説明

着色樹脂組成物、カラーフィルタ、液晶表示装置及び有機EL表示装置

【課題】輝度が高く、且つ表示不良を起こし難い着色樹脂組成物、カラーフィルタ、液晶表示装置及び有機EL表示装置を提供する。
【解決手段】(A)臭素化亜鉛フタロシアニン顔料、(B)黄色顔料、(C)バインダー樹脂、及び(D)溶剤を含有する着色樹脂組成物であって、該(B)黄色顔料として、特定のアゾバルビツール酸のニッケル錯体類からなる顔料Y及びC.I.ピグメントイエロー138を含有し、該顔料Y及びC.I.ピグメントイエロー138の合計の含有量が、全(B)黄色顔料に対して、90重量%以上であり、該顔料YとC.I.ピグメントイエロー138の含有比率が、1:4〜3:2であることを特徴とする、着色樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色樹脂組成物、カラーフィルタ、液晶表示装置及び有機EL表示装置に関する。
更に詳しくは、臭素化亜鉛フタロシアニン顔料と、特定の黄色顔料とを併用してなる着色樹脂組成物と、これを用いて形成された画素を有するカラーフィルタ、並びに該カラーフィルタを有する液晶表示装置及び有機EL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置等に用いられるカラーフィルタを製造する方法としては、顔料分散法、染色法、電着法、印刷法が知られている。中でも、分光特性、耐久性、パターン形状及び精度等の観点から、平均的に優れた特性を有する、顔料を分散した感光性樹脂による製造法(顔料分散法)が最も広範に採用されている。
顔料分散法は、例えば感光性樹脂に顔料を分散した組成物をガラス等の透明基板上に塗布し、形成した塗膜にフォトマスクを介して放射線照射による露光を行い、未露光部を有機又は無機の現像液で現像処理することにより除去してパターンを形成するものである。
【0003】
一方、近年、技術革新の流れは急速であり、カラーフィルタに対しては、消費電量を低くするために、より高透過、高コントラスト且つ高濃度(すなわち、高い色濃度)が要求されている。
カラーフィルタで用いられる色材としては、耐熱及び耐光性等の観点から主に顔料が用いられている。特に、顔料としては、固有の透過スペクトルが可視光波長領域でバックライトの蛍光体の発光スペクトルと合致するものが好適に用いられている。
【0004】
このような顔料として、例えば、緑色画素を形成する場合、ハロゲン化銅フタロシアニン緑色顔料と各種黄色顔料とを組み合わせて用いることが知られている。
例えば、特許文献1では、C.I.ピグメントグリーン36にC.I.ピグメントイエロー139とC.I.ピグメントイエロー150等の2種の黄色顔料を併用することが開示されている。
【0005】
また、特許文献2〜4では、臭素化亜鉛フタロシアニン顔料とC.I.ピグメントイエロー138とを併用することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−131517号公報
【特許文献2】特開2003−161827号公報
【特許文献3】特開2006−184427号公報
【特許文献4】特開2007−291232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2〜4では、形成される画素を含む液晶表示装置などの表示不良などが問題であった。
上記課題を鑑みて、本発明では、得られる液晶表示装置において、輝度が高く、また表示不良などが起き難い着色樹脂組成物を提供することを課題とする。
本発明はまた、輝度が高く、且つ表示不良が起き難いカラーフィルタ、並びに高品質の液晶表示装置及び有機EL表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は鋭意検討を行った結果、得られる液晶表示装置の表示不要の原因の一つが下記であることを見出した。
感光性樹脂に顔料を分散した組成物をガラス等の透明基板上に塗布し、形成した塗膜にフォトマスクを介して放射線照射による露光を行い、未露光部を有機又は無機の現像液で現像処理することにより除去してパターンを形成するが、この際、未露光部が、現像液に対する溶解性が低いため、薄膜上に剥離片異物となる。薄膜上に剥離片異物となると、得られる液晶表示装置の表示不良となる。
【0009】
また、緑色顔料として、臭素化亜鉛フタロシアニン顔料を用いた場合、他の緑色顔料に較べて、顔料が凝集し易いことなどから、上記現像処理時の現像液に対する溶解性が悪く剥離片異物が発生し易い。
即ち、着色樹脂組成物としては、得られる画素の輝度を維持しつつ、未露光部の、現像液に対する溶解性が高い着色樹脂組成物とすることで、上記課題を解決しうると推測した。
【0010】
これら上記知見を基に、更なる検討を行った結果、(A)臭素化亜鉛フタロシアニン顔料、(B)黄色顔料、(C)バインダー樹脂、及び(D)溶剤を含有する着色樹脂組成物において、該黄色顔料として含有される下記定義で表される顔料Y及びC.I.ピグメントイエロー138を特定量含有することで、現像液に対する溶解性が向上し、上記課題を解決しうることを見出して、本発明に到達した。
【0011】
即ち、本発明は、(A)臭素化亜鉛フタロシアニン顔料、(B)黄色顔料、(C)バインダー樹脂、及び(D)溶剤を含有する着色樹脂組成物であって、該(B)黄色顔料として、下記定義で表される顔料Y及びC.I.ピグメントイエロー138を含有し、該顔料Y及びC.I.ピグメントイエロー138の合計の含有量が、全(B)黄色顔料に対して、90重量%以上であり、該顔料YとC.I.ピグメントイエロー138の含有比率が、重量比で1:4〜3:2であることを特徴とする、着色樹脂組成物、カラーフィルタ、液晶表示装置及び有機EL表示装置に存する。
【0012】
<顔料Y>
下記構造式で表されるアゾバルビツール酸のニッケルとの1:1錯体又はその互換異性体に、他の化合物が挿入されてなる化合物。
【0013】
【化1】

