説明

着色用の安定なエマルジョン及びその製造方法

【課題】
水性食品の透明かつ安定な着色を可能にする食品用色素水溶液として利用できる安定なカロチノイド類含有エマルジョン、その製造方法及びそれらの着色料としての用途を提供することを目的とする。
【解決手段】
カロチノイド類含有オイル10重量部に対し、(a)グリセリン40〜70重量部、(b)グリセリン脂肪酸エステル0.5〜10重量部、(c)ショ糖脂肪酸エステル0.5〜10重量部、及び水からなるカロテノイド含有エマルジョンを調整する。このエマルジョンは、飲料などの水性食品の透明かつ安定な着色を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は酸性水溶液中で安定なカロチノイド含有エマルジョン、好ましくはアスタキサンチン含有エマルジョン、製造方法及びその着色料としての用途に関する。本発明の第2はこの安定なカロチノイド含有エマルジョン、好ましくはアスタキサンチン含有エマルジョンを溶解させた安定なO/Wエマルジョン、その製造方法及び安定な着色水溶液に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水性食品の透明かつ安定な着色を可能にする食品用着色料としては、天然由来の安全なものが要求され、また食品の製造において重要となってきている。カロチノイド類、例えばアスタキサンチン及びそのエステル類は、黄色から赤色の範囲の色調であり、これらを用いて安定な着色水溶液を製造する方法が報告されている。
【0003】
例えば、特開平2−49091号公報(特許第2619491号)(特許文献1)には、アスタキサンチン及びその粗抽出エキスをエタノールに溶解し、水で希釈した後脂肪酸モノグリセリド類、ポリグリセリン脂肪酸類、ソルビタン脂肪酸エステル類(スパン等)、ショ糖の脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤及びレシチン、酵素処理レシチン、アラビアガム、キラヤ抽出物、卵黄等の天然物これを直接使用、又は乳液状製剤を調製する方法である。乳液状製剤を調製するに当たっては水相部に没食子酸、L−アスコルビン酸(あるいはそのエステルまたは塩)、ガム質(例えばローカストビーンガム、グァーガム、またはゼラチン等)、さらにビタミンP(例えばヘスペリジン、ルチン、ケルセチン、カテキン、チアニジン、エリオジクチン等のフラボノイドあるいはその混合物)等を、また油相部にはアスタキサンチンあるいはアスタキサンチン阻抽出液、またはその混合物を添加し、さらにグリセリン脂肪酸エステルまたは油脂、例えば採種油、大豆油、コーン油等の通常の液状油を加えて乳化する方法、
【0004】
特開平7−90188号(特許文献2)には、β−カロチン、カンタキサンチン、アスタキサンチン、β−アポ−8'−カロチナール、デュナリエラカロチン、ニンジンカロチン、パーム油カロチン、トマト色素等の油溶性のカロチノイド系色素を微細化した後、乳化剤、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン、キラヤ抽出物、大豆サポニン等の乳化剤または活性剤、アラビアガム、グアーガム、ペクチン、キサンタンガム等の増粘安定剤、デキストリン、加工澱粉、ワキシスターチ等の澱粉類、カゼイン、ゼラチン等のタンパク質類等の存在下、水、糖類、エタノール、多価アルコール等の水性原料に分散させるか、または水性原料に分散させた後に微細化する赤色着色料の製造方法、
【0005】
特開平7−99926号公報(特許文献3)には、乳化物を濃縮ファフィア色素油に、脂肪酸モノグリセリド類、ポリグリセリン脂肪酸類、ソルビタン脂肪酸エステル類(スパン等)、ショ糖の脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤及びレシチン、酵素処理レシチン、アラビアガム、キラヤ抽出物、卵黄等の天然物等の食品用乳化剤を添加して撹拌後、濃縮ファフィア色素油を乳化物とする濃縮ファフィア色素油含有水性液状食品の製造方法、
【0006】
特開平9−84566号公報(特許文献4)には、油溶性のカロチノイド系色素を微細化した後、水性原料に分散させるか、または水性原料に分散させた後に微細化させて得た赤橙色着色料で着色する方法、
【0007】
特開平11−285359号公報(特許文献5)には、カロチノイド−凝集体を含有する着色料等が提案されている。
