説明

眼科用組成物および眼科用レンズ

【課題】より柔軟に使用することができ、約430nm以下の波長範囲の紫色光を少なくとも大部分吸収し、また一方、約450〜460nmの波長範囲の青色光に対しては少なくともほとんど透明である染料を含む眼科用レンズを提供する。
【解決手段】本発明は、一般式I



を有する染料を含む眼科用組成物に関し、式中、Rは、置換もしくは非置換の炭化水素基であり、Rは、少なくとも1つの重合性二重結合を有する置換もしくは非置換の炭化水素基であり、Rは、Hまたは置換もしくは非置換の炭化水素基であり、Rは、H、電子求引性置換基または置換もしくは非置換の炭化水素基であり、Xは、O、S、NHまたはNRであり、Rは置換および/または非置換の炭化水素基である。さらに、本発明は、別の眼科用組成物および眼科用レンズに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科用組成物ならびに眼科用レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
紫色光、すなわち約400nmと約430nmの間の波長範囲の光は、加齢と関係する黄斑変性症において独特な役割を果たすことが知られている。その点で、ヒトおよび動物の眼の疾患群は、眼に位置する組織の漸進的機能低下と関係する黄斑変性症によるものと理解されている。該疾患の起源は、紫色光の照射が分子老廃物の蓄積(リポフスチン)をもたらす状況である。さらにその結果、このリポフスチンは、黄斑変性症を順次誘発するいわゆるドルーゼの形成をもたらし、それによって完全な失明をもたらし得る。このため、紫色光は光毒性であると考えられている。
【0003】
さらに、青色光、すなわち約450nmと500nmの間の波長範囲の光は、削減された照明条件での視覚に対して、特に暗所視および薄明視に対して重要性の大きいものであることが知られている。ここで、眼の網膜に発生する視物質ロドプシンは重要な役割を果たす。そのとき、Gタンパク質共役受容体のグループに属するロドプシンは、網膜の光受容体(網膜桿体)中に局在する。光の入射はロドプシンにより結合されているレチナールの異性化をもたらす(11−シス−レチナール→全トランス−レチナール)。
【0004】
眼科用レンズは、従来技術からさまざまな構成のものが知られている。眼内レンズ(IOL)として、それらは通常天然レンズ(無水晶体)を除去した後または視覚欠陥のある場合に埋め込まれる。通常光学部分および非視覚(支持)部分を含むIOLは、とりわけそれらの製造のために使用される眼科用組成物に基づいて区別される。特に、アクリレートまたはメタクリレート材料から製造されたIOLとシリコーン材料から製造されたIOLの間で区別している。その上、IOLは、1部品または複数部品の形にすることができる。1部品の眼内レンズの場合、その光学部分と非光学部分は単一の材料でできている。複数部品のIOLの場合、その光学部分と非光学部分は異なる材料で組み立てることができる。その非光学部分は支持部分とも呼ばれ取り付けに役立つ。別法では、その眼科用レンズはコンタクトレンズとして形づくることもでき、それはしたがって眼の上での一時的な連続に向けて設計されるのみである。
【0005】
眼の中のさまざまな組織への損傷を避けるために、その眼科用レンズまたはそれらの製造のために使用される眼科用組成物は、できるだけ多く紫色光を吸収する吸収材としての染料を通常は含む。眼内レンズ(IOL)としてのレンズの構成の場合、その染料は特にその光学部分に与えられる。
【0006】
しかしながら、市販の眼内レンズ(IOL)に対する染料は、特に紫色光範囲ではほんの一部しか吸収しない。指標に関して言えば、従来の染料のときは、25%〜35%の光毒性を有する光がレンズ材料を通過する。加えて、その既知の染料は、アクリレート/メタクリレートに基づく眼科用組成物またはシリコーンに基づく眼科用組成物のいずれかに使用可能であるように、それらはそれぞれ1つのレンズ材料のタイプのみに適するものである。
【0007】
反対に、その染料またはそれが施されている眼科用レンズは、最大の光照射、したがって、最適な薄明視を確保することができるように、吸収する青色光はできるだけ少なくなければならない。
【0008】
しかしながら、市販のIOL用の染料は、この波長範囲(例えば、475nmにおいて)において約70%〜75%の透過率を有するのみである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】独国特許発明第69318996号明細書
【特許文献2】米国特許第5,334,710号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、より柔軟に使用することができ、約430nm以下の波長範囲の紫色光を少なくとも大部分吸収し、また一方、約450〜460nmの波長範囲の青色光に対しては少なくともほとんど透明である染料を含む眼科用レンズを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、この目的は、請求項1に記載の眼科用組成物、請求項6に記載の眼科用組成物、ならびに請求項14に記載の眼科用組成物により解決される。都合のよい展開を有する有利な構成がそれぞれの従属クレームに特定されている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、より柔軟に使用することができ、約430nm以下の波長範囲の紫色光を少なくとも大部分吸収し、また一方、約450〜460nmの波長範囲の青色光に対しては少なくともほとんど透明である眼科用組成物を、一般式Iの染料を含めることによって提供する。特に眼科のための化学組成または製剤は、眼科用組成物によって理解することができる。
【0013】
約430nm以下の波長範囲の紫色光を少なくとも大部分吸収し、また一方、約450〜460nmの波長範囲の青色光に対しては少なくともほとんど透明である染料は、一般式I
【化1】


