説明

着色組成物、および画像表示構造

【課題】非極性溶媒、特に炭化水素系溶媒への溶解性に優れたメチン系色素と、非極性溶媒とを含む着色組成物の提供。
【解決手段】25℃、0.1MPaにおけるn−ヘキサンへの溶解度が1質量%以上である式(1)のメチン系色素と、非極性溶媒とを含む着色組成物。


(式中、Rは水素原子、アルキル基、アリール基、エステル基、またはアミド基を表し、Arは芳香環を表わす。R、R10は、各々独立に、水素原子、またはアルキル基を表す。nは0〜2の整数を表す。R、R、R10およびArは、解離性基を有しない。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色組成物、および画像表示構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイ材料、光記録媒体、インクジェット用材料等に有機色素が数多く用いられている。色素を塗布プロセスやインクジェットプロセスに使用する場合、着色効率を上げるため、高いモル吸光係数に加え、溶媒への高い溶解性が求められる。
また、非特許文献1において、エレクトロウェッティング法のディスプレイが報告されて以来、エレクトロウェッティング法のディスプレイが注目を浴びている。エレクトロウェッティング法のディスプレイは、基板上に親水性媒体と油性着色インクの2相で満たされた複数のピクセルを配し、ピクセルごとに電圧印加のon−offによって親水性媒体/油性着色インク界面の親和性を制御し、油性着色インクを基板上に展開/変形させることによって行う画像表示方式である。このようなエレクトロウェッティング法のディスプレイに用いられる色素には、炭化水素系溶媒への高い溶解性が求められる。
【0003】
ディスプレイ部材であるカラーフィルタ用の色素としては、例えば、下記化合物D−101、D−102をはじめとする各種メチン系色素化合物が知られている。
また、水不溶性のイソオキサゾロンメチン系色素を銀塩写真の感光材料として用いること(例えば、特許文献1参照。)が知られており、また、極性溶媒への溶解性に優れたイソオキサゾロンメチン系色素あるいはイソオキサリゾリンメチン系色素を感熱転写用の染料として用いること(例えば、特許文献2、3参照。)が知られている。
【0004】
【化1】

【0005】
【化2】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第412379号明細書
【特許文献2】特開2009−263517号公報
【特許文献3】特開2008−246908号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Nature(London),425,383(2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記したD−101、D−102や特許文献に記載された色素は、非極性溶媒への溶解性、特に炭化水素系溶媒への溶解性の点で不十分で、更なる改善が求められていた。
本発明は、非極性溶媒、特に炭化水素系溶媒への溶解性に優れたメチン系色素を含み、画像表示(特に、エレクトロウェッティング法や電気泳動法の原理で動作する表示装置での画像表示(例えば画像表示時のオン/オフ性(光シャッター特性)))に好適な着色組成物及び画像表示構造を提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
<1> 下記一般式(1)で示され、25℃、0.1MPaにおけるn−ヘキサンへの溶解度が1質量%以上であるメチン系色素と、非極性溶媒とを含む着色組成物。
【0010】
【化3】

【0011】
一般式(1)中、Rは水素原子、アルキル基、アリール基、−COOR11、または−CONR1112を表し、Arは芳香環を表わす。R、R10は、各々独立に、水素原子、またはアルキル基を表す。R11、およびR12は、各々独立に、水素原子、アルキル基、またはアリール基を表す。R11、R12は互いに結合して、5員環、6員環、または7員環を形成してもよい。nは0〜2の整数を表す。R、R、R10およびArは、解離性基を有しない。
【0012】
<2> 前記メチン系色素が、下記一般式(2)または一般式(3)で表される化合物である<1>に記載の着色組成物。
【0013】
【化4】

【0014】
一般式(2)中、Rは水素原子、アルキル基、アリール基、−COOR11、または−CONR1112を表し、Rは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、−NHCOR11、−NHCONHR11、または−NHCOOR11を表わし、R、およびRは、各々独立に、水素原子、アルキル基、またはアリール基を表わす。RとRは互いに結合して、5員環、6員環または7員環を形成してもよい。R11、およびR12は、各々独立に、水素原子、アルキル基、またはアリール基を表す。R11、R12は互いに結合して、5員環、6員環または7員環を形成してもよい。R〜Rは、解離性基を有しない。
【0015】
【化5】

