説明

眼への適用および他への適用のための可撓性マイクロチップデバイス

【課題】レザバ内容物の制御された放出または曝露のための湾曲性の表面に適合し得るマイクロチップデバイスアレイを提供すること。
【解決手段】2つ以上のマイクロチップデバイスエレメント54を含み、2つ以上のマイクロチップデバイスエレメントの各々は、制御された放出のための分子または選択的曝露のための成分を含む複数のレザバ62、およびデバイスエレメントに可撓的に接続する手段を含む。このレザバは、1つ以上の薬物および/または1つ以上の第2のデバイス(例えば、センサーまたはそれらのエレメント)を含み得る。好ましくは、このマイクロチップデバイスは、治療的分子、予防的分子、および診断分子を含み、かつそれらを必要とする患者の眼の上または眼の中に対し、それらの分子を制御可能に放出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連する出願の相互参照)
米国特許法119条の下で、2001年1月9日に出願された米国特許出願番号60/260,725に対する優先権を主張する。
【0002】
(発明の背景)
本発明は、一般に、移植可能なマイクロチップデバイスおよびこれらの使用のための方法の分野、特に眼および他の医療適用の分野にある。
【背景技術】
【0003】
眼の比較的小さいサイズ、円形、および位置が、眼へ薬剤を送達するための新しい方法およびデバイスの開発を困難にしている。最も一般的な眼への薬剤送達の方法は、液体による点眼である。薬剤送達のこの方法は、眼の組織を介して拡散し得る薬剤(すなわち、代表的に低分子量の薬剤)および液体またはゲルとして処方され得る薬剤に限定される。
【0004】
代替の送達方法としては、眼の内側への薬剤送達デバイスの移植が挙げられる。例えば、Kelleherに対する米国特許第6,063,116号は、細胞増殖調節剤の持続放出のための眼球内ポリマー性移植物を開示する。別の例として、Ambatiらの「Transscleral Delivery of Antibodies to the Posterior Segment」 Investigative Ophthalm.& Visual Sci.,40(4):457−B417(Mar.15,1999)が、脈絡膜および網膜への標的化送達のための強膜表面上または層板状の強膜弁下のFITC−IgGを含む移植の浸透圧ポンプを開示する。
【0005】
これらの移植物は、より大きな分子量の薬剤が(標的組織層の深さに基づく拡散制限の存在に依存して)送達されることを可能にし得るが、これらは代表的に、単一薬剤を受動的に放出する能力のみしか有さない。
【0006】
PCT WO00/40089は、強膜と薬剤とを接触させることおよび強膜を介して薬剤の輸送を増強するための移植デバイスを用いることによって、網膜および脈絡膜への治療薬または診断薬を送達する方法を開示する。この参考文献は、移植物が、所望される薬剤を含むレザバを含むマイクロチップであり得ることを述べる。薬剤の制御された送達ならびに眼および他の医療適用におけるセンサーの制御された曝露のために、米国特許第5,797,898号、同第6,123,861号、PCT WO01/64344、PCT WO01/35928、およびPCT WO01/12157に記載されるようなマイクロチップデバイスを用いて、新しくかつ改善されたシステムを開発することは有利であり、ここで、移植物は、眼について上記されたような課題を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
それ故、制御放出または例えば、サイズおよび/もしくは部位の位置に起因して既知のマイクロチップデバイスが好まれ得ない部位でのレザバ内容物を曝露するためのマイクロチップデバイスを提供することが、本発明の目的である。
【0008】
患部での送達および診断のためのマイクロチップデバイスおよびこれらの使用の方法を提供することが、本発明の別の目的であり、ここで、移植物は、特に湾曲した組織表面または円形の組織表面を含む小さい空間にあることが所望される。
【0009】
化学的送達および薬剤到達を必要とする患者の眼の中および上の位置への化学的送達および薬剤到達のためのマイクロチップデバイスおよびこれらの使用の方法を提供することが、本発明のさらなる目的である。
【0010】
眼の疾患および障害の診断および処置において有用な、レザバ内容物の制御された曝露のためのマイクロチップデバイス(例えば、センサー)およびこれらの使用の方法を提供することが、本発明のさらなる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要旨)
湾曲状の表面に適合し得るマイクロチップデバイスアレイが、レザバ内容物の制御放出または曝露のために提供される。このアレイは、2つ以上のマイクロチップデバイスエレメントを含み、これらはそれぞれ、制御放出のための分子または選択的曝露のための成分を含む複数のレザバ、およびデバイスエレメントと可撓性に連結する方法を含む。
【0012】
好ましくは、可撓性の連結のための方法は、デバイスエレメントの表面に付着された可撓性支持層を含む。例えば、可撓性支持層は、ポリマー(例えば、ポリイミド、ポリエステル、パリレンまたはヒドロゲル)を含み得る。可撓性支持層は,代表的にレザバの開口部の放出/曝露開口部(すなわち、放出側)である、末端側上のマイクロチップデバイスエレメントに付着される。さらに、またはあるいは、可撓性支持層が、1つ以上の開口部が整列されたレザバの開口部とともに提供される場合か、あるいは可撓性支持層が、多孔性であるか、または(i)レザバから放出され得る分子もしくは(ii)レザバ内容物と接触する必要がある目的の環境の分子、に浸透可能である場合、可撓性支持層は、放出側に固定され得る。あるいは、マイクロチップデバイスエレメントは、可撓性支持層内に効果的に埋め込まれ得る。
【0013】
他の実施形態において、可撓性の連結のための方法は、1つ以上のヒンジまたは2つ以上のデバイスエレメントを連結する可撓性テザーを含む。
【0014】
好ましい実施形態において、マイクロチップデバイスアレイが、患者上または患者中への移植に適切であり、ここで、アレイは、組織表面の湾曲に適合し得る。1つの実施形態において、このアレイは、患者の眼の中または上に移植され、ここで、組織表面は、眼の組織を含む。
【0015】
様々な実施形態において、デバイスエレメントのレザバは、放出のための薬剤分子を含む。他の実施形態において、レザバは、1つ以上の第2のデバイス(例えば、曝露のためのセンサー)を含む。単一のアレイまたは単一のデバイスエレメントは、放出のための薬剤およびセンサーの両方を含み得る。このようなアレイは、自動化され得、センサーによって測定される条件または変化への応答における特定の薬剤の投薬を放出する。このレザバはまた、診断試薬、触媒、組合せの化学前駆体、および芳香分子を含み得る。
【0016】
このマイクロチップデバイスアレイは、レザバを覆うレザバキャップを含み得、そして必要に応じて、使用者が、ワイヤレスでマイクロチップデバイスエレメントと連絡するための方法を含み得る。このような連絡方法は、入射光線エネルギー(例えば、レーザー源由来のような)を受けとる光電池を含み得る。