【0008】
しかしながら、上記従来の方法には以下に述べる問題点があった。例えば、上記特開平2−49091号公報の方法は、アスタキサンチン及びその粗抽出エキスをエタノールに溶解後、水で希釈する方法であり、
【0009】
上記特開平7−90188号の方法は、油溶性のカロチノイド系色素を溶解することなく微細化した後、水性原料に分散させるか、または水性原料に分散させた後に微細化する方法、すなわち、油溶性のカロチノイド系色素を溶解することなく微細化する方法であり、従来品よりは改善されているが未だ部分的に結晶が溶解し、安定且つ鮮明に着色できないという問題があった。
【0010】
上記特開平7−99926号公報の方法は、ファフイア酵母からヘキサン−エタノール混合溶媒で抽出し、さらに抽出した濃縮ファフィア色素の色素濃度高めるため、トリグリセリドと遊離脂肪酸の除去が必要な方法であり、煩雑な方法である。
【0011】
また、特開平9−84566号公報の方法は、カロチノイド系色素は結晶として粉末状態のもの、および油脂等に結晶を懸濁したものであり、結晶の沈殿により安定性に問題があった。
【0012】
特開平11−285359号公報の方法は、カロチノイド−凝集体を水と混じり得るイソプロパノール、エタノール、アセトン等の有機溶中のカロチノイドの溶液を水と混合して得るものであり、煩雑であり、有機溶媒の残留が見られるものであった。
【0013】
従って、飲料、炭酸飲料、ゼリー、かき氷シロップ等、酸性域で、しかも透明性を有する着色可能な色素は限られていた。また、カロチノイド類、特に濃度により淡黄色から赤色となり得る天然色素であるアスタキサンチン類を着色料に調製する簡便な方法と、この着色料を用いて透明かつ長時間安定な溶液を調製する満足できる方法はなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平2−49091号公報
【特許文献2】特開平7−90188号公報
【特許文献3】特開平7−99926号公報
【特許文献4】特開平9−84566号公報
【特許文献5】特開平11−285359号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は水性食品の透明かつ安定な着色を可能にする食品用着色料として利用できるカロチノイド類、好ましくはアスタキサンチン含有オイル含有エマルジョンからなる着色料、その製造方法及びそれらの着色料としての用途を提供することを目的とする。より詳細には本発明は安定なカロチノイド含有エマルジョン(以下原液1)、好ましくはアスタキサンチン含有エマルジョン(以下原液2)、製造方法及びその着色料としての用途を提供することを目的とする。本発明の第2はこの安定なカロチノイド含有エマルジョン、好ましくはアスタキサンチン含有エマルジョンを溶解させた安定なO/Wエマルジョン、好ましくは酸性水溶液中で安定なO/Wエマルジョン、その製造方法及びこの着色料を用いた安定な着色溶液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究した結果、予め、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の界面活性剤を溶解し、この溶液にカロチノイド類含有オイル、好ましくはアスタキサンチン含有オイルからなるカロチノイド類含有オイルを添加し、さらに水を添加混合させることにより得られるカロチノイド類含有エマルジョンが水性飲料等の水性食品を透明かつ長時間安定に着色状態を維持することを見出した。
【0017】
本発明に用いられるカロチノイド類は常法に従って得られるものが使用される。カロチノイド類としては、β−カロチン、カンタキサンチン、アスタキサンチン、β−アポ−8'−カロチナール及びデュナリエラ、ニンジン、パーム油由来のカロチン、トマト色素等から選ばれる1種以上が挙げられる。本発明において用いられるカロチノイド類は好ましくは常温で油状のものである。好適な例として例示される黄色から赤色の範囲の着色料として用いられているアスタキサンチンはポリエン化学構造を有している〔Andrewesら、Acta Chem. Scand., B28, 730(1974)〕。このアスタキサンチン及びアスタキサンチンのエステルを含有するアスタキサンチン含有オイルは、アスタキサンチン及び/又はそのエステルを含有する天然物から分離することができ、例えば、赤色酵母ファフィア、緑藻ヘマトコッカス、海洋性細菌等を培養し、その培養物から抽出したもの、ナンキョクオキアミ等からの抽出物を挙げることができる。抽出物は、抽出エキス、またさらにこの抽出エキスを必要に応じて適宜精製したものでもよい。また合成品であっても良い。
