説明

眼疾患を処置するための装置および方法

【課題】副作用のない、眼への生物学的活性分子の送達のための装置および方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、眼に生物学的に活性な分子を送達するための医療用デバイスの製造におけるカプセルの使用であって、このカプセルは、眼内にインプラントされるのに適合しており、そしてこのカプセルは、その生物学的に活性な分子の細胞の供給源を含むコアおよび周囲の生体適合性の外被を備え、その外被が、その生物学的に活性な分子の眼への拡散を可能にし、その結果、50pg/眼/患者/日〜500ng/眼/患者/日のその生物学的に活性な分子の投薬量が送達される、使用、を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の技術分野)
本発明は、生物学的に活性分子の眼内のおよび眼周囲への送達のために、被包性細胞を使用する眼の疾患および障害の処置のための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
現在良好な治療が存在しない、多数の眼の視覚を脅かす障害がある。このような疾患の処置の1つの主要な問題は、眼に治療薬を送達し、そして治療的に効果的濃度で治療薬をそこで維持することが出来ない点である。
【0003】
薬剤の経口摂取または眼以外の部位での薬剤の注射は、薬剤を全身に提供し得る。しかし、このような全身への投与は、薬剤の効果的なレベルを眼に特異的には提供しない。網膜、後索および視神経を含んでいる多くの眼の障害において、薬剤の適切なレベルが、達成され得ないかまたは投与の経口であるか非経口の経路により維持され得ない。さらに、これらの濃度を達成するために、反復された薬剤投与が必要であり得る。しかし、これは所望でない全身の毒性を生じ得る。例えば、成体の皮下または筋肉内に投与されたαインターフェロンは、合併症(例えば疲労を伴うインフルエンザのような症状、食欲低下、吐き気、嘔吐、血小板減少症および白血球減少症)を生じ得る。
【0004】
眼の症状はまた、液体または軟膏のいずれかの形態で眼に直接適用する薬剤を使用して処置されている。しかし、この投与経路は、角膜および眼の前部を含む眼の表皮表面に関連する問題および疾患を処置する際にのみ、効果的である。薬剤の局所投与は、強膜、硝子体または眼の後部において薬剤の適切な濃度を成し遂げる際には、無効である。さらに、局所点眼液は、眼から鼻涙管を通って体循環へと流れ、さらに薬物投与を薄め、そして不必要な全身の副作用を危険にさらす。さらに、薬剤は、薬物投与を必要とし得ず、そして事実不必要な副作用を被り得る組織区画を含む眼の全組織区画に無差別に投与される。
【0005】
局所点眼液の形態の薬剤の送達はまた、薬剤が角膜を透過し、そして硝子体、網膜または他の網膜下構造(例えば、網膜色素上皮(「RPE」)または脈絡膜血管系)で利用可能にされ得る能力を欠くタンパク質またはペプチドである場合、ほとんど役に立たない。さらに、多くのタンパク質またはペプチドは、非常に不安定であり、それゆえに、局所的送達のために容易に処方されない。
【0006】
局所的挿入による眼への薬剤の直接送達もまた、試みられている。しかし、この方法は、所望されない。局所的挿入は、挿入および除去の際、患者による自己注射、そして、それゆえ教育を必要とする。これはある程度の手の機敏性を要求する。これは、老人患者にとって、問題であり得る。多くの例において、このような挿入は、眼刺激を引き起こし得る。これらの装置は、蓋の不正確さのため不注意になる傾向がある。さらに、これらの装置は、角膜および前房だけに薬剤を提供し、そして点眼液におけるどんな薬理学的利点も提供しない。
【0007】
別の眼球外の挿入は、延長された期間にわたって薬物投与を放出するコンタクトレンズ送達系である。例えば、非特許文献1を参照のこと。レンズは、一般に、数時間または数日のみのあいだ全ての治療的化合物を持続し、その後溶解するかまたは放出する。頻繁な再投与が必要なため、薬物投与の持続性の送達は不便である。さらに、これらのコンタクトレンズは、薬剤を角膜および前房に提供するだけである。
【0008】
まれな症例において、薬剤の直接送達はまた、外面化された管を使用して達成されている。これは、患者の眼の角膜に、管の1端の挿入を必要とする。管の他端は、患者の額にテープ貼付され、そして薬物投与が送達される隔壁を終端として接続する。この方法は、不快でおよび不便であるので所望でない。薬物投与が隔壁により注射されなければならないため、装置は薬物投与の持続性送達をし得ない。さらに、このような管は、感染し得、そしていくつかの場合、最終的に患者の視覚を脅し得る。
【0009】
薬剤の直接送達はまた、薬剤の眼内注射または薬剤を含有する微粒子によって、達成され得る。しかし、微粒子は、視軸または隣接の組織部位のいずれかにおいて、眼内で移動する傾向がある。
【0010】
それらは、長期的使用のために不適切であるかまたは使用するのに不快であるので、眼への薬剤の直接送達のための最近の眼内挿入は首尾良く行われていない。例えば、特許文献1で開示される眼の装置は、固定されないので、装置が動く場合、痛覚、刺激、異物感覚、網膜剥離および流涙を引き起こす。特許において開示される他の眼球挿入は、挿入の長期的保持を可能にするサイズも形態も開示しない。例えば、特許文献2、特許文献3、特許文献4を参照のこと。改良された保持および延長された使用期間を主張している特許においてさえも、意図された期間は、数日(例えば7〜14日)と評価される。例えば、特許文献5を参照のこと。
【0011】
1つの眼内挿入は、ガンシクロビル(ganciclovir)の送達のために眼に現在利用可能である。Vitrasertとして知られる装置は、ガンシクロビル(非蛋白性のヌクレオシド類似体)を含有する非腐食性でポリマーベースの、持続放出パッケージから成る。この装置は、サイトメガロウィルス網膜炎を処置するために外科的に眼の硝子体液にインプラントされる。例えば、非特許文献2を参照のこと。
【0012】
別の眼内挿入は、特許文献6により開示される。粘着面頭部が、強膜表面に接して、眼の外部にあるように、この粘着形態装置は、外科的にインプラントされる。粘着面の後部は、強膜を交差し、そして硝子体液に達し、そこで、硝子体の薬物放出を提供する。
【0013】
しかし、このような装置(または他の腐食性であるか非腐食性のポリマー)からのタンパク質の放出は、タンパク質が不安定なため短期間の時間だけ保持され得る。このような装置は、ほとんどのタンパク質分子(もし全てでなければ)の長期的な送達のためには不適切である。
【0014】
網膜および脈絡膜血管新生のための臨床的処置は、光凝固法または寒冷療法を使用する新しい血管の破壊を含む。しかし、副作用は多数あり、そして血管新生を制御することの欠如、斑紋および中心視の破壊、および周辺視覚の減少を含む。例えば、非特許文献3を参照のこと。
【0015】
多数の増殖因子は、眼疾患の処置において見込みを示す。例えば、BDNFおよびCNTFは、多様な動物モデルにおける網膜神経節細胞および光レセプターの変性を遅滞することが示されている。例えば、非特許文献4を参照のこと。神経増殖因子は、視神経切片の後、網膜神経節細胞生存を改良することが示され、そしてまた、虚血後の網膜ニューロンの回復を促進することが示されている。例えば、非特許文献5を参照のこと。
【0016】
眼の硝子体液への神経栄養因子の直接注射は、網膜疾患の種々の実験的に誘導された外傷ならびに遺伝性モデルにおける網膜ニューロンおよび光レセプターの生残を促進することが示されている。例えば、非特許文献6;非特許文献7;非特許文献8;非特許文献9を参照のこと。
【0017】
しかし、このような神経伝達物質、増殖因子および神経栄養因子の送達の以前の方法は、著しい欠点を有する。いくつかの問題は、増殖因子がよく脳血液関門を交差せず、そして血流において、容易に分解するという事実に起因する。さらに、問題は、硝子体への直接注射で起こる。例えば、bFGFの直接注射は、網膜マクロファージおよび白内障の発生率の増大を生じた。非特許文献8を参照のこと。
【特許文献1】米国特許第3,828,777号明細書
【特許文献2】米国特許第4,343,787号明細書
【特許文献3】米国特許第4,730,013号明細書
【特許文献4】米国特許第4,164,559号明細書
【特許文献5】米国特許第5,395,618号明細書
【特許文献6】米国特許第5,466,233号明細書
【非特許文献1】JAMA、(1988)260:24、3556頁
【非特許文献2】Anand, R.ら、(1993)Arch. Ophthalmol., 111、223〜227頁
【非特許文献3】Aiello, L.P.ら、(1995)PNAS、92、10457〜l0461頁
【非特許文献4】Genetic Technology News、(1993年1月)第13巻、第1号
