説明

眼科用組成物

【課題】本発明は、防腐力と使用感に優れ、しかも外観安定性が良好なリゾチーム含有眼科用組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】(A)リゾチーム及び/またはその塩0.1〜0.5w/v%、
(B)ホウ酸及び/又はホウ砂0.1〜0.6w/v%、
(C)塩化ナトリウム及び/又は塩化カリウム0.4〜0.6w/v%
を含有することを特徴とする眼科用組成物
とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リゾチームを含有する眼科用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
かゆみや炎症に効果のあるリゾチームを点眼剤に配合することは、結膜炎等の患者の治療に有効である。また、点眼剤には二次汚染を防止するため、組成物に防腐効力を持たせることが必要である。
ホウ酸は防腐効力を有する眼科用組成物の添加剤として知られており、特に、塩化ベンザルコニウムなど他の防腐剤とホウ酸を配合すると、広い菌に対して抗菌活性が得られ有用である。しかし、リゾチーム製剤にホウ酸を配合すると、点眼などの使用時にゴロゴロとした違和感が生じ、使用感が著しく悪化する。
【0003】
【特許文献1】特開昭53−94007
【特許文献2】特開昭57−46922
【特許文献3】特開平6−9430
【特許文献4】特開平7−82143
【特許文献5】特開2005−179242
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、防腐力と使用感に優れ、しかも外観安定性が良好なリゾチーム含有眼科用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、リゾチームを含有する眼科用組成物において、さらに特定量のホウ酸と特定量の塩化ナトリウムを含有させることによって、前記課題を解決できることを見出し、本発明をなすに至ったものである。
すなわち、本発明は
【0006】
<1>(A)リゾチーム及び/またはその塩0.1〜0.5w/v%、
(B)ホウ酸0.1〜0.6w/v%、
(C)塩化ナトリウム及び/又は塩化カリウム0.4〜0.6w/v%
を含有することを特徴とする眼科用組成物。
<2>(D)カチオン系防腐剤、パラベン類、ソルビン酸から選ばれる1種以上の防腐剤を更に含有することを特徴とする<1>に記載の眼科用組成物
<3>(E)さらにビタミンA及び/又はその誘導体から選ばれるビタミンA類0.001〜0.3w/v%を含有することを特徴とする、<1>または<2>に記載の眼科用組成物。
を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の前記構成とすることによって、防腐力と使用感に優れ、しかも外観安定性が良好なリゾチーム含有眼科用組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(1)リゾチーム及び/又はその塩
リゾチームは涙液、唾液、鼻汁、肝臓、脾臓、腎臓、胃腸管、血清、リンパ液などに広く分布するムコ多糖加水分解酵素であり、ある種の細菌の細胞壁を加水分解することにより殺菌作用(溶菌作用)を示す。さらにこれとは別に、抗炎症作用、膿粘液分解作用、組織修復作用、抗ウイルス作用、出血抑制作用、免疫賦活作用、抗生物質効果増強作用などの幅広い薬理作用を有する。特に涙液中においては、感染に対する非特異的防御機構(非免疫性)に関与しており、各種結膜炎および角膜疾患などの治療に眼科用組成物に配合され使われている。
【0009】
本発明で使用されるリゾチームは、種類や由来は特に限定されないが、例えば卵白リゾチーム、ヒトリゾチームなどがあげられる。好ましくは鶏卵の卵白から常法により抽出・精製されたものが好ましく使用できる。具体的には、エーザイ(株)製塩化リゾチームやキューピー(株)製塩化リゾチームなどが、市販されている。
リゾチームの眼科用組成物中の配合量は、0.01〜1.5g/100mL(以下w/v%と記載)とすることが好ましく、より好ましくは0.1〜1.0w/v%、さらに好ましくは0.1〜0.5w/v%、特に好ましくは0.3〜0.6w/v%である。この範囲で、有効性・安定性に優れる。
【0010】
(2)ホウ酸及び/又はホウ砂
本発明における眼科用組成物はホウ酸及び/又はホウ砂を必須成分とする。組成物中の含有量は、好ましくは0.01〜0.6w/v%、より好ましくは、0.1〜0.6w/v%である。この範囲で、防腐力と組成物の外観安定性が良好である。
【0011】
(3)塩化ナトリウム及び/又は塩化カリウム
本発明の眼科用組成物に塩化ナトリウムを配合することによって、リゾチームとホウ酸、ホウ砂による点眼時の違和感(ゴロゴロ感)が緩和される。本発明の組成物中における塩化ナトリウムの含有量は0.4〜0.6w/v%であり、好ましくは0.4〜0.5w/v%である。この範囲で、違和感(ごろごろ感)が抑制され、外観安定性も良好である。
【0012】
(4)防腐剤
本発明の眼科用組成物には、ホウ酸及び/又はホウ砂と共に、カチオン系防腐剤、パラベン類、ソルビン酸から選ばれる1種以上の防腐剤をさらに含有することが好ましい。これらの防腐剤と併用することによって、広い菌に対して抗菌活性が得られる。前記防腐剤の組成物中の含有量は、好ましくは0.0001〜0.5w/v%、より好ましくは0.002〜0.01w/v%である。この範囲で、防腐力に優れ、眼刺激が低い眼科用組成物が得られる。
