説明

眼の新生血管形成の血管標的化

被験体の眼疾患を処置または予防する方法であって、被験体に治療有効量の医薬組成物を投与する工程を包含し、該工程において、該医薬組成物は血管内皮標的化アミノ酸配列および細胞毒性アミノ酸配列を有するポリペプチドを含む、方法を開示する。例えば、血管内皮標的化アミノ酸配列は、VEGF121配列等のVEGF配列であってもよい。細胞毒性アミノ酸配列の例としては、ゲロニン、プロアポトーシス配列、および抗血管新生配列等の毒素配列が挙げられる。眼疾患は、脈絡膜血管新生、網膜新生血管、虹彩新生血管、または角膜血管新生と関連する眼疾患等、いずれの眼疾患であってもよい。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
本願は、2005年4月28に出願された米国仮特許出願第60/675,958号に対する優先権を主張する。米国仮特許出願第60/675,958号は、その全体が本明細書中に援用される。
【0002】
政府は、National Institute of Healthによるグラント番号05951によって、本発明における一定の権利を有する。
【0003】
1. 発明の分野
本発明は、一般に、眼科学、タンパク質化学、および毒物学の分野に関する。より特定的には、本発明は、被験体の眼疾患を処置または予防する方法であって、血管内皮標的化アミノ酸配列および細胞毒性アミノ酸配列を有するポリペプチドを含む医薬組成物を当該被験体に治療有効量で投与することを含む方法に関する。治療または予防する眼疾患の例としては、加齢性黄斑変性症、眼ヒストプラスマ症、病的近視、および網膜色素線条を含むがこれらに限定されないあらゆる原因による脈絡膜血管新生(CNV)が挙げられる。また、増殖性糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症、および未熟児網膜症を含むがこれらに限定されないあらゆる原因による網膜新生血管にも適用される。また、各種原因による虹彩新生血管および角膜血管新生にも適用される。
【0004】
2. 関連技術の説明
眼の血管漏出および/または新血管形成により悪化した疾患は、先進国では、視覚疾病および失明の大部分の原因となっている。網膜新生血管は、糖尿病性網膜症等の静脈うっ血性網膜症で生じ、労働年齢の患者の視力喪失の大きな原因となっている(Kleinら,1984)。脈絡膜血管新生は、加齢性黄斑変性症の合併症として生じ、高齢の患者の視力喪失の大きな原因となっている(Ferrisら,1984)。高い視力喪失率を低減するために、改良された治療が必要とされており、それらの開発は、眼の新血管形成の分子病態論をより深く理解することにより容易となる可能性がある。
【0005】
眼の血管透過性および新血管形成を制御する分子シグナルが盛んに研究されている。血管内皮増殖因子(VEGF)ファミリーのメンバーは、糖尿病性網膜症(DR)および加齢性黄斑変性症(AMD)等の重要な眼疾患における病的血管新生および増加した血管透過性を制御する(Witmerら,2003において検討されている)。
【0006】
VEGFは、新血管形成と関連する障害において多数の機能を有することが示されている。これは、内皮細胞増殖率、転移率、および生存率を向上させ、血管形成には不可欠である。VEGFの他の役割には、創傷治癒、血管透過、および血流調節が含まれる。
【0007】
RNAの選択的スプライシングにより、ヒトVEGFは、121、165、189、または206アミノ酸の少なくとも4つのアイソフォームとして存在する。最小分子量のアイソフォームである指定VEGF121は、溶液中でジスルフィド結合ホモ二量体として存在する非ヘパラン硫酸結合アイソフォームである。VEGF121は、より大きな変異体の全生物活性を含むことが示されている。
【0008】
ヒトにおいては、VEGFの血管新生作用は、2つの関連する受容体チロシンキナーゼであるキナーゼ領域受容体(KDR)およびFLT−1を介して調節される。これらは共に、主に血管内皮細胞のみに存在する。よって、VEGFの受容体は、新血管形成を阻害する治療薬の開発にとって有効な対象であると思われる。
【0009】
血管内皮増殖因子(VEGF)が、網膜および脈絡膜血管新生の両方にとって重要な刺激因子であることがいくつかのエビデンスにより示唆されている(Aielloら,1994;Adamisら,1994;Aielloら,1995;Adamisら,1996;Seoら,1999;Ozakiら,2000;Kwakら,2000;Saishinら,2003)。これにより、中心窩下脈絡膜血管新生の患者におけるVEGF拮抗剤の効果をテストする臨床試験が行なわれた。ペガプタニブ(VEGFを結合するアプタマー)の眼内注射を6週毎に1年間行なうことにより、模擬注射と比べて視力の低下が抑えられた(非特許文献1)。視力喪失を遅らせることは重要な成果であるが、これは最終目標ではなく、視力の改善、および/または最適な機能を可能にする範囲内に視力を維持することが最終目標である。血管新生性AMDの処置において、全ての形態のVEGFを結合するように設計されたヒトモノクローナル抗体フラグメントであるRanibizumabを評価する研究が行なわれている(Gaudreaultら,2005)。
【0010】
動物モデルでは、VEGF拮抗剤は、新血管形成の成長を抑制し、過度の漏出を軽減することに関して非常に効果的であるが(Aielloら,1995;Adamisら,1996;Seoら,1999;Ozakiら,2000;Kwakら,2000;Saishinら,2003)、新たな血管の退縮を生じることはない。このことは、VEGF拮抗剤での処置により漏出が低減したが、脈絡膜血管新生が除去されていない脈絡膜血管新生の患者の観察により裏付けられている。新血管形成の退縮は、最適な結果を得るために必要であると考えられる。
【0011】
異なった形で発現された遺伝子産物は、一般に「血管ターゲッティング(vascular targeting)」と呼ばれる戦略である、血管系を治療薬の標的にする手段を提供する(Denekamp、1984;Denekamp、1999;Thorpe、2004)。VEGF受容体は、正常な内皮細胞中に低レベルで存在するが、腫瘍血管の内皮細胞中に実質的により多く存在することが示されている。これまでに用いられてきた、腫瘍モデルにおいて治療可能性を有することが実証されている血管マーカーは、αβおよびαβインテグリン(Pasqualiniら,1997)、VEGF受容体(Ramakrishnanら,1996;Aroraら,1999;Veenendaalら,2002;Liuら,2003)、フィブロネクチンのED−B領域(Nilssonら,2001)、VCAM−1(Ranら,1998)、ならびにPSA(Liuら,2002)を含む(がこれらに限定されない)。腫瘍以外の疾病過程において血管形成に関与する内皮細胞も異なる遺伝子発現を示す。例えば、虚血によって誘導された網膜新生血管では、αβが実質的に上方調節される(Lunaら,1996)。
【0012】
分子工学により、治療可能性を有する新規なキメラ分子の合成が可能となった。いくつかのマウスモデルでは、腫瘍血管系において異なった形態で発現する遺伝子産物に結合するホーミングタンパク質(homing protein)と連結した毒素からなるキメラタンパク質を全身注射することにより腫瘍が著しい退縮した(Pasqualiniら,1997;Ramakrishnanら,1996;Aroraら,1999;Veenendaalら,2002;Liuら,2003;Nilssonら,2001;Ranら,1998;Liuら,2002)。また、VEGFと切断ジフテリア毒素の化学接合が、血管内皮増殖因子の受容体を発現する細胞株上で優れた細胞毒性活性を有することも示されている。IL−2受容体、EGF受容体、および他の増殖因子/サイトカイン受容体を標的とするキメラ融合物が記載されている。
【0013】
眼に影響を及ぼす血管新生性疾患の改良された療法が必要とされている。血管ターゲッティング剤を用いて眼組織を治療薬の標的とする標的療法はこれまで記載されていない。そのような療法は、疾患組織を直接治療する点で有益であるというだけでなく、全身毒性、および眼疾患の処置において極めて重要な要因である健康な眼組織に対する毒性を最小限に抑える作用をする。
【非特許文献1】Grafoudas et al.,N.Eng.J.Med.,351:2805−2816
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の要旨
本発明者らは、血管組織をある治療薬の標的とすることを伴う新規な形態の眼疾患療法を特定した。特に、血管内皮標的化アミノ酸配列および細胞毒性アミノ酸配列を含むあるキメラ融合物が眼の新血管形成を効果的に処置することを見出した。例えば、VEGF/ゲロニン融合物の静脈内または眼内投与により、眼の新血管形成の3つの動物モデル(ブルーフ膜のレーザ誘起破裂、rho/VEGFトランスジェニックマウス、および酸素誘導静脈うっ血性網膜症)において新血管形成が退縮することを見つけた。これらの融合物を用いる血管標的戦略を、眼の悪性および非悪性血管新生性疾患の両方を含む新血管形成と関連するあらゆる眼疾患の処置に適用することができる。非悪性眼疾患の例としては、加齢性黄斑変性症、眼ヒストプラスマ症、病的近視、および網膜色素ストレッド(angioid streads)を含むがこれらに限定されないあらゆる原因による脈絡膜血管新生(CNV)が挙げられる。これら新規な形態の療法はまた、増殖性糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症、および未熟児網膜症を含むがこれらに限定されないあらゆる原因による網膜新生血管の処置に適用することもできる。また、各種原因による虹彩新生血管および角膜血管新生にも適用される。
【0015】
本発明は、一般に、被験体の眼疾患を処置または予防する方法であって、血管内皮標的化アミノ酸配列および細胞毒性アミノ酸配列を有するポリペプチドを含む医薬組成物を被験体に治療有効量で投与することを含むことにより、被験体の眼疾患の処置または予防を行なう方法に関する。上記ポリペプチドは、血管内皮標的化アミノ酸配列と細胞毒性アミノ酸配列との間にリンカーしてもよい。このリンカーは、当業者に公知のいずれのリンカーであってもよい。リンカーの例としては、GS、(GS)、(GS)、218リンカー、酵素開裂可能なリンカー、またはpH開裂可能なリンカーが挙げられる。
【0016】
本明細書中の他の箇所においてより詳細に議論する血管内皮標的配列は、本明細書中では、血管の内皮細胞と(共有または非共有)結合するか、または付着するあらゆるアミノ酸配列をも意味するものとして定義される。あらゆる血管内皮標的化アミノ酸配列が本発明の方法に含まれるものとする。例えば、血管内皮標的配列は、VEGF、FGF、インテグリン、フィブロネクチン、I−CAM、PDGF、または血管内皮細胞の表面上で発現した分子に対する抗体であってもよい。あらゆるVEGFアミノ酸配列が本発明によって企図される。例えば、VEGF配列は、VEGF121、VEGF165、VEGF189、およびVEGF206からなる群から選択されたアイソフォームであってもよい。ある特定の実施形態では、VEGFアイソフォームは、VEGF121、または配列番号:4〜10からなる群から選択されたVEGF配列である。
【0017】
細胞毒性アミノ酸配列は、本明細書中において、細胞を損傷または死滅可能なあらゆるアミノ酸配列を意味するものと定義される。当業者に公知のあらゆる細胞毒性アミノ酸配列が本発明の方法に含まれるものとする。本発明のある実施形態では、上記細胞毒性アミノ酸配列は毒素である。例えば、この毒素は、リボソーム不活性化タンパク質(RIP)であってもよい。リボソーム不活性化タンパク質の例としては、ゲロニン、トウモロコシRIP、サポリン、リシン、リシンA鎖、オオムギRIP、モモルジン、アルファ−モモルカリン、ベータ−モモルカリン、志賀菌様RIP、およびa−サルシンが挙げられる。毒素のさらなる例としては、アブリン、水系由来細胞毒素、シュードモナス外毒素、DNA合成阻害剤、RNA合成阻害剤、プロドラッグ、光活性ポルフィリン、トリコサンチン、トリチン(tritin)、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ミラビリス抗ウイルスタンパク質(MAP)、ジアンチン32(Dianthin 32)、ジアンチン30(Dianthin 30)、ブリョジン(bryodin)、志賀菌、ジフテリア毒素、ジフテリア毒素A鎖、ドデカンドリン(dodecandrin)、トリコキリン(tricokirin)、ブリョジン、およびルフィン(luffin)が挙げられる。
【0018】
本発明のさらなる実施形態では、上記細胞毒性アミノ酸配列は、抗血管新生アミノ酸配列である。当業者に公知のあらゆる抗血管新生アミノ酸配列が本発明の方法に含まれるものとする。例えば、この抗血管新生アミノ酸配列は、TIMP−1、TIMP−2、TIMP−3、TIMP−4、エンドスタチン、アンギオスタチン、エンドスタチンXVIII、エンドスタチンXV、マトリックスメタロプロテイナーゼ−2のC−末端ヘモペキシンドメイン、ヒトプラスミノーゲンのクリングル5ドメイン、インターフェロン−ガンマにより誘導されたモノカイン(Mig)、インターフェロン−アルファ誘導タンパク質10(IP10)、可溶性FLT−1(fms様チロシンキナーゼ1受容体)、またはキナーゼ挿入ドメイン15受容体(KDR)であってもよい。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態では、上記細胞毒性アミノ酸配列はアポトーシスを誘導する。アポトーシスを誘導可能な細胞毒性配列の例としては、グランザイムB、Bax、TNF−α、TNF−β、TGF−β、IL−12、IL−3、IL−24、IL−18、TRAIL、IFN−α、INF−β、IFN−γ、Bclタンパク質、Fasリガンド、およびカスパーゼが挙げられる。これらおよび他のアポトーシス誘導可能な細胞毒性アミノ酸配列は当業者にはよく知られている。
【0020】
上記被験体は、哺乳動物または鳥類等、あらゆる被験体とすることができる。本発明のある特定の実施形態では、上記被験体はヒトである。この被験体は、現在眼疾患を患っていてもいなくてもよい。いくつかの実施形態では、上記被験体は眼疾患を患う危険性がある被験体である。
【0021】
あらゆる眼疾患が本発明の方法による処置および予防の対象となる。本発明の特定の実施形態では、上記眼疾患は、新血管形成と関連する眼疾患である。新血管形成は、本明細書中では、通常は血管を含まない組織中での血管の増殖、または組織における通常の血管とは異なる血管の増殖を意味するものと定義される。新血管形成と関連する広範な眼の病状は当業者にはよく知られている。
【0022】
上記新血管形成は、網膜新生血管、脈絡膜血管新生、または他の眼新血管形成を含んでもよい。新血管形成と関連する眼疾患の例としては、加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症、増殖性硝子体網膜症、および眼腫瘍が挙げられる。例えば、この眼腫瘍は、脈絡膜メラノーマ、網膜芽腫、転移性腫瘍、またはぶどう膜メラノーマであってもよい。
【0023】
当業者に公知のあらゆる医薬組成物の投与法が本発明によって企図される。ある実施形態では、上記組成物は径脈管投与される。さらなる実施形態では、上記組成物は眼内投与される。当業者に公知のあらゆる眼内投与法が本発明に含まれるものとする。例えば、この眼内投与は、硝子体内投与、前房への投与、または眼内腫瘍への投与であってもよい。
【0024】
本発明のある特定の実施形態では、上記被験体は、加齢性黄斑変性症の二次新血管形成を有し、硝子体内投与によりVEGF121と組み換えゲロニンの融合タンパク質を投与される。この融合タンパク質のあらゆる治療量が本方法によって企図される。例えば、いくつかの実施形態では、上記融合タンパク質は、約0.5ng〜約10ngで硝子体内投与される。さらなる実施形態では、上記融合タンパク質は、約1ng〜約4ngで硝子体内投与される。
【0025】
上記医薬組成物の投与は、単回投与、または複数回投与であってもよい。上記眼疾患を処置または予防する方法は、被験体に対する唯一の治療または予防薬の投与であってもよく、または他の眼疾患を処置または予防する方法と組み合わせて投与してもよい。本療法と組み合わせて使用可能な他の眼疾患の処置または予防法は当業者にはよく知られている。療法の形態の例としては、経口療法、局所療法、眼内療法、レーザー光凝固術、凍結療法、放射線療法、外科的療法、遺伝子療法、および免疫療法が挙げられる。
【0026】
本発明の他の実施形態では、上記の方法は、上記療法が必要な患者の特定をさらに伴う。例えば、この患者は、新血管形成と関連する眼疾患等の眼疾患患者であってもよい。あるいは、この患者は、新血管形成と関連する眼疾患等の眼疾患を患う危険性がある患者であってもよい。
【0027】
本発明のさらなる実施形態は、被験体の新血管形成と関連する眼疾患を処置または予防する方法であって、血管内皮標的化アミノ酸配列および細胞毒性アミノ酸配列を有するポリペプチドを含む組成物を治療有効量で被験体に眼内投与することにより、眼疾患が予防または処置される、方法に関する。上述したように、上記ポリペプチドは、内皮標的アミノ酸配列と細胞毒性アミノ酸配列の間にリンカーを含んでも含まなくてもよい。リンカーの例としては、上述したリンカーが挙げられる。
【0028】
上記血管内皮標的化アミノ酸配列は、上述した配列のいずれを含んでもよい。ある特定の実施形態では、血管内皮標的化アミノ酸配列は、VEGF121、または配列番号:4〜10からなる群から選択されたVEGF配列等のVEGF配列である。
【0029】
上記細胞毒性アミノ酸配列は、上記の細胞毒性アミノ酸配列のいずれを含んでもよい。例えば、細胞毒性アミノ酸配列は、リボソーム不活性化タンパク質またはアポトーシスを誘導するアミノ酸配列等の毒素であってもよい。
【0030】
上述したように、上記被験体は、哺乳動物または鳥類等、あらゆる被験体とすることができる。ある特定の実施形態では、上記被験体はヒトである。上記で議論したように、上記眼疾患は、新血管形成と関連する眼疾患等、あらゆる眼疾患とすることができる。新血管形成と関連する眼疾患については上記で議論したが、本明細書のその他の箇所でより詳細に議論する。
【0031】
上述したように、当業者に公知のあらゆる投与方法が本発明の方法によって企図される。例えば、投与は、眼内投与であってもよい。眼内投与は、硝子体内投与、前房への投与、または眼内腫瘍への投与等、当業者に公知のあらゆる方法とすることができる。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態では、上記被験体は、加齢性黄斑変性症の二次新血管形成を有し、VEGF121と組み換えゲロニンの融合タンパク質は、硝子体内投与により投与される。融合タンパク質の医薬組成物は任意の量で投与してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、上記融合タンパク質は、約0.5ng〜約10ngで硝子体内投与される。さらなる実施形態では、上記融合タンパク質は、約1ng〜約4ngで硝子体内投与される。
【0033】
上述したように、上記医薬組成物の投与は、1回であっても、1回より多くても良い。さらに、本明細書中に記載の方法は、上記のいずれかの形態の療法等、他の眼療法で被験体を治療することをさらに含んでもよい。例えば、この他の療法は、経口療法、局所療法、眼内療法、レーザー光凝固術、凍結療法、放射線療法、外科的療法、遺伝子療法、もしくは免疫療法、またはこれらの形態の療法のうちの1つより多くであってもよい。さらなる実施形態では、本明細書中に記載の方法は、上記療法が必要な患者を特定することもさらに伴う。
【0034】
本明細書中において用いる「1つ」は、1つまたはそれより多くてもよい。請求の範囲において用いる「1つ」という言葉は、「含む」という言葉とともに用いた場合、1つまたはそれより多くを意味し得る。本明細書中において用いる「他の」は、少なくとも2つ目またはそれ以降のものを意味し得る。
【0035】
本発明の他の目的、特徴、および利点は、以下の詳細な説明により明らかとなる。しかしながら、本発明の好適な実施形態を示す詳細な説明および特定の例は、例示目的のみに用いられることは言うまでもなく、本発明の精神および範囲内の各種変更および修正は、この詳細な説明により当業者には明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
例示的な実施形態の説明
本発明者らは、血管内皮標的化アミノ酸配列および細胞毒性アミノ酸を含むあるキメラ融合物を用いて眼の血管新生性組織に対する治療薬の血管ターゲッティングを伴う眼の疾患についての新規な形態の療法を発見した。この形態の療法は、加齢性黄斑変性症、眼ヒストプラスマ症、病的近視、および網膜色素線条を含むがこれらに限定されないあらゆる原因による脈絡膜血管新生(CNV)等、種々多様な眼疾患の処置および予防に適用可能である。また、増殖性糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症、および未熟児網膜症を含むがこれらに限定されないあらゆる原因による網膜新生血管にも適用される。また、各種原因による虹彩新生血管および角膜血管新生にも適用される。
A. ポリペプチド
1. 一般的なポリペプチド
本発明は、被験体の眼の疾患を処置または予防する方法であって、血管内皮標的化アミノ酸配列および細胞毒性アミノ酸配列を含むポリペプチドの投与を伴う方法に関する。本明細書中において用いる「ポリペプチド」は、本明細書中では、一般に、約3〜約10,000以上のアミノ酸残基のペプチド配列を意味するものと定義される。
【0037】
「アミノ酸」という用語は、天然合成したタンパク質中の20個の共通アミノ酸だけでなく、修飾された、非天然の、または合成されたあらゆるアミノ酸も含む。修飾された、非天然の、または合成されたアミノ酸は当業者にはよく知られている。修飾された非天然のアミノ酸の例を以下の表1に示す。
【0038】
【表1】