【0017】
活性なマイクロチップデバイスエレメントを有するマイクロチップデバイスアレイは、エネルギー保存方法(例えば、コンデンサー、バッテリー、または両方)を含み得る。必要に応じて、このアレイは、2つ以上のマイクロチップデバイスエレメント間の電気の接続を含み、その結果マイクロチップデバイスエレメントは、それぞれ、通常のエネルギー供給源または制御供給源によって電源され得るか、または制御され得る。
【0018】
患者の組織表面中または上の移植物、薬剤および有効量の薬剤分子の1つ以上のレザバからの選択的放出を含む、マイクロチップデバイスアレイを含む、患者への薬剤分子の送達のための方法が、提供される。1つの実施形態において、マイクロチップデバイスアレイが、強膜または患者の眼の別の表面上または中に移植される。薬剤の放出は、ワイヤレスで活性化される(例えば、マイクロチップデバイスアレイへの光の適用によって)。例えば、眼用レーザーが、使用され得る。1つの方法において、レーザー光は、レザバを覆う1つ以上のレザバキャップを除くか、または浸透する。他の適切な組織表面としては、細胞層または他の皮膚組織、頬粘膜、血管、骨、脳および膀胱が挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
別の方法において、分子または物理学的特性は、部位で判断され、ここで、この方法は、センサーを含むマイクロチップデバイスアレイの部位での移植および前記の部位での分子または特性に対してセンサーの少なくとも1つのセンサーを選択的に曝露することを含み、これによって、前記の少なくとも1つのセンサーを、センスの前記の分子または特性に浸透させる。例えば、このセンサーは、圧力センサーまたは化学センサーを含み得る。
【0020】
より一般的な方法がまた、眼の判断のために提供される。
【0021】
マイクロチップデバイスは、平均の小さいサイズ、可変性の形態およびそのレザバの内容物の放出または曝露を活性または受動的に制御する能力を有する。このマイクロチップデバイスは、複数の薬剤または化学物質を含み得、センサーまたは診断試薬を含み得、そしてマイクロプロセッサ、リモートコントロール(すなわち、遠隔測定法)またはバイオセンサーを用いて制御され得る。さらに、化学送達および選択的曝露のためのマイクロチップデバイスが、電源またはデータ伝達の供給源、またはマイクロチップデバイスにおけるレザバを開口する方法(例えば、レザバキャップの崩壊を誘引することによって)を提供する、既知の眼の技術(例えば、眼の光源(例えば、レーザーまたは集束光))とともに使用され得る。このマイクロチップは、薬剤の急な局部送達および制御された局部送達を提供し得、全身性の放出を有利に減少するか、または回避する。
上記に加えて、本発明は、以下の手段を提供する:
(項目1) レザバ内容物の制御された放出または曝露のためのマイクロチップデバイスアレイであって、該マイクロチップデバイスアレイが、以下:
2つ以上のマイクロチップデバイスエレメントであって、該2つ以上のマイクロチップデバイスエレメントの各々が複数のレザバを含み、該レザバが、制御された放出のための分子または選択的な曝露のための成分を含有する、2つ以上のマイクロチップデバイスエレメント;および
湾曲状の表面に適合し得る可撓性アレイを形成するように、該デバイスエレメントに可撓的に接続するための手段
を含む、マイクロチップデバイスアレイ。
(項目2) 項目1に記載のマイクロチップデバイスアレイであって、前記可撓的に接続するための手段が、前記デバイスエレメントの表面に取り付けられた可撓性支持層を含む、マイクロチップデバイスアレイ。
(項目3) 項目2に記載のマイクロチップデバイスアレイであって、前記可撓性支持層がポリマーを含む、マイクロチップデバイスアレイ。
(項目4) 項目3に記載のマイクロチップデバイスアレイであって、前記ポリマーが、ポリイミド、ポリエステル、パリレンおよびヒドロゲルからなる群より選択される、マイクロチップデバイスアレイ。
(項目5) 項目1に記載のマイクロチップデバイスアレイであって、前記可撓性支持層は、前記レザバから分子を放出可能なように多孔性もしくは透過性であるか、または該可撓性支持層にわたり1つ以上の開口部が提供される、マイクロチップデバイスアレイ。
(項目6) 項目1に記載のマイクロチップデバイスアレイであって、前記可撓的に接続するための手段が、2つ以上の前記デバイスエレメントを接続するための1つ以上のヒンジまたは可撓性のつなぎを含む、マイクロチップデバイスアレイ。
(項目7) 患者の表面または患者の中に移植するための項目1に記載のマイクロチップデバイスアレイであって、前記アレイが、組織表面の湾曲に適合し得る、マイクロチップデバイスアレイ。
(項目8) 患者の眼内または患者の眼の表面への移植のための項目7に記載のマイクロチップデバイスアレイであって、前記組織表面が、眼の組織を含む、マイクロチップデバイスアレイ。
(項目9) 前記組織表面が、角質層、粘膜、血管、骨、脳、および膀胱からなる群より選択される、項目7に記載のマイクロチップデバイスアレイ。
(項目10) 前記マイクロチップデバイスエレメントが、前記レザバ上にレザバのキャップを含む、項目1に記載のマイクロチップデバイスアレイ。
(項目11) 前記マイクロチップデバイスエレメントにワイヤレスで連絡する手段をさらに含む、項目1に記載のマイクロチップデバイスアレイ。
(項目12) 前記連絡する手段が、入射光のエネルギーを受け取るための光電池を含む、項目11に記載のマイクロチップデバイスアレイ。
(項目13) エネルギー貯蔵手段をさらに含む、項目1に記載のマイクロチップデバイスアレイ。
(項目14) 前記エネルギー貯蔵手段が、コンデンサー、電池、または、それら両方を含む、項目13に記載のマイクロチップデバイスアレイ。
(項目15) 項目1に記載のマイクロチップデバイスアレイであって、前記マイクロチップデバイスエレメントが、各々、共通エネルギー供給源によってエネルギーを供給され得るか、または共通の制御供給源によって制御され得るように、該マイクロチップデバイスアレイが、2つ以上の該マイクロチップデバイスエレメント間の電気的接続をさらに含む、マイクロチップデバイスアレイ。
(項目16) 前記レザバが、薬物分子を含む、項目1に記載のマイクロチップデバイスアレイ。
(項目17) 前記レザバが、曝露のための1つ以上の第2のデバイスを含む、項目1に記載のマイクロチップデバイスアレイ。
(項目18) 前記第2のデバイスが、センサーを含む、項目17に記載のマイクロチップデバイスアレイ。
(項目19) 前記センサーが、圧力センサーまたは化学センサーである、項目18に記載のマイクロチップデバイスアレイ。
(項目20) 項目1に記載のマイクロチップデバイスアレイであって、前記マイクロチップデバイスエレメントが、薬物分子を含む複数のレザバおよびセンサーを含む少なくとも1つのレザバを含む、マイクロチップデバイスアレイ。