【発明の効果】
【0014】
本発明の着色樹脂組成物は、溶解性が高く、その為、該着色樹脂組成物を用いて形成される画素は、輝度が高く、且つ表示不要を起こし難い。
また、本発明の着色樹脂組成物を用いて形成された画素は、輝度が高い。
これより、本発明の着色樹脂組成物を用いて形成された画素を有するカラーフィルタ、液晶表示装置及び有機EL表示装置は高品質である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のカラーフィルタを有する有機EL素子の一例を示す断面概略図である。
【図2】実施例の表3の結果に関し、縦軸を溶解時間(s)、横軸を輝度(LY)としたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の構成要件及び実施の形態等について詳細に説明するが、これらは本発明の実施態様の一例であり、これらの内容に限定されるものではない。
尚、「(メタ)アクリル」等は「アクリル及びメタクリルのうち少なくとも一つ」、「(メタ)アクリレート」等は、「アクリレート及びメタクリレートのうち少なくとも一つ」等を意味するものとし、例えば「(メタ)アクリル酸」は「アクリル酸及びメタクリル酸のうち少なくとも一つ」を意味するものとする。
【0017】
又、「全固形分」とは、顔料分散液又は着色樹脂組成物に含まれる、後記する溶剤成分以外の全成分を意味するものとする。
本発明において、特に断りの無い限り、重量平均分子量とは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を指す。「C.I.」は、カラーインデックス(C.I.)を意味する。
【0018】
更に、本発明において、「アミン価」とは、特に断りのない限り有効固形分換算のアミン価を表し、分散剤の固形分1gあたりの塩基量と当量のKOHの重量で表される値である。尚、測定方法については後述する。一方、「酸価」とは、特に断りのない限り有効固形分換算の酸価を表し、中和滴定することで算出する。
本発明において、「芳香族環」とは「芳香族炭化水素環」及び「芳香族複素環」の双方を示すものとする。
【0019】
<着色樹脂組成物>
本発明の着色樹脂組成物は、(A)臭素化亜鉛フタロシアニン顔料、(B)黄色顔料、(C)バインダー樹脂、及び(D)溶剤を含有する着色樹脂組成物であって、該(B)黄色顔料として、顔料Y及びC.I.ピグメントイエロー138を含有し、該顔料Y及びC.I.ピグメントイエロー138の合計の含有量が、全(B)黄色顔料に対して、90重量%以上であり、該顔料YとC.I.ピグメントイエロー138の含有比率が、重量比で1:4〜3:2である。
【0020】
まず、(A)臭素化亜鉛フタロシアニン顔料について説明する。
[(A)臭素化亜鉛フタロシアニン顔料]
通常の亜鉛フタロシアニンは1分子中に16個の水素原子を有しており、これらの水素原子を臭素原子で置換したものが、本発明で使用される臭素化亜鉛フタロシアニン顔料である。中でも1分子中に臭素原子を平均13個以上含有する臭素化亜鉛フタロシアニンが、極めて高い透過率を示し、カラーフィルタの緑色画素を形成するのに適している点から好ましい。更には、1分子中に臭素原子を13〜16個有し、且つ1分子中に塩素を含まないか又は平均3個以下有する臭素化亜鉛フタロシアニンが好ましく、特に1分子中に臭素原子を平均14〜16個有し、且つ1分子中に塩素原子を含まないか又は平均2個以下有する臭素化亜鉛フタロシアニンが好ましい。特に好ましくは、C.I.ピグメントグリーン58である。
【0021】
このような臭素化亜鉛フタロシアニン顔料は、特開昭50−130816号公報等に開示されている公知の製造方法で製造できる。例えば、芳香環の水素原子の一部又は全部が
臭素の他、塩素等のハロゲン原子で置換されたフタル酸やフタロニトリルを適宜出発原料として使用して、顔料を合成する方法が挙げられる。この場合、必要に応じてモリブデン酸アンモニウム等の触媒を用いてもよい。
【0022】
他の方法としては、塩化アルミニウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム等の混合物からなる110〜170℃程度の溶融物中で、亜鉛フタロシアニンを臭素ガスで臭素化する方法が挙げられる。この方法においては、溶融塩中の塩化物と臭化物の比率を調節したり、塩素ガスの導入量や反応時間を変化させたりすることによって、臭素原子の含有量が異なる種々の臭素化亜鉛フタロシアニンの比率を任意にコントロールすることができる。
【0023】
反応終了後、得られた混合物を塩酸等の酸性水溶液中に投入すると、生成した臭素化亜鉛フタロシアニン顔料が沈殿する。その後、ろ過、洗浄、乾燥等の後処理を行って、臭素化亜鉛フタロシアニン顔料を得る。
こうして得られた臭素化亜鉛フタロシアニン顔料を、必要に応じてアトライター、ボールミル、振動ミル、振動ボールミル等の粉砕機内で乾式摩砕し、ついで、ソルベントソルトミリング法やソルベントボイリング法等で顔料化することによって、透過率やコントラストの高い緑色を発色する臭素化亜鉛フタロシアニン顔料が得られる。顔料化方法には特に制限は無いが、容易に結晶成長を抑制でき、且つ比表面積の大きい顔料粒子が得られる点でソルベントソルトミリング処理を採用するのが好ましい。
【0024】
ソルベントソルトミリングとは、合成直後の粗顔料と、無機塩と、有機溶剤とを混練摩砕することを意味する。具体的には、粗顔料と、無機塩と、それを溶解しない有機溶剤とを混練機に仕込み、その中で混練摩砕を行う。この際の混練機としては、例えばニーダーやミックスマーラー、もしくは、特開2006−77062号公報に記載されているような環状の固定円盤と同心の回転円盤の間隙部分の形成された粉砕空間を有する連続混練機等が好適に使用される。
【0025】
上記無機塩としては、水溶性無機塩が好適に使用でき、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩を用いることが好ましい。又、これら無機塩の粒子径は0.5〜50μmであることがより好ましい。このような無機塩は、通常の無機塩を微粉砕することで容易に得られる。
臭素化亜鉛フタロシアニン顔料の平均一次粒径は、通常0.1μm以下、好ましくは0.04μm以下、より好ましくは0.03μm以下、さらに好ましくは0.025μm以下であり、また通常0.005μm以上である。
【0026】
平均一次粒径を上記上限値以下とすることにより、組成物中に異物が発生し難く、高い消偏特性を保ち、十分なコントラストと光透過率とを有する画素を形成することができる。また下限値以上とすることにより、分散安定性が良好で、十分な耐熱性・耐光性を担保した着色樹脂組成物を得ることができる。
なお、顔料の平均一次粒径は次の方法で求めることができる。すなわち、顔料をクロロホルム中に超音波分散し、コロジオン膜貼り付けメッシュ上に滴下して、乾燥させ、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により、顔料の一次粒子像を得る。この像から一次粒径を測定し、下式の計算式の通り個数平均値を計算し平均粒径を求める。
【0027】
有機顔料の場合は、個々の顔料粒子の粒径を、同じ面積となる円の直径に換算した面積円相当径として、複数個、通常200〜300個程度の顔料粒子についてそれぞれ粒径を求めた後、下式の計算式の通り個数平均値を計算し平均粒径を求める。
【0028】
【数1】

【0029】
[(B)黄色顔料]
本発明の着色樹脂組成物は、(B)黄色顔料として、下記定義で表される顔料Y及びC.I.ピグメントイエロー138を含有する。
<顔料Y>
下記構造式で表されるアゾバルビツール酸のニッケルとの1:1錯体又はその互換異性体に、他の化合物が挿入されてなる化合物。
【0030】
【化2】

【0031】
上記式(I)で表されるアゾバルビツール酸のニッケルとの1:1錯体又はその互換異性体(以下、単に「アゾニッケル錯体化合物」と称す)に挿入される化合物としては、メラミン又はメラミン誘導体が好ましく、中でも色材として安定である点で、特に下記式(II)で表される化合物が好ましい。
【0032】
【化3】