本明細書中に記載の方法に含まれるポリペプチドは、血管内皮標的化アミノ酸配列および細胞毒性アミノ酸配列を含む点でキメラである。本明細書中に記載のポリペプチドは、1つ以上の血管内皮標的化アミノ酸配列を含んでもよく、それらは同一のものであってもなくてもよい。同様に、本明細書中に記載のポリペプチドは、1つ以上の細胞毒性アミノ酸配列を含んでもよく、それらは同一のものであってもなくてもよい。
【0039】
本発明のある実施形態では、上記ポリペプチドは、血管内皮標的化アミノ酸配列のN−またはC−末端で細胞毒性アミノ酸配列に結合する血管内皮標的化アミノ酸配列を含む融合ポリペプチドである。他の実施形態では、上記ポリペプチドは、血管内皮標的化アミノ酸配列と細胞毒性アミノ酸配列の間に介在するリンカーを含む。リンカーは、本明細書中において後程より詳細に説明する。
【0040】
さらに、本明細書中に記載のポリペプチドは、内皮標的アミノ酸配列および細胞毒性アミノ酸配列を含むアミノ酸配列のN−末端またはC−末端のいずれかに任意の数のさらなるアミノ酸残基の配列を含んでもよい。例えば、内皮標的アミノ酸配列および細胞毒性アミノ酸配列を含むアミノ酸配列のN−末端、C−末端、またはN−末端およびC−末端の両方に約3〜約10,000以上のアミノ酸残基のアミノ酸配列が存在してもよい。
【0041】
上記ポリペプチドは、抗体エピトープまたは他のタグ等、免疫学的活性領域をさらに含み、上記ポリペプチドのターゲッティングまたは精製を容易にしてもよい。6xHisおよびGST(グルタチオンSトランスフェラーゼ)をタグとして使用することは周知である。融合部にまたはその近くに切断部位を含むことにより、精製後の外来ポリペプチドの除去が容易になる。上記ポリペプチドに含んでもよい他のアミノ酸配列は、ヒドロラーゼ、グリコシル化領域、細胞標的シグナルまたは膜貫通領域等の酵素の活性部位等の機能ドメインを含む。上記ポリペプチドは、本明細書中において下記でより詳細に議論する1つ以上のさらなる組織標的部分をさらに含んでもよい。
【0042】
本発明のポリペプチドに含まれる血管内皮標的化アミノ酸配列および細胞毒性アミノ酸配列は、天然配列に対してアミノ酸に欠失および/または置換があってもよく;よって、欠失を有する配列、置換を有する配列、および欠失および置換を有する配列は、本発明のポリペプチドに含まれるものとする。いくつかの実施形態では、これらの標的ポリペプチドは、さらに、リンカー等のアミノ酸の挿入または追加があってもよい。
【0043】
置換または代替変異体は、典型的には、1つのアミノ酸と上記タンパク質内の1つ以上の部位のアミノ酸に変更があり、特に、その有効性または特異性を増すために、上記ポリペプチドの1つ以上の性質を調節するように設計されていてもよい。このような置換部は、保存性であることが好ましい、すなわち、1つのアミノ酸は、形状および電荷が同様のものと置き換えられる。保存置換部は当該分野では周知のものであり、例えば:アラニンからセリン;アルギニンからリシン;アスパラギンからグルタミンまたはヒスチジン;アスパラギン酸塩からグルタミン酸塩;システインからセリン;グルタミンからアスパラギン;グルタミン酸塩からアスパラギン酸塩;グリシンからプロリン;ヒスチジンからアスパラギンまたはグルタミン;イソロイシンからロイシンまたはバリン;ロイシンからバリンまたはイソロイシン;リシンからアルギニン;メチオニンからロイシンまたはイソロイシン;フェニルアラニンからチロシン、ロイシンまたはメチオニン;セリンからトレオニン;トレオニンからセリン;トリプトファンからチロシン;チロシンからトリプトファンまたはフェニルアラニン;およびバリンからイソロイシンまたはロイシンへの変更を含む。
【0044】
欠失または置換に加えて、本明細書中に記載のポリペプチドに含まれる血管内皮標的化アミノ酸配列および細胞毒性アミノ酸配列は、挿入1つ以上の残基を有してもよい。これは、1つ以上のアミノ酸残基の追加を含んでもよい。
【0045】
「生物学的機能的に同等」という用語は当該分野ではよく理解されているが、本明細書中においてさらに詳細に定義する。従って、天然配列の生物活性が維持される場合、上記天然血管内皮標的配列または細胞毒性アミノ酸配列のアミノ酸と約70%〜約80%、または約81%〜約90%、または約91%〜約99%同一または機能的に同等のアミノ酸を有する配列が含まれる。
【0046】
よって、本発明のポリペプチドの血管内皮標的化アミノ酸配列および細胞毒性アミノ酸配列は、天然のものと生物学的に機能的に同等であってもよい。例えば、血管内皮標的化アミノ酸配列は、血管内皮細胞に結合または付着する能力に関して、機能的に同等であってもよい。いくつかの実施形態では、血管内皮標的化アミノ酸配列または細胞毒性アミノ酸配列は、天然のものよりも大きな生物活性を有してもよい。
【0047】
以下は、同等のまたは改良された第二世代分子の生成のための上記ポリペプチドのアミノ酸の変化に関する議論である。例えば、あるアミノ酸は、血管の内皮細胞と相互作用する能力等の機能を特に欠損することなくポリペプチドの他のアミノ酸と置換されてもよい。ポリペプチドの生物学的機能活性を規定するのはポリペプチドの相互作用能力および性質であるため、あるアミノ酸置換がポリペプチド配列で行なわれるにもかかわらず、同様の性質のポリペプチドが作成される。
【0048】
そのような変更を行なう場合には、アミノ酸の水療法指数を考慮してもよい。タンパク質に相互作用的生物機能を与える際の水療法アミノ酸指数の重要性は、一般に、当該分野で理解されている(KyteおよびDoolittle、1982)。アミノ酸の相対的水療法特性が、結果的に得られるタンパク質の二次構造に寄与することが認められており、例えば、酵素、基質、受容体、DNA、抗体、抗原等の他の分子とタンパク質との相互作用を規定する。
【0049】
また、親水性に基づいて同様のアミノ酸の置換を効果的に行なうことが可能であることも当該分野で理解されている。本明細書中において参考として援用する米国特許第4,554,101号は、その隣接するアミノ酸の親水性により支配されるタンパク質の最大局所平均親水性は、当該タンパク質の生物学的特性と相関する。米国特許第4,554,101号に詳述されるように、以下の親水性の値がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リシン(+3.0);アスパラ銀酸塩(+3.0±1);グルタミン酸塩(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);トレオニン(−0.4);プロリン(−0.5±1);アラニン(−0.5);ヒスチジン(−0.5);システイン(−1.0);メチオニン(−1.3);バリン(−1.5);ロイシン(−1.8);イソロイシン(−1.8);チロシン(−2.3);フェニルアラニン(−2.5);トリプトファン(−3.4)。
【0050】
アミノ酸が同様の親水性値を有する他のアミノ酸と置換してもなお、生物学的に同等および免疫学的に同等のタンパク質を産生することが可能であることは言うまでもない。そのような変更では、親水性値が±2以内であるアミノ酸の置換が好ましく、±1内の置換は特に好ましく、±0.5内の置換はことさら特に好ましい。
【0051】
上記で概説したように、アミノ酸の置換は、一般に、アミノ酸側鎖置換基、例えば、それらの疎水性、親水性、電荷、サイズ等の相対的類似性に基づく。上記各種の特徴を考慮した例示的な置換は当業者に周知であり、アルギニンおよびリシン;グルタミン酸塩およびアスパラ銀酸塩;セリンおよびトレオニン;グルタミンおよびアスパラギン;およびバリン、ロイシンおよびイソロイシンを含む。
【0052】
2. ポリペプチド合成方法
本発明のある実施形態では、上記ポリペプチドは、組み換え技術を用いて単一の組み換え核酸配列によりコードされる。他の実施形態では、上記血管内皮標的化アミノ酸配列および細胞毒性アミノ酸配列は、個別の核酸配列によりコードされ、次いで、科学的結合により接合される。さらなる実施形態では、上記ポリペプチドは、新たに合成される。
【0053】
a. 組み換え技術
本発明のある実施形態では、上記キメラポリペプチドは、当業者に周知の組み換え技術を用いて単一の組み換えポリヌクレオチドによりコードされる。上記ポリヌクレオチドは、適切な宿主細胞でのキメラポリペプチドの発現を指示するさらなる核酸配列を含んでもよい。
【0054】
遺伝子コードの固有の縮退により、キメラタンパク質のクローニングおよび発現の発明の実施において、実質的に同じかまたは機能的に同等のアミノ酸配列をコードする他のDNA配列を用いてもよい。そのようなDNA配列は、厳しい条件下でキメラ配列またはそれらの相補配列とハイブリダイズすることを含む。1つの実施形態では、本明細書中において用いる「厳しい条件」という用語は、(1)例えば、50℃で0.015MのNACl/0.0015Mのクエン酸ナトリウム/0.1%SDS等、洗浄に低いイオン強度および高い温度を用いる;(2)ハイブリダイゼーション中にホルムアミド等の変性剤を用いる、例えば、42度で50%(vol/vol)ホルムアミドとともに0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%フィコール/0.1%ポリビニルピロリドン/750mMのNAClとpH6.5の50mMリン酸ナトリウム緩衝液、75mMクエン酸ナトリウムを用いる;または(3)42度の50%ホルムアミド、5xSSC(0.75MのNACl、0.075Mピロリン酸ナトリウム、5xデンハルト溶液、超音波分解したサケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDS、および10%デキストラン硫酸を0.2.xSSCおよび0.1%SDSにおいて42度の洗浄とともに用いるハイブリダイズ条件を意味する。
【0055】
本発明に従って用いられ得る改変DNA配列は、異なるヌクレオチド残基の欠失、追加または置換を含み、同じまたは機能的に同等のポリヌクレオチドをコードする配列となる。上記ポリヌクレオチドは、キメラ配列内のアミノ酸残基の欠失、追加または置換を含んでもよく、結果として、僅かな変化により、機能的に同等のキメラポリヌクレオチドを産生する。そのようなアミノ酸置換は、上述したように、含まれる残基の極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性、および/または両親媒性における類似性に基づいて行なってもよい。
【0056】
本発明のDNA配列は、遺伝子産物の処理および発現を変更する改変を含むがそれに限定されない各種目的のためのキメラコード配列変更のために操作されてもよい。例えば、当該分野で周知の技術を用いて突然変異体、例えば、部位特異的な突然変異生成を導入し、新たな制限部位を挿入したり、グリコシル化パターン、リン酸化反応等を変更したりしてもよい。
【0057】
生物学的活性を有するキメラポリペプチドを発現するために、キメラポリペプチドまたは機能的同等物をコードするヌクレオチド配列を適切な発現ベクター、すなわち、挿入したコード配列の転写および翻訳に必要な要素を含むベクターに挿入する。上記キメラ遺伝子産物、および組み換えキメラ発現ベクターでトランスフェクトまたは形質転換した宿主細胞または細胞株は、各種の用途に用いることができる。これらは、上記タンパク質のエピトープに結合してそれらの精製を容易にする抗体(すなわち、モノクローナルまたはポリクローナル)を生成することを含むがこれに限定されない。
【0058】
当業者に周知の方法を用いて、上記キメラコード配列および適切な転写/翻訳調節シグナルを含む発現ベクターを構築することができる。これらの方法は、インビトロ組み換えDNA技術、合成技術およびインビボ組み換え/遺伝子組み換えを含む。例えば、Sambrookら,2001に記載の技術を参照されたい。
【0059】
各種宿主−発現ベクター系を利用して上記キメラポリペプチドコード配列を発現してもよい。これらは、上記キメラタンパク質コード配列を含む組み換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNAまたはコスミドDNA発現ベクターで形質転換した細菌;上記キメラタンパク質コード配列を含む組み換え酵母菌発現ベクターで形質転換された酵母菌;上記キメラタンパク質コード配列を含む組み換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)に感染させた昆虫細胞系;組み換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)に感染させた、または上記キメラタンパク質コード配列を含む組み換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換した植物細胞系;または動物細胞系等の微生物を含むがこれらに限定されない。なお、大半のアポトーシス−誘導タンパク質は哺乳動物細胞でプログラム細胞死を生じるため、本発明のキメラタンパク質は、好ましくは、原核または低レベルの真核細胞で発現されることに留意されたい。セクション6では、IL2−BaxがE.coli中において効率的に発現され得ることを例示している。
【0060】
各系の発現要素は、その強度および特異性の点で異なる。用いられる宿主/ベクター系に応じて、構成的および誘導プロモーターを含む多数の適切な転写および翻訳要素のいずれかを発現ベクターに用いてもよい。例えば、細菌系においてクローニングする場合、バクテリオファージλのpL、plac、ptrp、ptac(ptrp−lacハイブリッドプロモーター;サイトメガロウイルスプロモーター)等の誘導プロモーターを用いてもよく;昆虫細胞系においてクローニングする場合、バキュロウイルスポリヘドリンプロモーター等のプロモーターを用いてもよく;植物細胞系においてクローニングする場合、植物細胞のゲノム由来のプロモーター(例えば、熱ショックプロモーター;RUBISCOの小サブユニット用プロモーター;クロロフィルα/β結合タンパク質用プロモーター)または植物ウイルス由来のプロモーター(例えば、CaMVの35SRNAプロモーター;TMVの外皮タンパク質プロモーター)を用いてもよく;哺乳動物細胞系においてクローニングする場合、哺乳動物細胞のゲノム由来のプロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター)または哺乳動物ウイルス由来のプロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーター;ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)を用いてもよく;キメラDNAを複数コピー含む細胞株を生成する場合、SV40、BPVおよびEBVベースのベクターを適切な選択可能なマーカーとともに用いてもよい。
【0061】
細菌系では、発現したキメラポリペプチドの用途に応じて、多数の発現ベクターを有利に選択してもよい。例えば、大量のキメラポリペプチドを産生する場合、容易に生成可能なハイレベルのタンパク質産物の発現を指示するベクターが望ましい。そのようなベクターは、キメラタンパク質コード配列がlacZコード領域と同枠のベクターに結紮されることにより、ハイブリッドAS−lacZタンパク質が産生されるE.Coli発現ベクターpUR278(Rutherら,1983);pINベクター(Van HeekeおよびSchuster、1989)等を含むがこれらに限定されない。
【0062】
キメラポリペプチドの発現に用いることができる選択的発現系は昆虫系である。そのような系の1つでは、Autographa californica核多汗症ウイルス(polyhidrosis virus)(AcNPV)をベクターとして用いて外来遺伝子を発現する。ウイルスは、Spodoptera frugiperda細胞において増殖する。キメラタンパク質コード配列は、ウイルスの非必須領域(例えば、ポリヘドリン遺伝子)にクローンし、AcNPVプロモーター(例えば、ポリヘドリンプロモーター)により調節してもよい。キメラポリペプチドコード配列を上手く挿入することにより、ポリヘドリン遺伝子が不活性になり、非閉塞組み換えウイルス(すなわち、ポリヘドリン遺伝子によりコードされたタンパク外皮がないウイルス)が産生される。そして、これらの組み換えウイルスを用いて、挿入した遺伝子が発現するSpodoptera frugiperda細胞を感染させる(例えば、Smithら,1983;米国特許第4,215,051号参照)。
【0063】
挿入したキメラタンパク質コード配列の有効な翻訳のために、特定の開始シグナルも必要とされる場合がある。これらのシグナルは、ATG開始コドンおよび隣接する配列を含む。自身の開始コドンおよび隣接する配列を含むキメラ遺伝子全体を適切な発現ベクターに挿入する場合、さらなる翻訳調節シグナルを必要としない場合がある。しかしながら、キメラタンパク質コード配列がそれ自身の開始コドンを含まない場合、ATG開始コドンを含む外来性翻訳調節シグナルを設けなければならない。さらに、当該開始コドンは、挿入物全体を確実に翻訳するために、キメラタンパク質コード配列の読み枠と一致する必要がある。これらの外来性翻訳調節シグナルおよび開始コドンの起点は様々であり、天然および合成の両方とも可能である。適切な転写エンハンサー要素、転写ターミネーター等を含むことにより、発現効率を上げてもよい(Bittnerら,1987参照)。
【0064】
また、挿入した配列の発現を制御するか、または所望の特定の方法で遺伝子産物を修正および処理する宿主細胞株を選択してもよい。タンパク質産物のそのような修正(例えば、グリコシル化)および処理(例えば、切断)が、タンパク質の機能にとって重要な場合がある。キメラタンパク質に一貫したN−グリコシル化部位を存在させるために、最適なキメラタンパク質機能に適した修正を必要とすることがある。異なる宿主細胞は、タンパク質の翻訳後の処理および修正のための特徴的および特異的メカニズムを有する。適切な細胞株または宿主系を選択して、キメラタンパク質の正確な修正および処理を確実にすることができる。このために、一次転写産物の適切な処理、グリコシル化、およびキメラタンパク質のリン酸化反応のための細胞マシンを有する真核宿主細胞を用いてもよい。このような哺乳動物宿主細胞は、CHO、VERO、BHK、HeLa、COS、MDCK、293、W138等を含むがこれらに限定されない。
【0065】
組み換えキメラポリペプチドの長期的高収率産生のために、安定した発現が好ましい。例えば、キメラポリペプチドを安定して発現する細胞系を改変してもよい。ウイルス複製の原型を含む発現ベクターを用いるのではなく、適切な発現調節要素(例えば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位等)、および選択可能なマーカーにより調節されたキメラコード配列を用いて宿主細胞を形質転換することができる。外来DNAの導入に続いて、改変細胞を1〜2日間強化培地で増殖させてから選択培地に移してもよい。組み換えプラスミド内の選択可能なマーカーは、選択に対する耐性を与え、細胞が安定してプラスミドをそれらの染色体に取り入れ、病巣を形成するように増殖させることができ、病巣をクローニングして細胞株に拡大することができる。
【0066】
それぞれtk、hgprtまたはaprt細胞で用いることができる単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Wiglerら,1977)、ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(SzybalskiおよびSzybalski,1962)、およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowyら,1980)遺伝子を含むがこれらに限定されない多数の選択系を用いてもよい。また、メトレキサートへの耐性を与えるdhfr(Wiglerら,1980;O’Hareら,1981);ミコフェノール酸への耐性を与えるgpt(MulliganおよびBerg,1981);アミノグリコシドG−418への耐性を与えるneo(Colbere−Garapinら,1981);およびハイグロマイシン遺伝子への耐性を与えるhygro(Santerreら,1984)の選択基準として抗代謝拮抗物質を用いることができる。さらなる選択可能な遺伝子が記載されているが、詳細には、細胞にトリプトファンの代わりにインドールを利用させるtrpB;細胞にヒスチジンの代わりにヒスチノールを利用させるhisD(HartmanおよびMulligan,1988);およびオルニチンデカルボキシラーゼインヒビターである2−(ジフルオロメチル)−DL−オルニチン、DFMOへの耐性を与えるODC(オルニチンデカルボキシラーゼ)(McConlogue,1986参照)がある。
【0067】
b. デノボ合成
本発明の代替的な実施形態では、上記キメラポリペプチドは、当該分野で周知の化学的方法を用いてその全体または一部をデノボ合成してもよい(例えば、Caruthersら,1980;CreaおよびHorn,1980;およびChowおよびKempe,1981参照)。例えば、固相技術により、成分アミノ酸配列を合成し、樹脂から切り離し、予め高性能液体クロマトグラフィーで精製した後、化学的結合によりキメラタンパク質を形成することができる(例えば、Creighton、1983参照)。アミノ酸分析またはシークエンシングにより、合成したペプチドの組成物を確認してもよい(例えば、エドマン分解法;Creighton,1983参照)。
【0068】
ポリペプチド合成技術は当業者に周知である(例えば、Bodanszkyら,1976参照)。これらの合成方法は、1つ以上のアミノ酸残基または適切な保護アミノ酸残基を増殖ペプチド鎖に逐次的に付加することを伴う。通常、第1のアミノ酸残基のアミノまたはカルボキシル基のいずれかを適切な選択除去が可能な保護基で保護する。リシン等の反応性側基を含むアミノ酸には異なる選択除去保護基を用いる。
【0069】
