説明

眼選択的薬剤(oculoselectivedrug)およびプロドラッグ

以下の式:
【化1】


[式中、RおよびRは各々独立してH、Wもしくはフェノキシル保護基であり;そしてRはHもしくはWであり、ただし、R、RおよびRの少なくとも1つはWであり;Rは水素、直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルキル、シクロアルキル、アミノ、C〜C10アルコキシ、−NHC(=O)Rまたは−C(=O)N(H)Rであり;Rはアルキル、アリールもしくはヘテロサイクリルであり;Zは−O−、−O(C=O)−もしくはNH(C=O)−であり、ここで、Zが−O−である場合、RはH、直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルキル、シクロアルキル、少なくとも1つの直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルキルで置換されたシクロアルキル、C〜C10アルコキシアルキル、アミノ、ベンジル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、フラニル、モルホリニル、ピペリジニル、テトラヒドロピラニル、ジオキソラニル、2,2−ジメチルジオキソラニル、ジオキサニル、ピロリル、ピロリジニル、テトラヒドロオキサゾリル、ジヒドロオキサゾリル、フェニル、またはC〜C10アルキル、C〜C10アルコキシもしくはハロで置換されたフェニルであり;そしてWは:
【化2】


であり;ここで、各Rは独立してH、直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルキル、または直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルコキシアルキルであり;そしてRはアルキル、シクロアルキル、アリールもしくはアラルキルであり;そしてここで、Zが−O(C=O)−である場合、Rは直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルキル、シクロアルキル、少なくとも1つの直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルキルで置換されたシクロアルキル、C〜C10アルコキシアルキル、アミノ、ベンジル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、フラニル、モルホリニル、ピペリジニル、テトラヒドロピラニル、ジオキソラニル、2,2−ジメチルジオキソラニル、ジオキサニル、ピロリル、ピロリジニル、テトラヒドロオキサゾリル、ジヒドロオキサゾリル、フェニル、またはC〜C10アルキル、C〜C10アルコキシもしくはハロで置換されたフェニルである]の化合物が開示される。該化合物を製造する方法、該化合物を含んでなる製薬学的組成物、および該製薬学的組成物の投与により患者を処置する方法もまた開示される。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
これは2004年5月25日に出願された米国仮出願第60/574,157号の利益を請求し、その全内容は本明細書に引用することにより組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、緑内障および他の症状の処置に有用な組成物に関する。好ましい態様によれば、本発明の組成物はプロドラッグおよび薬剤であり、後者は全身的作用を実質的に防ぎながら眼において局所作用を及ぼすことができるベータ遮断薬を含んでなる。
【背景技術】
【0003】
本明細書で引用するかもしくは記述する各特許、特許出願および公開の開示は、その全部が本明細書に引用することにより本明細書に組み込まれる。
【0004】
緑内障は、視神経への損傷により失明を引き起こす一群の眼疾患からなる眼の症状である。不適切な眼ドレナージに起因する上昇した眼圧(IOP)は、緑内障の主要原因である。緑内障は眼が老化するにつれて発症する可能性があり、あるいは眼の損傷、炎症、腫瘍の結果として、または白内障もしくは糖尿病の進行した症例において起こる可能性がある。それはまた、ステロイドのようなある種の薬剤により引き起こされる可能性もある。緑内障は、上昇したIOPなしに発症する可能性がある。この形態の緑内障は、遺伝的形質(すなわち、正常眼圧緑内障の家族歴)日系人、ならびに不整脈のような全身性心疾患と関連している。
【0005】
緑内障の2つの主要な解剖学的分類がある。これらの分類は、前房隅角部が開いているかもしくは狭いかに基づく。より一般的な開放隅角緑内障は慢性疾患であり、一方、あまり一般的ではない閉塞隅角緑内障は急性疾患である。開放隅角緑内障は眼圧の増加と通常は関連し、視神経への損傷および視神経乳頭の陥凹の出現をもたらす。乳頭陥凹比(cup−to−disk ratio)の増加および中間周辺視野(midperipheral field of vision)における視力障害がある。
【0006】
緑内障の通常の治療は、ピロカルピンおよび/もしくはエピネフリンの局所投与、そしてより最近では毎日数回眼に投与されるベータ遮断薬を伴っている。様々なベータ遮断薬が、眼圧を下げるために用いられている。そのような使用は、例えば、非特許文献1によるそして非特許文献2による概説に記述されている。Stoneへの特許文献1は、ベータ遮断化合物、マレイン酸チモロールの眼内投与による緑内障の処置の方法を開示する。しかしながら、これらの方法はまた、体循環へのベータ遮断化合物の吸収が望ましくない、生命にかかわりさえする副作用を引き起こし得るという点において、重大な欠点も有する。そのような副作用は、心臓、細気管支および血管への長期のベータ遮断作用に起因する。従って、望ましくない全身性副作用が比較的ない緑内障のもしくは眼圧を下げるための化合物および処置の方法の必要性がある。
【0007】
酵素的に不安定なエステル基を含有するある種のベータ遮断薬は、体循環における短時間作用型ベータ遮断作用を示すことが既知である。そのような短時間作用型ベータ遮断化合物(SAAB)は、短期間にわたって心臓の働きを軽減するかもしくは周期性を改善するための手段として心臓疾患の処置もしくは予防に提案されている。そのような短時間作用型ベータ遮断化合物は、その作用が長命でありそしてそれ故に正確に制御することが難しい通常のベータ遮断薬の非生産的なことがある作用を防ぐことができる。そのような特
性を有するベータ遮断薬は、Matier,et al.,特許文献2;Matier,特許文献3および特許文献4に記述されている。
【0008】
局所点眼剤は、開放隅角緑内障の最も一般的な治療法である。縮瞳薬、主として副交感神経作用薬(例えばピロカルピン)は、瞳孔を収縮させて小柱網を通した房水の流れを高める。しかしながら、縮瞳瞳孔は暗視を妨げる。炭酸脱水酵素インヒビター(例えばアセタゾールアミド)は、毛様体からの房水の生成を減らし、それによりIOPを下げる経口的にそして局所的に投与される薬剤(例えばドルゾラミド)である。最近導入された合成プロスタグランジンアナログ(例えばラタノプロスト)は、房水流出を増加することにより眼圧を下げる。
【0009】
典型的に局所注入用量の1%未満が吸収される(非特許文献3)。この低い吸収でさえ、より長い作用期間を有する強力なベータ遮断薬は、特に心臓血管もしくは気管支痙攣疾患も患う患者において、重い全身性副作用を引き起こし得る。そのような副作用を軽減するかもしくは除きそして眼内浸透を高めようとして、プロパノールアミンを含有するベータ遮断薬のいくつかのアシル−エステルプロドラッグが開発されている。例えば、非特許文献4;非特許文献5(プロプラノロールプロドラッグを記述する);非特許文献6(チモロールプロドラッグを記述する);非特許文献7(オクスプレノロールプロドラッグを記述する);1990年1月30日に発行されたPatil,et al.,特許文献5;および1990年10月30日に発行されたPatil,et al.,特許文献6(両方とも以下にさらに詳細に説明される)を参照。
【0010】
抗緑内障薬として文献に報告されるベータ遮断薬プロドラッグの中で、研究される最も一般的なアシル官能基は、ベータ遮断薬のオキシプロパノールアミン側鎖内の第二級ヒドロキシル基のピバロイルエステル誘導体である。興味深いことに、各ピバロイルオキシベータ遮断薬プロドラッグの物理的および化学的特性は異なる。例えば、37℃でリン酸バッファー(pH7.4)におけるオクスプレノロールプロドラッグ
【0011】
【化1】

【0012】
の半減期は2035.5日である。同一条件下で、チモロールプロドラッグ
【0013】
【化2】

【0014】
および式
【0015】
【化3】

【0016】
のPatil,et al.,特許文献6の化合物の半減期は、それぞれ3.6時間および0.9時間である。これらのデータは、アシルベータ遮断薬プロドラッグの物理的および化学的特性が、構造的に異なるが同様に誘導体化されたベータ遮断薬プロドラッグの特性から単に予測できないことを示唆する。
【0017】
特許文献6に開示される上記の化合物は、眼液における長い作用期間および体循環における短い作用期間を有する眼選択的(oculoselective)ベータ遮断薬であると報告された。それらの眼内および全身安定性間の違いのために、該化合物は重い全身性副作用のレベルを下げながら長期間にわたって眼における高眼圧(IOP)低下能力を提供することが示唆された。Patil et al.への特許文献5および特許文献6に開示される2つの化合物、
【0018】
【化4】

【0019】
はエステル「プロドラッグ」であり、それらは914特許の活性剤にインビボで転化される。プロドラッグおよびそれらの活性親化合物は、それらのベータ遮断作用、眼内生物学的利用能および動物研究におけるそれらの眼もしくは全身安全性について評価された。2つのプロドラッグのいずれも、溶液安定性および眼安全性プロフィールに関して十分であると見出されなかった。
【0020】
眼への薬剤の導入を伴う処置では、理想的なベータ遮断薬プロドラッグは、十分な貯蔵寿命にわたってバッファー溶液中で安定であり、そして角膜において迅速に加水分解して房水中に親化合物を送達する。このようにして提供される親化合物は、眼圧低下の期間を延ばすために房水中で十分に安定であり、眼球刺激および局所麻酔活性がなく、そして心不全および気管支痙攣のような全身的作用を軽減するかもしくはなくすために体循環から迅速に除かれなければならない。最後に、プロドラッグ化合物は、全身吸収の際にベータ受容体に結合してはならない。望ましい特徴のこの組み合わせを有する、ベータ遮断薬のプロドラッグ形態、ならびに新規なベータ遮断薬自体の必要性が依然としてあることは前述の説明から理解することができる。
【特許文献1】米国特許第4,195,085号明細書
【特許文献2】米国特許第4,402,974号明細書、1983年9月6日
【特許文献3】米国特許第4,454,154号明細書
【特許文献4】米国特許第4,455,317号明細書
【特許文献5】米国特許第4,897,417号明細書
【特許文献6】米国特許第4,966,914号明細書
【非特許文献1】W.P.Boger,Drugs,18,25−32(1979)
【非特許文献2】T.J.Zimmerman and W.P.Boger,Survey Ophthalmol.23(b),347(1979)
【非特許文献3】N.L.Burstein and J.A.Robinson,J.Ocular Pharmacol.1,309(1985)
【非特許文献4】Vincent,H.L.Lee,and Hans,Bundgaard,“Prodrugs”,Chapter 7,Marcel Dekker,Inc,Kenneth B.Sloan(ed.),1992,p.221
【非特許文献5】M.Shammem,T.Imai and M.Otagiri,J.Pharm.Pharmacol.,45,246,1993
【非特許文献6】Hans Bundgaard,Anders Buur,Shih−Chieh Chang and Vincent H.L.Lee,International Journal of Pharmaceutics,77−88,1988
【非特許文献7】C G Jordan,J.Pharm.Sci.,87(7),880−885,1998
【発明の開示】
【0021】
[発明の要約]
本発明は一つには、式I:
【0022】
【化5】

【0023】
[式中:
およびRは各々独立してH、Wもしくはフェノキシル保護基であり;
は水素、直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルキル、シクロアルキル、アミノ、C〜C10アルコキシ、−NHC(=O)Rまたは−C(=O)N(H)Rであり;
はHもしくはWであり、ただし、R、RおよびRの少なくとも1つはWであり;
はアルキル、アリールもしくはヘテロサイクリルであり;
は直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルキル、シクロアルキル、C〜C10アルコキシアルキル、アミノ、ベンジル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、フラニル、モルホリニル、ピペリジニル、テトラヒドロピラニル、ジオキソラニル、2,2−ジメチルジオキソラニル、ジオキサニル、ピロリル、ピロリジニル、テトラヒドロオキサゾリル、ジヒドロオキサゾリル、フェニル、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシもしくはハロで置換されたフェニル、または少なくとも1つの直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルキルで置換されたシクロアルキルであり;
Wは:
【0024】
【化6】

【0025】
であり;そして
各Rは独立してH、直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルキル、または直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルコキシアルキルである]
の化合物、またはその立体異性体、水和物、溶媒和物、酸塩水和物もしくは製薬学的に許容しうる塩に関する。
【0026】
本発明はまた一つには、式II:
【0027】
【化7】

【0028】
[式中:
およびRは各々独立してH、Wもしくはフェノキシル保護基であり;
は水素、直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルキル、シクロアルキル、アミノ、C〜C10アルコキシ、−NHC(=O)Rまたは−C(=O)N(H)Rであり;
はアルキル、アリールもしくはヘテロサイクリルであり;
はHもしくはWであり;
Zは−O−もしくは−O(C=O)−であり;
はH、直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルキル、シクロアルキル、C〜C10アルコキシアルキル、アミノ、ベンジル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、フラニル、モルホリニル、ピペリジニル、テトラヒドロピラニル、ジオキソラニル、2,2−ジメチルジオキソラニル、ジオキサニル、ピロリル、ピロリジニル、テトラヒドロオキサゾリル、ジヒドロオキサゾリル、フェニル、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシもしくはハロで置換されたフェニル、または少なくとも1つの直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルキルで置換されたシクロアルキルであり;
Wは:
【0029】
【化8】

【0030】
であり;
各Rは独立してH、直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルキル、または直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルコキシアルキルであり;そして
はアルキル、シクロアルキル、アリールもしくはアラルキルであり;
ただし:
Zが−O(C=O)−である場合には、RはH以外である]
の化合物、またはその立体異性体、水和物、溶媒和物、酸塩水和物もしくは製薬学的に許容しうる塩にも関する。
【0031】
さらに、本発明は一つには、式IIIaの化合物を生成せしめるために有効な時間にわたってそして条件下で、式IIIb:
【0032】
【化9】

【0033】
[式中:
、RおよびRの少なくとも1つはHである]
の化合物を式W−L(式中、各Lは独立して脱離基である)の少なくとも1つの化合物と
接触させることを含んでなる、式IIIa:
【0034】
【化10】