【非特許文献5】Siliprandiら、(1993)Invest. Ophthalmol.& Vis. Sci., 34、pp. 3232-3245
【非特許文献6】Faktorovichら、Nature、(1990年9月6日)第347巻83頁
【非特許文献7】Siliprandiら、Investigative Ophthalmology and Visual Science、(1993)34、3222頁
【非特許文献8】LaVailら,PNAS、(1992)89、11249頁、
【非特許文献9】Faktorovichら、Nature、(1990)347、pp.83-86
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
従って、副作用のない眼への生物学的活性分子の送達は、主要な課題のままである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
(発明の要旨)
上記目的を達成するために、本発明は、例えば、以下の手段を提供する。
(項目1)カプセルを眼周辺にインプラントする工程であって、そのカプセルは、生物学的に活性な分子の細胞の供給源を含有し、そして生体適合性の外被で囲まれるコアを含み、その外被は、眼へのその生物学的に活性な分子の拡散を可能にする工程を包含する、眼に生物学的に活性な分子を送達するための方法。
(項目2)上記外被が透過選択性の免疫的隔離膜を含む、項目1に記載の方法。
(項目3)上記カプセルがテノン嚢の下の空間にインプラントされる、項目1に記載の方法。
(項目4)上記カプセルが中空繊維または平板として構成される、項目1に記載の方法。
(項目5)上記生物学的に活性な分子が、抗血管因子、神経栄養因子、増殖因子、抗体および抗体フラグメント、神経伝達物質、ホルモン、酵素、サイトカインおよびリンホカインから成る群から選択される、項目1に記載の方法
(項目6)上記生物学的に活性な分子が、抗血管因子、抗炎症因子、神経栄養因子およびそれらの組合せから成る群から選択される、項目1に記載の方法。
(項目7)上記送達される生物学的に活性な分子の用量が50pg〜1OOOng/眼/患者/日である、項目1に記載の方法。
(項目8)上記インプラントされるカプセルの数が眼1つあたり1〜5カプセルである、項目1に記載の方法。
(項目9)第2の生物学的に活性な分子またはペプチドが上記カプセルから眼まで同時送達される、項目1に記載の方法。
(項目10)眼内にカプセルをインプラントする工程であって、そのカプセルは、生物学的に活性な分子の細胞の供給源を含有し、そして生体適合性の外被で囲まれるコアを含み、その外被は、眼へのその生物学的に活性な分子の拡散を可能にする工程を包含する、眼に生物学的に活性な分子を送達するための方法。
(項目11)上記外被が透過選択性の免疫的隔離膜を含む、項目10に記載の方法。
(項目12)上記外被が微細孔膜を含む、項目10に記載の方法。
(項目13)上記カプセルが硝子体にインプラントされている、項目10に記載の方法。
(項目14)上記カプセルが前房にインプラントされている、項目10に記載の方法。
(項目15)上記カプセルが後房にインプラントされている、項目10に記載の方法。
(項目16)上記カプセルが中空繊維または平板として構成されている、項目10に記載の方法。
(項目17)上記生物学的に活性な分子が、抗血管因子、神経栄養因子、増殖因子、抗体および抗体フラグメント、神経伝達物質、ホルモン、酵素、サイトカインおよびリンホカインからなる群から選択される、項目10に記載の方法。
(項目18)上記生物学的に活性な分子が、抗血管因子、抗炎症因子、神経栄養因子およびそれらの組合せから成る群から成る群から選択される、項目10に記載の方法。
(項目19)上記送達される生物学的に活性な分子の用量が、50pg〜500ng/眼/患者/日である、項目10に記載の方法。
(項目20)上記インプラントされるカプセルの数が眼1つ当たり1〜5のカプセルである、項目10に記載の方法。
(項目21)第2の生物学的に活性な分子またはペプチドが上記カプセルから眼に同時送達される、項目10に記載の方法。
(項目22)第1のカプセルを眼内にインプラントする工程であって、その第1のカプセルは、第1の生物学的に活性な分子の細胞の供給源を含有し、そして生体適合性の外被で囲まれるコアを含み、その外被は、眼へのその第1の生物学的に活性な分子の拡散を可能にする工程、
第2のカプセルを眼周囲にインプラントする工程であって、その第2のカプセルは、第2の生物学的に活性な分子の細胞の供給源を含有し、そして生体適合性で免疫的隔離された外被で囲まれるコアを含み、その外被は、眼へのその第2の生物学的に活性な分子の拡散を可能にする工程、
を包含する、生物学的に活性な分子を眼に送達する方法。
(項目23)上記第1のカプセルが硝子体にインプラントされ、そして上記第2のカプセルが、テノン嚢の下の空間にインプラントされている、項目22に記載の方法。
(項目24)眼の障害を患う患者においてその眼の障害を処置するための方法であって、その患者の眼に生体適合性のカプセルをインプラントする工程であって、そのカプセルが、
a)生物学的に活性な分子の細胞の供給源を含んでいるコア、および
b)そのコアを囲む外被であって、その外被は、治療有効量のその生物学的に活性な分子のその眼への拡散を可能にする生体適合性物質を含む、工程、
を包含する、方法。
(項目25)上記生物学的に活性な分子が、抗血管因子、神経栄養因子、増殖因子、抗体および抗体フラグメント、神経伝達物質、ホルモン、酵素、サイトカインおよびリンホカインから成る群から選択される、項目24に記載の方法。
(項目26)上記生物学的に活性な分子が抗血管因子、抗炎症因子、神経栄養因子およびそれらの組合せから成る群から選択される、項目24に記載の方法。
(項目27)上記眼の障害が血管由来の障害、炎症性障害、変性障害およびそれらの組み合わせから成る群から選択される、項目24に記載の方法。
(項目28)上記眼の障害が、ブドウ膜炎、網膜性色素症、加齢関連黄斑変性、および糖尿性網膜症から成る群から選択される、項目24に記載の方法。
(項目29)上記生物学的に活性な分子がBDNF、TGF-β、GDNF、NGF、CNTF、bFGF、aFGF、IL-1β、IL-10、IFN-β、IFN-αおよびVEGFインヒビターからなる群から選択される、項目24に記載の方法。
(項目30)上記カプセルが免疫的隔離である、項目24に記載の方法。
(項目31)第2の生物学的に活性な分子が眼に同時送達される、項目24に記載の方法。
(項目32)カプセルを含む眼に生物学的に活性な分子を送達するための装置であって、そのカプセルが以下を含み:
生物学的に活性な分子を産生するカプセル化した細胞を含むコア
そのコアを囲む生体適合性の外被であって、その外被は眼へのその生物学的に活性な分子の拡散を可能にする外被;
そのカプセルは、1mm以下の外径で長さ0.4〜1.5cmである中空繊維として構成される、装置。
(項目33)カプセルを含む眼に生物学的に活性な分子を送達するための装置であって、そのカプセルが以下を含み:
生物学的に活性な分子を産生するカプセル化細胞を含むコア、
そのコアを囲む生体適合性の外被であって、その外被は眼へのその生物学的に活性な分子の拡散を可能にする、外被;
そのカプセルは、表面積25mm2以下を有する平板として構成される、装置。
(項目34)上記カプセルが、眼の構造対してカプセルを固定するために適合したテザーをさらに含む項目32または33に記載の装置。
(項目35)以下を含む、眼への生物学的に活性な分子の眼周囲の送達のためのカプセル化細胞システム:
少なくとも1つのカプセル、各々のカプセルが生物学的に活性な分子の細胞の供給源および周りの生体適合性外被を含有するコアを含み、その外被が、眼へのその生物学的に活性な分子の拡散を可能にし、そのカプセル化細胞システムが、眼の周囲にその生物学的に活性な分子50pg〜1000ng/眼/患者/日を送達する。
(項目36)上記外被が透過選択性の免疫的隔離膜を含む、項目35に記載のシステム。
(項目37)上記外被が微細孔膜を含む、項目35に記載のシステム。
(項目38)上記カプセルがテノン嚢の下の空間にインプラントされる、項目35に記載のシステム。
(項目39)上記カプセルが中空繊維または平板として構成される、項目35に記載のシステム。
(項目40)上記生物学的に活性な分子が、抗血管因子、神経栄養因子、増殖因子、抗体および抗体フラグメント、神経伝達物質、ホルモン、酵素、サイトカインおよびリンホカインから成る群から選択される、項目35に記載のシステム。
(項目41)上記生物学的に活性な分子が抗血管因子、抗炎症因子、神経栄養因子およびそれらの組合せから成る群から選択される、項目35に記載のシステム。
(項目42)上記インプラントされるカプセルの数が眼1つ当たり1〜5のカプセルである、項目35に記載のシステム。
(項目43)第2の生物学的に活性な分子またはペプチドが上記カプセルから眼に同時送達される、項目35に記載のシステム。