【0018】
界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等である。好ましくは着色料使用するときに酸性領域で安定なエマルジョンを形成しやすいものである。
【0019】
グリセリン脂肪酸エステルとしては、ジステアリン酸デカグリセリン〔HLB11.0、Q−182S(商品名)、太陽化学(株)製〕、モノミリスチン酸デカグリセリン〔HLB14.5、Q−14S(商品名)、太陽化学(株)製〕、クエン酸ステアリン酸グリセリン〔HLB9.5、621B(商品名)、太陽化学(株)製〕、モノラウリン酸デカグリセリン〔HLB15.5、デカグリン1−L(商品名)、日光ケミカルズ(株)製〕等が挙げられる。
【0020】
ショ糖脂肪酸エステルとしては、ショ糖モノステアレート(HLB18.0)、ショ糖モノラウレート〔HLB15.0、LWA−1570(商品名)、三菱化学フーズ(株)製〕、ショ糖モノステアレート(モノエステルの含有率75%)、ショ糖モノパルミネート(モノエステルの含有率70%、HLB14〜15)、ショ糖モノステアレート〔モノエステルの含有率100%、HLB14〜15、DK−エステルSS(商品名)、第一工業製薬(株)製〕等が挙げられる。
【0021】
グリセリンとは、市販品であり特に制限はない。
【0022】
本発明の着色料の使用方法、添加量、pHの範囲、温度等の使用条件については後述する。
【発明の効果】
【0023】
本発明により着色料として安定且つ有用なカロチノイド類含有エマルジョン、好ましくはアスタキサンチン含有オイルエマルジョンを提供することができた。本発明の安定なアスタキサンチン含有オイルエマルジョンは、特に酸性水溶液中で長時間、色(黄色から濃赤色の範囲)が光、熱により退色することがなく、飲料、水性食品の透明かつ安定な着色ができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[安定なカロチノイド類含有オイル(原液1)、好ましくはアスタキサンチン含有オイルエマルジョン(原液2)の製造方法]
グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルを加温下溶解させ、アスタキサンチン含有オイルを加え、分散処理機、例えば、ホモミキサーで緩和な条件下で分散処理(エマルジョン)することにより得られる。
【0025】
本発明において予め、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルを用いて調製する溶液に使用するグリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルの量は適宜調整することができる。例えば、アスタキサンチン含有オイル、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル及び水の使用量は、目的とする原液中に含ませるアスタキサンチン含有オイルの濃度により異なり特に限定されるものではないが、通常、アスタキサンチン含有オイルの10重量部に対し、グリセリンの量は40重量部〜70重量部、好ましくは56重量部〜68重量部の範囲、グリセリン脂肪酸エステルの量は0.5重量部〜10重量部、好ましくは2重量部〜7重量部の範囲、ショ糖脂肪酸エステルの使用量は0.5重量部〜10重量部、好ましくは1.5重量部〜7重量部の範囲、水の使用量は最終的には10重量部〜59重量部、好ましくは16重量部〜30重量部の範囲である。
【0026】
この着色料、例えば、このエマルジョン(原液2)を使用するには、ホモミキサーで撹拌しながら、このエマルジョンに水を徐々に添加する。得られた水溶液を脱泡処理することにより製造できる。
【0027】
本発明の製造方法は、エマルジョン原液1及び2の水分散製性が優れているので比較的緩和な速度の撹拌により安定なエマルジョンを簡便に調製することができるので、高速のホモジナイザー、又は特殊な高速撹拌機を使用する必要がない。従って、高速回転により発生する摩擦熱の発生により加熱されることがなく、熱に対する安定性が劣るカロチノイド類の分解・失活を防ぐことができる。
