説明

着用型薬剤拡散装置

【課題】モータ、電池を使用せずに多くの薬剤を確実に揮散して大気に拡散することができる着用型薬剤拡散装置とする。
【解決手段】薬剤拡散器具1を着用具2で身体に着用して使用するようにし、この薬剤拡散器具1は器具本体3の空間部3aに薬剤4と回転錘5を取付け、身体が動くことで回転錘5が回転して薬剤4の薬剤が揮散し、その揮散した薬剤が空気流通口6から大気に拡散するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間、家畜やペット等の動物などの身体に着用して、殺虫剤、忌避剤、芳香剤、消臭剤、除菌剤などの揮散性の薬剤を身体の周囲に拡散し、人間などの身体の周りに寄る害虫を避けたり、香りでリラックスしたりする着用型薬剤拡散装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に着用型の薬剤拡散装置が開示されている。
この装置は、本体内にモータでファンを回転する送風機と薬剤保持体と電池を設けて送風機を駆動することで吸込口から放出口に空気が流通し、その放出口から放出される空気とともに薬剤保持体の薬剤が大気に拡散される装置本体と、この装置本体に取付けた着用バンドを備え、その着用バンドによって装置本体を人体、動物の体などの身体に着用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−24161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した従来の装置は、モータでファンを回転する送風機と、そのモータ用の電源となる電池を備えているので、そのモータ、電池のために重量が重く、装置本体が大きいから、身体に着用して使用する装置としては好ましくはない。
【0005】
また、電源として電池が使用され、電池は寿命がくると交換しなければならず、その交換作業の面倒さ、また費用もかかり経済的でない。また、寿命がきた電池はゴミとして廃棄処理問題がある。さらに電池は有害ゴミとなり環境問題を発生させる。
【0006】
前述のことを解決するには、送風機を使用せずに薬剤保持体から薬剤を自然揮散させ、モータ、電池を必要としないようにすれば良い。
しかし、前述のように薬剤保持体から薬剤を自然揮散するだけでは、その薬剤の揮散量が少なく、実用的ではない。
【0007】
本発明の目的は、モータ、電池を使用せずに多くの薬剤を確実に揮散して大気に拡散することができる着用型薬剤拡散装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、薬剤拡散器具1と、この薬剤拡散器具1を身体に着用する着用具2を備え、
前記薬剤拡散器具1は、器具本体3の空間部3a内に薬剤4と、回転錘5を取付けると共に、その器具本体3は空気流通口6を有し、
前記回転錘5は、器具本体3が動くことで回転し、その回転錘5の回転で空間部3a内の空気が撹拌して薬剤4の薬剤が揮散し、その揮散した薬剤が空気流通口6から大気に拡散するようにしたことを特徴とする着用型薬剤拡散装置である。
【0009】
本発明においては、着用具2と器具本体3を、その器具本体3の裏面3bが身体に向かうように着用される構成とし、
前記空気流通口6は器具本体3の裏面3bに形成して身体に向けて空気が流れるようにできる。
【0010】
このようにすれば、身体に着用して使用する時に効率良く身体の回りに薬剤を拡散できる。
また、屋外で使用する時でも薬剤の揮散に風の影響を受け難く、薬剤の揮散が安定、かつ均一に行われ、薬剤の揮散量を一定として一定量の薬剤を大気に拡散することができる。
【0011】
本発明においては、回転錘5は撹拌用フィン17を有しているものにできる。
【0012】
このようにすることで、回転錘5の回転によって空間部3a内の空気を効率良く撹拌できるから、薬剤4により多くの空気が触れて多量の薬剤を揮散できる。
したがって、より多くの薬剤を大気に拡散できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、身体に着用して身体が動くことで回転錘5が回転し、それによって薬剤4から薬剤が揮散して大気に薬剤を拡散できる。
したがって、モータ、電池を使用せずに多くの薬剤を確実に揮散して大気に拡散できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す平面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態を示す断面図である。
