説明

着色樹脂組成物、それを用いてなるカラーフィルタ及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置

【課題】カラーフィルタの耐光性の向上を可能とする着色樹脂組成物、それを用いてなるカラーフィルタ及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置を提供する。
【解決手段】リンモリブデン酸からなるレーキ化剤を用いたレーキ顔料を含有することを特徴とする着色樹脂組成物、それを用いてなるカラーフィルタ及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーキ顔料を含有する着色組成物、それを用いてなるカラーフィルタ及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、従来の液晶表示装置に加えて、次世代型の表示装置として、エレクトロルミネッセンス(以下、「EL」と略称することがある。)素子で構成されたEL表示装置が期待されている。EL素子には無機EL素子と有機EL素子とがあり、いずれのEL素子も自己発光性であるために視認性が高く、また完全固体素子であるために耐衝撃性に優れるとともに取り扱いが容易であるという利点がある。このため、グラフィック表示装置の画素やテレビ画像表示装置の画素、あるいは面光源等としての研究開発及び実用化が進められている。特に、画像表示装置のさらなる高精細化により、カラーフィルタのさらなる高透過率化及び高色純度化が望まれており、カラーフィルタの材料及び製造方法に関し、種々の研究が行われてきた。
【0003】
この有機EL素子は、アントラセン等の蛍光性の有機固体からなる発光層とトリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層、又は、発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層、又は、正孔注入層と発光層と電子注入層、のいずれかの積層形態を2つの電極(発光面側の電極は透明電極になる。)間に介在させてなる構造体である。こうした有機EL素子は、発光層に注入された電子と正孔とが再結合するときに生じる発光を利用するものである。このため、有機EL素子は、発光層の厚さを薄くすることにより、例えば4.5Vという低電圧での駆動が可能で応答も速いといった利点や、輝度が注入電流に比例するために高輝度のEL素子を得ることができるといった利点等を有している。また、発光層とする蛍光性の有機固体の種類を変えることにより、青、緑、黄、赤の可視域すべての色で発光が得られている。有機EL素子は、このような利点、特に低電圧での駆動が可能であるという利点を有していることから、現在、実用化のための研究が進められている。そして、携帯電話の表示部分等、製作上での難易度が比較的低い小型の表示装置では、一部実用化がなされている。
【0004】
有機EL素子におけるカラー表示の方式としては、(1)青色、赤色、緑色等の各色の発光材料を成膜する3色塗り分け方式、(2)青色発光する発光層と、青→緑及び青→赤にそれぞれ色変換する色変換層(CCM層)とを組合せて3色を発色させるCCM方式、(3)白色発光する発光層と、青色、赤色、緑色等のカラーフィルタとを組み合わせる方式等が挙げられる。このうち、発光効率の点からは、(1)の3色塗り分け方式が最も有力であり、携帯電話、携帯情報端末(PDA)等に実用化されている。また更に高精細化の観点からは、蛍光体の塗り分けが不要である、(3)の白色発光+カラーフィルタの組み合わせが有望である。いずれの方式を選択するかは、表示装置が組み込まれる装置の性質によって決定される。
【0005】
例えば、上記(1)のカラー表示方式において、3色発光層のそれぞれの発光層に対応するように赤・緑・青の三色の着色層を有するカラーフィルタを有機EL表示装置に配置すると、外光反射が低減されるばかりでなく、表示される色純度が上がる効果をも奏することができる。また、上記(3)のカラー表示方式においてはカラーフィルタが必須となる。
【0006】
ところで、有機EL素子の寿命は、電流値によって決定される発光輝度により変化する。すなわち、電流値を高めることにより高輝度が可能となるが、同時に素子の寿命が縮まることになる。従って、光が発光体から出射された後は、周辺部材による光吸収をなるべく低く抑えることが電流値を抑制し、ひいては長寿命化につながることとなる。特に青色の発光体は組み合わせる緑色及び赤色の発光体に比較して寿命が短く、表示装置としての寿命を左右している。
【0007】
上記に鑑み、特に青色での発光を減衰しないようなパネル構成が、有機EL自体の長寿命化にとって重要となる。そのため、青色発光素子と組み合わせる青色画素におけるカラーフィルタの透過率は、長寿命化の点からまだまだ向上させる必要がある。
【0008】
ここで、カラーフィルタの透過率は、着色層に用いられる色材の性能に大きく左右される。そのため、現在までに種々の色材、特に顔料について幅広い研究がなされてきたが(例えば、特許文献1を参照)、更に透過率に優れる色材を用いることが求められている。しかし、染料のように透過率に優れる色材でも、耐光性に劣るといった問題がある。
【0009】
更に、有機EL表示装置用途においては、構造上、色材の耐光性が要求されるといった問題もある。そこで、耐光性向上のために、表示装置の表示面側には、紫外線防止層としての紫外線カットフイルムを積層することが提案されている(例えば、特許文献2を参照)。例えば、表示側に反射防止機能を有する、アンチリフレクションフイルム(ARフイルム)を積層する手法が−般的に採用されている。ARフイルムにはベースとしてのTAC(トリアセチルセルロース)フイルムに、紫外線吸収剤が添加されている。通常、TACフイルムに添加される紫外線吸収剤は表示装置の表示特性に悪影響を与えないよう、可視光領域においては吸収を示さないか、示したとしても極僅かに押さえられている(例えば、特許文献3を参照)。他にも、可視光部分に吸収領域を有する保護層を使用することも提案されている(例えば、特許文献4を参照)が、可視光部分の吸収により、黄色味を帯びることがある。また、色材自体の耐光性を向上させるために、レーキ顔料を用いることも提案されているが、耐光性試験の条件設定・評価が不十分であり、実用可能な耐光性が得られているとは言い難い(例えば、特許文献5を参照)。
