrをコードし得る。別の局面において、本発明は、配列番号1、3、5、11、15または19で示されるヌクレオチド配列を含む核酸分子を提供する。当業者に認識される通り、核酸配列は、コードされるアミノ酸配列を変化させずに容易に改変することができる。1個以上(例えば、10、20、50または100まで)のこのようなサイレント突然変異を伴う配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59または61で示されるヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列に基づく核酸分子も、本発明の範囲内に含まれる。さらに、(i)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59または61と少なくとも80%の同一性、好ましくは、少なくとも90%、95%、99%または100%の同一性を有するか;あるいは(ii)高ストリンジェンシー条件下で、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59または61で示される配列を有する核酸分子とハイブリダイズする核酸分子も含まれる。高ストリンジェンシー条件とは、当業者には容易に理解され、例えば、6×SSC/0.05%ピロリン酸ナトリウム中、37℃(14塩基のオリゴの場合)、48℃(17塩基のオリゴの場合)、55℃(20塩基のオリゴの場合)、また60℃(23塩基のオリゴの場合)で洗浄することを指し得る。様々な組成の核酸に対するこのようなストリンジェンシー条件の好適な範囲はKrause and Aaronson (1991) Methods in Enzymology, 200:546-556に記載されている。
【0033】
一態様において、本発明は、例えば、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59または61で示される本発明の核酸分子のヌクレオチド配列を含むベクター分子を提供する。好ましくは、このようなベクター分子は、例えば大腸菌で、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59または61で示される核酸分子を発現させるのに好適である。好適な発現ベクターは当業者であれば容易に分かる。好適なベクターの例としては、例えば、pGEXまたはpETが挙げられる。別の態様では、このようなベクター分子を含む宿主細胞、例えば大腸菌を提供する。
【0034】
別の態様では、好適な転写制御エレメントの制御下に、例えば、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59または61に記載される本発明の核酸分子を含む発現ベクターが組み込まれている宿主細胞を、その宿主細胞、例えば大腸菌での該ペプチドの発現に十分な条件下で培養し、それにより、該ペプチドを産生させ、そして該細胞により産生されたペプチドを回収することを含む、例えば、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60または62(N末端Metは所望により切断されていてもよい)(配列中、Xaaは上記の通り定義される)で示されるアミノ酸配列を含む本発明のscFvペプチドの産生方法が提供される。
【0035】
2つの配列間の「同一性」パーセンテージは、BLASTPアルゴリズムバージョン2.2.2(Altschul, Stephen F., Thomas L. Madden, Alejandro A. Schaffer, Jinghui Zhang, Zheng Zhang, Webb Miller, and David J. Lipman (1997), “Gapped BLAST and PSI-PLAST: a new generation of protein database search programs”, Nucleic Acids Res. 25:3389-3402)を用い、デフォルトパラメーターを使用して決定される。特に、BLASTアルゴリズムは、URL http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/にてインターネットでアクセス可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】野生型Mycograb scFvペプチドおよびMycograb突然変異体の配列を模式的に示す図である。個々のペプチドをコードする核酸分子の停止コドンもC末端に示されている。
【図2】実施例2のELISAアッセイの原理を示す図である。
【図3】黒棒が試験した全ての突然変異体のNLSによる可溶化後の収率を示すグラフである。エラーバーはサンプルを2回分析した際の標準偏差を示す。白棒は試験した全ての突然変異体のNLS再折りたたみ後の質量収支をグラフで表したものである。突然変異体は再折りたたみ回収値の増加に従ってランク付けされている。
【図4】選択された5つの突然変異体について、可溶化剤として尿素およびDTTを用いた場合(A)、および可溶化剤としてGuHClおよびDTTを用いた場合(B)の、折りたたみ後の回収率を示したグラフである。白棒:IB.SOL溶液中に見られるタンパク質の質量を計算(式1)に用いた場合の回収率。黒棒:IB.RES溶液中に見られるタンパク質の質量を計算に用いた場合の再折りたたみ回収率。
【図5】全ての試験した突然変異体についての、4%NLS添加後、目に見える可溶化溶液の透明化が始まるまでに要した時間(白棒)と、それ以上の透明化が見られなくなるまでに要した時間(黒棒)を示したグラフである。突然変異体は開始時間に従って昇順でランク付けされている。
【図6】可溶化の応答開始に関する変動性のチャートであり、システインの数、リンカーエレメントの数および重鎖(vh)または軽鎖(vl)フラグメントがN末端にあったかどうかを示す。1:突然変異体Myc 106は可溶化の開始が最も早かったが、5つのシステインを含んでいた。
【図7】突然変異体MYC 135、Myc 130、Myc 133、Myc 119、 Myc 123野生型およびMyc 116のREF endサンプルのクロマトグラムを重ね合わせたものを示す。
【図8】突然変異体MYC 134、Myc 137、Myc 138、Myc 106 Myc 136、Myc 123およびMyc 139のREF endサンプルのクロマトグラムを重ね合わせたものを示す。
【図9】突然変異体の応答保持時間に対するスケール化評価値および以下のパラメーター:リンカー長、システインの数およびVh/Vl配置の予測プロファイラーを示す。スケール化評価値は、パラメーターが中点(x軸上の予測プロファイラープロットの赤い数字)から最高レベルまで上昇する際に保持時間がどの程度変化するかを予測する。
【図10】試験した突然変異体に関して、RP−HPLC(RPC2)で測定した保持時間に対してリンカー長をプロットしたものである。MYC 130の早い保持時間を他の突然変異体と比較して強調してある。
【図11】ピーク2のピーク面積の評価のため、図7および8の全てのREF.ENDサンプルを標準化して重ね合わせたものを示す。
【図12】8M尿素+DTT、8M尿素、6M GuHCl+DTTおよび6M GuHClで可溶化したMYC 119のREF.EndサンプルのRP−HPLC2クロマトグラムを重ね合わせたものを示す(20mM Tris、2mMシステイン、1%NLS、pH9.0で1:50希釈)。
【図13】6M尿素および5mM DTTで可溶化し、次いで、1:10希釈により再折りたたみした後のMYC 119のREF.EndサンプルのRPC 2クロマトグラムを示す。
【図14】6M尿素で可溶化し、それぞれ1:10および1:50希釈により再折りたたみした後のMYC 119のREF.IMサンプルおよびREF.ENDサンプルのSDS Page分析後のゲルの画像である。レーン1〜8:非還元SDS Page、レーン9〜14:還元SDS Page。R=還元;n−r=非還元。
【図15】6M尿素(黒)および4%NLS(青)で可溶化した後の突然変異体MYC 119からの封入体サンプルのRP−HPLCのクロマトグラムを重ね合わせたもの(RPC2)である。
【図16】左のゲル:突然変異体MYC 118、119、130、133、134、135および137の還元(r)SDS−Pageと、右のゲル:同じサンプルの非還元(n−r)SDS Pageの画像を示す。
【図17】左のゲル:突然変異体MYC 106、123 wt、136、138、139および140の還元SDS−Pageと、右のゲル:同じサンプルの非還元SDS Pageの画像を示す。
【図18】突然変異体Myc 118、Myc 119、Myc 130、Myc 133およびMyc 135のREF.EndサンプルのSEC HPLC 0.5%NLSクロマトグラムを重ね合わせたものである。これらの突然変異体由来のIBをベンチスケールで単離した。
【図19】突然変異体Myc 134、Myc 136、Myc 137、Myc 138、Myc 139、Myc 140、Myc 106およびMyc 123野生型のREF.EndサンプルのSEC HPLC 0.5%NLSクロマトグラムを重ね合わせたものである。これらの突然変異体由来のIBをパイロットプラントに単離した。
【図20】全ての突然変異体のREF.Endサンプルの理論的MWに対する測定したMWの分散プロットおよび直線回帰(連続直線)を示す。当てはめに関する95%信頼区間も示されている(破線)。左上の点はMYC 130を示す。破線内の点は95%CIの範囲内であり、従って、野生型との有意な違いはない。両破線より下の点は、予測値よりも低い平均MWを有する突然変異体を表し、両破線より上の点は、予測値よりも高い平均MWが測定された突然変異体を表す。
【図21】50mM Tris pH9.0バッファーに対するUFDF後のMyc 119、Myc 106−origami、Myc 123 wtおよびMyc 137のREF.ENDサンプルのSEC−HPLC(形式)クロマトグラムを示す。各容量再構成の後にサンプルを採取した。UFDF処理後のサンプル(5)、1回目(3)、3回目(4)および最後(5)の「バッファー交換」工程後。
【図22】全ての試験した突然変異体のREF.IM、REF.3TおよびREF.ENDサンプルのRP−HPLC 2クロマトグラムを示す。
【0037】
配列表の簡単な説明
配列番号1は、Myc123である。
配列番号2は、配列番号1によりコードされているペプチド配列である。
配列番号3は、Myc102、Mycograb−6H−TAAである。
配列番号4は、配列番号3によりコードされているペプチド配列である。
配列番号5は、Myc101、Mycograb−TAAである。
【0038】
配列番号6は、配列番号5によりコードされているペプチド配列である。
配列番号7は、MycC29X−TAA、例えば、Myc105、MycC29Y−TAAである。
配列番号8は、配列番号7によりコードされているペプチド配列である。