【0028】
本発明の着色料は加温下、水に溶解させてもよい。加温の範囲は常温〜約70℃、好ましくは常温〜60℃の範囲である。
【0029】
着色料で着色されたエマルジョンは、常法に従って、例えば、ハイビスダッパー〔商品名、特殊機化工業(株)製〕等を用いて脱泡処理することができる。
【0030】
このアスタキサンチン含有オイルエマルジョンからなる着色料の使用量は適宜調整することができる。例えば、水100重量部に対し、アスタキサンチン含有オイル量を、0.01重量%から5重量%、より好ましくは0.01〜3重量%、さらに好ましくは0.01〜2重量%の範囲で使用することができる。
【0031】
以下に本発明をより詳細に述べる。なお、下記実施例中、アスタキサンチン含有オイルとはAstax−10000H〔商品名、イタノ冷凍(株)製〕を用いている。このものはオイル状でありアスタキサンチンエステルを10重量%含むものである)。また脱泡機とはハイビスダッパー〔商品名、特殊機化工業(株)製〕を示す。
【実施例】
【0032】
[実施例1]
グリセリン(56.0重量部)中にジステアリン酸デカグリセリン〔HLB11.0、商品名Q−182S、太陽化学(株)製〕2.5重量部、ショ糖モノステアレート〔HLB14〜15、DK−エステルSS、第一工業製薬(株)製〕1.5重量部を60℃で加温下溶解させ、アスタキサンチン含有オイル〔Astax−10000H(商品名)、イタノ冷凍(株)製〕10.0重量部を加え、ホモミキサーで分散処理(エマルジョン)し、さらにホモミキサーで撹拌しながら、このエマルジョンに水30.0重量部を徐々に添加し、最終的に100重量部となるようにして水溶液を調製した。得られた水溶液を脱泡処理機〔ハイビスダッパー(商品名)〕を用いて脱泡処理し、水溶性アスタキサンチン含有オイルエマルジョンの原液を調製した。この原液にはアスタキサンチンが1.00重量%含まれる。
【0033】
[実施例2]
グリセリン(56.0重量部)中にモノミリスチン酸デカグリセリン〔HLB14.5、Q−14S(商品名)、太陽化学(株)製〕2.5重量部、ショ糖モノステアレート〔HLB14〜15、DK−エステルSS、第一工業製薬(株)製〕1.5重量部を60℃で加温下溶解させ、アスタキサンチン含有オイル(Astax−10000H)10.0重量部を加え、ホモミキサーで分散処理(エマルジョン)し、さらにホモミキサーで撹拌しながら、このエマルジョンに水30.0重量部を徐々に添加し、最終的に100重量部となるようにして水溶液を調製した。得られた水溶液を脱泡処理機を用いて脱泡処理し、水溶性アスタキサンチン含有オイルエマルジョンの原液を調製した。この原液にはアスタキサンチンが1.00重量%含まれる。
【0034】
[実施例3]
グリセリン(56.0重量部)中にクエン酸ステアリン酸グリセリン〔HLB9.5、621B、太陽化学(株)製〕2.5重量部、ショ糖モノステアレート〔HLB14〜15、DK−エステルSS第一工業製薬(株)製〕1.5重量部を60℃で加温下溶解させ、アスタキサンチン含有オイル(Astax−10000H)10.0重量部を加え、ホモミキサーで分散処理(エマルジョン)し、さらにホモミキサーで撹拌しながら、このエマルジョンに水30.0重量部を徐々に添加し、最終的に100重量部となるようにして水溶液を調製した。得られた水溶液を脱泡処理機を用いて脱泡処理し、水溶性アスタキサンチン含有オイルエマルジョンの原液を調製した。この原液にはアスタキサンチンが1.00重量%含まれる。
【0035】
[実施例4]
グリセリン(56.0重量部)中にモノラウリン酸デカグリセリン〔HLB15.5、デカグリン1−L(商品名)、日光ケミカルズ(株)製〕2.5重量部、ショ糖モノステアレート〔HLB14〜15、DK−エステルSS、第一工業製薬(株)製〕1.5重量部を60℃で加温下溶解させ、アスタキサンチン含有オイル(Astax−10000H)10重量部を加え、ホモミキサーで分散処理(エマルジョン)し、さらにホモミキサーで撹拌しながら、このエマルジョンに水30.0重量部を徐々に添加し、最終的に100重量部となるようにして水溶液を調製した。得られた水溶液を脱泡処理機を用いて脱泡処理し、水溶性アスタキサンチン含有オイルエマルジョンの原液を調製した。この原液にはアスタキサンチンが1.00重量%含まれる。