固相合成を一例として用いると、保護されたまたは誘導体化されたアミノ酸をその保護されていないカルボキシルまたはアミノ基を介して不活性な固体担体に付着させる。このアミノまたはカルボキシル基の保護基は選択的に除去され、適切に保護された相補(アミノまたはカルボキシル)群を有する配列の次のアミノ酸が混合され、固体担体にすでに付着した残基と反応させられる。このアミノまたはカルボキシル基の保護基は、次いで、その新たに付加されたアミノ酸残基から取り除かれ、次いで、(適切に保護された)次のアミノ酸の付加等を行なう。所望のアミノ酸の全てが適切な配列で結合した後、残りの末端および側基保護基(および固体担体)が順次または同時に除去され、最終的なペプチドを得る。このような保護基部分を合成時に用いてもよいが、これらは、ペプチドを用いる前に除去される。他の箇所に記載するように、分子内結合を形成して配座を制限するためにさらなる反応が必要な場合がある。
【0070】
c. リンカー
代替的に、合成または組み換え方法により産生された上記キメラポリペプチドの2つの部分を当該分野で周知の方法に従ってリンカーにより接合してもよい(BrinkmannおよびPastan,1994)。本明細書中において用いる「リンカー」は、内皮標的アミノ酸配列を細胞毒性アミノ酸配列に結合する化学物質またはペプチドもしくはポリペプチドである。
【0071】
リンカーを用いずに、または五量体Gly−Gly−Gly−Gly−Ser(配列番号:1)が1〜3回繰り返されるような可塑性ポリリンカーを用いて2つのコード配列を直接融合することができる。このようなリンカーは、VとVの間に挿入して一本鎖抗体(scFv)を構築する際に用いられている(Birdら,1988;Hustonら,1988)。上記リンカーは、上記一本鎖抗体の可変領域を形成する2つのベータシート間の正確な相互作用を可能にするように設計される。他に用いられ得るリンカーは、Glu−Gly−Lys−Ser−Ser−Gly−Ser−Gly−Ser−Glu−Ser−Lys−Val−Asp(配列番号:2)(Chaudharyら,1990)およびLys−Glu−Ser−Gly−Ser−Val−Ser−Ser−Glu−Gln−Leu−Ala−Gln−Phe−Arg−Ser−Leu−Asp(配列番号:3)(Birdら,1988)を含む。
【0072】
選択的に切断可能なリンカーまたはアミノ酸配列等の生物学的に遊離可能な化学結合を介して複数のペプチドまたはポリペプチドを繋げてもよい。例えば、腫瘍環境内に優先的に配置されるまたは活性を有する酵素のための切断部位を含むペプチドリンカーが企図される。そのようなペプチドリンカーの例示的な形態は、ウロキナーゼ、プラスミン、トロンビン、Factor IXa、Factor Xa、またはコラゲナーゼ、ゼラチナーゼ、もしくはストロメライシン等のメタラプロテイナーゼにより切断されたものである。代替的に、ポリペプチドをアジュバントに繋げてもよい。当業者に公知のあらゆるリンカーを本発明のリンカーとして用いることは一般指針とみなすことができる。
【0073】
本発明のポリペプチド分子を用いて架橋剤を実現することが企図される。架橋試薬を用いて、2つの異なる分子の官能基、例えば、安定剤および凝固剤を結び合わせる分子ブリッジを形成する。2つの異なるポリペプチドを段階的に結合するために、不要なホモポリマー形成をなくすヘテロ二価性架橋剤を用いることができる。二価性架橋試薬は、アフィニティマトリックスの調製、多様性のある構造の修正および安定化、結合部位の同定、ならびに構造研究を含む各種目的のために広く用いられている。本発明の文脈では、このような架橋剤は、例えば、ポリペプチド標的能力または全体的な有効性を改良することにより、ポリペプチド安定させるか、または治療薬としてより有用にするために用いてもよい。ジスルフィド、酸に敏感なリンカー、およびその他の架橋剤は切断可能であってもよい。ホモ二価性試薬は、同一のおよび異なる巨大分子間または巨大分子のサブユニット間の架橋の誘導、およびポリペプチドに結合パートナー上の特異的結合部位との結合に非常に有効であることが分かっている2つの同一の官能基を有する。ヘテロ二価性試薬は、2つの異なる官能基を含む。それら2つの異なる官能基の異なる反応性を利用することにより、選択的および順次的の両方の方法で架橋を制御することができる。二価性架橋試薬は、それらの官能基、例えば、アミノ、スルフヒドリル、グアニジノ、インドール、カルボキシル特異的群の特異性に応じて分割することができる。これらのうち、アミノ基を遊離する試薬は、それらの商業的入手性、合成の容易さ、および適用可能な反応条件が穏やかであるという理由で特に普及している。ヘテロ二価性架橋試薬の大部分が1級アミン反応基およびチオール反応基を含む。
【0074】
他の例では、ヘテロ二価性架橋試薬およびその架橋試薬の使用法が、記載されている(本明細書中においてその全てを参考として明確に援用する米国特許第5,889,155号)。架橋試薬は、求核性ヒドラジド残基と求電子性マレイミド残基とを組み合わせて、一例として、アルデヒドと遊離チオールの結合を可能にする。架橋試薬は、修飾することにより各種官能基を架橋するため、架橋ポリペプチドおよび糖に有用である。ゲロニン等の特定のポリペプチドが、その天然配列において所与の架橋試薬に敏感な残基を含まない場合、一次配列における保存性遺伝的または合成的なアミノ酸の変更を利用することができる。表2は、本発明において有用と思われる特定の例示的なヘテロ二価性架橋剤の詳細を示す。
【0075】
【表2−1】

【0076】
【表2−2】

d. タンパク質精製
本発明のある実施形態では、上記ポリペプチドは精製されている。一般に、「精製された」とは、ポリペプチド組成物を分別して各種他の成分を除去し、その組成物がその発現した生物活性実質的に保持する状態を意味する。「実質的に精製された」という表現を用いた場合、これによって、組成物においてポリペプチドまたはペプチドが大部分を構成することが示され、例えば、当該組成物中のタンパク質は約50%〜約99.9%以上となる。
【0077】
上記ポリペプチドの精製度を定量化する各種方法は、本開示に鑑みて当業者には公知である。例示的な技術としては、高性能液体クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、親和性クロマトグラフィー等が挙げられる。特定のポリペプチドを精製する実際の条件は、正味の電荷、疎水性、親水性等のファクターに一部依存しており、当業者には明白である。
【0078】
親和性クロマトグラフィーの精製については、上記ポリペプチドと特異的に結合する任意の抗体を用いてもよい。抗体の産生については、ウサギ、マウス、ラット等を含むがこれらに限定されない各種宿主動物をキメラタンパク質またはそのフラグメントを注射して免疫してもよい。上記タンパク質は、側鎖官能基、または側鎖官能基に付着させたリンカーによって、ウシ血清アルブミン(BSA)等の適切な担体に付着させてもよい。フロイント(完全および不完全)アジュバント、水酸化アルミニウム等のミネラルゲル、表面活性物質、リゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、キーホールリンペットヘモシアニン(keyhold limpet hemocyanin)、ジニトロフェノール、ならびにBCG(bacilli Calmetter−Guerin)およびCorynebacterium parvum等の潜在的に有用なヒトアジュバントを含むがこれらに限定されない各種アジュバントを用いて、宿主の種に応じて、免疫反応を増加させてもよい。
【0079】
キメラポリペプチドのモノクローナル抗体は、培養下の連続細胞株による抗体分子の産生に対応する任意の技術を用いて調製してもよい。これらは、KoehlerおよびMilstein(1975)によって最初に記載されたハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Coteら,1983)、およびEBV−ハイブリドーマ技術(Coleら,1985)を含むがこれらに限定されない。また、適切な抗原特異性のマウス抗体分子からの遺伝子を適切な生物活性のヒト抗体分子からの遺伝子とスプライシングすることにより「キメラ抗体」を産生するために開発された技術(Morrisonら,1984;Neubergerら,1984;Takedaら,1985)を用いることができる。選択的に、一本鎖抗体の産生について記載された技術(米国特許第4,946,778号)を、キメラタンパク質の精製および検出のために、キメラタンパク質特異的一本鎖抗体を産生するために適応させることができる。
【0080】
3. 血管内皮標的化アミノ酸配列
本発明の方法に規定されるポリペプチドは、少なくとも1つの血管内皮標的化アミノ酸配列および少なくとも1つの細胞毒性アミノ酸配列を含む。細胞毒性薬の治療薬指数は、当該薬を、内皮細胞等の該当部位に誘導することにより増加させることができる。本明細書中において、血管内皮標的配列は、(共有または非共有)結合する能力か、またはそれ以外の場合には、血管の内皮細胞に付着する能力を有するあらゆるアミノ酸配列を意味するものと定義される。ある特定の実施形態では、上記血管は、血管新生性血管等の病的血管である。例えば、上記血管新生性血管は、加齢性黄斑変性症患者の脈絡膜血管新生性膜、または増殖性糖尿病網膜症患者の網膜新生血管の葉状体であってもよい。
【0081】
本発明の方法に含まれる血管内皮細胞標的アミノ酸配列は、他の細胞型に結合してもしなくてもよい。よって、例えば、内皮細胞を含む全ての細胞型を標的とする被験体のアミノ酸配列は、血管内皮標的化アミノ酸配列であるが、これは、血管内皮細胞を標的とする能力を有するためである。ある特定の実施形態では、上記血管内皮標的化アミノ酸配列は、内皮細胞を他の細胞型に優先して標的とする配列である。本発明のあるさらなる特定の実施形態では、上記血管内皮細胞標的アミノ酸配列は、新生血管内皮細胞と優先的に結合する。
【0082】
上記血管内皮標的化アミノ酸配列は、内皮細胞特異的結合をもたらす。多種多様なアミノ酸配列が、増殖因子、ホルモンおよびサイトカイン等の受容体のリガンド、ならびに抗体または抗原結合フラグメントを含むがこれらに限定されない血管内皮標的化アミノ酸配列としての使用に適している。
【0083】
腫瘍細胞が腫瘍血管系の内膜の一部を形成可能であることは公知であるため、本発明は腫瘍細胞に対する直接的なターゲッティング、および腫瘍血管系のターゲッティングも包含する。よって、本発明の文脈において、腫瘍細胞を直接ターゲッティングするあらゆるアミノ酸配列を血管内皮標的化アミノ酸配列として適用してもよい。そのような標的配列の多くは当業者に公知であり、これらおよび次に利用可能になるあらゆるものも本発明の範囲内に含まれる。
【0084】
ある実施形態では、血管内皮標的化アミノ酸配列は、リガンド等、内皮細胞もしくは腫瘍細胞により発現された受容体結合パートナー、または抗体等、マーカーまたはそのような細胞と関連する細胞外マトリックス成分の結合パートナーである。より特定的には、上記標的配列は、内皮細胞により発現された受容体のリガンド等の結合パートナー、または抗体等の内皮マーカーとの結合パートナーであってもよい。結合パートナーという用語は、本明細書中において、最も広義の意味で用いられており、リガンドおよび抗体またはそれらの結合フラグメントを含む天然および合成された結合領域の両方を含む。よって、上記結合パートナーは、Fab、Fv、一本鎖Fv、ペプチドまたはペプチド模倣、すなわち、受容体に結合可能なペプチド様分子、上記細胞の細胞外成分のマーカー等の抗体またはそのフラグメントとすることができる。
【0085】
以下は本発明の文脈において適用可能な血管内皮標的化アミノ酸配列の代表例である。当業者に公知であって本明細書中において得に記載していないさらなる血管内皮標的化アミノ酸配列も本発明に含むものとする。
【0086】
a. VEGF
内皮細胞に最も重要な増殖および生存ファクターの1つがVEGFである。VEGFは、血管形成および内皮細胞増殖を含み、脈管形成の調節において重要な役割を担う。VEGFは、45kDAのホモ二量体として分泌されるヘパリン結合糖タンパク質である。通常内皮細胞以外の大半の種類の細胞は、それら自体がVEGFを分泌する。また、VEGFは、部分的には内皮細胞内の酸化窒素シンターゼの刺激により拡張を起こす。VEGFはまた、細胞転移の刺激、およびアポトーシスの阻害が可能である。VEGF−Aにはいくつかのスプライス変位がある。主要なものには、121、165、189および206アミノ酸(AA)が含まれ、それぞれ、本明細書の他の箇所においてさらに議論する特異的エクソン付加物を有する。本発明の文脈において適切なVEGFアミノ酸配列の例としては、配列番号:4〜10が挙げられる。さらなるVEGFアミノ酸配列、ならびにVEGFアミノ酸配列および本発明の方法において有用な組み換えゲロニンを含む細胞毒性分子を含む、キメラタンパク質は、それぞれ本明細書中において、本明細書の本セクションおよび他の全てのセクションに関して参考として明確に援用する米国特許出願第20050037967号および同第20040248805号に記載のものを含む。
【0087】
b. EMAP−II
内皮単球活性化ポリペプチド−II(EMAP−II)は、腫瘍血管発生における抗血管新生因子であるサイトカインであり、腫瘍増殖を強力に阻害する。組み換えヒトEMAP−IIは、166アミノ酸残基を含む18.3kDAタンパク質である。EMAP IIはまた、内皮血管透過性を増加させることが分かっている。
【0088】
c. PDGF
血小板由来増殖因子(PDGF)拮抗剤は、共通の固形腫瘍において広範な抗腫瘍薬の薬物取り込みおよび治療薬効果を増加する。PDGFは、30kDAのサイトカインであり、損傷の血小板により遊離され、近くのエル(ells)を刺激して増殖させ、その損傷を直す。
【0089】
d. PD−ECGF
血小板由来内皮細胞増殖因子(PD−ECGF)は、元々、内皮細胞の有糸分裂を誘導する能力に基づいて、血小板から単離されたものである。その関連タンパク質は、グリオスタチン(gliostatin)である。
【0090】
e. アクチビン
ActRIIを発現することが分かっている細胞は、内皮細胞を含む。ActRIIB発現は、ActRIIのものと同等であり、また、内皮細胞でも見つかっている。ActRIを発現することが知られている細胞は、血管内皮細胞を含む。ActRIBもまた内皮細胞中において同定される。
【0091】
f. アンギオジェニン
アンギオジェニン(ANG)は、14kDAの非グリコシル化ポリペプチドであり、新たな血管増殖を誘導する能力によりこのように名付けられている。
【0092】
g.アネキシンV
アネキシンVは、血管抗凝固活性を有するタンパク質のカルシウムおよびリン脂質結合ファミリーのメンバーである。アネキシンVには各種同意語が存在する:胎盤タンパク質4(PP4)、胎盤抗凝固タンパク質I(PAP I)、カルホビンディンI(calphobindin I)(CPB−I)、カルシウム依存リン脂質結合タンパク質33(CaBP33)、血管抗凝固タンパク質アルファ(VACa)、アンチョリンCII(anchorin CII)、リポコルチン−V、エンドネキシンII、およびトロンボプラスチン阻害剤。アネキシンVの結合部位の数は、腫瘍細胞において106個/細胞の6〜24倍、内皮細胞の106個/細胞の8.8倍と報告されている。
【0093】
h. CD44のリガンド
CD44は、多くの細胞型上で発現される。CD44は、そのオルタナティブスプライシング型を生成する能力に関して優れており、その多くが活性に関しては異なる。この優れた柔軟性により、腫瘍細胞が増殖および転移により上手く発達するために用いるいくつかの方法で1つの役割を果たすという推測がなされている。CD44は、80〜250kDA型I(細胞外N−末端)膜貫通糖タンパク質である。CD44Hを発現することが知られている細胞は、血管内皮細胞を含む。
【0094】
CD44には複数のリガンドが存在し、オステオポンチン、フィブロネクチン、コラーゲンタイプIおよびIV、ならびにヒアルロン酸塩が含まれる。フィブロネクチンとの結合は、クロンドロイチン硫酸(chrondroitin sulfate)を発現するCD44変異体であって、クロンドロイチン硫酸付着部位がエクソンv8〜v11に局在するCD44変異体に限定されると報告されている。ヒアルロン酸塩結合は、実質的に全てのCD44アイソフォームについて示唆されている。主要な結合部位の1つは、エクソン2の中心にあり、リシンおよびアルギニン残基を含むことが提案されている。公知のヒアルロン酸塩結合モチーフの単純な発現以外の要因もヒアルロン酸塩結合に必要であると思われる。良好なヒアルロン酸塩結合は、発現したエクソン、特徴的な細胞質尾部、グリコシル化パターン、および細胞の活性状態の組み合わせにより容易になる。よって、そのヒアルロン酸塩結合機能に関して、各CD44発現細胞において大量の「潜在的な」柔軟性が存在する。
【0095】
i.線維芽細胞増殖因子(FGF)
「線維芽細胞増殖因子」(FGF)という名称は、このファミリーのサイトカインの限定的説明である。FGFの機能は、細胞増殖に限定されない。実際、線維芽細胞増殖を誘導するFGFもあるが、現在、元々のFGF分子(FGF−2またはFGF basic)も内皮細胞、軟骨細胞、平滑筋細胞、メラニン細胞、および他の細胞の増殖を誘導することが知られている。また、脂肪細胞分化を促進したり、マクロファージおよび線維芽細胞IL−6の産生を誘導したり、アストロサイト転移を刺激したり、ニューロンの生存を延長することもできる。FGFスーパーファミリーは、23のメンバーから構成され、これらの全てが同一の散在アミノ酸を6個含む保存120アミノ酸(AA)中核領域を含む。
【0096】
ヒトFGF−1(FGF acidic、FGFA、ECGF、およびHBGF−1としても知られる)は、3つの胚葉全てからの各種細胞により発現される17〜18kDAの非グリコシル化ポリペプチドである。上記結合分子は、FGF受容体のいずれかであってもよい。FGF−1を発現することが知られている細胞は内皮細胞を含む。
【0097】
ヒトFGF−2(FGF basic、HBGF−2、およびEDGFとしても知られる)は、細胞内および細胞外活性の両方を示す18kDAの非グリコシル化ポリペプチドである。分泌後、FGF−2は、細胞表面HSまたはマトリックスグリコサミノグリカン上で隔離される。FGF−2はモノマーとして分泌されるが、細胞表面HSは、続いてFGF受容体を二量化および活性化することができる非共有のサイドからサイドへの構成においてモノマーFGF−2を二量体化すると考えられる。FGF−2を発現することが知られている細胞は内皮細胞を含む。
【0098】
ヒトFGF−3は、int−2遺伝子の産物である。この分子は、多数のペプチドモチーフを含む28〜32kDAの222AA糖タンパク質として合成される。FGF−3を発現することが報告されている細胞は、発生的細胞および腫瘍に限定される。
【0099】
ヒトFGF−4は、発生学的に調節された遺伝子の産物である22kDAの176AA糖タンパク質である。上記ヘパリン結合部位は、FGF4活性と直接的に関係し;ヘパリン/ヘパランは、FGF−4のFGFR1およびFGFR2を活性化する能力を調節する。FGF−4を発現することが知られている細胞は、腫瘍細胞および胚細胞の両方を含む。
【0100】
j. IL−1R
IL−1は、特異的受容体に結合することによりその効果を発揮する。2つの異なるIL−1受容体結合タンパク質、および非結合シグナル付属タンパク質が同定されている。それぞれ、3つの細胞外免疫グロブリン様(Ig様)ドメインを有するため、タイプIVサイトカイン受容体ファミリーのメンバーとなる。上記2つの受容体結合タンパク質は、それぞれ、タイプI IL−1受容体(IL−1 RI)およびタイプII IL−1受容体(IL−1 RII)と称される。ヒトIL−1 RIは、内皮細胞から単離された552AA、80kDA膜貫通糖タンパク質である。
【0101】
k. RTK
受容体チロシンキナーゼ(RTK)のファミリー、Eph受容体およびそれらのリガンドであるエフリンは、血管アセンブリ(vascular assembly)、血管形成、腫瘍形成、および転移に関与すること分かっている。また、クラスAのEph受容体およびそれらのリガンドが腫瘍および関連する血管系において上昇する。
【0102】
l. MMP
マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)は、腫瘍増殖、血管形成、浸潤、および転移に関わる。
【0103】
m. NG2
NG2は、当初は未熟神経細胞により発現された細胞表面分子と同定されていた大きな内在性膜、コンドロイチン硫酸プロテオグリカンである。これは、多種多様な未熟細胞、および悪性が高い数種類の腫瘍により発現される。NG2は、腫瘍血管系における標的分子として示唆されている。
【0104】
n. 癌胎児性フィブロネクチン
フィブロネクチンの癌胎児性フラグメント(Fn−F)の発現も血管形成時に増加することが分かっている。これは、腫瘍血管形成のマーカーとして示唆されている。
【0105】
o. テネイシンのリガンド
テネイシンは、脳および乳癌ならびに黒色腫を含む悪性腫瘍に見られるマトリックス糖タンパク質である。悪性ではあるが高分化型である腫瘍における発現および腫瘍の血管との関連により、悪性腫瘍および血管形成の重要な標的となっている。標的部分は、腫瘍細胞または腫瘍血管系表面分子に結合可能なポリペプチドであることが好ましい。
【0106】
p. TNF
TNFは炎症性サイトカインとして作用し、内皮障害機能の変質、腫瘍間質圧の低減、ならびに化学療法薬透過および腫瘍血管損傷の増加を誘導する効果を有する。TNF関連リガンドは、通常、多数の共通の特徴を共有する。これらの特徴は、高度の全体的なアミノ酸(AA)配列相同性を含まない。神経成長因子(NGF)およびTNF−ベータを除いて、全てのリガンドは、短い細胞質断片(10〜80個のAA残基)および比較的に長い細胞外領域(140〜215個のAA残基)を含むタイプII膜貫通タンパク質(細胞外C−末端)として合成される。
【0107】
q. PDGF
PDGFは、大半の共通固形腫瘍において間質コンパートメントで発現される受容体に結合する。ラットの結腸癌モデルにおいて間質的に発現されたPDGF受容体の阻害により、腫瘍間質液圧が低減され、腫瘍経毛細管輸送が増加する。
【0108】