を有しており、式中、
は、置換もしくは非置換の炭化水素基であり、
は、少なくとも1つの重合性二重結合を有する置換もしくは非置換の炭化水素基であり、
は、Hまたは置換もしくは非置換の炭化水素基であり、
は、Hまたは置換もしくは非置換の炭化水素基であり、
Xは、O、S、NHまたはNRであり、Rは置換および/または非置換の炭化水素基を表す。その中で、基本的に、一般式Iの鏡像異性体、ジアステレオマーおよびラセミ混合物のすべてが、一緒に開示されているとみなすことができる。言い換えると、一般式Iの黄色染料は、基本的な構造要素としてニトロアニリン基を有する重合性モノマーであり、それはさまざまなポリマー材料に対して特に柔軟に使用することができる。一方において、その染料は紫色光を吸収し、しかしながら、一方において、それは青色光に対しては少なくともほとんど透明である。このように、特に眼科用組成物または眼科用レンズのための該染料の使用においては、患者の眼の有利な黄斑保護が、良好な薄明視と共に同時に確保される。
【0014】
本発明の有利な展開において、一般式Iの染料中で、Rは、少なくとも1つの重合性二重結合を有する炭化水素基としてビニルおよび/またはアリルおよび/または(メタ)アクリル基を含む。これによって、該染料は、シリコーン系またはアクリレートもしくはメタクリレート系ポリマー中に、その個々の使用目的に応じた特に柔軟性のあるやり方で、共有結合により組み込むことができる。
【0015】
その中で、基本的に、全体のポリマーまたは全体の組成物の少なくとも51%の重量比率が、本発明を検討する中での基準となるものと理解することができる。好ましくはその基準の比率は、90%より上、特に95%より上、特に98%より上である。
【0016】
さらなる利点は、Rが、重合性二重結合を有しない、特にビニルおよび/またはアリルおよび/または(メタ)アクリル基を有しない基である場合に発生する。これによって、該染料が1個だけの重合性の基をもち、したがって架橋結合特性は何ら有しないことが確保される。このことが、さまざまなポリマー材料中への特に容易な組み込みを、また一方でその力学的特性を基本的に変化させることなく可能とする。
【0017】
別の展開においては、Rおよび/またはRおよび/またはRおよび/またはRおよび/またはRが、該炭化水素基として、C、H、Si、O、N、S、P、F、Cl、Brから選択される最大30個までの原子を有する分枝および/または非分枝アルキルおよび/またはアリール基を含む場合には有利であることが証明されている。このことは、さまざまな必要条件の輪郭に対する該染料の力学的、化学的および光学的特性の特に柔軟な適応能力を可能にする。
【0018】
その点で、さらなる展開においては、該染料が、R=C、R=C、R=C、R=HおよびX=Oであり、構造
【化2】


を有する場合に有利であることが証明されている。これにより、該染料は、シリコーンに基づく眼科用組成物に特に好適であり、例えば、末端連結鎖としての反応性基を有するシロキサンと共に重合することができる。適当なシロキサンとしては、特にH−シロキサンが挙げられる。
【0019】
別法では、該染料が、R=C10、R=CO、R=CH、R=HおよびX=Oであり、構造
【化3】


を有する場合に有利であることが証明されている。これにより、該染料は、アクリレートおよび/またはメタクリレートに基づく眼科用組成物に特に好適であり、例えば、疎水性および/または親水性アクリレート/メタクリレートモノマーと共に重合することができる。基本的にアクリレート基は、示されているメタクリレート基の代わりに提供することができる。
【0020】
本発明の別の有利な展開においては、20℃で、該染料は、400nmと430nmの間の波長範囲において最大0.07、好ましくは最大0.05の透過度、および/または450nmと475nmの間の波長範囲において少なくとも0.25、好ましくは少なくとも0.30の透過度、および/または490nmと550nmの間の波長範囲において少なくとも0.80、好ましくは少なくとも0.90の透過度を有することが提供される。好ましくは、該染料の透過スペクトルは、約430nmのところ、すなわち430nm±10nmのところに鋭い「カットオフ」を有する。これは、該染料の透過が、約430nm以下の波長範囲における低い透過度から、約450〜475nmの波長範囲、すなわち450〜475nm±10nmでは最大限急激に増大することを意味している。
【0021】
より柔軟に使用することができ、約430nm以下の波長範囲の紫色光を大部分吸収し、また一方で、約450〜460nmの波長範囲の青色光に対しては少なくともほとんど透明である本発明の別の態様による眼科用組成物は、一般式II
【化4】





(式II)


を有する染料を含み、式中、
は、置換もしくは非置換の炭化水素基であり、
は、少なくとも1つの重合性二重結合を有する置換もしくは非置換の炭化水素基であり、
は、Hまたは置換もしくは非置換の炭化水素基であり、
は、Hまたは置換もしくは非置換の炭化水素基であり、
は、Hおよび/または置換および/または非置換の炭化水素基であり、
nは、Rが(メタ)アクリル基を含む場合、1、2、3であり、または
nは、Rが任意の(メタ)アクリル基を含まない場合、0、1、2、3であり、
Xは、O、S、NHまたはNRであり、Rは置換および/または非置換の炭化水素基を表す。その中で、基本的には、一般式IIの鏡像異性体、ジアステレオマーおよびラセミ混合物のすべてが、一緒に開示されているとみなすことができる。言い換えると、一般式IIの黄色染料は、基本的な構造要素としてニトロアニリン基および飽和環構造を有する重合性モノマーであり、それはさまざまなポリマー材料に対して特に柔軟に使用することができる。一方において、その染料は紫色光を吸収し、しかしながら、一方において、それは青色光に対しては少なくともほとんど透明である。このように、特に眼科用組成物または眼科用レンズのための該染料の使用においては、患者の眼の有利な黄斑保護が、良好な薄明視と共に同時に確保される。
【0022】
本発明の有利な展開において、一般式IIの染料中で、Rは、少なくとも1つの重合性二重結合を有する炭化水素基としてビニルおよび/またはアリルおよび/または(メタ)アクリル基を含む。これによって、該染料は、シリコーン系またはアクリレートもしくはメタクリレート系ポリマー中に、その個々の使用目的に応じた特に柔軟性のあるやり方で、共有結合により組み込むことができる。
【0023】
さらなる利点は、Rが、重合性二重結合を有しない、特にビニルおよび/またはアリルおよび/または(メタ)アクリル基を有しない基である場合に発生する。これによって、該染料が1個だけの重合性の基をもち、したがって架橋結合特性は何ら有しないことが確保される。このことが、さまざまなポリマー材料中への特に容易な組み込みを、また一方でその力学的特性を基本的に変化させることなく可能とする。
【0024】
さらなる利点は、Rおよび/またはRおよび/またはRおよび/またはRおよび/またはRが、該炭化水素基として、C、H、Si、O、N、S、P、F、Cl、Brから選択される最大30個までの原子を有する分枝および/または非分枝アルキルおよび/またはアリール基を含むことによって発生する。このことは、さまざまな必要条件の輪郭に対する該染料の力学的、化学的および光学的特性の特に柔軟な適応能力を可能にする。
【0025】
別の展開においては、該染料が、R=CH、R=C、RおよびR=H、n=0およびX=Oであって、構造
【化5】