(項目44)上記送達される第2の生物学的に活性な分子またはペプチドの用量が、50pg〜1000ng/眼/患者/日である、項目43に記載のシステム。
(項目45)眼に生物学的に活性な分子を眼内送達するためのカプセル化細胞システムであって、そのシステムは以下を含む:
少なくとも1つのカプセル、各々のカプセルが生物学的に活性な分子の細胞の供給源および周りの生体適合性外被を含有するコアを含み、その外被が、眼へのその生物学的に活性な分子の拡散を可能にし、そのカプセル化細胞システムが、眼内にその生物学的に活性な分子50pg〜500ng/眼/患者/日を送達する。
(項目46)上記外被が透過選択性の免疫的隔離膜を含む、項目45に記載のシステム。
(項目47)上記外被が微細孔膜を含む、項目45に記載のシステム。
(項目48)上記カプセルが硝子体にインプラントされる、項目45に記載のシステム。
(項目49)上記カプセルが前房にインプラントされる、項目45に記載のシステム。
(項目50)上記カプセルが後房にインプラントされる、項目45に記載のシステム。
(項目51)上記カプセルが中空繊維または平板として構成される、項目45に記載のシステム。
(項目52)上記生物学的に活性な分子が、抗血管因子、神経栄養因子、増殖因子、抗体および抗体フラグメント、神経伝達物質、ホルモン、酵素、サイトカインおよびリンホカインから成る群から選択される、項目45に記載のシステム。
(項目53)上記生物学的に活性な分子が抗血管因子、抗炎症因子、神経栄養因子およびそれらの組合せから成る群から選択される、項目45に記載のシステム。
(項目54)上記インプラントされるカプセルの数が眼1つ当たり1〜5のカプセルである、項目45に記載のシステム。
(項目55)第2の生物学的に活性な分子またはペプチドが上記カプセルから眼に同時送達される、項目45に記載のシステム。
(項目56)上記送達される第2の生物学的に活性な分子またはペプチドの用量が、50pg〜500ng/眼/患者/日である、項目55に記載のシステム。
【0020】
本発明は、適切な生物学的活性分子(「BAM」)の連続的に産生された供給源の眼内および眼周辺部の送達による、眼の疾患および障害を処置する新しい方法を提供する。
【0021】
BAMの細胞の供給源を含有するカプセルは、眼内の所望の位置に外科的に配置される。
【0022】
カプセル外被は、カプセル化細胞を囲む膜を含み、そして細胞と患者との間に物理的なバリアを配置する。カプセルは、患者から再び取り出され得る。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、副作用のない、眼への生物学的活性分子の送達のための装置および方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(発明の詳細な説明)
本発明は、眼内(例えば、前房、後房または硝子体内)、または眼周囲(例えば、テノン嚢内または下での)の、またはその両方での、生物学的活性分子(「BAM」)の送達に関する。本発明は、多様な眼の障害、眼の疾患または眼への影響を有する疾患を処置する際に効果的なBAMの、制御されたおよび持続性の放出を提供する際に、有用であり得る。
【0025】
本発明の装置および技術は、他の送達経路にまさる多数の利点を提供する。
【0026】
薬剤は、不必要な末梢の副作用を低減するかまたは最小にして、眼に直接送達され得る;非常に小さい用量の(ミリグラムよりむしろナノグラムまたは低いマイクログラム数量)薬剤は、局所投与と比較して、潜在的に副作用を少なくするように、送達され得る;薬剤の注射送達を特徴づける薬剤用量内の揺らぎを回避するように、装置の生菌は、新しく合成された産物を連続的に産生する;そして、本発明の装置および方法は、多数の網膜剥離を生じる多数の従来技術の装置および外科の技術より侵襲性ではない。
【0027】
ほとんどの(もし全てでない場合)眼の疾患および障害は(1)脈管形成、(2)炎症、および(3)変性の3つの型の症状の1つ以上と関連する。これらの障害を処置するために、本発明の装置は、抗血管因子;抗炎症因子;細胞分解を遅らせ、細胞分裂を促進するかまたは細胞増殖を促進する因子、および以上のものの組合せの送達を可能にする。特別な障害の症状に基づいて、当業者は、以下で指示される用量で3つの群からの任意の適切な分子または分子の組合せを、投与し得る。
【0028】
例えば、糖尿病性網膜症は、脈管形成により特徴づけられる。本発明が、眼内に、好ましくは硝子体内、または眼周囲好ましくはテノン嚢の下の領域でのいずれかに、1つ以上の抗血管因子を送達する装置をインプラントすることにより、糖尿病性網膜症を処置することを意図する。本研究者らは、この症状のための硝子体への送達を最も好む。眼内または眼周囲のいずれかに、好ましくは眼内におよび最も好ましくは硝子体内に1つ以上の神経栄養因子を同時送達することはまた、望ましい。
【0029】
ブドウ膜炎は、炎症に関与する。本発明は、眼内、好ましくは硝子体内または前房での、1つ以上の抗炎症因子を分泌している装置のインプラントにより、ブドウ膜炎を処置することを意図する。
【0030】
比較すると、色素性網膜炎は、網膜変性によって、特徴づけられる。本発明は、1つ以上の神経栄養因子を分泌している装置の、眼内、好ましくは硝子体への配置により、色素性網膜炎を処置することを意図する。
【0031】
加齢に関連した黄斑部変性は、脈管形成および網膜変性に関連する。本発明は、眼内に、好ましくは硝子体に1つ以上の神経栄養因子を送達する、および/または眼内もしくは眼周囲に、好ましくは眼周囲に、最も好ましくはテノン嚢の下の領域に1つ以上の抗血管因子を送達する本発明の装置を使用することによって、この障害を処置することを意図する。
【0032】
緑内障は、増大された眼圧および網膜神経節細胞の減失によって、特徴づけられる。本発明において意図される緑内障のための処置は、細胞を興奮毒性の損傷から保護する、1つ以上の神経保護的薬剤の送達を含む。このような薬剤は、眼内に好ましくは硝子体内に送達される、N-メチルD-アスパルテート(NMDA)アンタゴニスト、サイトカインおよび神経栄養因子を含む。
【0033】
任意の適切なBAMは、本発明の装置、システムおよび方法に従って送達し得る。このような分子は、神経伝達物質、サイトカイン、リンホカイン、神経保護薬剤、神経栄養因子、ホルモン、酵素、抗体およびその活性フラグメントを含む。BAMの3つの好ましい型は、本発明の装置を使用した送達のために意図される:(1)抗血管因子、(2)抗炎症因子、および(3)細胞分解を遅らせる因子は、細胞分裂を促進するかまたは細胞増殖を促進する。
【0034】
使用のために意図される抗血管因子は、バスキュロスタチン(vasculostatin)、アンジオスタチン(angiostatin)、エンドスタチン(endostatin)、抗インテグリン、血管内皮細胞増殖因子インヒビター(VEGFインヒビター)、血小板第4因子、ヘパリナーゼおよびbFGF結合分子を含む。VEGFレセプターFltおよびFlkもまた、意図される。可溶な形態において送達される場合、これらの分子は、血管内皮細胞上のVEGFレセプターと競合し、血管内皮細胞増殖を阻害する。
【0035】
VEGFインヒビターは、可溶なVEGFレセプターのようなVEGF中和キメラタンパク質を含み得る。Aiello、PNAS、92、10457(1995)を参照のこと。特に、それらはVEGF−レセプター−IgGキメラタンパク質であり得る。本発明における使用のために意図される別のVEGFインヒビターは、アンチセンスホスホロチオタックオリゴデオキシヌクレオチド(PS-ODN)である。
【0036】
眼内、好ましくは硝子体内に、本発明者らは、50pg〜500ng、好ましくは100pg〜100ng、および最も好ましくは1ng〜50ng/眼/患者/日の用量範囲の抗血管因子の送達を意図する。眼周囲、好ましくはテノン嚢の下の空間または領域への送達のために、わずかにより高い投薬範囲、最高1μg/患者/日が意図される。
【0037】
本発明における使用のために意図される抗炎症因子は、抗フラミン(例えば、米国特許第5,266,562号を参照のこと。本明細書にて援用した)、βインターフェロン(IFN-β)、αインターフェロン(IFN-α)、TGFベータ、インターロイキン−10(IL-10)およびグルココルチコイドおよび副腎皮質細胞からのミネラルコルチコイドを含む。その特定のBAMは、複数の活性を有し得る点に留意するべきである。例えば、IFN-αおよびIFN-βは、両方とも抗炎症分子として、そして抗血管分子としての活性を有し得ると考えられる。
【0038】
眼内、好ましくは硝子体に、本発明者らは、50pg〜500ng、好ましくは100pg〜100ng、および最も好ましくは1ng〜50ng/眼/患者/日の投薬範囲での抗炎症因子の送達を意図する。眼周囲、好ましくはテノン嚢の下の空間または領域での送達のために、わずかにより高い投薬範囲、多くとも1μg/患者/日が意図される。
【0039】