【0036】
[実施例5]
グリセリン(68.0重量部)中にモノラウリン酸デカグリセリン〔HLB15.5、デカグリン1−L(商品名)、日光ケミカルズ(株)製〕3.0重量部、ショ糖モノステアレート〔HLB14〜15、DK−エステルSS、第一工業製薬(株)製〕3.0重量部を60℃で加温下溶解させ、アスタキサンチン含有オイル(Astax−10000H)10.0重量部を加え、ホモミキサーで分散処理(エマルジョン)し、さらにホモミキサーで撹拌しながら、このエマルジョンに水16.0重量部を徐々に添加し、最終的に100重量部となるようにして水溶液を調製した。得られた水溶液を脱泡処理機を用いて脱泡処理し、水溶性アスタキサンチン含有オイルエマルジョンの原液を調製した。この原液にはアスタキサンチンが1.00重量%含まれる。
【0037】
[実施例6]
グリセリン(68.0重量部)中にモノラウリン酸デカグリセリン〔HLB15.5、デカグリン1−L(商品名)、日光ケミカルズ(株)製〕3.0重量部、ショ糖モノラウレート〔HLB15.0、LWA−1570(商品名)、三菱化学フーズ(株)製〕3.0重量部を60℃で加温下溶解させ、アスタキサンチン含有オイル(Astax−10000H)10.0重量部を加え、ホモミキサーで分散処理(エマルジョン)し、さらにホモミキサーで撹拌しながら、このエマルジョンに水16.0重量部を徐々に添加し、最終的に100重量部となるようにして水溶液を調製した。得られた水溶液を脱泡処理機を用いて脱泡処理し、水溶性アスタキサンチン含有オイルエマルジョンの原液を調製した。この原液にはアスタキサンチンが1.00重量%含まれる。
【0038】
[実施例7]
グリセリン(68.0重量部)中にモノラウリン酸デカグリセリン〔HLB15.5、デカグリン1−L(商品名)、日光ケミカルズ(株)製〕3.0重量部、ショ糖モノラウレート〔HLB15.0、LWA−1570(商品名)、三菱化学フーズ(株)製〕3.0重量部を60℃で加温下溶解させ、アスタキサンチン含有オイル(Astax−10000H)6.00重量部を加え、ホモミキサーで分散処理(エマルジョン)し、さらにホモミキサーで撹拌しながら、このエマルジョンに水20.0重量部を徐々に添加し、最終的に100重量部となるようにして水溶液を調製した。得られた水溶液を脱泡処理機を用いて脱泡処理し、水溶性アスタキサンチン含有オイルエマルジョンの原液を調製した。この原液にはアスタキサンチンが0.60重量%含まれる。
【0039】
[実施例8]
グリセリン(68.0重量部)中にモノラウリン酸デカグリセリン〔HLB15.5、デカグリン1−L(商品名)、日光ケミカルズ(株)〕3.0重量部、ショ糖モノステアレート(モノエステル含有率75%)3.00重量部を60℃で加温下溶解させ、アスタキサンチン含有オイル(Astax−10000H)6.0重量部を加え、ホモミキサーで分散処理(エマルジョン)し、さらにホモミキサーで撹拌しながら、このエマルジョンに水20.0重量部を徐々に添加し、最終的に100重量部となるようにして水溶液を調製した。得られた水溶液を脱泡処理機を用いて脱泡処理し、水溶性アスタキサンチン含有オイルエマルジョンの原液を調製した。この原液にはアスタキサンチンが0.60重量%含まれる。
【0040】
[実施例9]
グリセリン(68.0重量部)中にモノラウリン酸デカグリセリン〔HLB15.5、デカグリン1−L(商品名)、日光ケミカルズ(株)製〕3.0重量部、ショ糖モノパルミネート〔モノエステル含有率70%、HLB14〜15、P−1570(商品名)、三菱化学フーズ(株)製〕3.0重量部を60℃で加温下溶解させ、アスタキサンチン含有オイル(Astax−10000H)10.0重量部を加え、ホモミキサーで分散処理(エマルジョン)し、さらにホモミキサーで撹拌しながら、このエマルジョンに水16.0重量部を徐々に添加し、最終的に100重量部となるようにして水溶液を調製した。得られた水溶液を脱泡処理機を用いて脱泡処理し、水溶性アスタキサンチン含有オイルエマルジョンの原液を調製した。この原液にはアスタキサンチンが0.60重量%含まれる。
【0041】
上記実施例で得られた原液の透明性を比較した。実施例1〜実施例4の原液の透明性は、使用したグリセリン脂肪酸エステル中、モノラウリン酸デカグリセリンが最も良く、以下、モノラウリン酸デカグリセリン>モノミリスチン酸デカグリセリン>ジステアリン酸デカグリセリン、クエン酸ステアリン酸グリセリンであった。
