説明

眼科用超音波診断装置

【課題】 プローブを衛生的に保管でき、さらにアタッチメントの取り外しの際にも感染防止をより高められる眼科用超音波診断装置を提供する。
【解決手段】
装置本体と患者眼に接触させる超音波プローブとを持ち、超音波プローブによって受信した眼組織からの反射エコーを処理することで眼球内部の組織情報を得る眼科用超音波診断装置において、
前記超音波プローブを載置するためのトレイであって、装置本体に形成された窪み部分に着脱可能に嵌め合わされる底部形状を持つトレイを備え、該トレイは滅菌処理可能な材質で形成され、使用済みのトレイと交換されて使用される構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼軸長、角膜厚等の眼球組織の診断に用いられる眼科用超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プローブ内の超音波トランスデューサから超音波を送信し、眼球の各組織からの反射エコーを受信して処理することで眼球内部の組織情報を得る眼科用超音波診断装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この種の装置で使用される超音波プローブとしては、眼球の各組織からの反射エコーを波形として表示するAモード法のAモードプローブと、トランスデューサを走査することにより断層像を得るBモード法のBモードプローブがある。また、角膜厚を精度良く得る場合には、専用のパキプローブが使用される。
また、この種の超音波プローブを使用する上では、感染防止を考慮することが望まれる。感染防止に対して、プローブ自体のオートクレーブ(高圧蒸気滅菌処理)等の滅菌処理はプローブを破損する恐れがあることから一般的には行われていない。このため、簡易的には、使用したプローブを消毒液で拭き取る方法が使用されるが、より感染防止を高めるためには、プローブの先端に滅菌されたアタッチメントを取り付け、プローブを眼に直接接触させない方法が使用される(例えば、特許文献2参照)。この場合、アタッチメントの先端にはヒアルロン酸等のゲル状の超音波媒体が塗布される。Bモードプローブを使用する場合も、その先端にゲル状の超音波媒体が塗布される。
【特許文献1】特開2001−187022号公報
【特許文献2】特開2001−61784号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、眼科用超音波診断装置には、超音波プローブが転がったりしないように安定して保管するための置き台(立て掛けタイプ、横置きタイプの両者を含む)が備えられている。従来の装置においては、置き台は装置に固定的に備えられていた。このため、次のような問題があった。すなわち、測定終了後にプローブを置き台に戻すとき、プローブの先端又はアタッチメントの先端に塗布されていた超音波媒体が置き台に付着し易く、不衛生になり易かった。超音波媒体が置き台に付着していると、次の被検者のために消毒されたプローブ又は新たにプローブに取り付けられたアタッチメントが接触してしまうことがある。
また、ブローブの先端に取り付けられたアタッチメントを取り外す際には、従来においては、検者自身が使用済みのアタッチメントを取り外していたので、超音波媒体が手に付着したりし、不衛生になり易かった。
【0004】
本発明は、上記従来技術に鑑み、プローブを衛生的に保管でき、さらにアタッチメントの取り外しの際にも感染防止をより高められる眼科用超音波診断装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0006】
(1) 装置本体と患者眼に接触させる超音波プローブとを持ち、超音波プローブによって受信した眼組織からの反射エコーを処理することで眼球内部の組織情報を得る眼科用超音波診断装置において、
前記超音波プローブを載置するためのトレイであって、装置本体に形成された窪み部分に着脱可能に嵌め合わされる底部形状を持つトレイを備え、該トレイは滅菌処理可能な材質で形成され、使用済みのトレイと交換されて使用される構成としたことを特徴とする。
(2) (1)の眼科用超音波診断装置において、前記トレイには、超音波プローブの先端に取り付けられたアタッチメントを取り外すための取り外し治具が一体的に形成されていることを特徴とする。
(3) (2)の眼科用超音波診断装置において、前記取り外し治具は、前記超音波プローブの外径部分が入る形状で、且つプローブ先端に取り付けられたアタッチメントが引っ掛かる大きさの掛止部を備え、前記掛止部にアタッチメントを引っ掛けてプローブを引き抜くことによりアタッチメントが取り外されることを特徴とする。