配列番号9は、MycC29X−6H−TAA、例えば、Myc106、MycC29Y−6H−TAA、Myc113、MycoC29S−6H−TAAである。
配列番号10は、配列番号9によりコードされているペプチド配列である。
【0039】
配列番号11は、Myc107、Myco−4−TAAである。
配列番号12は、配列番号11によりコードされているペプチド配列である。
配列番号13は、MycoC29X−4−TAA、例えば、Myc108、MycoC29Y−4−TAA;Myc114、MycoC29S−4−TAAである。
配列番号14は、配列番号13によりコードされているペプチド配列である。
配列番号15は、Myc109、N−Myco−4−TAAである。
【0040】
配列番号16は、配列番号15によりコードされているペプチド配列である。
配列番号17は、N−MycoC29X−4−TAA、例えば、Myc110、N−MycoC29Y−4−TAAである。
配列番号18は、配列番号17によりコードされているペプチド配列である。
配列番号19は、Myc111、N−Myco−6H−TAAである。
配列番号20は、配列番号19によりコードされているペプチド配列である。
【0041】
配列番号21は、N−MycoC29X−6H−TAA、例えば、Myc112、N−MycoC29Y−6H−TAAである。
配列番号22は、配列番号21によりコードされているペプチド配列である。
配列番号23は、Myc115、MycYSSSである。
配列番号24は、配列番号23によりコードされているペプチド配列である。
配列番号25は、Myc116、MycYSIQSSである。
【0042】
配列番号26は、配列番号25によりコードされているペプチド配列である。
配列番号27は、Myc117、MycSIQKSである。
配列番号28は、配列番号27によりコードされているペプチド配列である。
配列番号29は、Myc118、VH−2Bam−2VLである。
配列番号30は、配列番号29によりコードされているペプチド配列である。
【0043】
配列番号31は、Myc119、VL−2Bam−2VHである。
配列番号32は、配列番号31によりコードされているペプチド配列である。
配列番号33は、Myc145、MycC98X−6H−TAAである。
配列番号34は、配列番号33によりコードされているペプチド配列である。
配列番号35は、Myc129(MycYSRIQSS)である。
【0044】
配列番号36は、配列番号35によりコードされているペプチド配列である。
配列番号37は、Myc130(MycYSRSIQSSKS)である。
配列番号38は、配列番号37によりコードされているペプチド配列である。
配列番号39は、Myc133である。
配列番号40は、配列番号39によりコードされているペプチド配列である。
【0045】
配列番号41は、Myc134である。
配列番号42は、配列番号41によりコードされているペプチド配列である。
配列番号43は、Myc135である。
配列番号44は、配列番号43によりコードされているペプチド配列である。
配列番号45は、Myc136である。
【0046】
配列番号46は、配列番号45によりコードされているペプチド配列である。
配列番号47は、Myc137である。
配列番号48は、配列番号47によりコードされているペプチド配列である。
配列番号49は、Myc138である。
配列番号50は、配列番号49によりコードされているペプチド配列である。
【0047】
配列番号51は、Myc139である。
配列番号52は、配列番号51によりコードされているペプチド配列である。
配列番号53は、Myc140である。
配列番号54は、配列番号53によりコードされているペプチド配列である。
配列番号55は、Myc141である。
【0048】
配列番号56は、配列番号55によりコードされているペプチド配列である。
配列番号57は、Myc142である。
配列番号58は、配列番号57によりコードされているペプチド配列である。
配列番号59は、Myc143である。
配列番号60は、配列番号59によりコードされているペプチド配列である。
【0049】
配列番号61は、Myc144である。
配列番号62は、配列番号61によりコードされているペプチド配列である。
配列番号63は、野生型Myc123 scFvペプチドの重鎖をコードするヌクレオチド配列である。
配列番号64は、配列番号63によりコードされているペプチド配列である。
配列番号65は、野生型Myc123 scFvペプチドの軽鎖をコードするヌクレオチド配列である。
【0050】
配列番号66は、配列番号65によりコードされているペプチド配列である。
配列番号67は、pelBシグナル配列のヌクレオチド配列である。
配列番号68は、配列番号67によりコードされているペプチド配列である。
配列番号69は、配列番号2のscFvペプチド(Mycograb)が特異的であるカンジダhsp90由来のエピトープである。
配列番号70は、実施例2の結合アッセイで用いたスクランブルペプチドのエピトープである。
【実施例】
【0051】
実施例1
大腸菌宿主細胞を発現ベクターで形質転換させ、浸漬培養で培養する。適当なOD600において、誘導プロモーター(すなわち、tac、trcまたはT7−lacプロモーター)の抑制または活性化によりscFvの発現を誘導する。この誘導により宿主細胞内にscFvが蓄積され、主として凝集scFvからなる不溶性の封入体が生産される。適当な発現期間の後、遠心分離により細胞を採取し、破砕する。次に、不溶性の封入体を重量的手段により単離する。
【0052】
配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59または61で示されるDNA配列を大腸菌に適した発現ベクター(すなわち、pET)に挿入する。このタンパク質を大腸菌宿主内で発現させた後、アフィニティークロマトグラフィーにより精製する。標準的な分子生物学プロトコールを用いる(例えば、Harlow & Lane, 前掲; Sambrook, J. et al., 1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York; Sambrook, J. & Russell, D., 200 1, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbors参照)。
【0053】
これらのscFvペプチドは、細胞内発現の後、大腸菌細胞内に封入体の形態で蓄積される。精製のため、封入体を単離し、生成物を可溶化および再折りたたみにより抽出する。イオン交換クロマトグラフィーおよび固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)により95%を超える純度までの精製が達成される。
【0054】
実施例2 ELISA活性アッセイ
1. 概要
MYC123(「野生型」Mycograb)および突然変異体Mycograbペプチドの結合活性をELISAにて、抗原としてhsp 90のペプチドエピトープを用いて検出した。Mycograbまたは突然変異体Mycograbはビオチン化ペプチドに結合するようになり、次に、これをストレプトアビジンがコーティングされたマイクロタイタープレートに結合させた。スクランブルペプチドを対照配列として用いた。検出はMYC123タンパク質のHis領域に結合するペルオキシダーゼコンジュゲート抗His抗体を用いて行った。ペルオキシダーゼをABTS基質と反応させて緑色物質を生成し、その吸収を405nmで測定した。この405nmでの吸収は溶液中のMYC123の活性と比例する。活性を参照標準の6点検量曲線から決定し、参照に対する活性%として示した。
【0055】
ELISAの原理を、ストレプトアビジン1がプレートにコーティングされ、ビオチン2と結合する図2に示す。そして、ビオチン2は、MYC123 scFvペプチド5のHsp90結合部位4に存在するHsp 90ペプチド3と結合する。このscFvペプチド5はHisタグ6を有し、これに抗His−ペルオキシダーゼ検出抗体7が結合する。
【0056】
2. 手順の原理および供給源
用いたELISAは、Mycograbまたは突然変異体Mycograbが、ビオチン化抗原ペプチド(ビオチン−NKILKVIRKNIVKK−カンジダHsp90由来のエピトープ配列)がコーティングされたストレプトアビジン表面マイクロプレートを用いて捕捉される直接検出アッセイであった。次に、Mycograbまたは突然変異体Mycograbの存在を、セイヨウワサビ・ペルオキシダーゼにコンジュゲートされた抗Hisタグ抗体を用いて検出した。その後、セイヨウワサビ・ペルオキシダーゼの基質であるABTSをウェルに加え、存在するMycograbの濃度を405nmで測定した吸光度と比例させた。Mycograbまたは突然変異体Mycograbのサンプルの活性を、既存のMycograb薬品参照材料を用いて作製した標準曲線から直接求めた。
【0057】
3. 材料
3.1 機器
Streptawell High Bindマイクロタイタープレートは、Roche(カタログ番号11989685001)から供給された。アッセイはBio-Radモデル680マイクロプレートリーダーを用いて行った。ハードウエアの制御はMicroplate Manager Softwareバージョン5.2.1(Bio-Rad, USA)を用いて行った。データ分析はMicrosoft Excelを用いて行った。
【0058】
3.2 化学薬品および試薬
3.2.1 化学薬品
化学薬品は、特に断りのない限り、全て分析等級のものであった。
【表1】
【0059】
3.2.2 試薬
ブロッキングバッファーストック1(Milli−Q水中5%w/v BSA)
BSA 2.5g
2.5gのBSAを秤取り、50mLのMilli−Q水に加えた。4℃で1週間保存した。
【0060】
1M Trisバッファー pH7.8
Tris 121.24g
121.24gのTrisを秤取り、950mlのMilli−Q水に攪拌しながら溶かした。pHを確認し、pH7.8となるまで濃塩酸を滴下して調整した。Milli−Q水で1リットルとした。0.22μmフィルター(Sartorius)で濾過し、室温で最大1か月保存した。
【0061】
サンプル希釈バッファー(20mM Tris pH7.8 0.1%w/v BSA)
1mLの1M Tris保存溶液を48mlのMilli−Q水および1mlのブロッキングバッファーストック1溶液に加えた。実験の度に新しくした。
【0062】
洗浄バッファー(PBS+Tween 20 0.1%v/v)
PBSタブレット5錠を900mLのMilli−Q水に溶かし、1mLのTween 20を加え、タブレットが溶けるまで攪拌し、Milli−Q水で1000mLとした。4℃で1週間まで保存した。
【0063】
ブロッキングバッファーストック2(洗浄バッファー+5%w/v BSA)
BSA 2.5g
2.5gのBSAを秤取り、50mLの洗浄バッファーに溶かした。4℃で最大1週間保存した。
【0064】