を有する場合に有利であることが証明されている。これにより、該染料は、シリコーンに基づく眼科用組成物に特に好適であり、例えば、末端連結鎖としての反応性基を有するシロキサンと共に重合することができる。適当なシロキサンとしては、特にH−シロキサンが挙げられる。
【0026】
別法では、該染料が、R=CH、R=CO、RおよびR=H、n=1、R=HおよびX=Oであって、構造
【化6】


を有する場合に有利であることが証明されている。これにより、該染料は、アクリレートおよび/またはメタクリレートに基づく眼科用組成物に特に好適であり、例えば、疎水性および/または親水性アクリレート/メタクリレートモノマーと共に重合することができる。基本的にアクリレート基は、示されているメタクリレート基の代わりに提供することができる。
【0027】
本発明の別の有利な展開においては、20℃で、該染料は、400nmと430nmの間の波長範囲において最大0.07、好ましくは最大0.05の透過度、および/または450nmと475nmの間の波長範囲において少なくとも0.25、好ましくは少なくとも0.30の透過度、および/または490nmと550nmの間の波長範囲において少なくとも0.80、好ましくは少なくとも0.90の透過度を有することが提供される。好ましくは、該染料の透過スペクトルは、約430nmのところ、すなわち430nm±10nmのところに鋭い「カットオフ」を有する。これは、該染料の透過が、約430nm以下の波長範囲における低い透過度から、約450〜475nmの波長範囲、すなわち450〜475nm±10nmでは最大限急激に増すことを意味している。
【0028】
本発明のさらなる態様は、本発明によれば、一般式Iの染料および/または一般式IIの染料を含めることによって、より柔軟に使用することができ、約430nm以下の波長範囲の紫色光を少なくとも大部分吸収し、また一方、約450〜460nmの波長範囲の青色光に対しては少なくともほとんど透明である眼科用組成物である眼科用組成物に関する。これによりもたらされるその特徴および利点は、前の記述から明らかであり、相応じて該眼科用組成物に当てはまる。特に眼科のための化学組成または製剤は、眼科用組成物によって理解することができる。
【0029】
その中で、該染料がポリマー中に共有結合により組み込まれている場合が有利であることが証明されている。これにより多くの用途において特に信頼性のある様式で該染料の望ましくない遊離が最小限となるかまたは不可能となる。
【0030】
好ましくは、該眼科用組成物は、次の一般式III
【化7】


[式中、
、RおよびRは、それぞれ互いに独立して、水素またはアルキルを意味し、
Yは、OまたはNR(ここで、Rは、水素またはアルキルから選択される)を意味し、
Xは、O、S、SOまたはSOを意味し、
Qは、CHRまたは(CHRCHRO)CH(ただし、RおよびRは、それぞれ互いに独立して、水素またはアルキルを意味する)から選択される構造単位を意味し、
nおよびiは、互いに独立して、1と10の間の整数を意味し、
mは、2と6の間の整数を意味する]
に従うモノマーを含む。一般式IIIのモノマーのおかげで、いわゆる微小切開白内障手術(MICS)に対して特に好適である眼科用組成物または眼科用レンズを製造することができる。これは、2.0mm未満、特に1.7mm未満の切開による対応する眼科用レンズの埋め込みが可能であることを意味する。
【0031】
有利な展開において、該一般式IIIのモノマーは次の構造:
【化8】


を有することが認められる。
【0032】
これにより、このモノマーが眼科用レンズに組み込まれる場合、それは前に説明した利点以外の改善された力学的特性をさらに有する。
【0033】
好ましい実施態様において、その基R、R、R、R、RおよびRは、それぞれ互いに独立して、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9および/または10個の炭素原子を有する非分枝および/または分枝アルキル基から選択される。さらに好ましくは、その基R、R、R、R、RおよびRは、互いに独立して、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基および/またはt−ブチル基である。
【0034】
さらなる好ましい実施態様において、構造単位Qは、メチレン基であり、さらなる好ましい実施態様において、該構造単位Qは、−CH(CH)CHOCH−基である。
【0035】
さらなる好ましい実施態様において、nおよびiは、互いに独立して、1、2、3、4、5、6、7、8、9および/または10である。さらなる好ましい実施態様において、mは、2、3、4、5または6である。
【0036】
さらなる好ましい実施態様において、基Rは、構造単位YがO原子である場合、メチル基である。さらにまた、基YがNHである場合に、基Rが水素に相当することが好ましい。
【0037】
一般式IIIのモノマーは、次の構造
【化9】