r. CAMおよびセレクチンのリガンド
細胞接着分子(CAM)は、細胞(通常は白血球)の相互結合、内皮細胞との結合、または細胞外マトリックスとの結合に関与する細胞表面タンパク質である。損傷および感染に応じて作成される特異的シグナルは、これら接着分子のうちの特定の分子の発現および活性化を調節する。次いで、これらのCAMとそれらの受容体/リガンドの結合により開始された相互作用および応答は、これらの発作に対する一連の防御をなす炎症および免疫反応の媒介において重要な役割を果たす。ここまで特徴づけられているCAMの大半は、3つの大きなタンパク質ファミリーに該当する:免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリー、インテグリンファミリー、またはセレクチンファミリー。
【0109】
細胞表面分子のセレクチンファミリーのメンバーであるL−セレクチンは、NH2−末端レクチン型Cドメイン、EGF様ドメイン、2つの補体制御ドメイン、15個のアミノ酸残基スペーサー、膜貫通配列および短い細胞質ドメインから構成される。
【0110】
内皮細胞上のL−セレクチンの3つのリガンドが同定されており、それら全てがO−グリコシル化ムチンまたはムチン様ドメインを含む。細胞表面分子のセレクチンファミリーのメンバーであるP−セレクチンは、NH2−末端レクチン型Cドメイン、EGF様ドメイン、9つの補体制御ドメイン、膜貫通ドメイン、および短い細胞質ドメインから構成される。
【0111】
四糖シアリルルイスx(sLex)が、P−セレクチンおよびE−セレクチンの両方のリガンドとして同定されているが、P−、E−およびL−セレクチンの全てが適切な条件下でsLexおよびsLeaに結合することが可能である。P−セレクチンはまた、マウス骨髄性細胞上に存在する160kDA糖タンパク質、ならびに骨髄性細胞、好中球、単球、およびE−セレクチンとも結合可能なリガンドであるP−セレクチン糖タンパク質リガンド−1(PSGL−1)と称されるリンパ球上の糖タンパク質と選択的に結合すると言われている。白血球のP−セレクチン−調節ローリングは、PSLG−1に特異的なモノクローナル抗体により完全に阻害することができるが、これは、P−セレクチンがインビトロ条件下で各種糖タンパク質に結合可能であっても、生理学的に重要な結合がより制限される可能性があることを示唆している。各種エビデンスにより、P−セレクチンが骨髄性細胞、BおよびT細胞のサブセットの活性化された内皮への接着に関与することが示されている。
【0112】
s. IgスーパーファミリーCAMのリガンド
IgスーパーファミリーCAMは、カルシウム非依存性膜貫通糖タンパク質である。Igスーパーファミリーのメンバーは、細胞間接着分子(ICAM)、血管−細胞接着分子(VCAM−1)、血小板−内皮細胞接着分子(PECAM−1)、および神経−ceu接着分子(NCAM)を含む。各IgスーパーファミリーCAMは、保存システイン残基を有するいくつかのIg様鎖内ジスルフィド−化学結合ループ、膜貫通領域、および細胞骨格と相互作用する細胞内領域を含む細胞外領域を有する。これらは、典型的には、インテグリンまたは他のIgスーパーファミリーCAMを結合する。神経CAMは、神経パターニングに関わる。内皮CAMは、免疫応答および炎症において重要な役割を果たす。
【0113】
ヒトCD31は、E細胞接着分子(CAM)またはIgSF1のC2様サブグループに属する130kDAのタイプI(細胞外N−末端)膜貫通糖タンパク質である。成熟分子は、長さ711個のアミノ酸(AA)残基であり、574個のAA残基細胞外領域、19個のAA残基膜貫通セグメント、および118個のAA残基細胞質尾部を含む。細胞外領域には、予測分子量が80kDAである9個の潜在的なN結合グリコシル化部位が存在し、これらの部位の多くは占有されていると思われる。この細胞外領域の最も著しい特徴は、IgSFのC2領域と類似する6つのIg−相同性単位の存在である。これらの数は異なるが、これらのモジュールの存在は、全てのIgSF接着分子(ICAM−1、2、3およびVCAM−1)に共通した特徴である。
【0114】
t. インテグリンのリガンド
インテグリンは、アルファおよびベータサブユニットの非共有結合ヘテロ二量体である。多数のアルファおよびベータサブユニットが同定されている。これらは、各種方法で組み合わせて異なる種類のインテグリン受容体を形成することができる。いくつかのインテグリンのリガンドは、フィブロネクチン、ビトロネクチン、コラーゲン、およびラミニン等の接着細胞外マトリックス(ECM)タンパク質である。多くのインテグリンは、それらが結合するフィブロネクチンまたは他の接着タンパク質に存在するアミノ酸配列RGD(アルギニン−グリシン−アスパラギン酸)を認識する。RGD配列を含むペプチドおよびタンパク質フラグメントを用いてRGD認識インテグリンの活性を変調することができる。よって、本発明は、インテグリンによって認識されたペプチドを標的部分として用いてもよい。これらのペプチドは、従来「RGD含有ペプチド」として公知である。これらのペプチドは、インテグリンに結合するものとして同定されたペプチドモチーフを含んでもよい。これらのモチーフは、以下のアミノ酸配列を含む:DGR、NGRおよびCRGDC。これらのペプチドモチーフは、直鎖でも環状であってもよい。これらのアミノ酸配列は、当業者にはよく知られている。
【0115】
u. サイトカイン
サイトカインの例としては、IL−1、IL−1、IL−6、IFN−アルファ、INF−ベータ、IL−11、INF−ガンマ、TGF−ベータ、IL−8、PF−4、PBP、NAP−2、ベータ−TG、MIP−1アルファ、MIP−1ベータ、MCP−1、MCP−2、MCP−3、RANTES C、IL−12 LIF、OSM、CNTF、PF−4、PBP、NAP−2、ベータ−TG、MIP、およびMCPが挙げられる。
【0116】
v. ケモカイン
ケモカインは、血管形成を含む多くの病態生理学過程において重要な役割を果たす大半は小型の分泌タンパク質のスーパーファミリーである。公知のケモカイン受容体が少なくとも17個存在し、これらの受容体の多くが広宿主域結合特性を示すことにより、いくつかの異なるケモカインが同じ受容体を介してシグナルを送ることができる。ケモカインは、保存AA配列モチーフに基づいてサブファミリーに分類することができる。大半のファミリーメンバーは、2つの分子内ジスルフィド化学結合を形成する保存システイン残基を少なくとも4つ有する。これらのサブファミリーは、最初の2つのシステイン残基の位置により規定される。
【0117】
w. 抗体
ある実施形態では、上記血管内皮標的化アミノ酸配列は、内皮細胞の表面上で発現された抗原に対する抗体配列等の抗体配列である。上記内皮細胞標的配列は、免疫グロブリン(Ig)可変領域からの重鎖および/または軽鎖配列由来のものであってもよい。このような可変領域は、天然ヒト抗体由来、またはげっ歯類抗体等の他の種の抗体由来のものであってもよい。代替的に、上記可変領域は、ヒト化抗体等の改変抗体由来、または免疫されたもしくは免疫されていない動物からのファージディスプレイライブラリーまたは突然変異ファージ−ディスプレイライブラリー由来のものであってもよい。第2の選択として、上記可変領域は、一本鎖可変フラグメント(scFv)由来のものであってもよい。上記ポリペプチドは、多量体化を達成するため、またはポリペプチドの成分領域間のスペーサーとして作用するために他の配列を含有してもよい。上記標的配列は、1つ以上の免疫グロブリン可変領域に加えて、Ig重鎖定常領域の全てまたは一部を含むことにより、天然の全Ig、改変Ig、改変Ig様分子、一本鎖Igまたは一本鎖Ig様分子を含んでもよい。
【0118】
本明細書中において用いる「抗体」とは、免疫グロブリン遺伝子または免疫グロブリン遺伝子のフラグメントにより実質的にコードされた1つ以上のポリペプチドからなるタンパク質を意味する。抗体は、無傷免疫グロブリンまたは各種ペプチダーゼを用いて消化により産生された上手く特徴づけられたフラグメントを含む多数のフラグメントとして存在してもよい。各種抗体フラグメントを無傷抗体の消化に関して定義したが、当業者は抗体フラグメントが化学的にまたは組み換えDNA方法を利用してデノボ合成されてもよいことを理解する。よって、本明細書中において用いる抗体という用語は、全抗体の修正により産生されたまたは組み換えDNA方法を用いてデノボ合成された抗体フラグメントも含む。「抗体」という用語の使用により包含される抗体フラグメントは、Fab、Fab’、F(ab’)2、scFv、Fv、dsFv二重特異性抗体、およびFdフラグメントを含むがこれらに限定されない。
【0119】
本発明はまた、内皮細胞表面タンパク質に対するモノクローナルまたはポリクローナル抗体も企図する。よって、本発明は、内皮細胞表面タンパク質のモノクローナルまたはポリクローナル抗体の産生過程をさらに提供する。
【0120】
ポリクローナル抗体が所望される場合、選択された哺乳動物(例えば、マウス、ウサギ、ヤギ、ウマ等)は、1つまたは複数のエピトープを有する免疫原生のポリペプチドを用いて免疫される。当該免疫された動物からの血清を集めて、公知の手順に従って処理する。エピトープに対する血清含有ポリクローナル抗体が他の抗原に対する抗体を含有する場合、上記ポリクローナル抗体は、免疫親和性クロマトグラフィーにより精製することが可能である。ポリクローナル抗血清を産生および処理する技術は、当該分野で公知である。そのような抗体を作成するために、本発明は、本発明のポリペプチドまたはそれらのフラグメントを動物またはヒトにおいて免疫原として使用するために他のポリペプチドにハプテン化したものを提供する。
【0121】
当業者は、ポリペプチドの結合細胞表面エピトープに対するモノクローナル抗体も容易に産生することが可能である。ハイブリドーマによりモノクローナル抗体を作る一般的な方法は、当該分野で周知である。細胞融合よって、および発癌DNAを用いたBリンパ球の直接変態またはエプスタイン−バーウイルスを用いたトランスフェクション等の他の技術によっても不死抗体産生細胞株を生成することができる。エピトープに対して産生されたモノクローナル抗体のパネルを各種特性;詳細には、アアイソタイプおよびエピトープ親和性、に関してスクリーニングすることができる。
【0122】
x. その他
血管標的アミノ酸配列の他の例としては、本明細書中において全体を参考として援用する米国特許出願第20030040496号に記載される腫瘍細胞に結合する他のリガンドが挙げられる。血管内皮標的化アミノ酸配列のさらなる例としては、COX−2阻害剤、抗−EGF受容体リガンド、ハーセプチン、アンギオスタチン、C225、およびサリドマイド。COX−2阻害剤は、例えば、セレコキシブ、ロフェコキシブ、エトリコキシブ、およびこれらの薬の誘導体を含む。血管内皮標的化アミノ酸配列の他の例としては、mda−7および関連アミノ酸配列(本明細書中において全体を参考として明確に援用する米国特許出願シリアルナンバー第10/791,692号においてより詳細に議論されている)が挙げられる。
【0123】
4. 細胞毒性アミノ酸配列
細胞毒性アミノ酸配列は、本明細書中において、細胞の損傷または死を生じることが可能なあらゆるアミノ酸配列を意味するものと定義する。
【0124】
a. リボソーム阻害毒素
本明細書中に記載の方法のある特定の実施形態では、上記細胞毒性アミノ酸配列は、リボソーム阻害毒素(RIT)である。RITは、真核生物におけるタンパク質合成の強力な阻害剤である。これらのタンパク質の酵素ドメインは、一旦細胞内コンパートメントに侵入すると、リボソームを触媒的に不活性化する細胞毒性n−グリコシダーゼとして作用する。これは、28srRNAの位置4324におけるアデニンのn−グリコシド結合を切断し、伸張因子により結合部位を分離することにより外見上リボソームを不可逆的に不活性化することにより達成される。細菌から単離されたRITは、高次の植物に蔓延する。植物では、2つの種類が存在する:タイプI毒素は、リボソーム阻害活性を有する単一のポリペプチド鎖を有し、タイプII毒素は、タイプIタンパク質に相当し、ジスルフィド結合により細胞結合特性を有するB鎖に結合するA鎖を有する。タイプIのRITの例としては、ゲロニン、ドデカンドリン、トリコサンチン、トリコキリン、ブリョジン、ミラビリス抗ウイルスタンパク質、オオムギリボソーム不活性化タンパク質(BRIP)、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質(PAP)、サポリン、ルフィン、およびモモルジンがある。タイプII毒素は、リシンおよびアブリンを含む。毒素は、本明細書中で議論したポリペプチドのいずれとも融合タンパク質として接合または発現されてもよい。
【0125】
b. 他の毒素
当業者に公知の任意の毒素が本発明のポリペプチドに適している。毒素の例としては、リシンA−鎖(Burbage,1997)、ジフテリア毒素A(Massudaら,1997;Lidor,1997)、百日咳毒素Aサブユニット、E.coliエンテロトキシン毒素Aサブユニット、コレラ毒素Aサブユニットおよびシュードモナス毒素C−末端が挙げられる適切である。融合タンパク質調節可能ジフテリア毒素A鎖遺伝子を含有するプラスミドのトランスフェクションは、癌細胞にとって細胞毒性であったことが示されている。本発明に有用と思われる他の毒素の例としては、アブリン、A/B易熱性毒素、ボツリヌス毒素、リンゴマイマイ、ジャカリンまたはジャックフルーツ、ピーナッツ凝集素、西洋ニワトコ、破傷風、ウレックス、およびビスキュミンが挙げられる。
【0126】
c. プロアポトーシスアミノ酸配列
プロアポトーシスアミノ酸配列は、アポトーシスを誘導またはその活性形態を維持する配列を含んでいる。本発明は、当業者に公知のあらゆるプロアポトーシスアミノ酸配列を含むことを企図している。プロアポトーシスアミノ酸配列の例としては、CD95、カスパーゼ−3、Bax、Bag−1、CRADD、TSSC3、bax、hiD、Bak、MKP−7、PERP、bad、bc1−2、MST1、bbc3、Sax、BIK、BID、およびmda7が挙げられる。プロアポトーシスアミノ酸配列、および本明細書中には明確に記載されていないが、本発明の方法および組成物に適用可能な他の配列は、当業者にはよく知られている。
【0127】
d. 抗血管新生アミノ酸配列
細胞毒性アミノ酸配列の他の例としては、抗血管新生アミノ酸配列が挙げられる。抗血管新生アミノ酸配列は、本明細書中において、血管形成の開発を阻害するか、またはその退縮を促進するあらゆるアミノ酸配列を意味するものと定義する。これらの配列を用いて血管内皮細胞を標的とすることができる範囲で、これらの配列のいくつかは、本発明の文脈において、血管内皮標的化アミノ酸配列としても機能することが可能である。
【0128】
抗血管新生アミノ酸配列の例は、本明細書中のこのセクションおよび他の全てのセクションについてそれぞれ全体を本明細書中において参考として援用する米国特許出願第20030082159号および同第20020114783号に記載されている。
【0129】
当業者に公知のあらゆる抗血管新生アミノ酸配列を本発明に含むものとする。そのような配列の例としては、以下のものがが含まれるがそれらに限定されない:
(1) メタロプロテイナーゼの組織阻害剤
メタロプロテイナーゼ(TIMP)の組織阻害剤は、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)の天然阻害剤である普遍的タンパク質のファミリーを代表する。マトリックスメタロプロテイナーゼは、結合組織マトリックスのリモデリング、および腫瘍浸潤、血管形成、および転移の必須工程である細胞外マトリックス(ECM)の劣化に関与する亜鉛結合エンドペプチダーゼのグループである。マトリックスメタロプロテイナーゼは、それぞれ、細胞外マトリックス内で異なる基質特異性を有し、その劣化は重要である。ヒトの乳房病理のマトリックスメタロプロテイナーゼの分析により、いくつかのマトリックスメタロプロテイナーゼが細胞外マトリックスの劣化に関与していること:コラゲナーゼ(MMP1)が線維状間質コラーゲンを劣化すること;ゼラチナーゼ(MMP2)が主にタイプIVコラーゲンを劣化すること;およびストロメライシン(MMP3)がより広範な作用を有することが示されている。
【0130】
TIMPファミリーのメンバーは4つ存在する。TIMP−1およびTIMP−2は、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害活性と関連する腫瘍増殖、浸潤、および転移を阻害することが可能である。さらに、TIMP−1およびTIMP−2はともに、血管形成の阻害に関与する。TIMPファミリーの他のメンバーと異なり、TIMP−3は、ECMのみに見られ、末端分化のマーカーとして機能し得る。最後に、TIMP−4は、細胞外マトリックス止血において組織特異的に機能すると考えられている(Gomezら,1997)。
【0131】
メタロプロテイナーゼ−1(TIMP−1)の組織阻害剤は、メタロプロテイナーゼ阻害剤1、線維芽細胞コラゲナーゼ阻害剤、コラゲナーゼ阻害剤および赤血球増強活性(EPA)としても知られる23kDのタンパク質である。遺伝子コードTIMP−1は、Dochertyら(1985)に記載されている。TIMP−1は、メタロプロテイナーゼ(コラゲナーゼ等)と合成し、不可逆的不活性化を生じる。TIMP−1の効果については、トランスジェニックマウスモデルで調べられている:1つのモデルでは肝臓においてTIMP−1を過剰発現する、他のモデルではウイルスの癌遺伝子であるシミアンウイルス40/T抗原(TAg)を発現することにより肝細胞癌の遺伝的進行を生じる。TIMP−1株とTAgトランスジェニック株を交配するダブルトランスジェニック実験では、肝臓TIMP−1の過剰発現が増殖および血管形成を阻害することによりTAg誘導された肝細胞癌の進行を妨げると報告されている(Martinら,1996)。
【0132】
メタロプロテイナーゼ−2(TIMP−2)の組織阻害剤は、メタロプロテイナーゼ阻害剤2としても知られる24kDのタンパク質である。遺伝子コードTIMP−2は、Stetler−Stevensonら(1990)により記載されている。腫瘍浸潤において重要な役割を果たすメタロプロテイナーゼ(MMP2)は、合成され、TIMP−2により阻害される。よって、TIMP−2は、癌転移の阻害に有用である(Mussoら,1997)。浸潤性が高い転移性細胞株であるB16F10マウス黒色腫細胞が、ヒトTIMP−2のプラスミドコードでトランスフェクトされ、マウスに皮下注射されると、TIMP−2の過剰発現により腫瘍増殖およびインビボ新生血管形成が制限される(Valenteら,1998)。
【0133】
メタロプロテイナーゼ−3(TIMP−3)の組織阻害剤は、メタロプロテイナーゼ阻害剤3としても知られる。乳癌および悪性黒色腫細胞株がTIMP−3プラスミドでトランスフェクトされ、ヌードマウスに皮下注射されると、腫瘍増殖の抑制が観察された(Anand−Apteら,1996)。しかしながら、TIMP−3の過剰発現は、インビトロでの2つの腫瘍細胞株の増殖に対する効果はなかった。よって、腫瘍細胞により隣接する細胞外マトリックスに放出されたTIMP−3が、細胞外マトリックスに隔離された増殖因子の放出を抑制することにより、または阻害血管形成により腫瘍増殖を阻害したことが示唆された(Anand−Apteら,1996)。
【0134】
メタロプロテイナーゼ−4(TIMP−4)の組織阻害剤は、メタロプロテイナーゼ阻害剤4としても知られる。TIMP− 遺伝子および組織局在がGreeneら(1996)により記載されている。生化学的研究により、TIMP−4がTIMP−2と同様のヒトゼラチナーゼAに結合することが示されている(Biggら,1997)。インビボでのヒト乳癌増殖に対するTIMP−4の調節効果がWangら(1997)により調べられている。TIMP−4の過剰発現は、インビトロ細胞浸潤を阻害することが分かり、インビボでTIMP−4腫瘍細胞トランスフェクタントをヌードマウスに注射した後、腫瘍増殖が大きく低減された(Wangら,1997)。
【0135】
(2) エンドスタチン、アンギオスタチン、PEX、Kringle−5
Boehmら(1997)は、ルイス肺癌のマウスをエンドスタチンおよびアンギオスタチンタンパク質を組み合わせて治療することにより腫瘍の完全退縮が誘導されたこと、およびマウスが生涯健康を保ったことを示した。この効果が得られたのはエンドスタチンおよびアンギオスタチンによる治療のわずか一周期(25日間)後であったが、エンドスタチンのみの場合には腫瘍の休眠を誘導に6周期かかった。
【0136】
Bergersら(1999)は、膵島細胞癌のマウスモデルにおいてエンドスタチンおよびアンギオスタチンタンパク質の組み合わせのより優れた抗腫瘍効果を示した。エンドスタチンおよびアンギオスタチンの組み合わせた結果、腫瘍が大きく退縮したが、エンドスタチンまたはアンギオスタチンのみでは効果がなかった。
【0137】
(3) エンドスタチンXVIII
血管内皮腫により産生される血管形成阻害剤であるエンドスタチンは、元々O’Reillyら(1997)により同定された。エンドスタチンは、内皮増殖を特異的に阻害し、血管形成および腫瘍増殖を強力に阻害するコラーゲンXVIIIの20kDのC−末端フラグメントである。実際、一次腫瘍が組み換えエンドスタチンの投与後に休眠顕微鏡的病変に退縮することが示されている(O’Reillyら,1997)。エンドスタチンは、増殖因子シグナルに関与するヘパリン硫酸プロテオグリカンに結合することにより血管形成を阻害することが報告されている(Zetter,1998)。
【0138】
(4) エンドスタチンXV
最近、コラーゲンXV(エンドスタチンXV)のC−末端フラグメントが、エンドスタチンXVIIIと同様に血管形成を阻害するがいくつかの機能が異なることが示された(Sasakiら,2000)。
【0139】
(5) アンギオスタチン