【図4】上部本体の底面図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態を示す断面図である。
【図6】本発明の第4の実施の形態を示す断面図である。
【図7】本発明の第5の実施の形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の第1の実施の形態を図1、図2に基づいて説明する。
薬剤拡散器具1と、この薬剤拡散器具1を人間、動物などの身体に着用する着用具2で着用型薬剤拡散装置としてある。
前記薬剤拡散器具1は、器具本体3と、この器具本体3の空間部3a内に設けた薬剤4と回転錘5を備え、前記器具本体3には空気流通口6が形成してある。
前記回転錘5は、器具本体3が動くことで回転するように回転可能に取付けてあると共に、その回転錘5が回転することで器具本体3の空間部3a内の空気が撹拌されて空気流通口6から空気が出入するようにしてある。
前記薬剤4は、空間部3a内の空気が撹拌することで、その空気が薬剤4に触れて薬剤を揮散する。
前記揮散した薬剤は空気と共に空気流通口6から大気に拡散される。
このようであるから、着用具2で薬剤拡散器具1を身体に着用することで、その身体が動くことで回転錘5が回転し、薬剤4から揮散した薬剤が空気流通口6から大気に拡散することができる。
したがって、モータ、電池を使用せずに多くの薬剤を確実に揮散して大気に拡散することができる。
しかも、モータ、電池を用いていないので軽量とすることが可能で、着用型薬剤拡散装置として好ましい。
【0016】
前記器具本体3と着用具2は、その器具本体3の裏面3bが身体に向かうように着用される構成としてある。
前記空気流通口6は器具本体3の裏面3bに形成されて身体に向けて空気が流れるようにしてある。
前記器具本体3の空気流通口6以外の部分は閉塞されて、空間部3aは空気流通口6のみで外部に開口している。
例えば、器具本体3の表面3c、周面3dは閉塞されている。
【0017】
このようであるから、身体に着用して使用する時に、揮散した薬剤は空気流通口6から身体に向けて拡散されるので、効率良く薬剤を身体の回りに拡散できる。
【0018】
また、大気中の風(空気の流れ)は器具本体3の表面3c、周面3dに主と当たり、裏面3bにはほとんど当たることがないので、その風によって空気流通口6から空間部3a内に空気が入り込むことがほとんどなく、風の影響によって薬剤4から薬剤が揮散することがほとんどない。
また、器具本体3の空間部3a内は、風の影響をほとんど受けないことから余分な空気の流れが起こらず、回転錘5の回転だけで空気が撹拌されるので薬剤の揮散がたえず安定かつ均一であり、使用する日時毎で揮散する薬剤量が大きく変わらない。また、風による飛散がないので無駄になる薬剤ロスも少ない。
したがって、屋外で使用する時でも風の影響を受け難く、薬剤4からの薬剤の揮散量も大きく変わらず、いつも一定量の薬剤を大気に拡散することができる。また、飛散による無駄になる薬剤も少ない。
【0019】
要するに、身体に着用して使用する着用型薬剤拡散装置で重要なことは、基本的には屋外で使用するものであること、またその効能範囲は、主として着用部位の周りや身体の周りであることである。
すなわち屋外の使用環境は、通常、風(空気の流れ)があり、風の強弱によって薬剤の拡散範囲が大きく作用される。また、効能範囲外に飛散する。そのために無駄になる薬剤が多い。
また、モータ、電池を用いない本発明の装置で重要なことは、モータ、電池を用いる装置に比較して回転錘の回転力が弱いこと、また回転が不規則であることである。
すなわち薬剤の拡散範囲が狭く、薬剤の揮散に風の影響を受け易い。そのために薬剤の揮散(量)が不安定である。
【0020】
そこで、前述のように風に当たりやすい器具本体3の表側である表面3c、周面3dを閉塞することで、風を入り難くしかつ表側に飛散する無駄な薬剤をなくすと共に、空気流通口6を身体の着用側である器具本体3の裏側の裏面3bに形成することで、揮散した薬剤の全てを身体の周りに拡散できるようにした。さらに、前述のように空気流通口6を器具本体3の裏側の裏面3bに形成することで空間部3a内に空気が入り難くなり、いつも揮散する薬剤量が変わらず、一定量の薬剤を大気に拡散するように、薬剤の揮散に風の影響を受け難くした。
【0021】