(項目21) 項目1に記載のマイクロチップデバイスアレイであって、前記レザバが、診断用試薬、触媒、コンビナトリアルケミストリー前駆体、および芳香分子からなる群より選択される分子を含む、マイクロチップデバイスアレイ。
(項目22) 電気的トレースが、前記デバイスエレメントに可撓的に接続するための前記手段の中に作製された、項目1に記載のマイクロチップデバイスアレイ。
(項目23) 可撓性で、受動的な放出デバイスエレメントを含む、項目1に記載のマイクロチップデバイスアレイ。
(項目24) 前記患者における組織内腔または他の器官構造の開放性を増強させる、項目7に記載のマイクロチップデバイスアレイ。
(項目25) 患者に薬物分子を送達するための方法であって、該方法は、以下:
該患者の組織表面内または組織表面上に項目16に記載のマイクロチップデバイスアレイを移植する工程;および
1つ以上の前記レザバから有効量の該薬物分子を選択的に放出させる工程、
を包含する、方法。
(項目26) 前記マイクロチップデバイスが、前記患者の強膜もしくは眼の別の表面上または、該患者の強膜もしくは眼の別の表面内に移植される、項目25に記載の方法。
(項目27) 前記薬物の放出が、ワイヤレスで作動する、項目25に記載の方法。
(項目28) 前記作動が、マイクロチップデバイスアレイへの光の適用による作動である、項目27に記載の方法。
(項目29) 前記光が、レーザー源からの光である、項目28に記載の方法。
(項目30) 前記レーザー光が、前記レザバを覆う1つ以上のレザバキャップを除去または透過する、項目29に記載の方法。
(項目31) 前記組織表面が、角質層、粘膜、血管、骨、脳、および膀胱からなる群より選択される、項目25に記載の方法。
(項目32) 1つの部位で分子または物理学的特性を感知するための方法であって、該方法は、以下:
1つの部位に、項目18に記載のマイクロチップデバイスアレイを移植する工程;および
該部位で分子または特性に該センサーのうち少なくとも1つのセンサーを選択的に曝し、これにより該少なくとも1つのセンサーに該分子または該特性を感知させ得る、工程
を包含する、方法。
(項目33) 患者の眼の上または眼の中の分子または物理学的特性を感知するための方法であって、該方法が、以下:
複数のレザバを有するマイクロチップデバイスを提供する工程であって、該複数のレザバが、センサーを含む、工程;
該患者の眼の中または眼の上の部位に該マイクロチップデバイスを移植する工程;および
該部位の分子または特性に、1つ以上の該センサーを選択的に曝露する工程、
を包含する、方法。
(項目34) 前記センサーが、圧力センサーを含み、そして状態が、眼内圧である、項目33に記載の方法。
(項目35) 前記センサーが、化学センサーを含む、項目33に記載の方法。
(項目36) 前記センサーの前記選択的曝露が、ワイヤレスで作動する、項目33に記載の方法。
(項目37) 前記作動が、前記マイクロチップデバイスへの光の適用による作動である、項目36に記載の方法。
(項目38) 前記光が、レーザー源からの光である、項目37に記載の方法。
(項目39) 前記レーザー光が、前記レザバを覆う1つ以上のレザバキャップを除去または透過する、項目38に記載の方法。
(項目40) 項目33に記載の方法であって、前記マイクロチップデバイスが、マイクロチップデバイスアレイを含み、該マイクロチップデバイスアレイが2つ以上のマイクロチップデバイスエレメントを含み、該2つ以上のマイクロチップデバイスエレメントの各々が、複数のレザバおよび手段を含み、該複数のレザバが、制御された放出のための分子または選択的な曝露のための成分を含み、該手段が、可撓性アレイが前記眼の湾曲状の表面に適合し得るように、該デバイスエレメントを可撓的に接続するための手段である、方法。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1A】図1Aは、平たんで、堅固なマイクロチップアレイが、どのように、電気の接続ならびに共有された電源源および制御源を含む可撓性支持層上に組み込まれるかを例示する。
【図1B】図1Bは、平たんで、堅固なマイクロチップアレイが、どのように、電気の接続ならびに共有された電源源および制御源を含む可撓性支持層上に組み込まれるかを例示する。
【図1C】図1Cは、平たんで、堅固なマイクロチップアレイが、どのように、電気の接続ならびに共有された電源源および制御源を含む可撓性支持層上に組み込まれるかを例示する。
【図2A】図2Aは、レーザーによる電源およびデータ伝達を備える眼への薬剤放出のための眼用マイクロチップデバイスの配置の1実施形態を例示する。
【図2B】図2Bは、眼に移植される眼用マイクロチップデバイスのようなものに動力およびデータを伝達する眼用レーザーを使用するプロセスを例示する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(発明の詳細な説明)
眼は、比較的小さい器官である。眼の表面の内側と外側の両方は、湾曲しており、それ故、眼に薬剤を送達するために使用されるか、または眼におけるセンサーとして使用される任意のデバイスのサイズ、形および剛性は、重要である。マイクロチップデバイスは、特定の適用の特異的な要求に依存して、大きくまたは小さく作製され得る。これらのマイクロチップのための基材は、周囲の環境に放出されるか、または曝露されることを所望されるまで、レザバの内容物を保護する半導体または他の材料から構成され得る。小さいデバイスについて、基板材料の形および剛性は、大きいデバイスについての基板材料の形および剛性ほど重要ではない。例えば、十分に薄くする場合、いくつかの代表的な堅い基板材料(例えば、シリコン)は、可撓性になり得る。しかし、平滑な、堅いマイクロチップが、拡張されるか、または厚くされる場合、眼の湾曲に余り適合し得なくなる。眼の表面に接触するデバイスの表面全体、別の湾曲した組織表面、またはこの問題についての任意の他の湾曲した表面が必要である場合、これは、問題であり得る。
【0024】
それ故、湾曲した表面に適合し得るマイクロチップデバイスアレイ(すなわち、可撓性マイクロチップデバイス)が、開発されている。好ましい実施形態において、これは、可撓性支持層に付着されたいくつかの小さいマイクロチップデバイスエレメントのアレイを作るマイクロチップデバイスとともに達成される。支持層上の各マイクロチップは、独立して制御され得(すなわち、個々の電源および制御供給源)、またはマイクロチップのアレイが、可撓性支持層に組み込まれる電気の接続を介して1つのユニット(すなわち、共有される電源および制御供給源)として制御され得る(図1を参照のこと)。
【0025】
好ましい実施形態において、このデバイスは、眼に対する薬剤または他の化学物質の送達における使用、眼における変化の判断または他の診断テストの実行、およびこれらの組み合わせ、例えば、眼の内または外のいずれかの湾曲状表面に適合する堅いマイクロチップを構成するデバイスアレイを用いて適合される。特定の眼の条件(著しい黄斑の変性および糖尿病のレチノパシー)は、眼へ送達される医薬品の周期的投与により処置され得る;しかし、それを実行するための方法(例えば、注射)は、困難である。移植されたマイクロチップデバイス(例えば、本明細書中で記載されたような)は、延長された時間期間に基づく周期で眼へ1つ以上の型の医薬品の用量を送達するための改善された方法提供するべきである。マイクロチップは、薬剤の正確かつ制御された局部送達を提供し得、全身性の放出を有利に減少するか、または回避する。