ペプチド希釈バッファー(PBS+0.1%v/v Tween 20+0.1%w/v BSA)
1mLのブロッキングバッファーストック2を49mLの洗浄バッファーに加えた。実験の度に新しくした。
【0065】
抗原ペプチド溶液
ビオチン-NKILKVIRKNIVKKペプチド 10mg
発注合成した抗原ペプチドの2mg/ml溶液を、10mgのペプチドを秤取り、5mlのMilli−Q水に溶かすことにより作製した。50〜100μlのアリコートを1.5mlのエッペンドルフ管に分注し、最大1年間−80℃で冷凍保存した。
【0066】
抗原ペプチド作業溶液(ペプチド希釈バッファー中4μg/mLペプチド)
25μLの抗原ペプチド溶液(2mg/mL)を12.475mLのペプチド希釈バッファーに加え、4μg/mLの溶液とした。実験の度に新しくした。
【0067】
3.2.3 サンプル調製
対照品
1×10mgのMycograb参照バッチ(BN270603)を5mlのMilli−Q水に再懸濁させ、バイアル内の全ての粉末が確実に取り込まれ、溶解するよう穏やかに混合した。13,000rpmで5分間遠心分離して粒状物質を除去した。次に、この溶液のタンパク質濃度を標準的なUVタンパク質濃度法に従って測定した。
【0068】
試験品
1×10mgのMycograbまたは突然変異体Mycograb試験材料を5mlのMilli−Q水に再懸濁させ、対照品と同様に処理した。
【0069】
検量曲線標準
対照品材料をサンプル希釈バッファーで希釈し、上限濃度5μg/mLのサンプル5mLを得た。次に、この溶液を用いて、それぞれ最終容量2mLで、濃度範囲5〜0.156μg/mLにわたり2倍連続希釈サンプルを作製した。
【0070】
4. 手順
1. 2mg/mlの抗原ペプチド保存溶液のアリコートを冷凍庫から取り出し、0.1%(w/v)BSAおよび0.1%(v/v)Tween 20を含有するPBSバッファーで1:500希釈し(バッファー12.5ml中、ペプチド25μl)、4μg/mlペプチドの作業溶液を作製した。96ウェルのhigh bind StreptaWellプレート(Roche)のB〜H行を0.1%(w/v)BSA PBS−0.1%(v/v)Tween 20中、4μg/mlのビオチン-NKILKVIRKNIVKKペプチド100μlでコーティングした。ウェル当たり100μlの0.1%(w/v)BSA PBS−0.1%(v/v)Tween 20をA行の全てのウェルに加えた。その後、このプレートを一晩4℃で保存した。
【0071】
2. 次に、このプレートのウェルをThermo WellWash ACにて、PBS 0.1%(v/v)Tween 20バッファー200μlで30秒3回洗浄した。
【0072】
3. ローディングに先立ち、再懸濁させたMycograbバイアル保存溶液から20mM Trisバッファー pH7.8、0.1%(w/v)BSAで5μg/mlに希釈することにより、Mycograbおよび突然変異体Mycograbサンプルを作製した。次に、Mycograb(登録商標)サンプルをこの最初の5μg/ml溶液から、20mM Trisバッファー pH7.8、0.1%(w/v)BSAで、0.15625μg/mlまで2倍連続希釈することにより調製した。個々の希釈は全て、実験に必要な量に応じて、1.5mlのエッペンドルフ管(VWRカタログ番号211−2139)か、7mlのBijouxコンテナ(VWRカタログ番号215−0328)かのいずれかで行った。その後、各希釈溶液サンプル100μlをプレートにトリプリケートで添加した。100μl 20mM Tris pH7.8、0.1%(w/v)BSAを含有するブランクウェルの対照セットもH行に含めた。
【0073】
4. このプレートを室温で1時間放置した後、ステップ2に記載の通り、ウェルをPBS−0.1%(v/v)Tween 20で3回洗浄した。
【0074】
5. 100μlのマウスモノクローナル抗His HRPコンジュゲート(Sigma A7058)を各ウェルに0.1%(w/v)BSA PBS−0.1%(v/v)Tween 20中1:2000濃度で添加し、室温で1時間放置した。
【0075】
6. 次に、ウェルを上記の通り洗浄し、結合したMycograb(登録商標)を、100μlのABTS(登録商標)試薬を添加することにより検出した。この発色を405nmで読み、2つ目の検量曲線で最高濃度のサンプルの吸光度が1.3AUに達した際に読み取りを行った。Mycograb(登録商標)の濃度はA405nmでの吸収に比例した。
【0076】
7. 参照材料のA405nmでの吸光度結果をエクセルのスプレッドシートに移し、6点二次検量曲線関数y=a+bx+cx2を、Mycograb(登録商標)の濃度(μg/ml)に対し、(参照サンプルA405nm−ブランク)からプロットし、相関係数≧0.99であった。「ホック」効果の存在が見られれば、最高濃度点をグラフから除き、5点検量曲線とした。いくつかの状況では、3回の測定当たり異常値が1個を超えないならば、プレート当たり2個ずつのウェルの外れ値(目により決定)をデータ分析から除いた。適当な吸光度平均を用い、サンプル中の見掛けの濃度を計算する非直線回帰分析を用い、活性%を計算した。
【0077】
この試験で得られたELISA結果を表1に示す。
【表2】
【0078】
サンプル1および3〜6は封入体の予備精製、再折りたたみおよび洗剤NLSの除去(Dowexクロマトグラフィーまたはダイアフィルトレーションによる)の後に得られた処理中間体である(最終薬剤物質ではない)。サンプル2は、Biomeva/Thymoorganにより製造され、第III相治験に用いられた元の野生型薬剤である。元の薬品の仕様(specification)は参照標準の75〜125%であった。全てのサンプルが活性である(結合する)と判断された。
【0079】
実施例3 クリプトコックス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)の最小阻害濃度の決定
概要
MICアッセイでは、モデル生物としてクリプトコックス・ネオフォルマンスを用い、MYC123の抗真菌活性を決定した。このアッセイでは抗真菌活性を評価し、臨床状況でのMYC123の作用を模倣することができる。
【0080】
MYC123のMICは、the National Committee for Clinical Laboratory Standards document M27-A2 (2002)に従い、培養液の微量希釈により測定した。簡単に言うと、RPMI培地に103CFU/mlのクリプトコックス・ネオフォルマンスを接種した。MYC123を培地に漸減濃度で添加した(1024μg/ml、512μg/ml、256μg/ml・・・)。これらのMICプレートを37℃で72時間インキュベートした。エンドポイントは、光学的に透明なウェルとなる濃度(MIC−0)および増殖対照と比べて濁度の顕著な低下をもたらす濃度(≧50%増殖阻害、MIC−2)として判定した。
【0081】
方法
予備アッセイの調製
セーフティーキャビネット:SABプレートにクリプトコックス・ネオフォルマンスを接種し、35℃で48〜72時間インキュベートした。プレートをパラフィルムで封じた。
【0082】
ベンチ:
RPMIを調製した。抗真菌剤はNCCLS法に従って調製し(M27−A2)、RPMI増殖培地中全部で11種類の濃度とした。濃度は1つのMICに必要な終濃度の2倍とした。
【0083】
MICプレート
U型96ウェルプレートにて、試験する最高薬剤濃度100μl(必要濃度の2倍)をA行およびB行のウェル1に加えた(アッセイはデュプリケートで行った)。これをプレートの列に、例えば、行AとBのウェル2に次の濃度、行AとBのウェル3に次の濃度というように、漸減濃度で反復した。ウェル12は増殖培地のみを含んだ。
【0084】
セーフティーキャビネット:接種物の調製−直接コロニー懸濁液。クリプトコックス・ネオフォルマンスの直接コロニー懸濁液を、RMPI培地で48〜72時間プレートから作製した。これを0.5 MacFarlands標準(およそ1×106〜5×106cfu/ml)に調整した。1:50希釈液を作製した。さらに1:20希釈液(およそ1×103〜5×103cfu/ml、必要接種量の2倍)を作製した。
【0085】
セーフティーキャビネット:プレートの接種。プレートはウェル12からウェル1へと用いた。これにより薬剤の持ち越しを避けた。100μlの接種懸濁液を各ウェルにピペットで入れた(最終接種量0.5×103〜2.5×103cfu/ml)。プレートをパラフィルムで封じた。
【0086】
インキュベーション
これらのMICプレートを37℃で72時間インキュベートした。接種を確認するため、接種懸濁液を連続希釈し、これらの希釈液10μlをSABプレートにプレーティングし、37℃で72時間インキュベートした。
【0087】
読み取り結果
読み取りミラーを用い、増殖を「薬剤無しの」対照(ウェル12)と比較し、次のように増殖をスコア付けした。
0−光学的に透明
1−やや濁りがある
2−著しい増殖の低下(およそ50%)
3−若干の濁度低下
4−濁度の低下無し
本研究では表2に示されるようなMIC結果が得られた。
【表3】
【0088】
サンプル1および3〜6は封入体の予備精製、再折りたたみおよび洗剤NLSの除去(Dowexクロマトグラフィーまたはダイアフィルトレーションによる)の後に得られた処理中間体である(最終薬剤物質ではない)。サンプル2は、Biomeva/Thymoorganにより製造され、第III相治験に用いられた元の野生型薬品であった。
【0089】
これらのサンプルに関して得られたMIC結果を、対応するバッファーに関して得られた結果と比較した。サンプル3を除く全てのサンプルが参照070602と比較して活性があるとみなされた。サンプル3およびバッファー6からは同じ結果が得られ、MYC123不含バッファーがこの試験生物に有毒であったことを示す。サンプル1および4〜6の値はTrisバッファーの値とかけ離れており、これはデータの高い信頼性を示す。
【0090】
実施例4
概要
Mycograb突然変異体の目的は、野生型Mycograbに比べて構造特性が改良された突然変異体scFvペプチドを得ることであった。点突然変異、特に遊離システインのチロシンによる置換により、凝集および下流プロセシングの際の不適切なジスルフィド結合の形成が軽減されるはずであると考えられた。また、重鎖フラグメントの配向を軽鎖フラグメントと入れ替え、HISタグを除去することが、Mycograb分子の天然の3D構造の形成に有益であるとも考えられた。
【0091】
クローニングした後に、発酵の前にこれらの構築物の配列決定を行った。封入体(IB)の単離のため、およびさらなる下流プロセシングのために十分な材料を得るために発酵をスケールアップした。これらの突然変異体の発現構築物を、再折りたたみの最終工程まで、適合させたBiomevaプロセスに従って精製した。
【0092】
一定範囲の突然変異体Mycograbペプチドの物理的パラメーターを実施例5〜12に示す通りに試験した。
【0093】