【0035】
[式中:
およびRは各々独立してH、Wもしくはフェノキシル保護基であり;
は水素、直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルキル、シクロアルキル、アミノ、C〜C10アルコキシ、−NHC(=O)Rまたは−C(=O)N(H)Rであり;
はHもしくはWであり,ただし、R、RおよびRの少なくとも1つはWであり;
はアルキル、アリールもしくはヘテロサイクリルであり;そして
Zは−O−、−O(C=O)−もしくは−NH(C=O)−であり;
はH、直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルキル、シクロアルキル、C〜C10アルコキシアルキル、アミノ、ベンジル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、フラニル、モルホリニル、ピペリジニル、テトラヒドロピラニル、ジオキソラニル、2,2−ジメチルジオキソラニル、ジオキサニル、ピロリル、ピロリジニル、テトラヒドロオキサゾリル、ジヒドロオキサゾリル、フェニル、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシもしくはハロで置換されたフェニル、または少なくとも1つの直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルキルで置換されたシクロアルキルであり;
Wは:
【0036】
【化11】

【0037】
であり;
各Rは独立してH、直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルキル、または直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルコキシアルキルであり;そして
はアルキル、シクロアルキル、アリールもしくはアラルキルであり;
ただし:
Zが−O(C=O)−である場合には、RはH以外であり;そして
Zが−NH(C=O)−である場合には、RはH以外であり、そしてWは:
【0038】
【化12】