【0026】
(デバイス)
好ましい実施形態において、デバイスは、可撓性支持層に付着されるか、または可撓性支持層と一体となるマイクロチップデバイスエレメントを含む。好ましくは、少なくとも2つ(例えば、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも12など)のマイクロチップデバイスエレメントのアレイは、組織表面の湾曲(例えば、以下に記載されるような眼の表面)に適合し得る単一の大きい可撓性デバイスを形成する。
【0027】
他の実施形態において、可撓性マイクロチップデバイスは、単一のマイクロチップデバイスエレメント、または2つ以上のマイクロチップデバイスエレメントのアレイの形態において提供され、このエレメントは、可撓性の基板を有する。例えば、適切なポリマー基板を成形するか、さもなくば形成することによって、このような実施形態が、提供され得、そして特に受動放出の設計に適する。
【0028】
(マイクロチップデバイスエレメント)
マイクロチップデバイス(すなわち、マイクロチップデバイスエレメント)は、両方ともSantiniらに対する、米国特許第5,797,898号および同第6,123,861号、ならびにPCT WO01/64344、WO 01/41736、WO01/35928、およびWO 01/12157に記載され、これらは、本明細書中でその全体を参考として援用される。各マイクロチップデバイスは、放出または曝露のためのレザバ内容物を含む複数のレザバを有する基板を含む。
【0029】
好ましい実施形態において、各レザバは、レザバ内容物を覆ってレザバ上に位置されたレザバキャップを有し、ここで、レザバ内容物の放出または曝露は、レザバキャップを介した拡散か、またはレザバキャップの崩壊によって制御される。このレザバキャップは、アノードであり得、その結果、カソードとアノードとの間に電圧を印加する際に、レザバキャップが酸化されて、その崩壊が容易になり、これによって、レザバ内容物を、周囲の流体に曝露する。
【0030】
別の実施形態において、レザバキャップは、その整合性または空隙率が、レザバキャップ(例えば、電気応答性ポリマーに関して)または抵抗器もしくは抵抗加熱器の近く(例えば、熱応答性ポリマーに関して)への電気エネルギーの印加の際に調節(すなわち、増加または減少)され得る、電気応答性ポリマーまたは熱応答性ポリマーを含む。同様に、レザバキャップは、マイクロチップデバイスまたは他の供給源によって提供される電磁エネルギー、音響エネルギー、または特定の化学種(例えば、化学的作動について)の適用によって調節され得る空隙率を有するポリマーを含み得るか、またはこのようなポリマーから形成され得る。
【0031】
このマイクロチップデバイスが、作製され得、そして当該分野において公知のミクロ製造技術、特に両方ともSantiniらに対する米国特許第5,797,898号および同第6,123,861号、ならびにPCT WO01/64344、WO 01/41736、WO 01/35928、およびWO 01/12157において記載され、そして参照される方法を用いて組立てられる。
【0032】
このデバイスは、好ましくは、長期間の移植または眼の組織と接触した状態で、生理学的に受容可能な、公知の材料で構築および/またはコートされる。
【0033】
(可撓性連結のための手段)
好ましくは、可撓性連結のための手段は、各デバイスエレメントの少なくとも1つの表面に固定された可撓性支持層を含む。
【0034】
可撓性支持層は代表的には、レザバの放出/曝露開口部の遠位側にあるマイクロチップデバイスエレメントに付着される。さらに、またはあるいは、可撓性支持層が、1つ以上の開口部が整列されたレザバ開口部を提供される場合、または可撓性支持層が、多孔性であるか、または(i)レザバから放出され得る分子もしくは(ii)レザバ内容物と接触する必要がある目的の環境の分子、に浸透可能である場合、可撓性支持層は、放出側に固定され得る。あるいは、マイクロチップデバイスエレメントは、効果的に、可撓性支持層内に埋め込まれ得る。
【0035】
可撓性支持層は、本質的に任意の可撓性材料から作製され得るが、好ましくは、ポリマーを含む。適切なポリマーの代表的な例としては、ポリイミド、ポリエステル、パリレン、およびヒドロゲルが挙げられる。特に生体適合性である他の可撓性材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびシリコンが挙げられる。
【0036】
可撓性支持層はまた、積層構造であり得る。例えば、それは1つ以上の生体適合性物質でコーティングされた導電体を含む内部可撓性物質から構成され得る。
【0037】
マイクロチップデバイスエレメント、および他の構成要素は、可撓性支持層上に表面付けされるか、可撓性支持層内に組み込まれ得る。例えば、マイクロチップデバイスエレメントおよび他の構成要素は、導電性の接着剤、非導電性の接着剤(例えば、エポキシ)、ハンダ付け、またはワイヤーボンディングを用いて表面付けされ得る。あるいは、マイクロチップエレメントは、例えばネジまたはクリップにより機械的に取り付けられ得る。
【0038】
可撓性層はまた、網状物質からなるか網状物質を含み得、この網状物質は、一般的に組織に縫合しやすい。このような網状物質は、その用途に依存して、生分解性または非生分解性であり得る。
【0039】
1つの実施形態において、電気接続または電気トレース(trace)は、デバイスエレメントを曲げやすく接続するための手段に組み込まれている。例えば、可撓性ポリマーフィルム内への電気接続の組み込みは、マイクロエレクトロニクスパッケージングの当業者により周知である。代表的なアプローチは、単層または多層の可撓性プリント回路、および有機(通常は、ポリイミド)誘電体層を使用するMultichip Modules−Deposited(MCM−D)を含む。例えば、MCM−Dの「チップファースト」形式において、薄いチップが、底部の誘電体層上に配置され、次いで相互接続された層がそれらの上方に組み込まれ、それによって、チップが組み込まれる。次いで、他のチップ(例えば、マイクロチップデバイスエレメント)が、表面付けされ得る。フレキシブル回路およびMCM−Dの製造技術は、例えばCoombs、Printed Circuits Handbook、第4版(McGraw−Hill 1996)およびHarper、Electronic Packaging and Interconnection Handbook、第3版(McGraw−Hill 2000)に記載されている。
【0040】
小さく剛性で受動的に放出するマイクロチップもまた、支持層上に組み込まれ、その結果、それらは眼の湾曲により適合し得ることもまた、理解されている。能動的マイクロチップとは異なり、受動的マイクロチップは、可撓性基板において、電力また制御電源または電気接続を全く必要としない。この場合、可撓性基板は、受動的マイクロチップデバイスエレメントを適所に保有することのみに役立つ。
