説明

眼鏡レンズ保持用バンドおよびその製造方法

【課題】高強度で耐久性に優れると共にレンズ保持性および装着作業性が良好な眼鏡レンズ保持用バンド、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】眼鏡レンズをその周縁から保持するバンドであって、フッ素樹脂モノフィラメントからなり、JIS L1013−1999の規定に準拠し測定した20%伸長時の伸長弾性回復率が80%以上、沸騰水収縮率が2〜6%、かつ引張強度が0.4〜1.2GPaであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼鏡レンズ保持用バンドおよびその製造方法に関する。更に詳しくは、高強力で耐久性に優れると共にレンズ保持性および装着作業性が良好な眼鏡レンズ保持用バンドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の眼鏡レンズを外周全体にわたってリムによって保持する構造に代えて、最近では、軽量化、視野拡大およびデザイン性を高めるための眼鏡の形態として、ハーフリム眼鏡やリムレス眼鏡が開発されている。
【0003】
これらハーフリム眼鏡やリムレス眼鏡は、リムとレンズを保持するバンドから構成されている点に特徴があり、これら形態の眼鏡はレンズ外周側面に凹型の溝を彫り、この外周の凹溝にバンドを嵌合して、このバンドでレンズを吊って固定している。
【0004】
このハーフリム眼鏡やリムレス眼鏡のレンズ保持用バンドとしては、適度な伸びと伸長弾性回復特性を有するナイロンなどからなる合成樹脂線材が使用されている。つまり、この合成樹脂線材の伸長弾性回復特性によって、レンズの収縮や膨張に対応できるようになり、温度変化によってレンズが簡単に外れるという問題もなくなり、またフレーム製造時におけるレンズ装着も、このバンドを伸長させながらレンズを装着するという簡単な作業だけで行うことができる。
【0005】
さらに、合成樹脂線材からなるバンドは、適度な伸びと伸長弾性回復特性を有することから、リムでレンズを固定する枠とは異なり、形態自由度のある眼鏡を構成することができる。
【0006】
従来、レンズ保持用バンドとしてはテグスなどのナイロンモノフィラメントが用いられているが、さらなる耐久性改善を目的として、伸縮弾性を有する超弾性合金線材に合成樹脂を被覆してなる複合線材を、レンズを保持するバンドとした複合材バンド(例えば、特許文献1参照)や、コア層が形状記憶合金の超弾性合金で外層が合成樹脂からなる眼鏡の縁コード(例えば、特許文献2参照)などが知られている。
【0007】
しかしながら、これら超弾性合金からなるバンドをレンズ保持用バンドとして用いた眼鏡の場合には、バンドを十分に伸長させることができないことから、レンズをバンドで緊締状態に保持することが困難であるばかりか、バンドに透明性を得られないことから、眼鏡のデザイン性が制限され、かつ視野拡大の効果が極めて小さいものであった。さらに、バンドを廃棄する際には、金属と樹脂を分離する必要があるためコスト高になるという問題を抱えていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−13107号公報
【特許文献2】特開平9−52292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、高強力で耐久性に優れると共にレンズ保持性および装着作業性が良好な眼鏡レンズ保持用バンドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明によれば、眼鏡レンズをその周縁から保持するバンドであって、フッ素樹脂モノフィラメントからなり、JIS L1013−1999の規定に準拠し、明細書中に記載した方法により測定した20%伸長時の伸長弾性回復率が80%以上、沸騰水収縮率が2〜6%、かつ引張強度が0.4〜1.2GPaであることを特徴とする眼鏡レンズ保持用バンドが提供される。