試験した突然変異体およびそれらの突然変異の概要を表3に示す。比較のため、試験に野生型を含めた。
【表4】
【0094】
試験アッセイに用いた方法論を以下に記載する。
【0095】
封入体(IB)の単離
LVA(Laborversuchsanstalt)にて突然変異体Myc 118、119、130、133およびMyc 135の振盪フラスコから得られた4Lの発酵液を、高圧ホモジナイザー(LAB 40−15 RBFI)を用い、RPP4中、700バールで2サイクル、各々15分間で破砕した。IBを、4℃、10000rpmで20分間、実験室規模でボトル遠心機を用い、細胞残渣から分離した。IBを実験室用の水(WFL)で2回洗浄し、その後、WFL中20%(w/v)の懸濁液を調製した。この懸濁液のアリコートを−20℃で保存した。
【0096】
IBを、突然変異体Myc 134、137、138、106、136、139、140およびMyc 123(wt)から、これらの突然変異体の発酵をバイオリアクターにて30L規模で行ったため、RPP4中パイロットスケールで単離した。ディスクスタック遠心機を用い、細胞残渣からIBを分離した。WFIで20%の懸濁液(w/v)を調製した。この懸濁液のアリコートを−20℃で保存した。
【0097】
可溶化
NLSによる可溶化(適合させたBiomevaプロセスに従う)。20%IB懸濁液の可溶化は、タンパク質濃度8mg/mlとなるまでWFLで希釈した後、100mM Tris/塩基、4%NLS、pH9.0バッファーで1:2希釈することにより行った。この溶液をビーカー中、室温で、透明となるまで、しかしながら少なくとも30分間攪拌した。透明化の開始および終了までの時間を記録した。
【0098】
尿素、GuHCl、DTTのよる別の可溶化。この別の可溶化戦略は、20mM Tris 8M尿素+/−5mM DTTまたは20mM Tris、6M GuHCl+/−5mM DTT(双方ともpH9.0)を用いた20%IB懸濁液の各量の1:10希釈により行った。尿素およびGuHClの得られた濃度は、IB懸濁液の容量によってそれぞれ7.2Mおよび5.2Mであった。
【0099】
可溶化されたIBの再折りたたみ
NLSによる再折りたたみ。再折りたたみは、この可溶化溶液を50mM Tris/塩基バッファーで1:4希釈することにより行った。NLSの終濃度は0.5%であった。再折りたたみは50μM CuCl2の添加により開始させた。サンプルを採取し、CuCl2添加前と添加後、次いでCuCl2添加後およそ24、48、72および96時間に直ぐにRPC2分析した。
【0100】
尿素、GuHClによる可溶化後の再折りたたみ。8M尿素または6M GuHCl+/−DTTによる可溶化後のMycograb溶液の再折りたたみは、20mM Tris/塩基、1%NLSおよび2mM Cystinを含有するバッファーpH9.0で1:50希釈することにより行った。
【0101】
いくつかの突然変異体では、尿素による可溶化後のMycograb溶液の希釈は、20mM Tris/塩基、0.5M L−アルギニンおよび2mM Cystinを含有するバッファーpH 9.0で1:10希釈することによっても行った。
この再折りたたみ溶液をそれぞれ4℃で96時間または室温で24時間攪拌した。
【0102】
再折りたたみの動態
必要な再折りたたみ時間を決定するため、突然変異体Myc 119の再折りたたみ動態を記録した。Myc119の20%IB懸濁液のサンプルを上記の通り可溶化した。再折りたたみは、サンプルをそれぞれの時間間隔で採取し、RPC2により分析した以外、上記の通り行った。
【0103】
UF/DFによる再折りたたみ溶液からのNLSの除去。突然変異体Myc119、Myc 137、Myc 106およびMyc 123(wt)を上記の通り可溶化し、再折りたたみした。再折りたたみ後、REF.END溶液のバッファー交換を、Amicon stir cellを用いて分子量カットオフ10kDaで行った。各ターンオーバー容量後のNLS濃度をRP−HPLCで測定した。50mlのREF.END溶液を25mlまで濃縮した後、ダイアフィルトレーションバッファーで再び50mlとした。この手順を4回行った。NLS除去後の凝集傾向を、フォーミュレーションバッファーを流すSEC−HPLCで測定した。
【0104】
SDS Page分析
SDS Pageは、NuPAGE 4−12 BisTrisゲルと泳動バッファーとしてMOPSを用いて行った。泳動時間は200ボルトで65分であった。質量0.2〜0.4μgのMycograbを各レーンに適用した。電気泳動後、ゲルを銀で染色した。還元SDS Pageでは、100mMのDTTをサンプルに加えた。
【0105】
結果
突然変異体の発現構築物を、表4に挙げられている分析方法を用い、下流手順の種々の段階で分析した。
【表5】
【0106】
表5は、突然変異体の評価に用いた、表4に挙げられている分析方法の説明を示す。特定のアッセイの特異性を記載した注釈も含まれている。
【表6】
【0107】
試験した突然変異体の個々のアッセイのさらなる詳細を以下の実施例5〜12にまとめ、考察する。
【0108】
実施例5 可溶化および再折りたたみ後の質量収支 − 結果としてのRPC1力価の測定
IBの可溶化および再折りたたみ前後のタンパク質濃度を力価アッセイで測定した。このアッセイではサンプル中に存在する全可溶性タンパク質を測定するので、質量収支は100%になるはずである。可溶化に関する質量収支を、式1を用いて計算した。
【数1】
式中、mg RPC1 IB.SOLは、RPC 1法による濃度測定値とIB SOL溶液の容量から計算したIBの可溶化溶液中のタンパク質の質量である。mg RPC1 IB.RESは、RPC 1法による濃度測定値と単離されたIBをDIに再懸濁させた後の溶液の容量から計算した20%IB懸濁液中の質量である。
【0109】
再折りたたみに関する質量収支は式2を用いて計算し、回収率%として表す。4%NLS、8M尿素+/−5mM DTTまたは6M GuHCl+/−5mM DTTのいずれかで可溶化したIBを、それぞれ3.3.1および3.3.2に記載のように希釈し、再折りたたみを行った。
【数2】
式中、mg RPC1 Ref.ENDは、再折りたたみ溶液の容量を掛けた再折りたたみ溶液中に見られるRP−HPLCでの濃度測定値によるタンパク質の質量である。mg RPC1 IB.SOLは、IB可溶化物中に見られるタンパク質の質量であり、%REFは再折りたたみ後の回収率である。
【0110】
式1および2により計算される通り、4%NLSでの可溶化とその後の全ての突然変異体の再折りたたみ後の質量収支は表3に示されている。生データは表6および7に見られる。
【0111】
表6は、全ての試験した突然変異体についての、IB_RES懸濁液のNLSで可溶化した後の回収率と、分析法RPC Iから計算した再折りたたみ後の回収率を示す。また、IB−RES溶液中のタンパク質濃度および分析法RPCIにより測定された再折りたたみ溶液中のタンパク質濃度も示す。表7は、尿素(SOL:尿素)での可溶化およびGuHCl(SOL:GuHCL)での可溶化後にIB_RES、IB_SOLおよびREF.ENDサンプルのRPCにより測定されたタンパク質濃度を示す。再折りたたみ時間は4℃で96時間であった。REF.END溶液を得るための希釈倍率は、IB_RESおよびIB_SOLでそれぞれ500および50であった。
【0112】
【表7】
【表8】
【0113】
可溶化の質量収支は試験した12種の突然変異体のうち10種で100%を超えていた。これは、IB懸濁液が粗サンプル型であり、結果として、サンプルを採取した際にIBが完全に溶けておらず、不均質な溶液となり、よって、全タンパク質濃度の過小評価に至ったためであり得る。データ変動は高く、2回分析した6つの突然変異体の相対標準偏差は2.6%(Myc 138)〜42.9%(Myc 133)の範囲であった。
【0114】
再折りたたみ後の回収率%は72%(Myc 138)〜99%(Myc 134)の間であった。予測回収率は100%である(可溶化後の回収率と同じ)。再折りたたみ後の回収率は全て100%より低く、分散は可溶化後の回収率ほど大きくなかった。これは、IB.SOLおよびREF.endサンプル中のタンパク質濃度の概算がIB.RESサンプルよりも精度が高いことを示す。しかしながら、回収率の計算は、主として、可溶化実験および再折りたたみ実験の対照として役立つ。
【0115】
8M尿素または6M GuHClを可溶化剤として用いた場合の可溶化溶液IB.SOLおよびIB懸濁液IB.RESに関する再折りたたみ収率を図4に示す。
【0116】
回収率は、おそらくサンプリング前の均質性が不十分なために、特にIB.SOLおよびIB.RESサンプルで、タンパク質濃度の測定に伴う問題を反映して44%から230%まで様々である。
【0117】
尿素可溶化後のREF.ENDサンプル中の濃度は、平均倍率で1.2倍高いが、GuHCl可溶化後のREF.END中の濃度に匹敵した(表6および7参照)。よって、希釈は一貫していた。
【0118】
実施例6 可溶化時間
NLSを用いた場合の可溶化時間を全ての突然変異体について試験した。溶液が透明になり始めるまでの時間とそれ以上の透明化が見られなくなるまでの時間を記録し、図5に示す。
2%NLSを用いるのに対し、尿素+/−DTTおよびGuHCl+/−DTTによる可溶化は2〜3倍速かった。
【0119】
システインの数と透明化が始まるのに要した時間との間には相関が見られた。突然変異体134(システイン5個)を除き、4個のシステイン残基を有する突然変異体は5個のシステイン残基を有する突然変異体よりも速く可溶化した。図6は、透明化の開始[分]が、N末端における重鎖または軽鎖フラグメントのアライメント、リンカーエレメントおよびシステイン残基の数、の3つのカテゴリーに対してプロットされている変数チャートを示す。図6の1で示されたMyc 134を除き、システイン4個のカテゴリーのデータ点は、システイン5個のカテゴリーのデータ点に比べて、早い可溶化開始時間に分散している。
【0120】
回帰モデル(Myc 134を除いてR2=0.72)では、5個ではなく4個のシステインを有するMycograb構築物では、可溶化の開始が20分から11.3分に短縮されることを予測した(モデルは示されていない)。
【0121】
実施例7 RPC 2−NLS再折りたたみ
Biomeva適合プロセス(実施例4に記載)に従って可溶化および再折りたたみされたMycograb REF.ENDサンプル突然変異体をRPC 2により分析した。
【0122】
野生型(MYC 123)を含む全ての試験した突然変異体からのREF.ENDサンプルを重ね合わせたものを図7および図8に示す。最初に突然変異体Myc 116をlab DSP−DEV 1でスクリーニングし、比較のためにこの重ね合わせに含めた。
【0123】
図7では、ベンチスケールで単離されたIBから作成されたREF.ENDサンプルのクロマトグラムを、図8では、パイロットプラントにおいてより大規模に単離されたIBから作成されたREF.ENDサンプルのクロマトグラムを示す。
【0124】