しかしながら、依然として、高い色純度を確保しつつ、高透過率化を可能とし、耐光性に優れるカラーフィルタが切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−85592号公報
【特許文献2】特開2005−222915号公報
【特許文献3】特開2005−43400号公報
【特許文献4】特開2007−234301号公報
【特許文献5】特開2001−81348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような状況下で、カラーフィルタの耐光性の向上を可能とする着色樹脂組成物及びそれを用いてなるカラーフィルタを提供することを課題とするものであり、優れた耐光性を実現できる表示装置、特に有機EL表示装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、特定のレーキ顔料を含有する着色樹脂組成物を用いることにより、上記課題を解決できることを知見し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
[1]リンモリブデン酸からなるレーキ化剤を用いたレーキ顔料を含有することを特徴とする着色樹脂組成物、
[2]基材上に複数種の着色層及び該各着色層間に設けられるブラックマトリックスを有するカラーフィルタであって、該着色層の少なくとも1種が、リンモリブデン酸からなるレーキ化剤を用いたレーキ顔料を含有する着色樹脂組成物から形成されることを特徴とするカラーフィルタ、及び
[3]基材上に複数種の着色層及び該各着色層間に設けられるブラックマトリックスを有するカラーフィルタと有機エレクトロルミネッセンス発光素子とを具備する有機エレクトロルミネッセンス表示装置であって、該着色層の少なくとも1種が、リンモリブデン酸からなるレーキ化剤を用いたレーキ顔料を含有する着色樹脂組成物から形成されることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の着色樹脂組成物は、顔料の退色を効果的に防止し、耐光性の向上を可能とすることができる。また、本発明のカラーフィルタは、カラーフィルタの透過率が高いため、青色発光をより効果的に利用することができ、青色画素に関して十分な性能を実現することができる。また、本発明の着色樹脂組成物を用いることにより、優れた耐光性を実現できるカラーフィルタ及び表示装置、特に有機EL表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の有機EL表示装置の一例を示す部分断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の着色樹脂組成物は、染料がリンモリブデン酸からなるレーキ化剤によりレーキ化されてなるレーキ顔料を含有することを特徴とする。
上記のレーキ顔料はレーキ化剤(コンプレックスアシッド)により染料をレーキ化した顔料であり、リンモリブデン酸からなるレーキ化剤を用いることが肝要である。リンモリブデン酸を用いることにより、レーキ顔料自体の耐光性を向上させることができるからである。ここで、「リンモリブデン酸からなる」とは、レーキ化剤全量中、リンモリブデン酸を99質量%以上含むことをいう。1質量%以下の他の物質を含んでいても本発明の課題を解決できる場合があるからである。
本発明においては、リンモリブデン酸のみからなるレーキ化剤を用いることが特に好ましい。
リンモリブデン酸{H3[PMo1240]・nH2O(n≒30)}は、例えば、日本新金属株式会社などから入手できる。
また、他のコンプレックスアシッドとしては、リンモリブデン酸以外のヘテロポリ酸、例えばリンタングステン酸、リンタングストモリブデン酸、ケイモリブデン酸、ケイタングステン酸、リンバナドモリブデン酸などが挙げられ、同様に上記などから入手できる。
【0016】
本発明におけるレーキ化処理方法は、染料及びリンモリブデン酸の双方を溶解することができる溶媒中で反応処理すれば良く、例えば、染料水溶液中にリンモリブデン酸水溶液(例えば、日本無機化学工業社製NPM−40)を混合・撹拌し、沈殿したものをレーキ顔料として回収すれば良い。
本発明のレーキ顔料として、例えば、上記のレーキ化処理方法に従い、C.I.Basic Blue 7(東京化成工業株式会社販売試薬)を、12モリブド(VI)リン酸(和光純薬工業株式会社販売試薬)によりレーキ化することで下記化学式(1)により表わされるレーキ顔料を得ることができる。
【0017】
【化1】

【0018】
レーキ顔料
コンプレックスアシッドとしてリンモリブデン酸のみを用いてレーキ化したレーキ顔料としては、C.I.ビグメントブルー1、C.I.ピグメントブルー2、C.I.ピグメントブルー3、C.I.ピグメントブルー9、C.I.ピグメントブルー10、C.I.ピグメントブルー17:1、C.I.ピグメントブルー24、C.I.ピグメントブルー24:1、C.I.ピグメントブルー56、C.I.ピグメントブルー61、C.I.ピグメントブルー62、C.I.ピグメントバイオレット1、C.I.ピグメントバイオレット2、C.I.ピグメントバイオレット3、C.I.ピグメントバイオレット3:1、C.I.ピグメントバイオレット3:3、C.I.ピグメントバイオレット27、C.I.ピグメントバイオレット39、C.I.ピグメントグリーン1、C.I.ピグメントグリーン4、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド48:4、C.I.ピグメントレッド48:5、C.I.