【0041】
他の実施形態において、可撓性接続のための手段は、2つ以上のデバイスエレメントを接続する1つ以上のヒンジまたは可撓性テザーを含み、その結果、アレイは湾曲状の表面に適合し得る。例えば、四角いマイクロチップデバイスエレメントの4つの縁の各々は、1つ以上のヒンジまたは可撓性テザーにより、隣接したマイクロチップデバイスエレメントの縁に接続され得る。このヒンジまたはテザーは、このデバイスエレメントの角でまたはデバイスエレメントの縁に沿って接続され得る。可撓性支持層は、このようなテザーまたはヒンジを形成するため、あるいはそれらを補完するために使用され得る。
【0042】
(マイクロチップレザバ内容物)
マイクロチップレザバ内容物は基本的に、マイクロチップデバイスのレザバに含まれ得る、任意の化学薬品または第2のデバイス、またはそれらの部分であり得る。用語「第2のデバイス」は代表的に構造をいい、そしてレザバから放出されることが意図される薬剤または他の化学分子を含まない。マイクロチップデバイスは、種々の形態(例えば、固体、液体またはゲル)で多数の薬剤または化学薬品を含み得、そしてセンサーまたは診断用薬を含み得る。
【0043】
好ましい実施形態において、化学薬品は、治療薬、予防薬または診断薬である。用語「薬物」は、特定の薬が明白に示されていない限り、これらの薬剤のいずれかをいう。適切な薬剤の代表的な型としては、タンパク質、精製したポリペプチドおよび核酸分子、ならびに合成有機分子および天然有機分子が挙げられる。
【0044】
適切な治療分子または適した予防分子の代表的な例には以下が挙げられる:抗生物質(例えば、テトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、バシトラシン、ネオマイシン、ゲンタマイシン、エリスロマイシンおよびペニシリン);抗菌薬(例えば、スルホンアミド、スルファジアジン、スルファセタミド、スルファメチゾールおよびスルフィソキサゾール、ニトロフラゾンおよびプロピオン酸ナトリウム;抗ウイルス薬(例えば、イドクスウリジン、トリフルオロチミジン、アシクロビル、ガンシクロビルおよびインターフェロン);他の抗菌薬物(例えば、ヨウ素ベースの調製物(例えば、トリクロサン、クロルヘキシジン));抗アレルギー薬(例えば、クロモグリク酸ナトリウム、アンタゾリン、メタピリレン、クロルフェニラミン);抗炎症薬(例えば、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン、デキサメタゾン21リン酸塩、フルオロシノロン(fluorocinolone)、メドリゾン、酢酸プレドニソロン、フルオロメトロン、βメタゾン、および非ステロイド剤(例えば、インドメタシン、ジクロフェナク、フルルビプロフェン、イブプロフェン、およびアセチルサリチル酸));散瞳薬(例えば、硫酸アトロピン、シクロペントレート、ホマトロピン、スコポラミン、トロピカミド、ユーカトロピン、およびヒドロキシアンフェタミン);交感神経模倣薬(例えば、エピネフリン);免疫学的な薬物(例えば、ワクチン)および免疫促進剤;βアドレナリン遮断薬(例えば、マレイン酸チモロール、塩酸レボブノロール(levobunclol HCL)および塩酸ベタキソロール);成長因子(例えば、上皮細胞成長因子およびフィブロネクチン);炭酸脱水酵素阻害薬(例えば、ジクロルフェナミド、アセタゾールアミドおよびメタゾルアミドならびに他の薬物(例えば、プロスタグランジン、抗プロスタグランジンおよびプロスタグランジン前駆体));血管形成阻害薬(例えば、ステロイド、アンギオスタチン、抗増殖性剤(例えば、フルオロウラシルおよびマイトマイシン));抗血管新生因子;免疫調節薬;遺伝子転移のためのベクター(例えば、DNA,プラスミド、ウイルスベクター);細胞障害性薬および化学療法薬物。
【0045】
診断薬の例には、画像化剤(例えば、造影剤)が挙げられる。レザバ内容物はまた、例えば、診断検出および分析生化学での使用のための、触媒(例えば、ゼオライト、酵素)、非治療試薬、コンビナトリアル化学についての前駆体、またはそれらの組み合わせから選択され得る。レザバ内容物はまた、非生物医学的分子(例えば、芳香分子)であり得る。
【0046】
レザバ内容物はまた、第2のデバイス(例えば、センサーおよび検出エレメント)を含み得る。特定の好ましい実施形態において、レザバは、例えば眼圧を測定するための圧力センサーを含む。レザバ内容物は、特定の用途に依存して、レザバから放出されるかレザバ内で固定されたままであるかのいずれかである。
【0047】
レザバ内に含まれ得るかまたはレザバの近くで提供され得るセンサーの型には、バイオセンサー、化学センサー、物理センサー、または視覚センサーが挙げられる。好ましいセンサーは、特性(例えば、生物活性、化学活性、pH、温度、圧力、光学特性、放射能および電気伝導率)を測定する。これらは、別個のセンサー(例えば、「既成」のセンサー)または基板に組み込まれたセンサーであり得る。バイオセンサーは、代表的に認識エレメント(例えば、酵素または抗体)を含む。分析物または認識エレメント間の相互作用を電気信号に転換するために用いられるトランスデューサーは、本質的には、例えば電気化学的、光学的、圧電気的または熱的であり得る。超微細加工方法を使用して構築されたバイオセンサーの代表的な例は、米国特許第5,200,051号、同第5,466,575号、同第5,837,466号および同第5,466,575号に記載されている。
【0048】
マイクロチップデバイス内に位置づけされた第2のデバイスを用いて得られたデータを受信しそして解析するためのいくつかの異なるオプションが存在する。第1にデバイスからの出力信号は、書きこみ可能なコンピューターのメモリーチップに記録され、そして保存され得る。第2に、デバイスからの出力は、即座の解析およびプロセシングのためのマイクロプロセッサに指向され得る。第3に、この信号は、マイクロチップから離れた遠隔位置に送られ得る。例えば、マイクロチップは、マイクロチップからコンピューターまたは他の遠隔受信源に信号(例えばデータ)を送信するために、無線送信機と共に組み込まれ得る。マイクロチップはまた、同じ送信機構を使用して制御され得る。電力は、マイクロバッテリにより局所的に、または無線送信により遠隔的にマイクロチップに供給され得る。眼内レーザーは、以下で詳細に記載されるように、電力およびデータを無線により送信するために使用され得る。
【0049】
個々のレザバは、化学薬品の多数の型、デバイスの多数の型、またはデバイスおよび化学薬品の組み合わせを含み得る。種々の実施形態において、マイクロチップデバイスは、1つ以上の薬物、1つ以上のセンサー、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0050】
(眼との境界面または他の移植部位)