【0039】
である]
の化合物を製造する方法に関する。
【0040】
別の態様において、本発明は患者の眼の疾病もしくは疾患を処置するための製薬学的組成物を特徴とし、好ましくはここで、該疾病もしくは疾患は患者の眼と関連する緑内障、高眼圧症もしくは視神経症である。これらの組成物は、眼科的に許容しうる担体もしくは希釈剤および上記のような式Iもしくは式IIの化合物を含んでなる。
【0041】
また本発明に従って提供されるのは、眼の疾病もしくは疾患、すなわち緑内障、高眼圧症、もしくは例えば緑内障と関連する視神経症を処置する方法である。該方法は、眼科的に許容しうる担体もしくは希釈剤および該疾病もしくは疾患の発症を改善するか、遅らせるかもしくは防ぐか、またはその症状を軽減するために治療的に十分な量の式Iもしくは式IIの化合物を含んでなる組成物を患者の眼に投与することを含んでなる。
【0042】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な記述および実施例を参照することにより理解される。
【0043】
[実施態様の詳細な記述]
定義
上記にそして本開示を通して用いる場合、以下の用語は、他に示されない限り、以下の意味を有すると理解される。本発明の化合物は非対称的に置換された炭素原子を含有する可能性があり、そして光学活性体もしくはラセミ体において単離され得ることが理解される。光学活性の出発物質から、ラセミ体の分割によるかもしくは合成によるような、光学活性体を製造する方法は、当該技術分野において周知である。特定の立体化学もしくは異性体が特に示されない限り、構造の全てのキラル、ジアステレオマー、ラセミ体および全ての幾何異性体が意図される。
【0044】
「プロドラッグ」は、それ自体では所望の活性について典型的に不活性であるかもしくは最低限に活性であるが、生体内転化(例えば酵素活性)によって生物学的に活性の生成物に転化される所望の反応部位に到達する活性種の量を最大にするために特に設計された化合物をさす。
【0045】
本発明は、プロドラッグとして使用される本明細書に開示される化合物を意図する。「プロドラッグ」という用語には、本発明の化合物ならびに哺乳類への投与後にインビボで式(I)もしくは(II)の化合物または本発明の任意の他の化合物に転化されることができる任意の分子が包含されるものとする。本発明の化合物のプロドラッグ形態は、例えば、日常的な操作もしくはインビボのいずれかにおいて、親化合物に改変が切断されるように、化合物に存在する官能基を改変することにより製造することができる。プロドラッグには、ヒドロキシもしくはアミノ基が任意の基に結合している本発明の化合物が包含され、それは、プロドラッグが哺乳類被験体に投与されると、切断してそれぞれ遊離ヒドロキシルもしくは遊離アミノを生成せしめる。プロドラッグの例には、本発明の化合物におけるアルコールおよびアミン官能基の酢酸、ギ酸および安息香酸誘導体などが包含されるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
本明細書において用いる場合、「副作用」という用語は、特にその投与により利益を得ようとするもの以外の組織もしくは臓器系への、薬剤によりもたらされる不都合な影響のような、それに対して薬剤もしくは測定が用いられるもの(1つもしくは複数)以外の結果をさす。抗緑内障薬の場合、「副作用」という用語は、例えば、気管支痙攣、心臓ブロックもしくは心不全のような症状をさすことができる。
【0047】
本明細書において用いる場合、「立体異性体」および「複数の立体異性体」という用語は、同一の化学組成を有するが、空間における原子もしくは基の配置に関して異なる化合物もしくは化合物の混合物をさす。立体化学が本明細書に特に示されるキラル中心を除いて、構造の全てのキラル、ラセミおよびジアステレオマー体が意図される。
【0048】
「製薬学的に許容しうる塩」は、親化合物がその酸性もしくは塩基性塩を製造することにより改変される開示化合物の誘導体をさす。製薬学的に許容しうる塩の例には、アミンのような塩基性残基の鉱酸もしくは有機酸塩;カルボン酸のような酸性残基のアルカリもしくは有機塩などが包含されるが、これらに限定されるものではない。製薬学的に許容しうる塩には、例えば無毒の無機もしくは有機酸から形成される親化合物の通常の無毒の塩もしくは第四級アンモニウム塩が包含される。例えば、そのような通常の無毒の塩には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などのような無機酸から得られるもの;および酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモン酸、ソルビン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸などのような有機酸から製造される塩が包含される。これらの生理学的に許容しうる塩は、当該技術分野において既知である方法により、例えばアルコール水において過剰の酸で遊離アミン塩基を溶解するか、または遊離カルボン酸を水酸化物のようなアルカリ金属塩基でもしくはアミンで中和することにより製造される。
【0049】
全体にわたって本明細書に記述される化合物は、代替形態で使用するかもしくは製造することができる。例えば、多数のアミノを含有する化合物は、酸付加塩として使用するかもしくは製造することができる。そのような塩は、化合物の単離および取り扱い特性を向上することが多い。例えば、試薬、反応条件などにより、本明細書に記述されるような化合物は、例えば、それらの塩酸塩もしくはトシル酸塩として使用するかもしくは製造することができる。同形結晶形態、全てのキラルおよびラセミ体、N−オキシド、水和物、溶媒和物ならびに酸塩水和物もまた、本発明の範囲内であると考えられる。
【0050】
本発明のある種の化合物はアミノ基を含有し、そしてそれ故に様々な無機および有機酸と塩を形成することができる。そのような塩もまた、本発明の範囲内である。代表的な塩には、酢酸塩、アジピン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、メタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、パモン酸塩、過硫酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩およびウンデカン酸塩が包含される。これらの塩は、該塩が不溶性である溶媒もしくは媒質において、または真空中でもしくは凍結乾燥により後で除かれる水のような溶媒において生成物の遊離塩基形態を1当量もしくはそれ以上の適切な酸と反応させることによるような、常法により形成することができる。これらの塩はまた、適当なイオン交換樹脂上で既存の塩の陰イオンを別の陰イオンと交換することにより形成することもできる。
【0051】
本発明のある種の酸性もしくは塩基性化合物は、両性イオンとして存在することができる。遊離酸、遊離塩基および両性イオンを包含する化合物の全ての形態は、本発明の範囲内であると考えられる。アミノおよびカルボキシル基の両方を含有する化合物は、それらの両性イオン形態と平衡状態で存在することが多いことは当該技術分野において周知である。従って、例えばアミノおよびカルボキシル基の両方を含有する全体にわたって本明細書に記述される化合物のいずれも、それらの対応する両性イオンへの言及も包含する。
【0052】
本発明の化合物は、製薬学的に許容しうる担体に関連して薬剤として用いることができる。「製薬学的に許容しうる」という語句は、適切な医学的判断の範囲内で、適当な利益/危険比に応じた過度の毒性、刺激、アレルギー反応または他の問題もしくは合併症なしにヒトおよび動物の組織と接触して使用するのに適当である化合物、物質、組成物および/もしくは投与形態物をさすために本明細書において用いられる。
【0053】
本発明の化合物は、担体、賦形剤および/もしくは希釈剤と混合して新規な組成物を形成することができる。そのような組成物は、予防、診断および/もしくは治療技術において用いることができる。そのような組成物の有効量を投与することにより、予防もしくは治療応答をヒトもしくはある他のタイプの哺乳類においてもたらすことができる。予防もしくは治療応答の生成には、望ましい応答の開始もしくは増大、ならびに望ましくない応答の緩和、停止もしくは抑制が包含されることが理解される。本発明の組成物は、以下にさらに詳細に記述されるように、多数の用途を見出すと予想される。
【0054】
本明細書において用いる場合、「アルキル」は、約1〜約20個の炭素原子(ならびにその中の炭素原子の範囲および特定の数の全ての組み合わせおよびサブコンビネーション)を有する場合により置換されていてもよい飽和した直鎖状、分枝鎖状もしくは環状炭化水素をさし、本明細書において「低級アルキル」と呼ばれる約1〜約8個の炭素原子が好ましい。アルキル基には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、シクロペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシル、シクロヘキシル、シクロオクチル、アダマンチル、3−メチルペンチル、2,2−ジメチルブチルおよび2,3−ジメチルブチルが包含されるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
本明細書において用いる場合、「ハロ」および「ハロゲン」は各々、本発明の化合物に結合したフルオロ、クロロ、ブロモもしくはヨード部分をさす。好ましくは、「ハロ」および「ハロゲン」は、フルオロもしくはクロロ部分をさす。
【0056】
本明細書において用いる場合、「ヘテロアリール」は、少なくとも1個、そして好ましくは1〜約4個の硫黄、酸素もしくは窒素へテロ原子環員を含む場合により置換されていてもよい単環式、二環式、三環式もしくは他の多環式芳香族環系をさす。ヘテロアリール基は、例えば、約3〜約50個の炭素原子(ならびにその中の炭素原子の範囲および特定の数の全ての組み合わせおよびサブコンビネーション)を有することができ、約4〜約10個の炭素が好ましい。ヘテロアリール基の限定されない例には、例えば、ピリル、フリル、ピリジル、1,2,4−チアジアゾリル、ピリミジル、チエニル、イソチアゾリル、イミダゾリル、テトラゾリル、ピラジニル、ピリミジル、キノリル、イソキノリル、チオフェニル、ベンゾチエニル、イソベンゾフリル、ピラゾリル、インドリル、プリニル、カルバゾリル、ベンズイミダゾリルおよびイソオキサゾリルが包含される。「ヘテロアリール環炭素」という用語は、環フレームワーク内に位置する炭素原子をさし、ここで、ヘテロアリールは上記に定義のとおりである。
【0057】
本明細書において用いる場合、「アルコキシ」および「アルコキシル」という用語は、場合により置換されていてもよいアルキル−O−基をさし、ここで、アルキルは既定のとおりである。典型的なアルコキシおよびアルコキシル基には、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシおよびヘプトキシが包含される。
【0058】
「ハロアルコキシル」もしくは「ハロアルコキシ」には、1個もしくはそれ以上のハロゲンで置換された、炭素原子の特定の数を有する分枝鎖状および直鎖状飽和脂肪族炭化水素基の両方が包含されるものとする。「モノ−」および「ポリ−」という接頭辞の使用は、それぞれ、1個でのまたは2個もしくはそれ以上での置換をさす。ハロアルキル基の例には、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、ペンタフルオロエチルおよびペンタクロロエチル基が包含されるが、これらに限定されるものではない。
【0059】
本明細書において用いる場合、「スピロアルキル」という用語はアルキレンジラジカルをさし、その両末端は親基の同じ炭素原子に結合してスピロ環式基を形成する。スピロアルキル基は、その親基と一緒になって、本明細書に定義される場合、3〜20個の環原子を有する。好ましくは、それは3〜10個の環原子を有する。その親基と一緒になったスピロアルキル基の限定されない例には、1−(1−メチル−シクロプロピル)−プロパン−2−オン、2−(1−フェノキシ−シクロプロピル)−エチルアミンおよび1−メチル−スピロ[4.7]ドデカンが包含される。本発明のスピロアルキル基は、置換されるかもしくは非置換であることができる。
【0060】
アルケニルおよびアルキニル基には、直鎖状および分枝鎖状炭素鎖の両方が包含される。本発明のアルケニル基は、1個もしくはそれ以上の炭素−炭素二重結合を含む直鎖状もしくは分枝鎖状アルキル部分である。好ましいアルケニル基は、2〜約10個の炭素原子を有するものである。本発明のアルキニル基は、1個もしくはそれ以上の炭素−炭素三重結合を含む直鎖状もしくは分枝鎖状アルキル部分である。従って、本発明のアルケニルおよびアルキニル基には、1〜約10個の炭素原子、そして本発明のある態様において、好ましくは1〜約6個の炭素原子を有するエテン、エチン、プロペン、プロピン、ブテニル、ペンチニル、2−ブテニル、2−メチルブチニルおよびイソペンテニル部分のような炭化水素が包含されるが、これらに限定されるものではない。
【0061】
本明細書において用いる場合、「アラルキル」はアリール置換基を有するアルキル基をさし、そして約6〜約50個の炭素原子(ならびにその中の炭素原子の範囲および特定の数の全ての組み合わせおよびサブコンビネーション)を有し、約6〜約10個の炭素原子が好ましい。アラルキル基は、場合により置換されていてもよい。限定されない例には、例えば、ベンジル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、フェニルエチルおよびジフェニルエチルが包含される。
【0062】
本明細書において用いる場合、「アリール」は、約5〜約50個の炭素原子(ならびにその中の炭素原子の範囲および特定の数の全ての組み合わせおよびサブコンビネーション)を有する場合により置換されていてもよい単環式、二環式,三環式もしくは他の多環式芳香族環系をさし、約6〜約10個の炭素が好ましい。限定されない例には、例えば、フェニル、ナフチル、アントラセニルおよびフェナントレニルが包含される。
【0063】
本明細書において用いる場合、「ヘテロサイクリル」は、少なくとも1個、そして好ましくは1〜約4個の硫黄、酸素もしくは窒素へテロ原子環員を含む単環式、二環式,三環式もしくは他の多環式芳香族環系をさす。ヘテロサイクリル基は、約3〜約20個の炭素原子(ならびにその中の炭素原子の範囲および特定の数の全ての組み合わせおよびサブコンビネーション)を有することができ、約4〜約10個の炭素が好ましい。ヘテロサイクリル基は不飽和であることができ、そしてまた芳香環に縮合することもできる。ヘテロサ
イクリル基の例には、例えば、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、ピペリジニル、ピロリジニル、イソオキサゾリジニル、イソチアゾリジニル、ピラゾリジニル、オキサゾリジニル、チアゾリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、ピペリジニル、デカヒドロキノリル、オクタヒドロクロメニル、オクタヒドロ−シクロペンタ[c]ピラニル、1,2,3,4−テトラヒドロキノリル、オクタヒドロ−[2]プテリジニル、デカヒドロ−シクロオクタ[c]フラニルおよびイミダゾリジニルが包含される。ヘテロサイクリル基は、置換されるかもしくは非置換であることができる。
【0064】
本発明の化合物および中間体は、保護基を含有することができる。保護基は、化合物がさらされるある種の化学反応条件にそのような官能基を不活性にするために化学化合物に存在する、ヒドロキシルおよびアミン基のような、官能基に選択的に付加しそしてそれから取り除くことができる化学官能基としてそれ自体既知である。例えば、Greene and Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,2d edition,John Wiley & Sons,New
York,1991を参照。酸に不安定なt−ブチルジメチルシリル、ジエチルイソプロピルシリルおよびトリエチルシリル基ならびに酸に安定なアラルキル(例えばベンジル)、トリイソプロピルシリルおよびt−ブチルジフェニルシリル基を包含する、多数のヒドロキシル保護基が当該技術分野において既知である。有用なアミン保護基には、アリルオキシカルボニル(Alloc)、ベンジルオキシカルボニル(CBz)、クロロベンジルオキシカルボニル、t−ブチルオキシカルボニル(Boc)、フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)、イソニコチニルオキシカルボニル(I−Noc)基が包含される。
【0065】
本明細書において用いる場合、「フェノキシル保護基」は、化合物がさらされるある種の化学反応条件にそのような官能基を不活性にするためにフェノール化合物(Ar−OH)に存在するヒドロキシル官能基に選択的に付加しそしてそれから取り除くことができる化学官能基をさす。2個のフェノキシル基が存在する本発明の化合物において、各々それ自体の独立した保護基を有することができる。あるいはまた、2個のフェノキシル基がそれらを介して連結される炭素原子と一緒になってジオキサニル(2個の酸素原子が相互に対して環位置1および3に置かれる6員環)もしくはジオキソラニル(2個の酸素原子が相互に対して環位置1および3に置かれる5員環)環を形成するように、1つの二重機能保護基を用いて両方のフェノキシル基を同時に保護することができる。フェノキシル保護基の例には、ベンジルおよび置換されたアラルキルが包含される。二重機能保護基の例には、それぞれアルデヒドもしくはケトンを有する隣接するフェノキシル基からのアセタールもしくはケタール部分が包含される。フェノキシルおよびカテコール(2個の隣接するフェノキシル基)保護基の追加の例は、Greene and Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,2d edition,John Wiley & Sons,New York,1991に見出すことができる。
【0066】
本明細書において用いる場合、「アルコキシアルキル」は、アルキル上の水素原子の1個もしくはそれ以上がアルコキシ部分で置換されるアルキル基をさす。アルコキシアルキル基は、約2〜約20個の炭素原子(ならびにその中の炭素原子の範囲および特定の数の全ての組み合わせおよびサブコンビネーション)を有することができ、約2〜約10個の炭素が好ましい。アルコキシアルキル基の例には、例えば、エトキシメチル、メトキシメチル、メトキシブチル、メトキシエチルおよびプロポキシメチルが包含される。アルコキシアルキル基は、置換されるかもしくは非置換であることができる。低級アルコキシアルキル部分は、約2〜約10個の炭素原子を有することができる。より好ましくは、それらは約2〜約6個の炭素原子を有する。
【0067】
本明細書において用いる場合、「シクロアルキル」は、約3〜約20個の炭素原子(ならびにその中の炭素原子の範囲および特定の数の全ての組み合わせおよびサブコンビネーション)を有するそれらの構造に1個もしくはそれ以上の環を有する場合により置換されていてもよいアルキル基をさし、約3〜約10個の炭素原子が好ましい。多環構造は、架橋もしくは縮合環構造であることができ、基にはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル、2−[4−イソプロピル−1−メチル−7−オキサ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタニル]、2−[1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレニル]およびアダマンチルが包含されるが、これらに限定されるものではない。
【0068】
本明細書において用いる場合、「アラルコキシ」および「アラルコキシル」という用語は、場合により置換されていてもよいアラルキル−O−基をさし、ここで、アラルキルは既定のとおりである。典型的なアラルコキシおよびアラルコキシル基には、ベンジルオキシ、1−フェニルエトキシ、2−フェニルエトキシおよび3−ナフチルヘプトキシが包含される。
【0069】
本明細書において用いる場合、アラルコキシアルキルという用語は、場合により置換されていてもよいアラルキル−O−アルキル−基をさし、ここで、アラルコキシルおよびアルキルは既定のとおりである。典型的なアラルコキシアルキル基には、ベンジルオキシメチル、2,4−ジメチルベンジルオキシメチル、3−トリフルオロメチルベンジルオキシメチル、ナフチルエチルオキシプロピルおよび3−(フェネチルオキシ)−2−メチルプロピルが包含される。
【0070】
本発明の基は非置換であることができ、または1個もしくはそれ以上の置換基を有することができると理解される。例えば、ある態様において、「シクロヘキシル」、「ベンジル」、「フラニル」、「テトラヒドロフラニル」、「ジヒドロフラニル」、「モルホリニル」、「ピペリジニル」、「テトラヒドロピラニル」、「ジオキソラニル」、「ジオキサニル」、「ピロリニル」、「テトラヒドロオキサゾリル」および「ジヒドロオキサゾリル」という用語は、場合により置換されていてもよいような関連部分をさす。典型的に、置換された化学部分は、水素を置換する1個もしくはそれ以上の置換基を含む。従って、「置換された」は、同定される部分の1個もしくはそれ以上の水素が、示される基(1個もしくは複数)からの選択で置換されることを示すものとし、ただし、同定される部分における通常の価数を上回らず、そして置換は安定な化合物をもたらす。典型的な置換基には、例えば、ハロ(例えば、−F、−Cl、−Br)が包含され、ただし、ハロが−Brである場合、該−Brはアリールもしくはヘテロアリール環炭素、アルコキシ、モノハロアルコキシ、ポリハロアルコキシ、アルキル、スピロアルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロサイクリル、ヒドロキシル(−OH)、ニトロ(−NO)、シアノ(−CN)、スルホニル(−SOR’)、スルファモイル(−SONR”R’”)、アミノ(−NH、NHR”、NHR””、N(R”R’”)などに結合しており、ここで、各R’、R”およびR’”には、独立してアルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリールなどを包含することができる。置換基が=O(ケト基)である場合、関係する炭素原子上の2個の水素が置換される。例として、1個の酸素を含有する炭素環が酸素=Oに隣接する炭素上で置換される場合、ラクトンが形成される。
【0071】
任意の変記号が任意の成分においてもしくは任意の式において1回より多く存在する場合、各存在におけるその定義はあらゆる他の存在でのその定義から独立している。従って、例えば、W基が例えば1〜5個の直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルキル、または直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルコキシアルキルで置換されると示される場合、該W基は場合により5個までの上記の置換基で置換されていてもよく、そして各存在での置換基は可能な置換基の上記に定義するリストから独立して選択される。置換基および/もしくは変記号の組み合わせは、そのような組み合わせが安定な化合物をもたらす場合にのみ許容しうる。ある種の置換基は、例えばW部分におけるように、最低限に必要とされるが、該部分は同じ置換基(1個もしくは複数)、必要とされる置換基の群からの別の置換基(1個もしくは複数)、または必要とされる置換基の群からではない他の置換基(1個もしくは複数)でさらに置換され得ることがさらに理解される。
【0072】
「安定な化合物」および「安定な構造」は、反応混合物から有用な程度の純度までの単離、および有効な治療薬への調合を生き延びるために十分に強い化合物を示すものとする。安定な化合物は、本発明に従って好ましい。
【0073】
本明細書において用いられる化学式および名称は、基礎をなす化学化合物を正しくそして正確に反映すると考えられる。しかしながら、本発明の性質および価値は、全体においてもしくは一部分において、これらの式の理論的正確さに依存しない。従って、本明細書において用いられる式、ならびに対応して示される化合物に属すると考えられる化学名称は、そのような立体化学が明らかに定義される場合を除いて、本発明を任意の特定の互変異性体にまたは任意の特定の光学;もしくは幾何異性体に限定することを包含する、本発明を限定することを決して意図しないことが理解される。
【0074】
本明細書において用いる場合、「接触させること」という用語は、分子間相互作用およびそのような相互作用に付随する化学転化を可能にする距離内に化合物を一緒にすることをさす。しばしば、化合物を接触させることは、溶液相においてである。
【0075】
「被験体」もしくは「患者」は、哺乳類を包含する動物、好ましくはヒトをさす。
【0076】
「有効量」は、特定の疾病、疾患、症状もしくは副作用の症状を抑制するか、防ぐかもしくは処置するために治療的に有効であることができる本明細書に記述されるような化合物の量をさす。
【0077】
[発明の記述]
化合物. 本発明の1つの態様は、局所投与後に眼における選択的な局所的ベータ遮断効果を有するエステル基含有化合物を特徴とする。理論によって拘束されることを所望しないが、そのような化合物は体循環に入ると代謝により迅速に不活性化されると考えられ、そしてそれ故に心臓および肺における受容体で作用するために利用できない可能性がある。これらの同じ化合物は眼液、すなわち、涙液および房水、ならびに虹彩−毛様体複合体のような眼組織において比較的安定であることが見出されている。従って、そのような化合物は眼に局所的に使用した場合に安定なままであるが、続いて体循環に吸収されると迅速に代謝するので、それらは緑内障の処置のためにもしくは眼圧を下げるために有用である。従って、本発明の化合物および方法は、他の都合のよい特徴の中で、緑内障の処置のためのもしくは眼圧を下げるための非常に有用な治療代替物を提供する。
【0078】
本発明の化合物は、本明細書に記述されるような式Iもしくは式IIを含んでなる。式IおよびIIには、角膜浸透の際に加水分解を受けて房水中で長い半減期を有する強力なベータ−アドレナリン作動性遮断薬を生成せしめる新規なクラスのプロドラッグが包含される。さらに、これらのプロドラッグは、それらを眼科使用のために際立って好都合にする1つもしくはそれ以上の特徴を有する。例えば、本発明の化合物は、十分な貯蔵寿命にわたってバッファー溶液中で安定であり、そして角膜において迅速に加水分解して房水中に活性化合物を送達することが示されている。このようにして提供される活性化合物は、既知の化合物と比較した場合に眼圧を下げることにおけるそれらの効果の期間を延ばすために房水中で十分に安定である。ある態様において、本発明の化合物は減少した眼球刺激
もしくは局所麻酔活性を有する。ある好ましい態様において、該化合物は眼球刺激もしくは局所麻酔活性が実質的にない。さらにより好ましくは、それらは眼球刺激および局所麻酔活性が実質的にない。ある好ましい態様において、活性化合物は体循環から迅速に除かれて心不全および気管支痙攣のような全身的作用を軽減するかもしくはなくす。ある態様において、プロドラッグ化合物は全身吸収の際にベータ受容体に認め得るほどに結合しない。プロドラッグ化合物により、R、RおよびRの少なくとも1つはWであることが意味される。ある好ましい態様において、RはHであり;より好ましくはRがHである場合には、RおよびRの少なくとも1つもまたHである。ある好ましい態様において、R、RおよびRは各々Hである。
【0079】
式I化合物の加水分解は、Patil,et al.,米国特許第4,966,914号に記述されているもののようなベータ遮断化合物の形成をもたらす。しかしながら、明白に、本発明によれば、式II化合物の加水分解により形成されるベータ遮断薬は、これまで記述されていない新規なクラスのベータ遮断薬を構成する。従って、式IIにはプロドラッグおよび薬剤の両方が包含される。これらのプロドラッグは、上記の特徴および利点を有する。式IIにより包含される薬剤は、緑内障の処置のためだけでなく、短時間作用型ベータ遮断薬が適当であるかもしくは好ましいことが既知である多種多様な他の目的のためにも有用性を有する。例えば、米国特許第4,966,914号に記述されそして式IIにより包含されるもののようなカテコールを含有するベータ遮断化合物は、フリーラジカルに媒介される心膜脂質過酸化に対して強力な抗酸化および心筋細胞保護効能を及ぼすことが示されており(Mousa,et al.,1992,Int.J.Clin.Pharmacol.Therap.Toxicol.30:103−106)、それにより他の心臓血管有用性の中で、心臓の外傷後もしくは術後症状の処置のためのそれらの有用性を高める。さらに、脂質過酸化インヒビターは神経保護作用を及ぼすことが示されているので(Huh,et al.,2000,Eur.J.Pharmacol.389:79−88)、式IIにより包含されるベータ遮断薬は、神経保護が利益を与える様々な急性および慢性神経学的症状の処置のために有用性を見出すはずである。そのような症状には:卒中によるかまたは局所性もしくはびまん性脳外傷と関連する虚血のような急性神経変性疾患、びまん性脳障害および脊髄損傷、ならびにアルツハイマー病、認知症、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、脳性麻痺、および緑内障と関連する視神経症のような慢性症状もしくは疾病が包含されるがこれらに限定されるものではない。本発明の化合物を都合よく用いることができる他の適応症には、高血圧の処置、狭心症の制御、ある種の異常な心拍リズムの処置、心臓発作を起こした患者の生存を延ばすこと、肥大型心筋症の処置、心不全の処置、血管迷走神経性失神の処置、片頭痛の処置、本態性振せんの処置、食道静脈瘤からの出血の予防およびあがり症の予防もしくは軽減が包含されるがこれらに限定されるものではない。
【0080】
本発明の化合物のある種の態様において、RおよびRは各々独立してH、Wもしくはフェノキシル保護基である。ある好ましい態様において、RおよびRは各々独立してHもしくはWであるか、またはRおよびRは各々独立してフェノキシル保護基であることができる。RおよびRが各々独立してフェノキシル保護基である態様のあるものにおいて、1つの部分は、RおよびRならびにそれらが連結される原子をジオキサンもしくはジオキソラン環に導入する保護基として働くことができる。別の好ましい態様において、RおよびRの少なくとも1つはHであり;より好ましくはRおよびRは両方ともHである。好ましくは、RおよびRが両方ともHである場合、R置換基の少なくとも1つは独立してH以外である。ある態様において、ヒドロキシル保護基は、カテコール誘導体(それぞれケトンもしくはアルデヒドを有するRおよびRが両方ともHである化合物)の反応により形成される環式ケタールもしくはアセタールである。ある態様において、RおよびRは各々独立してアラルキル、好ましくはベンジルである。
【0081】
他の態様において、RはHもしくはWである。ある好ましい態様において、R、RおよびRの少なくとも1つはWであり;より好ましくは、RはWである。さらにより好ましくは、RがWである場合、RおよびRは両方ともHである。好ましくは、RがWである場合、R置換基の少なくとも1つは独立してH以外である。より好ましくは、RがWであり、そしてRおよびRの両方がHである場合、R置換基の少なくとも1つは独立してH以外である。
【0082】
およびRが各々独立してH、Wもしくはフェノキシル保護基であり、そしてRがHもしくはWであるさらに別の態様において、R、RおよびRの少なくとも1つはWである。
【0083】
ある態様において、Rは水素、直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルキル、シクロアルキル、アミノ、C〜C10アルコキシ、−NHC(=O)Rまたは−C(=O)N(H)Rであり、ここで、Rはアルキル、アリールもしくはヘテロサイクリルであり;好ましくは、RはHまたは直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルキル、より好ましくはHまたは直鎖状もしくは分枝鎖状C〜Cアルキル、より好ましくはさらにHもしくはメチル、さらにより好ましくはメチルである。
【0084】
ある別の態様において、Zは−O−、−O(C=O)−もしくは−NH(C=O)−である。ある態様において、Zは−NH(C=O)−である。別の態様において、Zは−O(C=O)−もしくは−O−である。さらに別の態様において、Zは−O(C=O)−である。さらに別の態様において、Zは−O−である。
【0085】
ある態様において、RはH、直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルキル、シクロアルキル、C〜C10アルコキシアルキル、アミノ、ベンジル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、フラニル、モルホリニル、ピペリジニル、テトラヒドロピラニル、ジオキソラニル、2,2−ジメチルジオキソラニル、ジオキサニル、ピロリル、ピロリジニル、テトラヒドロオキサゾリル、ジヒドロオキサゾリル、フェニル、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシもしくはハロで置換されたフェニル、または少なくとも1つの直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルキルで置換されたシクロアルキルである。
【0086】
別の態様において、Rは直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルキル、シクロアルキル、C〜C10アルコキシアルキル、アミノ、ベンジル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、フラニル、モルホリニル、ピペリジニル、テトラヒドロピラニル、ジオキソラニル、2,2−ジメチルジオキソラニル、ジオキサニル、ピロリル、ピロリジニル、テトラヒドロオキサゾリル、ジヒドロオキサゾリル、フェニル、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシもしくはハロで置換されたフェニル、または少なくとも1つの直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルキルで置換されたシクロアルキルである。
【0087】
ある別の態様において、Rは直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルキル、アミノ、シクロヘキシル、ベンジル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、フラニル、フェニル、またはC〜C10アルキル、C〜C10アルコキシもしくはハロで置換されたフェニルである。ある態様において、シクロヘキシル、ベンジル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニルおよびフラニルは場合により置換されていてもよい。
【0088】
別の態様において、RはH、直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルキル、シクロアルキル、C〜C10アルコキシアルキル、フェニル、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシもしくはハロで置換されたフェニル、または少なくとも1つの直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルキルで置換されたシクロアルキルである。
【0089】
ある態様において、Rは直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルキル、アルコキシアルキル、アミノ、シクロヘキシル、ベンジル、テトラヒドロフラニル、フェニル、またはC〜C10アルキル、C〜C10アルコキシもしくはハロで置換されたフェニルである。ある態様において、シクロヘキシル、ベンジル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニルおよびフラニルは場合により置換されていてもよい。より好ましくは、それらはアルキルで置換される。
【0090】
さらに別の態様において、Rは直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルキル、アミノ、シクロヘキシル、ベンジル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、フラニル、モルホリニル、ピペリジニル、テトラヒドロピラニル、ジオキソラニル、ジオキサニル、ピロリニル、テトラヒドロオキサゾリルもしくはジヒドロオキサゾリル、もしくはフェニル、またはC〜C10アルキル、C〜C10アルコキシもしくはハロで置換されたフェニルである。ある態様において、シクロヘキシル、ベンジル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、フラニル、モルホリニル、ピペリジニル、テトラヒドロピラニル、ジオキソラニル、ジオキサニル、ピロリニル、テトラヒドロオキサゾリルもしくはジヒドロオキサゾリルは場合により置換されていてもよい。より好ましくは、それらはアルキルで置換される。
【0091】
ある好ましい態様において、Rはフラニル、ジヒドロフラニルもしくはテトラヒドロフラニルである。より好ましくは、Rはテトラヒドロフラン−2−イルもしくはテトラヒドロフラン−3−イルである。さらにより好ましくは、Rはテトラヒドロフラン−3−イルである。ある別の好ましい態様において、テトラヒドロフラン−3−イルは場合により置換されていてもよい。より好ましくは、テトラヒドロフラン−3−イルは少なくとも1つのアルキルで置換される。
【0092】
別の態様において、Zが−NH(C=O)−である場合、Rは直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルキル、アミノ、シクロヘキシル、ベンジル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、フラニル、フェニル、またはC〜C10アルキル、C〜C10アルコキシもしくはハロで置換されたフェニルである。
【0093】
別の態様において、Zが−NH(C=O)−である場合、Rは直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルキル、アミノ、シクロヘキシル、ベンジル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、フラニル、モルホリニル、ピペリジニル、テトラヒドロピラニル、ジオキソラニル、ジオキサニル、ピロリニル、テトラヒドロオキサゾリルもしくはジヒドロオキサゾリル、もしくはフェニル、またはC〜C10アルキル、C〜C10アルコキシもしくはハロで置換されたフェニルである。
【0094】
ある態様において、Rは直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルキル、アミノ、シクロヘキシル、ベンジル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、フラニル、モルホリニル、ピペリジニル、テトラヒドロピラニル、ジオキソラニル、ジオキサニル、ピロリニル、テトラヒドロオキサゾリル、ジヒドロオキサゾリル、フェニル、またはC〜C10アルキル、C〜C10アルコキシもしくはハロで置換されたフェニルであり;そして
Wは:
【0095】
【化13】