を有することがさらにまた好ましい。
【0038】
その中で、このモノマー(テトラヒドロフラン−2−イル)−メチルメタクリレートは、非学名のテトラヒドロフルフリルメタクリレート(THFMA)のもとでも知られている。別法では、または追加として、この中に、位置異性体の(テトラヒドロフラン−3−イル)−メチルメタクリレートも存在させることができる。
【0039】
該眼科用組成物は、コポリマーを有することを認めることができ、そのコポリマーは:
a)該コポリマーの全体重量に対して20〜95質量パーセントの少なくとも1つの親水性モノマーに由来する構造単位と、
b)該コポリマーの全体重量に対して5〜80質量パーセントの一般式III
【化10】


[式中、
、RおよびRは、それぞれ互いに独立して、水素またはアルキルを意味し、
Yは、OまたはNR(ここで、Rは、水素またはアルキルから選択される)を意味し、
Xは、O、S、SOまたはSOを意味し、
Qは、CHRまたは(CHRCHRO)CH(ただし、RおよびRは、それぞれ互いに独立して、水素またはアルキルを意味する)から選択される構造単位を意味し、
nおよびiは、互いに独立して、1と10の間の整数を意味し、
mは、2と6の間の整数を意味する]
に従う少なくとも1つのモノマーに由来する構造単位と、
を含み、
該コポリマーは、該コポリマーの全体重量に対して1〜59質量パーセントの含水量を有する。その中で、モノマーa)およびb)のすべての立体異性体およびラセミ混合物は、基本的に包含されるものとみなすことができる。特に、該コポリマーは、それが眼科用レンズ中に組み込まれるかそのようなレンズを製造するために使用される場合改良された特性を有する。かかる眼科用レンズ、とりわけ眼内レンズは、その外科的処置が、特に小さい切開をその眼内レンズを眼の中に導入する前に必要とするように、埋め込みにおいてよりよく収容することができる。それ故そのレンズは、いわゆる微小切開白内障手術(MICS)に対して特に好適である。その上、かかるコポリマーの眼中における適合性は非常に良好である。
【0040】
該コポリマーにおいては、さらに、該コポリマーの全体重量に対して30〜79質量パーセントの構造単位が少なくとも1つの親水性モノマーa)に由来することが好ましく、さらに好ましくは、50〜79質量パーセントの構造単位が少なくとも1つの親水性モノマーa)に由来する。
【0041】
さらなる好ましい実施態様においては、該コポリマーの全体重量に対して、該コポリマー中の10〜79質量パーセント、特に21〜60質量パーセント、好ましくは21〜50質量パーセント、さらに好ましくは21〜35質量パーセントが、一般式IIIに従う少なくとも1つのモノマーb)に由来する。特に、該コポリマーにおいて、該コポリマーの全体重量に対して10〜35質量パーセントは、一般式IIIに従う少なくとも1つのモノマーb)から誘導することができる。
【0042】
好ましくは、該コポリマーは、該コポリマーの全体重量に対して、2〜50質量パーセント、さらに好ましくは5〜40質量パーセント、特に好ましくは10と30質量パーセントの間の含水量を有する。
【0043】
本開示の範囲内で特定されているモノマーに由来する構造単位の割合は、該コポリマーの全体重量と関係し、これらの個々の割合および含水量は、好ましくは、全体で100質量パーセントとなるように選択する。該コポリマー中にさらなる成分が含まれる場合、これらの重量割合および含水量は、そのさらなる成分を含めた該コポリマーの全体重量が100質量パーセントをもたらすように選択することができる。
【0044】
該親水性モノマーa)は、一般式IV
【化11】


[式中、
Qは、CHRまたは(CHRCHR0)CH(ただし、RおよびRは、それぞれ互いに独立して、水素またはアルキルを意味する)から選択される構造単位を意味し、
pおよびkは、互いに独立して、1と10の間の整数を意味する]
のモノマーであることがさらに好ましい。ここでもまた、すべての立体異性体およびラセミ混合物が含まれるものとみなすことができる。
【0045】
好ましい実施態様において、その基R、RおよびRは、それぞれ互いに独立して、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9および/または10個の炭素原子を有する非分枝および/または分枝アルキル基から選択される。さらに好ましくは、その基R、RおよびRは、それぞれ互いに独立して、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基および/またはt−ブチル基である。Rについては、そこから独立して、メチルまたはHであることが特に好ましい。
【0046】
いくつかの場合について、該コポリマーは、少なくとも1つのアルコキシアルキルメタクリレートモノマーおよび/または1つのアルコキシアルキルアクリレートモノマーに由来する構造単位を何も含まないことを選ぶことができる。
【0047】
さらなる好ましい実施態様において、kおよびpは、互いに独立して、1、2、3、4、5、6、7、8、9および/または10である。
【0048】
なおさらなる好ましい実施態様において、一般式IVの親水性モノマーは、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)および/またはヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)である。別法では、または追加として、グリセリンモノメタクリレートをその親水性モノマーとして提供することができる。
【0049】
該一般式IIIのモノマーb)が、次の構造
【化12】