【0016】
一般式(3)中、Rは水素原子、アルキル基、アリール基、−COOR11、または−CONR1112を表し、R、R、およびRは、各々独立に、水素原子、アルキル基、またはアリール基を表し、Rは水素原子、アルキル基、またはアリール基を表す。RとRは互いに結合して、5員環または6員環を形成してもよい。R11、およびR12は、各々独立に、水素原子、アルキル基、またはアリール基を表す。R11、R12は互いに結合して、5員環、6員環または7員環を形成してもよい。R、R〜Rは、解離性基を有しない。
【0017】
<3> 前記一般式(2)におけるR、R、およびRの少なくとも1種が、炭素数7以上30以下のアルキル基である、<2>に記載の着色組成物。
<4> 前記一般式(1)におけるnが1または2である、<1>に記載の着色組成物。
【0018】
<5> 前記メチン系色素の比誘電率が、2以上10以下である<1>〜<4>のいずれか1項に記載の着色組成物。
<6> 前記着色組成物の20℃における粘度が、0.01mPa・s以上10mPa・s以下である<1>〜<5>のいずれか1項に記載の着色組成物。
【0019】
<7> エレクトロウェッティング法の原理で動作する表示装置の光シャッター層の作製に用いられる<1>〜<6>のいずれか1項に記載の着色組成物。
<8> 電気泳動法で動作する表示装置のカラーフィルタの作製に用いられる<1>〜<6>のいずれか1項に記載の着色組成物。
【0020】
<9> 表面が疎水性である疎水性ポリマー層と、前記表面に接触させて配置され、<1>〜<8>のいずれか1項に記載の着色組成物を用いて形成されたオイル層と、前記オイル層に接触させて配置された親水性液層と、
を有する画像表示構造。
【0021】
本発明においては一般式(1)で表されるメチン系色素は、分子中に−SOH、−PO、−COH、−OH等の解離性基(NHを含まない)を有していない色素であり、非極性溶媒に溶解しやすく、非極性溶媒に溶解して色素組成物を調製することができる。
特に、一般式(1)で表されるメチン系色素は、長鎖アルキル基、分岐アルキル基を有していることが好ましく、特に炭素数7〜30の比較的炭素数の多い直鎖または分岐のアルキル基を有していることがより好ましく、これにより更に、非極性溶媒への溶解性に優れる。一般式(1)で表されるメチン系色素のSP値(溶解性パラメーター)が本発明で使用される非極性溶媒のSP値に近い為、非極性溶媒との溶解性が良化したものと推定している。前記したD−101、D−102等は極性基が導入されており、SP値が溶媒のSP値と異なるために溶解性が低下するものと考えられる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、画像表示(特に、エレクトロウェッティング法や電気泳動法の原理で動作する表示装置での画像表示(例えば画像表示時のオン/オフ性(光シャッター特性)))に好適な着色組成物及び画像表示構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】エレクトロウェッティング法の原理で動作する表示装置の構成例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<メチン系色素>
本発明の下記一般式(1)で表されるメチン系色素は、25℃、0.1MPaにおけるn−ヘキサンへの溶解度が1質量%以上である。
色素として、25℃、0.1MPaにおけるn−ヘキサンへの溶解度が1質量%以上であり、一般式(1)で表されるメチン系色素を用いることで、ディスプレイ等、中でもエレクトロウェッティング法の原理で動作する表示装置や電気泳動法で動作するディスプレイに用いられる色素として有用である。
以下、一般式(1)で表されるメチン系色素について詳細に説明する。
【0025】
【化6】