細胞分解の遅滞、細胞分裂の促進、または新しい細胞増殖の促進での使用のために意図した因子は、集合的に本明細書中で「神経栄養因子」という。意図される神経栄養因子は、ニューロトロフィン4/5(NT-4/5)、カルジオトロフィン-1(cardiotrophin-1)(CT-1)、シリア線毛神経栄養因子(CNTF)、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)、神経増殖因子(NGF)、インスリン様増殖因子−1(IGF-1)、ニューロトロフィン3(NT-3)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、PDGF、ニュールチュリン(neurturin)、酸性線維芽細胞成長因子(aFGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、EGF、ニューレグリン(neuregulin)、ヘレグリン(heregulin)、TGF-α、骨形成性タンパク質(BMP-1、BMP-2、BMP-7など)、ハリネズミ科(音速ハリネズミ、インドハリネズミおよび砂漠ハリネズミなど)、変形する増殖因子ファミリー(例えば、TGFβ-1、TGFβ-2およびTGFβ-3を含む)、インターロイキン1-B(ILl-β)、およびインターロイキン−6(IL-6)、IL-lO、CDF/LIF、およびβインターフェロン(IFN-β)のようなサイトカインを含む。好ましい神経栄養因子は、GDNF、BDNF、NT-4/5、ニュールチュリン、CNTFおよびCT-1である。
【0040】
眼内、好ましくは硝子体内に、本発明者らは、50pg〜500ng、好ましくは100pg〜100ng、および最も好ましくは1ng〜50ng/眼/患者/日の投薬範囲の神経栄養因子の送達を意図する。眼周囲、好ましくはテノン嚢の下の空間または領域への送達のために、わずかに高い投薬範囲、最高1μg/患者/日が意図される。
【0041】
上記の分子の改変、短縮、および突然変異タンパク質形態もまた、意図される。さらに、これらの増殖因子の活性なフラグメント(すなわち治療効果を達成するのに十分な生物学的活性度を有する増殖因子のそれらのフラグメント)もまた、意図される。また、1つ以上のポリエチレングリコール(PEG)または他の反復するポリマー部分の付加により改変される増殖因子分子も、意図される。これらのタンパク質および多シストロン性のそのバージョンの組合せもまた、意図される。
【0042】
目的の遺伝子(すなわち適切なBAMをコードする遺伝子)は、適切な発現ベクターのクローン化部位に、標準的な技術を使用することにより挿入され得る。上記の同定されたBAMをコードするヒト(および他の哺乳動物)遺伝子の核酸およびアミノ酸配列は、公知である。例えば、米国特許第4,997,929号、同第5,141,856号;同第5,364,769号;同第5,453,361号;WO 93/06116;WO 95/30686(これらは、本明細書中で参考として援用する)を参照のこと。
【0043】
次いで目的の遺伝子を含有する発現ベクターを使用して、所望の細胞株をトランスフェクトし得る。リン酸カルシウム共沈澱、DEAEデキストラントランスフェクションまたはエレクトロポレーションのような標準的なトランスフェクション技術は、利用され得る。市販の哺乳動物のトランスフェクションキットが、例えばStratageneから購入され得る。トランスジェニックマウス由来細胞株もまた、使用され得る。例えば、Hammangら、Methods in Neurosci., 21、281頁(1994)を参照のこと。
【0044】
多種多様な宿主/発現ベクターの組合せを使用して、目的の増殖因子または他のBAMをコードする遺伝子を発現し得る。
【0045】
例えば、適切なプロモーターは、SV40またはアデノウィルスの初期および後期のプロモーターおよび遺伝子発現を制御し得る他の公知の非レトロウイルスプロモーターを含む。
【0046】
例えば、多様な公知のSV40の誘導体および公知の細菌性プラスミド(例えば、pUC、pBR322を含むE.coliからのpBlueScriptTMプラスミド、pCRl、pMB9およびそれらの誘導体)のような、有用な発現ベクターは、染色体、非染色体性および合成のDNA配列のセグメントからなり得る。
【0047】
ゲネチシン(geneticin)(G418)またはハイグロマイシン薬物選択遺伝子を含有する発現ベクター(Southern, P.J., In Vitro、18、315頁(1981)、Southern, P.J.およびBerg, P., J. Mol. Appl. Genet., l, 327頁、(1982))もまた、有用である。これらのベクターは、種々の異なるエンハンサー/プロモーター領域を、目的の生物学的遺伝子(例えばNGF)および/または毒素(例えばG418またはハイグロマイシンB)での選択に対する耐性を与える遺伝子の発現を駆動するために使用し得る。種々の異なる哺乳動物プロモーターは、G418およびハイグロマイシンBのための遺伝子および/または目的の生物学的遺伝子の発現を指向するために使用され得る。
【0048】
使用され得る発現ベクターの例は、市販のpRC/CMV、pRC/RSVおよびpCDNA1NEO(InVitrogen)である。
【0049】
CNS起源の細胞が使用される場合、好ましくは、プロモーターは以下から成る群から選択される:
hDBH(ヒトドーパミンβヒドロキシラーゼ)(Mercerら、Neuron、7、703-716頁(1991))、hTH(ヒトチロシンヒドロキシラーゼ)(Kanedaら、Neuron、6、583-594頁(1991))、hPNMT(ヒトフェニルエタノールアミンN-メチルトランスフェラーゼ)(Baetgeら、PNAS、85、3648〜3652頁(1988))、mGFAP(マウスグリア原線維酸性タンパク質)(Besnardら、J. Biol. Chem., 266、18877〜18883頁(1991))、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、mNF-L(マウス神経フィラメント光サブユニット)(Nakahiraら、J. Biol. Chem., 265、19786〜19791頁(1990))、hPo(ヒトP0、末梢神経系の主要なミエリン糖タンパク質をコードする遺伝子のためのプロモーター)(Lemkeら、Neuron、1、73〜83頁(1988))、mMt-1(マウスメタロチオネインI)、rNSE(ラットニューロン特異的エノラーゼ)(Sakimuraら、Gene、60、103〜113頁(1987))などのプロモーター。
【0050】
1つの好ましい実施態様において、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーターが、使用される。例えば、Adraら、Gene、60、65〜74頁(1987)を参照のこと。pPIベクターは、目的の遺伝子(すなわちBAMをコードする遺伝子)の発現を駆動するためにPGKプロモーターを使用する1つの好ましい発現ベクターである。このベクターも、ネオホスホトランスフェラーゼ(選択可能なマーカー)の発現を駆動するために、SV40初期プロモーターを使用する。Kozak配列および/またはIgシグナルペプチドを挿入することによって、pPIベクターからのBAMの発現を最適化し得るかまたは改良し得る。pPIベクターも、MTX増幅に適切な変異DHFR遺伝子を含有する。
【0051】
別の実施態様において、pNUT発現ベクター(それは変異DHFRのcDNAおよびポリリンカーを含む全pUC18の配列を含有する)は、使用され得る。例えば、Aebischer, P.ら、Transplantation、58、1275〜1277頁(1994)、Baetgeら、PNAS、83、5454〜58頁(1986)を参照のこと。DHFRコード配列が、G418またはハイグロマイシン薬剤耐性のためのコード配列によって置き換えられるように、pNUT発現ベクターは改変され得る。pNUT発現ベクター内のSV40プロモーターはまた、任意の適切な構成的に発現された哺乳動物プロモーター(例えば上記のプロモーター)でも置き換えられ得る。
【0052】
発現増加は、当該分野で周知の増幅方法を使用して、所望の分子をコードする導入遺伝子のコピー数を増大するかまたは増幅することによって、達成され得る。このような増幅方法は、例えば、DHFR増幅(例えば、Kaufmanら米国特許第4,470,461号を参照のこと)またはグルタミン合成酵素(「GS」)増幅(例えば、米国特許第5,122,464号および欧州公開特許出願EP 338,841を参照のこと)を含む。
【0053】