ピグメントレッド49、C.I.ピグメントレッド49:1、C.I.ピグメントレッド49:2、C.I.ピグメントレッド49:3、C.I.ピグメントレッド52:1、C.I.ピグメントレッド52:2、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド54、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド58、C.I.ピグメントレッド58:1、C.I.ピグメントレッド58:2、C.I.ピグメントレッド58:3、C.I.ピグメントレッド58:4、C.I.ピグメントレッド60:1、C.I.ピグメントレッド63、C.I.ピグメントレッド63:1、C.I.ピグメントレッド63:2、C.I.ピグメントレッド63:3、C.I.ピグメントレッド64:1、C.I.ピグメントレッド68、C.I.ピグメントレッド81、C.I.ピグメントレッド81:1、C.I.ピグメントレッド200、C.I.ピグメントレッド237、C.I.ピグメントレッド239、C.I.ピグメントレッド247、C.I.ピグメントイエロー61、C.I.ピグメントイエロー61:1、C.I.ピグメントイエロー62、C.I.ピグメントイエロー100、C.I.ピグメントイエロー104、C.I.ピグメントイエロー133、C.I.ピグメントイエロー168、C.I.ピグメントイエロー169、C.I.ピグメントイエロー183、C.I.ピグメントイエロー191、C.I.ピグメントイエロー209、C.I.ピグメントイエロー209:1、及びC.I.ピグメントイエロー212等を挙げることができる。
【0019】
上記のレーキ顔料の内、染料としてトリアリールメタン系染料を用いたレーキ顔料が好ましい。トリアリールメタン系染料の具体的な構造としては、例えば、以下の一般式(2)及び(3)を挙げることができる。
【0020】
【化2】

(式中、Rlは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、もしくはハロゲン原子を表し、R2、R3、R4、及びR5は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基、もしくは置換基を有してもよいベンジル基を表す。)
【0021】
【化3】

(式中、Rlは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、もしくはハロゲン原子を表し、R2、R3、R4、及びR5は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基、もしくは置換基を有してもよいベンジル基を表す。)
【0022】
上記の様なトリアリールメタン系染料がレーキ化されてなるレーキ顔料、すなわち、トリアリールメタン系色素を有するレーキ顔料を用いることにより、高色純度及び高透過率を実現することができる。また、染料のレーキ化により、色材の表面積低減による感度・耐薬品性も改善することができる。レーキ顔料の含有量は、着色樹脂組成物全量中の0.1〜20質量%であることが好ましい。
【0023】
本発明におけるモリブデン含有を分析する手法として、例えばX線光電子分光装置(Xray Photoelectron Spectroscopy,XPS)、二次イオン質量分析装置(Secondary Ion Mass Spectroscopy,SIMS)等の分析装置を用い、深さ方向にイオンエッチングする等して分析する方法で確認することができる。
【0024】
着色樹脂組成物
本発明の着色樹脂組成物には、上記のレーキ顔料、所望により用いられる分散剤、所望により用いられる顔料誘導体、溶剤、モノマー及び/又はオリゴマー、ポリマーから選ばれる少なくとも1種のバインダー及び重合開始剤等が含まれる。また、色材として上記レーキ顔料以外の他の染料又は顔料を本発明の目的を損なわない範囲で含んでいても良い。
【0025】
分散剤
本発明の着色樹脂組成物に所望により用いられる分散剤としては、例えば、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも高分子界面活性剤(高分子分散剤)を用いることが好ましい。高分子界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のポリエチレングリコールジエステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、脂肪酸変性ポリエステル類、及び3級アミン変性ポリウレタン類などが挙げられる。本発明においては、市販の分散剤を用いることもでき、例えば、アビシア社製のソルスパース・シリーズ、ビッグケミー・ジャパン株式会社製のDisperbyk・シリーズ、エフカアディティブズ社製のEFKA・シリーズ、味の素ファインテクノ株式会社製のアジスパー・シリーズ等が挙げられるが、これらの内、ソルスパース3000、5000、9000、12000、13240、13940、17000、20000、24000、26000、及び28000等の各種ソルスパース分散剤(アビシア社製)、並びにDisperbyk 111、160及び161(ビックケミー・ジャパン株式会社製)が好ましい。分散剤の含有量は、着色樹脂組成物の不揮発成分全量中の0.03〜20質量%が好ましく、2〜20質量%がより好ましい。
上記の分散剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0026】
顔料誘導体
本発明の着色樹脂組成物に所望により用いられる顔料誘導体としては、例えば、顔料骨格にスルホン酸基、スルホン酸アミド基、カルボン酸基、アミド基、及びイミド基等を持つものが挙げられ、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリエチレングリコール等の界面活性剤も使用することができる。また、上記の分散剤を適宜、顔料誘導体として用いても良い。