【0026】
一般式(1)中、Rは水素原子、アルキル基、アリール基、−COOR11、または−CONR1112を表し、Arは芳香環を表わす。R、R10は、各々独立に、水素原子、またはアルキル基を表す。R11、およびR12は、各々独立に、水素原子、アルキル基、またはアリール基を表す。R11、R12は互いに結合して、5員環、6員環、または7員環を形成してもよい。nは0〜2の整数を表す。R、R、R10およびArは、解離性基(NHを含まない)を有しない。
【0027】
一般式(1)中、Rで表されるアルキル基は置換基を有してもよく、炭素数1から30のアルキル基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、ノルマルブチル基、第3ブチル基、1−メチルシクロプロピル基、ノルマルヘキシル基、3−ヘプチル基、ノルマルノニル基、ノルマルウンデシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、クロロメチル基、トリフルオロメチル基、エトキシカルボニルメチル基、パーフルオロアルキル基などが好ましい。特にメチル基、エチル基、第3ブチル基が好ましい。
で表わされるアリール基は置換基を有してもよく、炭素数6から30のアリール基が好ましく、例えばフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−ジブチルアミノフェニル基、4−(2−エチルヘキサノイルアミノフェニル基、4−ブチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基などが好ましい。
【0028】
一般式(1)中、R11、およびR12で表わされるアルキル基は置換基を有してもよく、炭素数1から15のアルキル基が好ましく例えばメチル基、エチル基、エトキシカルボニルメチル基、ブトキシカルボニルメチル基、ノルマルオクチル基、2−エチルヘキシル基、ドデシル基、シクロヘキシル基、シアノエチル基、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6−デカフルオロヘキシル基、クロロエチル基、アセトキシエチル基、ジメチルアミノメチル基が好ましい。
11、およびR12で表わされるアリール基は置換基を有してもよく、炭素数6から12のアリール基が好ましく、例えばフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−(2−エチルヘキシルオキシ)フェニル基、4−ドデシルオキシフェニル基が好ましい。R11、R12が互いに結合し形成する5員環、6員環、および7員環は窒素原子を含む5員環、6員環、および7員環であり、ピロリジン環、ピペリジン環、モルホリン環、ピペラジン環、ヘキサメチレンイミン環が好ましい。これら5員環、6員環、および7員環はさらに置換基を有していてもよい。
【0029】
、R10が表すアルキル基は置換基を有してもよく、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基が好ましい。
、R10としては、各々独立に、水素原子、またはアルキル基であるが、好ましくは水素原子である。
Arで表わされる芳香環は、5員、6員の芳香環が好ましく、ベンゼン環、ナフタレン環、ピロール環、インドール環、ピリジン環、キノリン環、ピラジン環、キノキサリン環が好ましく、ベンゼン環、ピロール環、インドール環が特に好ましい。これらの芳香環は、炭素数1〜30のアルキル基を置換基として有してもよい。
また、R、R、R10およびArは、解離性基(NHを含まない)を有しない。
【0030】
一般式(1)で表されるメチン系色素は、下記一般式(2)で表されるメチン系色素が好ましい態様である。一般式(2)で表されるメチン系色素について詳細に説明する。
【0031】
【化7】

【0032】
一般式(2)中、Rは一般式(1)におけるRと同義である。Rは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、−NHCOR11、−NHCONHR11、または−NHCOOR11を表わし、R、およびRは、各々独立に、水素原子、アルキル基、またはアリール基を表わす。RとRは互いに結合して、5員環、6員環または7員環を形成してもよい。R11、およびR12は、一般式(1)におけるR11、R12とそれぞれ同義である。R〜Rは、解離性基(NHを含まない)を有しない。
【0033】
一般式(2)中、Rで表わされるハロゲン原子は、フッ素原子、または塩素原子が好ましい。
で表わされるアルキル基は、炭素数1から20のアルキル基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、ノルマルブチル基、第3ブチル基、トリフルオロメチル基などが好ましい。メチル基が特に好ましい。
で表わされるアルコキシ基は置換基を有してもよく、炭素数1から20のアルコキシ基が好ましく、例えばメトキシ基、エトキシ基などが好ましい。
で表わされるアリールオキシ基は置換基を有してもよく、炭素数6から16のアリールオキシ基が好ましく、例えばフェノキシ基などが好ましい。
【0034】
一般式(2)中、R、およびRで表わされるアルキル基は、炭素数1から30のアルキル基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、ノルマルブチル基、ノルマルオクチル基、2−エチルヘキシル基、ノルマルデシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、ノルマルドデシル基、エトキシカルボニルメチル基、エトキシカルボニルエチル基、N,N−ジブチルアミノカルボニルメチル基などが好ましい。
、およびRで表わされるアリール基は置換基を有してもよく、炭素数6から30のアリール基が好ましく、例えばフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−(2−エチルヘキシルオキシ)フェニル基、4−ドデシルオキシフェニル基などが好ましい。
とRとが互いに結合して形成する5員環、6員環、および7員環は窒素原子を含む5員環、6員環、および7員環であり、ピロリジン環、ピペリジン環、モルホリン環、ピペラジン環、ヘキサメチレンイミン環が好ましい。これらの5員環、6員環、および7員環はさらに置換基を有していてもよい。
中でも特に、R、RおよびRの少なくとも一つが炭素数7〜30のアルキル基であることが好ましく、RおよびRの両方が炭素数7〜30のアルキル基であることが好ましい。
【0035】
なお、前記一般式(2)で表される化合物の好ましい置換基の組み合わせについては、種々の置換基の少なくとも1つが上記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が上記の好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が上記の好ましい基である化合物が最も好ましい。
【0036】
また、一般式(1)で表されるメチン系色素は、下記一般式(3)で表されるメチン系色素も好ましい態様である。一般式(3)で表されるメチン系色素について詳細に説明する。
【0037】
【化8】