多種多様な細胞が、使用され得る。これらは、周知な、公に利用できる不死化細胞株ならびに分割された初代細胞培養を含む。適切な公に利用し得る細胞株の例は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、マウス線維芽細胞(L-M)、NIH Swissマウス胚(NIH/3T3)、アフリカミドリザル細胞株(COS-1、COS-7、BSC-1、BSC-4O、BMT-1OおよびVeroを含む)、ラット副腎褐色細胞腫(PC12およびPCl2A)、AT3、ラットグリア細胞腫瘍(C6)、星状細胞および他の線維芽細胞細胞株を含む。使用され得る初代細胞は、EGF応答性神経幹細胞およびそれらの分化した継代細胞(ReynoldsおよびWeiss、Science、255、1707〜1710頁、1992)、哺乳動物のCNS由来bFGF応答性神経前駆幹細胞(Richardsら、PNAS 89、8591〜8595頁、(1992);Rayら、PNAS 90、3602〜3606頁(1993))、EGF応答性およびbFGF応答性の両方であるCNS神経幹細胞、初代線維芽細胞、シュワン細胞、β-TC細胞、Hep-G2細胞、オリゴ突起細胞およびそれらの前駆体、筋芽細胞(L6およびC2C12細胞を含む)、軟骨細胞または軟骨芽細胞などを含む。
【0054】
条件的に不死化した細胞もまた、使用され得る。このような細胞は、温度感受性ガン遺伝子を有する細胞または誘導性のプロモーターエレメントの方向で、ガン遺伝子から成るキメラ遺伝子を有するように設計された細胞を含む。
【0055】
遺伝子導入技術のために選ばれる1つの好ましい細胞型は、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞である。それらが非常に機能的なDHFR遺伝子を発現しないので、BHK細胞は特にMTX増幅に最適である。
【0056】
適切な細胞型は、同種のおよび異種の供給源からの細胞を含む。異種の細胞を使用する特別な利点は、ありそうもない膜または装置の事故において存在し、このような細胞は免疫系による破壊のための標的によりされそうであるということである。
【0057】
眼内への送達のために、初代細胞(マイトジェン(例えばEGFまたはbFGF等)を使用して分割するために誘導され得る初代細胞を含む)または条件的に不死化してまたはそうでなければ眼の種々の領域から誘導した細胞株を使用することは特に有益であり得る。潜在的に有用な細胞型は、レンズ上皮細胞、神経の網膜のグリアおよびニューロンのエレメント、光受容細胞、網膜染色上皮細胞、シュワン細胞および他の毛様体細胞などを含む。このような細胞は、同種であり得るか異種であり得る。
【0058】
本明細書で使用する「生体適合性のカプセル」は、カプセルが、宿主哺乳類内のインプラントの際に、カプセルの拒絶反応を生じるかまたはカプセルを機能不全(例えば、分解による)にするのに充分な有害宿主応答を惹起しないことを意味する。
【0059】
本明細書中で使用する「免疫的隔離カプセル」は、哺乳動物宿主へのインプラントの際に、カプセルが、そのコア内で細胞に対する宿主の免疫系の有害な影響を最小にすることを意味する。免疫的隔離であるために、カプセルは単離された細胞および宿主の免疫系の間の有害な免疫学的な接触を防ぐのに十分な物理的障害を提供するべきである。この物理的障害の厚さは変化させ得るが、障害のいずれかの側に細胞および/または物質の間の直接の接触を防ぐのに、常に十分に厚い。この領域の厚さは、一般に5と200ミクロンとの間を変動する;10〜100ミクロンの厚さは好ましい、そして20〜75ミクロンの厚さは特に好ましい。
【0060】
ほとんどの場合、IgGは、標的細胞または組織の細胞分解を生じるためには単独では不充分であるので、ビヒクルコアからのIgGの排除は免疫的隔離の基準でない。従って、免疫的隔離カプセルについて、50〜2000kDの間の外被の名目上の分子量カットオフ(MWCO)値が、意図される。好ましくは、MWCOは50〜700kDの間である。最も好ましくは、MWCOは、70〜300kDの間である。例えば、WO 92/19195を参照のこと。もし免疫的隔離が必要でない場合、外被は微孔であり得る。例えば、米国特許第4,968,733号、同第4,976,859号、および同第4,629,563号を参照のこと。これら全ては、本明細書中で参考として援用する。
【0061】
種々の生体適合性のカプセルは、本発明に従う分子の送達のために適切である。有用な生体適合性のポリマーカプセルは、(a)液体培地に懸濁したかまたは生体適合性マトリックス内で固体化されたかのいずれかの細胞(単数または複数)を含有するコア(b)生体適合性でそして眼への細胞産生BAMの拡散を可能にする、単離された細胞を含有しない膜を含む周囲の外被、を含む。
【0062】
多くの形質転換細胞または細胞株は、例えば、細胞生存性および機能を支えるために栄養培地および必要に応じてさらなる因子の供給源を含有する液体コアを有するカプセル内で都合良く単離される。
【0063】
あるいは、コアは、ヒドロゲルの生体適合性マトリックスまたは細胞の位置を安定させる他の生体適合性マトリックス物質を含み得る。用語「ヒドロゲル」は、本明細書中において架橋親水性ポリマーの3つの次元のネットワークをいう。ネットワークは、ゲル(好ましくは実質的に水から成る、好ましくは90%より多い水から成るゲル)の形態である。
【0064】
任意の適切なマトリックスまたはスペーサーは、沈澱させたキトサン、合成ポリマーおよびポリマーブレンド、マイクロキャリアなどを含むコア内で使用され得、これは、カプセル化されるべき細胞の増殖特性に依存する。あるいは、カプセルは、内部の足場を有し得る。足場は、細胞が凝集するのを妨ぎ得、そして装置内での細胞分布を改善する。PCT公開番号WO 96/02646を参照のこと。
【0065】
好ましくは、眼周囲の部位のような免疫的に特権のないインプラント部位のために、カプセルは免疫的隔離である。
【0066】
カプセルは、柱形、矩形、ディスク型、パッチ型、卵形、星状、または球形を含む任意の適切な構造であり得る。インプラントの部位からカプセルを移動させる傾向がある構造(例えば球形)は、好ましくない。硝子体内のインプラントについては、網膜への視覚の経路を遮断し得るので、平板は好ましく得ない。
【0067】
好ましくは、装置はインプラントする間の装置配置を維持するのを補助し、そして再取り出しを補助するテザー(tether)を有する。このようなテザーは、カプセルを所定の位置に固定するのに適した任意の適切な形状を有し得る。1つの実施態様において、テザーは小穴様の形状にされ、その縫合は強膜または他の適切な眼の構造にテザー(そして、従ってカプセル)を固定するために使用され得る。別の実施態様において、テザーは、カプセルの一端で繋がっており、そして他端で予め糸を通した縫合針を形成する。本明細書で意図されるカプセルは、約1〜20μlの最小コア体積を有し、最も好ましくは約1〜10μlである。
【0068】
中空繊維構造において、繊維は1000ミクロン未満(好ましくは950ミクロン未満の)の内径を有する。1つのシリーズの実施態様において、装置は、870μmの内径および約8.5mmの長さを有するように構成される。別の実施態様のシリーズにおいて、装置は、500μmの内径および長さ10.5mmを有するように構成される。眼内へのインプラントについて、中空繊維構成において、カプセルは、0.4〜1.5cmの間の長さが好ましく、最も好ましくは、0.5〜1.Ocmの間の長さである。より長い装置は、眼内に配置され得る。しかし、カーブさせたり、または弓形の形が確実かつ適切な配置のために要求され得る。中空繊維構成は、眼内の配置のために好ましい。
【0069】
眼周囲の配置について、中空繊維構成(実質的に上記のような寸法)または平板構成のいずれかが意図される。平板のために企図される上限は、およそ5mm×5mm(正方形と仮定して)である。ほぼ同じ表面積で他の形もまた、意図される。
【0070】
液圧透過性は、代表的に、1〜100ml/分/M2/mmHgの範囲であり、好ましくは25〜70ml/分/M2/mmHgの範囲内であり得る。Dionneら、ASAIO Abstracts、99頁(1993)およびColtonら、The Kidney、Brenner BMおよびRector FC編、2425〜89頁(1981)に記載されるように定義され、測定され、そして計算されたカプセルのグルコース物質移動係数は、10-6cm/秒より大きく、好ましくは10-4cm/秒より大きい。
【0071】
カプセル外被は、ポリアクリレート(アクリル共重合体を含む)、ポリビニリデン、ポリ塩化ビニル共重合体、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリアミド、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンを含む)、ポリホスファゼン、ポリアクリロニトリル、ポリ(アクリロニトリル/コ塩化ビニル)ならびにそれらの誘導体、共重合体および混合物を含む種々のポリマーおよびポリマーブレンドから製造され得る。例えば、このような物質から製造されるカプセルは、米国特許第5,284,761号および同第5,158,881号に記載される。(これらは、本明細書中で参考として援用する)。ポリエーテルスルホン(PES)繊維(例えば、米国特許第4,976,859号および同第4,968,733号に記載される繊維)(本明細書中で参考として援用する)から形成されたカプセルもまた、使用され得る。