【0013】
(5)ビタミンA類
ビタミンAは、ヒト、動物の視覚、粘膜などを正常に維持する機能を有し、その欠乏により夜盲症、角結膜乾燥症などを引き起こすため目にとって重要なビタミンであり、前記リゾチームをビタミンAを併用することにより効果が高い眼科用組成物が得られる。
本発明で使用されるビタミンAは、ビタミンAそれ自体のほかに、ビタミンAエステル(パルミチン酸レチノール、酢酸レチノールなどの脂肪酸エステル)などのビタミンA誘導体、ビタミンA油などのビタミンA類混合物等が挙げられる。具体的には、例えば、DSMニュートリションジャパン(株)製パルミチン酸レチノール174万国際単位(I.U.)などとして市販されている。ビタミンAの組成物中の含有量は、眼科用組成物中に好ましくは0.001〜0.3w/v%配合され、より好ましくは0.005〜0.1w/v%の範囲である。
【0014】
本発明の眼科用組成物には、前記成分の他、眼科用組成物に配合する各種成分を、本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。それらの成分としては、各種薬物、清涼化剤、滞留性向上剤、色素、等張化剤、溶解補助剤、防腐剤、pH調整剤などが挙げられる。
【0015】
薬物としては、例えば、ビタミンA以外の油溶性ビタミン類(ビタミンEなど)、充血除去剤(塩酸ナファゾリン、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸フェニレフリン、エピネフリン、塩酸エピネフリン、塩酸エフェドリン、dl−塩酸メチルエフェドリン、硝酸テトラヒドロゾリン、硝酸ナファゾリンなど)、ネオスチグミン類(メチル硫酸ネオスチグミンなど)、消炎・収斂剤(アラントイン、塩化ベルベリン、硫酸ベルベリン、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸アンモニウム、グリチルレチン酸、サリチル酸メチル、トラネキサム酸、アズレンスルホン酸ナトリウムなど)、抗ヒスタミン剤(塩酸ジフェンヒドラミン、ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミンなど)、抗アレルギー剤(クロモグリク酸ナトリウムなど)、水溶性ビタミン類(フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、塩酸ピリドキシン、シアノコバラミンなど)、サルファ剤(スルファメトキサゾール、スルファメトキサゾールナトリウム、スルフイソキサゾール、スルフイソミジンナトリウムなど)、殺菌剤(イオウ、イソプロピルメチルフェノール、ヒノキチオールなど)、局所麻酔剤(リドカイン、塩酸リドカイン、塩酸プロカイン、塩酸ジブカインなど)、コンドロイチン硫酸塩類、ヒアルロン酸塩類などが挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0016】
本発明の眼科用組成物における上記薬物の含有量は、特に制限されるものではないが、本発明の効果を損なわない場合に限られる。通常、組成物全量に対して、0.001〜10w/v%、好ましくは0.003〜5w/v%、より好ましくは0.005〜4w/v%であると好適である。
【0017】
清涼化剤としては、例えば、メントール、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、シネオール、リナロール、ユーカリ油、ベルガモット油、ウイキョウ油、ローズ油、エタノールなどが挙げられる。通常、組成物全量に対して、0.0001〜1w/v%、好ましくは0.001〜0.1w/v%、より好ましくは0.001〜0.01w/v%であると好適である。
【0018】
薬物の眼粘膜への滞留性向上剤としては、水溶性高分子が好ましく使用することができる。例えば、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマーなどが挙げられる。これらの配合量は、組成物中、0.001〜20w/v%、より好ましくは0.01〜10w/v%であることが好ましい。
【0019】
等張化剤としては、例えば、ブドウ糖、マンニトール、などが挙げられる。
【0020】
溶解補助剤としては、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ブチレングリコールなどの多価アルコールがあげられ、好ましくはグリセリン、プロピレングリコールを使用する。多価アルコールの好ましい配合量は、組成物中、0.01〜5w/v%である。
【0021】
pH調整剤としては、無機酸または無機アルカリ剤を使用することが好ましい。酸成分としては塩酸が好ましくあげられる。塩基成分としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどが挙げられる。好ましくは塩酸、水酸化ナトリウムを用いる。
【0022】
本発明の眼科用組成物は、上記成分により、以下のpH、浸透圧、粘度に調整されることが好ましい。
・pH:3.5〜6.0、好ましくは4.0〜5.5(刺激、外観安定性)
・浸透圧:0.1〜5圧比(眼の痛み)
・粘度(20℃):1〜200mPa・s(使用感)
【0023】
上記本発明の成分の好ましい含有量を、表1に示す。
【0024】
【表1】