なお、屋内で使用するのであれば、空気流通口6は器具本体3の任意の位置、例えば表面3c、周面3dに形成することができる。
この場合、空気流通口6を両面に形成する必要はなく、外部からの風の影響を少なくする上で、表面3c、又は周面3dの一面だけに形成することが好ましい。
【0022】
次に、各部の具体形状を説明する。
前記器具本体3は、下部本体10に上部本体11を着脱自在に連結して空間部3aを有する形状である。
前記下部本体10は底面板10aと筒状体10bで上面が開口した箱形状で、その筒状体10bに空気流通口6が周方向に間隔を置いて複数形成してある。
前記上部本体11は上面板11aと筒状体11bで下向き皿形状で、その筒状体11bが前記筒状体10bに着脱自在に嵌合して連結してある。
【0023】
前記薬剤4は薬剤取付部、例えば下部本体10の底面板10aの上面に形成した環状凹部12に着脱自在に嵌め込んで取付けてある。
前記回転錘5は、回転軸13にほぼ半円形プレート14を取付け、そのプレート14の外周縁に重り15が取付けてある。
この重り15を取付けたことで回転錘5の遠心力が大きくなり、回転錘5の回転力が大きくなる。
前記プレート14には複数の開口部16が形成されていると共に、上面と下面に撹拌用フィン17が複数設けてある。
前記回転軸13が下部本体10の底面板10aと上部本体11の上面板11aに亘って回転自在に支承してある。
【0024】
このようであるから、回転錘5は器具本体3が動くことでスムーズに回転する。
また、回転錘5が回転することで、上下の撹拌用フィン17で空間部3a内の空気を効率良く撹拌できる。
また、上部本体11を取り外すと共に、回転錘5を取り外しすることで、薬剤4を交換できる。
【0025】
前記着用具2は、身体に巻きつけて使用するものとしてある。
例えば、器具本体3の裏面3bにバンド2aの長手方向中間部を取付け、そのバンド2aの長手方向両端部に相互に係着、離脱する雄テープ片2b、雌テープ片2cを取付ける。
そしてバンド2aを身体(腕など)に巻きつけて雄テープ片2bと雌テープ片2cを係着することで取付けする。
前記バンド2aは一側バンドと他側バンドに分割し、器具本体3にピン等を利用して回転自在に連結しても良いし、器具本体3に一体的に設けても良い。
また、雄テープ片2b、雌テープ片2cの代わりにバックルタイプとしても良い。
【0026】
前記着用具2は、人間、動物などの身体に吊り下げて着用するものであっても良い。
例えば、器具本体3にフックを取付け、このフックを人間の腰のベルトに引っかけて吊り下げて着用する。
【0027】
前述の実施の形態では、回転錘5の回転軸13を下部本体10と上部本体11で回転自在に支承したが、下部本体10のみで回転自在に支承しても良いし、上部本体11のみで回転自在に支承しても良い。
また、器具本体3の表裏中間に支持部材を設け、この支持部材でのみ回転軸13を回転自在に支承しても良い。
【0028】
例えば、図3、図4に示すように、支持部材20を軸支持部21に複数の支持部22を放射状に設けた形状とし、その各支持部22を上部本体11に取付ける。
前記上部本体11の筒状体11bに周方向に向かう支持溝23とこの支持溝23の周方向一端寄りを筒状体11bの下面に開口する縦溝24を形成し、支持部22を縦溝24から挿入して周方向に回転移動することで支持溝23に嵌まり合うことによって支持部材20を取付ける。
【0029】
前記回転錘5の回転軸13を支持部材20の軸支持部21に回転自在に支持し、回転錘5を上部本体11に回転可能に取付ける。
【0030】
このようにすれば、着用具2を備えた下部本体12から上部本体11を取り外すことで薬剤4を交換することができる。
なお、回転軸13を支持部材20と上部本体11又は下部本体12とで支承することもできる。
【0031】
前述の実施の形態では支持部材20の支持部22は4つとして十文字形状としたが、その支持部22は、2つでも良いし、3つでも良いし、5つ以上でも良い。
また、支持部材20は円板形状で、複数の穴を有するものとしても良い。
【0032】
前述の各実施の形態では回転錘5を半円形状としたが、これに限ることはなく、任意の形状とすることができる。
例えば、扇形状。回転軸の回りに扇形部材を一対相対向して設けたほぼつづみ形状。3つの扇形部材を回転軸の回りに回転方向に等間隔で設けた形状などとすることができる。
【0033】
前記回転錘5は、外周全長に重り15を有しているが、外周縁の一部分にのみ重りを設けても良い。