【0038】
一般式(3)中、Rは一般式(1)におけるRと同義である。R、R、およびRは、各々独立に、水素原子、アルキル基、またはアリール基を表し、Rは水素原子、アルキル基、またはアリール基を表す。RとRは互いに結合して、5員環または6員環を形成してもよい。R11、およびR12は、一般式(1)におけるR11、R12とそれぞれ同義である。R、R〜Rは、解離性基(NHを含まない)を有しない。
【0039】
一般式(3)中、R、R、およびRで表わされるアルキル基は炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、例えばメチル基、エチル基が特に好ましい。
、R、およびRで表わされるアリール基は炭素数6から10のアリール基が好ましく、例えばフェニル基が好ましい。
一般式(3)中、Rで表わされるアルキル基は置換基を有してもよく、炭素数1〜18のアルキル基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、エトキシカルボニルメチル基、2−シアノエチル基、2−プロピオキルアミノエチル基、2−エチルヘキシル基、ノルマルオクチル基、ノルマルデシル基、ノルマルドデシル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、ジメチルアミノメチル基、ジ(メトキシカルボニルメチル)アミノプロピル基、ベンジル基、フェナシル基などが好ましい。
で表わされるアリール基は置換基を有してもよく、炭素数6〜22のアリール基が好ましく、例えばフェニル基、2−メトキシ−5−エトキシカルボニルフェニル基、4−{ジ(エトキシカルボニルメチル)アミノ}カルボニルフェニル基、4−オクチルオキシフェニル基、4−ドデシルオキシフェニル基、ピリジル基が好ましい。
【0040】
で表わされるアミノ基はジアルキルアミノ基が好ましく、例えばジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ピロリジノ基が好ましい。
とRとが互いに結合して形成する5員環としてはピロール環が好ましく、6員環としてはベンゼン環、ピリジン環が好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。これら5員環および6員環は置換基を有していてもよい。
【0041】
なお、前記一般式(3)で表される化合物の好ましい置換基の組み合わせについては、種々の置換基の少なくとも1つが上記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が上記の好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が上記の好ましい基である化合物が最も好ましい。
【0042】
また、前記一般式(1)におけるnが、1または2であるメチン系色素が好ましく、更に好ましくはnが1である。
【0043】
下記に、前記一般式(1)〜(3)で表される化合物の具体例を示す。本発明はこれらの具体例によって制限されるものではない。
なお、下記化合物において、「Me」はメチル基を示し、「t−Bu」はtert−ブチル基を示し、「Ph」はフェニル基を示し、「n−Bu」はノルマルブチル基を示し、「i−Pr」はイソプロピル基を示し、「Et」はエチル基を示す。また、「C17」はn−C17を示し、「C1225」はn−C1225を示し、「C」はn−Cを示し、「C」はtert−Cを示す。また、アルキル基の記載で、単に炭素数と水素原子数が記載された基は、「ノルマルアルキル基」を示す。
【0044】
【化9】