溶出プロフィールを、
1. ピーク1保持時間(疎水性を反映)、
2. ピーク1の形状(ピークが鋭い場合には、二量体の存在および単量体の均質性を反映)
3. 凝集塊/不純物ピーク(ピーク2)に対する単量体/二量体ピーク(ピーク1)の面積比(凝集塊/不純物含量を反映)
【0125】
保持時間ピーク1(疎水性を反映)
試験した突然変異体の単量体/二量体ピークの保持時間を表8に示す。
【表9】
【0126】
保持時間は分子構築物によって大きく異なる。予測通り、保持時間(疎水性を反映)がリンカー長とともに長くなるという傾向はない。1つのリンカーエレメントは4つのグリシンと1つのセリン残基からなる。グリシンは、親水性であるセリンとは対照的に疎水性である。しかしながら、リンカー中のグリシン含量は4倍高いので、RPC2において保持時間により測定して、疎水性は有意に高まらないと思われる。
【0127】
Myc 130の保持時間は、残りの突然変異体よりも短い。10個のアミノ酸がより親水性の高い(セリン5個)性質のアミノ酸で置換されたことから、分子の疎水性が低下し、その結果、保持時間は短くなる。このデータ点を統計分析から除くと、VLの配向がN末端である場合に、配向がC末端である場合に比べて保持時間に有意な違いを示すモデルが得られる。VLエレメントがN末端に位置する場合、それがC末端に位置する場合に比べて保持時間が0.41分増す。図9は、このモデルのスケール化評価値と予測プロファイラーを、因子としてのシステインの数、リンカー長および鎖フラグメントの配向と応答としての保持時間ともに示す。
【0128】
このモデルからはMyc 130の保持時間が除かれていることに注意すべきである。図10に示されているリンカー長に対する保持時間のプロットは、この構築物の保持時間が、上述のようにより親水性の高い性質をもたらす点突然変異のために、残りの突然変異体と比べて短いことを示す。
【0129】
ピーク1の形状
ショルダーが無いか、またはわずかしか無い鋭いピーク1は単量体Mycograbの均質性を反映する。ピークの形状は、全ての突然変異体からのREF.EndサンプルのRPC 2クロマトグラムの重ね合わせにより評価し、突然変異体Myc 137、Myc 138およびMyc 139に関して最も鋭いピークを決定した。ピーク1は野生型Myc 123よりも鋭く、ピーク1と2はほとんどベースラインで分離した。これは、これらの構築物が野生型より均質性の高い単量体/二量体タンパク質を発現することを示し得る。
【0130】
単量体/二量体ピークの面積比
図7(Myc 123 wt)に示される通り、Myc 116およびMYC123についての単量体/二量体に関する不純物/凝集塊含量が最も低かった。しかしながら、これらの2つのサンプルの分析は、別の研究室により3か月早く行われ、ピーク2の増加は経時的に顕著になった。試験した突然変異体のREF.Endサンプルと同じ月に調製および分析されたMyc 123からのREF.Endサンプルのクロマトグラムを図8に示す。図7に示されているMYC 123のクロマトグラムと図8に示されているものとの比較から、サンプル調製と分析法が厳密に再現性があるわけではないという結論に至る。
【0131】
凝集塊ピークに対する単量体/二量体ピークの面積比は、ピーク1を同じピーク極大に対して標準化することにより求めた。標準化後のピーク2のピーク面積は、視覚により面積評価を用い、大きさの増加に従ってランク付けした。標準化した概要を図11に示す。
【0132】
次のランク付けを確立した:Myc 116、Myc 139、Myc 136<Myc 119、Myc 12、Myc140<Myc137、Myc 135、Myc138<Myc 106<Myc 130<Myc 134<Myc118<Myc133。
【0133】
突然変異体Myc 106、134、136〜139のIBから作成したREF.EndサンプルのRPC 2クロマトグラムをパイロットプラントで処理したところ、ベンチスケールで単離された突然変異体Myc 118〜135のIBよりも低い不純物/凝集塊ピークを示した(図8参照)。
【0134】
実施例8 RPC 2尿素/GuHCl再折りたたみ
突然変異体Myc 118、119、130およびMyc 133を7.6M尿素+/−DTTおよび5.6M GuHCl+/−DTTを用いて溶解させ、再折りたたみバッファーで希釈することにより再折りたたみを開始させた。
【0135】
REF.Endサンプルは全て、RPC 2において単量体/二量体ピーク(ピーク1)を示さなかった。凝集塊および不純物であると思われる大きなピーク2が優勢である。突然変異体Myc 119からの再折りたたみ終了サンプルの代表的なRP HPLCクロマトグラムを図12に示す。このサンプルは実施例4に記載の通り調製した。
【0136】
単量体はおよそ10.5分に溶出すると予測された。それより早く溶出するピークは同定されず、0.5%NLSでの再折りたたみでは見られなかった。大きなピーク2は強い凝集を示す。尿素/GuHCl可溶化後の全てのREF.Endサンプルで、同様の溶出プロフィールが得られた。
【0137】
20mM Tris/塩基、0.5M L−アルギニンおよび2mM シスチンを含有するバッファーpH9.0で1:10希釈することにより再折りたたみを行った場合にも同様の溶出プロフィールが得られた。代表的なクロマトグラムを図13に示す。
【0138】
この強い凝集傾向を非還元条件下でのSDS−Pageにより確認し、REF.Endサンプルでは大きな強いHMWスミア(smear)が検出され、尿素可溶化後、目に見える単量体バンドは無かった。その後、このスミアは、サンプルが還元され、単量体Mycograbバンドが現れた際に消失した。図14では、尿素可溶化後の還元および非還元REF.EndサンプルのSDS Page分析を示す。レーン4〜7は、非還元条件下、2種類の異なる濃度でのMYC 119のREF.IMサンプルとREF.Endサンプルを示す。レーン10〜13は、還元条件下での同じサンプルを示す。この凝集塊スミアは、このサンプルが還元され、単量体ならびに二量体バンドは目に見えるようになった際に消失した。
【0139】
尿素およびGuHClは、タンパク質の凝集を避けることができない低濃度(尿素では、1:50希釈の場合0.14M、1:10希釈の場合0.72M;GuHClでは、1:50希釈の場合0.11M、1:10希釈の場合0.56Mであった)で再折りたたみ溶液中に存在した。図12に示される通り、DTTの使用は、比較可能であると見られるDTTを用いても用いなくても、RP−HPLCクロマトグラム(RPC 2)として凝集に有意な影響を及ぼすとは思われない。
【0140】
REF.Endサンプルとは対照的に、尿素で溶解させたIB.SOLサンプルのRPC 2クロマトグラムは、2%NLSに溶解させたIB.SOLサンプルと、ピーク形状に関して比較可能であった。図15はHPLCクロマトグラムの重ね合わせを示す。
【0141】
非還元IB.SOLサンプルのSDS−Page分析は、サンプルを尿素で溶解させたとき、2%NLSに溶解させたIB.SOLサンプルの場合よりも強いHMWバンドを示した。これは図14に示され、レーン3では、サンプルは尿素で可溶化し、レーン8では、サンプルは2%NLSで可溶化した。IB.SOLサンプルのクロマトグラムのピーク2の重ね合わせはNLS中よりも尿素中の方がいっそう小さいので、RP−HPLCのピーク2からは凝集塊含量についての示唆が得られないと結論付けることができる。
【0142】
その後の再折りたたみでは単量体ピークは得られず、タンパク質は完全に凝集する。
【0143】
実施例9 還元および非還元SDS−PAGE
還元および非還元SDS−Pageを行い、REF.Endサンプル中の不純物および凝集塊含量を求めた。還元SDS−Pageを用いた場合、Mycograb種は単量体および二量体バンドを現し、サンプル中の宿主細胞不純物含量は、非還元SDS−Pageゲルと比べた場合、凝集種から識別可能であった。非還元SDS Pageは、単量体、二量体および凝集塊を示した。非還元SDS−Pageの銀染色ゲルを還元SDS−Page分析と比較すると、凝集種の量が半定量的に評価することができた。全ての試験した突然変異体のREF.ENDサンプルの還元および非還元SDS−Pageを図16および図17に示す。
【0144】
図16の左側のゲルは、突然変異体MYC 118、119、130、133、134、135、137からのREF.Endサンプルの還元SDS−Pageを示す。30kDaのバンドは単量体Mycograbであり、これは全サンプルで優勢であった。この単量体バンドの移動によれば、突然変異体MYC 134で発現されたMycograbはこのゲルで分析された他の突然変異体よりも大きな分子量を有するものと予測された。程度は低いが、同様のことがMYC 135でも検出された。表9によれば、MYC 134は図16に示されている突然変異体の中で最も大きな理論的分子量を有し、MYC 135がこれに次いだ。
【0145】
非還元SDS−Pageゲルでは、凝集種ならびに二量体が確認された。レーン13(MYC 134)および15(MYC 137)では、HMWバンドが他のレーンの場合よりも弱い。これは最も低い凝集種含量を示すが、この単量体のバンドもより弱い。
【0146】
図16に示されているMyc 133を除いた全ての突然変異体で、互いに比較した際に移動時間と強度の異なる二本のバンドが見られた。これらのバンドの同定は難しかったが、これは天然様構造のMycograb単量体であったと推測された。
【0147】
図17は、突然変異体MYC 106、136、138、139、140および野生型MYC 123のREF.Endサンプルの還元および非還元SDS Pageを示す。異なる構築物のMWの違いは単量体バンドの移動の違いによって同定できた。レーン5および7のバンドは、レーン2、3、6および表9に挙げられている理論的MWと一致する4のバンドよりもやや小さいMWで現れた。
【0148】
ゲルに適用されたタンパク質の質量は一貫しておらず、REF.Endサンプル中の濃度測定は精度が十分でなかったために単量体バンドの強度は様々であった。よって、不純物含量の半定量的分析は不可能であった。しかしながら、単量体バンドの濃さがMyc 140の一つと同等であるが、他のバンドの強度が幾分高いため、Myc 106のREF.endサンプルの不純物含量がさらに高いことは明らかであった。
【0149】
SDS−Page分析は、Myc 106 origamiのREF.Endサンプルがより高いHCPおよび生成物関連の不純物を含有していることを示した。しかしながら、これはRPC2分析法によっては確認されず、ピーク2の面積は他の突然変異体と同じ範囲であった。
【0150】
実施例10 SEC 0.5%NLS:REF.RNDサンプルにおけるMycograb種の分子量の測定
適合されたBiomeva法(実施例4参照)に従って調製された全REF.ENDサンプルを0.5%NLS中、SEC−HPLCで分析し、平均分子量を求めた。SECクロマトグラムの重ね合わせを図18および図19に示す。
【0151】