【0096】
であり;
ここで、各Rは独立してH、直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルキル、または直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルコキシアルキルである。ある好ましい態様において、Rの少なくとも1つはH以外である。別の好ましい態様において、Rの少なくとも1つはC〜Cアルキル、より好ましくはC〜Cアルキル、さらにより好ましくはメチルである。ある別の好ましい態様において、Rの少なくとも1つはアルコキシプロピル、アルコキシエチルもしくはアルコキシメチルであり;より好ましくはここで、該アルコキシプロピル、アルコキシエチルもしくはアルコキシメチルの該アルコキシはC〜Cアルコキシ、さらにより好ましくはC〜Cアルコキシ、さらにより好ましくはメトキシである。
【0097】
ある好ましい態様において、Rはフラニル、ジヒドロフラニルもしくはテトラヒドロフラニルである。より好ましくは、Rはテトラヒドロフラン−2−イルもしくはテトラヒドロフラン−3−イルである。さらにより好ましくは、Rはテトラヒドロフラン−3−イルである。さらにより好ましくは、Rがテトラヒドロフラン−3−イルである場合、それはアルキルで置換される。
【0098】
ある態様において、Rはアルキル置換されたテトラヒドロフラニルである。好ましくは、それは3−アルキルテトラヒドロフラニルである。さらにより好ましくは、Rは3−アルキルテトラヒドロフラン−3−イルである。
【0099】
ある態様において、Zが−O−である場合、RはH、直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルキル、シクロアルキル、C〜C10アルコキシアルキル、フェニル、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシもしくはハロで置換されたフェニル、または少なくとも1つの直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルキルで置換されたシクロアルキルである。
【0100】
ある態様において、Zが−O−である場合、RはH、直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルキル、シクロアルキル、少なくとも1つの直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルキルで置換されたシクロアルキル、C〜C10アルコキシアルキル、アミノ、ベンジル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、フラニル、モルホリニル、ピペリジニル、テトラヒドロピラニル、ジオキソラニル、2,2−ジメチルジオキソラニル、ジオキサニル、ピロリル、ピロリジニル、テトラヒドロオキサゾリル、ジヒドロオキサゾリル、フェニル、またはC〜C10アルキル、C〜C10アルコキシもしくはハロで置換されたフェニルである。
【0101】
ある態様において、Zが−O(C=O)−である場合、(Rは)直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルキル、アルコキシアルキル、アミノ、シクロヘキシル、テトラヒドロフラニル、3−アルキルテトラヒドロフラニル、ベンジル、フェニル、またはC〜C10アルキル、C〜C10アルコキシもしくはハロで置換されたフェニルである。
【0102】
ある別の態様において、Zが−O(C=O)−である場合、Rは直鎖状もしくは分枝
鎖状C〜C10アルキル、アルコキシアルキル、アミノ、シクロヘキシル、ベンジル、テトラヒドロフラニル、フェニル、またはC〜C10アルキル、C〜C10アルコキシもしくはハロで置換されたフェニルである。
【0103】
さらに別の態様において、Wは:
【0104】
【化14】

【0105】
であり;
ここで、各Rは独立してH、直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルキル、または直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルコキシアルキルであり;またはWは−C(=O)−Rであることができ、ここで、Rはアルキル、シクロアルキル、アリールもしくはアラルキルである。好ましくは、Wが:
【0106】
【化15】

【0107】
である場合;
置換基の少なくとも1つは独立してH以外である。好ましくは各Rは独立してH、C〜Cアルキルもしくは低級アルコキシアルキル、より好ましくは独立してHもしくはC〜Cアルキルである。あるいはまた、各Rは独立してH、メチルもしくはCHOCH、より好ましくは独立してHもしくはメチルであることができる。あるいはまた、各Rは独立してHもしくはCHOCHであることができる。
【0108】
さらに別の好ましい態様において、各Wは独立して:
【0109】
【化16】

【0110】
である。
【0111】
より好ましくは、RおよびRがHである場合、Rは:
【0112】
【化17】

【0113】
である。
【0114】
ある好ましい態様において、式Iの化合物は以下の構造:
【0115】
【化18】

【0116】
より好ましくは、
【0117】
【化19】

【0118】
を有する。
【0119】
ある好ましい態様において、式IもしくはIIの化合物は以下の立体化学:
【0120】
【化20】

【0121】
を有する。
【0122】
ある態様において、本発明は式IもしくはIIの化合物、またはその立体異性体、製薬学的に許容しうる塩、水和物、溶媒和物、酸塩水和物もしくは同形結晶形態に関する。ある好ましい態様において、化合物は式:
[A]・HX
[式中、Aは式IもしくはIIの化合物であり、そしてHXは酸である]
の製薬学的塩として提供される。Aが式IもしくはIIの化合物である態様において、それは好ましくは構造:
【0123】
【化21】

【0124】
を有し:
さらにより好ましくは、Aは構造:
【0125】
【化22】

【0126】
を有する化合物であり、そしてHXは酸であり;より好ましくは、該酸は塩酸、硫酸、マレイン酸、フマル酸、シュウ酸、コハク酸、クエン酸および酒石酸よりなる群から選択される。別の好ましい態様において、化合物は式:
[A]・HX
[式中、Aは式IもしくはIIの化合物であり、そしてHXは酸であり;より好ましくは、該酸は塩酸、硫酸、マレイン酸、フマル酸、シュウ酸、コハク酸、クエン酸および酒石酸よりなる群から選択される]
の製薬学的塩として提供される。
【0127】
本発明の化合物および実質的に同様な薬理学的特性を有するその同等物は、標準的な合成化学プロトコルに従って製造することができる。いくつかのそのようなプロトコルは、本明細書における実施例に記載される。本発明の化合物の製造のための典型的な方法を概
説する一般的なスキームが提供される(スキーム1)。安息香酸Iをラセミもしくはキラル活性化エポキシプロパン誘導体IIと反応させてグリシジルエステルIIIを生成せしめることができる。反応は、広範囲の条件にわたって溶媒の存在下もしくは不在下で、例えば0〜25℃でN−メチルピロリジノンにおいて水素化ナトリウムのような塩基を用いて実施することができる。キラルグリシジル誘導体IIの任意の使用は、所望に応じて、最終化合物へのキラリティーの導入を可能にする。エステルIIIを塩基を加えてもしくは加えずにIVとさらに反応させて第二級アルコールVを生成せしめることができる。典型的な溶媒には、N−メチルピロリジノンおよびアセトニトリルが包含される。塩基の選択は、それが反応を実質的に妨げない限り通常は重要でない。例えば、トリエチルアミンのようなアミン塩基を加えることができる。構造VもしくはVIの化合物は、必要に応じてさらに誘導体化することができる。例えば、Z−Rが−OHである場合、Vを例えばWutsにおけるような既知の方法によりさらにエステル化もしくはエーテル化して、対応するエステルもしくはエーテルを生成せしめることができる。あるいはまた、IVに対応するジアミンもしくはアミノアルコールは、化合物IIIとの反応の前にエステル化、エーテル化もしくはN−アシル化することができる。化合物V(ラセミもしくはキラル体の)は、Greene,T.W.and Wuts,P.G.M.,Protective Groups in Organic Synthesis 2d.Ed.,Wiley & Sons,1991(この開示は、その全部が本明細書に引用することにより本明細書に組み込まれる)におけるもののような、一般的なエステル化方法を用いてR−L(ここで、Lは適切な脱離基である)でさらにエステル化して、VIを生成せしめることができる(1つの立体異性体を例として示す)。
【0128】
【化23】