【0045】
【化10】

【0046】
【化11】

【0047】
【化12】

【0048】
【化13】

【0049】
【化14】

【0050】
【化15】

【0051】
【化16】

【0052】
【化17】

【0053】
【化18】

【0054】
【化19】

【0055】
【化20】

【0056】
【化21】

【0057】
【化22】

【0058】
これらの化合物は、特許第2707371号、特開平5−45789号、特開2009−263517号、および特開平3−72340号の各公報などに示す公知の方法で製造することができる。
【0059】
〔メチン系色素の溶解度〕
本発明におけるメチン系色素は、非極性溶媒への溶解性、特に炭化水素系溶媒への溶解性に優れ、25℃、0.1MPaにおけるn−ヘキサンに対する溶解度が、1質量%以上である。1質量%以上であることは、エレクトロウェッティング法の原理で動作するディスプレイや電気泳動法で動作するディスプレイを製造するための部材(例えば、光シャッター層、カラーフィルタ)に適用しうることを示す。
以下、「色素の25℃、0.1MPaにおけるn−ヘキサンに対する溶解度」を、単に「溶解度」とも称する。
本発明におけるメチン系色素を、エレクトロウェッティング法の原理で動作するディスプレイや電気泳動法で動作するディスプレイを製造するための画像表示材料〔例えば、画像表示構造(例:ピクセルのオン/オフ状態(画像表示/非表示の状態)を切替える光シャッターや、電気泳動法で動作する表示装置のカラー表示層(カラーフィルタ))等の表示用部材〕に適用する場合には、溶解度は、3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることが更に好ましい。溶解度は高ければ高いほど好ましいが、通常は80質量%以下程度である。
【0060】
<着色組成物>
本発明の着色組成物は、上述した本発明のメチン系色素の少なくとも1種と、後述の非極性溶媒とを含む。
本発明の着色組成物は、本発明におけるメチン系色素の1種のみを含んでいても、2種以上を含んでいてもよく、2種以上のメチン系色素を含む場合の各色素の比率も任意である。
本発明の着色組成物は、本発明におけるメチン系色素を着色組成物に対して、質量基準で5%〜70%含むことが好ましく、10%〜50%含むことがより好ましい。この範囲とすることで、本発明の着色組成物を用いて、下記に述べるエレクトロウェッティング法の原理で動作する表示装置や電気泳動法で動作する表示装置の光シャッター層もしくはカラーフィルタの作製に用いたときに十分に着色した所望の光シャッター層もしくはカラーフィルタが得られる。
また、本発明の着色組成物は、本発明におけるメチン系色素のみからなっていてもよく、所望の色調とするために、他の色素を含んでいてもよい。例えば、本発明のメチン系色素に、本発明のメチン系色素とは異なる構造の赤色、青色の色素を混合して黒色とすることもできる。
【0061】
〔他の色素〕
本発明の着色組成物が含むメチン系色素とは異なる構造の他の色素としては、使用する非極性溶媒に対して溶解性・分散性を有する色素の中から、メチン系色素の効果を損なわない範囲で、任意に選択することが可能である。
例えば、本発明の着色組成物をエレクトロウェッティングディスプレイ用に用いる場合、本発明の着色組成物が含んでいてもよい他の色素としては、脂肪族炭化水素系溶媒などの非極性溶媒に溶解するものの中から任意の色素を用いることができる。そのような色素としては、アゾ色素、アントラキノン色素などが挙げられる。具体例としては、Oil Blue N(アルキルアミン置換アントラキノン)、Solvent Green、Sudan Red、Sudan Blackなどが挙げられる。
【0062】
〔非極性溶媒〕
本発明の着色組成物は、非極性溶媒の少なくとも一種を含有する。非極性溶媒とは、誘電率の値が小さい溶媒(いわゆる無極性溶媒)をいう。
本発明における非極性溶媒は、前記メチン系色素を溶解する溶媒であり、例えば、n−ヘキサン、n−デカン、ドデカン、テトラデカン、ヘキサデカン等の脂肪族炭化水素系溶媒(好ましくは、炭素数6〜30)が挙げられる。
【0063】
本発明の着色組成物は、非極性溶媒を含有するが、本発明の効果を損なわない範囲であれば、非極性溶媒に該当しない他の溶媒を含んでもよい。
【0064】
本発明においては、非極性溶媒の本発明の着色組成物における含有量は、溶媒全量に対して、70質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。非極性溶媒の含有量が70質量%以上であることで、メチン系色素の溶解性がより良好に保たれ、また本発明の着色組成物を例えばエレクトロウェッティング法又は電気泳動法の原理で動作する表示装置に適用した場合に、より優れた光シャッター特性及び表示コントラストを発現させることができる。本発明において、更に好ましくは、溶媒成分として非極性溶媒のみ(全溶媒量中の非極性溶媒の比率が100質量%)を用いた組成である。
【0065】
〔その他の成分〕
その他、本発明の着色組成物は、必要に応じて任意の紫外線吸収剤、酸化防止剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
添加剤の含有量に特に制限はないが、通常、着色組成物の総量に対して20質量%以下程度で用いられる。
【0066】
本発明におけるメチン系色素、および、必要に応じて用いる他の色素は、既述の脂肪族炭化水素系溶媒などの非極性溶媒に溶解することにより、エレクトロウェッティング法の原理で動作する表示装置用のインクとすることができる。
【0067】