なお、顔料誘導体とは、顔料の分散性を高める効果を有するものである。
本発明においては、市販の顔料誘導体を用いることもでき、例えば、ソルスパース12000(アビシア社製)、ソルスパース5000(アビシア社製)、及びソルスパース22000(アビシア社製)が好ましい。顔料誘導体の含有量は、着色樹脂組成物の不揮発成分全量中の0.05〜10質量%が好ましい。
上記の顔料誘導体は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0027】
溶剤
本発明の着色樹脂組成物に用いられる溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、t−ブチルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、及び2,4−ペンタンジオン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル系、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、エチルセトソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリーコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、及び3−メトキシブチルアセテート等の酢酸エステル類等が挙げられる。
本発明においては、市販の溶剤を用いることもでき、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(ダイセル化学工業株式会社製)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(ダイセル化学工業株式会社製)、及び3−メトキシブチルアセテート(ダイセル化学工業株式会社製)が好ましい。
溶剤の含有量は、着色樹脂組成物全量中の20〜90質量%であることが好ましい。溶剤の含有量が上記範囲程度であれば、着色樹脂組成物の粘度を所望の範囲に調整し、顔料分散性や顔料分散経時安定性を向上させることができる。また、顔料濃度を一定範囲内にすることができるため、着色樹脂組成物を調製後、目標とする色度座標を達成することができる。更に、単一種の溶媒を使用しただけでは、着色樹脂組成物の溶解性が不充分である場合には、2種以上の溶媒を混合使用することによりこれらの不利益を回避することができる。
【0028】
本発明の着色樹脂組成物には、通常、モノマー、オリゴマー及びポリマーから選ばれる少なくとも1種のバインダーが用いられる。
(i)モノマー及びオリゴマー
本発明において、バインダーとして用いられるモノマー及びオリゴマーとしては、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルアクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、sec−ブチルアクリレート、sec−ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、tert−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−ペンチルアクリレート、n−ペンチルメタクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルアクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−デシルアクリレート、n−デシルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、アリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロシプロピルアクリレート、イソボルニルアクリレート、イソデキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,3−プロパンジオールアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、2,2−ジメチロールプロパンジアクリレート、グリセロールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリオキシエチル化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパントリアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、1,2,4−ブタントリオールトリアクリレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジアクリレート、ジアリルフマレート、1,10−デカンジオールジメチルアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、及び上記のアクリレート基をメタクリレート基に置換したもの、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1−ビニル−2−ピロリドン、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート、テトラヒドロフルフリールアクリレート、3−ブタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート、フェノール−エチレンオキサイド変性アクリレート、フェノール−プロピレンオキサイド変性アクリレート、ビスフェノールA−エチレンオキサイド変性ジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレートモノステアレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサド変性トリアクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキサイド変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリアクリレート、ペンタエリスリトールペンタアクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等のアクリレートモノマー、及びこれらのアクリレート基をメタクリレート基に置換したもの、ポリウレタン構造を有するオリゴマーにアクリレート基を結合させたウレタンアクリレートオリゴマー、ポリエステル構造を有するオリゴマーにアクリレート基を結合させたポリエステルアクリレートオリゴマー、エポキシ基を有するオリゴマーにアクリレート基を結合させたエポキシアクリレートオリゴマー、ポリウレタン構造を有するオリゴマーにメタクリレート基を結合させたウレタンメタクリレートオリゴマー、ポリエステル構造を有するオリゴマーにメタクリレート基を結合させたポリエステルメタクリレートオリゴマー、エポキシ基を有するオリゴマーにメタクリレート基を結合させたエポキシメタクリレートオリゴマー等が挙げられる。
モノマー及びオリゴマーは重合性があるものであれば良いが、硬化性を重視する観点からは、多官能性モノマー及び多官能性オリゴマーが好ましい。
本発明においては、市販のモノマー及び/又はオリゴマーを用いることもでき、例えば、SR399(サートマー社製、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート)、アロニックスM−400(東亞合成株式会社製、多官能性アクリレート)、及びアロニックスM−450(東亞合成株式会社製、ペンタエリスリトールトリアクリレート及びペンタエリスリトールテトラアクリレート)が好ましい。
モノマー及び/又はオリゴマーの含有量は、着色樹脂組成物全量中の2〜40質量%であることが好ましい。
上記のモノマー及びオリゴマーは、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0029】
(ii)ポリマー
本発明において、バインダーとして用いられるポリマーとしては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレンビニル共重合体、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)樹脂、ポリメタクリル酸樹脂、エチレンメタクリル酸樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩素化塩化ビニル、ポリビニルアルコール、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレブタレート、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリビニルブチラール、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミック酸樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、アクリレート基を有するポリウレタンアクリレート、アクリレート基を有するポリエステルアクリレート、アクリレート基を有するエポキシアクリレート樹脂、メタクリレート基を有するポリウレタンメタクリレート、メタクリレート基を有するポリエステルメタクリレート、メタクリレート基を有するエポキシメタクリレート樹脂等が挙げられる。
本発明においては、市販のポリマーを用いることもでき、例えば、アロニックスM−5600(東亞合成株式会社製)、アロニックスM−6200(東亞合成株式会社製)、アロニックスM−7100(東亞合成株式会社製)、及びアロニックスM−9050(東亞合成株式会社製)が好ましい。ポリマーの含有量は、着色樹脂組成物全量中の1〜40質量%であることが好ましい。
上記のポリマーは、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0030】
重合開始剤
本発明の着色樹脂組成物に用いられる重合開始剤としては、熱重合開始剤及び光重合開始剤等を用いることができるが、光重合開始剤を用いることが好ましい。
光重合開始剤としては、例えば、ベンジル(ビベンゾイルとも言う)、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4'−メチルジフェニルサルファイド、ベンジルメチルケタール、ジメチルアミノメチルベンゾエート、2−n−ブトキシエチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、3,3'−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、メチロベンゾイルフォーメート、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、及び1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン等が挙げられる。本発明においては、市販の光重合開始剤を用いることもでき、例えば、イルガキュア184、イルガキュア369、イルガキュア651、イルガキュア907(いずれも、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、ダロキュアー(メルク社製)、アデカ1717(旭電化工業株式会社製)等のケトン系化合物、及び2,2'−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4'−テトラフェニル−1,2'−ビイミダゾール(黒金化成株式会社製)等のビイミダゾール系化合物が好ましい。光重合開始剤等の重合開始剤の含有量は、着色樹脂組成物の不揮発成分全量中の0.1〜20質量%が好ましい。