【0011】
なお、本発明の眼鏡レンズ保持用バンドにおいては、前記フッ素樹脂モノフィラメントがポリフッ化ビニリデンモノフィラメントであることが、好ましい条件として挙げられ、この条件を満たした場合には、更に優れた効果を取得することができる。
【0012】
また、本発明の眼鏡レンズ保持用バンドの製造方法は、メルトフローレート(230℃、10kg)が1.5〜7.0g/10分であるフッ素樹脂を溶融紡糸し、冷却し、引き続き140〜175℃の範囲の温度で5〜7倍の延伸を行い、さらに140〜160℃の温度範囲の乾熱浴中で0.85〜0.95倍の弛緩熱処理を施すことにより、フッ素樹脂モノフィラメントを得ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、以下に説明するとおり、高強力で耐久性に優れると共に、レンズ保持性および装着作業性が良好な眼鏡レンズ用バンドを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】リムレス眼鏡の一例を示す斜視図である。
【図2】ハーフリム眼鏡の一例を示す斜視図である。
【図3】リムレス眼鏡に本発明の眼鏡レンズ保持用バンドを使用してレンズを保持した状態の一例を示す断面構造の概略図である
【図4】ハーフリム眼鏡に本発明の眼鏡レンズ保持用バンドを使用してレンズを保持した状態の一例を示す断面構造の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の眼鏡レンズ保持用バンドについて、図面に従って具体的に説明する。
【0016】
本発明の眼鏡レンズ保持用バンドとは、図1、図2にそれぞれ示すようなリムレス眼鏡1やハーフリム眼鏡6におけるレンズ3を保持するためのバンド2a、2bであって、これら形態の眼鏡はレンズ外周側面に凹型の溝を彫り、この外周の凹溝にバンド2a、2bを嵌合し、バンド端部をリム7、山4a、4b、ヨロイ5の内部でネジ等を用いて押さえ、レンズを吊って固定している。
【0017】
リムレス眼鏡に本発明の眼鏡レンズ保持用バンドを使用してレンズを保持した状態の一例を示すレンズ部断面構造の概略図が図3である。本発明のレンズ保持用バンド2aをレンズ外周側面の凹溝9に嵌合することでレンズ3を保持している。
【0018】
また、図4はハーフリム眼鏡に本発明の眼鏡レンズ保持用バンドを使用してレンズを保持した状態の一例を示すレンズ部断面構造の概略図である。本発明のレンズ保持用バンド2b、2cをレンズ外周側面の凹溝9およびリム凹溝11に嵌合することでレンズ3を保持している。
【0019】
フッ素樹脂モノフィラメントは、強靭性、耐久性、透明性および耐光性などに優れ、さらに屈折率が一般的な眼鏡レンズに近いので、眼鏡レンズ保持用バンドとして使用する場合には、表面反射により眼鏡着用者の視野を阻害することが極めて少ないという特性を有する。
【0020】
本発明の眼鏡レンズ保持用バンドを構成するモノフィラメントに用いるフッ素樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・フッ化ビニリデン共重合体などが挙げられる。これらは単独あるいは混合物を用いても良い。中でも、高い引張強度と適度な伸びを有し、伸長弾性回復特性に優れている点でポリフッ化ビニリデンを好ましく使用することができる。
【0021】
また、フッ素樹脂を本発明のレンズ保持用バンドを構成するモノフィラメントに用いた場合には、耐久性に優れ、さらに太陽光や大気中に長時間暴露されても劣化することはなく、装着後に弾性特性が低下しバンドが切れてレンズが外れやすくなるなどの不具合が起こらないばかりか、紫外線により変色が極めて少ない効果を取得することができる。
【0022】