は立体異性体を示し;RはRC(=O)である。
【0129】
以下にさらに詳細に記述されるように、本発明の化合物は単独でもしくは他の薬剤と組み合わせて用いることができる。例えば、本発明の既定の化合物は、緑内障の処置のための処方計画において単独で用いるか、あるいは本発明の1つもしくはそれ以上の他の化合物と組み合わせるか、または炭酸脱水酵素インヒビター(例えばドルゾールアミド)のような、縮瞳薬/副交感神経作用薬(例えばピロカルピン)、プロスタグランジン(例えばラタノプロスト)、交感神経作用薬(例えばエピネフリン)、β−アドレナリン作動性遮断薬、高浸透圧剤、α選択的アドレナリン作動性アゴニスト(例えばブリモニジン)も
しくはカンナビノイドのような非ベータ遮断薬と組み合わせることができる。同様に、非眼科処置に関する態様において、本発明の化合物は、そのような処置のための処方計画において他の適切な治療薬と組み合わせることができる。
【0130】
製薬学的組成物. 本発明の別の態様によれば、本発明の化合物は治療を必要とする患者の眼への使用のための組成物に調合される。従って、そのような組成物は、以下にさらに詳細に記述されるように、点眼剤、軟膏、散剤、液剤、スプレーとして、もしくはコンタクトレンズ、挿入物(insert)などにおける製薬学的使用に適応している。従って、製薬学的製剤技術分野における当業者に既知であるような任意の所望の希釈剤、塩、pH改変物質などを含有する滅菌水への化合物の調合は、眼への投与と適合する溶液を得るために行われることができる。点眼剤、挿入物、コンタクトレンズ、ゲルおよび他の局所用液状形態はいくらか異なる製剤を必要とし得る可能性がある。眼への直接投与と一致する全てのそのような製剤は、本明細書により包含される。
【0131】
製剤は、約0.01重量%〜約10重量%、好ましくは約0.1重量%〜約5重量%の間の量の、好ましくは可溶性酸付加塩の形態の、活性化合物を含有することができる。典型的な態様において、製剤は化合物(実施例1)を約0.05〜3.0%w/v、さらに特に約0.1〜2.0%(w/v)の間の濃度で含有する。活性化合物の単位投薬量は、約0.01〜約5.0mg、好ましくは約0.05〜約2.0mgの間であることができる。患者に投与する投薬量は、当業者により容易に理解されそして計算されるように、患者の必要性および用いる特定の化合物により決まる。
【0132】
本発明の製造において使用する担体は、好ましくは、水;水と低級アルコールのような水混和性溶媒の混合物;鉱油;石油ゼリー;エチルセルロール;ポリビニルピロリドンおよび他の通常の担体のような無毒の眼科的に許容しうる製薬学的有機もしくは無機組成物である。さらに、製薬学的製剤はまた、乳化剤、防腐剤、湿潤剤および滅菌剤のような追加の成分を含有することもできる。これらには、ポリエチレングリコール200、300、400および600、カーボワックス1,000、1,500、4,000、6,000および10,000、第四級アンモニウム化合物、冷滅菌特性を有することが既知でありそして使用において無害であるフェニル水銀塩、チメロサール、メチルおよびプロピルパラベン、ベンジルアルコール、フェニルエタノール、ソルビン酸のような殺菌成分、塩化ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、グルコン酸塩バッファーのような緩衝成分、ならびにソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミン、オレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミチレート、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、モノチオグリセロール、チオソルビトール、エチレンジアミン四酢酸などのような他の通常の成分が包含される。さらに、通常のリン酸バッファー賦形剤系、等張ホウ酸賦形剤、等張塩化ナトリウム賦形剤、等張ホウ酸ナトリウム賦形剤などを包含する適当な眼科用賦形剤を本発明の目的のための担体媒質として用いることができる。組成物もしくは製剤はまた、可溶化剤(例えばグリセリン)もしくはキレート剤(例えば金属イオンのためのEDTA)を含有することもできる。
【0133】
さらに特に、組成物はまた、使用する酸化防止剤の種類によって異なる範囲の酸化防止剤を有することもできる。使用はまた、製薬学的組成物の少なくとも2年の貯蔵寿命を可能にするために必要な酸化防止剤の量によっても決まる。1つもしくはそれ以上の酸化防止剤を製剤に含むことができる。ある種の一般に用いられる酸化防止剤は、規制当局により許可される最大レベルを有する。
【0134】
適当な範囲は、EDTAの約0.01%〜約0.15%w/v(weight by volume)、亜硫酸ナトリウムの約0.01%〜約2.0%w/v、そしてメタ重亜硫酸ナトリウムの約0.01%〜約2.0%w/vである。当業者は、上記の各々につい
て約0.1%w/vの濃度を使用することができる。N−アセチルシステインは、約0.01%〜約5.0%w/vの範囲で存在することができ、約0.1%〜約1%が好ましい。アスコルビン酸もしくは塩もまた、約0.1%〜約5.0%w/vの範囲で存在することができ、約0.5%〜約2%w/vが好ましい。含まれる場合、他のスルフヒドリルは、N−アセチルシステインと同じ範囲であることができる。眼内投与に適当な他の酸化防止剤、例えばアスコルビン酸およびその塩もしくは亜硫酸塩またはメタ重亜硫酸ナトリウムもまた用いることができるが、他の典型的な化合物にはメルカプトプロピオニルグリシン、N−アセチルシステイン、β−メルカプトエチルアミン、グルタチオンおよび類似種が包含される。
【0135】
緩衝剤は、点眼製剤のpHを約3.5〜約8.0の範囲に保つために用いることができ;これは角膜刺激を防ぐために必要である。本発明の化合物はエステルであるので、エステル結合の加水分解を防ぐためにそして生成物の十分な貯蔵寿命を保証するためにpHは好ましくは約3.5〜約6.0、好ましくは約4.0〜約5.5で保たれる。
【0136】
本発明の組成物はまた、眼への投与に適当な等張化剤を含むこともできる。それらの中で適当であるのは、マンニトール、等張ホウ酸賦形剤、等張塩化ナトリウム賦形剤、等張ホウ酸ナトリウム賦形剤などである。例えば、本発明の製剤は、0.9%の食塩水溶液でほぼ等張にすることができる。
【0137】
ある態様において、眼科用組成物は増粘剤とともに調合される。典型的な薬剤は、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロースおよびポリビニルピロリドンである。増粘剤は、約1.6%w/vまで化合物に存在することができる。薬剤は約0.2%〜約1.0%w/vの範囲で存在することが好ましい可能性がある。ポリビニルピロリドンの好ましい範囲は、約0.1%〜約0.2%w/vであることができる。当業者は、食品医薬品局により許容しうると設定された任意の範囲を選択することができる。
【0138】
本発明の化合物は、必要に応じて加えられた共溶媒を有することができる。適当な共溶媒には、グリセリン、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリソルベート、プロピレングリコールおよびポリビニルアルコールを包含することができる。共溶媒の存在は、約0.2%〜約1.0%w/vの範囲で存在することができる。ポリビニルアルコールは、約0.1%〜約4.0%w/vの範囲で本発明の化合物に調合できることもまた好ましい可能性がある。当業者は、食品医薬品局により許容しうると設定された範囲を選択することができる。
【0139】
防腐剤は、特定の範囲内で本発明において用いることができる。それらの中で好ましいのは、塩化ベンザルコニウムの0.013%w/vまで、塩化ベンゼトニウムの0.013%w/vまで、クロロブタノールの0.5%w/vまで、酢酸もしくは硝酸フェニル水銀の0.004%w/vまで、チメロサールの0.01%w/vまで、ソルビン酸の約0.2%まで、そしてメチルもしくはプロピルパラベンの約0.01%〜約0.2%w/vである。
【0140】
上記のように、式IIはプロドラッグおよびベータ遮断薬の両方を包含する。本発明の別の態様において、本明細書に記述されるベータ遮断薬は、眼以外の体の部分への投与のために調合することができる。眼への送達が要求されない、本発明の組成物の投与のための他の製剤には、錠剤、液体およびスプレー;静脈内、皮下および腹腔内注入可能溶液;パッチもしくは軟膏のような、皮膚への使用のための組成物もしくは装置;ならびに浣腸、座薬もしくはエアロゾルを包含することができる。
【0141】
記載されるように、本発明の化合物は単独でもしくは他の薬剤と組み合わせて用いることができる。化合物の組み合わせを含んでなる製薬学的組成物は、標準的な方法論に従って調合することができる。そのような組み合わせには、例えば、緑内障の処置のための処方計画における本発明の2つもしくはそれ以上の化合物の組み合わせ、または炭酸脱水酵素インヒビター(例えばドルゾールアミド)のような、縮瞳薬、副交感神経作用薬(例えばピロカルピン)、プロスタグランジン(例えばラタノプロスト)、交感神経作用薬(例えばエピネフリン)、β−アドレナリン作動性遮断薬、高浸透圧剤、α選択的アドレナリン作動性アゴニスト(例えばブリモニジン)もしくはカンナビノイドのような非ベータ遮断薬と本発明の1つもしくはそれ以上の化合物の組み合わせを包含することができる。同様に、非眼科処置に関する態様において、本発明の化合物はそのような処置のための組成物において他の適切な治療薬と組み合わせることができる。
【0142】
本発明の1つの態様は、本発明の化合物とプロスタグランジン誘導体との組み合わせでの高眼圧症の処置を含んでなる。好ましくは、該組み合わせは相乗効果を与える。さらに特に、本発明の化合物は、ビマトプロスト0.03%、ラタノプロスト0.005%およびトラボプロスト0.004%点眼液のような少なくとも1つのプロスタグランジン、ならびにそれらの製薬学的に許容しうるアナログおよび誘導体と組み合わされる。好ましいプロスタグランジンは、ラタノプロストである。典型的な製剤において、プロスタグランジン誘導体の最終組成物濃度は、約0.001〜約0.5(w/v%)の間であり、そして本明細書に記述されるような眼選択的ベータ遮断薬もしくは対応するプロドラッグの最終組成物濃度は、約0.1〜約1.0(w/v%)の間である。特定の抗緑内障製薬学的製剤は、プロスタグランジン誘導体と化合物7(実施例1)の組み合わせを含んでなる。
【0143】
本発明の別の態様は、本発明の化合物と炭酸脱水酵素インヒビターの組み合わせ(好ましくは相乗的組み合わせ)での高眼圧症の処置に関する。ベータ遮断薬および炭酸脱水酵素インヒビターは両方とも、房水の形成を減らすことによりIOPを下げると考えられるが、薬剤のこれらのクラスの各々は、該組み合わせが相乗効果を与えることができるように、異なる機序により働く。好ましい炭酸脱水酵素インヒビターは、ドルゾールアミドである。特定の態様において、炭酸脱水酵素インヒビター誘導体の最終組成物濃度は約1.0〜約5.0(w/v%)の間であり、そして化合物7のような本発明の化合物の最終組成物濃度は約0.1〜約1.0(w/v%)の間である。
【0144】
別の態様において、本発明は本発明の化合物とカンナビノイド化合物との組み合わせでの高眼圧症の処置に関する。マリファナの主要有効成分、Δ−テトラヒドロカンナビノールは、緑内障における眼圧の減少を包含する多種多様な薬理学的効果を及ぼすことが知られている(Dewley,W.L.1986,Pharmac.Rev.38,151−178)。新規のカンナビノイド(CB2)受容体アゴニスト、それらの組成物およびそれらの製造方法は、米国特許第5,605,906号および第5,532,237号に記述されている。これらの化合物は、それ自体でのもしくはチモロールのようなベータ遮断薬との組み合わせにおけるカンナビノイド受容体への活性のためにIOPを下げるかもしくは緑内障を処置するために有用であることが示されている。最近、脳において発現されず、むしろ脾臓の辺縁帯中のマクロファージにおいて発現される、カンナビノイドの末梢受容体(CB2)が単離され、そして特性化されている(Munro et al.,1993,Nature,365,61−65)。従って、選択的CB2アゴニストは、CB1受容体と関連する精神活性作用なしにカンナビノイドと関連する抗炎症、鎮痛、鎮吐、免疫抑制および眼圧低下特性を有することができる。ある種の1,9−ジヒドロキシ−オクタヒドロベンゾ−[c]キノリン(Johnson,米国特許第4,260,764号;およびJohnson,et al.,米国特許第4,228,169号)ならびに9−オキソアナログ(ベルギー特許第854,655号,1977)はCNS薬として、特に鎮痛薬および精神安定剤として、降圧薬、利尿剤として、そして緑内障の処置のための薬剤として有用であることが示されている。対応する9−アミノおよび9−オキシイミノアナログもまた、同様の特性を有することが示されている(Johnson,米国特許第4,309,545号)。これらもしくは他のカンナビノイドもしくは誘導体のいずれも本発明の態様において利用することができる。好ましくは、カンナビノイド誘導体の最終組成物濃度は約0.001〜約1.0(w/v%)の間であり、そして化合物のような本発明の化合物の最終組成物濃度は約0.1〜約1.0(w/v%)の間である。
【0145】
別の態様は、本発明の化合物とピロカルピンとの組み合わせ(好ましくは相乗的)での高眼圧症の処置に関する。好ましくは、ピロカルピンの最終組成物濃度は約0.1〜約1.0(w/v%)の間であり、そしてここで、化合物のような本発明の化合物の最終組成物濃度は約0.1〜約1.0(w/v%)である。
【0146】
本発明のさらに別の態様は、本発明の化合物とクロニジン誘導体との組み合わせ(好ましくは相乗的)での高眼圧症の処置を提供する。アルファ−2アゴニスト活性を有する化合物は、眼圧を下げることが既知である。例えば、York,Jr.,米国特許4,461,904号および4,517,199号;ならびにCavero,et al.,米国特許第4,515,800号に記述されている置換された2−(アリールイミノ)イミダゾリジンは、眼圧を下げることが既知である。これらの薬剤は、房水の流入を抑制することにより眼圧を下げると考えられる。眼圧を制御するためのアプラクロニジン(例えばパラ−アミノクロニジン)もしくはブリモニジンのようなクロニジンタイプアルファ−2アゴニストとチモロールのようなベータ遮断薬との組み合わせの使用は、DeSantis,米国特許第5,502,052号に記述されている。好ましくは、クロニジン誘導体の最終組成物濃度は約0.05〜約1.0(w/v%)の間であり、そして化合物のような本発明の化合物の最終組成物濃度は約0.1〜約1.0(w/v%)である。
【0147】
本発明の別の態様は、本発明の化合物とエピネフリンもしくはジピバリルエピネフリン(DPE)との組み合わせ(好ましくは相乗的)での高眼圧症の処置に関する。ジピバリルエピネフリンとベータ遮断薬の固定した組み合わせの治療的に有効な量から本質的になる眼圧を下げるための製剤は、Gramer,米国特許第5,459,140号に記述されている。上昇した眼圧を下げるための薬剤の2つもしくはそれ以上の異なるタイプの使用は、特に眼圧の激しい上昇を示しそして/もしくは単一の薬剤の眼圧低下作用に対して抵抗性を生じる患者と関連して、一般的な方法である。この方法は、ベータ遮断薬およびアルファアゴニストでの組み合わせ治療を包含している。これに関してさらなる背景については以下の文献を参照:McGuinness,et al.,“Timolol and Dipivalyl Epinephrine Combination Therapy”,Aust.J.Ophthalmol.,Vol.10,pages 179−182(1982);およびWeineb,et al.,“Effect of Adding Betaxolol to Dipivefrin Therapy”,Am.J.Ophthalmol.,Vol.101,pages 196−198(1986)。好ましい態様において、ジピバリルエピネフリンの最終組成物濃度は約0.01〜約0.25(w/v%)の間であり、そして化合物のような本発明の化合物の最終組成物濃度は約0.1〜約1.0(w/v%)である。
【0148】
投与. 本発明の化合物を含んでなる組成物は、当該技術分野において既知であるいくつかの送達形態の1つもしくはそれ以上において患者の眼に送達することができる。好ましい態様において、組成物は点眼剤もしくは洗眼剤において眼に局所的に送達される。別の態様において、組成物は定期的眼内注入によりまたはBSSもしくはBSS PLUS(Alcon USA,Fort Worth,TX)のような洗浄溶液における注入によりまたはBSSもしくはBSS PLUSのような賦形剤におけるベータ遮断薬のあらかじめ調合した溶液を用いることにより眼内の様々な位置に送達することができ
る。この態様は、外科的処置の間もしくは後にIOPスパイクを防ぐための薬剤送達に特に有用性を有する。
【0149】
あるいはまた、組成物は、例えばHerrero−Vanrell,米国特許5,718,922に開示されるように、あらかじめ成形されたもしくはin situで成形されるゲルもしくはリポソームのような、当業者に既知である他の眼科投与形態物において使用することができる。別の態様において、組成物は、コンタクトレンズ(例えば、Lidofilcon B,Bausch & Lomb CW79もしくはDELTACON(Deltafilcon A))もしくは眼の表面上に一時的に存在する他の物体によって処置を必要とする眼の角膜にもしくはそれを通して送達することができる。別の態様において、コラーゲン角膜シールド(例えば、BIO−COR吸収性角膜シールド,Summit Technology,Watertown,Mass.)のような支持体を用いることができる。組成物はまた、浸透圧ポンプ(ALZET,Alza Corp.,Palo Alto,Calif.)からカニューレを通してまたは組成物を含有する徐放カプセル剤(OCCUSENT)もしくは生物分解性ディスク(OCULEX、OCUSERT)の埋め込みによって、眼球への注入により投与することもできる。これらの投与経路は、眼への組成物の連続供給を与えるという利点を有する。
【0150】
眼の内部もしくは後部に製薬学的組成物を送達するために特に適当であるいくつかの他のタイプの送達系が利用可能である。例えば、Parel,et al.,米国特許6,154,671は、イオントフォレシスにより眼球に薬剤を運ぶための装置を開示する。該装置は、角膜の周辺に位置する眼組織に面する少なくとも1つの活性表面電極を含有する、活性薬剤を保持するためのリザーバーを利用する。該リザーバーはまた、患者の部分的に閉じたまぶたと接触する対極板も有する。Wong,et al,米国特許5,869,079は、生物分解性持続放出眼内インプラントにおける親水性および疎水性存在の組み合わせを開示する。さらに、Guo et al.,米国特許6,375,972、Chen et al.,米国特許5,902,598、Wong,et al.,米国特許6,331,313、Ogura et al.,米国特許5,707,643、Weiner,et al.,米国特許5,466,233およびAvery,et al.,米国特許6,251,090は各々、本発明の化合物を含んでなる製薬学的組成物を送達するために用いることができる眼内インプラント装置およびシステムを記述する。
【0151】
上記のように、本発明の化合物のあるものは、眼科より広い分野において有用である。これらの分野には、短時間作用型ベータ遮断薬が典型的に利用される適応症、例えば、血圧を下げること、狭心症の軽減、うっ血性心不全および不整脈の処置ならびに外傷後もしくは術後虚血の処置、ならびに上記に言及される神経保護用途が包含される。眼への送達が要求されない、本発明の組成物の他の投与経路には、当業者により理解されるように、経口もしくは鼻腔内送達;静脈内、皮下および腹腔内注射;ならびに経皮もしくは経粘膜送達を包含することができる。
【0152】
緑内障または本明細書に言及される他の疾病もしくは症状のいずれかの有効な処置のために、当業者は処置する被験体に適切な投与スケジュールおよび投与量を推奨することができる。投与は、組成物が持続送達賦形剤において調合されるか、もしくはインプラントによって送達される場合には、それほど頻繁に行われない可能性がある。眼への局所送達では、投与は必要とされる限り毎日1〜4回行われることが好ましい可能性がある。投与量は、投与当たり1もしくは2滴であることができる。投与スケジュールもまた、活性薬剤濃度により異なることができ、それは使用する特定のベータ遮断薬にそして患者の必要性によって決まることができる。さらに、本発明の化合物を含んでなる組成物は、上記のようにそして当業者に明らかであるように、1つもしくはそれ以上の他の治療薬との組み合わせ処方計画において投与することができる。この態様において、組み合わせ治療は、
2つもしくはそれ以上の異なる治療化合物を単一の製薬学的組成物として一緒に、あるいは異なる製薬学的組成物においてそして/または異なる投与形態物もしくは処方計画において別個に投与することにより実施できることが理解される。
【0153】
本発明の追加の利点および新規な特徴は、限定しているものではない以下の実施例を調べると当業者に明らかになる。
【0154】
[実施例]
全ての化合物は、遊離塩基性もしくは酸性塩形態として製造することができる。一般に、実験製造は他に示されない限り酸性塩を提供する。
【0155】
標準的な遊離塩基性および酸性塩製造方法
遊離塩基の製造のための典型的な方法:0.1gのシュウ酸塩もしくは塩酸塩を50mLの酢酸エチルに懸濁し、そして100mLの飽和炭酸カリウムと1分間振盪した。酢酸エチル層を分離し、そして50mLのブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、乾燥させ、濾過し、そして次の段階においてそのままで使用した。
【0156】
シュウ酸塩の製造のための典型的な方法:20mLの酢酸エチル中の遊離塩基(上記の実験から)の溶液に、酢酸エチル中のシュウ酸の飽和溶液を2のpHが得られるまで滴下して加え、そして塩を結晶化させた。次に、結晶化した塩を濾過し、酢酸エチルで洗浄し、そして乾燥させた後に使用した。
【0157】
塩酸塩の製造のための典型的な方法:20mLの酢酸エチル中の遊離塩基(上記の実験から)の溶液に無水エーテル中の1M塩化水素を2のpHが得られるまで滴下して加え、そして塩を結晶化させた。結晶が得られない場合、溶液が濁ってくるまで無水ジエチルエーテルもしくはイソプロピルエーテルのいずれかを加えた。次に、結晶化した塩を濾過し、酢酸エチルで洗浄し、そして乾燥させた後に使用した。
【0158】
他の酸性塩の製造のための典型的な方法:上記のものと同様の方法を用いて本明細書に記述される他の酸を本発明の化合物と接触させて本発明の化合物の複合体(complex)、または酸性塩もしくは製薬学的に許容しうる塩を生成せしめることができる。例えば、化合物7を硫酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸もしくは酒石酸で個々に処理して対応する塩を生成せしめた。表Aは、上記の方法を用いて製造されるいくつかの酸性塩の数個の限定されない例を提供する。
【0159】
【表1】