(4) (3)の眼科用超音波診断装置において、前記掛止部にアタッチメントを引っ掛けてプローブを引き抜いたときに、取り外されたアタッチメントが落下する位置にアタッチメントを受ける収納部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、プローブを衛生的に保管できる。また、アタッチメントの取り外しの際にも感染防止をより高められる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明に掛かる眼科用超音波診断装置の実施形態を、図面に基づいて説明する。図1は、プローブトレイを備える眼科用超音波診断装置の外観略図である。
【0009】
装置本体1には、測定情報及び設定情報等が表示されるディスプレイを持つタッチパネル式の表示パネル7が設けられている。操作者はパネル7に表示される設定項目を選択することで各種条件を設定することができる。表示パネル7の手前には、着脱自在のプローブトレイ10が備えられている。プローブトレイ10には、それぞれトランスデューサを内蔵する複数の超音波プローブが載置される。超音波プローブとしては、トランスデューサを走査することにより断層像を得るBモード法のBモードプローブ3、トランスデューサからの信号を波形として表示し、眼軸長等を測定するためのAモード法のAモードプローブ4、角膜厚を精度良く測定するためのパキプローブ5があり、それぞれケーブルにより本体1に接続されている。
【0010】
図2(a)は、装置本体1からプローブトレイ10を取り外した状態の図であり、図2(b)はプローブトレイ10の拡大図である。プローブトレイ10の底部は凸形状10aに形成されており、プローブトレイ10の外周には鍔部10bが形成されている。装置本体1の手前側にてプローブトレイ10が装着される装着部分1aは、プローブトレイ10の底部の凸形状10aが嵌め合わされる窪み形状に形成されている。プローブトレイ10の底部の凸形状10aを装着部分1aの窪み形状部分に嵌め合わせることにより、プローブトレイ10は装置本体1に安定して保持される。プローブトレイ10は、鍔部10bを手で持って本体1から取り外すことができる。
【0011】
プローブトレイ10の内側には、Bモードプローブ3,Aモードプローブ4及びパキプローブ5をそれぞれ安定して載置するための台座15が一体的に形成されている。台座15は、Bモードプローブ3の外径に略一致する円弧状の凹部を持つ台座15bと、Aモードプローブ4の外径に略一致する円弧状の凹部を持つ台座15aと、パキプローブ5の外径に略一致する円弧状の凹部を持つ台座15pを備える。各台座15b,15a,15pは、それぞれプローブを載置したときに、各プローブの先端がトレイ10の底面及び側面に接触しない位置に形成されている。また、3つのプローブの先端が互いに接触しない距離だけ離されて形成されている。
【0012】
このプローブトレイ10は、感染防止のために、加圧蒸気により滅菌するオートクレーブ等の滅菌処理可能な材料で形成されている。本実施例では、オートクレーブ可能なポリサルフォンで形成されている。オートクレーブ可能な材料としては、他に、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン共重合体、ポリカーボネート、アセタール等であってもよい。プローブトレイ10は、本体1から取り外した後に滅菌処理され、滅菌処理されたものと交換して使用される。
【0013】
以上のような構成を備える眼科用超音波診断装置において、以下にその使用法を説明する。ここでは、一例としてBモードプローブ3を使用する場合を説明する。
【0014】
初めに、検者はプローブ3の先端部の消毒を行う。消毒方法としては、例えば消毒液(例えば、エタノール)にプローブ3の先端部を浸した後、脱脂綿等で拭き取るものが周知である。次に、消毒されたプローブ3の先端部分に、超音波の伝達効果を高めるために、ゲル状の超音波媒体を塗布し、滅菌処理されたプローブトレイ10上にプローブ3を載せる。そして、表示パネル7を操作して測定条件等を設定した後、プローブ3の先端部分を患者眼角膜に接触させて測定を行う。
【0015】
測定終了後、検者はプローブ3を再びプローブトレイ10上に戻す。このとき、超音波媒体は、プローブ先端から垂れてプローブトレイ10に付着しやすい。また、検者がプローブ3をトレイ10に接触させたり、超音波媒体が飛び散ったりする。このため、患者が代わる毎に、プローブトレイ10も滅菌処理された清潔なものと交換する。検者は、使用済みのトレイ10を本体1から取り外し、清潔なトレイ10を本体1の装着部分1aに装着して固定する。トレイ10の交換手順としては、トレイ10上にプローブ3を載せたまま、装置本体1からトレイ3ごと取り外しても良い。また、トレイ10を片手に持ち、プローブ3を他方の手に持ちながらトレイ10を装置本体1から取り外しても良い。検者は、プローブ3の先端部に付着した超音波媒体を拭き取り、先述の消毒を施した後に清潔なトレイ10に載せ換える。他のプローブ4,5も同様に載せ換える。これにより、トレイ10が清潔に保たれ、次の患者に対する感染防止が高められる。使用済みのトレイ10は、滅菌処理され、再利用される。