本発明で使用するフッ素樹脂には、その他として、酸化チタン、酸化ケイ素、炭酸カルシウム、チッ化ケイ素、クレー、タルク、カオリン、ジルコニウム酸などの各種無機粒子や架橋高分子粒子などの粒子類のほか、従来公知の抗酸化剤、金属イオン封鎖剤、イオン交換剤、着色防止剤、耐光剤、包接化合物、各種着色剤、ワックス類、シリコーンオイル、各種界面活性剤類、ポリエステル類、ポリオレフィン類およびポリスチレンなどが添加されたものであってもよい。
【0023】
得られるモノフィラメントにフッ素樹脂の耐久性、耐摩耗性および高い伸長弾性回復特性を保持し、さらに製糸安定性を高めるために、本発明におけるフッ素樹脂モノフィラメントには、フッ化ビニリデン成分を70重量%以上含有することが好ましく、さらに好ましくは90重量%以上である。
【0024】
モノフィラメントの形状は、その用途や特性を満足させるため、繊維軸方向に垂直な断面の形状を円形、楕円形、扁平、正多角形および不定形な形状を含む多角形といかなる形状をも取り得るものであり、必要に応じて芯鞘または海島複合繊維であってもよい。なお。ここで扁平とは楕円もしくは長方形のことを意味するが、数学的に定義される正確な楕円、長方形以外に概ね楕円、長方形またはこれに類似した形状を含み、正多角形とは数学的に定義される正多角形以外に、概ねこれに類似した形状を含むものである。
【0025】
本発明の眼鏡レンズ保持用バンドとしては、直径0.3〜0.7mmの範囲のものを好ましく使用することができる。
【0026】
ここで、本発明におけるモノフィラメントの直径または短径とは、次の定義によるものである。
【0027】
すなわち、直径とは、円形断面糸における直径のことである。
【0028】
一方、短径とは、楕円断面糸、長方形断面糸、正方形断面糸、三角形断面糸、ドッグボーン型断面糸および繭型断面糸などの円形断面糸以外の場合に適用するものであり、楕円断面糸においては、相対する円周を結んだ最も長い直線の中点を通り、相対する円周を結んだ最も短い直線の長さであり、長方形断面糸および正方形断面糸においては、断面の重心をとおり、相対する2辺を結んだ最も短い直線の長さであり、三角断面糸においては三角形の重心を通り、3点の頂点と相対する一辺を結んだ最も短い1本の直線の長さであり、ドッグボーン型断面糸および繭型断面糸においては、中央の最もくびれた(細い)部分の相対する2辺を結んだ最も短い直線である。
【0029】
眼鏡レンズ保持用バンドにおいては、高引張強度で、使用中に鋭利なものなどとの擦過に対する耐摩耗性に優れることが要求される。
【0030】
本発明の眼鏡レンズ保持用バンドを構成するフッ素樹脂モノフィラメントの高引張強度と優れた耐摩耗性の両方を同時に達成するためには、メルトフローレート(230℃、10kg)が1.5〜7g/10分、好ましくは2〜6g/10分であるフッ素樹脂を使用することが有効である。
【0031】
フッ素樹脂のメルトフローレートが7.0g/10分を超える場合は引張強度および耐摩耗性が低下し、1.5g/10分を下回るような高粘度フッ素樹脂の場合には、フッ素樹脂の流動性が低く、高温で紡糸する必要が生じ、結果として紡糸パック内で熱分解が発生しやすくなり、製糸安定性が低下する傾向にある。
【0032】
ここで、メルトフローレートとは、ASTM D1238に準拠して、230℃、荷重10kgの条件下で測定した値であり、10分あたりの流出ポリマー量(g)で表される。
【0033】
本発明の眼鏡レンズ保持用バンドを構成するフッ素樹脂モノフィラメントは、JIS L1013−1999の規定に準じて測定した引張強度が0.4〜1.2GPa、20%伸長時の伸長弾性回復率が80%以上、好ましくは85%以上、沸騰水収縮率が2〜6%の範囲である場合に、眼鏡レンズ保持用バンドとして使用するのに最適な効果を発現する。
【0034】
なお、上述した引張強度が0.4GPa未満の場合は、強度不足のため、レンズ装着時にバンド切れを発生しやすい傾向にあるため不適である。また、1.2GPaを超えると、モノフィラメント内部の配向、結晶化が進みすぎるため、伸長弾性回復特性が低下する傾向があり装着作業性に劣るものとなる。引張強度が0.4〜1.2GPaの範囲にある場合において、伸長弾性回復率が80%以上となりレンズ装着性が良好となる。