を有することがさらに好ましい。
【0050】
その中で、このモノマー(テトラヒドロフラン−2−イル)−メチルメタクリレートは、非学名のテトラヒドロフルフリルメタクリレート(THFMA)のもとでも知られている。別法では、または追加として、この中に、位置異性体の(テトラヒドロフラン−3−イル)−メチルメタクリレートも存在させることができる。
【0051】
好ましい実施態様において、一般式IIIおよび/またはIVのモノマーは、鏡像異性的に純粋な形をしている。別の形で、好ましくは、一般式IIIおよび/またはIVのモノマーは、ラセミ混合物として存在することができる。
【0052】
さらなる好ましい実施態様において、該コポリマーは、少なくとも1つまたは複数の架橋剤を含む。適当な架橋剤として、2つ以上の重合性基を有するビニルモノマーまたはオリゴマーを提供することができる。これにより、該コポリマーは明確に三次元的に架橋結合することができ、その架橋度は、それぞれの用途目的に応じて最適な方法で調節することができる。例えば、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,3−グリセリンジ(メタ)アクリレートおよび/またはブタンジオールジ(メタ)アクリレートを、架橋剤として提供することができる。
【0053】
さらなる好ましい実施態様において、該眼科用組成物は、紫外線吸収剤を含有する。その点で、200nmと400nmの間の波長範囲の放射線を少なくとも大部分、好ましくは定量的に吸収する有機または無機化合物が紫外線吸収剤と解釈することができる。生体適合性のある紫外線防護剤は、紫外線吸収剤として提供され、そのためには、場合によって1つまたは複数のアクリルまたはメタクリル官能基にアクリルスペーサーを介して連結されているクマリン誘導体を使用することができる。
【0054】
本発明のさらなる有利な展開において、該紫外線吸収剤は、クマリン基体が1つまたは複数のアクリルまたはメタクリル基にさまざまなスペーサーを介して連結している一般式Vの化合物であることが認められ:
【化13】


式中、
は、アクリルおよび/またはメタクリル基
【化14】


を意味し、
は、C、H、Si、O、N、P、S、F、Cl、Brから選択される最大30個までの原子を有する有機の分枝および/または非分枝アルキルおよび/またはアリール置換基を意味し、
、RおよびRは、Hおよび/またはC、H、Si、O、N、P、S、F、Cl、Brから選択される最大30個までの原子を有する有機の分枝および/または非分枝アルキルおよび/またはアリール置換基を意味し、
X、Yは、O、S、NHまたはNR(ただし、Rは、C、H、Si、O、N、P、S、F、Cl、Brから選択される最大30個までの原子を有する有機の分枝および/または非分枝アルキルおよび/またはアリール置換基である)であり、
nは、0と2の間の整数であり、同様にmは、0または1であり、ここでn+mの和は、常に1以上である。
【0055】
ここにおいてもまた、すべての立体異性体およびラセミ混合物が、含まれるものとみなすことができる。式Vに従う適当な構造に対する例は、
【化15】


【化16】


【化17】


である。
【0056】
その基本構造が、構造2、構造3または構造5に基づく紫外線吸収剤は、それらが複数の重合可能な末端基の存在に起因するレンズ材料中への定量的組み込みを可能とし、その上、架橋結合特性を有するさらなる利点を有する。レンズを製造する際、したがって、理想的な場合、さらなる架橋剤の添加は省略することができる。
【0057】
好ましい紫外線吸収剤は、n=1、m=0、X=O、R=C、Y=O、R=メタクリル基、R=H、R=H、R=Hであるクマリン−7−プロポキシメタクリレートであり、構造:
【化18】


1616
分子量:288.30g/モル、を有する。
【0058】
この化合物の調製は2段階で行われ、7−ヒドロキシクマリンは市販されている。
【0059】
【化19】

【0060】
一般式Vの紫外線吸収剤のさらなる例は、一般式Vにおいて、n=2、m=0、X=O、R=C、Y=O、R=アクリルおよび/またはメタクリル基、R=H、R=H、R=Hの化合物であり、これによって次の構造:
【化20】


となる。
【0061】
紫外線吸収剤のさらなる実施態様は、クマリン−6,7−ジプロポキシメタクリレートである。この化合物もまたクマリン−7−プロポキシメタクリレートと同様に簡単な合成法の2段階反応で調製することができる。それに必要な6,7−ジヒドロキシクマリンもまた市販されている。このように、さらなるメタクリレートアンカー基が導入されている化合物を調製することができる。アルコキシスペーサーを介するこの第2のアンカー基の連結は、該吸収剤のスペクトル特性に対してはわずかな影響しか有さず、また一方で、それはレンズ材料の製造における架橋剤としてもそれを使用することを可能にする。
【0062】
【化21】

【0063】
一般式Vの紫外線吸収剤のさらなる例は、n=1、m=0、X=O、R=−CH−CH(OR)CH−、Y=O、R=アクリルまたはメタクリル基、R=H、R=H、R=Hの構造である。
【0064】
2つのアンカー基を有する紫外線吸収剤を製造するさらなる可能性は、分枝ジヒドロキシハロゲン化物の使用によってもたらされる。第1段階で7−ヒドロキシクマリンを市販の3−ブロモ−1,2−プロパンジオールと反応させ、その後その生成したアルコキシジオールにアクリレートまたはメタクリレートを反応させる場合に、さらなる二官能の紫外線吸収剤が得られる。
【0065】
【化22】

【0066】
一般式Vの紫外線吸収剤のさらなる例は、n=1、m=0、X=O、R=−CH−CH(OR)CH−、Y=O、R=メタクリル基、R=H、R=H、R=Hの構造である。
【0067】
7−ヒドロキシクマリンをアクリル酸またはメタクリル酸とではなく市販のメタクリル酸グリシジルエステルと反応させた場合、それにより、単一の反応ステップで、クマリン基体が脂肪族鎖によってメタクリレート基から分離されているさらなる紫外線フィルターが得られる。その後の塩化メタクリロイルによるエステル化により、さらなるメタクリレート官能基を第二級アルコール基のところに導入することができる。
【0068】
【化23】