【実施例1】
【0160】
化合物の合成
段階1 その塩酸塩としての4,5−ビス−ベンジルオキシ−2−メチル−安息香酸2−(1−メチル−シクロプロパンカルボニルオキシ)−3−{1,1−ジメチル−2−[(テトラヒドロ−フラン−3−カルボニル)−アミノ]−エチルアミノ}−プロピルエステル[中間体]の合成
【0161】
【化24】

【0162】
中間体の合成は、Patil,et al.,米国特許第4,897,417号および第4,966,914号に記述されており、それらの開示はそれらの全部が本明細書に引用することにより本明細書に組み込まれる。窒素雰囲気下で乾式アセトニトリル(130mL)中の4,5−ビス−ベンジルオキシ−2−メチル−安息香酸3−{1,1−ジメチル−2−[(テトラヒドロ−フラン−3−カルボニル)−アミノ]−エチルアミノ}−2−ヒドロキシ−プロピルエステル[中間体(10g、14.7mmole)]の懸濁液に新たに蒸留した1−メチルシクロプロピルカルボニルクロリド(7.15g、60mmole)を加えた。得られる清澄溶液を16時間還流し、そして次に蒸発させて油を生成せしめた。この残留物にn−ヘキサン(100mL)を加えた。混合物を55℃で30分間攪拌し、そして溶液が熱い間にヘキサン層をデカンテーションした。この方法を2回繰り返した。粘性の高い残留物をエーテルで洗浄し、そして真空中で乾燥させて中間体(11g)をその塩酸塩として生成せしめた。NMRスペクトルおよび元素分析(炭素、水素および窒素)は、指定構造と一致した。
【0163】
段階2 4,5−ジヒドロキシ−2−メチル−安息香酸3−{1,1−ジメチル−2−[(テトラヒドロ−フラン−3−カルボニル)−アミノ]−エチルアミノ}−2−(1−メチル−シクロプロパンカルボニルオキシ)−プロピルエステル[化合物
【0164】
【化25】

【0165】
イソプロピルアルコール(300mL)中にその塩酸塩として中間体(段階1、10g)および10%木炭上パラジウム(1g)を含有する混合物を80psiでParr装置において20時間水素化した。反応混合物をセライトのベッド上で濾過し、そして蒸発乾固させた。残留物をエタノール(50mL)に溶解した。エタノール層(pH=7)をエーテル中1Mの塩酸でpH〜2に酸性化し、そして再び蒸発乾固させて白色の泡状物(foam)を生成せしめた。この泡状物を酢酸エチルで処置し、そして30分間攪拌した。次に、この混合物にエーテルを加えて化合物を白色の固体(6.8g)として生成せしめた。NMRスペクトルおよび元素分析(炭素、水素および窒素)は、指定構造と一致した。
【実施例2】
【0166】
化合物の合成
段階1 その塩酸塩としての4,5−ビス−ベンジルオキシ−2−メチル−安息香酸2−(2,2−ジメチル−シクロプロパンカルボニルオキシ)−3−{1,1−ジメチル−2−[(テトラヒドロ−フラン−3−カルボニル)−アミノ]−エチルアミノ}−プロピルエステル[中間体]の合成
【0167】
【化26】

【0168】
窒素雰囲気下で乾式アセトニトリル(35mL)中の中間体(3.66g、5.38mmole)の懸濁液に新たに蒸留した2,2−ジメチルシクロプロピルカルボニルクロリド(2.12g,16mmole)を加えた。得られる清澄溶液を3日間還流し、そし
て次に蒸発乾固させた、残留物をクロロホルム(200mL)に溶解し、そして飽和炭酸カリウムおよびブラインで洗浄した。クロロホルム層を乾燥させ(MgSO)、そして蒸発させた。この混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して遊離塩基形態の中間体1を白色の粉末として生成せしめ、それをアセトンに溶解し、そして2のpHが得られるまでエーテル中1Mの塩酸で酸性化した。溶液が濁ってくるまで追加のエーテルを加えた。上清をデカンテーションすることにより得られる白色の塩を単離し、そして高真空下で乾燥させて中間体を白色のフォーム(900mg)として生成せしめた。NMRスペクトルおよび元素分析(炭素、水素および窒素)は、指定構造と一致した。
【0169】
段階2 4,5−ジヒドロキシ−2−メチル−安息香酸2−(2,2−ジメチル−シクロプロパンカルボニルオキシ)−3−{1,1−ジメチル−2−[(テトラヒドロ−フラン−3−カルボニル)−アミノ]−エチルアミノ}−プロピルエステル[化合物]の合成
【0170】
【化27】

【0171】
中間体の遊離塩基を上記のようにその対応するシュウ酸塩に転化した。イソプロピルアルコール(30mL)中にシュウ酸塩として中間体(200mg)および10%木炭上パラジウム(100mg)を含有する混合物を60psiでParr装置において12時間水素化した。反応の完了は、TLCにより確かめた(中間体:1滴の濃アンモニアを含有する塩化メチレン中5%のメタノールにおけるTLC、RF0.5;化合物、1滴の濃アンモニアを含有する塩化メチレン中10%のメタノール、RF0.3)。反応混合物をセライトのベッド上で濾過し、蒸発乾固させ、そして半固体が形成されるまでエーテルで粉砕した。エーテル層をデカンテーションし、そして半固体を高真空に供して化合物を白色のフォーム(68mg)として得た。NMRスペクトルおよび元素分析(炭素、水素および窒素)は、指定構造と一致した。
【実施例3】
【0172】
化合物の合成
段階1 4,5−ビス−ベンジルオキシ−2−メチル−安息香酸3−{1,1−ジメチル−2−[(テトラヒドロ−フラン−3−カルボニル)−アミノ]−エチルアミノ}−2−(2−メトキシメチル−シクロプロパンカルボニルオキシ)−プロピルエステル[中間体]の合成
【0173】
【化28】