【0035】
また、沸騰水収縮率が2%を下回る場合は、レンズ装着後のバンドの伸びによりレンズが脱落しやすくレンズ保持性に劣り、また逆に6%を超える場合には、浴室、サウナなどの高温環境下で連続使用したときのバンドの収縮率が高すぎるために、眼鏡本体を変形、破損させやすく実生活での使用に適さない。
【0036】
次に、本発明のレンズ保持用バンドを構成するフッ素樹脂モノフィラメントの製造方法について詳細を説明する。
【0037】
本発明におけるフッ素樹脂モノフィラメントを製造するに際しては、一般に公知の紡糸方法を適用することができ、例えば、1軸または2軸のエクストルーダーのような混練押出機、あるいはプレッシャーメルター型などの溶融紡糸機を使用することができる。
【0038】
例えば、1軸のエクストルーダー型溶融紡糸機を使用する場合は、予め前乾燥したフッ素樹脂を溶融紡糸機に供給し、溶融紡糸機内で溶融混練した後、紡糸口金孔から溶融したフッ素樹脂を押し出す。
【0039】
フッ素樹脂は加熱により分解ガスを発生しやすいポリマであるため、分解ガスに起因するフィッシュアイ状欠陥の少ないモノフィラメントを得るためには、溶融紡糸する際の温度設定は、用いるフッ素樹脂の融点よりも40〜100℃高い温度で溶融混練して押し出すことが好ましい。
【0040】
次に、押し出された溶融物は、引き続き冷却媒体中に導かれて冷却固化される。なお、冷却媒体としては、例えば水やポリエチレングリコールなどを挙げることができるが、モノフィラメントの表面から容易に除去でき、化学的、物理的に本質的な変化を与えないものであれば特に限定しない。
【0041】
そして、冷却固化された未延伸糸は、モノフィラメントとして必要な強度を得るために、加熱1段延伸または多段延伸される。この際に使用される熱媒体についても、空気、温水、蒸気、ポリエチレングリコール、グリセリンおよびシリコーンオイルなどが挙げられるが、モノフィラメントの表面から容易に除去でき、化学的、物理的に本質的な変化を与えないものであれば特に限定しない。
【0042】
また、延伸条件については、使用するフッ素樹脂によって異なるが、温度範囲140〜175℃、総合延伸倍率5〜7倍で延伸することが、フッ素樹脂モノフィラメントとして十分な強度を得る上で好ましい。ここでいう総合延伸倍率は、1段目の延伸倍率と再延伸時の延伸倍率との積である。
【0043】
延伸温度が140℃未満では得られるモノフィラメントの引張強度が低下し、逆に175℃を超えると、得られるモノフィラメントの引張強度と伸長弾性回復率が低下し、沸騰水収縮率が上昇するため好ましくない。また、延伸倍率が5倍未満では得られるモノフィラメントの引張強度が低下し、逆に7倍を超えると、得られるモノフィラメントの伸長弾性回復率および沸騰水収縮率が低下するため好ましくない。
【0044】
1段、多段いずれのプロセスにおいても延伸に続いて乾熱浴中で弛緩熱処理されるが、その温度は140〜160℃の温度範囲が好ましく、その弛緩熱処理倍率は0.85〜0.95倍、特に0.85〜0.90倍が好ましい。
【0045】
この弛緩熱処理により、延伸工程で生じたモノフィラメント内部の不安定構造(横方向の歪み、伸びの低下、クラック)が是正される。この弛緩熱処理後、仕上げ油剤を付着して巻き取る。
【0046】
この場合に、弛緩熱処理倍率が0.85倍未満では、得られるモノフィラメントの伸長弾性回復率が低下するとともに沸騰水収縮率が上昇し、逆に0.95倍を超えると、製糸不安定となり目的とするモノフィラメントの取得が困難になるため好ましくない。
【0047】
このようにして得られるフッ素樹脂モノフィラメントは、高強力で耐久性に優れることから、眼鏡レンズ保持用バンドとして極めて有用である。
【0048】