【0042】
実施例5〜実施例8の原液の透明性は、以下に示す通りであった。ショ糖モノステアレート、ショ糖モノラウレート>ショ糖モノステアレート(モノエステル含有率75%)、ショ 糖モノパルミテート(モノエステル含有率70%)。
【0043】
[実施例10]
グリセリン(60.0重量部)中にモノラウリン酸デカグリセリン〔HLB15.5、デカグリン1−L(商品名)、日光ケミカルズ(株)製〕7.0重量部、ショ糖モノステアレート〔HLB14〜15、商品名、DK−エステルSS、第一工業製薬(株)製〕7.0重量部を60℃で加温下溶解させ、アスタキサンチン含有オイル(Astax−10000H)10.0重量部を加え、ホモミキサーで分散処理(エマルジョン)し、さらにホモミキサーで撹拌しながら、このエマルジョンに水16.0重量部を徐々に添加し、最終的に100重量部となるようにして水溶液を調製した。得られた水溶液を脱泡処理機を用いて脱泡処理し、水溶性アスタキサンチン含有オイルエマルジョンの原液を調製した。この原液にはアスタキサンチンが1.00重量%含まれる。
【0044】
[実施例11]
グリセリン(60.0重量部)中にモノラウリン酸デカグリセリン〔HLB15.5、デカグリン1−L(商品名)、日光ケミカルズ(株)製〕5.0重量部、ショ糖モノステアレート〔HLB14〜15、商品名、DK−エステルSS、第一工業製薬(株)製〕5.0重量部を60℃で加温下溶解させ、アスタキサンチン含有オイル(Astax−10000H)10.0重量部を加え、ホモミキサーで分散処理(エマルジョン)し、さらにホモミキサーで撹拌しながら、このエマルジョンに水20.0重量部を徐々に添加し、最終的に100重量部となるようにして水溶液を調製した。得られた水溶液を脱泡処理機を用いて脱泡処理し、水溶性アスタキサンチン含有オイルエマルジョンの原液を調製した。この原液にはアスタキサンチンが1.00重量%含まれる。
【0045】
[実施例12]
グリセリン(60.0重量部)中にモノラウリン酸デカグリセリン〔HLB15.5、デカグリン1−L(商品名)、日光ケミカルズ(株)製〕2.0重量部、ショ糖モノステアレート〔HLB14〜15、商品名、DK−エステルSS、第一工業製薬(株)製〕2.0重量部を60℃で加温下溶解させ、アスタキサンチン含有オイル(Astax−10000H)10.0重量部を加え、ホモミキサーで分散処理(エマルジョン)し、さらにホモミキサーで撹拌しながら、このエマルジョンに水26.0重量部を徐々に添加し、最終的に100重量部となるようにして水溶液を調製した。得られた水溶液を脱泡処理機を用いて脱泡処理し、水溶性アスタキサンチン含有オイルエマルジョンの原液を調製した。この原液にはアスタキサンチンが1.00重量%含まれる。
【0046】
[実施例13]
グリセリン(60.0重量部)中にモノラウリン酸デカグリセリン〔HLB15.5、デカグリン1−L(商品名)、日光ケミカルズ(株)製〕6.0重量部、ショ糖モノラウレート〔HLB15.0、LWA−1540(商品名)、三菱化学フーズ(株)製〕6.0重量部を50℃で加温下溶解させ、アスタキサンチン含有オイル(Astax−10000H)10.0重量部を加え、ホモミキサーで分散処理(エマルジョン)し、さらにホモミキサーで撹拌しながら、このエマルジョンに水18.0重量部を徐々に添加し、最終的に100重量部となるようにして水溶液を調製した。得られた水溶液を脱泡処理機を用いて脱泡処理し、水溶性アスタキサンチン含有オイルエマルジョンの原液を調製した。この原液にはアスタキサンチンが1.00重量%含まれる。
【0047】
[実施例14]
グリセリン(60.0重量部)中にモノラウリン酸デカグリセリン〔HLB15.5、デカグリン1−L(商品名)、日光ケミカルズ(株)製〕4.5重量部、ショ糖モノラウレート〔HLB15.0、商品名、LWA−1540、三菱化学フーズ(株)製〕4.5重量部を60℃で加温下溶解させ、アスタキサンチン含有オイル(Astax−10000H)10.0重量部を加え、ホモミキサーで分散処理(エマルジョン)し、さらにホモミキサーで撹拌しながら、このエマルジョンに水21.0重量部を徐々に添加し、最終的に100重量部となるようにして水溶液を調製した。得られた水溶液を脱泡処理機を用いて脱泡処理し、水溶性アスタキサンチン含有オイルエマルジョンの原液を調製した。この原液にはアスタキサンチンが1.00重量%含まれる。