【0072】
外部表面形態学に依存して、カプセルは、タイプ1(Tl)、タイプ2(T2)、タイプl/2(Tl/2)またはタイプ4(T4)のように分類される。例えば、このような膜は、Lacyら、「Maintenance of Normoglycemia In Diabetic Mice By Subcutaneous Xenografts Of Encapsulated Islets」、Science、254、1782〜84頁(1991)、Dionneら、WO 92/19195およびBaetge、WO 95/05452に記載される。本発明者らには、平滑な外部表面形態学が好ましい。
【0073】
免疫学的に特権のない部位については、透過選択性の免疫的隔離の膜を有するカプセル外被が、好ましい。対照的に、微細孔膜または透過選択性膜は、免疫学的な特権部位のために適切であり得る。免疫学的な特権部位へのインプラントについて、本発明者らには、PES膜から製作されたカプセルが好ましい。
【0074】
カプセルを封止する任意の適切な方法(ポリマー接着剤の使用、および/またはクリンピング(crimping)、結節および熱封止(heat sealing)を含む)が、使用され得る。これらの封止技術は、当該分野で公知である。さらに、任意の適切な「乾式の」封止方法もまた、使用され得る。このような方法において、実質的に無孔である取付けが提供され、これを介して細胞含有溶液が導入される。充填後、カプセルは封止される。このような方法は、同時係属中の米国出願番号第08/082,407号(本明細書中で参考として援用する(PCT/US94/07015もまた参照のこと))に記載される。この出願は、簡便に本発明の装置をロードし、そして封止するために使用され得る図3および4に概略的に示される脆いハブアセンブリを記載する。
【0075】
本発明者らは、脈管形成、炎症、変性、またはいくつかのその組合せにより特徴づけられる(しかし、これらに限定されない)多種多様な眼の疾患および障害を処置する本発明の使用を意図する。
【0076】
本発明の多様な実施態様により処置され得る眼の障害のいくつかの例は、ブドウ膜炎、色素性網膜炎、加齢関連黄斑部変性および他の後天性網膜障害、網膜症、網膜血管疾患、他の血管異常、眼内炎、感染症、感染性でない炎症疾患、眼の虚血遺伝的症候群、末梢の網膜変性、網膜変性および腫瘍、脈絡膜障害および腫瘍、硝子体障害、網膜剥離、非貫通性のおよび貫通性の外傷、白内障後合併症および炎症性眼の神経疾患を含む。
【0077】
加齢関連黄斑部変性は、乾式の加齢関連黄斑変性、滲出性加齢関連黄斑部変性および近視性の変性を含むが、これらに制限されない。
【0078】
網膜症は、糖尿病性網膜症、増殖性硝子体網膜症および中毒性網膜症を含むが、これらに制限されない。
【0079】
本発明は、眼の血管新生、多くの眼の疾患および障害と関連がありそして重篤な視覚喪失の大多数の原因である症状の処置のために有用であり得る。例えば、本発明者らは網膜の虚血関連の眼の血管新生(糖尿病および多くの他の疾患での失明の主要な原因);患者への角膜移植の失敗の素因を作る角膜血管新生;および糖尿病性網膜症、中央網膜静脈閉塞およびおそらく加齢に関連した黄斑部変性に関連する血管新生の処置を意図する。
【0080】
本発明はまた、眼のおよび眼でない症候を有する疾患または症状から生じている眼の症候を処置するために使用され得る。いくつかの例は、サイトメガロウィルス網膜炎および硝子体の障害のようなAIDSに関連した障害;網膜内の高血圧性変化のような妊娠に関連した障害;および種々の感染症(例えば、結核症、梅毒、ライム病、寄生虫症、イヌ回虫症(toxocara canis)、眼ハエウジ病(ophthalmonyiasis)、嚢中症(cyst cercosis)および真菌感染)の眼への影響を含む。
【0081】
本発明の1つの実施態様において、生きている細胞は、カプセルに入れられ、そして眼の硝子体に外科的に挿入される(球後麻酔下)。硝子体の配置のために、強膜を通って突き出ている装置の一部を用いて、この装置は、強膜を介してインプラントされ得る。最も好ましくは、装置の全体が、装置の全てが強膜中にまたは強膜を通って突き出ていない条件で、硝子体にインプラントされる。好ましくは、装置は強膜(または他の適切な眼の構造)にテザーでつながれる。テザーは、小穴(図3)または円板(図4)または他の任意の適切な固着手段による縫合を含み得る。装置は、所望の予防法または治療を達成するのに必要な限り、硝子体に残留し得る。このような治療は、例えば、ニューロンまたは光レセプターの生残または回復の促進、あるいはブドウ膜、網膜および視神経炎症の阻害と同様に網膜または脈絡膜血管新生の阻害および/または反転を含む。この実施態様は、網膜にBAMを送達することのために好ましい。
【0082】
硝子体の配置で、BAM(好ましくは栄養因子)は網膜またはRPEに送達され得る。さらに、網膜血管新生は、硝子体に抗血管因子を送達することにより最も良好に処置され得る。
【0083】
別の実施態様において、テノン嚢として公知の空間内でまたはその下で、細胞をロードする装置は、眼周囲にインプラントされる。この実施態様は、硝子体へのインプラントより侵襲性でなく、従って、一般に好ましい。この投与経路はまた、RPEまたは網膜へのBAM(例えば栄養因子など)の送達を可能にする。この実施態様は、特に視神経およびブドウ膜管の脈絡膜血管新生および炎症を処置するために好ましい。一般に、このインプラント部位からの送達は、脈絡膜血管系、網膜血管系および視神経への所望のBAMの循環を可能にする。
【0084】
この実施態様に従って、本発明者らには、黄斑部変性(脈絡膜血管新生)を処置するために、抗血管分子、抗炎症分子(例えばサイトカインおよびホルモン)および神経栄養因子の脈絡膜血管系への眼周囲の送達(テノン嚢の下へのインプラント)が好ましい。
【0085】
本発明の装置および方法を使用した、脈絡膜血管系(眼周囲に)または硝子体(眼内)への抗血管因子の直接送達は、上記の問題を低減し得、そして満足に定義されないかまたは潜在性の脈絡膜血管新生の処置を可能にし得る。また、付加的または維持治療を介して回帰性の脈絡膜血管新生を低減するかまたは防ぐ方法を提供し得る。
【0086】
好ましい実施態様において、所望の遺伝子を有するpNUTベクターは、標準リン酸カルシウムトランスフェクション手順を使用して、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞またはC2C12筋芽細胞細胞にトランスフェクトされ、そしてメトトレキセート(1μM〜最高200μM)の濃度増大で選択され、8週間かけて、安定な、増幅された細胞株を産生する。この選択に続いて、カプセル化の前に、操作された細胞は、インビトロで50〜200μMメトトレキセート中で維持され得る。
【0087】
本発明は、異なる因子の同時送達を意図する。当業者は、特別な眼の障害の症状に依存して、1つ以上の抗血管因子、抗炎症因子または、細胞変性を遅延させ、細胞分裂を促進し、または細胞増殖を促進する因子を送達し得る。例えば、1つ以上の抗血管因子または1つ以上の抗炎症分子と共に1つ以上の神経栄養因子を送達することは、好ましくあり得る。
【0088】
1つの例は、NT-4/5とエンドスタチンの同時送達である。この場合、ヘパリナーゼが抗血管因子として作用する間、神経栄養因子は光レセプター生残を促進し得る。
【0089】
同時送達は、多数の方法で達成され得る。第1に、細胞は、記載された分子をコードする遺伝子を含有する分離した構築物でトランスフェクトされ得る。第2に、細胞は2つ以上の遺伝子を含有する単一の構築物および必要な制御エレメントでトランスフェクトされ得る。本発明者らには、倍数転写単位からの発現をこえる単一転写産物からの倍数遺伝子発現が好ましい。例えば、Macejak、Nature、353、90〜94頁(1991);WO 94/24870;MountfordおよびSmith、TrendsGenet.、11、179-84頁(1995);Dirksら、Gene、128、247〜49頁(1993);Martinez-Salasら、J. Virology、67、3748〜55頁(1993)およびMountfordら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91, 4303〜07頁(1994)を参照のこと。
【0090】