本発明の着色組成物中におけるメチン系色素の濃度(C)については、その目的に応じて任意の濃度で調製される。エレクトロウェッティング法の原理で動作する表示装置ディスプレイ用の黄色色素として用いる場合、通常0.2質量%以上の濃度で、必要とされるεC値(εは着色組成物の吸光係数)に応じて非極性溶媒に希釈して用いられる。
【0068】
本発明の着色組成物の粘度としては、20℃での動的粘度で10mPa・s以下であることが好ましい。中でも、該動的粘度は、0.01mPa・s以上が好ましく、更には0.01mPa・s以上8mPa・s以下がより好ましい。着色組成物の粘度が10mPa・s以下であることで、エレクトロウェッティング法の原理又は電気泳動法で動作する表示装置の画像表示材料用途に好適であり、特にエレクトロウェッティング法の原理で動作する画像表示の際の光シャッターに適用する場合に、粘度の大きい組成に比べ、応答速度が速くより低い電圧で駆動させ得る点で好ましい。
なお、前記粘度は、色素のデカン10質量%溶液を、粘度計(500型、東機産業(株)製)を用いて20℃に調整して測定される値である。
【0069】
本発明の着色組成物は比誘電率が小さいことが好ましく、2.0〜10.0であることが好ましい。この範囲で本発明の着色組成物をエレクトロウェッティング法の原理又は電気泳動法で動作する表示装置の画像表示材料用途に好適であり、特にエレクトロウェッティング法の原理で動作する画像表示の際の光シャッターに適用する場合に、比誘電率の大きい組成に比べ、応答速度が速くより低い電圧で駆動させ得る点で好ましい。
比誘電率は、着色組成物をセルギャップ10μmのインジウムスズオキサイド透明電極付きガラスセルに注入し、得られたセルの電気容量を測定(エヌエフ株式会社製、型式2353LCRメーター、測定周波数1kHz)を用いて20℃40RH%で測定する。
【0070】
<画像表示構造及び表示装置>
本発明の着色組成物は、含有されるメチン系色素が非極性溶媒、特に炭化水素系溶媒への溶解性に優れるため、ディスプレイ等の表示装置、中でもエレクトロウェッティング法の原理で動作する表示装置(ディスプレイ)や電気泳動法で動作する表示装置(ディスプレイ)に用いられる画像表示材料として有用である。したがって、本発明の着色組成物は、これらの表示装置における画像表示を担う画像表示構造の作製に好適に用いられる。
【0071】
エレクトロウェッティング法の原理は、国際公開第2005−098524号パンフレットに記載されている。この原理は、疎水性表面をもつポリマー上に配置された疎水性オイル層が電圧印加により変形する現象を利用する。疎水液(油滴)及びポリマー固体(例えばポリマー層)は、親水性液(例えば水)で取り囲まれた状態にある。この原理で動作するディスプレイは、はじめ水に馴染まない疎水性の表面をもつ物質を例えばディスプレイの観察面から遠い側の基板に用い、該基板と観察面に近い電極との間を親水性液(例えば水)及び着色した油滴(疎水液)で満たした状態にして電圧をかける。親水性液と電極との間に印加される電圧により電圧差が発生し、それに起因して親水性液と電極の間にクーロン的相互作用が現われ、互いに近づこうとする。それにより、疎水液は、ピクセル底部を完全には覆わずに、その一部分だけを覆うように変形する。前記疎水性表面をもつポリマー層は、好ましくは透明性を呈しており、疎水液で覆われなくなった部分は透明状態となる。最大電圧が印加された場合及び電圧が印加されない場合の疎水液の形状変化が、観察者にはピクセルの「オン」又は「オフ」の状態として認識され得る。この原理で動作するディスプレイは、透過型と反射型の2通りが考えられる。透過型の場合、「オン」状態では、疎水性の基板面を覆っていた油滴が移動して親水性液を通して光が観えるためピクセルは「透明」に観え、「オフ」状態ではカラー又は黒色に観えることで、光学的印象が生じる。反射型では、用いるポリマー固体が白色である場合、さらには電極の下部に反射層を用いる場合などが挙げられる。反射型の場合、「オン」状態では、疎水性の基板面を覆っていた油滴が移動してポリマー固体が剥き出しになってその白色が親水性液を通して観えるためピクセルは「白」に観え、「オフ」状態ではカラー又は黒色に観えることで、光学的印象が生じる。
以上のように、疎水液である油滴の着色に用いる化合物は、油滴を構成する非極性溶媒への溶解性が良好であることが求められる。本発明の着色組成物は、メチン系色素の非極性溶媒への溶解性が良好であり、前記エレクトロウェッティング法を利用した表示方法に好適である。
【0072】
具体的な例として、表面が疎水性であるポリマー層と、ポリマー層の前記表面に接触させて配置され、既述の本発明の着色組成物を用いて形成されたオイル層と、前記オイル層に接触させて配置された親水性溶液層とが少なくとも設けられた画像表示構造に好適に構成することができる。このような画像表示構造を備えた表示装置の例として、図1に示すエレクトロウェッティング素子であってもよい。
図1に示すように、エレクトロウェッティング素子50は、光が入射する入射面21a、入射面21aに対向配置され、光が出射する出射面21b、及び複数の側面21c,21dにより取り囲まれたセル21と、セル内に配された電極14と、電極14上に配置された絶縁層(ポリマー層)13と、絶縁層13に接触させてセル内に充填されたオイル層12と、オイル層12に接触させてセル内に充填された親水性溶液層11と、親水性溶液層11と電極14とを電気的に接続する電源25とを備えている。また、この素子は、電源25をオン/オフするためのスイッチSW26、及びセル21の外部に配置され、セル21に照射する光源27が取り付けられている。
【0073】