【0174】
窒素雰囲気下で乾式テトラクロロエタン(35mL)中の中間体(1.02g、1.5mmole)の懸濁液に新たに蒸留した2−メトキシメチルシクロプロピルカルボニルクロリド(0.891g、6mmole)を加えた。反応混合物を30分間還流し、そして高真空下で蒸発乾固させた。残留物をトルエンに懸濁し、真空中で蒸発乾固させ、そして得られる残留物を酢酸エチルに溶解し、そして飽和炭酸ナトリウムおよびブラインで洗浄した。有機層を乾燥させ(MgSO)、そして蒸発させた。この混合物をクロロホルム:メタノール:アンモニア(1:19:0.1)を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して遊離塩基形態の中間体を白色の粉末(1.58g)として生成せしめ、それを酢酸エチル(5mL)に溶解し、そしてこれにエーテル(50mL)を加えた。沈降したゴムを単離し、そして真空中で乾燥させてフォーム(0.518g)を生成せしめた。NMRスペクトルおよび元素分析(炭素、水素および窒素)は、指定構造と一致した。
【0175】
段階2 4,5−ジヒドロキシ−2−メチル−安息香酸3−{1,1−ジメチル−2−[(テトラヒドロ−フラン−3−カルボニル)−アミノ]−エチルアミノ}−2−(2−メトキシメチル−シクロプロパンカルボニルオキシ)−プロピルエステル[化合物]の合成(そのシュウ酸塩として)
【0176】
【化29】

【0177】
エチルアルコール(50mL)中にシュウ酸塩として中間体(518mg)および10%木炭上パラジウム(100mg)を含有する混合物を60psiでParr装置において12時間水素化した。反応混合物をセライトのベッド上で濾過し、蒸発乾固させ、そして固体が形成するまでエーテルで粉砕した。エーテル層をデカンテーションし、そして固体を高真空に供して化合物を白色のフォーム(354mg)として得た。NMRスペクトルおよび元素分析(炭素、水素および窒素)は、指定構造と一致した。
【実施例4】
【0178】
化合物12の合成
(S)−4,5−ビス−ベンジルオキシ−2−メチル−安息香酸オキシラニルメチルエステル
【0179】
【化30】

【0180】
窒素雰囲気下で、1−メチル−2−ピロリジノン(80mL)中の4,5−ビス−ベン
ジルオキシ−2−メチル−安息香酸[10、40g、0.11mole]のよく冷えた溶液に水素化ナトリウム(5.5g、油中60%の懸濁液)を加え、そして30分間攪拌した。次に、これに2−(S)−グリシジルノシレート(glycidylnosylate)(11、38.7g、0.15mole、Aldrich Chemical Company,Milwaukee,WI)を加え、そして20時間攪拌した。次に、反応混合物に水(800mL)を加え、そして得られるものを酢酸エチルで抽出し(4x200mL)、ブライン(200mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、そして蒸発乾固させて黄色がかった白色の固体を生成せしめ、それを次に酢酸エチルから再結晶化して12(41.2g、88.7%)を生成せしめた。(TLC、Rf=0.8、塩化メチレン中1.6%のメタノール)。NMRおよびIRは、指定構造と一致した。
【実施例5】
【0181】
化合物14aおよび14bの合成
シュウ酸塩もしくは塩酸塩としての(S)−4,5−ビス−ベンジルオキシ−2−メチル−安息香酸2−ヒドロキシー3−(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチル−エチルアミノ)−プロピルエステル(それぞれ、14aおよび14b)
【0182】
【化31】

【0183】
無水アセトニトリル(4Åの分子ふるい上で乾燥させる)中のエポキシド12(24.66g、0.061mole)およびアミノ−アルコール13(13g、0.146mole)の混合物を48時間還流し、そして減圧下で濃縮乾固させた。得られる残留物を酢酸エチル(300mL)に溶解し、そしてブラインで洗浄し(4x100mL)、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、そして減圧下で蒸発乾固させた。残留物を酢酸エチルに再溶解し、酢酸エチル中シュウ酸で酸性化し、そして結晶化させた。固体を濾過し、そして真空中で乾燥させて20.1g(56.5%)の粗14aを生成せしめた。結晶性固体14a(17.6g)をその遊離塩基形態に転化し、そして5%のメタノール/塩化メチレンを溶離剤として用いてシリカゲルカラム上でクロマトグラフィーにかけて遊離塩基を油として生成せしめ、それをエーテルに溶解し、そしてHCl/エーテルで酸性化し、蒸発乾固させ、そして高真空に置いて14bを白色のフォームとして生成せしめた。NMRおよびIRは、指定構造と一致した。
【実施例6】
【0184】
化合物15の合成
その塩酸塩としての(S)−4,5−ジヒドロキシ−2−メチル−安息香酸2−ヒドロキシ−3−(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチル−エチルアミノ)−プロピルエステル
【0185】
【化32】

【0186】
イソプロパノール(100mL)中の14b(3.0g、9.43mmole)の溶液に10%Pd/C(300mg)を加え、そして70psiでParr水素化シェーカーにおいて6時間水素化した。次に、反応混合物を濾過し、HCl/エーテルで酸性化し、そして減圧下で蒸発させて黄色のゴムを生成せしめた。酢酸エチル(20mL)およびイソプロパノール(10mL)の混合物から結晶化するとこのゴムから表題化合物15(0.8g)が得られた。NMRおよびIRスペクトルならびに元素分析(炭素、水素および窒素)は、指定構造と一致した。
【実施例7】
【0187】
化合物16の合成
(S)−4,5−ビス−ベンジルオキシ−2−メチル−安息香酸3−[2−(2,2−ジメチル−プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチル−エチルアミノ]−2−ヒドロキシ−プロピルエステル
【0188】
【化33】

【0189】
無水アセトニトリル(100mL、4Åの分子ふるい上で乾燥させる)中のアミノ−ジオール14b(6.4g、0.012mole)および塩化ピバロイル(1.9g、0.016mole)の混合物を16時間還流し、そして蒸発乾固させた。残留物をヘキサンで処理し、そしてデカンテーションした。ヘキサン層のデカンテーション後の残留油を200mLの酢酸エチルに溶解し、そして飽和炭酸カリウムで洗浄し、ブラインで洗浄し、そして乾燥させて16をその遊離塩基形態として生成せしめ、そして塩化メチレン中1%のメタノールを用いてシリカゲルカラム上でクロマトグラフィーにかけた。油をHCL/エーテルで酸性化して3.2gをフォームとして生成せしめた。塩化メチレン中5%のメタノールにおけるTLCは、Rf=0.25で単一の均質なスポットを示した。NMRおよびIRは、指定構造と一致した。
【実施例8】
【0190】
化合物17の合成
(S)−4,5−ビス−ジヒドロキシ−2−メチル−安息香酸3−[2−(2,2−ジメチル−プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチル−エチルアミノ]−2−ヒドロキシ−プロピルエステル
【0191】
【化34】

【0192】
酢酸(100mL)中の16(1.0g、1.63mmole)および10%Pd/C(100mg)の混合物を80psiでParr水素化装置において60分間水素化し、濾過し、そして蒸発乾固させ、そして次にトルエンで共蒸発させた。残留物をイソプロパノールに再溶解し、不溶性物質を濾過して分離し、そして溶液を減圧下で濃縮した。得られるゴムをヘキサンで粉砕し、そしてヘキサン層をデカンテーションした。この粉砕方法をエーテルで繰り返し、そしてエーテルをデカンテーションした後に得られる残留物を高真空下で乾燥させて17を白色のフォーム(0.6g、85%)として生成せしめた。
【実施例9】
【0193】
化合物18の合成
(S)−テトラヒドロ−フラン−3−カルボン酸2−[3−(4,5−ビス−ベンジルオキシ−2−メチル−ベンゾイルオキシ)−2−ヒドロキシ−プロピルアミノ]−2−メチル−プロピルエステル(18
【0194】
【化35】

【0195】
無水アセトニトリル(100mL、4Åの分子ふるい上で乾燥させる)中のアミノ−ジオール14b(5.26g、8.92mmole)および3−テトラヒドロフランカルボニルクロリド(1.7g、12.86mmole)の混合物を室温で16時間攪拌し、そして蒸発乾固させた。残留物をエーテルで処理し、そして白色の固体が沈殿した。エーテル上清をデカンテーションし、そして固体をイソプロパノール(20mL)から再結晶化して18(270mg)を白色の結晶性固体として生成せしめた。NMRおよびIRスペクトルならびに元素分析(炭素、水素および窒素)は、指定構造と一致した。
【実施例10】
【0196】
化合物19の合成
(S)−テトラヒドロ−フラン−3−カルボン酸2−[3−(4,5−ジヒドロキシ−2−メチル−ベンゾイルオキシ)−2−ヒドロキシ−プロピルアミノ]−2−メチル−プロピルエステル
【0197】
【化36】

【0198】
イソプロパノール(50mL)中の18(570mg、0.91mmole)および10%Pd/C(100mg)の混合物を80psiでParr水素化装置において60分間水素化し、濾過し、そして蒸発乾固させ、そしてHCl/エーテルで酸性化した。残留物を酢酸エチルで粉砕してゴムを生成せしめた。酢酸エチル層をデカンテーションし、そして黄色のゴムを高真空に供して19を黄色のフォーム(440mg)として生成せしめた。
【実施例11】
【0199】
化合物21の合成
(S)−4,5−ビス−ベンジルオキシ−2−メチル−安息香酸3−(2−tert−ブトキシ−1,1−ジメチル−エチルアミノ)−2−ヒドロキシ−プロピルエステル
【0200】
【化37】

【0201】
無水1−メチル−2−ピロリジノン(4Åの分子ふるい上で乾燥させる)中のエポキシド12(2.47g、6.1mmole)、アミノ−アルコール20(1.62g、6.7mmole)およびトリエチルアミン(1.36mL、13.4mmole)の混合物を80℃で48時間加熱し、そして高真空下で蒸発乾固させた。得られる固体を酢酸エチル(300mL)に懸濁し、そして炭酸ナトリウム、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、そして減圧下で蒸発乾固させた。残留物を酢酸エチルに再溶解し、酢酸エチル中シュウ酸で酸性化し、そして濾過してあらゆる不溶性固体を除いた。エーテルを濾液に加えて固体を生成せしめ、それをイソプロパノールから再結晶化し、濾過し、そして真空中で乾燥させて21(0.9g、1.4mmole)を生成せしめた。NMRおよびIRは、指定構造と一致した。
【実施例12】
【0202】
化合物22の合成
(S)−4,5−ジヒドロキシ−2−メチル−安息香酸3−(2−tert−ブトキシ−1,1−ジメチル−エチルアミノ)−2−ヒドロキシ−プロピルエステル
【0203】
【化38】

【0204】
2−プロパノール(50mL)中の21(820mg、1.25mmole)および10%Pd/C(100mg)の混合物を50psiでParr水素化装置において16時間水素化し、濾過し、蒸発乾固させ、そしてHCl/エーテルで酸性化した。残留物を20mLの酢酸エチルで粉砕してゴムを生成せしめた。酢酸エチル層をデカンテーションした。このプロセスを5回繰り返し、そして得られるゴムを高真空に供して22をフォーム(38mg)として生成せしめた。塩化メチレン中5%のメタノールにおけるTLCは、Rf=0.5で単一の均質なスポットを示した。NMRおよびIRは、指定構造と一致した。
【実施例13】
【0205】
本発明の選択化合物の結合効能
ヒト組み換えアドレナリン作動性ベータ−1アッセイ(放射性リガンド結合)は、放射性リガンドとして[[125I]]シアノピンドロールを用いてFeve,B.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,91,5677,1994により記述される方法に従って行った。結果は、IC50(nM)において表される(表B)。
【0206】
【表2】

【実施例14】
【0207】
眼球刺激の評価
30匹の白ウサギを無作為に5群に分けた。各ウサギに0.9%の食塩水溶液において、50μLの0.0%、0.3%、0.5%、1.0%および2%の試験化合物を10分ごとに1時間(6回の投与)局所的に右眼の結膜嚢に投与した。各ウサギの処置した眼を結膜、眼瞼、虹彩の腫脹、分泌物、発赤、虹彩炎ならびに角膜の混濁および障害を包含する眼球刺激の兆候について調べた。個々のスコアを加えて軽度、中程度もしくは重度の刺激の程度を決定した。眼球観察は、細隙灯を用いて、処置の前、1回目および6回目の点眼後1時間、そして次に1、2、3、4および7日に行った。
【0208】
結果:「化合物」と以下に呼ばれそしてPatil,et al.,米国特許第4,897,417号および第4,966,914号に開示される以下の式の化合物と化合物(実施例1)を比較した。
【0209】
【化39】

【0210】
化合物を局所的に使用した場合、0.9%の食塩水を投与したコントロール群と比較して白ウサギの右結膜嚢に0.3%、0.5%、1.0%および2.0%で10分ごとに6回投与することで眼球刺激は認められなかった。しかしながら、化合物は、1%の濃度で中程度の刺激を示した。
【実施例15】
【0211】
角膜麻酔測定
白ウサギ(N=5)の右眼の結膜嚢における単回点眼後に、角膜麻酔への化合物の0.3%、0.5%、1.0%および2.0%溶液の50μlの単回点眼の効果をコシェ触覚計(ナイロン糸:直径0.12mm、長さ10mm)を用いて測定した。まばたき反射を誘導するために必要な角膜機械的刺激の数により角膜麻酔を評価した。薬剤溶液の効果を滅菌した0.9%のNaClで処理した動物(コントロール群)および0.4%のオキシブプロカイン(Novesine)と比較した。
【0212】
結果:化合物は、0.4%のオキシブプロカインと比較して角膜感受性(局所麻酔活性)を示さず、一方、化合物は1%で完全な角膜感受性喪失を示した。
【実施例16】
【0213】
安定性試験
加速安定性試験を化合物および(実施例2)の0.25%溶液に対して40℃で1、2、3、4、8および12週間行い、そしてHPLC分析によりプロドラッグの消失および親化合物の出現についてモニターした。親化合物(化合物と以下に称する)は、式:
【0214】
【化40】