平均分子量は48.6kDa〜65.8kDaの範囲であった。ピークの幅の広さはサンプルの種の不均質性を反映する。REF.Endサンプルにおいて生成物のおよそ80%が単量体であったが、二量体およびさらにMWの大きな種、ならびに非生成物関連の不純物が存在しており、その結果、幅広の溶出ピークとなった。
【0152】
図18では、Myc 130の溶出プロフィールは、他の試験したサンプルと比較して前に来ていたために目立った。これは、構築物の性質(親水性が高い)によるサンプルの高い不均質性のため、または偶発的にサンプルの処理が異なったためである可能性があった。
【0153】
図18に示されているサンプルは同時に調製し、分析まで4℃で5日間保存した。図19に示されているサンプルも同時に調製し、4℃で分析まで一晩保存した。これらの構築物のMWは同様の範囲内であったので、サンプルは4℃で安定であるものと思われた。
【0154】
Myc 130が前に来ていたのは、他の検討サンプルと比較して凝集種の量が多いためである可能性がある。しかしながら、対応するRPC 2クロマトグラムのピーク2は目立って大きいものではないが、SEC 0.5%NLSにより測定された高い分子量とRPC2で測定された大きなピーク2のピーク面積の間にはときどき相関があるだけであることが認められた。
【0155】
さらに、Myc 130のSDS−pageは、サンプルのより高い不純物含量および不均質性の増加は示さなかった。カラムの過負荷および分析中の温度の上昇などのSECの前進をもたらす他の要因は、全サンプルを同じ日に分析したので除外可能である。
RPC2においてMyc 130では保持時間が極めて短かった。
【0156】
REF.Endサンプルの平均MWは二量体、凝集塊および不純物の量が増すにつれ大きくなった。種々の突然変異体で発現された単量体Mycograbの計算MWは、異なるリンカー長および他の突然変異のために26〜27kDaの間であった。アミノ酸から計算された理論MW、SECにより決定されたREF.EndサンプルのMW、アミノ酸の数、リンカー長、およびシステインの数を挙げた表が表9に示されている。
【表10】
【0157】
理論的MWを、SECにより決定されたMWに対してプロットし、Myc 130のデータ点を除いた際の相関係数0.77を有する直線関係を見出した。
【0158】
図20の下の破線の右側に点で現される突然変異体Myc 106、Myc 138およびMyc 135は、野生型よりも小さな平均MWを有していた。上の破線の左側に点で現される突然変異体Myc 133、136および139は、野生型よりも大きな平均MWを有していた。しかしながら、アッセイの変動性は考慮しなければならない。さらに、図19から、注入されるタンパク質の量はいくつかのサンプルでピーク面積と常に同じとは限らなかった。共有結合的凝集塊の形成は、5つのシステインを有するMycograbに比べて4つのシステインを有する突然変異体では、分子間SS端の形成後に、4つのシステインを有する突然変異体の遊離のシステインに使用可能なものはないので、低下するはずである。システインを4つだけ有する突然変異体であっても再折りたたみの際に分子間共有結合的凝集塊が形成されるが、おそらくその量は5つのシステインを有する突然変異体でよりも少ない。
【0159】
実施例11 SEC形成:凝集傾向を評価するための再折りたたみ溶液からのUF/DFによるNLS除去
Mycograb突然変異体の凝集傾向を評価するため、NLS濃度は、攪拌細胞を用いた限外濾過/ダイアフィルトレーションによるREF.End溶液より平均5分の1だけ低下した。ダイアフィルトレーションの際に用いた全バッファー量を保持液量で割ったものがダイアファクターであり、2.5であった。
【0160】
この実験の原理は、溶解剤NLSが、凝集がそれ以上回避できない濃度まで低下される際の突然変異体の凝集傾向を調べることであった。
【0161】
凝集塊の形成はSEC−HPLC方式で評価可能であると予想された。溶出バッファーは0.5M尿素バッファーを含んだが、NLSは凝集を抑制しなかった。
分子量の増加を凝集傾向の指標として用いたところ、突然変異体の比較が可能であった。
【0162】
第一の実験セットに関して突然変異体Myc 137、Myc 106、Myc 119および野生型Myc 123を選択した。表10は、UFDF前後のフォーミュレーションバッファーにてSEC−HPLC実施により測定された分子量(MW)(kDa)と突然変異体MYC 119、137、106およびMYC 123からのREF.EndサンプルのRP−HPLCにより測定されたNLS濃度(%)を示す。NLS低下倍率は、UFDF前のサンプルのNLS濃度(#2)をUFDF後のNLS濃度(#3)で割ることで計算した。SEC HPLC 0.5%NLSに基づくMW増加率%は、それぞれの突然変異体で、REF.ENDサンプル(#1)のMWとUFDF後のMW(#3)から計算した。
【表11】
*分子量は、流れるバッファー中に0.%NLSを含有する分析的SEC HPLC法(SEC HPLC 0.5% NLS)で測定した。
**表9からのデータ
【0163】
UFDF前のサンプルのSEC HPLC(フォーミュレーションバッファーで流す)により測定された見掛けの高分子量は、分析中のタンパク質の凝集によるものであった。
【0164】
UFDF前のサンプルはなお0.5%NLSを含んでいた。サンプルがカラムを移動するにつれ、NLSはこのタンパク質よりも強く保持されるようになり、結果として凝集が起こった。よって、この分析法は、NLSを含有するサンプルの分子量の決定に適していなかった。
【0165】
REF.Endサンプル中のMycograbの分子量を測定するためには、流れるバッファー中0.5%NLSを用いたSEC HPLCを使用した。UFDFによりREF.Endサンプル中のNLSを除去した後のMWの増加は、表10に関して上記の通り計算した。値は表10の6行目に示されている。MYC 123は最小のMW増加を示し、MYC 119は400%という最大の増加を示した。
【0166】
これらのデータに基づけば、MYC 123はMYC 119より凝集傾向が小さい。しかしながら、分析的SEC HPLCはタンパク質構造と凝集塊の形成に影響を及ぼし得ると考えなければならない。さらに、MWの増加は2つの異なる分析法から得られたデータから計算され、サンプルのMWは、2つの方法で決定される場合に同じであるかどうかは評価することはできない。
【0167】
表11では、突然変異体を、突然変異と共にNLS除去後のMWの増加に従ってランク付けした。3×リンカーエレメントを有する2つの突然変異体が、4×リンカーエレメントを有する突然変異体に比べて有意に低いMW増加率%を有することは、注意すべきである。
【表12】
【0168】
図21は、UFDF前と各容量再構成後のサンプルから得られたSEC HPLCクロマトグラムの重ね合わせを示す。溶出ピークの形状は、NLS濃度の低下によって有意に変化しなかった。結論として、サンプルのMWもNLSが少なくなっても一定のままであった。これは、それ未満では凝集が誘発されるがそれ以上進行しない界面活性剤の濃度下限界があることを示唆し得る。しかしながら、サンプルのMWに対する分析法の影響は分かっておらず、それはなぜ全てのサンプルが類似のMWを有するかという理由であるかもしれない。
【0169】
NLS濃度は、2.5のダイアボリュームに相当する5倍量再構成の後、平均(n=5)0.124%の濃度まで低下した。理論上、NLSのR=0では、計算された残留NLS濃度は0.020%であるはずである。理論的に残留するNLS濃度の計算には式3を用いた。
【数3】
式中、cretentatは保持液のNLS濃度であり、cfeedは供給溶液のNLS濃度である。Rは保持物、すなわち、膜によって保持される溶質の画分である。VCFは、容量濃縮倍率であり、Nは、ダイアフィルトレーションの際に操作に導入された全バッファー量である2倍容量を保持液量で割ったものである。
【0170】
保持物中のNLSの理論濃度と測定濃度の間の矛盾は、膜によるNLSの保持が0より大きいということを示す。これはNLSとタンパク質、膜および/またはその他の成分の間の相互作用によるものであり得る。変形する能力も望ましくない保持をもたらし得る。
【0171】
実施例12 Pep−Map分析
全突然変異体のREF.Endサンプルを、ペプチドマップを用いてジスルフィド架橋に関して分析した。分析前に、サンプルをヨードアセトアミドでアルキル化し、トリプシンで消化し、LC−MSを行った。単一ペプチドのUVピークを、質量分析を用いて同定した。遊離のSH基を有するペプチドは適切、また不適切にS−S結合を形成するとともに、二量体ペプチドは、可能であればいつでも半定量的に測定した。
【0172】
5つのシステインを有する適切に折りたたまされた構築物は、それぞれT3およびT9に相当するCys 23およびCys 97の間でS−S結合を形成する。このT3−T9結合は軽鎖に存在する。他のジスルフィド結合は、T12およびT17に相当する重鎖のCys 159とCys 224の間にある。5番目のシステインはCys28上にあり、T4ペプチドに相当する。
【0173】
4つのシステインを有する構築物は常にCys 28残基を欠き、適切なS−S橋は5つのシステインを有する構築物の場合と同様である。
【0174】
突然変異体118、119、130、135、133、134、137およびC28Y+HIS(106)ならびにC28Y−HIS(108)をlab AL1で分析した。突然変異体106 origami、136、138、139、140および野生型123は、異なるデバイスを用いて分析的lab AL2で分析した。AL1の質量分析計の感度はAL2の場合よりも大きく、従って、AL2で分析された突然変異体の半定量的分析は得ることができなかった。しかしながら、適切に形成されたS−S橋が存在するかどうかは決定することができた。
【0175】
得られたデータのまとめを表12に示す。これらの結果は、SH、架橋システインおよび二量体システインの3つのカテゴリーからなる。遊離システインは、ジスルフィド結合を形成しなかったSH基を示す。架橋システインは分子内ジスルフィド結合であり、二量体システインは分子間ジスルフィドを表す。Wは個々のペプチドの弱いシグナルが検出されたことを示し、Xは強いシグナルを与えるペプチドを表す。AL 2で分析した突然変異体に*を付す。
【表13】
【0176】
「適切に」折りたたまれた、5つのシステインを有するMycograbは、T4ペプチドにおける遊離SHの有意なシグナルを与えるはずである。さらに、適切なジスルフィドT3−T9およびT12−T17の強いシグナルが予測され、不適切なSS結合は存在しないはずである。最後に、分子間SS結合も存在しないはずである。
【0177】
「適切に」折りたたまれた、4つのシステインを有するMycograbは、遊離SH基を含まないはずである。適切なS−S結合T3−T9およびT12−T17だけが検出されるはずである。さらに、分子間SS結合は存在しないはずである。
【0178】