最初の4つのクリングル構造を含むプラスミノーゲンの内部フラグメントであるアンギオスタチンは、今日までに記載された最も強力な内因性血管形成阻害剤の1つである。アンギオスタチンの全身投与により、インビボ悪性神経膠腫増殖が効果的に抑制されることが示されている(Kirschら,1998)。アンギオスタチンはまた、従来の放射線療法と組み合わせることにより、インビボの毒性効果を増大させることなく腫瘍根絶を増加させてきた(Mauceriら,1998)。他の研究により、アンギオスタチンcDNAのレトロウイルスおよびアデノウイルス調節遺伝子導入の結果、インビトロ内皮細胞増殖、およびインビボ血管形成が阻害されることが示されている。腫瘍−誘導血管形成の阻害により、腫瘍細胞死が増加した(Tanakaら,1998)。マウスアンギオスタチンのcDNAコードをマウスT241線維肉腫細胞に遺伝子導入することによりインビボでの一次および転移性腫瘍増殖が抑制されることが示されている(Caoら,1998)。
【0140】
(6) PEX
PEXは、MMP−2のインテグリンαvβ3への結合を阻害し、血管形成および腫瘍増殖に必要な細胞表面コラーゲン分解活性を妨げるMMP−2のC−末端ヘモペキシンドメインである。これはクローニングされBrooksら(1998)により記載されている。
【0141】
(7) クリングル−5
アンギオスタチンの4つのクリングルと高い配列相同性を有するヒトプラスミノーゲンのクリングル−5ドメインは、内皮細胞増殖の特異的阻害剤であることが示されている。クリングル−5は、塩基性線維芽細胞増殖因子の刺激による毛細管内皮細胞増殖の阻害に関してアンギオスタチンより強力であると思われる(Caoら,1997)。その抗増殖特性に加えて、クリングル−5はまた、選択的に内皮細胞に影響するアンギオスタチンと同様の抗移動活性も示す(Jiら,1998)。
【0142】
(8) ケモカイン
ケモカインは、白血球走化性を誘導することが可能な低分子量炎症性サイトカインである。考慮したケモカインに応じて、化学的誘引は、特定の白血球細胞型に特異的である。さらに、それらの遊走能に加えて、抗血管新生活性を有する、すなわち、腫瘍に栄養を気要求する血管の形成を阻害するケモカインもある。このため、これらのケモカインは、癌治療に有用である。
【0143】
(9) インターフェロン−ガンマ(MIG)により誘導されたモノカイン
インターフェロン−ガンマにより誘導されたモノカインであるMIGは、IP−10に関連し、単球により産生されるCXCケモカインである。MIGは、活性化T細胞の化学誘引物質であり、強力な血管新生抑制特性も有する。MIGの腫瘍内注射は腫瘍壊死を誘導した(Sgadariら,1997)。
【0144】
(10) インターフェロン−アルファ誘導タンパク質10(IP−10)
インターフェロン−アルファ誘導タンパク質10であるIP−10は、CXCケモカインファミリーのメンバーである。IP−10は、主に単球によって産生されるが、T細胞、線維芽細胞、および内皮細胞によっても産生される。IP−10は、T細胞、単球、およびNK細胞等のリンパ球様細胞に遊走能を発揮する。IP−10はまた、血管形成の強力な阻害剤である。これは、内皮細胞分化を抑制することにより新血管形成を阻害する。その免疫細胞に対する遊走能により、IP−10は、抗腫瘍免疫応答を向上するためにふさわしいと考えられた。IP−10を腫瘍細胞に遺伝子導入することにより、それらの腫瘍原生が低減し、長期的な防御免疫応答を引き出した(LusterおよびLeder,1993)。IP−10の血管新生抑制活性はまた、腫瘍退縮を調節することも示された。IP−10を発現する腫瘍細胞は、インビボで壊死した(Sgadariら,1996)。IP−10はまた、腫瘍退縮に導くIL−12の血管新生抑制効果を調節することも示された(Tannenbaumら,1998)。
【0145】
(11) VEGF受容体
FLT−1(fms様チロシンキナーゼ1受容体)は、VEGF(VEGF受容体1)の膜結合受容体である。これは、FLT−1(sFLT−1)の可溶性フラグメントがそのVEGFに対する拮抗剤活性により血管新生抑制特性を有することが示されている。可溶性FLT−1は、VEGFに結合することにより作用するが、なぜならこれはまた、膜結合FLT−1の外部ドメインを結合して塞ぐ。sFLT−1の一例としては、FLT−1の外側部分の7つの免疫グロブリン様ドメインに渡るヒトsFLT−1がある。
【0146】
(12)sFLK−1/KDR
FLK−1またはKDR(キナーゼ挿入ドメイン受容体)は、VEGF(VEGF受容体2)の膜結合受容体である。KDR(sKDR)の可溶性フラグメントがそのVEGFに対する拮抗剤活性により血管新生抑制特性を有することが示されている。sKDRはまた、膜結合KDRの外部ドメインを結合して塞ぐ。sKDRの一例としては、KDRの外側部分の7つの免疫グロブリン様ドメインを渡るヒトsKDRがある。
【0147】
5. 他の組織−標的部分
本発明のある実施形態では、上記ポリペプチドは、上記血管内皮細胞標的アミノ酸配列以外に1つ以上のさらなる組織標的部分を含む。この1つ以上のさらなる組織標的部分は、組換え技術により発現しても、上記血管内皮細胞標的アミノ酸配列および細胞毒性アミノ酸配列を含むポリペプチドと化学的に接合してもよい。
【0148】
「組織−標的部分」は、本明細書中では、組織に結合または付着可能な分子の一部を意味するものと定義される。この結合は、当業者に公知のいずれの結合メカニズムによるものであってもよい。例としては、代謝拮抗物質、アポトーシス剤、生体還元剤、シグナル伝達性治療薬、受容体反応性剤、または細胞周期特異的薬物が挙げられる。この組織は、細胞等のいずれの種類の組織であってもよい。例えば、この細胞は、眼に特異的な癌細胞またはA細胞型等の被験体の細胞であってもよい。
【0149】
いくつかの実施形態では、上記組織−標的部分は、「標的リガンド」である。「標的リガンド」は、本明細書中では、分子または特異的に他の分子に結合する分子の一部と定義される。本発明の文脈において標的リガンドとして用いることが可能な薬は当業者には多く知られている。
【0150】
標的リガンドの例としては、疾患細胞周期標的化合物、腫瘍血管形成標的リガンド、腫瘍アポトーシス標的リガンド、疾患受容体標的リガンド、薬物ベースのリガンド、抗菌剤、腫瘍低酸素症標的リガンド、グルコースを模倣する薬剤、アミホスチン、アンギオスタチン、EGF受容体リガンド、カペシタビン、COX−2阻害剤、デオキシシチジン、フラーレン、ハーセプチン、ヒト血清アルブミン、ラクトース、黄体形成ホルモン、ピリドキサール、キナゾリン、サリドマイド、トランスフェリン、およびトリメチルリシンが挙げられる。
【0151】
本発明のさらなる実施形態では、上記組織−標的部分は抗体である。本発明の文脈において組織−標的部分としては、あらゆる抗体が企図される。例えば、上記抗体は、モノクローナル抗体であってもよい。モノクローナル抗体、モノクローナル抗体の調製方法、およびモノクローナル抗体をリガンドとして使用する方法は、当業者にはよく知られている。本発明のある実施形態では、上記モノクローナル抗体は、腫瘍マーカーに対する抗体である。いくつかの実施形態では、上記モノクローナル抗体は、モノクローナル抗体C225、モノクローナル抗体CD31、またはモノクローナル抗体CD40である。
【0152】
単一の組織−標的部分、または1つ以上のそのような組織−標的部分を本発明のポリペプチドに結合してもよい。これらの実施形態では、任意の数の組織−標的部分を本明細書中に記載のポリペプチドに結合してもよい。よって、1つ以上の組織標的部分が本発明のポリペプチドに付着していてもよい。上記組織−標的部分は、任意の方法でポリペプチドに結合することができる。例えば、上記組織−標的部分をアミド結合またはエステル結合でポリペプチドに結合してもよい。これらの薬の化学的性質、およびこれらの薬を本願発明のポリペプチドの一部として組み込む方法は、当業者にはよく知られている。本発明の化合物の合成方法については下記で詳述する。
【0153】
組織標的部分およびこれらの部分のポリペプチドに対する接合に関する情報は、それぞれ本明細書中において参考として明確に援用する米国特許第6,692,724号、米国特許出願シリアルナンバー第09/599,152号、同第10/627,763号、同第10/672,142号、同第10/703,405号、同第10/732,919号において提供されている。
【0154】
B. 眼疾患
本発明は、被験体の眼疾患を処置または予防する方法であって、血管内皮標的化アミノ酸配列および細胞毒性アミノ酸配列を有するポリペプチドを含む医薬組成物を被験体に治療有効量で投与する方法に関する。上記被験体は、哺乳動物等のあらゆる被験体とすることができる。哺乳動物は、ヒト、ウマ、イヌ、およびネコを含むがこれらに限定されない。上記被験体はまた、鳥類等の哺乳動物以外のものであってもよい。ある特定の実施形態では、上記被験体はヒトである。
【0155】
被験体を悩ませるあらゆる眼疾患が本発明によって企図される。ある特定の実施形態では、上記眼疾患は、新血管形成と関連する疾患である。例えば、上記新血管形成は、角膜血管新生、網膜新生血管、脈絡膜血管新生、または虹彩新生血管であってもよい。
【0156】
本発明の方法による予防または処置が企図される疾患の例としては、加脈絡膜血管新生と関連する齢性黄斑変性症、増殖性糖尿病網膜症(網膜、前網膜、または虹彩新生血管と関連する糖尿病性網膜症)、増殖性硝子体網膜症、未熟児網膜症、または網膜静脈分枝閉塞症、網膜中心静脈閉塞症、網膜動脈分枝閉塞、または網膜中心動脈閉塞等の医療化学と関連する状態が挙げられる。上記眼疾患はまた、HIV網膜症、トキソカラ症、トキソプラズマ症、眼内炎等の感染性眼疾患であってもよい。炎症と関連するあらゆる眼疾患も本発明の方法を用いた処置に関して企図される。炎症性眼疾患の例としては、ブドウ膜炎、眼内炎、眼外傷、眼科手術等が含まれるがそれらに限定されない。
【0157】
他の実施形態では、新血管形成は、腫瘍新血管形成である。上記腫瘍は、良性腫瘍であっても悪性腫瘍であってもよい。良性腫瘍の例としては、過誤腫および神経線維腫が挙げられる。悪性腫瘍の例としては、脈絡膜メラノーマ、ぶどう膜メラノーマまたは虹彩、毛様体のぶどう膜メラノーマ、網膜芽腫、または転移性疾患(例えば、脈絡膜転移)が挙げられる。
【0158】
上記新血管形成はまた、眼の傷と関連する新血管形成であってもよい。例えば、上記傷は、角膜裂傷等の眼球に対する外傷によるものであってもよい。代替的に、上記傷は、眼科手術によるものであってもよい。いくつかの実施形態では、本発明の方法を適用して、硝子体網膜手術後の増殖性硝子体網膜症の予防またはその危険性の低減、角膜手術(角膜移植およびエキシマレーザー手術等)後の角膜の濁りの予防、線維柱帯切除術の閉鎖の予防、翼状片再発の予防または実質的な遅延等を行なってもよい。
【0159】
上記新血管形成は、被験体の眼の上またはその内部に配置されてもよい。例えば、上記新血管形成は、角膜血管新生(角膜上皮上または角膜の内皮表面上に配置される)、虹彩新生血管、硝子体眼房内の新血管形成、網膜新生血管形成、または脈絡膜血管新生であってもよい。上記新血管形成はまた、結膜疾患と関連する新血管形成であってもよい。
【0160】
上記被験体は、活性眼疾患の被験体だけでなく、眼疾患を患う危険がある被験体であってもよい。例えば、上記被験体は、特定の眼疾患を患う遺伝性要因を有していてもよい。代替的には、上記被験体は、一方の眼に影響するが、他方の眼には影響しない眼疾患を有する被験体であってもよい。
【0161】
C. 医薬組成物および治療薬
1. 機能活性の検証
一旦キメラポリペプチドが合成されると、その同一性および機能活性は、当該分野で周知の方法により容易に判断することができる。例えば、上記キメラポリペプチドの2つのアミノ酸配列の抗体を用いてタンパク質をウエスタンブロット分析で同定してもよい。また、結合アッセイにおいて、蛍光標識したまたは放射性標識した二次抗体を用いて上記キメラポリペプチドを標的細胞との特異的結合に関してテストしてもよい。
【0162】
2. 治療有効量
本発明の医薬組成物は、本明細書中において記載するような治療有効量のキメラポリペプチドを含む。「医薬組成物」という用語は、例えば、ヒト等の被験体に投与されると、許容されない、逆に作用する、アレルギー性のまたは他の有害反応を生じない組成物を意味する。VEGF−ゲロニン融合物の特異性が示されている。例えば、本明細書中において援用しその全てを参考として明確に援用する米国特許第20050037967号および同第20040248805号を参照されたい。
【0163】
本発明の組成物を送達することにより、細胞の不要な増殖を遅延させたり、停止させることによって、上記疾患を改善または予防してもよい。本明細書中において利用される方法は、詳細には、血管内皮細胞の増殖を標的として、それを終了または停止させる。この処置は、温血動物:ヒト、ウマ、イヌ、およびネコを含むがこれらに限定されない哺乳動物、および鳥類等の哺乳動物以外の動物に適している。
【0164】
本明細書中に記載するような治療有効量の1つ以上のキメラポリペプチドは、被験体の眼疾患の処置または予防のために被験体に投与される。「治療有効量」という用語は、本明細書中では、眼疾患の悪影響を処置、予防、除去、減少、遅延、または最小化する本発明のキメラポリペプチドの量として定義される。処置が企図される眼疾患は、本明細書中において上述している。当業者は、多くの場合、上記キメラポリペプチドが治癒させることはなく、部分的に有益であることを容易に認識する。いくつかの実施形態では、なんらかの有益性を有する生理学的変化も治療に有益であると見なす。よって、いくつかの実施形態では、生理学的変化をもたらすキメラポリペプチドの量を「効果的な量」または「治療有効量」と見なす。治療有効量は、1回の投与量で投与されても、投薬計画に従って一定の期間に1回以上投与されてもよい。所望の効果を得るために繰り返し投与することが必要とされることもある。
【0165】
治療効果のある濃度および量は、上記キメラポリペプチドを本明細書中に記載するような公知のインビトロおよびインビボ系でテストすることにより
経験的に判断されてもよく;そして、ヒトまたは他の動物の投与量をそこから推定してもよい。
【0166】
本明細書中において参考として援用するRemington’s Pharmaceutical Sciences,18th ED.Mack Printing Company,1990など、本開示に照らすことにより、当業者には、治療効果のあるまたは診断上効果的な組成物の調製が理解される。さらに、動物(例えば、ヒト)への投与については、調製がFDA Office of Biological Standardsにより要求される滅菌性、発熱性、一般的安全性および清潔性基準を満たす必要があることは言うまでもない。
【0167】
3. 調剤
本明細書中に記載の医薬組成物は、従来の混合、溶解、造粒、糖剤製造、粉砕、乳化、カプセル化、封入または凍結乾燥処理によって製造してもよい。医薬組成物は、当業者に公知の任意の方法で調剤してもよい。それらは、タンパク質を医薬として用いることができる製剤に処理することを容易にする1つ以上の生理学的に許容可能な担体、希釈剤、賦形剤または助剤を用いる任意の方法で調剤してもよい。適切な調剤は、選択された投与経路に依存する。
【0168】
本明細書中において提供される組成物の投与に適した医薬担体または媒介物は、当業者に公知の特定の投与方式に適したあらゆる担体を含む。担体の例としては、当業者に公知の溶剤、分散媒、被覆剤、表面活性剤、抗酸化防止剤、防腐剤(例えば、抗菌剤、抗真菌薬)、等張剤、吸収遅延剤、塩類、防腐剤、薬物、薬物安定剤、ゲル、結合剤、賦形剤、崩壊剤、潤滑剤、甘味剤、香料添加剤、染料、同様の物質、およびそれらの組み合わせが挙げられる。従来の担体が活性成分と適合しない場合を除いて、本組成物での使用が企図される。
【0169】
いくつかの実施形態では、上記組成物は、1つ以上の成分の酸化を遅らせる各種抗酸化防止剤を含む。さらに、パラベン(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン)、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールまたはそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない各種抗菌剤および抗真菌薬等の防腐剤により微生物作用の予防を行なうことができる。
【0170】
本発明の治療組成物は、遊離塩基、遊離酸、中性または塩類の形態で調剤してもよい。医薬として許容可能な塩類は、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムまたは水酸化鉄;またはイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジンまたはプロカイン等の有機塩基無機塩基由来の遊離カルボキシル基を用いて形成した塩類を含む。
【0171】
担体は、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール等)、脂質(例えば、トリグリセリド、植物油、リボソーム)およびそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない溶剤または分散媒とすることができる。適切な流動性は、例えば、レシチン等の被覆剤を使用することによって;例えば、液体ポリオールまたは脂質等の担体での分散による必要な粒径の維持によって;例えば、ヒドロキシプロピルセルロース等の表面活性剤の使用によって;またはそれらの組み合わせそのような方法によって維持することが出来る。多くの場合、例えば、糖類、塩化ナトリウムまたはそれらの組み合わせ等の等張剤を含むことが好ましい。
【0172】
非経口、眼内、硝子体内、皮内、皮下、または局所使用に用いられる溶液または懸濁液は、以下の成分のいずれかを含むようにすることができる:注射用蒸留水、食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成された溶剤等の滅菌希釈剤;ベンジルアルコールおよびメチルパラベン等の抗菌剤;アスコルビン酸および亜硫酸水素ナトリウム等の抗酸化防止剤;エチレンジアミン4酢酸(EDTA)等のキレート剤;アセテート、クエン酸塩およびリン酸塩等の緩衝剤;および塩化ナトリウムまたはデキストロース等の毒性調整のための薬剤。非経口製剤(parental preparations)は、アンプル、使い捨て注射器、またはガラス、プラスティックまたは他の適切な材料からできた多人数用バイアルに封入することができる。
【0173】
静脈または眼内投与される場合、適切な担体は、生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、ならびにグルコース、ポリエチレングリコール、およびポリプロピレングリコールおよびそれらの混合物等の増粘剤および可溶化剤を含有する溶液を含む。
【0174】
滅菌注射剤は、治療薬を必要に応じて必先に列挙した各種量の他の成分とともに要な量の適切な溶剤に取り込んだ後フィルターにかけて滅菌することにより調製される。一般に、分散物は、各種滅菌活性成分を、塩基性分散媒および/または他の成分を含有する滅菌媒介物に取り込むことにより調製される。滅菌注射剤、懸濁液または乳剤の調製用滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、活性成分および予めフィルタ滅菌済の液体培地からのさらなる所望の成分を含む粉末を生産する真空乾燥または凍結乾燥技術である。この液体培地は、必要であれば、適切に緩衝化され、十分な生理食塩水またはグルコースの注射の前に液体希釈剤を最初に等張にする。直接注射する高濃度組成物の調製も企図され、DMSOを溶剤として用いることにより、非常に透過が早くなり、高濃度の活性剤を小さな領域に送達することが想定される。
【0175】
いくつかの実施形態では、上記活性剤は、媒介物と組み合わされる固体または粉末として調剤される。活性剤と媒介物の混合または添加時に、その結果得られた混合物は、溶液、懸濁液、乳剤等であってもよい。結果得られる混合物の形態は、意図する投与方式および選択された担体または媒介物における複合体の溶解性を含む多数の要因に依存する。効果的な濃度は、処置した疾患、障害または病気の症状の改善に十分なものであり、腫瘍のマウス異種移植モデルまたはウサギ眼科用モデルからのデータ等のインビトロおよび/またはインビボデータに基づいて経験的に判断されてもよい。必要であれば、医薬として許容可能な塩類または上記複合体の他の誘導体および錯体を調製してもよい。
【0176】
活性物質を所望の作用を損なわない他の活性物質または所望の作用を補う物質と混合することもでき、それら物質はHEALON(高分子量フラクション(約3百万のMW)のナトリウムヒアルロン酸塩溶液;Pharmacia,Inc.製、例えば、米国特許第5,292,362号、同第5,282,851号、同第5,273,056号、同第5,229,127号、同第4,517,295号、および同第4,328,803号参照)、VISCOAT(1H,1H,2H,2H−ヘプタ−デカフルオ−ロデシルメタクリラート等のフッ素含有(メタ)アクリラート;例えば、米国特許第5,278,126号、同第5,273,751号、および同第5,214,080号参照;Alcon Surgical,Inc.から市販されている)、ORCOLON(例えば、米国特許第5,273,056号参照;Optical Radiation Corporationから市販されている)、メチルセルロース、メチルヒアルロン酸塩、ポリアクリルアミド、およびポリメタクリルアミド(例えば、米国特許第5,273,751号参照)という商標で販売されるヒアルロン酸等の粘弾性物質を含む。粘弾性物質は、一般に、複合体物質の重量の約0.5〜5.0%、好ましくは、1〜3%の量で存在し、処置された組織を被覆および保護する作用をする。上記組成物はまた、メチレンブルー等の染料または他の不活性な染料を含み、眼に注射したり、または手術中に外科的部位と接触した際に見えるようにしてもよい。
【0177】