上記の重合開始剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0031】
増感剤
また、本発明においては、必要に応じて、上記の光重合開始剤と共に、増感剤を1種以上更に併用することもできる。上記増感剤の具体例としては、4,4'−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−ジエチルアミノアセトフェノン、4−ジメチルアミノプロピオフェノン、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、2−エチルヘキシル−1,4−ジメチルアミノベンゾエート、2,5−ビス(4−ジエチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、7−ジエチルアミノ−3−(4−ジエチルアミノベンゾイル)クマリン、4−(ジエチルアミノ)カルコン等を挙げることができる。
【0032】
着色樹脂組成物の製造方法
本発明の着色樹脂組成物は、上述のレーキ顔料、所望により用いられる分散剤、所望により用いられる顔料誘導体、モノマー及び/又はオリゴマー、ポリマーから選ばれる少なくとも1種のバインダー及び重合開始剤等を溶剤中に一度に分散させても良いが、予め、レーキ顔料、所望により用いられる他の顔料、所望により用いられる分散剤、所望により用いられる顔料誘導体等を分散させ顔料分散液を調製した後、この顔料分散液と残余の成分とを分散させて調製しても良い。
顔料分散液の調製方法及び着色樹脂組成物の調製方法は、特に限定されず、公知の分散機を用いて分散させることができる。分散処理を行うための分散機としては、2本ロール、3本ロール等のロールミル、振動ボールミル等のボールミル、ペイントシェーカー、ペイントコンディショナー、連続ディスク型ビーズミル、連続アニュラー型ビーズミル等のビーズミルが挙げられる。分散処理において用いるビーズの径は、好ましくは0.03〜2.00mmであり、より好ましくは0.10〜1.00mmである。
【0033】
カラーフィルタ
本発明のカラーフィルタは、基材上に複数種の着色層及び該各着色層間に設けられるブラックマトリックスを有するカラーフイルタであって、該着色層の少なくとも1種が、リンモリブデン酸からなるレーキ化剤を用いたレーキ顔料を含有する着色樹脂組成物から形成されることを特徴とし、好ましくは有機EL表示装置に用いるものである。上記の着色樹脂組成物を用いることで、高色純度及び高透明性を保ちながら、耐光性が向上したカラーフィルタを得ることができる。また、上記着色樹脂組成物に用いられるレーキ顔料が、トリアリールメタン系色素を有することが好ましい。特に有機EL表示装置用途であれば、光源の青色発光ピーク波長での透過率が高いため、レーキ顔料がトリアリールメタン系色素を有すると、青色発光をより効率的に利用することができる。
【0034】
(a)基材
本発明のカラーフィルタに用いられる基材としては、一般的なカラーフィルタに用いられるものと同様とすることができる。具体的には、石英ガラス、無アルカリガラス、合成石英板等の可撓性のない透明なリジッド材、あるいは、透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有する透明なフレキシブル材が挙げられる。
基材の厚みは、特に限定されるものではないが、本発明のカラーフィルタの用途に応じて、例えば100μm〜1mm程度のものを使用することができる。
【0035】
(b)ブラックマトリックス
本発明のカラーフィルタにおけるブラックマトリックスは、着色層が配置される開口部以外の部分での光を遮蔽したり、隣接する着色層の混色を防止し表示コントラストを向上させるために形成されるパターンである。このブラックマトリックスは開口部以外で一体的につながっていても良いが、これに限定されない。例えば、一方向でストライプ状につながっているが、他方向では離隔しているパターンであっても良い。
本発明に係るブラックマトリックスは、遮光性樹脂組成物を用いて、フォトリソグラフィー法、印刷法等によりパターン形成することにより得られる。この際、遮光性樹脂組成物を塗布して塗膜を形成した後に、この塗膜を乾燥しても良い。塗膜の乾燥方法としては、例えば、ホットプレートを用いた加熱乾燥が挙げられる。加熱乾燥条件としては、60℃〜150℃で1分間〜10分間加熱することが好ましい。さらに、フォトリソグラフィー法により現像した後に、加熱処理を行っても良い。加熱処理条件としては、150℃〜300℃で20分間〜60分間加熱するのが一般的である。
ブラックマトリックスの膜厚は、0.5〜5.0μmが好ましく、1.0〜3.0μmがより好ましい。
【0036】
(c)着色層
本発明のカラーフィルタにおける着色層としては、通常、青色顔料又は染料、緑色顔料又は染料、あるいは赤色顔料又は染料をそれぞれ配合した着色樹脂組成物を用いて青色着色層、緑色着色層、あるいは赤色着色層として3種類の着色層が形成される。また、所望により、赤色、緑色及び青色から選ばれる1色(A)からなる着色層と、黄色、マゼンタ及びシアンから選ばれる1色(B)からなる着色層とが形成され、且つ色(A)と色(B)とが互いに補色関係にある2種類の着色層が形成されても良い。更に、青色着色層、緑色着色層、赤色着色層及び黄色着色層として4種類の着色層が形成されても良い。黄色着色層を加えることにより、上記3種類の着色層の場合の1千倍にあたる1兆色を表現することが可能となり、金色などを鮮やかに再現できる。所望により、5種類以上の着色層が形成されても良い。
【0037】
本発明に係る着色層は、上記ブラックマトリックスの開口部に形成されるものであって、例えば、以下のようにして形成できる。