【0069】
一般式Vの紫外線吸収剤のさらなる例は、n=1、m=0、X=O、R=C、Y=O、R=アクリルまたはメタクリル基、R=H、R=H、R=Cの構造である。
【0070】
ここで、Rは、弱い誘起効果(I効果)を有するプロピル基である。前記の好ましい紫外線吸収剤中へのさらなるプロピル基の導入は、合成的に問題なく達成することができ、発色団のスペクトル特性の変化はほんの少しだけである。その合成で、7−ヒドロキシクマリンではなく同じく市販されている7−ヒドロキシ−4−プロピルクマリンを使用する場合、メタクリル化の後、たった1つのプロピル側鎖によって前記の好ましい紫外線吸収剤とは異なるクマリン誘導体が得られる。
【0071】
【化24】

【0072】
紫外線吸収剤のさらなる例は、n=2、m=1、X=O、R=C、Y=O、R=アクリルまたはメタクリル基、R=H、R=H、R=Hの一般式Vの構造である。
【0073】
三官能性紫外線吸収剤もまた簡単な合成方法で製造することができる。4,5,7−トリヒドロキシクマリンから出発し、3−ブロモ−1−プロパノールによるアルコキシル化およびその後のアクリル化またはメタクリル化の後に、3つのアンカー基を有する一般式Vの紫外線吸収剤が得られる。
【0074】
【化25】

【0075】
該紫外線吸収剤が、メタクリル酸−(2−[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)4−ヒドロキシ−フェニル]エチルエステル)であるものを提供することもできる。
【0076】
該眼科用組成物は、例えば、次の成分構成を有することができる:
EOEMA(エトキシエチルメタクリレート) 85〜97質量%
MMA(メチルメタクリレート) 0〜15質量%
EEEA(エトキシエトキシエチルアクリレート) 0〜5質量%
EGDMA(エチレングリコールジメタクリレート) 0〜0.7質量%
紫外線吸収剤 0.1〜1.0質量%
紫色吸収剤 0.03〜0.16質量%
【0077】
その中で、紫色吸収剤は、式Iおよび/またはIIの染料またはそれらの有利な実施形態である。
【0078】
本発明のさらなる有利な展開において、該眼科用組成物は、50〜90%、好ましくは70〜85%、特に好ましくは70〜80%のHEMA(ヒドロキシエチルメタクリレート)、10〜40%、好ましくは16〜40%、好ましくは16〜30%のMMA(メチルメタクリレート)、0.25〜1.5%、好ましくは0.4%〜0.6%、特に0.5%の架橋剤、0.01〜0.3%のラジカル開始剤、0.1〜3.0%、好ましくは0.70〜0.80%、好ましくは0.75%の紫外線吸収剤、および0.02〜0.3%、好ましくは0.16〜0.30%の紫色吸収剤としての染料を含む。その中で、そのパーセントの仕様は基本的に質量パーセントを表す。好ましくは該組成物の含水量は、20%と35%の間、好ましくは24%と30%の間である。
【0079】
さらなる好ましい実施形態において、該眼科用組成物は、次の成分を有する:
HEMA(ヒドロキシエチルメタクリレート) 50〜85質量%
EOEMA(エトキシエチルメタクリレート) 30〜40質量%
THFMA(テトラヒドロフルフリルメタクリレート) 5〜20質量%
EGDMA(エチレングリコールジメタクリレート) 0〜0.7質量%
紫外線吸収剤 0.1〜1.0質量%
紫色吸収剤 0.03〜0.16質量%
【0080】
その中で、紫色吸収剤は、式Iおよび/またはIIの染料またはそれらの有利な実施形態である。
【0081】
さらなる実施形態において、THFMAの割合は、20%を超えて特に50%以下であり、成分HEMAの割合はそのとき50%未満であり得、および/またはEOEMAの割合は30%未満であり得る。EOEMAは、また存在しないこともあり得る。
【0082】
すべての実施形態において、該成分の質量パーセントは、それぞれの組成物において全体でそれらが100%となるように選択され、場合により同様に存在するラジカル開始剤またはポリマー中に組み込まれているそれらの成分も含まれる。
【0083】
適当な架橋剤は、例えばEGDMA(エチレングリコールジメタクリレート)である。また一方、ラジカル開始剤としては−任意的に反応温度によって−例えば、AIBN(アゾビス(イソブチロニトリル))および/またはV65も用意することができる。
【0084】
該眼科用組成物は、高い生体適合性ならびに高い最大屈折力(ジオプター)を有する。加えて、該眼科用組成物は、小さい切開の適用、特にMICSの適用に対する眼科用レンズを製造するために特に好適である。さらに、該眼科用組成物は、好ましくは、20%と35%の間、特に24%と30%の間の含水量を有する。
【0085】
本発明のさらなる態様は、本発明によれば、先行の実施態様のいずれかに従う眼科用組成物を含めることによって、より柔軟に使用することができ、430nm以下の波長範囲の紫色光を少なくとも大部分吸収し、また一方、約450〜460nmの波長範囲内の青色光に対しては少なくとも大いに透明である眼科用レンズに関する。
【0086】
これにより、本発明によるレンズは、高い屈折率ならびに高い生体適合性を備えた特に良好な収容性を整え、基本的に1部品または複数部品の形にすることができる。その中で、基本的に、該レンズは、もっぱら該眼科用組成物からなるものとすることができる。それのさらなる特徴および利点は、前述の説明から明らかであり、相応じて、該眼科用レンズに当てはまり、上述の態様に従う眼科用組成物のその有利な実施形態は、特にさらなる眼科用組成物の有利な実施形態としてみなすことができる。
【0087】
本発明の有利な展開において、そのレンズが眼内レンズとして形成される場合に有利であることが証明されている。それはまたコンタクトレンズとしての設定も提供することができる。
【0088】
さらなる態様は、一般式Iおよび/または一般式IIの染料および/または先行実施態様のいずれかによる眼科用組成物の、眼科用レンズ、特にコンタクトレンズまたは眼内レンズ、および/または医療用埋め込み片、特に眼の埋め込み片を製造するための用途に関する。これによりもたらされるそれらの特徴および利点は、前述の説明から明らかであり、相応じて本発明による該用途に当てはまる。
【0089】
本発明のさらなる特徴は、特許請求の範囲および実施例から明らかである。説明の中で上で述べた特徴および特徴の組合せならびに実施例の中で下で述べる特徴および特徴の組合せは、それぞれ特定した組合せにおけるのみでなく、本発明の範囲を逸脱しないその他の組合せまたは単独でも使用可能である。
【実施例】
【0090】
実施例1:
一般式Iの黄色染料に対する最初の実施例においては、R=C、R=C、R=C、R=HおよびX=Oの次の化合物1を調製する。
【0091】
【化26】