【実施例】
【0025】
表2〜3に示した成分を含有する眼科用組成物を定法により調整して以下の評価を行い、本発明の効果を示した。<評価方法>
1)使用感
方法;専門パネラーによる官能評価
評価基準;○:ゴロゴロ感、違和感、異物感を感じない
△: 〃 をやや感じる
×: 〃 を感じる
2)防腐力
方法;第14改正日本薬局方・参考情報の保存効力試験を参考にし、一部変更を加えて実施した。被検菌株は真菌(カンジダ菌)を用い、試料1mLあたり105〜106個になるように加え25℃に静置し、14日後に菌を接種した溶液1mLのそれぞれを培養後、生菌数を測定し、接種菌数に対する残存率(%)を算出した。
評価基準;○:接種菌数の1%未満
△:接種菌数の1%以上10%未満
×:接種菌数の10%以上

3)外観安定性
方法;アンプルに充填し、80℃2日間及び70℃に10日間保存した後、外観の安定性を評価した。
評価基準;○:澄明
△:わずかに白濁
×:白濁または沈殿
4)総合評価
上記1)、2)、3)の結果より総合的に判断した。
【0026】
【表2】

【0027】
【表3】

【0028】
さらに、本発明の好ましい眼科用組成物を表4、表5に示した。
【0029】
【表4】

【0030】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)リゾチーム及び/またはその塩0.1〜0.5w/v%、
(B)ホウ酸及び/又はホウ砂0.1〜0.6w/v%、
(C)塩化ナトリウム及び/又は塩化カリウム0.4〜0.6w/v%
を含有することを特徴とする眼科用組成物。
【請求項2】
(D)カチオン系防腐剤、パラベン類、ソルビン酸から選ばれる1種以上の防腐剤を更に含有することを特徴とする請求項1に記載の眼科用組成物
【請求項3】
(E)さらにビタミンA及び/又はその誘導体から選ばれるビタミンA類0.001〜0.3w/v%を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の眼科用組成物。





【公開番号】特開2008−156268(P2008−156268A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−346057(P2006−346057)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】