また、回転錘5はプレート14の上下面に撹拌用フィン17を有しているが、上面のみ、下面のみに設けても良い。
また、プレート14の上下面の一方に撹拌用フィン17を設ける場合、薬剤4に対向するプレート14の面に設けることが好ましい。
また、上下面に設けた撹拌用フィン17の形状、大きさが同一であるが、形状、大きさを異なる撹拌用フィン17を設けても良い。
また、撹拌用フィン17はプレート14の外周縁にのみ下向き、又は上向きに設けても良い。
いずれにしても、回転錘5が回転することで空間部3a内の空気が撹拌されて薬剤4の表面に沿って空気の流れが発生するようにすれば良い。
【0034】
図3では、薬剤取付部が環状凹部12としてあるが、その薬剤取付部は下部本体10の底面板10aの中央に設けた凸部としても良い。この場合には薬剤4の中央部に凸部が嵌合する穴を形成する。
【0035】
前述の各実施の形態では上部本体11を外して薬剤4を交換するようにしたが、器具本体3の裏面側から薬剤を着脱自在に取付けるようにしても良い。
例えば、図5に示すように、下部本体10の底面板10aに薬剤取付用の開口部30を形成し、この開口部30に薬剤容器31を取付け、取り外し自在に取付ける。
この薬剤容器31に薬剤4を、その薬剤4に空間部3a内の空気が触れるように取付ける。
この場合には回転錘5の回転軸13は上部本体11又は前述の支持部材20に回転自在に支承することが好ましい。
【0036】
また、器具本体3の裏面にバンド2aを取付けできないので、バンド2aを一側バンド2dと他側バンド2eに分割し、その一側バンド2d、他側バンド2eの長手方向端部を下部本体10の底面板10aにおける開口部30と隣接した部分にそれぞれ取付ける。
【0037】
前述の各実施の形態では薬剤4を器具本体3の裏面側に取付けたが、表面側に取付けても良い。
例えば、図6に示すように、上部本体11の上面板11aの内面に薬剤取付部11cを形成し、その薬剤取付部11cに薬剤4を着脱自在に取付ける。
回転錘5の回転軸13は下部本体10の下面板10aにのみ回転自在に支承する。
【0038】
このようにすれば、上部本体11を取り外すことで薬剤4を交換できるから、その薬剤交換が簡単でやり易い。
【0039】
図7に示すように、器具本体3を一体形状とし、その上面3cに薬剤取付用の開口部32を形成する。
この開口部32に薬剤取付部材33を嵌合して着脱自在に取付け、その薬剤取付部材33に薬剤4を取付ける。
【0040】
このようにすれば、薬剤取付部材33を取り外して薬剤を交換でき、その薬剤交換が簡単でやり易い。
【符号の説明】
【0041】
1…薬剤拡散器具、2…着用具、3…器具本体、3a…空間部、3b…裏面、4…薬剤、5…回転錘、6…空気流通口、13…回転軸、17…撹拌用フィン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤拡散器具1と、この薬剤拡散器具1を身体に着用する着用具2を備え、
前記薬剤拡散器具1は、器具本体3の空間部3a内に薬剤4と、回転錘5を取付けると共に、その器具本体3は空気流通口6を有し、
前記回転錘5は、器具本体3が動くことで回転し、その回転錘5の回転で空間部3a内の空気が撹拌して薬剤4の薬剤が揮散し、その揮散した薬剤が空気流通口6から大気に拡散するようにしたことを特徴とする着用型薬剤拡散装置。
【請求項2】
着用具2と器具本体3を、その器具本体3の裏面3bが身体に向かうように着用される構成とし、
前記空気流通口6は器具本体3の裏面3bに形成して身体に向けて空気が流れるようにしてある請求項1記載の着用型薬剤拡散装置。
【請求項3】
回転錘5は撹拌用フィン17を有している請求項1又は2記載の着用型薬剤拡散装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−179064(P2012−179064A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−146236(P2012−146236)
【出願日】平成24年6月29日(2012.6.29)
【分割の表示】特願2008−30014(P2008−30014)の分割
【原出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【出願人】(000112853)フマキラー株式会社 (155)
【Fターム(参考)】