【0092】
該化合物1の合成は、市販されている1−フルオロ−4−ニトロベンゼンと、同様に市販されている2−エチルアミノエタノールとの次の一般的な反応機構による反応から始める。
【0093】
【化27】

【0094】
得られた中間体段階(1)の(2−(エチル(4−ニトロフェニル)アミノ)エタノール)を、続いてp−トルエンスルホン酸クロリドと一般的な反応機構
【化28】


に従って反応させ、中間体段階(2)[2−(エチル(4−ニトロフェニル)アミノ)エチル−4−メチルベンゼンスルホネート]とする。重合性ビニル基を有する化合物1は、その中間体段階(2)の1−ヒドロキシ−3−ブテンによる置換によって最終的に得られる。
【0095】
【化29】

【0096】
実施例2:
ビニル基を有する一般式IIの黄色染料に対する2番目の実施例においては、R=CH、R=C、RおよびR=H、n=0およびX=Oの次の化合物2を調製する。
【0097】
【化30】

【0098】
該化合物2の合成は、市販されている(1−(4−ニトロフェニル)ピロリジン−2−イル)メタノールとp−トルエンスルホン酸クロリドとによる、中間生成物(1)への反応から始める。
【0099】
【化31】

【0100】
その重合性ビニル基を含む化合物2は、該中間生成物(1)の1−ヒドロキシ−3−ブテンによるその後の置換によって得られる。
【0101】
【化32】

【0102】
合成の詳細な説明:
(S)−[1−(4−ニトロフェニル)ピロリジン−2−イル]メタノール(11.5g、51.7ミリモル)、テトラブチルアンモニウム硫酸水素塩(TBAHS、2.8g、8.2ミリモル)および粉末の水酸化ナトリウム(14.3g、357ミリモル)を120mlのテトラヒドロフラン(THF)中で混合する。その後5℃〜10℃で、p−トルエンスルホン酸クロリド(11.5g、60.3ミリモル)を10分間で分割してその混合物に加える。その反応混合物を5℃で2時間にわたって攪拌する。
【0103】
先に進めるため、その混合物を飽和炭酸水素ナトリウム溶液(75ml)で希釈し、室温で10分間攪拌する。相分離させる。その水相をジクロロメタンで抽出する(3×15ml)。一緒にした有機相をNaSOで乾燥し、次いで濾過する。その濾液の揮発性成分を任意で真空中で完全に除去する。固体の黄色の中間生成物(1)(トルエン−4−スルホン酸−(S)−1−(4−ニトロフェニル)ピロリジン−2−イルメチル−エステル)(21.3g、約100%)がそこに残り、それはさらなる精製なしでその後の反応のために使用することができる。その中間生成物(1)(21.3g、約51.7ミリモル)、トルエン(175ml)、1−ヒドロキシ−3−ブテン(26.2g、36.3ミリモル)、テトラブチルアンモニウム水素流酸塩(5.2g、15.3ミリモル)および50パーセントの水酸化ナトリウム溶液(70g、873ミリモル)を混合する。次いで、その反応混合物を65℃〜70℃で90分間攪拌する。先に進めるため、その混合物を65mlの水と混合する。相分離させる。その水相をジクロロメタンで抽出する(3×20ml)。一緒にした有機相をNaSOで乾燥し、次いで濾過する。その濾液の揮発性成分は真空中で完全に除去することができる。その残渣(茶色の油状物、21.6g)は、カラムクロマトグラフィー(溶媒シクロヘキサン/酢酸エチル11:1)により精製する。得られた黄色の油状物(8.58g)は、好ましくは一晩かけて結晶化する。十分な精製のため、その生成物は、メタノールから2回再結晶させる。その結晶を室温でメタノール(50ml)に溶解する。その後その溶液を−55℃〜−60℃にゆっくり冷却し、次いで10分間攪拌する。沈殿した結晶を吸引濾過し、冷たいヘキサンで洗浄する(−75℃、3×10ml)。この手順をもう一回繰り返した。化合物2((S)−2−ブト−3−エニルオキシメチル−1−(4−ニトロフェニル)ピロリジン)は、黄色の固体として、57%(8.20g)の収率で得られ、35〜36℃の融点を有する(HPLC純度99.7%)。また一方、その合成は鏡像異性的に純粋な遊離体に対して行われなくてはならないということはなく、ラセミ混合物も使用できることも強調しておく。
【0104】
実施例3:
メタクリレート基を有する一般式Iの黄色染料に対する3番目の実施例においては、R=C10、R=CO、R=CH、R=HおよびX=Oの次の化合物3を調製する。
【0105】
【化33】