本明細書中で記載されるマイクロチップデバイスは、単一で大きく剛性なマイクロチップデバイスが好ましくあり得ない種々の部位で有用である。このような部位の例には以下のものが挙げられるがこれらには限らない:ヒトおよび他の哺乳動物における移植部位。本明細書中で使用される場合、「移植」および「移植する」は代表的に、組織表面上にマイクロチップデバイスを安全に位置づけることをいう。例えば、本明細書中で記載されるマイクロチップデバイスは、眼の外面に装着され得るか、または公知の医術および外科技術を使用または適応して眼内に移植され得る。
【0051】
あるいは、このデバイスは別の湾曲状の組織表面(例えば、皮膚、粘膜組織表面、血管壁(内側または外側)、角質層または他の皮膚組織、粘膜、血管、骨(例えば、頭蓋骨、大腿骨)、脳、および他の器官組織表面(例えば、膀胱))に適合するように設計されている。このようなデバイスは、薬物送達および検出用途のために使用され得る。可撓性デバイスはまた、例えば、抗凝固薬または抗アテローム硬化薬を放出する一方で、治療目的のために(例えば、組織管腔の開存性を機械的に維持するため)のために接触組織を再配置するのに役立ち得る。膀胱において、可撓性デバイスは、例えば、表住性膀胱癌の処置のために、内部表面にバシラスCalmette−Guerin(BCG)を送達するために使用され得る。
【0052】
(電力およびデータの送信)
能動的なマイクロチップデバイスは、レザバからの分子の放出またはレザバ内容物の露出を開始するための電力を必要とする。能動的なマイクロチップデバイスからの放出または露出を開始するための電力を供給する2つの主要な方法が存在する。これらには、プレチャージ(pre−charged)電力源の使用およびオンデマンド(on−demand)電力源の使用が挙げられる。プレチャージされた電源(例えば、プレチャージマイクロバッテリ)は、マイクロチップおよびその付属したエレクトロニクスと共に組み込まれ得る。このようなプレチャージマイクロバッテリは、例えば、そのマイクロチップ上で製造された薄膜バッテリであり得るか、または相互接続およびパッケージングを介してマイクロチップに接続された別個の構成要素として存在し得る。プレチャージされた電源の場合において、電力源は、マイクロチップの作動する寿命の間に必要とされる全ての電力を貯蔵しなければならない。もし必要とされる全ての電力が保持され得ないならば、マイクロチップの寿命の間に、ある時点で新しいバッテリを、古いバッテリと取り替えなければならない。
【0053】
必要な電力は、いつでもマイクロチップに送信され得るので、オンデマンド電源(例えば、電力の無線の送信および受信)は、物理的に接続されるか、またはマイクロチップと共に含まれる電力貯蔵装置を必要としない。プレチャージされた電源と異なり、無線方法により電力を受信する性能を備えるマイクロチップシステムは、マイクロチップの作動する寿命の間に必要とされる電力の全てを貯蔵する必要があるわけではない。代わりに、電力は必要に応じて(すなわち、必要とされる場合)マイクロチップに適用され得る。しかし、マイクロチップ上またはマイクロチップの近くの少量の電力を貯蔵することが所望ならば、オンデマンド電源に依存するマイクロチップは、「リチャージブル(re−chargeable)」電力貯蔵ユニット(すなわち、コンデンサー、リチャージブルマイクロバッテリ)を含み得る。この違いは、プレチャージされた電源は、必要とされる電力の全てを含むかまたは取り替えられなけらばならず、そしてオンデマンド電源は、それらがいつでも電力を受信し得るかまたはリチャージされ得るので、必要とされる電力の全てを含む必要がないということである。無線送信によるオンデマンド電源は公知であり、そして例えば、Muellerらに対する米国特許第6,047,214号;Kirchhoffに対する米国特許第5,841,122号;ならびにBarrerasに対する米国特許第5,807,397号に記載されている。レザバ内容物の化学的な放出または選択的な露出のために、マイクロチップに電力を無線送信するためのシステムの基本的なエレメントは、電磁波(すなわち、高周波信号発生器またはRF)、光(例えば、眼内レーザー)または超音波、および受信機によって電力を送達するための送信物質を含む。さらなる構成成分は、電力の変換(例えば、整流器、トランスデューサ、電力貯蔵ユニット(例えば、バッテリーまたはコンデンサー、および電位/電流コントローラー(すなわち、定電圧/ガルバノスタット)))の手段を含み得る。
【0054】
これらの単位の各々(外部エネルギー送信源を除いて)は、例えば、Madou、Fundamental of Microfabrication(CRC Press、1997)に記載されるようなMEMS製造技術を使用するか、または例えば、Wolf&Tauber、Silicon Processing for the VLSI Era(Lattice Press、1986)に記載されるような標準的なマイクロエレクトロニクスプロセシング技術を使用して、マイクロチップ(「オンチップ」構成要素)上に製造され得る。さらに、これらの単位の各々(外部エネルギー送信源を除いて)は、ハイブリッド電気パッケージまたは複数のチップモジュール(MCM)を使用してマイクロチップに接続され得る「既成」のマイクロエレクトロニクス構成要素として存在し得る。無線手段を介して電力を受信する性能を備える能動的なマイクロチップはまた、「オンチップ」の構成要素および「既成」の構成要素の組み合わせから構成され得る。無線技術を使用してデータを送信および受信する方法は、電力の無線送信のために使用される方法と非常に類似している。したがって、このような無線送信およびデータの送信システムの設計および製造は公知であるか、または当業者により常用的にすぎない実験を使用して行なわれ得る。
【0055】
(眼の実施形態)
1つの実施形態において、眼のマイクロチップデバイスは、可撓性支持層に取り付けられた小さく剛性な薬物含有マイクロチップのアレイの形態であり、その結果、全体のアレイは、眼の裏側の外面に適合し得る。マイクロチップは、支持層に組み込まれた可撓性電気接続により、お互いに接続される。この実施形態において、マイクロチップのアレイは、単一のマイクロプロセッサにより制御され、そして電力は小さなバッテリにより供給される。アレイは、眼の裏面に装着され、そして支持層を介するいくつかの小さな縫合により適所に、そして目の内部組織内に保持される。マイクロプロセッサは予めプログラムされ、多重化回路を介して電力をバッテリから特定のレザバキャップへ方向付けることにより特定のレザバから薬物を放出する。特定の実施形態において、キャップは金から作られており、そして約1ボルトの電位(対SCE)がこれらに適用された場合、キャップは生物学的溶液中で崩壊する。いったん薬物がレザバから放出されると、眼の表面と接触し、そして眼内に拡散する。このプロセスは、単一のマイクロチップまたはマイクロチップのアレイから放出されたいくつかの異なる薬物を用いて、何度も繰り返され得る。デバイス構成要素の型および構成およびアレイにおけるマイクロチップの数は、特定の用途について必要とされる場合変えられ得る。
【0056】