絶縁層13は、疎水性材質を用いて形成されるため、スイッチSW26がオフのときには、オイル層12が絶縁層13の表面に接し、このオイル層12によって親水性溶液層11と絶縁層13とは隔離されている。逆に、スイッチSW26がオンされると、電極と親水性溶液層11が帯電するため互いにクーロン的相互作用が生じ、電極14と親水性溶液層11との親和性が増し、オイル層12は絶縁層13との接触面が最小になる方向に移動する。ここで、オイル層12は、既述の本発明の着色組成物を用いて形成されるため、スイッチSW26がオフのときはオイル層12の色相に、スイッチSW26がオンされたときには透明表示に良好に切り替えられる。このとき、親水性溶液層11が赤色、緑色、青色等の所望の色相に着色されていてもよく、オイル層及び水溶液相からなる色相と親水性溶液相の色相とによる2色表示が可能である。更に、親水性溶液層とオイル層との色相を種々組み合わせて所望の色相(例えばRGB3原色)を呈する複数のセルを1つの画素に配置し、このセル単位で選択的に電圧供給することでカラー画像の表示も可能である。また、オイル層12の色相が黒色の場合、スイッチSW26がオフのときに遮光され、オンされたときに光源27から出射された光は出射面21bに到達して白表示されることになり、白黒表示が可能である。
【0074】
ディスプレイにおけるエレクトロウェッティング技術は、他のディスプレイ技術に比べて少ないエネルギー消費や、動画の表示にとって必須である、ピクセルの表示状態の迅速な切り替え(切替時間の短縮)など、多くの利点を有している。さらに、疎水液中に溶解された着色材によってピクセルの彩色性が保証されるので、ディスプレイのピクセルは様々な色を呈することが可能である。着色材は親水性液に不溶でなければならない。それによって、赤(R)、緑(G)、青(B)及び黒を基調にした透過型ディスプレイ、又はシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)及び黒を基調にした反射型ディスプレイを実現できる。
【0075】
電極と親水性溶液とのクーロン的相互作用の大きさは印加電圧に比例する。したがって、電圧に応じてピクセル中に様々なグレースケールを表現することができ、ディスプレイにおいて高品質の画像を生成することができる。
【0076】
エレクトロウェッティングは、ディスプレイの他、光学フィルター、適応レンズ、及びラボオンチップ技術にも利用できる。
【0077】
また、電気泳動法は、溶媒中に分散された電荷を帯びた粒子が、電界によって移動する現象を利用した原理であり、省消費電力で、視野角依存性がないという利点を有する。
【0078】
電気泳動法の原理で動作するディスプレイは、着色溶液中に電荷を帯びた粒子を添加し分散させてなる分散液(カラー表示機能(例:カラーフィルタ)を担う画像表示構造)を対をなす2枚の基板間に配置し、基板間に数ボルト程度の電圧を印加することにより、液相中を粒子が移動して画像表示を行うものである。例えば、着色溶液として本発明の着色組成物を用い、これに電荷を帯びた粒子が分散された分散液をマイクロカプセル化したものを、対をなす2枚の基板間に配置することで、カラー表示を担う画像表示構造(いわゆるカラーフィルタ)を設けることによって構成されたディスプレイが考えられる。本発明の着色組成物は、メチン系色素の非極性溶媒への溶解性が良好であり、前記電気泳動法を利用した表示方法に好適である。
【実施例】
【0079】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0080】
〔実施例1〜9〕
前記した例示化合物D−2、D−11、D−13、D−14、D−25、E−2、E−7、E−3、D−37で示される色素を、それぞれ溶媒(hexane〔n−ヘキサン〕)に3質量%溶解して着色組成物(インク)を調製した。得られた着色組成物(インク)について、着色組成物の色、吸収極大波長(λmax)、吸光度(abs)、吸光係数(ε)、溶媒に対する各色素の溶解度(質量%)、比誘電率、および粘度を評価した。評価結果を表1に示す。
【0081】
−各物性判断手法−
1.溶液の色
着色組成物の色は、目視で判断した。
【0082】
2.着色組成物の吸収極大波長、吸光度、及び吸光係数
着色組成物の吸収極大波長(λmax)、および吸光度(abs)は、可視光吸光度計(島津製 UV−1800PC)で測定し、また、ランベルト・ベールの法則に基づいて、吸光係数(ε)を算出した。
【0083】
3.n−hexaneへの溶解度
溶媒であるn−hexaneに対する各色素の溶解度は、次のようにして測定した。
50℃に加熱したn−hexaneに各色素を溶解して飽和溶液を調製し、得られた飽和溶液を、25℃、0.1MPa環境下に1時間放置し、析出した色素を濾過し、析出量を測定することにより、25℃、0.1MPaにおける各色素のn−hexaneに対する溶解度(質量%)を算出した。
【0084】
4.比誘電率の測定
各色素の5質量%、7.5質量%および10質量%のn−ヘキサン溶液を作製し、セルギャップ10μmのインジウムスズオキサイド透明電極付きガラスセルに注入した。得られたセルの電気容量を測定(エヌエフ株式会社製、型式2353LCRメーター、測定周波数1kHz)を用いて20℃40RH%で測定した。参照用としてn−ヘキサンを測定。得られた色素溶液の比誘電率から、各色素自体の比誘電率を外そう法により算出した。
色素D−2の比誘電率は8.2であった。
【0085】
5.粘度の測定
各色素のn−ヘキサン5質量%溶液を作製し、R型粘度計(東機産業製 型番500)にて、各色素溶液の粘度(20℃)を測定した。
また、色素D−2の10質量%のn−ヘキサン溶液は、3.2mPa・sだった。
【0086】
〔比較例1、2〕
実施例1において、色素として例示化合物D−2を用いる代わりに、下記化合物D−101、D−102をそれぞれ用いた他は実施例1と同様にして、各着色組成物の色、吸収極大波長、吸光度、吸光係数、及び溶解度を評価した。D−101およびD−102はいずれも溶解度が小さく、溶液が着色しなかったので吸光度等は測定できなかった。評価結果を表1に示す。
【0087】
【化23】