表12は、野生型もいずれの突然変異体も適切なS−S結合の強いシグナルだけを示すわけではなかった。REF.Endサンプルは様々な折りたたみで、共有結合的に凝集した集団からなり、従って、ジスルフィド結合と遊離SH基の、全ての可能な組合せの混合物が存在すると考えるべきである。しかしながら、有望な突然変異体は、MYC 137に場合である適切なS−S橋と突然変異体C28Y+HISおよびC28Y−HISの双方の有意なシグナルを少なくとも示すはずである。
【0179】
5例では、不適切なS−S結合のみが見られ、適切なジスルフィド結合に対するシグナルは得られないか、または弱いものに過ぎなかった。
【0180】
MYC 123、MYC 138、MYC 139およびMYC 140のシグナルは極めて弱く、これらのサンプルを再分析しても高いシグナルは得られなかった。Mycograb特異的ペプチドが見られたが、システイン含有ペプチドはシグナルを生じなかったか、または弱いシグナルしか生じなかった。これは、切断部位が構造的に遮断されているためにトリプシンによるタンパク質の個々の部分に消化が不十分であることによる可能性がある。また、リンカー長が長い(3×に対して5×および6×)突然変異体ほど消化しにくくなり、結果として、溶出の遅いペプチドのシグナルは検出できないか、または検出するのが困難になるということも注意すべきである。
【0181】
興味深いことに、共有結合的ジスルフィドは、1つの例外があるが、Cys 97残基に相当する2つのT9ペプチド間でのみ形成された。
【0182】
突然変異体Myc 118、119、130、133、137ならびに突然変異体C28Y+HISおよびC28Y−HISは、野生型よりも適切なS−S結合に対して強いシグナルを生じた。しかしながら、Myc 123は感度の低い違う質量分析計で分析されたので、シグナル強度は比較できないと考えるべきである。Myc 123のペプチドからのシグナルは、突然変異体106 origami、136、138、139および140からのシグナルと比較可能である。これらの構築物の中に適切なジスルフィド橋が得られたものはなかった。不適切ジスルフィドのシグナルのみが見られた。
【0183】
Myc 137、Myc C28Y+HISおよびMyc C28Y−HISのPepマップ結果が、適切な両ジスルフィド橋の有意なシグナルを伴い、最も有望であった。突然変異体Myc 118、Myc 119およびMyc 133もまた、ジスルフィド橋様の一定量の天然型を示したが、T12−T17のシグナルは弱かった。
【0184】
突然変異体Myc 130はT12−T17 SS結合の強いシグナルを示したが、第二の適切なジスルフィドは見られなかった。
【0185】
結論
分析結果の相関
Porosカラム(RPC1)を用いた力価アッセイによって測定して、再折りたたみ後の最良の回収率はMYC 123(wt)およびMYC 134で得られた。
【0186】
カオトロピック剤によるIBの可溶化はNLSによる可溶化よりも速かった。尿素またはNLSで可溶化したIBのRPC 2クロマトグラムを比較した。しかしながら、SDS Pageは、尿素で可溶化されたIBに比べて凝集塊スミアが減ったことから、NLSの強い溶解力を示した(図14参照)。
【0187】
カオトロピック剤による可溶化後の希釈およびシステイン、L−アルギニン、1%NLSおよび低濃度の尿素/GuHClなどの種々の添加剤の使用による再折りたたみはRPC 2において単量体ピークを示さなかった(図12および図13参照)。SDS Page、非還元およびRPC 2クロマトグラムにより確認された完全に凝集したタンパク質は大きなピーク2を示した。
【0188】
SEC HPLC 0.5%NLSによるMWの測定は、1つの外れ値を除いたとき、理論的に計算されたMWとR2 0.77で相関していた。SDS PAGEの解像度はMWの微妙な違いを全て検出するには不十分であったが、理論的には0.6kDa、kSEC HPLC(それぞれMYC 134およびMYC 118)で測定する場合は14kDa異なるMWの2つの突然変異体の間で移動時間の違いが見られた。
【0189】
RPC 2クロマトグラフィーは、10個の疎水性アミノ酸がより親水性の高いもので置換された突然変異体(MYC 130)の疎水性の低下を確認することができた。このリンカーエレメントは固定相の結合部位には容易に接近することができないので、保持挙動には影響を及ぼさなかった。また、リンカー長の長い構築物のPepマップ分析では、リンカー長の短い構築物に比べて対象ペプチドに対して弱いシグナルしか得られないことも認められた。リンカーエレメントは消化酵素には容易には接近できないことが明らかであった。
【0190】
MYC 137、138および139のRPC2クロマトグラムは、他の試験した突然変異体に比べてMycograb単量体に当たる最も鋭いピークを示し、このサンプルの高い均質性を示唆した。
【0191】
Pepマップ分析は、4つのシステインを有する突然変異体のREF.Endサンプルには遊離SH基がほとんど存在しないことを示した。これは、ジスルフィド橋(不適切なものおよび適切なもの)のほぼ完全な形成ならびに共有結合的凝集塊の形成を示す。5つのシステインを有する突然変異体では、種々の遊離SH基に関して弱いシグナルが得られたが、突然変異体Myc 118、Myc 119およびMyc 133だけは、「天然」単量体においては依然として還元されているはずの5番目のシステインの位置、すなわちT4に遊離SH基を有していた。このことは、5つのシステインを有する突然変異体は全て遊離SH基のシグナルを生じるが、そのうち3つだけで、遊離SH基が検出されたことから、T4ペプチド上のSH基はSS結合を好ましく形成するということを示す。
【0192】
SEC HPLCによって測定されたMWは、サンプル中のバッファーマトリックスに極めて依存的である。SEC HPLC法の組合せはサンプルのバッファーと同様に流れるバッファーによって確立しなければならなかった。MWのマトリックス依存性は、処理工程間でのMWの比較を困難にする(表10)。
【0193】
UFDF実験は、NLSがある程度、サンプル溶液に保持され、効率的に除去できないことを示した。
【0194】
突然変異体MYC C28Y +HIS、C28Y−HISおよびMYC 137のPepマップで得られた結果は特に有望であった。これらの結果は、HISタグとシステインを4つだけ有する突然変異体が特に好ましいことを示す。このHISタグは、効率の高い精製ステップであるIMACを用いた精製に必要である。システインを4つだけ有する構築物は適切なジスルフィドとより少ない共有結合的凝集塊を形成する可能性が高い。
【0195】
突然変異の効果
突然変異の最も有益な効果は5番目のシステインの除去に起因し得る。適切なジスルフィド結合の数は5つのシステインを有する構築物に比べて増加した。さらに、IBの溶解度も5つのシステインを有する構築物に比べて高まった。
【0196】
重鎖フラグメントと軽鎖フラグメントの配向を入れ替えると、RPC 2における保持時間に小さな影響があり、VLエレメントがC末端にある場合には、N末端配向の場合に比べて保持時間が短くなった。
【0197】
NLS除去後のペプチドの凝集傾向は、リンカーエレメントの数とともに高まる可能性がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸スペーサーにより連結されたVHドメインとVLドメインを含み、該VHドメインが配列番号64の配列と少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含み、そして該VLドメインが配列番号66の配列と少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むscFvペプチドであって、VHドメインのC28に相当する位置にアミノ酸置換または欠失を含む、scFvペプチド。
【請求項2】
VHドメインのアミノ酸置換がC28Yである、請求項1に記載のscFvペプチド。
【請求項3】
アミノ酸スペーサーが配列(GGGGS)nを含む、請求項1または2に記載のscFvペプチド。
【請求項4】
C末端に精製タグ、好ましくは6ヒスチジン残基の配列をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のscFvペプチド。
【請求項5】
配列番号8、10、14、18および22(配列中、Xaaはシステイン以外のアミノ酸残基を表し、N末端メチオニン残基は所望により切断されていてもよく、好ましくは、Xaaはチロシン残基を表す)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のscFvペプチド。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のscFvペプチドをコードする配列を含む、核酸分子。
【請求項7】
scFvペプチドをコードする配列の3’末端に位置する配列(taa)n(nは1または2である)をさらに含む、請求項6に記載の核酸分子。
【請求項8】
配列番号7、9、13、17および21(配列中、nnnはシステイン残基以外のアミノ酸をコードするコドンである)からなる群から選択される配列を含む、請求項6または7に記載の核酸分子。
【請求項9】
DNAまたはRNA分子である、請求項6〜8のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のscFvペプチドを薬学上許容される賦形剤、希釈剤または担体と組み合わせて含む、医薬組成物。
【請求項11】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のscFvペプチドと抗真菌剤または抗癌剤を含む、組合せ製剤。
【請求項12】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のscFvペプチドと抗真菌剤または抗癌剤を含む、組成物。
【請求項13】
患者に有効量の請求項1〜5のいずれか一項に記載のscFvペプチドを投与することを含む、真菌感染患者の処置方法。
【請求項14】
患者に有効量の抗真菌剤を投与する工程をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
真菌感染の処置に用いるための請求項1〜5のいずれか一項に記載のscFvペプチド。
【請求項16】
真菌感染がカンジダ、クリプトコッカス、ヒストプラズマ、アスペルギルス、トルロプシス、ムコール症、ブラストミセス症、コクシジオイデス症またはパラコクシジオイデス症の生物体によるものである、請求項13もしくは14に記載の方法または請求項15に記載のscFvペプチド。
【請求項17】
抗真菌剤がアゾール抗真菌剤、好ましくは、イトラコナゾール、ボリコナゾール、イサブコナゾール、フルコナゾール、ミコナゾール、ケトコナゾールおよびポサコナゾールからなる群から選択される、請求項11に記載の組合せ製剤、請求項12に記載の組成物、請求項13、14もしくは16に記載の方法または請求項15もしくは16に記載のscFvペプチド。