この実施形態は、図1A〜Cで示されている。図1Aおよび1Bは、可撓性支持物質52に取り付けられたマイクロチップデバイスエレメント54を備える眼のマイクロチップデバイス50の、それぞれ、平面図および断面図を示す。この能動的放出の実施形態において、デバイス50もまた、能動的エレクトロニクス56(例えば、マイクロプロセッサ、マルチプレクサ、タイマーなど)およびマイクロバッテリ58を備える。各マイクロチップデバイスエレメント54は、多数のレザバ62を含む基板60を備える。レザバは、本明細書中で記載されるように薬物または他のレザバ内容物を含み得る。図1Cは、どのようにデバイス50が、眼の表面上に移植され得るかを示す。デバイス50が縫合62を用いて取り付けられている眼の断面図(ここで、眼の表面は、曲線の点線により表わされている)。当該分野で公知である他の技術もまた、適切なようにデバイスに縫合するために使用され得る。
【0057】
(デバイスの使用方法)
マイクロチップデバイスエレメントは、米国特許第5,797、898号、米国特許第6,123,861号、PCT WO01/64344、PCT WO01/35928およびPCT WO01/12157ならびに本明細書中に記載されているように、一般的に使用されそして操作され得る。
【0058】
本明細書中で記載されるように、レザバの起動は、無線によって行なわれ得る。一般的に、これは、一致する/対応する第2のコイルに誘導的に電磁エネルギーを結合するために第1のコイルを使用して実施される遠隔測定(すなわち、送信および受信)をいう。これを行なう手段は、種々の変調スキーム(例えば、搬送周波数によりデータを送信するために使用される振幅変調または周波数変調)を用いて十分に確立される。搬送周波数および変調スキームの選択は、デバイスの位置および他の因子の間で必要とされるバンド幅に依存する。他のデータの遠隔測定手段もまた、使用され得る。実施例には、受信機が光電セル、光ダイオード、および/または光トランジスタの形態である光通信、あるいは送信物質が発光ダイオード(LED)またはレーザーである光通信が挙げられる。
【0059】
(マイクロチップデバイスの光作動)
薄膜の金のレザバキャップを備えるシリコンマイクロチップデバイスを電気化学的に作動させるための電力の必要量は、電力が光学的に供給され得るのに十分な少量である。信号輸送電力が変調され、デバイスに送信される情報を含む多数の無線システムにおいて行なわれるように、眼内レーザーは、デバイスへの電力の供給およびデバイスへの指令の送信の両方に使用され得る。あるいは、非レーザー源からの集束光は、デバイスを操作するのに十分であり得る。
【0060】
好ましい実施形態において、集束光(例えば、レーザー源から)が、このデバイスの移植の後のマイクロチップデバイスのレザバを作動または始動するために用いられる。例えば、レーザーは、慣用的に、糖尿病性網膜症、網膜剥離、および加齢関連黄斑変性のような状態を処置するために、眼の外科手術および他の眼用手順において用いられる。これらの手順の多くは、眼科医医院において実施され得る、単純で、患者外の手順である。このマイクロチップデバイスは、眼の中に移植され得、次いでそのようなレーザーを用いて作動し、このデバイスへの電力供給およびこのデバイスの制御のために、電力、データまたはそれらの両方を送信する。眼科医は、患者の眼の中(または眼上)の、マイクロチップデバイスが容易に利用可能な位置(すなわち、移植部位)のマイクロチップの適切な部分に眼のレーザーを向けることによって、薬物放出および眼に移植されたマイクロチップとの連絡を開始し得る。多くの眼科医は、既に、そのようなレーザーの使用に熟練している。
【0061】
好ましい実施形態において、この移植されたワイヤレスの眼用送達系は、薬物を含むマイクロチップ、コントローラー、外部インターフェース、および電力変換エレクトロニクス、および作動エレクトロニクスを含む。この外部インターフェースおよび電力変換エレクトロニクスは、代表的に、入射光(例えばレーザー)エネルギーを受け取る光電池、必要とされる電圧を発生させるための回路、コンデンサーまたは電池のような貯蔵手段、ならびにレーザーのインプットを変調することによって送信された情報をデコードするための回路からなる。示された集積回路がいくつかの応用に関して有用であり得るが、このコントローラーは、代表的に、マイクロプロセッサー、メモリー、クロックである。
【0062】
電気化学マイクロチップを始動させるために必要とされるエレクトロニクスは、ポテンシオスタット/ガルヴァノスタットのような電極電位を制御するための手段、および所望のレザバに電位を指向するためのデマルチプレクサーを含む。所望の場合、この系は、例えば、好首尾な投与の送達を確認するためのフィードバックを提供し得る。この情報は、発光ダイオード(LED)を用いてか、または他のワイヤレス送信(例えば、RF)の様式によって光学的に、オペレーターまたはコンピューターモニタリングシステムに送信されて戻り得る。
【0063】
(ワイヤレスのレザバ作動)
眼用レーザーはまた、眼の内部に移植されているかまたは眼の外側に取り付けされたマイクロチップデバイスのレザバを開けるために用いられ得る。外科医は、レーザーを1つ以上のレザバキャップに向け得、このキャップ物質の崩壊を引き起こすかまたは、これを透過性にし、これによりそのレザバに含まれる薬物または化学薬品を放出し得るか、または周辺の環境に、このレザバの他のレザバ内容物(例えば、センサ)を曝露し得る。例えば、このレザバキャップは、低融点ポリマーで作製され、そしてのレーザーがこのレザバキャップを柔軟化または溶解する場合に、このレザバは、開けられる。
【0064】
1つの実施形態において、ポリマーレザバキャップを有するマイクロチップデバイスは、眼の内側に移植され、そして縫合によって適所に保持される。このポリマーキャップは、外的刺激の適用なしでは、溶解もしないし、眼への薬物の放出も可能としない。この実施形態において、対応するレザバからの放出が所望される場合、眼用レーザーは、1つ以上のポリマーレザバキャップに向けられる。眼用レーザーは、ポリマーレザバキャップの柔軟化および溶解を引き起こす局所的な温度の上昇を産生する。次いでそのレザバ内部の薬物が、レザバから出て眼の中の流体中に拡散する。この移植されたデバイスは、例えば、長期間にわたり必要とされるような薬物の送達のために用いられ得る。例えば、患者は、医院に定期的に(例えば、2〜4週間毎に)訪問し得、そして、医師は、眼用レーザーを用いて、移植されたマイクロチップデバイスの1つのレザバ(または複数のレザバ)を開けて、患者の眼の中に薬物を放出させ得る。
【0065】
類似の実施形態において、医師は、眼用レーザーを用いて、1つ以上のセンサーを含むレザバを開け、所望の場合、このセンサーが医師によって曝露され得る。代表的なセンサーとしては、圧力センサー、化学センサー、および免疫学的センサーが挙げられる。化学センサー(例えば、酸素電極)は、有用なセンサーの1つの例である。別の例は、圧力センサーであり、この圧力センサーは、眼内の圧力変化を測定および記録することによって、いくつかの眼の疾患(例えば、緑内障)の進行の監視を補助するために用いられ得る。この圧力感知機能は、別のレザバからの薬物の放出に関連し得、その結果、例えば、異常な高眼内圧の検出のとき、このマイクロチップデバイスは、別のマイクロチップレザバからの、圧力を低下させる薬物の放出のシグナルを送る。このことは、圧力感知マイクロチップと連絡された、同じデバイスまたは別々に組立てられたデバイスにおいてであり得る。