【0033】
上記式(II)において、R21、R22及びR23は、各々独立に、水素原子、又は水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基を表す。R21〜R23は、いずれも水素原子である場合が最も好ましい。
前記アゾニッケル錯体化合物(ホスト化合物)の結晶格子中に挿入される、いわゆるゲスト化合物である前記式(II)で表される化合物の量は、ホスト化合物に対して、通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上、また通常200重量%以下、好ましくは120重量%以下、特に好ましくは100重量%以下である。
【0034】
なお、挿入されている前記式(II)で表される化合物は、溶剤などで洗出不可能であり、その量は元素分析値から算出することができる。前記式(II)で表される化合物は、ホスト化合物に含まれるニッケル1原子に対し、2分子含有されていることが、特に好
ましい。
このような化合物は、例えば特開2005−325350号公報等に記載の方法にて製造することができる。なお、顔料Yは、1種類を単独で使用しても、複数種併用してもよい。
【0035】
これら黄色顔料の平均一次粒子径は、通常0.2μm以下、好ましくは0.1μm以下より好ましくは0.04μm以下である。顔料の微粒化に際しては、上述したソルベントソルトミリングのような手法が好適に用いられる。
(含有量)
本発明の着色樹脂組成物は、(B)黄色顔料を、全顔料中、通常10重量%以上、好ましくは20重量%以上、また通常70重量%以下、好ましくは60重量%以下含有する。
【0036】
また、前記顔料Y及びC.I.ピグメントイエロー138の合計の含有量は、全(B)黄色顔料に対して、通常90重量%以上、好ましくは95重量%以上、また通常100重量%以下である。
上記範囲内であると、緑色の画素として好適なスペクトルが得られる点で好ましい。
更に、本発明の着色樹脂組成物は、前記顔料YとC.I.ピグメントイエロー138の含有比率が、重量比で通常1:4以上、好ましくは1:2以上、また通常3:2以下である。
【0037】
上記範囲内であると、得られる画素の輝度が高く、かつ未露光部の現像液に対する溶解性が良好な点で好ましい。
(その他の黄色顔料)
尚、本発明の着色樹脂組成物は、(B)黄色顔料として、前記顔料Y及びC.I.ピグメントイエロー138以外の黄色顔料を含有していてもよい。
【0038】
その他の黄色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー1、1:1、2、3、4、5、6、9、10、12、13、14、16、17、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、41、42、43、48、53、55、61、62、62:1、63、65、73、74、75,81、83、87、93、94、95、97、100、101、104、105、108、109、110、111、116、117、119、120、126、127、127:1、128、129、133、134、136、139、142、147、148、151、153、154、155、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、172、173、174、175、176、180、181、182、183、184、185、188、189、190、191、191:1、192、193、194、195、196、197、198、199、200、202、203、204、205、206、207、208の顔料等が挙げられる。
【0039】
その他の黄色顔料を含有する場合も、上記[(B)黄色顔料](含有量)の項で記載した含有量の範囲内とすればよい。
尚、その他の黄色顔料の粒径は、上記顔料Y及びC.I.ピグメントイエロー138の項で記載したものと同様である。
また、本発明の着色樹脂組成物は、(A)臭素化亜鉛フタロシアニン顔料、(B)黄色顔料の他に、必要に応じて、その他の顔料を適宜含有していてもよい。
本発明の着色樹脂組成物中の全固形分量に対する色材の割合は、通常10〜90重量%、好ましくは25〜90重量%である。
上記範囲内であると、色濃度に対して膜厚が適度であり、液晶セル化の際のギャップ制御が容易である。更に、分散安定性が高く、再凝集や増粘などが置き難いため好ましい。
【0040】
[(E)分散剤]
本発明における(E)分散剤は、顔料が分散し、安定を保つことができれば特に種類を問わず、公知の分散剤を用いることができ、例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系や両性等の分散剤を使用することができるが、ポリマー分散剤が好ましい。具体的には、ブロック共重合体、ポリウレタン、ポリエステル、高分子共重合体のアルキルアンモニウム塩又はリン酸エステル塩、カチオン性櫛型グラフトポリマー等を挙げることができる。これら分散剤の中で、ブロック共重合体、ポリウレタン、カチオン性櫛型グラフトポリマーが好ましい。特にブロック共重合体が好ましく、この中でも親溶剤性を有するAブロック及び窒素原子を含む官能基を有するBブロックからなるブロック共重合体からなり、そのアミン価が80mgKOH/g以上150mgKOH/g以下(有効固形分換算)であるものが特に好ましい。 より好ましくは100mgKOH/g以上、140mgKO
H/g以下である。
【0041】
上記範囲内であると、顔料表面への吸着力が十分で、分散安定性が良好である。
ブロック共重合体としては、アクリル系ブロック共重合体が好ましい。
アクリル系ブロック共重合体は、(A)黄色顔料を極めて効率よく分散できる。これは、分子配列が制御されていることにより、分散剤が顔料に吸着する際に障害となる構造が少ないためと推察される。
【0042】
本発明において、アクリル系ブロック共重合体は、Aブロック及びBブロックからなるABブロック、及び/又はABAブロック共重合体であることが好ましい。
前記アクリル系ブロック共重合体を構成するBブロックは、窒素原子を含む官能基として1〜3級アミノ基を有することが好ましく、該アミノ基は、好ましくは−NR4142(但し、R41及びR42は、各々独立に、置換基を有していてもよい環状又は鎖状のアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよいアラルキル基を表す。)で表わされ、これを含む部分構造として好ましいものは、例えば下記式(1)で表される。
【0043】
【化4】

【0044】
(但し、R41及びR42は、上記のR41及びR42と同義であり、R43は炭素数1以上のアルキレン基であり、R44は水素原子又はメチル基を表す。)
中でも、R41及びR42はメチル基が好ましく、R43はメチレン基、又はエチレン基が好ましく、R44はメチル基であるのが好ましい。このような化合物として下記式で表される部分構造が挙げられる。
【0045】
【化5】

【0046】
上記の如きアミノ基を含有する部分構造は、1つのBブロック中に2種以上含有されていてもよい。その場合、2種以上のアミノ基含有部分構造は、該Bブロック中においてランダム共重合又はブロック共重合の何れの態様で含有されていてもよい。また、本発明の効果を損なわない範囲で、アミノ基を含有しない部分構造が、Bブロック中に一部含まれていてもよく、そのような部分構造の例としては、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー由来の部分構造等が挙げられる。
【0047】
一方、本発明において、(E)分散剤のAブロックは、親溶剤性であり、上述したBブロックを構成するモノマーと共重合可能なモノマーから成るものであれば、特に制限は無い。
Aブロックとしては、例えば、スチレン系モノマー、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、(メタ)アクリル酸塩系モノマー、酢酸ビニル系モノマー、グリシジルエーテル系モノマー等のコモノマーを共重合させたポリマー構造が挙げられる。
【0048】
本発明の着色樹脂組成物に含まれる(E)分散剤は、上述するようなAブロックとBブロックとからなるABブロック又はABAブロック共重合型高分子化合物である。中でもABブロック共重合体が好ましい。このようなブロック共重合体は、例えばリビング重合法にて調製される。
リビング重合法にはアニオンリビング重合法、カチオンリビング重合法、ラジカルリビング重合法がある。具体的には、例えば特開2007−270147号公報に記載の方法が挙げられる。