まず、基材上に上記着色樹脂組成物を塗布し、減圧乾燥後、プリベークして、溶剤を除去する。組成物の塗布には、従来公知の方法を用いることでき、例えばスピンコート法、印刷法、インクジェット法、バーコート法、スプレー法、ダイコート法、ピードコート法、及びスリット&スピンコート法等が挙げられる。いずれの手法であっても、均一な塗膜を得るため、塗布液が一定の粘度になるように、溶剤によって希釈/粘度調整してもよい。続いて、紫外線を露光して、組成物を硬化させる。パターニングを行う際は、フォトマスクを介してパターン露光し、引き続いて0.05〜0.5%KOH水溶液を用いたスプレー現像を行う。更に、焼成することで着色層を基材上に形成させることができる。なお、プリベークは50〜120℃、1〜10分間の条件で行うことが好ましく、ポストベーク温度を250℃以下、より好ましくは200℃以下にすることが好ましい。ポストベーク温度が上記程度であれば、色材の透過率低下を抑えることができるからである。紫外線の露光は254〜360nmの発光ピークを有する紫外線により30〜3000mJ/cm2の露光量で行うことが好ましい。
上記の各着色組成物を基材上のブラックマトリックスの開口部に塗布しても良いし、着色層を形成した後、ブラックマトリックスを形成しても良い、
着色層の膜厚としては、1.0〜5.0μm程度である。
【0038】
有機EL表示装置
本発明の有機EL表示装置は、基材上に複数種の着色層及び該各着色層間に設けられるブラックマトリックスを有するカラーフイルタと有機エレクトロルミネッセンス発光素子とを具備する有機エレクトロルミネッセンス表示装置であって、該着色層の少なくとも1種が、リンモリブデン酸からなるレーキ化剤を用いたレーキ顔料を含有する着色樹脂組成物から形成されることを特徴とするものである。有機EL表示装置は、青色、赤色、及び緑色の3色の有機EL発光体を含む有機EL発光素子を有するものが好ましいが、有機EL発光素子が白色EL素子で構成されていても良い。また、青色、赤色、緑色及び黄色の4色の有機EL発光体を含む有機EL発光素子であっても良いし、5色以上の有機EL発光体を含む有機EL発光素子であっても良い。
本発明の好ましい態様によれば、有機EL表示装置は、カラーフィルタと有機EL発光素子とを接着剤により接着させたものである。接着剤としては、接着層形成材料を用いることができ、例えば、主剤(SKダイン2094、綜研化学社製)と硬化剤(E−AX、綜研化学社製)の二液混合型であるアクリル系接着剤を用いることができる。このような有機EL表示装置によれば、カラーフィルタの耐光性、透過率、及び色純度の向上により、各色の画素に関して十分な性能を実現することができる。
本発明の有機EL表示装置は、トップ・エミッション型及びボトム・エミッション型のいずれであっても良い。
【0039】
ここで、本発明のカラーフィルタを具備する有機EL表示装置の典型的な例として、部分断面概略図を図1に示す。図1に示される有機EL表示装置1は、基材11上に青色着色層12、緑色着色層13、及び赤色着色層14、並びに各着色層間にブラックマトリックス15が所定のパターンで形成されてなるカラーフィルタ10と、青色発光体22、緑色発光体23、及び赤色発光体24の3色の有機EL発光体を含む有機EL発光素子20とが、接着層30を介して積層されてなるものである。
【0040】
有機EL発光素子の製造方法
有機EL発光素子の製造方法は特に限定されないが、以下に示される好ましい態様に従い行うことができる。すなわち、基板上に、反射型陽極と、正孔注入層と、正孔輸送層と、発光層と、電子輸送層と、電子注入層とをこの順番にパターニングして青色発光層を製膜する。これを後2回繰り返し、緑色発光層及び赤色発光層を製膜する。更に、青色発光層、緑色発光層、及び赤色発光層の上に半透明な陰極と、保護層とをこの順番にベタ製膜して積層し、有機EL発光素子を製造することができる。
【0041】
上記の基板としては、スイッチング素子としてのTFTを有する無アルカリガラス基板を用いることができ、無アルカリガラス基板の厚さは、好ましくは0.5〜1.1mmである。上記の反射型陽極としては、ITO/Ag/ITOの積層構造からなる反射型陽極を用いることができ、好ましくは積層構造の各層の厚さがそれぞれ10〜150nmであり、好ましくは反射型陽極の厚さは50〜300nmである。上記の正孔注入層としては、ビス(N−(1−ナフチル−N−フェニル)ベンジジン)(α−NPD)とMoO3の共蒸着薄膜(MoO3の体積濃度:20%)からなる正孔注入層を用いることができ、好ましくは正孔注入層の厚さは10〜400nmである。上記の正孔輸送層としては、α−NPDからなる正孔輸送層を用いることができ、好ましくは正孔輸送層の厚さは5〜200nmである。上記の発光層としては、ホスト材料として9,10−ジ−2−ナフチルアントラセン(DNA)、ゲスト材料として1−tert−ブチル−ペリレン(TBP)を用いてなる発光層を用いることができ、好ましくは、発光層の厚さは20〜60nmであり、更にホスト材料とゲスト材料との配合割合が10:1〜100:1になるように調整することが好ましい。上記の電子輸送層としては、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq3)からなる電子輸送層を用いることができ、好ましくは電子輸送層の厚さは5〜200nmである。上記の電子注入層としては、LiFからなる電子注入層を用いることができ、好ましくは電子注入層の厚さは0.1〜1nmである。上記の半透明な陰極としては、MgAgからなる半透明な陰極を用いることができ、好ましくは半透明な陰極の厚さは1〜100nmである。上記の保護層としては、SiONからなる保護層を用いることができ、好ましくは保護層の厚さは50〜400nmである。
【実施例】
【0042】
本発明を実施例により、更に詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、耐光性試験は下記の方法に従って行った。
耐光性試験