【0066】
移植可能なワイヤレスの眼内送達系は、代表的に、(1)局所的なコントローラー、外部インターフェース、電力変換エレクトロニクスおよび始動エレクトロニクスを備えるマイクロチップデバイス(1つ以上の薬物および/またはセンサーを含む);ならびに(2)集束光源を含む。外部インターフェースおよび電力変換エレクトロニクスは、代表的に、入射光エネルギーを受け取るための光電池、必要とされる電圧を発生させる回路、コンデンサーまたは電池のような貯蔵手段、およびレーザーのインプットを変調することによって送信された情報をデコードするための回路を含む。示される集積回路は、いくつかの実施形態のために作用し得るが、このコントローラーは、代表的に、メモリーおよびクロックのような関連する支持回路を有するマイクロプロセッサーである。電気化学マイクロチップを始動するために必要とされるエレクトロニクスは、代表的に、ポテンシオスタットまたはガルヴァノスタットのような電極電位を制御するための手段、および電位を所望のレザバに指向するためのデマルチプレクサーを含む。所望の場合、この系は、例えば、好首尾な投与の送達を確認するためのフィードバックを提供する。この情報は、発光ダイオード(LED)を用いてか、または他のワイヤレス送信(例えば、RF)の様式によってかのいずれかで光学的に、オペレーターまたはコンピューターモニタリングシステムに送信されて戻り得る。
【0067】
図2Aは、このマイクロチップデバイス構造の1つの可能性のある構造を例示し、ここでマイクロチップデバイス10は、放出される薬物を含むレザバ12のアレイまたは曝露されるセンサー、電力変換、始動エレクトロニクスおよび局所コントローラー領域14、光電池16、LEDまたはワイヤレス遠隔操作送信機18を含む。
【0068】
眼科医は、患者の眼の中に移植されたマイクロチップの適切な部分に眼用レーザーを向けることによって、薬物放出および眼に移植されたマイクロチップデバイスとの連絡を開始させ得る。図2Bを参照のこと。図2Bは、眼神経21を有する眼20を例示し、ここでマイクロチップデバイス28は、眼の内部の後方に移植される。眼用レーザー30は、レーザー光32を介し、角膜22、水晶体24、および硝子体液26を通って電力およびデータを指向して、移植されたマイクロチップデバイス28に電力を供給し、かつこれと連絡する。多くの眼科医は、既に、そのようなレーザーの使用において、すでに熟練し、従って、これらの手順は、容易に実施され得る。
【0069】
(眼用マイクロチップデバイスの適用)
このマイクロチップデバイスおよび使用の方法は、種々の治療的眼用適用、予防的眼用適用、および診断的眼用適用、ならびに他の(非眼用の)医療用移植適用のために用いられ得る。
【0070】
好ましい実施形態において、このデバイスは、黄斑変性、緑内障、糖尿病網膜症、色素性網膜炎、網膜静脈閉塞、鎌状赤血球網膜症、脈絡膜新脈管形成、網膜新脈管形成、網膜水腫または網膜虚血などのような網膜疾患または脈絡膜疾患の処置に用いられる。
【0071】
いくつかの適用において、このデバイスは、眼の上または眼の中の不適切な細胞の増殖の制御に用いられる。この細胞の特定の型および位置は、特定の疾患および障害に起因する。不適切な細胞の増殖の型の例としては、癌性悪性疾患(ここでこの細胞は、癌細胞である)、瘢痕(ここでこの細胞は、正常な線維芽細胞である)および疾患(ここでこの増殖細胞は、水晶体上皮細胞のような上皮細胞であり、これは、視界を害し得る)が挙げられる。1つの特定の適用は、上昇した眼内圧を低下するような房水流出のためのドレナージチャネルを作製するための、ろ過ブレブまたはフィステルの移植部位での創傷治癒の阻害であり、この上昇した眼内圧は、緑内障に関連する。
【0072】
(マイクロチップデバイスアレイの他の適用)
本明細書中に記載されるデバイスは、医療用および非医療用の両方での広範な種々の使用を有する。例えば、このマイクロチップデバイスに関する他の医療適用としては、血管の(内側または外側)壁および他の器官(例えば、膀胱)またはその中のような部位での薬物送達および感知が挙げられる。他の組織の表面(すなわち、移植部位)としては、肌(例えば、マイクロチップデバイスが、薬物の経皮送達のために用いられ得る、例えば、角質層)、および粘膜組織表面(例えば、膣または頬の薬物送達)、血管壁(内側または外側)、および他の器官(例えば、膀胱)が挙げられる。
【0073】
代表的な非医療用使用としては、産業診断、化学調査、消費者製品(例えば、芳香放出)等が挙げられる。
【0074】
本明細書中に記載される方法およびデバイスの改変およびバリエーションは、当業者にとって前述の詳細な説明から明らかである。そのような改変およびバリエーションは、添付の特許請求の範囲の範囲内になることが、意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に移植するための薬物送達デバイスであって、該デバイスが、以下:
第1のデバイスエレメントであって、該第1のデバイスエレメントは、第1の基板を含み、該第1の基板は、該第1の基板に配置された第1の複数の別個のレザバを有し、該レザバは、薬物分子および該レザバからの該薬物分子のインビボ放出を制御する分解性マトリクス材料を含む第1のデバイスエレメントと、第2のデバイスエレメントであって、該第2のデバイスエレメントは、第2の基板を含み、該第2の基板は、該第2の基板に配置された第2の複数の別個のレザバを有し、該レザバは、薬物分子および該レザバからの該薬物分子のインビボ放出を制御する分解性マトリクス材料を含む第2のデバイスエレメント;ならびに
可撓性支持層、
を含み、ここで該第1のデバイスエレメントおよび第2のデバイスエレメントは、該第1の複数の別個のレザバおよび該第2の複数の別個のレザバの各々から、該第1の複数の別個のレザバおよび該第2の複数の別個のレザバのうちの一方とは独立して該薬物分子が放出できるように、可撓性支持層上に取り付けられるか、可撓性支持層内に組み込まれており、よって、該薬物送達デバイスは、湾曲した組織表面に適合することができる、薬物送達デバイス。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate


【公開番号】特開2009−142661(P2009−142661A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222(P2009−222)
【出願日】平成21年1月5日(2009.1.5)
【分割の表示】特願2002−555792(P2002−555792)の分割
【原出願日】平成14年1月9日(2002.1.9)
【出願人】(501228004)マイクロチップス・インコーポレーテッド (12)
【Fターム(参考)】