【0049】
なお、分散剤のアミン価(有効固形分換算)は、分散剤試料中の溶剤を除いた固形分1gあたりの塩基量と当量のKOHの重量で表し、次の方法により測定する。100mLのビーカーに分散剤試料の0.5〜1.5gを精秤し、50mLの酢酸で溶解する。pH電極を備えた自動滴定装置を使って、この溶液を0.1mol/L HClO酢酸溶液にて中和滴定する。滴定pH曲線の変曲点を滴定終点とし次式によりアミン価を求める。
【0050】
アミン価[mgKOH/g]=(561×V)/(W×S)
(但し、W:分散剤試料秤取量[g]、V:滴定終点での滴定量[mL]、S:分散剤試料の固形分濃度[wt%]を表す。)
また、このブロック共重合体の酸価は、該酸価の元となる酸性基の有無及び種類にもよるが、低い方が好ましく、通常50mgKOH/g以下、好ましくは40以下、より好ましくは30以下である。
【0051】
顔料の平均一次粒径が小さい場合、比表面積が増大し単位面積当たりの分散剤吸着量が少なくなる。この場合、前記共重合体からなる分散剤は、他の分散剤よりも効果が大きく好適に用いられる。
本発明における分散剤は、着色樹脂組成物中の顔料全量に対し、好ましくは5〜200重量%、更に好ましくは10〜100重量%程度使用する。
【0052】
本発明の着色樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない限り、その他の分散剤を含んでいてもよい。その他の分散剤としては、例えば、例えば特開2006−343648号公報に記載のものが挙げられる。[分散助剤]
本発明の着色樹脂組成物には、分散助剤を含有していてもよい。ここでいう分散助剤は、顔料誘導体であってもよく、顔料誘導体としては、例えば特開2001−220520号公報、特開2001−271004号公報、特開2002−179976号公報、特開2007−113000号公報、及び特開2007−186681号公報等に記載の各種化合物等を使用することができる。
【0053】
尚、本発明の着色樹脂組成物における分散助剤の含有量は、顔料の総固形分量に対して通常0.1重量%以上、又、通常30重量%以下、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下、更に好ましくは5重量%以下である。添加量を上記の範囲に制御することにより、分散助剤としての効果が発揮され、又、分散性及び分散安定性がより良好である点で好ましい。
【0054】
[分散樹脂]
本発明の着色樹脂組成物には、後述する(C)バインダー樹脂もしくはその他のバインダー樹脂から選ばれた樹脂の一部又は全部を下記の分散樹脂として含有していてもよい。
具体的には、後述する分散処理工程において、前述の(E)分散剤等の成分とともに、(C)バインダー樹脂を含有させることにより、該(C)バインダー樹脂が、(E)分散剤との相乗効果で(A)臭素化亜鉛フタロシアニン顔料、及びその他の顔料の分散安定性に寄与する。結果として(E)分散剤の添加量を減らせる可能性があるため好ましい。
【0055】
又、現像性が向上し、基板の非画素部に未溶解物が残存せず、画素の基板への密着性が向上する、といった効果も奏するため好ましい。
このように、分散処理工程に使用される(C)バインダー樹脂を、分散樹脂と称することがある。分散樹脂は、着色樹脂組成物中の顔料全量に対して0〜200重量%程度使用することが好ましく、10〜100重量%程度使用することがより好ましい。
【0056】
分散樹脂としては、後述する各種(C)バインダー樹脂を使用することができる。
分散樹脂の酸価は0.5mgKOH/g以上が好ましく、1mgKOH/g以上がより好ましく、5mgKOH/g以上が最も好ましく、また300mgKOH/g以下が好ましく、200mgKOH/g以下がより好ましく、150mgKOH/g以下が最も好ましい。酸価を上記の範囲に制御することにより、アルカリ現像性が良好となり、合成上等においても、取り扱いやすくなる。
【0057】
又、分散樹脂のGPCにて測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は、1000以上が好ましく、1500以上がより好ましく、2000以上が最も好ましく、また200000以下が好ましく、50000以下がより好ましく、30000以下が最も好ましい。分子量を上記の範囲に制御することにより、アルカリ現像性が良好となり、又、分散安定性が低下するのを防ぐこともできる。
【0058】
[(C)バインダー樹脂]
(C)バインダー樹脂は、硬化手段により好ましい樹脂は異なる。
本発明の着色樹脂組成物が光重合性樹脂組成物である場合、(C)バインダー樹脂としては、例えば特開平7−207211号、特開平8−259876号、特開平10−300922号、特開平11−140144号、特開平11−174224号、特開2000
−56118号、特開2003−233179号などの各公報等に記載される高分子化合物を使用することができるが、中でも好ましくは下記(C−1)〜(C−5)の樹脂などが挙げられる。
【0059】
(C−1):エポキシ基含有(メタ)アクリレートと、他のラジカル重合性単量体との共重合体に対し、該共重合体が有するエポキシ基の少なくとも一部に不飽和一塩基酸を付加させてなる樹脂、又は該付加反応により生じた水酸基の少なくとも一部に多塩基酸無水物を付加させて得られる、アルカリ可溶性樹脂(以下、「樹脂(C−1)」と称す場合がある。)
(C−2):カルボキシル基含有直鎖状アルカリ可溶性樹脂(C−2)(以下、「樹脂(C−2)」と称す場合がある。)
(C−3):前記樹脂(C−2)のカルボキシル基部分に、エポキシ基含有不飽和化合物を付加させた樹脂(以下「樹脂(C−3)」と称す場合がある。)
(C−4):(メタ)アクリル系樹脂(以下、「樹脂(C−4)」と称す場合がある。)
(C−5):カルボキシル基を有するエポキシアクリレート樹脂(以下「樹脂(C−5)と称す場合がある。)
このうち特に好ましくは樹脂(C−1)が挙げられ、以下該樹脂について説明する。
尚、樹脂(C−2)〜(C−5)は、アルカリ性の現像液によって溶解され、目的とする現像処理が遂行される程度に溶解性を有するものであれば何でもよく、各々、特開2009−025813号公報に同項目として記載のものと同様である。好ましい態様も同様である。
【0060】
(C−1):エポキシ基含有(メタ)アクリレートと、他のラジカル重合性単量体との共重合体に対し、該共重合体が有するエポキシ基の少なくとも一部に不飽和一塩基酸を付加させてなる樹脂、或いは該付加反応により生じた水酸基の少なくとも一部に多塩基酸無水物を付加させて得られるアルカリ可溶性樹脂
樹脂(C−1)の特に好ましい樹脂の一つとして、エポキシ基含有(メタ)アクリレート5〜90モル%と、他のラジカル重合性単量体10〜95モル%との共重合体に対し、該共重合体が有するエポキシ基の10〜100モル%に不飽和一塩基酸を付加させてなる樹脂、或いは該付加反応により生じた水酸基の10〜100モル%に多塩基酸無水物を付加させて得られるアルカリ可溶性樹脂が挙げられる。
【0061】
そのエポキシ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシブチル(メタ)アクリレート、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等が例示できる。中でもグリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。これらのエポキシ基含有(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0062】
上記エポキシ基含有(メタ)アクリレートと共重合させる他のラジカル重合性単量体としては、本発明の効果を損わない限り特に制限はなく、例えば、ビニル芳香族類、ジエン類、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸アミド類、ビニル化合物類、不飽和ジカルボン酸ジエステル類、モノマレイミド類などが挙げられるが、特に下記式(7)で表される構造を有するモノ(メタ)アクリレートが好ましい。
下記式(7)で表される構造を有するモノ(メタ)アクリレートに由来する繰返し単位は、「他のラジカル重合性単量体」に由来する繰返し単位中、5〜90モル%含有するものが好ましく、10〜70モル%含有するものが更に好ましく、15〜50モル%含有するものが特に好ましい。
【0063】
【化6】