【0215】
を有する。
【0216】
それぞれの化合物を酢酸バッファー、pH3.5(注射用水中0.018%の酢酸ナトリウム、0.135%の酢酸、0.9%の塩化ナトリウム)に溶解して0.25%の溶液を得た。化合物の安定性は、40℃で1、2、3、4、8および12週間決定した。各時間点での親化合物の濃度ならびにプロドラッグ化合物およびの濃度は、HPLC法により決定した。
【0217】
結果:図1に示されるように、化合物およびと比較した場合に化合物はpH3.5で40℃で最も安定である。化合物の通常の点眼製剤は、室温で少なくとも18ヶ月の推定貯蔵寿命を有し、そして化合物8の製剤は7.9ヶ月の推定貯蔵寿命を有し、一方、化合物は室温で2.6ヶ月のみの推定貯蔵寿命を有する。
【実施例17】
【0218】
眼内生物学的利用能
時間点当たり3匹のウサギを使用した。50μlの試験物質を右および左眼の結膜嚢にマイクロピペットを用いて単回点眼において投与した。ウサギをImalgene1000(ケタミン32mg/kg)およびRompun(キシラジン(xylasine)7.5mg/kg)の筋肉注射で麻酔した。次に、それらを心臓穿刺により大量出血させ(desanguinated)、そしてその後で過剰用量のペントバルビタールで安楽死させた。死亡直後に、眼を顕微解剖して:角膜(C)、房水(AH)および虹彩−毛様体(ICB)を得た。全てのサンプルを−80℃で保存した。房水(AH)サンプルのみHPLCにより分析した。
【0219】
結果:図2において分かるように、化合物は角膜を越えて迅速に吸収され、そして化合物と比較した場合にかなり多量の親化合物に代謝される。プロドラッグ化合物自体のいくらかもまた房水に存在することに留意すべきであり、一方、化合物のレベルはHPLC法の検出限界未満であった。
【0220】
本発明の好ましい態様に多数の変更および改変を行うことができること、そしてそのような変更および改変は本発明の精神からそれることなしに行うことができることを当業者は認識する。従って、添付の請求項は、本発明の真の精神および範囲内に入る全てのそのような同等なバリエーションを含むものとする。
【図面の簡単な説明】
【0221】
【図1】pH3.5、40℃での化合物(−−▲−−)、化合物(−−■−−)および化合物(−−◆−−)の分解パーセントの時間的経過を示すグラフである。
【図2】チモロール(−−■−−)、化合物(−−▲−−)、化合物(−−X−−)ならびに化合物6および7から形成される親化合物(化合物、−−◆−−)の眼内浸透の時間的経過を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

[式中:
およびRは各々独立してH、Wもしくはフェノキシル保護基であり;
は水素、直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルキル、シクロアルキル、アミノ、C〜C10アルコキシ、−NHC(=O)Rまたは−C(=O)N(H)Rであり;
はHもしくはWであり、ただし、R、RおよびRの少なくとも1つはWであり;
はアルキル、アリールもしくはヘテロサイクリルであり;
は直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルキル、シクロアルキル、C〜C10アルコキシアルキル、アミノ、ベンジル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、フラニル、モルホリニル、ピペリジニル、テトラヒドロピラニル、ジオキソラニル、2,2−ジメチルジオキソラニル、ジオキサニル、ピロリル、ピロリジニル、テトラヒドロオキサゾリル、ジヒドロオキサゾリル、フェニル、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシもしくはハロで置換されたフェニル、または少なくとも1つの直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルキルで置換されたシクロアルキルであり;
Wは:
【化2】

であり;そして
各Rは独立してH、直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルキル、または直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルコキシアルキルである]
の化合物、またはその立体異性体、水和物、溶媒和物、酸塩水和物もしくは製薬学的に許容しうる塩。
【請求項2】
およびRが各々独立してHもしくはWである請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式Ia:
【化3】

の請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
がWである請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
およびRが各々Hである請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
がC〜C10アルキルであり、Rがテトラヒドロフラン−3−イルであり、そしてWが:
【化4】

である請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
Wが:
【化5】

である請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
およびRが各々アラルキルである請求項4に記載の化合物。
【請求項9】
が:
【化6】

である請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
置換基の少なくとも1つがH以外である請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
各Rが独立してH、C〜Cアルキルもしくは低級アルコキシアルキルである請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
各Rが独立してH、メチルもしくはCHOCHである請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
各Wが独立して:
【化7】

である請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
各Wが独立して:
【化8】

である請求項5に記載の化合物。
【請求項15】
がHもしくはC〜Cアルキルである請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
がメチルである請求項1に記載の化合物。
【請求項17】
がフラニル、ジヒドロフラニルもしくはテトラヒドロフラニルである請求項1に記載の化合物。
【請求項18】
がテトラヒドロフラン−3−イルである請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
がテトラヒドロフラン−3−イルである請求項3に記載の化合物。
【請求項20】
式II:
【化9】

[式中:
およびRは各々独立してH、Wもしくはフェノキシル保護基であり;
は水素、直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルキル、シクロアルキル、アミノ、C〜C10アルコキシ、−NHC(=O)Rまたは−C(=O)N(H)Rであり;
はアルキル、アリールもしくはヘテロサイクリルであり;
はHもしくはWであり;
Zは−O−もしくは−O(C=O)−であり;
はH、直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルキル、シクロアルキル、C〜C10アルコキシアルキル、アミノ、ベンジル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、フラニル、モルホリニル、ピペリジニル、テトラヒドロピラニル、ジオキソラニル、2,2−ジメチルジオキソラニル、ジオキサニル、ピロリル、ピロリジニル、テトラヒドロ
オキサゾリル、ジヒドロオキサゾリル、フェニル、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシもしくはハロで置換されたフェニル、または少なくとも1つの直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルキルで置換されたシクロアルキルであり;
Wは:
【化10】

であり;
各Rは独立してH、直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルキル、または直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルコキシアルキルであり;そして
は直鎖状もしくは分枝鎖状アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルであり;
ただし:
Zが−O(C=O)−である場合には、RはH以外である]
の化合物、またはその立体異性体、水和物、溶媒和物、酸塩水和物もしくは製薬学的に許容しうる塩。
【請求項21】
がHである式IIの請求項20に記載の化合物。
【請求項22】
およびRが各々独立してHもしくはWである請求項20に記載の化合物。
【請求項23】
、RおよびRが各々Hである請求項20に記載の化合物。
【請求項24】
式II(a):
【化11】

の請求項20に記載の化合物。
【請求項25】
がWである請求項20に記載の化合物。
【請求項26】
およびRが各々Hである請求項25に記載の化合物。
【請求項27】
がC〜C10アルキルであり、Rがテトラヒドロフラン−3−イルであり、そしてWが:
【化12】

である請求項26に記載の化合物。
【請求項28】
Wが:
【化13】

である請求項27に記載の化合物。
【請求項29】
およびRが各々アラルキルである請求項25に記載の化合物。
【請求項30】
が:
【化14】

である請求項25に記載の化合物。
【請求項31】
置換基の少なくとも1つがH以外である請求項20に記載の化合物。
【請求項32】
各Rが独立してH、C〜Cアルキルもしくは低級アルコキシアルキルである請求項20に記載の化合物。
【請求項33】
各Rが独立してH、メチルもしくはCHOCHである請求項20に記載の化合物。
【請求項34】
各Wが独立して:
【化15】

である請求項20に記載の化合物。
【請求項35】
各Wが独立して:
【化16】

である請求項26に記載の化合物。
【請求項36】
がHもしくはC〜Cアルキルである請求項20に記載の化合物。
【請求項37】
がメチルである請求項20に記載の化合物。
【請求項38】
がフラニル、ジヒドロフラニルもしくはテトラヒドロフラニルである請求項20に記載の化合物。
【請求項39】
がテトラヒドロフラン−3−イルである請求項38に記載の化合物。
【請求項40】
Wが:
【化17】

である請求項20に記載の化合物。
【請求項41】
が3−アルキルテトラヒドロフラン−3−イルである請求項1に記載の化合物。
【請求項42】
が3−アルキルテトラヒドロフラン−3−イルである請求項20に記載の化合物。
【請求項43】
式:
【化18】

の請求項1に記載の化合物。
【請求項44】
式:
【化19】

の請求項43に記載の化合物。
【請求項45】
式:
[A]・HX
[式中、Aは請求項43に記載の化合物であり、そしてHXは塩酸、硫酸、マレイン酸、フマル酸、シュウ酸、コハク酸、クエン酸および酒石酸よりなる群から選択される酸である]
の請求項43に記載の化合物の製薬学的に許容しうる塩。
【請求項46】
式IIIaの化合物を生成せしめるのに有効な時間および条件下に、式:
【化20】

[式中:
、RおよびRの少なくとも1つはHである]
の化合物を式W−L〔式中、各Lは独立して脱離基である〕の少なくとも1種の化合物と接触させることを含んでなる、式IIIa:
【化21】

[式中:
およびRは各々独立してH、Wもしくはフェノキシル保護基であり;
は水素、直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルキル、シクロアルキル、アミノ、C〜C10アルコキシ、−NHC(=O)Rまたは−C(=O)N(H)Rであり;
はHもしくはWであり,ただし、R、RおよびRの少なくとも1つはWであり;
はアルキル、アリールもしくはヘテロサイクリルであり;そして
Zは−O−、−O(C=O)−もしくは−NH(C=O)−であり;
はH、直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルキル、シクロアルキル、C〜C10アルコキシアルキル、アミノ、ベンジル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル
、フラニル、モルホリニル、ピペリジニル、テトラヒドロピラニル、ジオキソラニル、2,2−ジメチルジオキソラニル、ジオキサニル、ピロリル、ピロリジニル、テトラヒドロオキサゾリル、ジヒドロオキサゾリル、フェニル、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシもしくはハロで置換されたフェニル、または少なくとも1つの直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルキルで置換されたシクロアルキルであり;
Wは:
【化22】

であり;
各Rは独立してH、直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルキル、または直鎖状もしくは分枝鎖状C〜C10アルコキシアルキルであり;そして
はアルキル、シクロアルキル、アリールもしくはアラルキルであり;
ただし:
Zが−O(C=O)−である場合には、RはH以外であり;そして
Zが−NH(C=O)−である場合には、RはH以外であり、そしてWは:
【化23】

である]
の化合物の製造方法。
【請求項47】
眼科的に許容しうる担体もしくは希釈剤および請求項1に記載の化合物;またはその立体異性体、水和物、溶媒和物、酸塩水和物もしくは製薬学的に許容しうる塩を含んでなる、緑内障、高眼圧症もしくは患者の眼に関連する視神経症を処置するための製薬学的組成物。
【請求項48】
緑内障、高眼圧症もしくは視神経症が開放隅角緑内障として分類される請求項47に記載の組成物。
【請求項49】
点眼剤、洗眼剤もしくは眼軟膏剤として調合される請求項47に記載の組成物。
【請求項50】
眼の表面上に置かれるポリマーディスクもしくはウェハー(wafer)からの投与用に調合される請求項47に記載の組成物。
【請求項51】
眼科的に許容しうる担体もしくは希釈剤および緑内障、高眼圧症もしくは視神経症の発症を改善するか、遅らせるかもしくは防ぐか、またはその症状を軽減するのに治療的に十分な量で請求項1に記載の化合物;またはその立体異性体、水和物、溶媒和物、酸塩水和物もしくは製薬学的に許容しうる塩を含んでなる組成物を患者の眼に投与することを含んでなる、緑内障、高眼圧症もしくは患者の眼と関連する視神経症を処置する方法。
【請求項52】
緑内障、高眼圧症もしくは視神経症が開放隅角緑内障として分類される請求項51に記
載の方法。
【請求項53】
組成物が点眼剤、洗眼剤もしくは眼軟膏剤において投与される請求項51に記載の方法。
【請求項54】
組成物が眼の表面上に置かれるポリマーディスクもしくはウェハーから投与される請求項51に記載の方法。
【請求項55】
眼科的に許容しうる担体もしくは希釈剤および請求項20に記載の化合物またはその立体異性体、水和物、溶媒和物、酸塩水和物もしくは製薬学的に許容しうる塩を含んでなる、緑内障、高眼圧症もしくは患者の眼と関連する視神経症を処置するための製薬学的組成物。
【請求項56】
緑内障、高眼圧症もしくは視神経症が開放隅角緑内障として分類される請求項55に記載の組成物。
【請求項57】
点眼剤、洗眼剤もしくは眼軟膏剤として調合される請求項55に記載の組成物。
【請求項58】
眼の表面上に置かれるポリマーディスクもしくはウェハーからの投与用に調合される請求項55に記載の組成物。
【請求項59】
眼科的に許容しうる担体もしくは希釈剤および緑内障、高眼圧症もしくは視神経症の発症を改善するか、遅らせるかもしくは防ぐか、またはその症状を軽減するのに治療的に十分な量で請求項20に記載の化合物またはその立体異性体、水和物、溶媒和物、酸塩水和物もしくは製薬学的に許容しうる塩を含んでなる組成物を患者の眼に投与することを含んでなる、緑内障、高眼圧症もしくは患者の眼と関連する視神経症の処置方法。
【請求項60】
緑内障、高眼圧症もしくは視神経症が開放隅角緑内障として分類される請求項59に記載の方法。
【請求項61】
組成物が点眼剤、洗眼剤もしくは眼軟膏剤において投与される請求項59に記載の方法。
【請求項62】
組成物が眼の表面上に置かれるポリマーディスクもしくはウェハーから投与される請求項59に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−500359(P2008−500359A)
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−515296(P2007−515296)
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【国際出願番号】PCT/US2005/018350
【国際公開番号】WO2005/115375
【国際公開日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(506171347)オセラ・フアーマシユーチカルズ・インコーポレーテツド (2)
【Fターム(参考)】