【0048】
[実施例15]
グリセリン(60.0重量部)中にモノラウリン酸デカグリセリン〔HLB15.5、デカグリン1−L(商品名)、日光ケミカルズ(株)製〕3.5重量部、ショ糖モノステアレート〔HLB18.0、商品名、DK−エステルSS、第一工業製薬(株)製〕6.5重量部を60℃で加温下溶解させ、アスタキサンチン含有オイル(Astax−10000H)10.0重量部を加え、ホモミキサーで分散処理(エマルジョン)し、さらにホモミキサーで撹拌しながら、このエマルジョンに水20.0重量部を徐々に添加し、最終的に100重量部となるようにして水溶液を調製した。得られた水溶液を脱泡処理機を用いて脱泡処理し、水溶性アスタキサンチン含有オイルエマルジョンの原液を調製した。この原液にはアスタキサンチンが1.00重量%含まれる。
【0049】
[実施例16]
グリセリン(60.0重量部)中にモノラウリン酸デカグリセリン〔HLB15.5、デカグリン1−L(商品名)、日光ケミカルズ(株)製〕6.7重量部、ショ糖モノステアレート〔HLB18.0、商品名、DK−エステルSS、第一工業製薬(株)製〕3.3重量部を60℃で加温下溶解させ、アスタキサンチン含有オイル(Astax−10000H)10.0重量部を加え、ホモミキサーで分散処理(エマルジョン)し、さらにホモミキサーで撹拌しながら、このエマルジョンに水20.0重量部を徐々に添加し、最終的に100重量部となるようにして水溶液を調製した。得られた水溶液を脱泡処理機を用いて脱泡処理し、水溶性アスタキサンチン含有オイルエマルジョンの原液を調製した。この原液にはアスタキサンチンが1.00重量%含まれる。
【0050】
[比較例1]
グリセリン(60.0重量部)中にモノラウリン酸デカグリセリン〔HLB15.5、デカグリン1−L(商品名)、日光ケミカルズ(株)〕10重量部を60℃で加温下溶解させ、アスタキサンチン含有オイル(Astax−1000H)10.0重量部を加え、ホモミキサーで分散処理(エマルジョン)し、さらにホモミキサーで撹拌しながら、このエマルジョンに水20.0重量部を徐々に添加し、最終的に100重量部となるようにして水溶液を調製した。得られた水溶液を脱泡処理機を用いて脱泡処理し、水溶性アスタキサンチン含有オイルエマルジョンの原液を調製した。
【0051】
[比較例2]
グリセリン(60.0重量部)中にショ糖モノステアレート〔HLB18.0、DK−エステルSS(商品名)、第一工業製薬(株)製〕10.0重量部を60℃で加温下溶解させ、アスタキサンチン含有オイル(Astax−1000H)10.0重量部を加え、ホモミキサーで分散処理(エマルジョン)し、さらにホモミキサーで撹拌しながら、このエマルジョンに水20.0重量部を徐々に添加し、最終的に100重量部となるようにして水溶液を調製した。得られた水溶液を脱泡処理機を用いて脱泡処理し、水溶性アスタキサンチン含有オイルエマルジョンの原液を調製した。
【0052】
[比較例3]
グリセリン(60.0重量部)中にアスタキサンチン含有オイル(Astax−1000H)10.0重量部を加え、ホモミキサーで分散処理し、さらにホモミキサーで撹拌しながら、水30.0重量部を徐々に添加し、最終的に100重量部となるようにして水溶液を調製した。得られた水溶液を脱泡処理機を用いて脱泡処理し、アスタキサンチン含有オイルを含有する原液を調製した。
【0053】
(透明性試験)
実施例9〜11は、アスタキサンチン含有オイル抽出物に対する界面活性剤の最適量をモノラウリン酸デカグリセリン(商品名、デカグリン1−L)とショ糖モノステアレート(DK−エステルSS)との重量比を1:1として求めたものである。実施例10のものは透明であった。実施例9と実施例11の試料ではわずかに濁りを生じた。本発明の中で比較すると実施例10の処方が最も良い。実施例12、実施例13のショ糖モノラウレート(商品名LWA−1540)を用いた試料は実施例9〜11の試料よりもさらに透明性が高いものであった。
【0054】
(エマルジョンの安定性試験液の調製方法)
[調製例1]
上記実施例1〜16及び比較例1〜3で得られたアスタキサンチン含量2mg相当量の原液200mg、ビタミンC20mgを市販の炭酸飲料〔pH3.31、商標:スプライト、コカコーラ(株)〕100mlに加えて対応する試験液A1〜A16(実施例1〜16に対応)及び試験液A17〜A19(比較例1〜3に対応)を調製した。