【0064】
上記式(7)中、R89は水素原子又はメチル基を示し、R90は下記式(8)で表される構造を示す。
【0065】
【化7】

【0066】
上記式(8)中、R91〜R98は、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示す。尚、R96とR98とが、互いに連結して環を形成していてもよい。
96とR98が連結して形成される環は、脂肪族環であるのが好ましく、飽和又は不飽和のいずれでもよく、更に炭素数は5〜6であることが好ましい。
中でも、式(8)で表される構造中、特に下記構造式(8a)、(8b)、又は(8c)で表されるものが好ましい。
【0067】
【化8】

【0068】
尚、前記式(8)で表される構造を有するモノ(メタ)アクリレートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記式(8)で表される構造を有するモノ(メタ)アクリレート以外の、「他のラジカル重合性単量体」としては、着色樹脂組成物に優れた耐熱性及び強度を向上しうる点で、スチレン、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボロニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、が挙げられる。
【0069】
上記モノマー群から選択された少なくとも1種に由来する繰返し単位の含有割合が、1〜70モル%であるものが好ましく、3〜50モル%であるものが更に好ましい。
尚、前記エポキシ基含有(メタ)アクリレートと、前記他のラジカル重合性単量体との共重合反応には、公知の溶液重合法が適用される。
本発明において、前記エポキシ基含有(メタ)アクリレートと前記他のラジカル重合性単量体との共重合体としては、エポキシ基含有(メタ)アクリレートに由来する繰返し単位5〜90モル%と、他のラジカル重合性単量体に由来する繰返し単位10〜95モル%と、からなるものが好ましく、前者20〜80モル%と、後者80〜20モル%とからなるものが更に好ましく、前者30〜70モル%と、後者70〜30モル%とからなるものが特に好ましい。
【0070】
上記範囲内であると、後述の重合性成分及びアルカリ可溶性成分の付加量が十分であり、また、耐熱性や強度が十分であるため好ましい。
上記の様に合成された、エポキシ基含有共重合体のエポキシ基部分に、不飽和一塩基酸(重合性成分)と、更に多塩基酸無水物(アルカリ可溶性成分)とを反応させる。
ここで、エポキシ基に付加させる不飽和一塩基酸としては、公知のものを使用することができ、例えば、エチレン性不飽和二重結合を有する不飽和カルボン酸が挙げられる。
【0071】
具体例としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、o−、m−、p−ビニル安息香酸、α−位がハロアルキル基、アルコキシル基、ハロゲン原子、ニトロ基、又はシアノ基などで置換された(メタ)アクリル酸等のモノカルボン酸等が挙げられる。中でも好ましくは(メタ)アクリル酸である。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0072】
このような成分を付加させることにより、本発明で用いるバインダー樹脂に重合性を付与することができる。
これらの不飽和一塩基酸は、通常、前記共重合体が有するエポキシ基の10〜100モル%に付加させるが、好ましくは30〜100モル%、より好ましくは50〜100モル%に付加させる。前記範囲内であると、着色樹脂組成物の経時安定性に優れるため好ましい。尚、共重合体のエポキシ基に不飽和一塩基酸を付加させる方法としては、公知の方法を採用することができる。
【0073】
更に、共重合体のエポキシ基に不飽和一塩基酸を付加させたときに生じる水酸基に付加させる多塩基酸無水物としては、公知のものが使用できる。
例えば、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水クロレンド酸等の二塩基酸無水物;無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸無水物等の三塩基以上の酸の無水物が挙げられる。中でも、無水コハク酸及びテトラヒドロ無水フタル酸が好ましい。これらの多塩基酸無水物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0074】
このような成分を付加させることにより、本発明で用いるバインダー樹脂にアルカリ可溶性を付与することができる。
これらの多塩基酸無水物は、通常、前記共重合体が有するエポキシ基に、不飽和一塩基酸を付加させることにより生じる水酸基の10〜100モル%に付加させるが、好ましくは20〜90モル%、より好ましくは30〜80モル%に付加させる。
【0075】
上記範囲内であると、現像時の残膜率及び現像液に対する溶解性が十分であるため好ましい。
尚、当該水酸基に多塩基酸無水物を付加させる方法としては、公知の方法を採用することができる。
更に、光感度を向上させるために、前述の多塩基酸無水物を付加させた後、生成したカルボキシル基の一部にグリシジル(メタ)アクリレートや重合性不飽和基を有するグリシジルエーテル化合物を付加させてもよい。このような樹脂の構造に関しては、例えば特開平8−297366号公報や特開2001−89533号公報に記載されている。
【0076】
上述のバインダー樹脂(C−1)の、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、3000〜100000が好ましく、5000〜50000が特に好ましい。分子量が3000未満であると、耐熱性や膜強度に劣る可能性があり、100000を超えると現像液に対する溶解性が不足する傾向がある。また、分子量分布の目安として、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の比は、2.0〜5.0が好ましい。
【0077】
なお、バインダー樹脂(C−1)の酸価は、通常10〜200mgKOH/g、好ましくは15〜150mgKOH/g、更に好ましくは25〜100mgKOH/gである。
上記範囲内であると、現像液に対する溶解性が良好で、また膜荒れなどが生じ難いため好ましい。
また、(C)バインダ樹脂の含有割合は、全固形分中、通常0.1〜80重量%、好ま
しくは1〜60重量%である。
上記範囲内であると、基板への密着性が良好であり、また露光部への現像液の浸透性が適度で、画素の表面平滑性や感度が良好である点で好ましい。
【0078】
[(F)重合性モノマー]
本発明の着色樹脂組成物は、(F)重合性モノマーを含有することが好ましい。(F)重合性モノマーは、重合可能な低分子化合物であれば特に制限はないが、エチレン性二重結合を少なくとも1つ有する付加重合可能な化合物(以下、「エチレン性化合物」と言う場合がある。)が好ましい。
エチレン性化合物は、本発明の着色樹脂組成物が活性光線の照射を受けた場合、前記光重合開始成分の作用により付加重合し、硬化するようなエチレン性二重結合を有する化合物である。尚、本発明における(F)重合性モノマーは、いわゆる高分子物質に相対する概念を意味し、狭義の単量体以外に二量体、三量体、オリゴマーも包含する。
【0079】
(F)重合性モノマーにおけるエチレン性化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸;モノヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル;脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル;芳香族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル;不飽和カルボン酸と多価カルボン酸及び前述の脂肪族ポリヒドロキシ化合物、芳香族ポリヒドロキシ化合物等の多価ヒドロキシ化合物とのエステル化反応により得られるエステル;ポリイソシアネート化合物と(メタ)アクリロイル基含有ヒドロキシ化合物とを反応させたウレタン骨格を有するエチレン性化合物;等が挙げられる。
【0080】
脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。また、これら(メタ)アクリル酸エステルの(メタ)アクリル酸部分を、イタコン酸部分に代えたイタコン酸エステル、クロトン酸部分に代えたクロトン酸エステル、或いは、マレイン酸部分に代えたマレイン酸エステル等が挙げられる。
【0081】
芳香族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルとしては、ハイドロキノンジ(メタ)アクリレート、レゾルシンジ(メタ)アクリレート、ピロガロールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
不飽和カルボン酸と多価カルボン酸及び多価ヒドロキシ化合物とのエステル化反応により得られるエステルは、必ずしも単一物ではなく、混合物であってもよい。代表例としては、(メタ)アクリル酸、フタル酸、及びエチレングリコールの縮合物;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、及びジエチレングリコールの縮合物;(メタ)アクリル酸、テレフタル酸、及びペンタエリスリトールの縮合物;(メタ)アクリル酸、アジピン酸、ブタンジオール、及びグリセリンの縮合物等が挙げられる。
【0082】
ポリイソシアネート化合物と(メタ)アクリロイル基含有ヒドロキシ化合物とを反応させたウレタン骨格を有するエチレン性化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート;トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート
と、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ〔1,1,1−トリ(メタ)アクリロイルオキシメチル〕プロパン等の(メタ)アクリロイル基含有ヒドロキシ化合物との反応物が挙げられる。
【0083】
その他、本発明に用いられるエチレン性化合物の例としては、エチレンビス(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;フタル酸ジアリル等のアリルエステル類;ジビニルフタレート等のビニル基含有化合物等が挙げられる。
これらの中では脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルが好ましく、ペンタエリスリトール又はジペンタエリスリトールの(メタ)アクリル酸エステルがより好ましく、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0084】
また、エチレン性化合物は酸価を有するモノマーであってもよい。酸価を有するモノマーとしては、例えば、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルであり、脂肪族ポリヒドロキシ化合物の未反応のヒドロキシル基に非芳香族カルボン酸無水物を反応させて酸基を持たせた多官能単量体が好ましく、特に好ましくは、このエステルにおいて、脂肪族ポリヒドロキシ化合物がペンタエリスリトール及び/又はジペンタエリスリトールであるものである。
【0085】
これらの単量体は1種を単独で用いてもよいが、製造上、単一の化合物を得ることは難しいことから、2種以上の混合物を使用してもよい。
また、必要に応じて(F)重合性モノマーとして酸基を有しない多官能モノマーと酸基を有する多官能モノマーを併用してもよい。
酸基を有する多官能モノマーの好ましい酸価としては、0.1〜40mgKOH/gであり、特に好ましくは5〜30mgKOH/gである。
【0086】
上記範囲内であると、現像溶解特性が低下しにくく、また製造や取り扱いが容易である。更に、光重合性能が落ち難く、画素の表面平滑性等の硬化性が良好であるため好ましい。
本発明において、より好ましい酸基を有する多官能モノマーは、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートのコハク酸エステルを主成分とする混合物である。この多官能モノマーと他の多官能モノマーを組み合わせて使用することもできる。
【0087】
本発明の着色樹脂組成物において、これらの(F)重合性モノマーの含有割合は、全固形分中、通常1重量%以上、好ましくは5重量%以上、更に好ましくは10重量%以上であり、また、通常80重量%以下、好ましくは70重量%以下、更に好ましくは50重量%以下、特に好ましくは40重量%以下である。
また、(F)重合性モノマーの全顔料、つまり(A)臭素化亜鉛フタロシアニン顔料、(B)黄色顔料及びその他の顔料の総量に対する比率は、通常1重量%以上、好ましくは5重量%以上、更に好ましくは10重量%以上、特に好ましくは20重量%以上であり、また、通常200重量%以下、好ましくは150重量%以下、更に好ましくは110重量%以下である。
上記範囲内であると、光硬化が適度であり、現像時の密着不良が置き難く、また現像後の断面が逆テーパー形状になり難く、更に溶解性低下による剥離現象・抜け不良が置き難いため好ましい。
【0088】
[(G)光重合開始成分及び/又は熱重合開始成分]
本発明の着色樹脂組成物は、塗膜を硬化させる目的で、(G)光重合開始成分及び/又は熱重合開始成分を含むことが好ましい。ただし、硬化の方法はこれらの開始剤によるもの以外でもよい。
特に、本発明の着色樹脂組成物が、(C)成分としてエチレン性二重結合を有する樹脂を含む場合や、(F)成分としてエチレン性化合物を含む場合には、光を直接吸収し、又は光増感されて分解反応又は水素引き抜き反応を起こし、重合活性ラジカルを発生する機能を有する光重合開始成分及び/又は熱によって重合活性ラジカルを発生する熱重合開始成分を含有することが好ましい。なお、本発明において光重合開始成分としての(G)成分とは、光重合開始剤(以下、任意に(G1)成分と称する)に重合加速剤(以下、任意に(G2)成分と称する)、増感色素(以下、任意に(G3)成分と称する)などの付加剤が併用されている混合物を意味する。
【0089】
(光重合開始成分)
本発明の着色樹脂組成物に含有されていてもよい。光重合開始成分は、通常、(G1)光重合開始剤、及び必要に応じて添加される(G2)重合加速剤及び(G3)増感色素等の付加剤との混合物として用いられ、光を直接吸収し、或いは光増感されて分解反応又は水素引き抜き反応を起こし、重合活性ラジカルを発生する機能を有する成分である。
【0090】
光重合開始成分を構成する(G1)光重合開始剤としては、例えば、特開昭59−152396号、特開昭61−151197号各公報等に記載のチタノセン誘導体類;特開平10−300922号、特開平11−174224号、特開2000−56118号各公報等に記載されるヘキサアリールビイミダゾール誘導体類;特開平10−39503号公報等に記載のハロメチル化オキサジアゾール誘導体類、ハロメチル−s−トリアジン誘導体類、N−フェニルグリシン等のN−アリール−α−アミノ酸類、N−アリール−α−アミノ酸塩類、N−アリール−α−アミノ酸エステル類等のラジカル活性剤、α−アミノアルキルフェノン誘導体類;特開2000−80068号公報等に記載のオキシムエステル系誘導体類等が挙げられる。
【0091】
具体的には、例えば国際公開第2009/107734号パンフレット等に記載の光重合開始剤等が挙げられる。
これら光重合開始剤の中では、α−アミノアルキルフェノン誘導体類、オキシムエステル系誘導体類、ビイミダゾール誘導体類、アセトフェノン誘導体類、及びチオキサントン誘導体類がより好ましい。
【0092】
また、オキシムエステル系誘導体類としては、1,2−オクタンジオン,1−〔4−(フェニルチオ)フェニル〕−,2−(o−ベンゾイルオキシム)、エタノン,1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕,1−(o−アセチルオキシム)、及び下記式(XI)で表される化合物等が挙げられる。
【0093】
【化9】