第3に、2つまたはそれ以上の別々に操作された細胞株は、同時カプセル化され得、または、1つ以上の装置は目的の部位にインプラントされ得る。そして、第4に、同じまたは異なるBAMを送達するために、装置は同時に眼内の2つ以上の異なる部位にインプラントされ得る。例えば、神経の網膜(RPEに対する神経節細胞)を送達するために硝子体に神経栄養因子を送達し、そして脈絡膜血管系を供給するためにテノン嚢の下の空間を介して抗血管因子を送達することは、望ましくあり得る。1つを超える装置を使用した処置および眼1つ当たり五つまでの装置が意図される場合、本発明者らには、眼1つあたり3つ以下の装置のインプラントが好ましい。
【0091】
用量は、当該分野で公知の任意の適切な方法によっても変化され得る。これは、(1)装置あたりの細胞の数、(2)眼1つあたりの装置の数、または(3)細胞あたりのBAM産生レベルの変化を含む。例えば、形質転換された細胞内のBAMのための遺伝子のコピー数またはBAMの発現を駆動しているプロモーターの効率を変化することによって、細胞の産生は、変化させられ得る。本発明者らには、装置あたり103〜108個の細胞の使用が好ましく、より好ましくは、装置あたり5×104〜5×106個の細胞である。
【0092】
本発明はまた、処置養生の経過の間の異なる細胞型の使用を意図する。例えば、患者が最初の細胞型(例えば、BHK細胞)を含有するカプセル装置を用いてインプラントされ得る。ある時間の後、患者がその細胞型に対して免疫応答を発現する場合、カプセルが再び取り出され得るか、またはエクスプラントされ得、そして第2の細胞型(例えば、CHO細胞)を含有する第2のカプセルがインプラントされ得る。このように、患者がカプセル化細胞型の1つに対して免疫応答を発現させる場合であっても、治療分子の持続的提供は可能である。
【0093】
あるいは、より少ないMWCOを有するカプセルは、カプセル化細胞を用いて、患者の免疫系分子の相互作用をさらに防ぐために使用され得る。
【0094】
本発明の方法および装置は、霊長類の、好ましくはヒト宿主、レシピエント、患者、被検体または個体における使用を意図する。
【実施例】
【0095】
実施例1:細胞の調製およびカプセル化
BHK-hNGF細胞(Winnら、PNAS, 1994)を、以下のように生成した:
Hoyleらにより記載されるように、ラットインシュリンイントロンを用いてヒトNGF(hNGF)遺伝子を、pNUTのBamHIおよびSmaI部位の間に挿入し、メタロチオネインIプロモーターにより駆動させた。pNUT-hNGF構築物を、標準リン酸カルシウム-媒介トランスフェクション方法を使用してBHK細胞に導入した。BHK細胞を、Dulbecco改変Eagle培地/10%ウシ胎児血清/抗生物質/抗カビ剤/L-グルタミン(GIBCO)で5% CO2/95%空気中で37℃にて増殖させた。トランスフェクトしたBHK細胞を、200μMメトトレキセート(Sigma)を含有する培地中で3〜4週間選択し、そして耐性細胞をポリクローナル集団として、200μM メトトレキセートの存在下または非存在下のいずれかで維持した。
【0096】
細胞は、これらの実験の前に10%FBS、L-グルタミン、50μMメトトレキセート添加DMEMにおいて維持した。細胞は、メトトレキセート存在下で、1〜2回/週で継代した。BHK-hNGF細胞およびBHKコントロール細胞は、ハンクの緩衝液で洗浄し、次いでトリプシン処理し、そしてZyderm(登録商標)コラーゲンマトリックスと混合した。平滑化した25ゲージの針を装備した別々のハミルトン注射器に、細胞株およびマトリックスをロードした。
【0097】
カプセル化手順は、以下のようであった:中空繊維を、ポリエーテルスルホン(PES)から、約720μmの外径およびおよそ100μmの壁厚を有するように組み立てた(AKZO-Nobel Wuppertal, Germany)。これらの繊維は、米国特許第4,976,859号および第4,968,733号(これらは、本明細書中で参考として援用する)に記載される。
【0098】
装置は以下を含む:
AKZO Nobel Faser AGによって、組み立てられた半透過性のポリ(エーテルスルホン)中空繊維膜;
ハブ膜セグメント;
端部へと導く光硬化メタクリレート(LCM)樹脂;および
シリコーンテザー。
【0099】
装置は、細胞ロード接近のための近位端での隔壁取付具を有し、そして遠位端で密封した。BHK細胞を、単個細胞懸濁液として調製し、そして生理学的コラーゲン(Vitrogen:PC-1)と1:1で混合後、隔壁ポートに1μlあたり15K細胞の密度で注入した。1.5μ1の細胞懸濁液の注入後、隔壁を除去し、そして、接近ポートを、LCM23の樹脂で密封した。
【0100】
装置の構成部分は、市販されている。LCM接着剤は、Ablestik Laboratories(Newark, DE);Luxtrak Adhesives LCM23およびLCM24)から入手可能である。
【0101】
実施例2:カプセル化細胞のテノン嚢の下の空間(テノン嚢下)
へのインプラント
患者を用意し、そして3ccの2%キシロカイン(xylocaine)の延髄後注射を眼に与えた後、普通の様式で覆った。反射鏡を、上下の蓋の下に挿入する。手術用顕微鏡は、定位置に持ってくる。垂直な切開を、側頭上の(superotemporal)四分円内に、結膜およびテノン嚢の両方を通って、縁からおよそ4mm前に、なす。切開は、縁からおよそ4〜5mm前に延長する。その点において、鈍い平滑チップのはさみを切開を通して挿入し、そして使用して強膜の表面上でさらに5mmくらい平滑に切り裂いて戻す。その点において、実施例1に記載の膜装置を、この切開を通してある位置に配置し、強膜の表面上に静止させた。縁に最も近い装置の端は、細胞ロード装置に取付けられる小さなループを有する。この点において、#10-0ナイロン縫合をこのループを通し、そして強膜表面に、膜を強膜へと固定するために縫い合わせる。その点で、テノン嚢および結膜は、#6-0平滑な腸縫合で閉鎖される。反射鏡を除去し、そして手順を終える。
【0102】
実施例3:硝子体へのカプセル化細胞のインプラント
患者を用意し、そして2%のキシロカインの延髄後注射を眼に与えた後、普通の様式で覆う。その点で、反射鏡を上下の蓋へと挿入し、そして顕微鏡を定位置に持ってくる。小さい切開を、鼻上の四分円内に平行にそしておよそ縁から4mmにある結膜およびテノン嚢の両方を通してなす。露出した領域は、ウェットフィールド麻痺装置で麻痺させる。次いで、3mm切開術を、縁からおよそ4mm前に、縁に垂直になす。切開は、強膜を通って、そして硝子体腔に、#65ブレードを用いてなす。切開内に存在する任意の硝子体を、切り離し、そして除去する。この点で、実施例1に記載の膜装置は、切開を通して、硝子体腔に挿入する。膜の端に、膜に付けられる小さい2mmループがある。ループは、強膜の外側に残留する。強膜は、中断した#9-0ナイロン縫合で閉鎖される。#9-0ナイロン縫合はまた、強膜に装置のこのループを固定するために使用する。結膜は、#6-0平滑な腸縫合で閉鎖する。
【0103】
実施例4:加齢関連黄斑変性の処置におけるインターフェロンα(IFNα-2AまたはIFNα-2B)の送達
候補の細胞株を、遺伝子的に操作して、インターフェロン分子を発現する。多様なインターフェロンが、使用され得るが、しかし、本発明者らはIFNα-2Aまたはα-2Bを使用するのを好む。1つを超えるインターフェロン分子を、一度に送達し得る。多様な細胞株をまた、利用し得る、本発明者らはBHK細胞を好む。
【0104】
細胞株を、実施例1に実質的に従って予め組み立てられた装置において、カプセル化する。装置製造に続いて、テザーを適用する。このテザーは、縫合材料が通過し得る小穴を含む。次いで、テザーを使用して、装置浮動または損失を避けるために定位置に装置を固定する。細胞ロード装置は、標準的な期間の間、装置の無菌性を保証するために保たれる。カプセルを、実施例2に従ってテノン嚢の下にインプラントする。
【0105】
中心窩の無血管のゾーンの任意の部分を含んでいる血管造影的に証明された中心窩下の脈絡膜血管新生を用いて診断した患者を、この治療のために選択する。
【0106】
IFNα-2a治療の効果は、視力、臨床的外観およびフルオレセイン血管造影的外観により評価する。基底部の臨床的外観は、網膜下の流体による黄斑の隆起および網膜内の出血の存在を特に参照して、主観的に評価する。
【0107】
装置を、上記と同じ調製物および外科の手順を使用して除去する。装置を、インビトロに配置し、そしてIFN-αの放出について24時間アッセイする。アッセイ期間の後、装置を日常的な組織の分析に供し、細胞生存の範囲を決定する。
【0108】
実施例5:カプセル化BHK-hNGF細胞株を介する新生ネコ眼へのhNGFの送達
BHK-hNGFクローンの36細胞を、実施例1に従って産生した。次いで、細胞を、実施例1に従ってAKZO微孔性10/10膜から作製した4mm LCM24光硬化カプセルにカプセル化した。カプセルを、実質的に実施例4に従って一ヶ月間、新生児のネコの眼にインプラントした。
【0109】
結果