【0106】
該化合物3の合成は、この場合もやはり、市販されている1−フルオロ−4−ニトロベンゼンと市販されている2−メチルアミノエタノールとによる、中間生成物(1)[2−(メチル(4−ニトロフェニル)アミノ)エタノール]への反応から始める。
【0107】
【化34】

【0108】
得られた中間生成物(1)は、その後メタクリル酸グリシジルエステルと反応して化合物3となる。
【化35】

【0109】
実施例4:
メタクリレート基を有する一般式IIの黄色染料に対する4番目の実施例においては、R=CH、R=CO、RおよびR=H、n=1、R=HおよびX=Oの次の化合物4を調製する。
【0110】
【化36】

【0111】
化合物4の合成は、市販されている1−フルオロ−4−ニトロベンゼンの同じく市販されているピペリジン−2−メタノールとの中間生成物(1)((1−(4−ニトロフェニル)ピペリジン−2−イル)メタノール)への反応から始める。
【化37】

【0112】
得られた中間生成物(1)は、次にメタクリル酸クロリドによりエステル化して化合物4とする。
【0113】
【化38】

【0114】
本発明の対象の具体的な特徴を特性化するためのプロセスおよび測定条件を明示するための文書中に特定されているパラメーター値も、例えば、測定誤差、システムの誤差、計量誤差、DIN公差などによる偏差の範囲を有する中で本発明の範囲に含まれるものとみなされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式I
【化1】


(式中、
は、置換もしくは非置換の炭化水素基であり、
は、少なくとも1つの重合性二重結合を有する置換もしくは非置換の炭化水素基であり、
は、Hまたは置換もしくは非置換の炭化水素基であり、
は、Hまたは置換もしくは非置換の炭化水素基であり、
Xは、O、S、NHまたはNRであり、Rが置換および/または非置換の炭化水素基である)
の染料を含むことを特徴とする眼科用組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の眼科用組成物であって、Rが、少なくとも1つの重合性二重結合を有する炭化水素基としてビニルおよび/またはアリルおよび/または(メタ)アクリル基を含むことを特徴とする眼科用組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の眼科用組成物であって、Rが、重合性二重結合を有しない、特にビニルおよび/またはアリルおよび/または(メタ)アクリル基を有しない基であることを特徴とする眼科用組成物。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の眼科用組成物であって、構造
【化2】


を有することを特徴とする眼科用組成物。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項に記載の眼科用組成物であって、構造
【化3】


を有することを特徴とする眼科用組成物。
【請求項6】
一般式II
【化4】


(式中、
は、置換もしくは非置換の炭化水素基であり、
は、少なくとも1つの重合性二重結合を有する置換もしくは非置換の炭化水素基であり、
は、Hまたは置換もしくは非置換の炭化水素基であり、
は、Hまたは置換もしくは非置換の炭化水素基であり、
は、Hおよび/または置換もしくは非置換の炭化水素基であり、
nは、Rが(メタ)アクリル基を含む場合、1、2、3であり、または
nは、Rが任意の(メタ)アクリル基を含まない場合、0、1、2、3であり、
Xは、O、S、NHまたはNRであり、Rは置換および/または非置換の炭化水素基である)
の染料を含むことを特徴とする眼科用組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の眼科用組成物であって、Rが、炭化水素基として少なくとも1つの重合性二重結合を有するビニルおよび/またはアリルおよび/または(メタ)アクリル基を含むことを特徴とする眼科用組成物。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の眼科用組成物であって、Rが、重合性二重結合を有しない、特にビニルおよび/またはアリルおよび/または(メタ)アクリル基を有しない基であることを特徴とする眼科用組成物。
【請求項9】
請求項6から請求項8のいずれか一項に記載の眼科用組成物であって、構造
【化5】


を有することを特徴とする眼科用組成物。
【請求項10】
請求項6から請求項8のいずれか一項に記載の眼科用組成物であって、構造
【化6】


を有することを特徴とする眼科用組成物。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の眼科用組成物であって、該染料が、ポリマー中に共有結合で組み込まれていることを特徴とする眼科用組成物。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の眼科用組成物であって、次の一般式III
【化7】


(式中、
、RおよびRは、それぞれ互いに独立して、水素またはアルキルを意味し、
Yは、OまたはNRを意味し、Rは水素またはアルキルから選択され、
Xは、O、S、SOまたはSOを意味し、
Qは、CHRまたは(CHRCHRO)CHから選択される構造単位を意味し、RおよびRは、それぞれ互いに独立して、水素またはアルキルを意味し、
nおよびiは、互いに独立して、1と10の間の整数を意味し、
mは、2と6の間の整数を意味する)
に従うモノマーを含むことを特徴とする眼科用組成物。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の眼科用組成物であって、
・50〜90%、好ましくは70〜85%のHEMA、
・10〜40%、好ましくは15〜30%のMMA、
・0.25〜1.5%、好ましくは0.4%〜0.6%の架橋剤、
・0.01〜0.3%のラジカル開始剤、
・0.1〜3.0%、好ましくは0.70〜0.80%の紫外線吸収剤、および
・0.02〜0.3%、好ましくは0.15〜0.17%の染料
を含むことを特徴とする眼科用組成物。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の眼科用組成物を含むことを特徴とする眼科用レンズ。
【請求項15】
請求項14に記載の眼科用レンズであって、眼内レンズとしてかまたはコンタクトレンズとして形成されることを特徴とする眼科用レンズ。

【公開番号】特開2010−148873(P2010−148873A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−287131(P2009−287131)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(501133085)*アクリテック ゲーエムベーハー (6)
【Fターム(参考)】