【請求項18】
抗真菌剤がポリエン抗真菌剤およびエキノカンディン抗真菌剤からなる群から選択される、請求項11に記載の組合せ製剤、請求項12に記載の組成物、請求項13、14もしくは16に記載の方法または請求項14もしくは16に記載のscFvペプチド。
【請求項19】
ポリエン抗真菌剤がアムホテリシンBまたはその誘導体を含む、請求項18に記載の組合せ製剤、組成物、方法またはscFvペプチド。
【請求項20】
処置を必要とする患者に請求項1〜5に記載の有効量のscFvペプチドを投与することを含む、癌疾患患者の処置方法。
【請求項21】
患者に有効量の少なくとも1つの他の抗癌剤を投与する工程をさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
癌疾患の処置に用いるための、請求項1〜5のいずれか一項に記載のscFvペプチド。
【請求項23】
抗癌剤がドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、ハーセプチン、ドセタキセル、シスプラチン、イマチニブ、パクリタキセル、ドセタキセル、ヒドロキシ尿素、5−フルオロウラシル、オキサリプラチン、イリノテカン、シタラビンおよびラルチトレキセドからなる群から選択される、請求項11に記載の組合せ製剤、請求項12に記載の組成物、請求項20もしくは21に記載の方法または請求項22に記載のscFvペプチド。
【請求項24】
患者に有効量の請求項1〜5のいずれか一項に記載のscFvペプチドを投与することを含む、高レベルのTNFαおよび/またはIL−6が関与する症状を有する患者の処置方法。
【請求項25】
高レベルのTNFαおよび/またはIL−6が関与する症状の処置に用いるための請求項1〜5のいずれか一項に記載のscFvペプチド。
【請求項26】
高レベルのTNFαおよび/またはIL−6が関与する症状が敗血症、SIRSおよび自己免疫疾患からなる群から選択される、請求項24に記載の方法、または請求項25に記載のscFvペプチド。
【請求項27】
自己免疫疾患がクローン病、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎および全身性紅斑性狼瘡からなる群から選択される、請求項26に記載の方法またはscFvペプチド。
【請求項28】
請求項6〜9のいずれか一項に記載のヌクレオチド配列を含む、ベクター分子。
【請求項29】
請求項28に記載のベクター分子を含む、宿主細胞。
【請求項30】
好適な転写制御エレメントの制御下に請求項6〜9のいずれか一項に記載の核酸分子を含む発現ベクターがその中に組み込まれている宿主細胞を、宿主細胞中での該ペプチドの発現に十分な条件下で培養し、それにより該ペプチドを産生させ、そして該細胞により産生されたペプチドを回収することを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のscFvペプチドの産生方法。
【請求項1】
アミノ酸スペーサーにより連結されたVHドメインとVLドメインを含み、該VHドメインが配列番号64の配列と少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含み、そして該VLドメインが配列番号66の配列と少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むscFvペプチドであって、VHドメインのC28に相当する位置にアミノ酸置換または欠失を含む、scFvペプチド。
【請求項2】
VHドメインのアミノ酸置換がC28Yである、請求項1に記載のscFvペプチド。
【請求項3】
アミノ酸スペーサーが配列(GGGGS)nを含む、請求項1または2に記載のscFvペプチド。
【請求項4】
C末端に精製タグ、好ましくは6ヒスチジン残基の配列をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のscFvペプチド。
【請求項5】
配列番号8、10、14、18および22(配列中、Xaaはシステイン以外のアミノ酸残基を表し、N末端メチオニン残基は所望により切断されていてもよく、好ましくは、Xaaはチロシン残基を表す)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のscFvペプチド。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のscFvペプチドをコードする配列を含む、核酸分子。
【請求項7】
scFvペプチドをコードする配列の3’末端に位置する配列(taa)n(nは1または2である)をさらに含む、請求項6に記載の核酸分子。
【請求項8】
配列番号7、9、13、17および21(配列中、nnnはシステイン残基以外のアミノ酸をコードするコドンである)からなる群から選択される配列を含む、請求項6または7に記載の核酸分子。
【請求項9】
DNAまたはRNA分子である、請求項6〜8のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のscFvペプチドを薬学上許容される賦形剤、希釈剤または担体と組み合わせて含む、医薬組成物。
【請求項11】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のscFvペプチドと抗真菌剤または抗癌剤を含む、組合せ製剤。
【請求項12】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のscFvペプチドと抗真菌剤または抗癌剤を含む、組成物。
【請求項13】
患者に有効量の請求項1〜5のいずれか一項に記載のscFvペプチドを投与することを含む、真菌感染患者の処置方法。
【請求項14】
患者に有効量の抗真菌剤を投与する工程をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
真菌感染の処置に用いるための請求項1〜5のいずれか一項に記載のscFvペプチド。
【請求項16】
真菌感染がカンジダ、クリプトコッカス、ヒストプラズマ、アスペルギルス、トルロプシス、ムコール症、ブラストミセス症、コクシジオイデス症またはパラコクシジオイデス症の生物体によるものである、請求項13もしくは14に記載の方法または請求項15に記載のscFvペプチド。
【請求項17】
抗真菌剤がアゾール抗真菌剤、好ましくは、イトラコナゾール、ボリコナゾール、イサブコナゾール、フルコナゾール、ミコナゾール、ケトコナゾールおよびポサコナゾールからなる群から選択される、請求項11に記載の組合せ製剤、請求項12に記載の組成物、請求項13、14もしくは16に記載の方法または請求項15もしくは16に記載のscFvペプチド。
【請求項18】
抗真菌剤がポリエン抗真菌剤およびエキノカンディン抗真菌剤からなる群から選択される、請求項11に記載の組合せ製剤、請求項12に記載の組成物、請求項13、14もしくは16に記載の方法または請求項14もしくは16に記載のscFvペプチド。
【請求項19】
ポリエン抗真菌剤がアムホテリシンBまたはその誘導体を含む、請求項18に記載の組合せ製剤、組成物、方法またはscFvペプチド。
【請求項20】
処置を必要とする患者に請求項1〜5に記載の有効量のscFvペプチドを投与することを含む、癌疾患患者の処置方法。
【請求項21】
患者に有効量の少なくとも1つの他の抗癌剤を投与する工程をさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
癌疾患の処置に用いるための、請求項1〜5のいずれか一項に記載のscFvペプチド。
【請求項23】
抗癌剤がドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、ハーセプチン、ドセタキセル、シスプラチン、イマチニブ、パクリタキセル、ドセタキセル、ヒドロキシ尿素、5−フルオロウラシル、オキサリプラチン、イリノテカン、シタラビンおよびラルチトレキセドからなる群から選択される、請求項11に記載の組合せ製剤、請求項12に記載の組成物、請求項20もしくは21に記載の方法または請求項22に記載のscFvペプチド。
【請求項24】
患者に有効量の請求項1〜5のいずれか一項に記載のscFvペプチドを投与することを含む、高レベルのTNFαおよび/またはIL−6が関与する症状を有する患者の処置方法。
【請求項25】
高レベルのTNFαおよび/またはIL−6が関与する症状の処置に用いるための請求項1〜5のいずれか一項に記載のscFvペプチド。
【請求項26】
高レベルのTNFαおよび/またはIL−6が関与する症状が敗血症、SIRSおよび自己免疫疾患からなる群から選択される、請求項24に記載の方法、または請求項25に記載のscFvペプチド。
【請求項27】
自己免疫疾患がクローン病、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎および全身性紅斑性狼瘡からなる群から選択される、請求項26に記載の方法またはscFvペプチド。
【請求項28】
請求項6〜9のいずれか一項に記載のヌクレオチド配列を含む、ベクター分子。
【請求項29】
請求項28に記載のベクター分子を含む、宿主細胞。
【請求項30】
好適な転写制御エレメントの制御下に請求項6〜9のいずれか一項に記載の核酸分子を含む発現ベクターがその中に組み込まれている宿主細胞を、宿主細胞中での該ペプチドの発現に十分な条件下で培養し、それにより該ペプチドを産生させ、そして該細胞により産生されたペプチドを回収することを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のscFvペプチドの産生方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21−1】
【図21−2】
【図22−1】
【図22−2】
【図22−3】
【図22−4】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21−1】
【図21−2】
【図22−1】
【図22−2】
【図22−3】
【図22−4】
【公表番号】特表2010−524485(P2010−524485A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504689(P2010−504689)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際出願番号】PCT/EP2008/055006
【国際公開番号】WO2008/132134
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際出願番号】PCT/EP2008/055006
【国際公開番号】WO2008/132134
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】
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