NGF-誘導神経突起成長のためにインビトロ試験を、ネコの目中のインプラントの前後で実施した。カプセル化していないBHKコントロールおよびBHK-hNGF細胞由来の条件化した培地(CM)を0.2μmのフィルターに通し、そして6-または24ウェルプレート上で1mlあたり20万細胞の密度にまで増殖したPC12細胞サブクローンPCl2Aの培養液に加え、hNGFの存在について試験した。ポリマー性装置中のカプセル化細胞をまた、生物活性のあるhNGFを放出するそれらの能力について、24ウェルプレートの個々のウェルに装置を配置すること、およびそれらを血清のない定義されたPC1培地(Hycor, Portland, ME)中で1〜2日間、平衡化を可能にすることにより試験した;次いで、培地を除去し、そしてさらに24時間、1mlの新鮮なPC1で置換した。このCMを、回収し、PC12A細胞に配置し、そして評価した。細胞体直径の長さの3倍以上の大きさの神経突起誘導をポジティブとして計数した。さらに、神経突起誘導の速度および突起の安定性を試験した。
【0110】
NGF分泌のレベルもまた、ELISAによって試験した。カプセル化および非カプセル化の両方のBHK-hNGF細胞から放出されるhNGFの定量化は、2部位酵素イムノアッセイにより実行した。プロトコルは、Nunc-Immuno Maxisorp ELISAプレートを使用してBoehringer Mannheimにより記載するプロトコルの改変であった。発色(30分)後、試料をプレートリーダーで分析し、そして組換え体マウスNGFタンパク質標準と比較した。
【0111】
結果は、以下のようであった:
【0112】
【表1】

*装置をインプラントの前に2回アッセイし、1回は共同実験者の実験室への搬送前、および2回目はインプラントの直後で、2つのアッセイの間に48時間の間隔を伴う。「Pre-1」は、最初のアッセイの結果をいい、そして「Pre-2」は、第2のアッセイの結果をいう
**「nd」は、「検出されなかった」の略号である。
【0113】
エクスプラント後NGF生物活性アッセイにおいて、強力な神経突起成長が装置1および2(NGF)について見い出されたが、装置3および4(コントロール)についてはそうではなかった。
【0114】
第2の同様の実験を、実施した。結果は、以下のようである:
【0115】
【表2】

*「nd」は、「検出されなかった」の略語である。
【0116】
さらなる実験において、hCNTFまたはNT4/5を分泌したBHK細胞を産生し、そして実質的に実施例1に従ってカプセル化した。しかし、本発明者らは、これらの装置の出荷および取り扱いに主に関連した、カプセルにおいて貧弱な細胞生存を導くような、困難を経験した。従って、これらのカプセルについてのデータは、ここで提示されない。出荷の困難さは、乾燥、ねじれ、破損および低温に対する長時間曝露を含む。
【0117】
継続実験を、正常および遺伝子導入ブタの眼に多様なBAMを送達するために進行中である。ブタモデルは、大きさおよび血管系に基づく、ヒトの眼のために最も適切な動物モデルの1つと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】図1は、硝子体にインプラントされるマクロカプセルを示した、眼の水平横断切片の模式図である。図は一定の比率ではなく、そして明白性のために適切な配置におけるカプセルを示す。実際に、ヒトの眼に配置される場合、好ましい硝子体での配置は、硝子体の前部である。文字「A」は、強膜をいい、「B」はテノン嚢をいい、そして「C」は結膜をいう。
【図2】図2は、テノン嚢の下にインプラントされたカプセルを示す、眼の側面図の模式図である。
【図3】図3Aは、脆いハブアセンブリを有するロードのための装置を示す。図3Bは、脆いハブの離脱後の装置を示す。装置は、眼内の装置をつなぐために小穴を有する。
【図4】図4Aは、脆いハブアセンブリを有する、ロードのための装置を示す。図4Bは、脆いハブの離脱後の装置を示す。装置は、装置をつなぐために円板を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼に生物学的に活性な分子を送達するための医療用デバイスの製造におけるカプセルの使用であって、該カプセルは、眼内にインプラントされるのに適合しており、そして該カプセルは、該生物学的に活性な分子の細胞の供給源を含むコアおよび周囲の生体適合性の外被を備え、該外被が、該生物学的に活性な分子の眼への拡散を可能にし、その結果、50pg/眼/患者/日〜500ng/眼/患者/日の該生物学的に活性な分子の投薬量が送達される、使用。
【請求項2】
請求項1に記載の使用であって、前記外被が、透過選択性の免疫的隔離膜または
微細孔膜を備える、使用。
【請求項3】
請求項1または2に記載の使用であって、前記カプセルは、中空繊維または平板として構成される、使用。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用であって、前記生物学的に活性な分子が、抗血管因子;抗炎症因子;神経栄養因子;抗血管因子、抗炎症因子および神経栄養因子の組み合わせ;増殖因子;抗体および抗体フラグメント;神経伝達物質;ホルモン;酵素;サイトカイン;およびリンホカインからなる群より選択される、使用。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用であって、前記生物学的に活性な分子が、バスキュロスタチン、アンジオスタチン、エンドスタチン、抗インテグリン、血管内皮細胞増殖因子インヒビター(VEGFインヒビター)、血小板第4因子、ヘパリナーゼ、bFGF結合分子、VEGFレセプターFltおよびVEGFレセプターFlkからなる群から選択される抗血管因子を含む、使用。
【請求項6】
眼障害に罹患している患者における該眼障害の処置に使用するための医療用デバイスの製造における生体適合性のカプセルの使用であって、該生体適合性のカプセルは、該患者の眼にインプラントされるのに適しており、そして該カプセルは、生物学的に活性な分子の細胞の供給源を含むコアおよび該コアの周囲の外被を備え、生体適合性の物質を含む該外被が、該生物学的に活性な分子の、治療有効量での眼への拡散を可能にし、その結果、眼内へ拡散する該生物学的に活性な分子の投薬量は、50pg/眼/患者/日〜1000ng/眼/患者/日である、使用。
【請求項7】
請求項6に記載の使用であって、前記生物学的に活性な分子が、抗血管因子;抗炎症因子;神経栄養因子;抗血管因子、抗炎症因子および神経栄養因子の組み合わせ;増殖因子;抗体および抗体フラグメント;神経伝達物質;ホルモン;酵素;サイトカイン;およびリンホカインからなる群より選択される、使用。
【請求項8】
請求項6または7に記載の使用であって、前記眼障害が、脈管形成障害、炎症性障害、変性障害およびそれらの組合せからなる群から選択されるか;または該眼障害は、ブドウ膜炎、網膜性色素症、加齢関連黄斑変性、および糖尿性網膜症からなる群から選択される、使用。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の使用であって、前記生物学的に活性な分子が、BDNF、TGF−β、GDNF、NGF、CNTF、bFGF、aFGF、IL−1β、IL−10、IFN−β、IFN−αおよびVEGFインヒビターからなる群から選択されるか;または前記生物学的に活性な分子は、バスキュロスタチン、アンジオスタチン、エンドスタチン、抗インテグリン、血管内皮細胞増殖因子インヒビター(VEGFインヒビター)、血小板第4因子、ヘパリナーゼ、bFGF結合分子、VEGFレセプターFltおよびVEGFレセプターFlkからなる群から選択される抗血管因子である、使用。
【請求項10】
前記カプセルが免疫的隔離である、請求項6〜9のいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
前記カプセルが、眼の前房、後房、または硝子体へのインプラントに適合している、請求項6〜10のいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
前記生物学的に活性な分子の前記細胞供給源が、生きている細胞を含む、請求項6〜11に記載の使用。
【請求項13】
前記カプセルが、該カプセルを適所に固定するのに適合しているテザーを備える、請求項6〜12のいずれか1項に記載の使用。
【請求項14】
前記テザーが、ループ、円板、および縫合用の小穴からなる群より選択される、請求項13に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−342185(P2006−342185A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−248673(P2006−248673)
【出願日】平成18年9月13日(2006.9.13)
【分割の表示】特願平9−533777の分割
【原出願日】平成9年3月24日(1997.3.24)
【出願人】(306036071)ニューロテック ソシエテ アノニム (1)
【Fターム(参考)】