以上説明したように、本発明の眼鏡レンズ保持用バンドは、フッ素樹脂モノフィラメントからなり、20%伸長時の伸長弾性回復率が80%以上、沸騰水収縮率が2〜6%、かつ引張強度が0.4〜1.2GPaである場合に、高強度で耐久性に優れると共にレンズ保持性および装着作業性が良好となる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明の眼鏡レンズ保持用バンドについて実施例に基づいて説明する。本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0050】
また、実施例における眼鏡レンズ保持用バンドの評価は以下の方法で行った。
【0051】
[モノフィラメントの引張強度]
JIS L1013−1999に準じて、測定試料を20℃、65%RHの温湿度調整室で24時間放置した後、引張試験機(オリエンテック社製テンシロンRTM500型)を用い、試長:250cm、引張速度300mm/分の条件で測定した。その値を測定試料の断面積で割り返し、得られた値を引張強度とした(単位:GPa)。
【0052】
[モノフィラメントの伸長弾性回復率]
JIS L1013−1999に準じ、測定試料を20℃、65%RHの温湿度調整室で24時間放置した後、引張試験機(オリエンテック社製テンシロンRTM500型)を用い、試長:250mm、引張速度300mm/分の条件で、試長間隔の20%まで引き伸ばし、1分間放置後に同じ速度で除重し、3分間放置後に再び同じ速度で一定伸びまで引き伸ばし、記録した荷重−伸長曲線から残留伸びを測り、測定回数5回の平均値から次の式によって伸長弾性回復率を算出した(単位:%)。
E=(L−L1)/L×100
E:伸長弾性回復率(%)
L:20%伸長時の伸び(mm)
L1:残留伸び(mm)
【0053】
[沸騰水収縮率]
JIS L1013−1999に準じて、測定試料を500mmの長さに切断して沸騰水中にフリーの状態で30分間浸漬した後、20℃、65%RHの温湿度調整室に16時間放置してから、処理後の試料長を測定する。測定回数2回の平均値から次の式によって沸騰水収縮率を算出した(単位:%)。
Y=(500−X)/500×100
Y:沸騰水収縮率(%)
X:処理後の試料長(mm)
【0054】
[装着作業性]
眼鏡レンズ保持用バンドの装着作業性について、以下の2段階で評価を行った。
○:繰り返し10回のハーフリム眼鏡のレンズ装着作業を行った場合、作業中にバンド切断がなかった。
×:繰り返し10回のハーフリム眼鏡のレンズ装着作業を行った、作業中にバンド切断が1回以上発生した。
【0055】
[レンズ保持性]
眼鏡レンズ保持用バンドのレンズ保持性について、以下の2段階で評価を行った。
○:眼鏡レンズ保持用バンドでレンズを装着したハーフリム眼鏡を、60℃、80%RHの温湿度調整室で24時間処理してから、引き続き20℃、65%RHの温湿度調整室に24時間放置後のハーフリム眼鏡の状態を評価した。同一のハーフリム眼鏡を用いて連続3回の繰り返し評価を行い、レンズの脱落、バンドの断線およびリムの変形がなかった。
×:眼鏡レンズ保持用バンドでレンズを装着したハーフリム眼鏡を、60℃、80%RHの温湿度調整室で24時間処理してから、引き続き20℃、65%RHの温湿度調整室に24時間放置後のハーフリム眼鏡の状態を評価した。同一のハーフリム眼鏡を用いて連続3回の繰り返し評価を行い、レンズの脱落、バンドの断線およびリムの変形のいずれかが1回以上発生した。
【0056】
[実施例1]
メルトフローレート5g/10分のポリフッ化ビニリデン原料(ソルベイソレクシス社製 SOLEF1012)を1軸型エクストルーダー溶融押出し機に連続供給して、250〜270℃の温度で溶融混錬した後、紡糸口金を通して紡出し、さらに60℃の冷却水中で冷却固化せしめた。
【0057】
次に、冷却固化された未延伸糸を165℃の乾熱浴中で総合延伸倍率6倍となるように延伸し、さらに155℃の乾熱浴中で0.9倍の弛緩熱処理を施すことにより、直径0.55mmの眼鏡レンズ保持用バンドを作成した。このようにして得られた眼鏡レンズ保持用バンドの評価結果を表1に示した。