【0055】
[調製例2]
上記実施例1〜16及び比較例1〜3で得られたアスタキサンチン含量2mg相当量の原液200mg、ビタミンC20mgを市販の炭酸飲料〔pH3.49、商標:アクエリアス、コカコーラ(株)製〕100mlに加えて対応する試験液B1〜B16(実施例1〜16に対応)及び試験液B17〜B19(比較例1〜3に対応)を調製した。
【0056】
光に対する安定性試験上記処方で得られた試験液を、連続的に光のあたる場所に放置し、色調の変化、表面への油の浮き出し、沈殿物の発生の有無を肉眼比較により確認した。その結果は表1(スプライト)及び表2(アクエリアス)に示すとおりであった。なお、下記表中の記号は、◎:変化なし、○:僅かに退色、△:退色、×:分離を示す。
【0057】
[表1]スプライトに添加

【0058】
[表2]アクエリアスに添加

【0059】
実施例1〜16の試料を用いた試験例A1〜A16及びB1〜B16の安定性試験の結果、一部退色が見られたが色素が器壁に分離付着することはなかった。一方、比較例の試料を用いた試験例A17〜A19及びB17〜B19の安定性試験の結果、室温で10日以降に退色、器壁への分離付着が見られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カロチノイド類含有オイル10重量部に対し、
(a)グリセリン40〜70重量部、
(b)グリセリン脂肪酸エステル0.5〜10重量部、
(c)ショ糖脂肪酸エステル0.5〜10重量部、
からなり、水性食品の透明かつ安定な着色を可能にすることを特徴とするエマルジョン。
【請求項2】
カロチノイド類1重量部に対し、
(a)グリセリン40〜114重量部、
(b)グリセリン脂肪酸エステル0.5〜10重量部、
(c)ショ糖脂肪酸エステル0.5〜10重量部、
からなり、水性食品の透明かつ安定な着色を可能にすることを特徴とするエマルジョン。
【請求項3】
カロチノイド類1重量部に対し、
(a)グリセリン40〜70重量部、
(b)グリセリン脂肪酸エステル0.5〜10重量部、
(c)ショ糖脂肪酸エステル0.5〜10重量部、
からなり、水性食品の透明かつ安定な着色を可能にすることを特徴とするエマルジョン。
【請求項4】
カロチノイド類がアスタキサンチンである請求項1〜3のいずれか1項に記載のエマルジョン。
【請求項5】
予め、(a)グリセリン、(b)グリセリン脂肪酸エステル及び(c)ショ糖脂肪酸エステルを溶解し、この溶液にカロチノイド類含有オイル(ただしアスタキサンチンを除く)を添加し、さらに水を添加混合することにより得られるエマルジョンであって、
カロチノイド類含有オイル10重量部又はカロチノイド類1重量部に対し
(a)グリセリン40〜70重量部、
(b)グリセリン脂肪酸エステル0.5〜10重量部、
(c)ショ糖脂肪酸エステル0.5〜10重量部、
からなり、水性食品の透明かつ安定な着色を可能にする請求項1〜4のいずれか1項に記載のエマルジョンの製造方法。
【請求項6】
予め(a)グリセリン、(b)グリセリン脂肪酸エステル及び(c)ショ糖脂肪酸エステルを40℃〜70℃で溶解し、この溶液にカロチノイド類含有オイルを70℃以下で添加し、さらに水を添加混合させることにより得られる請求項5に記載のエマルジョンの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のエマルジョンからなる着色料。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のエマルジョンを0.01重量%〜3重量%となるように水に懸濁させたO/Wエマルジョン。

【公開番号】特開2011−45379(P2011−45379A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232685(P2010−232685)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【分割の表示】特願2000−133985(P2000−133985)の分割
【原出願日】平成12年5月2日(2000.5.2)
【出願人】(390011877)富士化学工業株式会社 (53)
【Fターム(参考)】