本発明の治療薬は、持続放出調剤または被覆剤等、急速に劣化しないよう、または体内から取り除かれないように保護する担体を用いて調製してもよい。このような担体は、インプラントおよびマイクロカプセル化送達系等の制御放出調剤、およびエチレン酢酸ビニール、ポリ無水物、ポリグリコール酸、ポリオルトエステル、ポリ乳酸等の生体分解性、生体適合性ポリマーを含むがこれらに限定されない。例えば、上記組成物は、市販の手術用スポンジ(例えば、米国特許第3,956,044号および同第4,045,238号参照;Weck、Alcon、and Mentorから入手可能)等、予め組成物に浸されており、眼と接触した際に組成物を放出するスポンジを用いて手術時に使用されてもよい。これらは、1回の投与のみが可能な手術後または手術中に眼病の徴候を示すために眼への使用に特に有用である。上記組成物はまた、手術中に眼に移植可能なペレット(Elvaxペレット(エチレン酢酸ビニールコポリマー樹脂等);1mgの樹脂につき約1〜5μgの複合体)で使用してもよい。
【0178】
好ましくは、投与されるキメラポリペプチドは、実質的に純粋である。本明細書中において用いる、「実質的に純粋」とは、当業者が純度を評価するために用いる薄層クロマトグラフィー(TLC)、ゲル電気泳動、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)等の標準的な分析方法で判断した際に容易に検出可能な不純物がない程度に十分に均質、またはさらなる精製によって、酵素および生物学的活性等の物質の物理的および化学的特性が検出可能な程度に変更されないように十分に純粋であることを意味する。実質的に化学的に純粋なポリペプチドを産生するためのポリペプチド精製方法は、当業者には公知であり、上記でより詳細に取り上げられている。実質的に化学的に純粋な化合物は、しかしながら、立体異性体の混合物であってもよい。そのような場合、さらなる精製によりポリペプチドの特異的活性が増加することがある。
【0179】
本発明の治療薬は、当業者に公知の任意の方法によって投与することができる。上記治療薬は、局所的、局部的、静脈内および全身的使用に適した医薬組成物に調剤されてもよい。ある特定の実施形態では、上記治療薬は、眼内投与される。例えば、硝子体内注射、経中隔注射、結膜下注射、または前房内注射とすることができる。他の投与経路は、眼周囲投与および局所投与を含む。特定の他の実施形態では、静脈注射、皮内注射、動脈内注射、病巣内注射、頭蓋内注射、局所注射、腫瘍内注射、皮下注射、結膜下注射、粘膜下注射、鼻腔内注射、または経口注射としてもよい。持続放出調剤も望ましい。
【0180】
上記組成物は、製造および保管条件下で安定し、細菌および菌類等の微生物の汚染作用から守られる必要がある。内毒素汚染は最小限の安全レベル、例えば、0.5ng/mgタンパク質に抑えなければならないことが理解される。
【0181】
特定の実施形態では、例えば、モノステアリン酸アルミニウム、ゼラチン、またはそれらの組み合わせ等、吸収を遅延する薬剤の組成物での使用により、注射可能な組成物の持続的吸収をもたらすことができる。
【0182】
代替的には、他の医薬送達系を用いてもよい。リボソームおよび乳剤は、治療用ポリペプチドを送達するために用いられ得る送達媒介物の周知の例である。これらは、本明細書中において、下記でより詳細に議論される。ジメチルスルホキシド等の特定の有機溶剤も用いてよいが、通常は、より多くの毒性を犠牲にしている。さらに、上記タンパク質は、上記治療薬を含有する固形ポリマーの半透性マトリックス等の持続放出系を用いて送達してもよい。各種持続放出物質が確立されており、当業者には周知である。持続放出カプセルは、それらの化学的性質に応じて、上記タンパク質を2、3週間〜100日間以上放出することがある。上記キメラタンパク質の化学的性質および生物学的安定性に応じて、タンパク質安定化のためのさらなる戦略を用いてもよい。
【0183】
本発明のタンパク質は、荷電した側鎖または末端を含有してもよいため、上述した調剤のいずれかに遊離酸もしくは塩基として、または医薬として許容可能な塩類として含んでもよい。医薬として許容可能な塩類は、遊離塩基の生物活性を実質的に保持し、無機酸との反応により調製される塩類である。治療用塩類は、水性および他のプロトン性溶剤において、対応する遊離塩基形態よりも可溶性である傾向がある。
【0184】
液滴、ゲル、クリーム、およびローションの形態で肌および眼等の粘膜への局所的使用等の局部的または局所的使用のために、キメラポリペプチドも調剤してよい。そのような溶液は、当業者に公知の任意の方法で調剤してもよい。例えば、それらは、適切な塩類を用いて0.01%〜10%等張溶液、pH約5〜7として調剤してもよい。眼組成物はまた、ヒアルロン酸等、さらなる成分を含んでもよい。上記複合体および錯体は、局所的使用のためのエアロゾルとして調剤してもよい(それぞれ本明細書中において参考として明確に援用する米国特許第4,044,126号、同第4,414,209号、および同第4,364,923号を参照されたい)。
【0185】
上記治療薬はまた、所望の作用を損なわない他の活性剤、または新血管形成に対する他の治療薬等、所望の作用を補う他の薬剤と混合することもできる。最後に、上記治療薬は、包装材料を含む製造物として包装されてもよく、当該包装材料内に、本明細書中において提供する1つ以上の治療薬、および提供される治療薬の用途を詳細に示す標識を含めてもよい。
【0186】
4. 効果的な投与量
本発明の被験体に投与する組成物の実際に必要とされる量は、体重、病状の度合い、処置または予防される疾患の種類、以前のまたは併用する治療的介入、患者の特発性疾患、および投与経路等の物理的および生理学的ファクターにより判断することができる。投与を行なう施術者は、いずれの場合も、組成物中の活性成分の濃度、および個々の被験体に適切な投与量を判断する。
【0187】
特定の実施形態では、医薬組成物は、例えば、少なくとも約0.1%のキメラポリペプチドを含んでもよい。他の実施形態では、上記ポリペプチドは、例えば、単位重量約2%〜約75%、または約25%〜約60%で、送達可能な範囲で含んでもよい。他の非限定的な例では、投与量は、約0.1mg/kg/体重〜約1000mg/kg/体重、またはこの範囲内で任意の量、もしくは投与当たり1000mg/kg/体重を超える任意の量で含んでもよく、VEGF/ゲロニン融合物の投与量に関するさらなる情報は、本明細書中においてその全てを参考として明確に援用する米国特許第20050037967号、および同第20040248805号で見つけることができる。
【0188】
本明細書中に記載のキメラポリペプチドは、一般に、意図された目的の達成に効果的な量で用いられる。疾患状態を処置または予防する用途のために、本発明のタンパク質またはその医薬組成物は、治療有効量で投与されるかまたは使用される。治療有効量は、上記症状の改善もしくは予防、または処置されている患者の生存の延長に効果的な量である。治療有効量の判断は、特に本明細書中において提供される詳細な開示に照らして当業者が十分に対応できる範囲内である。
【0189】
全身投与について、治療効果のある投与量は、インビトロアッセイから最初に見積もることができる。初期の投与量も、当該分野で周知の技術を用いてインビボデータ(例えば、動物モデル)から見積もることができる。当業者は、動物データに基づいてヒトへの投与を容易に最適化することができる。
【0190】
D. 組み合わせ処置/癌治療
本発明のキメラポリペプチドまたはその発現物コードの効果を増大するために、これらの組成物と眼疾患の処置において効果的な他の薬剤とを組み合わせることが望ましい場合がある。例えば、本発明のキメラポリペプチドは、眼の新血管形成の他の処置に関連して投与することができる。新血管形成が二次加齢性黄斑変性症である場合、例えば、上記他の処置は、レーザー光凝固術、栄養療法、または加齢性黄斑変性症についての任意の他の形態の療法であってもよい。眼疾患が眼の黒色腫、転移腫瘍、または網膜芽腫等の癌である場合、例えば、上記他の形態の療法は、抗癌治療であってもよい。
【0191】
「抗癌」剤は、例えば、癌細胞を死滅させること、癌細胞にアポトーシスを誘導すること、癌細胞の増殖率を低減すること、転移発生率または転移数を低減すること、腫瘍のサイズを小さくすること、腫瘍増殖を阻害すること、腫瘍または癌細胞への血液供給を低減すること、癌細胞または腫瘍に対する免疫応答を促進すること、癌の進行を予防もしくは阻害すること、または癌の被験体の寿命を延ばすことにより、被験体の癌に悪影響を与える可能性がある。より一般的には、これら他の組成物は、細胞の増殖をなくすまたは阻害することに効果的な総量で提供される。
【0192】
化学療法および放射線療法薬剤に耐性を有する腫瘍細胞は臨床腫瘍学の大きな問題である。現在の癌リサーチの1つの目標は、遺伝子療法と組み合わせることによって、化学療法および放射線療法の有効性を改善する方法を見つけることである。例えば、単純ヘルペス−チミジンキナーゼ(HS−tK)遺伝子は、レトロウイルスベクター系により脳腫瘍に送達されると、抗ウイルス薬剤ガンシクロビルの感受性の誘導に成功した(Culverら,1992)。本発明の文脈では、他のプロアポトーシスまたは細胞周期調節剤の他に、キメラポリペプチドが同様に化学治療、放射線治療、遺伝子療法、または免疫治療介入に使用可能であるものとする。
【0193】
代替的には、上記療法は、数分から数週間の間隔で、他の薬剤による処置の前または後に行なってもよい。上記他の薬剤および発現物が細胞個々に使用される実施形態では、一般に、上記薬剤および発現物が、なおも有利に組み合わされた効果を細胞に及ぼすことができるように、各送達の時間の間隔が長時間あかないようにしている。そのような場合、両方の様式で、相互に約12〜24時間以内、より好ましくは、相互に約6〜12間以内に細胞と接触することが企図される。いくつかの状況では、処置時間を大きく延長することが望ましいが、ここでは、各投与の間に数日(2、3、4、5、6または7)から数週(1、2、3、4、5、6、7または8)が経過する。
【0194】
各種組み合わせを用いてもよく、キメラポリペプチド療法は「A」であり、補助的な薬剤は「B」である:
A/B/A B/A/B B/B/A A/A/B A/B/B B/A/A A/B/B/B B/A/B/B B/B/B/A B/B/A/B A/A/B/B A/B/A/B A/B/B/A B/B/A/A B/A/B/A B/A/A/B A/A/A/B B/A/A/A A/B/A/A A/A/B/A
本発明の治療用キメラポリペプチドの被験体への投与は、もしある場合にはキメラポリヌクレオチドの毒性を考慮して、治療薬の投与に関する一般手順に従う。処置周期が必要に応じて繰り返されることが予期される。また、各種標準的な療法を上述したキメラポリペプチドと組み合わせて用いることも企図される。
【0195】
1. 化学療法
癌治療はまた、化学療法および放射線療法に基づく処置の両方と組み合わせた各種療法も含む。組み合わせ化学療法は、例えば、シスプラチン(CDDP)、カルボプラチン、プロカルバジン、メクロレタミン、シクロフォスファミド、カンプトセシン、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、ニトロソウレア、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリコマイシン、マイトマイシン、エトポシド(VP16)、タキモシフェン、ラロキシフェン、エストロゲン受容体結合剤、タクソール、ジェムシタビン、ナベルビン、ファルネシル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、トランスプラチナ、5−フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチンおよびメトレキサート、またはそれらの任意の類似体もしくは誘導体変異体を含む。
【0196】
2. 放射線療法
広範に使用されてきたDNA損傷を生じる他のファクターは、一般にガンマ線として知られるもの、X線、および/または放射性同位体の腫瘍細胞への直接送達を含む。マイクロ波および紫外線照射等、他の形態のDNA損傷ファクターも企図される。これらのファクターの全てがDNA、DNA前駆体、DNAの複製および修復、ならびに染色体の集合および維持に広範な損傷を与えるという見方が有力である。X線についての投与量の範囲は、長期的には(3〜4週)50〜200レントゲンの日用量から、1回の用量では2000〜6000レントゲンまでの範囲である。放射性同位体についての投与量の範囲は広範であり、同位体の半減期、放出された放射線の強度および種類、ならびに新生細胞の取り込みに依存する。
【0197】
細胞に関して用いられる「接触した」および「曝露した」という用語は、本明細書中においては、治療用構造物および化学治療剤もしくは放射線治療剤を標的細胞に送達するか、または標的細胞と直接的に並べて配置する過程を説明するために用いられる。細胞の死滅または停滞を達成するために、両方の薬剤を細胞の死滅またはその分割を防ぐために効果的な総量で細胞に送達する。
【0198】
3. 免疫療法
免疫治療剤は、一般的に、癌細胞を標的とし、破壊するために、免疫エフェクター細胞および分子の使用に依存する。この免疫エフェクターは、例えば、腫瘍細胞の表面上のなんらかのマーカー特異的な抗体であってもよい。上記抗体は、それだけで、療法のエフェクターとして作用するか、または他の細胞を動員して実際に細胞を死滅させてもよい。抗体はまた、薬物または毒素(化学治療剤、放射性核種、リシンA鎖、コレラ毒素、百日咳毒素等)と接合させ、単に標的薬剤として作用してもよい。選択的には、上記エフェクターは、直接または間接的に腫瘍細胞標的と相互作用する表面分子を搬送するリンパ球であってもよい。各種エフェクター細胞は、細胞毒性T細胞およびNK細胞を含む。
【0199】
よって、免疫療法は、遺伝子療法とともに、組み合わせ療法の一部として用いることができる。組み合わせ療法の一般的なアプローチは、下記で議論する。一般に、腫瘍細胞は、ターゲッティングに適した、すなわち、他の細胞の大半には存在しないなんらかのマーカーを有する必要がある。腫瘍マーカーは多数存在し、これらのうちのいずれかは、本発明の文脈においてターゲッティングに適していればよい。一般的な腫瘍マーカーは、癌胎児性抗原、前立腺特異的抗原、泌尿器腫瘍と関連する抗原、胎児性抗原、チロシナーゼ(p97)、gp68、TAG−72、HMFG、シアリルルイス抗原、MucA、MucB、PLAP、エストロゲン受容体、ラミニン受容体、erb Bおよびp155を含む。
【0200】
4. 遺伝子
さらに他の実施形態では、二次的処置は、治療用ポリヌクレオチドが、本発明のキメラポリペプチドの前に、後に、または同時に投与される遺伝子療法である。以下の遺伝子産物をコードする第2のベクターのキメラポリペプチドの送達は、標的組織に対する複合的な抗過剰増殖効果を有する。例としては、腫瘍抑圧遺伝子およびプロアポトーシス遺伝子が挙げられる。
【0201】
5. 手術
癌を患う人の概ね60%は、予防的手術、診断的または病気診断的手術、治療手術、および病状緩和のための手術を含むなんらかの手術を受ける。治療手術は、本発明の処置、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、遺伝子療法、免疫療法および/または選択的療法等の他の療法とともに用いられ得る癌処置である。
【0202】
治療手術は、癌組織の全てまたは一部が物理的に除去、切除、および/または破壊される切除術を含む。腫瘍切除術は、腫瘍の少なくとも一部の物理的除去を意味する。腫瘍切除術に加えて、手術による処置は、レーザー手術、凍結手術、電気外科手術、および顕微鏡下手術(miscopically controlled surgery)(モース手術)を含む。本発明を、表在性癌、前癌状態、または僅かな量の正常な組織の除去に用いることがさらに企図される。
【0203】
癌細胞、組織、または腫瘍の一部または全ての切除時に、体内に眼房を形成してもよい。処置は、さらなる抗癌治療を行なう部位の灌流、直接注射または局所的使用により行ってもよい。このような処置は、例えば、1、2、3、4、5、6、もしくは7日毎、または1、2、3、4、および5週毎、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12ヶ月毎繰り返してもよい。これらの処置は、同様に投与量が異なっていてもよい。
【0204】
6. 他の薬剤
他の薬を本発明と組み合わせて用いることにより、処置の治療有効性を改善することが企図される。これらのさらなる薬剤は、免疫調節剤、細胞表面受容体およびギャップ結合を上方調節する薬剤、細胞増殖抑制および分化剤、細胞接着阻害剤、または過剰増殖細胞のアポトーシス誘導物質に対する感受性を増大する薬剤を含む。免疫調節薬は、腫瘍壊死因子;インターフェロンアルファ、ベータ、およびガンマ;IL−2および他のサイトカイン;F42Kおよび他のサイトカイン類似体;またはMIP−1、MIP−1ベータ、MCP−1、RANTES、および他のケモカインを含む。細胞表面受容体またはFas/Fasリガンド、DR4もしくはDR5/TRAIL等のそれらのリガンドの上方調節により、過剰増殖細胞に対する自己分泌またはパラクリン効果を確立して本発明のアポトーシスを誘導する能力を高めることがさらに企図される。ギャップ結合数を増やすことによる増加細胞間シグナルにより、近傍の過剰増殖細胞集団に対する抗過剰増殖効果が増大する。他の実施形態では、細胞増殖抑制または分化剤を本発明と組み合わせて用いることにより、上記処置の抗過剰増殖有効性を改善することができる。細胞接着阻害剤により本発明の有効性を改善することが企図される。細胞接着阻害剤の例としては、焦点接着キナーゼ(FAK)阻害剤、およびロバスタチンがある。抗体C225等の過剰増殖細胞のアポトーシスに対する感受性を高める他の薬を本発明と組み合わせ用いて上記処置の有効性を改善することがさらに企図される。
【0205】
ホルモン療法も本発明とともに、または先に述べた任意の他の癌治療と組み合わせて用いてもよい。乳癌、前立腺癌、卵巣癌、または子宮頸癌等の特定の癌の処置においてホルモンを使用してテストテロンまたはエストロゲン等の特定のホルモンの効果のレベル下げたり、その効果を妨げてもよい。この処置は、治療法の選択肢としてまたは転移の危険性を低減するために、少なくとも1つの他の癌治療と組み合わせて用いる場合が多い。
【0206】
E. 脂質組成物
ある実施形態では、本発明は、少なくとも1つのキメラポリペプチドと関連する1つ以上の脂質を含む新規な組成物を用いる。脂質は、水に溶けないことおよび有機溶剤で抽出可能なことを特徴とする物質である。脂質は、例えば、細胞質に自然発生する脂肪小滴、および当業者に周知のクラスの化合物であって、脂肪酸、アルコール、アミン、アミノアルコール、およびアルデヒド等の長鎖脂肪族炭水化水素およびそれらの誘導体を含有する化合物を含む物質を含む。もちろん、本明細書中において明確に記載する化合物以外で、当業者が脂質であると理解する化合物も本発明の組成物および方法の範囲に含まれる。
【0207】
脂質は、自然発生したものであっても、合成されたもの(すなわち、人よって設計されたか、または産生されたもの)であってもよい。しかしながら、脂質は、通常、生物学的物質である。生物学的脂質は、当該分野で周知であり、例えば、中性脂肪、リン脂質、ホスホグリセリド、ステロイド、テルペン、リソ脂質、スフィンゴ糖脂質、糖脂質、スルファチド、エーテルおよびエステル結合した脂肪酸を有する脂質、ならびに重合性脂質、およびそれらの組み合わせを含む。
【0208】
1. 脂質の種類
A 中性脂肪は、グリセロールおよび脂肪酸を含んでもよい。典型的なグリセロールは、3炭アルコールである。脂肪酸は、一般に、鎖の端部に酸性部分(例えば、カルボン酸)を有する炭素鎖を含む分子である。この炭素鎖は、脂肪酸であり、任意の長さであってもよいが、炭素鎖の長さは、約2〜約30個以上の炭素原子であることが好ましく、その範囲内であればいずれの長さでもよい。しかしながら、脂肪酸の鎖部に約14〜約24個の炭素原子が好ましい範囲であり、特定の実施形態では、約16〜約18個の炭素原子が特に好ましい。ある実施形態では、脂肪酸炭素鎖は、奇数の炭素原子を含むが、ある実施形態では、鎖に偶数の炭素原子を有することが好ましい場合がある。炭素鎖には一重結合しか含まない脂肪酸は、飽和と称される一方、鎖に少なくとも1つの二重結合を含む脂肪酸は、不飽和と称される。
【0209】
特異的脂肪酸は、リノール酸、オレイン酸、パルミチン 酸、リノレン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、アラキン酸、パルミトレイン酸、アラキドン酸、リシノール酸、ツベルクロステアリン酸(tuberculostericacid)、ラクトバシル酸を含むがこれらに限定されない。1つ以上の脂肪酸の酸性基は、グリセロールの1つ以上のヒドロキシル基と共有結合する。よって、モノグリセリドは、グリセロールおよび1つの脂肪酸を含み、ジグリセリドは、グリセロールおよび2つの脂肪酸を含み、トリグリセリドは、グリセロールおよび3つの脂肪酸を含む。
【0210】
リン脂質は、一般に、グリセロール、または両親媒性化合物を酸性するイオンリン酸基であるスフィンゴシン部分のいずれか、および1つ以上の脂肪酸を含む。リン脂質の種類としては、例えば、リン酸基がジグリセリドのグリセロールの第1炭素、およびスフィンゴリン脂質(例えば、スフィンゴミエリン)に結合し、リン酸基がスフィンゴシンアミノアルコールにエステル化するするホスホグリセリド(phophoglycerides)がある。スフィンゴリン脂質の他の例としては、分子両親媒性となるイオン硫酸基を含むスルファチドがある。ホスホ脂質(phopho lipid)は、もちろん、例えば、リン酸基に付着したアルコール等、さらなる化学基を含んでもよい。そのようなアルコール基の例としては、セリン、エタノールアミン、コリン、グリセロール、およびイノシトールが挙げられる。よって、特異的ホスホグリセリドは、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、またはホスフォチジルイノシトールが挙げられる。他のリン脂質は、フォスファチジン酸、またはジアセチルリン酸を含む。1つの局面では、ホスファチジルコリンは、ジオレオイルホスファチジルコリン(カルジオリピンとしても知られている)、卵ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン(dipalmitoyl phosphalidycholine)、モノミリストイルホスファチジルコリン、モノパルミトイルホスファチジルコリン、モノステアロイルホスファチジルコリン、モノオレオイルホスファチジルコリン、ジブトロイルホスファチジルコリン、ジバレロイルホスファチジルコリン、ジカプロイルホスファチジルコリン、ジヘプタノイルホスファチジルコリン、ジカプリロイルホスファチジルコリン、またはジステアロイルホスファチジルコリンを含む。