【0016】
なお、トレイ10を複数個用意することにより、予め滅菌処理しておくことができる。また、トレイ10は、一体成型により安価に製作することにより、使い捨てタイプとしても良い。メーカより滅菌処理されたものをパッキングして提供することにより、使用者側では滅菌処理の手間が省ける。
【0017】
以上、Bモードプローブ3に超音波媒体を塗布する場合について述べたが、Aモードプローブ4及びパキプローブ5を使用した場合も、同様に、使用済みのトレイ10は、被検者が換る毎に滅菌処理された清潔なトレイ10に交換されて使用される。
【0018】
次に、プローブ先端に滅菌されたアタッチメントを取り付け使用する場合に好適な変容例について、図3を用いて説明する。
【0019】
超音波プローブの使用に際し、より入念な感染防止の方法として、プローブ先端に滅菌されたアタッチメントを取り付けることが行われる。図3(a)において、Bモードプローブ3の先端にはBモードプローブ用アタッチメント31(以下、Bアタッチメント)が、Aモードプローブ4の先端にはAモードプローブ用アタッチメント41(以下、Aアタッチメント)が、パキプローブ5の先端にはパキプローブ用アタッチメント(以下、Pアタッチメント)51が取り付けられている。
【0020】
図3に示されるトレイ60には、プローブ先端に取り付けられたアタッチメント31,41,51を取り外すための取り外し冶具が一体的に形成されている。この例では、取り外し冶具として、プローブトレイ60の底面に、紙面方向下側に向かうのに伴って幅Wが狭まるように、掛止部としての開口62が設けられている。
【0021】
本実施例にて示すアタッチメント31、41、51の内径は装着されるそれぞれのプローブ3、4、5の外径に略一致している。Bアタッチメント31の内径(≒Bモードプローブ3の外径)をd3とする。同様に、Aアタッチメント41の内径(≒Aモードプローブ4の外径)をd4、Pアタッチメント51の内径(≒パキプローブ5の外径)をd5とする。さらに、Bアタッチメント31の外径をd31、Aアタッチメント41の外径をd41、Pアタッチメント51の外径をd51とする。なお、内径d4とd5は略同一であり、なおかつ外径d41とd51も略同一である。
【0022】
開口62の拡大図を図3(b)に示す。開口62の幅Wが最大となる最大幅Wmaxは、Bアタッチメント外径d31よりも十分に広く取られている。紙面方向下側へ向かうのに伴って幅Wが狭まる。そして、Bアタッチメント31の内径d3と同一の幅、次にAアタッチメント41の内径d4と同一の幅が現れる。
【0023】
開口62の幅Wが内径d3と同一となる箇所について、A2−A2方向の断面図を図3(c)に示すとともに、開口62の使用方法について説明する。ここでは、Bアタッチメント31が装着されたBモードプローブ3により患者眼を測定した後について説明する。
【0024】
これまで、使用済みのアタッチメントは、検者の手によりプローブから取り外されており、検者の手(手袋)が患者眼に接触した部分に接触したり、超音波媒体が手に付着したりし、不衛生になり易かった。
【0025】
これに対して、本発明では検者の手が直接接触することなく、使用済みのアタッチメントをプローブから取り外すことができる。検者は、測定終了後、Bアタッチメント31が装着されたままのBモードプローブ3を開口62へ挿入する。ここで、少なくともBアタッチメント31の全体が開口62に入る程度の深さで挿入する。そして、図3(b)に示すように紙面方向下向きへプローブ3(すなわち、同時にアタッチメント31も移動させられる)を移動させる。幅Wが内径d3と略同一となる位置にて、図3(c)に示すようにプローブ3を引き上げると、アタッチメント31が開口62の端面に引っ掛かり、さらにプローブ3を引き上げ続けると、アタッチメント31がプローブ3から離脱する。
【0026】
プローブ3から離脱したアタッチメント31aは、プローブトレイ60の下側に備えられたアタッチメント収納部63に保持される。アタッチメント収納部63は、プローブトレイ60に対して着脱可能に保持されている。アタッチメント収納部内に保持された、離脱したアタッチメントを取り出したり、付着した超音波媒体を拭き取ったり、確実に滅菌処理を行うためには、プローブトレイ60とアタッチメント収納部63は、着脱可能であることが好ましい。アタッチメントを受ける収納部63があることにより、感染の恐れのある使用済みのアタッチメントを不用意に装置の周りに置くことが回避されるため、より感染防止を高められる。
【0027】
アタッチメントを離脱させた後は、先に説明したプローブトレイ10の場合と同様の手順を行えばよい。すなわち、使用済みのトレイ60を装置本体より取り外して、滅菌処理された清潔なトレイ60と交換する。
【0028】