キセノンアークランプを用いたキセノンフェードメーター(東洋精機社製、商品名:サンテストXLS+)により、310Wの出力で100時間連続照射して色度の評価を行った。試験光の照射は、実際の使用を想定して、ガラス面より行った。色差は、ΔE*abで評価した。色差は、まず顕微分光測色機(オリンパス社製 型名:OSP−SP200)を用いて分光測定を行い、次に耐光性試験完了後に再度分光測定を行うことにより、耐光性試験前後の色度から求めた値である。色差は、数値が小さいほど耐光性が高いことを示す。なお、色差評価の光源には標準の光Cを用いた。分光測定時のリファレンスには、実施例と同様の手順で、着色層の形成されていない0.7mm厚のガラス(旭硝子社製、AN材)と0.1mm厚の無アルカリガラス(日本電気硝子社製、商品名:OA−10G)とを、後述する実施例1と同様にして貼り合わせたものを使用した。
【0043】
実施例1
まず、第1表に示す配合内容の青色樹脂組成物を、ペイントシェーカーを用いて調製し、青色パターン用レーキ顔料フォトレジストとして用いた。
【0044】
【表1】

(注)
ポリマー: ベンジルメタクリレート:スチレン:アクリル酸:2−ヒドロキシエチルメタクリレート=15.6:37.0:30.5:16.9(モル比)の共重合体100モルに対して、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを16.9モル付加したものであり、重量平均分子量は42500である。
【0045】
上記で調製した青色樹脂組成物を、基材である0.7mmのガラス基板(旭硝子社製、AN材)上にスピンコート法で塗布し、減圧乾燥後、80℃、3分間の条件でプリベークして溶剤を除去した。更に180℃のクリーンオーブン中で30分間焼成することにより、ガラス基板上に1.8μmの厚さで着色層を形成させて、カラーフィルタを得た。
なお、上記青色樹脂組成物は、フォトマスクを介してパターン露光し、引き続いて0.1%KOH水溶液を用いたスプレー現像により、10μmオーダーでのパターニングが可能であった。これにより、カラーフィルタ用途として十分な解像性が確認できた。
次に粘着剤として、主剤(SKダイン2094、綜研化学社製)と硬化剤(E−AX、綜研化学社製)の二液混合型であるアクリル系接着剤を用意し、主剤100質量%に対し、硬化剤0.27質量%を添加し、更に30質量%の割合で希釈溶媒としてのメチルエチルケトンを加えた。調製した接着性組成物を、バーコーターを用いて、0.1mm厚の無アルカリガラス(日本電気硝子社製、商品名:OA−10G)に塗布し、90℃で2分間ベークして溶剤成分を除去した。次にこのガラスをカラーフィルタの着色層側に積層して接着し、実施例1の擬似パネルとした。
【0046】
比較例1
色材として、ピグメントブルー1(リンモリブデン酸/リンタングステン酸=100/0)の替わりにピグメントブルー1(リンモリブデン酸/リンタングステン酸=50/50)を使用した以外は、実施例1と同様の方法で青色フィルタを製造し、比較例1の擬似パネルとした。
【0047】
比較例2
色材として、ピグメントブルー1(リンモリブデン酸/リンタングステン酸=100/0)の替わりにピグメントブルー1(リンモリブデン酸/リンタングステン酸=0/100)を使用した以外は、実施例1と同様の方法で青色フィルタを製造し、比較例2の擬似パネルとした。
【0048】
実施例1及び比較例1〜2の擬似パネルの耐光性試験を上記の方法に基づき評価した。結果を第2表に示す。
【0049】
【表2】

【0050】
第2表から明らかなように、実施例1のパネルは、比較例1及び比較例2のパネルと比較して、はるかに優れた耐光性を発揮した。これにより、高い色純度を確保しつつ高透過率を可能とし、更に顔料の退色を効果的に防止し得るカラーフィルタが得られ、耐久性に優れた有機EL表示装置を提供することができた。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の着色樹脂組成物及びそれを用いたカラーフィルタは、携帯電話等の携帯情報端末機器、カーオーディオ、テレビ用モニターやパーソナル・コンピュータ用の有機EL表示装置に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0052】
1 有機EL表示装置
10 カラーフィルタ
11 基材
12 青色着色層
13 緑色着色層
14 赤色着色層
15 ブラックマトリックス
20 有機EL発光素子
22 青色発光体
23 緑色発光体
24 赤色発光体
30 接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンモリブデン酸からなるレーキ化剤を用いたレーキ顔料を含有することを特徴とする着色樹脂組成物。
【請求項2】
前記レーキ顔料が、トリアリールメタン系色素を有する請求項1に記載の着色樹脂組成物。
【請求項3】
基材上に複数種の着色層及び該各着色層間に設けられるブラックマトリックスを有するカラーフィルタであって、該着色層の少なくとも1種が、リンモリブデン酸からなるレーキ化剤を用いたレーキ顔料を含有する着色樹脂組成物から形成されることを特徴とするカラーフィルタ。
【請求項4】
前記レーキ顔料が、トリアリールメタン系色素を有する請求項3に記載のカラーフィルタ。
【請求項5】
基材上に複数種の着色層及び該各着色層間に設けられるブラックマトリックスを有するカラーフィルタと有機エレクトロルミネッセンス発光素子とを具備する有機エレクトロルミネッセンス表示装置であって、該着色層の少なくとも1種が、リンモリブデン酸からなるレーキ化剤を用いたレーキ顔料を含有する着色樹脂組成物から形成されることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項6】
前記レーキ顔料が、トリアリールメタン系色素を有する請求項5に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−150195(P2011−150195A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12299(P2010−12299)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】