【0211】
糖脂質は、スフィンゴリン脂質(sphinogophospholipid)と関連するが、スフィンゴシンの一次ヒドロキシル基に付着したリン酸基ではなく炭水化物群を含む。セレプロシドと呼ばれる糖脂質の一種は、一次ヒドロキシル基に付着した1つの糖類(例えば、グルコースまたはガラクトース)を含む。糖脂質の他の例としては、分枝鎖に存在し、一次ヒドロキシル基に付着し得る約2、約3、約4、約5、約6、〜約7程度の糖類を含むガングリオシド(例えば、モノシアロガングリオシド、GM1)がある。他の実施形態では、上記糖脂質は、セラミド(例えば、ラクトシルセラミド)である。
【0212】
ステロイドは、フェナントレンの4員環系誘導体である。ステロイドは、細胞、組織および生物の調節機能を有する場合が多く、例えば、プロゲスターゲン(例えば、プロゲステロン)、グルココルチコイド(例えば、コルチゾール)、ミネラルコルチコイド(例えば、アルドステロン)、アンドロゲン(例えば、テストテロン)およびエストロゲン(例えば、エストロン)ファミリーのホルモンおよび関連化合物を含む。コレステロールは、ステロイドの他の一例であり、一般に、調節機能ではなく、構造的に作用する。ビタミンDは、ステロールの他の一例であり、腸からのカルシウム吸収に関与する。
【0213】
テルペンは、1つ以上の5炭素イソプレン基を含む脂質である。テルペンは、各種の生物学的機能を有し、例えば、ビタミンA、コエンザイムQおよびカロチノイド(例えば、リコピンおよびβ−カロチン)を含む。
【0214】
2. 荷電脂質組成物および中性脂質組成物
特定の実施形態では、組成物の脂質成分は、荷電していないか、または本来的に荷電していない。1つの実施形態では、組成物の脂質成分は、1つ以上の中性脂質を含む。他の局面では、組成物の脂質成分は、特定のリン脂質(例えば、ホスファチジルコリン)およびコレステロール等の陰イオン性脂質および陽イオン性脂質が実質的になくてもよい。特定の局面では、荷電していないまたは本来的に荷電していない脂質組成物の脂質成分は、荷電していない約95%、約96%、約97%、約98%、約99%または100%の脂質、実質的に荷電していない脂質、および/または同数の正電荷および負電荷を有する脂質混合物を含む。
【0215】
他の局面では、脂質組成物は、荷電していてもよい。例えば、荷電したリン脂質は、本発明による脂質組成物の調製に用いられ、正味の正電荷または正味の負電荷を有することができる。非限定的な例では、ジアセチルリン酸を用いて脂質組成物を負に帯電させることができ、ステアリルアミンを用いて脂質組成物を正に帯電させることができる。
【0216】
脂質は、当業者に公知のように、天然源、商業的供給源から得ることができるか、または化学的に合成することができる。例えば、リン脂質は、卵または大豆ホスファチジルコリン、脳フォスファチジン酸、脳または植物ホスファチジルイノシトール、心臓カルジオリピン、および植物または細菌ホスファチジルエタノールアミン等の天然源からのものとすることができる。
【0217】
3. 脂質組成物構造
本発明のいくつかの実施形態では、上記キメラポリペプチドは、脂質と関連する。脂質と関連するキメラポリペプチドは、脂質を含有する溶液で分散したり、脂質で溶解したり、脂質で乳化したり、脂質と混合したり、脂質と組み合わせたり、脂質と共有化学結合させたり、懸濁液として脂質に含有させたり、ミセルまたはリボソームに含有またはそれと複合させたり、または脂質もしくは脂質構造と関連づけてもよい。本発明の脂質または脂質/キメラポリペプチド関連組成物は、特定の構造に限定されない。例えば、それらはまた、単に溶液中に散在させて、大きさまたは形状のいずれか均一でない会合体を形成可能にしてもよい。他の例では、それらは、ミセルとして、または「崩壊した」構造で二層構造に存在してもよい。他の非限定的な例では、リポフェクトアミン(Gibco BRL)−キメラポリペプチドまたはSuperfect(Qiagen)−キメラポリペプチド複合体も企図される。
【0218】
脂質組成物は、薬物、タンパク質、糖、核酸または本明細書中に開示されているかもしくは当業者に公知の他の物質等の特定の脂質、脂質型または非脂質成分を約1%〜約100%、またはこれから導出可能な任意の範囲で含む。脂質は、乳剤に含まれてもよい。脂質乳剤は、機械的撹拌によって、または乳化剤として知られる少量のさらなる物質によっては、通常、互いには溶解しない2つ以上の液体からなる実質的に永久異種液体混合物である。脂質乳剤を調製し、さらなる成分を添加する方法は、当該分野で周知である(例えば、本明細書中において参考として援用するModern Pharmaceutics,1990)。脂質は、ミセルに含まれてもよい。ミセルは、脂質化合物のクラスターまたは会合体であり、一般に、脂質単分子層の形態をしており、当業者に公知の任意のミセル産生手順を用いて調製され得る(例えば、Canfieldら,1990;El−Gorabら,1973;Colloidal Surfactant,1963;およびCatalysis in Micellar and Macromolecular Systems,1975、それぞれ本明細書中において参考として援用する)。特定の実施形態では、脂質は、リボソームを含む。「リボソーム」は、封入された脂質二層層または会合体の生成により形成された各種の単一および多重膜脂質媒介物を含む総称である。リボソームは、一般に、リン脂質を含む2分子層膜、および一般に、水性組成物を含む内部媒体を備えた小胞構造を有するように特徴づけてもよい。リボソーム、およびリボソームを用いた治療薬の送達は、当業者にはよく知られている。
【0219】
F. 実施例
以下の実施例は、本発明の好適な実施形態を示すために含まれる。下記の実施例に開示される技術は、本発明者によって本発明の実施において良好に機能することが見出された技術を表すものであり、よって、その実施に好適な態様を構成すると考えられるものであることを当業者は理解する。しかしながら、当業者は、本開示に照らして、本発明の精神および範囲を逸脱することなく開示された特定の実施形態に多くの変更を行なうことができ、さらに類似または同様の結果が得られることを理解する。
【実施例】
【0220】
実施例1
VEGF121/ゲロニンキメラタンパク質を用いた眼の新血管形成の血管ターゲッティング
この研究では、VEGF121/ゲロニンキメラタンパク質(VEGF/rGel)の全身または眼内投与が眼の新血管形成のいくつかの動物モデルに及ぼす効果をテストした。VEGF/rGelが腫瘍血管梗塞を生じることは先に示されている(Veenendaalら,2002)。
【0221】
物質
融合毒素VEGF/rGel、および組み換えゲロニン(rGel)を細菌培養物において発現し、均質に精製し、先に記載されるような生物活性について特徴づけた(Veenendaalら,2002)。この融合毒素およびrGelを−20℃でPBS中に保存した。
【0222】
脈絡膜血管新生のモデル。Association for Research in Vision and Ophthalmologoy(ARVO) Statement for the Use ofAnimals in Ophthalmic and Vision ResearchおよびU.S. National Institutes of Health Guide for the Care and Use of Laboratory Animalsに従ってマウスを処置した。レーザ誘起脈絡膜血管新生のモデルは、先に記載されている(Tobeら,1998)。簡潔には、4〜6週齢のメスC57BL/6Jマウスを塩酸ケタミン(100mg/kg体重)で麻酔にかけ、1%トロピカミドで瞳孔を拡張させた。細隙灯送達系を備えた532nmダイオードレーザー光凝固装置(OcuLight GL;IriDEx,Mountain View、CA)をコンタクトレンズとしてのカバーガラスとともに用いて網膜を視覚化し、十分なレーザーエネルギー(スポットサイズ75μm、持続時間0.1秒、140mW)を送達させてそれぞれの眼のブルーフ膜を3ヵ所(後極の9時、12時、および3時の位置)ずつ破裂させた。ブルーフ膜の破裂を示すレーザー熱傷時の気泡の発生は、実験的CNVを得る際の重要なファクターであり(Tobeら,1998);それゆえ、気泡が発生する熱傷のみを研究に含めた。
【0223】
ブルーフ膜破裂の1週間後、7匹のマウスを麻酔にかけ、フルオレセインで標識したデキストラン(平均2×10mw、Sigma,St.Louis,MO)を灌流し、ブルーフ膜破裂部位での脈絡膜血管新生の量を脈絡膜フラットマウント上で測定した。他のマウスにもブルーフ膜破裂の1週間後に実験的または調節注射を行ない、1週間後に脈絡膜血管新生を評価した。VEGF/rGelの静脈内投与の効果をテストするために、マウスにVEGF/rGel(8匹のマウス)もしくはrGel(8匹のマウス)またはPBS媒介物のみ(7匹のマウス)を45mg/kg尾静脈注射した(2日に1回、計4回の注射)。1週間後に、それらにフルオレセインで標識したデキストランを灌流し、脈絡膜血管新生を脈絡膜フラットマウントで測定した。VEGF/rGelの硝子体内投与の効果をテストするために、9匹のマウスの一方の眼に5ngのrGelを硝子体内注射し、他方の眼にPBSを硝子体内注射して、13匹のマウスの一方の眼に5ngのVEGF/rGelを硝子体内注射し、他方の眼にPBSを硝子体内注射した。一週間後、マウスにフルオレセインで標識したデキストランを灌流し、脈絡膜血管新生を脈絡膜フラットマウント上で測定した。
【0224】
Rho/VEGFトランスジェニックマウス。ロドプシンプロモーターが光受容体においてVEGFの発現を促すトランスジェニックマウス(rho/VEGFマウス)が先に記載されている(Okamotoら,1997;Tobeら,1998)。全ての実験について、C57BL/6バックグラウンドの半接合rho/VEGF(V6株)トランスジェニックを用いた。P21では、8匹のマウスに基準量の網膜下新生血管が測定された。9匹のマウスがP21に硝子体内注射され;一方の眼に5ngのVEGF/rGelが注射され、他方の眼には5ngのrGelが注射された。P25では、それぞれの眼における網膜下新生血管の量が測定された。
【0225】
フラットマウント上での新血管形成の定量化。レーザ誘起された脈絡膜血管新生を有するマウスにおいて、脈絡膜フラットマウント上で新血管形成が測定され、rho/VEGFトランスジェニックでは、網膜フラットマウント上で網膜下新生血管が測定された。フラットマウントは、先に記載されたとおりに調製した(Tobeら,1998;Nambuら,2003)。マウスにフルオレセインで標識したデキストランを末期的に灌流した後、眼を取り除き、10%リン酸塩緩衝ホルマリン中に1時間固定し、角膜および水晶体を取り除いた。網膜全体を眼杯から慎重に切り離し、モデルに応じて、各4分円において放射状に4ヶ所の切れ目を入れた後に網膜または脈絡膜をAquamountに平らに載せた。Axioskop顕微鏡(Zeiss,Thormwood,NY)を用いてフラットマウントを蛍光顕微鏡検査法により調べ、3CCDカラービデオカメラ(IK−TU40A,東芝、東京、日本)およびフレームグラッバーを用いて画像をデジタル化した。光受容体側を上にして網膜を載せて調べたが、倍率を400倍にして被写界深度を浅くすることにより、網膜の外縁に焦点を合わせたときに、網膜血管がバックグラウンドでぼやけて、網膜下新生血管の輪郭を容易に描くことができる。Image−Pro Plusソフトウェア(Media Cybernetics、Silver Spring,MD)を用いて各網膜下または脈絡膜血管新生病変の面積を測定した。
【0226】
VEGF/rGelの免疫蛍光局在。ブルーフ膜破裂の1週間後、マウスにVEGF/rGelもしくはrGelまたは媒介物のみを25mg/kg尾静脈注射した。45分後、マウスに300Uのヘパリンを腹腔内注射し、15分後、生理食塩水を1ml/分で12分間左心室に注入してマウスを末期的な灌流を施した。眼を取り除いて、最適薄片温度包埋コンパウンド(OCT;Miles Diagnostics,ElkhArt,IN)で凍結させた。凍結切片を切って、隣接する切片を、選択的に血管細胞を染色するビオチニル化Griffonia simplicifoliaレクチンB4(GSA)または10μg/mlのウサギ抗rGel抗体(Veenendaalら,2002)で染色した。ウサギ抗rGel抗体をFITCに接合したヤギ抗−ウサギIgGで検出した(Jackson ImmunoResearch,West Grove,PA)。
【0227】
GSAレクチンを用いた組織化学的染色。スライドをメタノール/H中で10分間4℃でインキュベートし、0.05MのTBSで洗浄し、10%正常ブタ血清中で30分間インキュベートした。ビオチニル化GSAレクチン(Vector Laboratories,Burlingame,CA)とともにスライドを2時間室温でインキュベートし、0.05MのTBSですすいだ後、それらをペルオキシダーゼに結合したアビジン(Vector Laboratories)とともに45分間室温でインキュベートした。0.05MのTBS中での10分間の洗浄後、スライドをジアミノベンジジン(Research Genetics,Huntsville,AL)とともにインキュベートして褐色の反応物を産生した。
【0228】
酸素により誘導された静脈うっ血性網膜症のマウス。静脈うっ血性網膜症を先に記載の方法により発症した(Smithら,1994)。P7では、同腹のマウスを密閉したインキュベーターに入れ、75±3%の酸素雰囲気に5日間曝露した。インキュベーターの温度を23±2℃に維持し、酸素分析装置を用いて酸素を8時間毎に測定した。5日後、マウスをインキュベーターから取り出し、大気中に置いた。P17では、6匹のマウスを安楽死させて基準量の新血管形成を測定し、7匹のマウスの一方の眼に5ngのVEGF/rGelを硝子体内注射し、他方の眼に5ngのrGelを硝子体内注射した。P21で、マウスを安楽死させて網膜新生血管を測定した。
【0229】
静脈うっ血性網膜症のマウスにおける網膜新生血管の測定。安楽死の後、眼を素早く取り出し、OCTで凍結した。上述したように、眼の凍結切片(10μm)をGSAで組織化学的に染色した。内境界膜を染色するエオシンでスライドを対比染色し、マウントした(Cytoseal;Stephens Scientific,Cornwall,NJ)。定量的評価を行なうために、10μmの連続切片を眼の一方の側の虹彩基部を含む切片から他方の側の虹彩基部に向かって眼全体に渡って切り出した。10個の切片毎に、およそ100μm離してGSAで染色し、3CCDカラービデオカメラおよびフレームグラッバーで画像をデジタル化した。画像解析を用いて網膜表面のGSA染色細胞をの輪郭を描き、それらの面積を測定した。それぞれの眼について、各切片の新血管形成の平均面積を計算し、単一の実験値として用いた。
【0230】
統計分析。線形混合モデルを用いて統計比較を行なった(VerbekeおよびMolenberghs,2000)。このモデルは、分散分析(ANOVA)と類似しているが、同じマウスの測定値間の相互関係を明確にすることにより、各マウスの平均脈絡膜血管新生面積ではなく、各マウスからの全ての脈絡膜血管新生面積測定の分析を可能にする。このモデルのANOVAに対する利点は、マウス間で観察数が異なるために生じるマウス特異的平均値測定の精度の誤差を明確にすることである。多重比較のために、ボンフェローニ/ダンの方法を用いて治療の比較用のP値を調整した。
【0231】
結果
VEGF/rGelは、静脈内注射後、脈絡膜血管新生に局在する。ブルーフ膜のレーザ誘起破裂の7日後、マウスにPBS、rGel、またはVEGF/rGelを尾静脈注射し、マウスを安楽死させた1時間後、眼の切片をGSAで組織化学的染色または抗ゲロニン抗体で免疫蛍光染色した。PBSまたはrGelを注射したマウスは、ゲロニンについては染色されていない(図1Bおよび図1D、矢印)ブルーフ膜破裂部位に脈絡膜血管新生を示した(図1Aおよび図1C、矢印)。対照的に、VEGF/rGelを静脈内注射したマウスは、脈絡膜血管新生内にゲロニンについて染色されていた(図1E−F、矢印)。
【0232】
VEGF/rGelの静脈内注射により、脈絡膜血管新生が退縮する。40匹の成体C57BL/6マウスのそれぞれの眼においてブルーフ膜を3箇所レーザ誘起破裂させた。1週間後、7匹のマウスをフルオレセインで標識したデキストランで灌流し、脈絡膜フラットマウントの画像解析により、破裂部位(図2A、矢印)で基準量の脈絡膜血管新生を測定した。残りのマウスには、45mg/kgのrGel、45mg/kgのVEGF/rGel、またはPBSを尾静脈注射した。静脈内注射の1週間後、マウスをフルオレセインで標識したデキストランで灌流し、蛍光顕微鏡検査法により、脈絡膜フラットマウントを調べた。VEGF/rGelを注射したマウスでは、破裂部位の脈絡膜血管新生の面積(mmx10−3)は、rGel(2.25±0.30、図2B、矢印)またはPBS(2.65±0.48、図2C、矢印)を注射されたマウスのものと比較して小さく(0.95±0.20、図2D、矢印)、画像分析により、統計学的に有意な差が確認された(図2E)。これらはまた、7日目に存在した基準量脈絡膜血管新生病変(1.56±0.14、図2Aおよび図2E)よりも小さく、VEGF/rGelCが脈絡膜血管新生が退縮したことを示している。
【0233】
VEGF/rGelの硝子体内注射により、脈絡膜血管新生が退縮する。31匹の成体C57BL/6マウスのそれぞれの眼においてブルーフ膜を3箇所レーザ誘起破裂させた。1週間後、9匹のマウスをフルオレセインで標識したデキストランで灌流し、脈絡膜フラットマウントを調製し、破裂部位(図3A)で基準量の脈絡膜血管新生を測定した。残りのマウスを2つのグループに分類し;9匹のマウスの一方の眼に5ngのrGelを硝子体内注射し、他方の眼にPBSを硝子体内注射し、13匹のマウスの一方の眼に5ngのVEGF/rGelを硝子体内注射し、他方の眼にPBSを硝子体内注射した。1週間後、マウスをフルオレセインで標識したデキストランで灌流し、蛍光顕微鏡検査法により、脈絡膜フラットマウントを調べた。VEGF/rGelを注射したマウスでは、破裂部位の脈絡膜血管新生の面積は、rGel(1.03±0.17;図3Bおよび図3E、矢印)またはPBS(0.92±0.20;図3C、矢印)を注射したマウスと比較して小さかった(0.43±0.07;図3Dおよび図3E、矢印)。これは、基準量(1.19±0.19;図3Aおよび図3E)で見られた脈絡膜血管新生よりも小さかった。
【0234】
VEGF/rGelの硝子体内注射により、rho/VEGFトランスジェニックマウスにおいて新血管形成が退縮する。ロドプシンプロモーターが光受容体においてVEGFの発現を促すトランスジェニックマウス(rho/VEGFマウス)は、網膜下新生血管を患うが、この網膜下新生血管は、同じ遺伝子バックグラウンドの同じ株のマウス間で極めて一貫しており、マウスをフルオレセインで標識したデキストランで灌流した後網膜フラットマウントの画像解析により容易に定量化される(Okamotoら,1997;Tobeら,1998)。C57BL/6バックグラウンドの8匹の半接合rho/VEGFマウスは、P21で、各網膜毎に基準量の新血管形成(mmx10−3)が測定された(図4A;10.8±1.7)。P21では、残りのトランスジェニックマウス(n=9)の一方の眼には、5ngのrGelを硝子体内注射し、他方の眼には5ngのVEGF/rGelを硝子体内注射した。P25では、P21の各網膜の新血管形成の基準量面積と比較して、VEGF/rGelマウスの各網膜の新血管形成の面積(図4C、2.80±0.98)は、はるかに小さかった(図4D)。これはまた、rGelを注射されたマウスの各網膜の新血管形成の面積(8。81±1.94、図4Bおよび図4D)よりもはるかに小さかった。
【0235】
VEGF/rGelの硝子体内注射により、虚血によって誘導された網膜NVを退縮させる。酸素により誘導された静脈うっ血性網膜症のマウスは、増殖性糖尿病網膜症または未熟児網膜症の患者に見られるものと同様の網膜新生血管を網膜表面上に有する。このモデルでは、新血管形成の量は、P17とP21の間でかなり安定しており、自然に退縮する。P17では、網膜表面上に顕著な新血管形成があった(図5Aおよび図5B)。P17でrGelを硝子体内注射した眼はなお、P21では、実質的な新血管形成を網膜表面上に示した(図5Cおよび図5D、矢印)。しかしながら、P17でVEGF/rGelを注射したマウスは、P21では、特定可能な新血管形成をほとんど示さなかった(図5Eおよび図5F)。画像解析により、VEGF/rGelを注射したマウスは、rGelを注射したマウス(5.01±0.46)よりも新血管形成がはるかに少なく(0.93±0.25mmx10−2)、かつ注射の前にP17で見られた基準量量(6.53±0.42、図5G)よりもはるかに少なく、VEGF/rGelが網膜新生血管の退縮を誘導したことを示すことが明らかにされた。
【0236】
本明細書中に開示し、特許請求した方法の全ては、本開示に照らして、過度の実験を行なうことなく実現および実施できる。本発明の組成物および方法を好適な実施形態について説明したが、本発明の概念、精神、および範囲から逸脱することなく、本明細書中に記載の方法の工程またはその工程の順序において、それらの方法に変更が可能であることは当業者には明らかである。より詳細には、化学および生理学の両方において関連する薬剤が本明細書中に記載の薬剤と置き換え可能である一方、同じまたは同様の結果を得られることは明白である。そのような当業者には明白である同様の置換えおよび修正の全てが、特許請求の範囲に規定される本発明の精神、範囲、および概念の範疇にあるものとみなす。