【0094】
(式(XI)中、R101は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜25のアルケニル基、炭素数3〜20のヘテロアリール基または炭素数4〜25のヘテロアリールアルキル基を示し、これらはいずれも置換基を有していてもよい。あるいは、R101はXまたはZと結合し、環を形成していてもよい。
102は、炭素数2〜20のアルカノイル基、炭素数3〜25のアルケノイル基、炭素数4〜8のシクロアルカノイル基、炭素数7〜20のアリーロイル基、炭素数2〜10
のアルコキシカルボニル基、炭素数7〜20のアリールオキシカルボニル基、炭素数2〜20のヘテロアリール基、炭素数3〜20のヘテロアリーロイル基または炭素数2〜20のアルキルアミノカルボニル基を示し、これらはいずれも置換基を有していてもよい。
Xは、置換基を有していてもよい、2個以上の環が縮合してなる、2価の芳香族炭化水素環基および/または芳香族複素基を示す。Zは、置換基を有していてもよい芳香族基を示す。)
なお、前記式(XI)で表される化合物の中でも、Xが置換基を有していてもよいカルバゾール環である化合物が好ましく、具体的には下記式(XII)で表される化合物などが挙げられ、中でも下記式(XIII)で表される化合物が特に好ましい。
【0095】
【化10】

【0096】
(式中、R101、R102およびZは、前記式(XI)におけると同義である。R10
〜R109は各々独立に水素原子または任意の置換基を示す。)
【0097】
【化11】

【0098】
(式中、R101aは、炭素数1〜3のアルキル基、または下記式(XIIIa)で表される基を示す。
【0099】
【化12】

【0100】
(式中、R103およびR104は各々独立に、水素原子、フェニル基またはN−アセチ
ル−N−アセトキシアミノ基を示す。
*は、結合部位を表す。)
102aは、炭素数2〜4のアルカノイル基を示し、Xaは、窒素原子が1〜4のア
ルキル基で置換されていてもよい3,6−カルバゾリル基を示す。Zaは、アルキル基で
置換されていてもよいフェニル基またはモルホリノ基で置換されていてもよいナフチル基を示す。)
その他に、ベンゾインアルキルエーテル類、アントラキノン誘導体類;2−メチル−(4’−メチルチオフェニル)−2−モルホリノ−1−プロパノン等のアセトフェノン誘導体類、2−エチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等のチオキサントン誘導体類、安息香酸エステル誘導体類、アクリジン誘導体類、フェナジン誘導体類、アンスロン誘導体類等も挙げられる。
【0101】
これら光重合開始剤の中では、α−アミノアルキルフェノン誘導体類、チオキサントン誘導体類、オキシムエステル系誘導体類がより好ましい。特に、オキシムエステル系誘導体類が好ましい。
必要に応じて用いられる(G2)重合加速剤としては、例えば、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等のN,N−ジアルキルアミノ安息香酸アルキルエステル類;2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール等の複素環を有するメルカプト化合物;脂肪族多官能メルカプト化合物等のメルカプト化合物類等が挙げられる。
【0102】
これらの(G1)光重合開始剤及び(G2)重合加速剤は、それぞれ1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、必要に応じて感応感度を高める目的で、(G3)増感色素が用いられる。増感色素は、画像露光光源の波長に応じて、適切なものが用いられるが、例えば特開平4−221958号、特開平4−219756号各公報等に記載のキサンテン系色素;特開平3−239703号、特開平5−289335号各公報等に記載の複素環を有するクマリン系色素;特開平3−239703号、特開平5−289335号各公報等に記載の3−ケトクマリン系色素;特開平6−19240号公報等に記載のピロメテン系色素;特開昭47−2528号、特開昭54−155292号、特公昭45−37377号、特開昭48−84183号、特開昭52−112681号、特開昭58−15503号、特開昭60−88005号、特開昭59−56403号、特開平2−69号、特開昭57−168088号、特開平5−107761号、特開平5−210240号、特開平4−288818号各公報等に記載のジアルキルアミノベンゼン骨格を有する色素等が挙げられる。
【0103】
(G3)増感色素もまた1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の着色樹脂組成物において、これらの(G)光重合開始成分の含有量は、全固形分中、通常0.1重量%以上、好ましくは0.2重量%以上、更に好ましくは0.5重量%以上、また、通常40重量%以下、好ましくは30重量%以下、更に好ましくは20重量%以下の範囲である。
上記範囲内であると、露光光線に対する感度が良好で、また未露光部分の現像駅に対する溶解性も良好で、現像不良などを誘起し難い点で好ましい。
【0104】
(熱重合開始成分)
本発明の着色樹脂組成物に含有されていてもよい熱重合開始成分(熱重合開始剤)の具体例としては、アゾ系化合物、有機過酸化物及び過酸化水素等が挙げられる。これらのうち、アゾ系化合物が好適に用いられる。より具体的には、例えば国際公開第2009/107734号パンフレット等に記載の熱重合開始剤を用いることができる。
これらの熱重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0105】
[任意成分]
本発明の着色樹脂組成物は、前記各成分の外に、界面活性剤、有機カルボン酸及び/又は有機カルボン酸無水物、熱硬化性化合物、可塑剤、熱重合防止剤、保存安定剤、表面保護剤、密着向上剤、現像改良剤等を含有していてもよい。また、色素として顔料を含有する場合には、分散剤や分散助剤を含有してもよい。これら任意成分としては、例えば特開2007−113000号公報記載の各種化合物を使用することができる。
【0106】
[界面活性剤]
本発明の着色樹脂組成物は、更に界面活性剤を含有していてもよい。界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、非イオン性、両性界面活性剤等、各種のものを用いることができるが、電圧保持率や有機溶剤に対する相溶性等の諸特性に悪影響を及ぼす可能性が低い点で、非イオン性界面活性剤を用いるのが好ましい。
【0107】
界面活性剤としては、例えば特開2009-25813号公報記載のものを使用できる