【0058】
[実施例2]
延伸温度を150℃とした以外は、実施例1と同じ条件で直径0.55mmの眼鏡レンズ保持用バンドを作成した。このようにして得られた眼鏡レンズ保持用バンドの評価結果を表1に示した。
【0059】
[実施例3]
総合延伸倍率を6.5倍とした以外は、実施例1と同じ条件で直径0.55mmの眼鏡レンズ保持用バンドを作成した。このようにして得られた眼鏡レンズ保持用バンドの評価結果を表1に示した。
【0060】
[実施例4]
弛緩熱処理温度を145℃とした以外は、実施例1と同じ条件で直径0.55mmの眼鏡レンズ保持用バンドを作成した。このようにして得られた眼鏡レンズ保持用バンドの評価結果を表1に示した。
【0061】
[実施例5]
弛緩熱処理倍率を0.88倍とした以外は、実施例1と同じ条件で直径0.55mmの眼鏡レンズ保持用バンドを作成した。このようにして得られた眼鏡レンズ保持用バンドの評価結果を表1に示した。
【0062】
[実施例6]
メルトフローレート2.9g/10分のポリフッ化ビニリデン原料(ソルベイソレクシス社製 SOLEF6013)を1軸型エクストルーダー溶融押出し機に連続供給して、250〜270℃の温度で溶融混錬した後、紡糸口金を通して紡出し、さらに60℃の冷却水中で冷却固化せしめた。
【0063】
次に、冷却固化された未延伸糸を165℃の乾熱浴中で総合延伸倍率6倍となるように延伸し、さらに155℃の乾熱浴中で0.9倍の弛緩熱処理を施すことにより、直径0.55mmの眼鏡レンズ保持用バンドを作成した。このようにして得られた眼鏡レンズ保持用バンドの評価結果を表1に示した。
【0064】
[実施例7]
メルトフローレート6.5g/10分のポリフッ化ビニリデン原料(住友3M社製 ダイニオン1012/0180)を1軸型エクストルーダー溶融押出し機に連続供給して、250〜270℃の温度で溶融混錬した後、紡糸口金を通して紡出し、さらに60℃の冷却水中で冷却固化せしめた。
【0065】
次に、冷却固化された未延伸糸を165℃の乾熱浴中で総合延伸倍率6倍となるように延伸し、さらに155℃の乾熱浴中で0.9倍の弛緩熱処理を施すことにより、直径0.55mmの眼鏡レンズ保持用バンドを作成した。このようにして得られた眼鏡レンズ保持用バンドの評価結果を表1に示した。
【0066】
[比較例1]
延伸温度を180℃とした以外は、実施例1と同じ条件で直径0.55mmの眼鏡レンズ保持用バンドを作成した。このようにして得られた眼鏡レンズ保持用バンドの評価結果を表1に示した。
【0067】
[比較例2]
延伸温度を130℃とした以外は、実施例1と同じ条件で直径0.55mmの眼鏡レンズ保持用バンドを作成した。このようにして得られた眼鏡レンズ保持用バンドの評価結果を表1に示した。
【0068】
[比較例3]
総合延伸倍率を4.0倍とした以外は、実施例1と同じ条件で直径0.55mmの眼鏡レンズ保持用バンドを作成した。このようにして得られた眼鏡レンズ保持用バンドの評価結果を表1に示した。
【0069】
[比較例4]
総合延伸倍率を8.0倍とした以外は、実施例1と同じ条件で直径0.55mmの眼鏡レンズ保持用バンドを作成した。このようにして得られた眼鏡レンズ保持用バンドの評価結果を表1に示した。
【0070】
[比較例5]
弛緩熱処理倍率を0.98倍とした以外は、実施例1と同じ条件で直径0.55mmの眼鏡レンズ保持用バンドを作成した。このようにして得られた眼鏡レンズ保持用バンドの評価結果を表1に示した。
【0071】
[比較例6]
弛緩熱処理倍率を0.80倍とした以外は、実施例1と同じ条件で直径0.55mmの眼鏡レンズ保持用バンドの作成を試みたが、製糸不安定のため眼鏡レンズ保持用バンドの作成が不可であった。
【0072】
[比較例7]
メルトフローレート0.7g/10分のポリフッ化ビニリデン原料(ソルベイソレクシス社製 SOLEF1015)を1軸型エクストルーダー溶融押出し機に連続供給して、250〜270℃の温度で溶融混錬した後、紡糸口金を通して紡出し、さらに60℃の冷却水中で冷却固化せしめた。