【0237】
参考文献
本明細書中に示す内容を補う例示的な手続上または他の内容を示す範囲で、下記の参考文献を本明細書中において参考として明確に援用する。
【0238】
【数1】

【0239】
【数2】

【0240】
【数3】

【0241】
【数4】

【0242】
【数5】

【図面の簡単な説明】
【0243】
下記の図面は本明細書の一部を構成し、本発明のある局面をさらに例示するために含まれる。本発明は、それら図面の1つ以上を本明細書中に示す特定の実施形態の詳細な説明とともに参照することでよりよく理解され得る。
【図1】図1A〜図1F. 静脈内注射後の脈絡膜血管新生におけるVEGF/組み換えゲロニン(rGel)の局在。成体C57BL/6マウスのそれぞれの眼にブルーフ膜をレーザ誘起破裂させ、1週間後に、PBS(AおよびB)、45mg/kgのrGel(CおよびD)、または45mg/kgのVEGF/rGel(EおよびF)を尾静脈注射した。静脈内注射の1時間後、マウスを安楽死させ、眼を取り出して、即座に冷凍した。眼の切片を、ジアミノベンジジン(A、C、およびE)で可視化したGriffonia simplicifoliaレクチン(GSA)で組織化学的に染色、またはフルオレセインで標識した二次抗体を用いて抗ゲロニン抗体で組織化学的に染色した。(A)ブルーフ膜破裂の1週間後にPBSを静脈内注射したマウスの眼の切片は、破裂部位にGSAで染色された脈絡膜血管新生(矢印)を示す。(B)(A)に示すものと隣接する抗ゲロニンで免疫蛍光染色した切片は、網膜全体に渡ってかすかな背景染色を示しており、脈絡膜血管新生(矢印)には染色の増加は見られない。(C)ブルーフ膜破裂の1週間後にrGelを静脈内注射したマウスの眼の切片は、破裂部位にGSAで染色された脈絡膜血管新生(矢印)を示す。(D)(C)に示すものと隣接する抗ゲロニン免疫蛍光染色した切片は、網膜全体に渡ってかすかな背景染色を示しており、脈絡膜血管新生(矢印)には染色の増加は見られない。(E)ブルーフ膜破裂の1週間後にVEGF/rGelを静脈内注射したマウスの眼の切片は、破裂部位にGSAで染色された脈絡膜血管新生(矢印)を示す。(F)(E)に示すものと隣接する抗ゲロニン免疫蛍光染色した切片は、網膜全体に渡ってかすかな背景染色を示しており、脈絡膜血管新生(矢印)全体に渡って背景上に染色が見られ、脈絡膜血管新生内でVEGF/rGelの局在が示されている。
【図2】図2A〜図2E. VEGF/rGelの静脈内注射により、脈絡膜血管新生を退縮させる。30匹の成体C57BL/6マウスのそれぞれの眼のブルーフ膜を3箇所レーザ誘起破裂させた。1週間後、7匹のマウスにフルオレセインで標識したデキストランを灌流し、脈絡膜フラットマウントの画像解析により、破裂部位における基準量の脈絡膜血管新生を測定した(A)。残りのマウスを3つのグループに分類した:8匹のマウスに45mg/kgのrGelを尾静脈注射し(B)、7匹のマウスにPBSを尾静脈注射し(C)、8匹のマウスに45mg/kgのVEGF/rGelを尾静脈注射した(D)。1週間後、マウスにフルオレセインで標識したデキストランを灌流し、蛍光顕微鏡検査法により脈絡膜フラットマウントを調べた。VEGF/rGelを注射したマウスでは、破裂部位の脈絡膜血管新生の面積が、rGel(B、矢印)またはPBS(C、矢印)を注射したマウスよりも実質的に小さく見えた(D、矢印)。また、これは基準量の脈絡膜血管新生よりも少ない量であった(A)。画像解析により、VEGF/rGelの注射の1週間後の脈絡膜血管新生の面積は、基準量と比較してはるかに小さいことが確認された(E)。線形混合モデルによる基準量との差p=0.0031線形混合モデルによるゲロニンまたはPBSとの差p<0.0001Bar=100μm
【図3】図3A〜図3E. VEGF/rGelの硝子体内注射により、脈絡膜血管新生を退縮させる。40匹の成体C57BL/6マウスのそれぞれの眼を3箇所レーザ誘起破裂させた。1週間後、10匹のマウスにフルオレセインで標識したデキストランを灌流し、脈絡膜フラットマウントの画像解析により、破裂部位における基準量の脈絡膜血管新生を測定した。残りのマウスを2つのグループに分類した:9匹のマウスの一方の眼に5ngのrGelを硝子体内注射し、他方の眼にPBSを硝子体内注射し、13匹のマウスの一方の眼に5ngのVEGF/rGelを硝子体内注射し、他方の眼にPBSを硝子体内注射した。1週間後、これらのマウスにフルオレセインで標識したデキストランを灌流し、蛍光顕微鏡検査法により脈絡膜フラットマウントを調べた。ブルーフ膜の破裂後7日目に実質的な基準量の脈絡膜血管新生が生じた(A、矢印)。rGel(B、矢印)またはPBS(C、矢印)の注射の7日後の14日目に、破裂部位における脈絡膜血管新生の面積が、基準量で見られたものと同様に見えた(A)。VEGF/rGelの注射の7日後に見られた脈絡膜血管新生の量(D、矢印)は、rGelまたはPBSの注射後に見られたものよりも少なく見え、かつ基準量で見られたものよりも少なく見えた。画像解析により、脈絡膜血管新生の面積が、rGelもしくはPBS、または基準量と比較して、VEGF/rGelの注射の1週間後よりもはるかに小さいことが確認された(E)。線形混合モデルによる基準量との差p<0.0001線形混合モデルによるゲロニンまたはPBSとの差p=0.0007Bar=100μm
【図4】図4A〜図4C. VEGF/rGelの硝子体内注射により、rho/VEGFトランスジェニックマウスにおける網膜下新生血管を退縮させる。数組の同腹の半接合rho/VEGFトランスジェニックマウスを2つのグループに分類した。第1のグループ(n=8)は、P21においてフルオレセインで標識したデキストランを灌流し、蛍光顕微鏡検査法および網膜フラットマウントの画像解析により、網膜外表面上の基準量の新血管形成を測定した。P21で、第2のグループ(n=9)の一方の眼に5ngのrGelを硝子体内注射し、他方の眼に5ngのVEGF/rGelを硝子体内注射した。P25では、それらのマウスにフルオレセイン標識デキストランを灌流し、網膜外表面上の新血管形成の面積を測定した。(A)P21のrho/VEGFマウスの網膜フラットマウントの高倍率図では、多数の新血管形成の房(矢印)が部分的にRPE細胞により覆われていることが示されている。網膜血管は背景でぼやけている。(B)P25では、P21でrGelを硝子体内注射した眼の網膜フラットマウントは、いくつかの新血管形成の房(矢印)を示す。(C)P25では、P21でVEGF/rGelを硝子体内注射した眼の網膜フラットマウントは、残りの新血管形成の小さな芽(矢印)を1つだけ示す。線形混合モデルによる基準量との差p=0.0032線形混合モデルによるゲロニンとの差p=0.0193Bar=1100μm
【図5】図5A〜図5G. VEGF/rGelの硝子体内注射により、虚血によって誘導された網膜新生血管を退縮させる。P7およびP12で、マウスを75%酸素中に入れて、大気中に取り出した。P17で、基準量の新血管形成(n=6)を測定し、残りのマウス(n=7)の一方の眼に5ngのVEGF/rGelを硝子体内注射し、他方の眼に5ngのrGelを硝子体内注射した。P21では、Griffonia simplicifoliaレクチンで染色した眼の切片が、P17のマウス網膜表面に顕著な基準量新血管形成を示した(AおよびB、矢印)。P21では、rGel(CおよびD、矢印)を注射した眼の実質的な新血管形成も見られたが、VEGF/rGel(EおよびF、矢印)を注射した眼には新血管形成はほとんど検出できなかった。画像解析による網膜新生血管の面積の測定により、P21では、VEGF/rGelを注射した眼は、rGelで見られたよりも新血管形成が少なく、P17での基準量新血管形成も少なかった(G)。線形混合モデルによる基準量との差p=0.0004;線形混合モデルによるゲロニンとの差p=0.0017;Bar=100μm。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体の眼疾患を処置または予防する方法であって、該被験体に、該被験体の眼疾患の処置または予防をもたらす血管内皮標的化アミノ酸配列および細胞毒性アミノ酸配列を有するポリペプチドを含む医薬組成物の治療有効量を投与する工程を包含する、方法。
【請求項2】
前記ポリペプチドは、前記血管内皮標的化アミノ酸配列と前記細胞毒性アミノ酸配列との間に、リンカーをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記リンカーは、GS、(GS)、(GS)、218リンカー、酵素開裂可能なリンカー、またはpH開裂可能なリンカーである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記血管内皮標的化アミノ酸配列は、VEGF、FGF、インテグリン、フィブロネクチン、I−CAM、PDGF、または血管内皮細胞の表面上で発現した分子に対する抗体からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
VEGFは、VEGF121、VEGF165、VEGF189、およびVEGF206からなる群から選択されたアイソフォームである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記VEGFはVEGF121である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記VEGF配列は、配列番号:4〜10からなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記細胞毒性アミノ酸配列は毒素である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記毒素はリボソーム不活性化タンパク質(RIP)である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記リボソーム不活性化タンパク質は、ゲロニン、トウモロコシRIP、サポリン、リシン、リシンA鎖、オオムギRIP、モモルジン、アルファ−モモルカリン、ベータ−モモルカリン、志賀菌様RIP、およびA−サルシンからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記毒素は、アブリン、水系由来細胞毒素、シュードモナス外毒素、DNA合成阻害剤、RNA合成阻害剤、プロドラッグ、光活性ポルフィリン、トリコサンチン、トリチン、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ミラビリス抗ウイルスタンパク質(MAP)、ジアンチン32、ジアンチン30、ブリョジン、志賀菌、ジフテリア毒素、ジフテリア毒素A鎖、ドデカンドリン、トリコキリン、ブリョジン、およびルフィンからなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記細胞毒性アミノ酸配列は、TIMP−1、TIMP−2、TIMP−3、TIMP−4、エンドスタチン、アンギオスタチン、エンドスタチンXVIII、エンドスタチンXV、マトリックスメタロプロテイナーゼ−2のC−末端ヘモペキシンドメイン、ヒトプラスミノーゲンのクリングル5ドメイン、インターフェロン−ガンマ(Mig)により誘導されたモノカイン、インターフェロン−アルファ誘導タンパク質10(IP10)、可溶性FLT−1(fms様チロシンキナーゼ1受容体)、およびキナーゼ挿入ドメイン15受容体(KDR)からなる群から選択された抗血管新生アミノ酸配列である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記細胞毒性アミノ酸配列はアポトーシスを誘導する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記細胞毒性アミノ酸配列は、グランザイムB、Bax、TNF−α、TNF−β、TGF−β、IL−12、IL−3、IL−24、IL−18、TRAIL、IFN−α、INF−β、IFN−γ、Bclタンパク質、Fasリガンド、またはカスパーゼからなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記被験体は哺乳動物である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記哺乳動物はヒトである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記眼疾患は、新血管形成と関連する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記新血管形成は、網膜新生血管、脈絡膜血管新生、または他の眼新血管形成である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記眼疾患は、加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症、増殖性硝子体網膜症、または眼腫瘍である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記眼腫瘍は、脈絡膜メラノーマ、網膜芽腫、転移性腫瘍、またはぶどう膜メラノーマである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記組成物は径脈管投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記組成物は眼内投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
眼内投与は、硝子体内投与、前房への投与、または眼内腫瘍への投与である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記被験体は、加齢性黄斑変性症の二次新血管形成を有し、VEGF121と組み換えゲロニンとの融合タンパク質を硝子体内投与により投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記融合タンパク質を約0.5ng〜約10ng硝子体内投与する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記融合タンパク質を約1ng〜約4ng硝子体内投与する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記医薬組成物を1回以上投与する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
他の眼治療での処置をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記他の療法は、経口療法、局所療法、眼内療法、レーザー光凝固術、凍結療法、放射線療法、外科的療法、遺伝子療法、および免疫療法である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記療法が必要な患者を特定する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
被験体の新血管形成と関連する眼疾患を処置または予防する方法であって、該被験体に、血管内皮標的化アミノ酸配列および細胞毒性アミノ酸配列を有するポリペプチドを含む組成物の治療有効量を眼内投与する工程を包含し、該眼疾患が予防または処置される、方法。
【請求項32】
前記ポリペプチドは、前記血管内皮標的化アミノ酸配列と前記細胞毒性アミノ酸配列との間のリンカーをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記リンカーは、GS、(GS)、(GS)、218リンカー、酵素開裂可能なリンカー、またはpH開裂可能なリンカーである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記血管内皮標的化アミノ酸配列は、VEGF、FGF、インテグリン、フィブロネクチン、I−CAM、PDGF、または血管内皮細胞の表面上で発現した分子に対する抗体からなる群から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
VEGFは、VEGF121、VEGF165、VEGF189、およびVEGF206からなる群から選択されたアイソフォームである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記VEGFはVEGF121である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記VEGF配列は、配列番号:4〜10からなる群から選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記細胞毒性アミノ酸配列は毒素である、請求項31に記載の方法。
【請求項39】
前記毒素はリボソーム不活性化タンパク質(RIP)である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記リボソーム不活性化タンパク質は、ゲロニン、トウモロコシRIP、サポリン、リシン、リシンA鎖、オオムギRIP、モモルジン、アルファ−モモルカリン、ベータ−モモルカリン、志賀菌様RIP、およびA−サルシンからなる群から選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記毒素は、アブリン、水系由来細胞毒素、シュードモナス外毒素、DNA合成阻害剤、RNA合成阻害剤、プロドラッグ、光活性ポルフィリン、トリコサンチン、トリチン、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ミラビリス抗ウイルスタンパク質(MAP)、ジアンチン32、ジアンチン30、ブリョジン、志賀菌、ジフテリア毒素、ジフテリア毒素A鎖、ドデカンドリン、トリコキリン、ブリョジン、およびルフィンからなる群から選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
前記細胞毒性アミノ酸配列はアポトーシスを誘導する、請求項31に記載の方法。
【請求項43】
前記細胞毒性アミノ酸配列は、グランザイムB、Bax、TNF−α、TNF−β、TGF−β、IL−12、IL−3、IL−24、IL−18、TRAIL、IFN−α、INF−β、IFN−γ、Bclタンパク質、Fasリガンド、またはカスパーゼからなる群から選択される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記細胞毒性アミノ酸配列は、TIMP−1、TIMP−2、TIMP−3、TIMP−4、エンドスタチン、アンギオスタチン、エンドスタチンXVIII、エンドスタチンXV、マトリックスメタロプロテイナーゼ−2のC−末端ヘモペキシンドメイン、ヒトプラスミノーゲンのクリングル5ドメイン、インターフェロン−ガンマ(Mig)により誘導されたモノカイン、インターフェロン−アルファ誘導タンパク質10(IP10)、可溶性FLT−1(fms様チロシンキナーゼ1受容体)、およびキナーゼ挿入ドメイン15受容体(KDR)からなる群から選択された抗血管新生アミノ酸配列である、請求項31に記載の方法。
【請求項45】
前記被験体は哺乳動物である、請求項31に記載の方法。
【請求項46】
前記哺乳動物はヒトである、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記新血管形成は、網膜新生血管、脈絡膜血管新生、または他の眼新血管形成である、請求項31に記載の方法。
【請求項48】
前記眼疾患は、加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症、増殖性硝子体網膜症、または眼腫瘍である、請求項31に記載の方法。
【請求項49】
前記眼腫瘍は、脈絡膜メラノーマ、網膜芽腫、転移性腫瘍、またはぶどう膜メラノーマである、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
眼内投与は、硝子体内投与、前房への投与、または眼内腫瘍への投与である、請求項31に記載の方法。
【請求項51】
前記被験体は、加齢性黄斑変性症の二次新血管形成を有し、VEGF121と組み換えゲロニンの融合タンパク質を硝子体内投与により投与される、請求項31に記載の方法。
【請求項52】
前記融合タンパク質を約0.5ng〜約10ng硝子体内投与する、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記融合タンパク質を約1ng〜約4ng硝子体内投与する、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記医薬組成物を1回以上投与する工程をさらに包含する、請求項31に記載の方法。
【請求項55】
他の眼治療での処置をさらに包含する、請求項31に記載の方法。
【請求項56】
前記他の療法は、経口療法、局所療法、眼内療法、レーザー光凝固術、凍結療法、放射線療法、外科的療法、遺伝子療法、および免疫療法である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記療法が必要な患者を特定する工程をさらに包含する、請求項31に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−540342(P2008−540342A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−509219(P2008−509219)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/016496
【国際公開番号】WO2006/119128
【国際公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(505098937)リサーチ ディベロップメント ファウンデーション (16)
【Fターム(参考)】