これら界面活性剤の含有量は、本発明のカラーフィルタ用着色樹脂組成物の全固形分中において、好ましくは0.001重量%以上、より好ましくは0.005重量%以上、更に好ましくは0.01重量%以上である。又、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、更に好ましくは1重量%以下の範囲で用いられる。
【0108】
[着色樹脂組成物の調製方法]
本発明において、着色樹脂組成物は、適宜の方法により調製することができるが、例えば、前記(A)臭素化亜鉛フタロシアニン顔料、(B)黄色顔料、(C)バインダー樹脂その他の添加剤と共に混合することで調製できる。
より好ましい調製方法としては、(A)臭素化亜鉛フタロシアニン顔料、及びその他の顔料(青色顔料、黄色顔料を含む)を溶剤中、(E)分散剤及び必要に応じて添加する分散助剤の存在下で、場合により(C)バインダー樹脂の一部と共に、例えば、ペイントシェイカー、サンドグラインダー、ボールミル、ロールミル、ストーンミル、ジェットミル、ホモジナイザー等を用いて、粉砕しつつ混合・分散して着色分散液を調製する。該着色分散液に、(B)光重合開始剤、(C)バインダー樹脂、必要に応じて、(F)重合性モノマーなどの添加剤を添加し、混合することにより調製する方法を挙げることができる。
【0109】
[着色樹脂組成物の応用]
本発明の着色樹脂組成物は、通常、すべての構成成分が溶剤中に溶解又は分散された状態である。この着色樹脂組成物が基板上へ供給され、カラーフィルタや液晶表示装置、有機EL表示装置などの構成部材が形成される。
以下、本発明の着色樹脂組成物の応用例として、カラーフィルタとしての応用、及びそれらを用いた液晶表示装置(パネル)及び有機EL表示装置について、説明する。
【0110】
<カラーフィルタ>
本発明のカラーフィルタは、本発明の着色樹脂組成物から形成された画素を有するものである。
以下に、本発明のカラーフィルタを形成する方法について説明する。
カラーフィルタの画素は、様々な方法で形成することができる。ここでは光重合性の着色樹脂組成物を使用してフォトリソグラフィ法にて形成する場合を例に説明するが、製造方法はこれに限定されるものではない。
【0111】
まず、基板の表面上に、必要に応じて、画素を形成する部分を区画するようにブラックマトリックスを形成し、この基板上に、本発明の着色樹脂組成物を塗布したのち、プレベークを行って溶剤を蒸発させ、塗膜を形成する。次いで、この塗膜にフォトマスクを介し
て露光したのち、アルカリ現像液を用いて現像して、塗膜の未露光部を溶解除去し、その後ポストベークすることにより、赤色、緑色、青色の各画素パターンを形成して、カラーフィルタを作製することができる。
【0112】
画素を形成する際に使用される基板としては、透明で適度な強度を有するものであれば特に限定されないが、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂 ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、熱可塑性樹脂製シート、エポキシ樹脂、熱硬化性樹脂、各種ガラスなどが挙げられる。
また、これらの基板には、所望により、シランカップリング剤やウレタン系樹脂などによる薄膜形成処理、コロナ放電処理やオゾン処理などの表面処理等、適宜前処理を施してもよい。
【0113】
着色樹脂組成物を基板に塗布する際には、スピナー法、ワイヤーバー法、フローコート法、スリット・アンド・スピン法、ダイコート法、ロールコート法、スプレーコート法等が挙げられる。中でも、スリット・アンド・スピン法、及びダイコート法が好ましい。
塗布膜の厚さは、乾燥後の膜厚として、通常、0.2〜20μm、好ましくは0.5〜10μm、特に好ましくは0.8〜5.0μmである。
【0114】
上記範囲内であると、パターン現像や液晶セル化工程でのギャップ調整が容易であり、また所望の色発現がし易い点で好ましい。
画素を形成する際に使用される放射線としては、例えば、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等を使用することができるが、波長が190〜450nmの範囲にある放射線が好ましい。
【0115】
画像露光に使用される、波長190〜450nmの放射線を用いるための光源は、特に限定されるものではないが、例えば、キセノンランプ、ハロゲンランプ、タングステンランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、中圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、蛍光ランプ等のランプ光源;アルゴンイオンレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザー、窒素レーザー、ヘリウムカドミニウムレーザー、半導体レーザー等のレーザー光源等が挙げられる。特定の波長の光を照射して使用する場合には、光学フィルターを利用することもできる。
【0116】
放射線の露光量は、10〜10,000J/mが好ましい。
また、前記アルカリ現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、メタ珪酸ナトリウム、燐酸ナトリウム、燐酸カリウム、燐酸水素ナトリウム、燐酸水素カリウム、燐酸二水素ナトリウム、燐酸二水素カリウム、水酸化アンモニウム等の無機アルカリ性化合物;モノ−・ジ−・又はトリ−エタノールアミン、モノ−・ジ−・又はトリ−メチルアミン、モノ−・ジ−・又はトリ−エチルアミン、モノ−・又はジ−イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノ−・ジ−・又はトリ−イソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジイミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、コリン等の有機アルカリ性化合物等の水溶液が好ましい。
【0117】
前記アルカリ現像液には、例えばイソプロピルアルコール、ベンジルアルコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、フェニルセロソルブ、プロピレングリコール、ジアセトンアルコール等の水溶性有機溶剤や界面活性剤等を適量添加することもできる。なお、アルカリ現像後は、通常、水洗する。
現像処理法としては、浸漬現像法、スプレー現像法、ブラシ現像法、超音波現像法等の何れかの方法によることができる。現像条件は、室温(23℃)で5〜300秒が好まし
い。
【0118】
現像処理の条件には特に制限はないが、現像温度は通常10℃以上、中でも15℃以上、更には20℃以上、また、通常50℃以下、中でも45℃以下、更には40℃以下の範囲が好ましい。
現像方法は、浸漬現像法、スプレー現像法、ブラシ現像法、超音波現像法等の何れかの方法によることができる。
【0119】
このようにして作製されたカラーフィルタを液晶表示装置に使用する場合には、このままの状態で画像上にITO等の透明電極を形成して、カラーディスプレー、液晶表示装置等の部品の一部として使用されるが、表面平滑性や耐久性を高めるため、必要に応じ、画像上にポリアミド、ポリイミド等のトップコート層を設けることもできる。また、一部、平面配向型駆動方式(IPSモード)等の用途においては、透明電極を形成しないこともある。また、垂直配向型駆動方式(MVAモード)では、リブを形成することもある。また、ビーズ散布型スペーサに代わり、フォトリソによる柱構造(フォトスペーサー)を形成することもある。
【0120】
<液晶表示装置>
本発明の液晶表示装置は、上述の本発明のカラーフィルタを用いたものである。本発明の液晶表示装置の型式や構造については特に制限はなく、本発明のカラーフィルタを用いて常法に従って組み立てることができる。
例えば、「液晶デバイスハンドブック」(日刊工業新聞社、1989年9月29日発行、日本学術振興会第142委員会著)に記載の方法で、本発明の液晶表示装置を形成することができる。
【0121】
<有機EL表示装置>
本発明のカラーフィルタを有する有機EL表示装置を作成する場合、例えば図1に示すように、透明支持基板10上に、本発明の着色樹脂組成物により画素20が形成された青色カラーフィルタ上に有機保護層30及び無機酸化膜40を介して有機発光体500を積層することによって多色の有機EL素子を作製する。
【0122】
有機発光体500の積層方法としては、カラーフィルタ上面へ透明陽極50、正孔注入層51、正孔輸送層52、発光層53、電子注入層54、及び陰極55を逐次形成していく方法や、別基板上へ形成した有機発光体500を無機酸化膜40上に貼り合わせる方法などが挙げられる。このようにして作製された有機EL素子100は、パッシブ駆動方式の有機EL表示装置にもアクティブ駆動方式の有機EL表示装置にも適用可能である。
【実施例】
【0123】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
尚、下記実施例において「部」は「重量部」を表わす。
【0124】
[1]樹脂の合成
<合成例1:バインダー樹脂Aの合成>
反応槽として冷却管を付けたセパラブルフラスコを準備し、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート400重量部を仕込み、窒素置換したあと、攪拌しながらオイルバスで加熱して反応槽の温度を90℃まで昇温した。
一方、モノマー槽中にジメチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート30重量部、メタクリル酸60重量部、メタクリル酸シクロヘキシル110重量部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート5.2重量部、プロピレング
リコールモノメチルエーテルアセテート40重量部を仕込み、連鎖移動剤槽にn−ドデシルメルカプタン5.2重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート27重量部を仕込み、反応槽の温度が90℃に安定してからモノマー槽および連鎖移動剤槽から滴下を開始し、重合を開始させた。温度を90℃に保ちながら滴下をそれぞれ135分かけて行い、滴下が終了して60分後に昇温を開始して反応槽を110℃にした。
【0125】
3時間、110℃を維持した後、セパラブルフラスコにガス導入管を付け、酸素/窒素=5/95(v/v)混合ガスのバブリングを開始した。次いで、反応槽に、メタクリル酸グリシジル39.6重量部、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)0.4重量部、トリエチルアミン0.8重量部を仕込み、そのまま110℃で9時間反応させた。こうして得られたバインダー樹脂AのGPCにより測定した重量平均分子量Mwは8000、酸価は101mgKOH/gであった。
【0126】
<合成例2:バインダー樹脂Bの合成>
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート145重量部を窒素置換しながら攪拌し、120℃に昇温した。ここにスチレン10重量部、グリシジルメタクリレート85.2重量部およびトリシクロデカン骨格を有するモノアクリレート(日立化成社製FA−513M)66重量部を滴下し、および2.2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル8.47重量部を3時間かけて滴下し、更に90℃で2時間攪拌し続けた。次に反応容器内を空気置換に変え、アクリル酸43.2重量部にトリスジメチルアミノメチルフェノール0.7重量部およびハイドロキノン0.12重量部を投入し、100℃で12時間反応を続けた。その後、テトラヒドロ無水フタル酸(THPA)56.2重量部、トリエチルアミン0.7重量部を加え、100℃3.5時間反応させた。こうして得られたバインダ樹脂のGPCにより測定した重量平均分子量Mwは約8400 酸価80mgKOH/gであった。
さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加え、固形分濃度を44%に調整した。
【0127】
[2]顔料分散液の調製
[2−1]緑色顔料分散液の調製
(A)臭素化亜鉛フタロシアニン顔料としてC.I.ピグメントグリーン58(DIC社製;以下、「G58」と略す)を12.7重量部、分散剤として「BYK−LPN6919」(ビックケミー社製)(メタクリル酸系ブッロク共重合体、アミン価121mgKOH/g、酸価1mgKOH/g以下)を固形分換算で3.2重量部、バインダー樹脂として合成例1のバインダー樹脂A(RD199)を固形分換算で4.2重量部を混合し、溶剤と
してプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用い、固形分濃度20%に調整した。この混合液100.5重量部と径0.5mmのジルコニアビーズ300重量部をステンレス容器に充填し、ペイントシェーカーにて6時間分散させて緑色顔料分散液を調製した。
【0128】
[2−2]黄色顔料分散液(I)の調製
顔料YとしてE4GN−GT(ランクセス社製)を11.4重量部、分散剤としてBYK−LPN6919(ビックケミー社製)を固形分換算で3.7重量部、樹脂として合成例1のバインダー樹脂Aを固形分換算で4.9重量部を混合し、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用い、固形分濃度20%に調整した。この混合液100重量部と径0.5mmのジルコニアビーズ300重量部をステンレス容器に充填し、ペイントシェーカーにて6時間分散させて黄色顔料分散液(I)を調製した。
【0129】
[2−3]黄色顔料分散液(II)の調製
C.I.ピグメントイエロー138(大日精化社製;以下、「Y138」と略す)を14
.7重量部、分散剤としてBYK−LPN6919(ビックケミー社製)を固形分換算で5.9重量部、樹脂として合成例1のバインダー樹脂Aを固形分換算で5.1重量部を混合し、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用い、固形分濃度25%に調整した。この混合液102.8重量部、径0.5mmのジルコニアビーズ300重量部をステンレス容器に充填し、ペイントシェーカーにて6時間分散させて黄色顔料分散液(II)を調製した。
【0130】
[3]着色樹脂組成物の調製
前記[2−1]〜[2−3]で調製した分散液、バインダー樹脂B、重合性モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、光重合開始成分として「IRGACURE 907」(2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−
モルフォリノプロパン−1−オン)(BASF社製)と「IRGACURE OXE02」(エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾールー3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)(BASF社製)と「PETP」(ペンタエリスリトール=テトラキス(3−メルカプトプロピオナート))(淀化学社製)及び界面活性剤としてF−475(フッ素系界面活性剤)(DIC社製)をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで希釈して固形分濃度1%としたものを表1に示す割合で混合し、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用いて固形分濃度20%になるように実施例、比較例の着色樹脂組成物を調製した。
【0131】
【表1】