【0073】
次に、冷却固化された未延伸糸を165℃の乾熱浴中で総合延伸倍率6倍となるように延伸し、さらに155℃の乾熱浴中で0.9倍の弛緩熱処理を施すことにより、直径0.55mmの眼鏡レンズ保持用バンドの作成を試みたが、製糸不安定のため眼鏡レンズ保持用バンドの作成が不可であった。
【0074】
[比較例8]
メルトフローレート8.0g/10分のポリフッ化ビニリデン原料(ソルベイソレクシス社製 SOLEF6008)を1軸型エクストルーダー溶融押出し機に連続供給して、250〜270℃の温度で溶融混錬した後、紡糸口金を通して紡出し、さらに60℃の冷却水中で冷却固化せしめた。
【0075】
次に、冷却固化された未延伸糸を165℃の乾熱浴中で総合延伸倍率6倍となるように延伸し、さらに155℃の乾熱浴中で0.9倍の弛緩熱処理を施すことにより、直径0.55mmの眼鏡レンズ保持用バンドを作成した。このようにして得られた眼鏡レンズ保持用バンドの評価結果を表1に示した。
【0076】
【表1】

【0077】
表1の結果から分かるように、本発明の眼鏡レンズ保持用バンドは、高い引張強度を有し、装着作業性に優れるとともに、眼鏡使用時のレンズ保持性にも優れ、実用性の高いものであった。
【0078】
一方、本発明を満たさない眼鏡レンズ保持用バンドおよびそのバンドを用いてレンズを装着した眼鏡(比較例1〜5および8)では、装着作業性は優れていてもレンズ保持性が劣るなど、装着作業性、レンズ保持性の2つを同時に満足する眼鏡レンズ保持用バンドは得られず、実用性の低いものであった。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明によれば、高強度で耐久性に優れると共にレンズ保持性および装着作業性が良好な眼鏡レンズ用バンドを得ることができるため、眼鏡業界に貢献するところが極めて大きい。
【符号の説明】
【0080】
1 リムレス眼鏡
2a レンズ保持用バンド
2b レンズ保持用バンド
2c レンズ保持用バンド
3 レンズ
4a 山
4b 山
5 ヨロイ
6 ハーフリム眼鏡
7 リム
8 リムレス眼鏡レンズ部断面
9 レンズ凹溝
10 ハーフリム眼鏡レンズ部断面
11 リム凹溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼鏡レンズをその周縁から保持するバンドであって、フッ素樹脂モノフィラメントからなり、JIS L1013−1999の規定に準拠し、明細書中に記載した方法により測定した20%伸長時の伸長弾性回復率が80%以上、沸騰水収縮率が2〜6%、かつ引張強度が0.4〜1.2GPaであることを特徴とすることを特徴とする眼鏡レンズ保持用バンド。
【請求項2】
前記フッ素樹脂モノフィラメントがポリフッ化ビニリデンモノフィラメントであることを特徴とする請求項1に記載の眼鏡レンズ保持用バンド。
【請求項3】
メルトフローレート(230℃、10kg)が1.5〜7.0g/10分であるフッ素樹脂を溶融紡糸し、冷却し、引き続き140〜175℃の範囲の温度で5〜7倍の延伸を行い、さらに140〜160℃の温度範囲の乾熱浴中で0.85〜0.95倍の弛緩熱処理を施すことにより、フッ素樹脂モノフィラメントを得ることを特徴とする請求項1または2に記載の眼鏡レンズ保持用バンドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−102905(P2011−102905A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−257843(P2009−257843)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(000219288)東レ・モノフィラメント株式会社 (239)
【出願人】(307025090)岡崎合繊株式会社 (1)
【Fターム(参考)】