このようなプローブトレイ60を用いることにより、検者の手が使用済みのアタッチメントに直接接触することなく、プローブからアタッチメントを取り外すことができる。また、検者は手を使ってプローブからアタッチメントを取り外す手間が軽減される。Aモードプローブ4のアタッチメント41、パキプローブ5のアタッチメント51においても、同様に取り外すことができる。
【0029】
プローブ先端に取り付けられたアタッチメント31,41,51を取り外すための取り外し冶具についての変容例を、図4を用いて説明する。図4(a)において、プローブトレイ70には、紙面方向の左側に、取り外し冶具としての略Y形状を持つアタッチメント掛止部材72が備えられている。掛止部材72は、オートクレーブで滅菌処理可能なポリサルフォンによりプローブトレイ70全体で一体成形されている。また、掛止部材72の左側には、使用済みのアタッチメントを回収するための回収袋76が取り外し可能に備えられている。
【0030】
図4(b)は、掛止部材72の構成を説明する拡大図である。掛止部材72の内側の幅Wが最大となる最大幅Wmaxは、Bアタッチメント外径d31よりも十分に広く取られている。紙面方向下側へ向かうのに伴って幅Wが狭まる。そして、Bアタッチメント31の内径d3と同一の幅、次にAアタッチメント41の内径d4と同一の幅が現れる。
【0031】
Bアタッチメント31が装着されたBモードプローブ3により患者眼を測定した後について説明する。検者は、測定終了後、Bアタッチメント31が装着されたままのBモードプローブ3を掛止部材72の隙間に、右から左側へと挿入する。ここで、少なくともBアタッチメント31の全体が掛止部材72に入る程度の深さで挿入する。そして、図4(b)に示すように紙面方向下向きへプローブ3(すなわち、同時にアタッチメント31も移動させられる)を移動させる。幅Wが内径d3と略同一となる位置にて、図4(c)に示すようにプローブ3を右側へ引くと、アタッチメント31が掛止部材72の端面に引っ掛かり、さらにプローブ3を右側へ引き続けると、アタッチメント31がプローブ3から離脱する。離脱したアタッチメント31bは、掛止部材72に取り外し可能に備えられた回収袋76に投入され、回収される。
【0032】
この掛止部材72の場合も、先の例と同様に、検者の手が使用済みのアタッチメントに直接接触することなく、プローブからアタッチメントを取り外すことができ、感染防止をより高められる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に掛かる眼科用超音波診断装置の外観略図である。
【図2】プローブトレイを説明する図である。
【図3】アタッチメントの取外しを説明する図である。
【図4】アタッチメントの取外しの変容例を説明する図である。
【符号の説明】
【0034】
1 装置本体
3 Bモードプローブ
7 表示パネル
10 プローブトレイ
15 台座
31 アタッチメント
62 開口
63 アタッチメント収納部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体と患者眼に接触させる超音波プローブとを持ち、超音波プローブによって受信した眼組織からの反射エコーを処理することで眼球内部の組織情報を得る眼科用超音波診断装置において、
前記超音波プローブを載置するためのトレイであって、装置本体に形成された窪み部分に着脱可能に嵌め合わされる底部形状を持つトレイを備え、該トレイは滅菌処理可能な材質で形成され、使用済みのトレイと交換されて使用される構成としたことを特徴とする眼科用超音波診断装置。
【請求項2】
請求項1の眼科用超音波診断装置において、前記トレイには、超音波プローブの先端に取り付けられたアタッチメントを取り外すための取り外し治具が一体的に形成されていることを特徴とする眼科用超音波診断装置。
【請求項3】
請求項2の眼科用超音波診断装置において、前記取り外し治具は、前記超音波プローブの外径部分が入る形状で、且つプローブ先端に取り付けられたアタッチメントが引っ掛かる大きさの掛止部を備え、前記掛止部にアタッチメントを引っ掛けてプローブを引き抜くことによりアタッチメントが取り外されることを特徴とする眼科用超音波診断装置。
【請求項4】
請求項3の眼科用超音波診断装置において、前記掛止部にアタッチメントを引っ掛けてプローブを引き抜いたときに、取り外されたアタッチメントが落下する位置にアタッチメントを受ける収納部が設けられていることを特徴とする眼科用超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−113674(P2008−113674A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−296681(P2006−296681)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(000135184)株式会社ニデック (745)
【Fターム(参考)】