【0132】
尚、表1中の数値は、いずれも添加する各成分の重量部を表す。
また、表1で示される実施例、比較例における顔料の混合割合及び顔料YとC.I.ピグメントイエロー138の含有比率を表2に示した。
【0133】
【表2】

【0134】
[4]色度及び輝度の測定
洗浄したガラス基板AN100(旭硝子社製)に、着色組成物をそれぞれスピンコート塗布し、80℃のホットプレートにて3分間プリベークを行った。
次に、高圧水銀灯により60mj/cm2で露光した後、0.04重量%水酸化カリウ
ム水溶液を使用し、現像液温度23℃で0.25MPa圧で40秒間スプレー現像した。基板は現像後、十分な水でリンスした後、クリーンエアで乾燥した。その後、230℃のオーブンにて30分間ポストベークを行った。その後、分光光度計U−3310(日立製作所製)によりC光源での色度、輝度を測定した。
【0135】
[5]溶解時間の測定
色度の測定と同様に、洗浄したガラス基板AN100(旭硝子社製)上に着色組成物を塗布・乾燥し、露光した後、0.04重量%水酸化カリウム水溶液を用いて、現像液温度23℃、圧力0.25MPaでスプレー現像したときに、未露光部の着色組成物が現像液へ完全に溶解し、基板が露出した時間を溶解時間とした。
【0136】
上記のように測定した実施例1から4、比較例1から3の色度と溶解時間をまとめたものを表3に、溶解時間と輝度(LY)の関係をグラフにまとめたものを図2に示した。
【0137】
【表3】

【0138】
表3に示すが如く、本発明の着色樹脂組成物を用いて形成された画素は、溶解時間が短いことと、高輝度であることが両立されている。
【符号の説明】
【0139】
100 有機EL素子
20 画素
30 有機保護層
40 無機酸化膜
500 有機発光体
51 正孔注入層
54 電子注入層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)臭素化亜鉛フタロシアニン顔料、(B)黄色顔料、(C)バインダー樹脂、及び(D)溶剤を含有する着色樹脂組成物であって、
該(B)黄色顔料として、下記定義で表される顔料Y及びC.I.ピグメントイエロー138を含有し、
該顔料Y及びC.I.ピグメントイエロー138の合計の含有量が、全(B)黄色顔料に対して、90重量%以上であり、
該顔料YとC.I.ピグメントイエロー138の含有比率が、重量比で1:4〜3:2であることを特徴とする、着色樹脂組成物。
<顔料Y>
下記構造式で表されるアゾバルビツール酸のニッケルとの1:1錯体又はその互換異性体に、他の化合物が挿入されてなる化合物。
【化1】

【請求項2】
前記(A)臭素化亜鉛フタロシアニン顔料が、C.I.ピグメントグリーン58であることを特徴とする、請求項1に記載の着色樹脂組成物。
【請求項3】
さらに(E)分散剤を含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の着色樹脂組成物。
【請求項4】
前記(E)分散剤が、ブロック共重合体であることを特徴とする、請求項3に記載の着色樹脂組成物。
【請求項5】
更に(F)重合性モノマーを含有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の着色樹脂組成物。
【請求項6】
更に(G)光重合開始成分及び/又は熱重合開始成分を含有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の着色樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の着色樹脂組成物を用いて作成した画素を有することを特徴とする、カラーフィルタ。
【請求項8】
請求項7に記載のカラーフィルタを有することを特徴とする、液晶表示装置。
【請求項9】
請求項7に記載のカラーフィルタを有することを特徴とする、有機EL表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−37276(P2013−37276A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174987(P2011−174987)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】