【0088】
【化24】

【0089】
【表1】

【0090】
表1から、本発明におけるメチン系色素である例示化合物は、比較例化合物であるD−101、D−102に比べて、炭化水素系溶媒に対して高い溶解度を示すことがわかり、得られた着色組成物は、吸光係数が大きいものであった。
従って、例示化合物D−2、11、13、14、および25を、エレクトロウェッティング法の原理で動作する表示装置や電気泳動法で動作する表示装置の光シャッターを好適に作製することができることがわかる。
また、本発明の着色組成物は、高い色素濃度でありながら、比誘電率が小さく、粘度も小さいものであり、このことから、エレクトロウェッティング法の原理で動作する表示の光シャッターとして、高いコントラスト比と早い応答速度を与えることができることがわかる。
【0091】
〔実施例10〕 黒色の着色組成物の作製
本発明における色素である例示化合物D−2、E−2、およびシアン色素として下記に示す化合物C−1、C−2を各々下記の組成比率でn−デカンに溶解させ、着色組成物を調製した。
(組成比率)
・例示化合物D−2 290mg
・例示化合物E−2 240mg
・色素C−1 300mg
・色素C−2 300mg
・溶媒:n−デカン 900mg
【0092】
【化25】

【0093】
得られた着色組成物は黒色であり、その粘度を粘度計で測定したところ、8.0mPa・sであった。粘度の小さな着色組成物をエレクトロウェッティング法の原理で動作する表示の光シャッターとして用いた場合には、粘度の大きな場合と比較して、応答速度が速く、より低い電圧で駆動できる。したがって、本発明の着色組成物は、エレクトロウェッティング法の原理で動作する表示の光シャッターとして好適に用いられることがわかる。
【0094】
〔実施例11〜20〕
図1に示すように、ITO電極12とフッ素ポリマー(サイトップ、旭硝子(株)製)からなる絶縁層13とが順次配されたセルを用意し、このセル内に実施例1〜10で作製した着色組成物又は黒色の着色組成物の各々を充填し、その上に塩化ナトリウム水溶液もしくはエチレングリコール(親水性液)を充填することで、エレクトロウェッティング素子を作製する。
作製されたエレクトロウェッティング素子は、画像表示する際の表示のオン/オフ性(いわゆる光シャッター特性)に優れる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の着色組成物は、ディスプレイ等の表示装置、中でも、エレクトロウェッティング法の原理で動作する表示装置や、電気泳動法で動作する表示装置に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0096】
50・・・エレクトロウェッティング素子
21・・・セル
14・・・電極
13・・・絶縁層(ポリマー層)
12・・・オイル層
11・・・親水性液層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示され、25℃、0.1MPaにおけるn−ヘキサンへの溶解度が1質量%以上であるメチン系色素と、非極性溶媒とを含む着色組成物。
【化1】


一般式(1)中、Rは水素原子、アルキル基、アリール基、−COOR11、または−CONR1112を表し、Arは芳香環を表わす。R、R10は、各々独立に、水素原子、またはアルキル基を表す。R11、およびR12は、各々独立に、水素原子、アルキル基、またはアリール基を表す。R11、R12は互いに結合して、5員環、6員環、または7員環を形成してもよい。nは0〜2の整数を表す。R、R、R10およびArは、解離性基を有しない。
【請求項2】
前記メチン系色素が、下記一般式(2)または一般式(3)で表される化合物である請求項1に記載の着色組成物。
【化2】


一般式(2)中、Rは水素原子、アルキル基、アリール基、−COOR11、または−CONR1112を表し、Rは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、−NHCOR11、−NHCONHR11、または−NHCOOR11を表わし、R、およびRは、各々独立に、水素原子、アルキル基、またはアリール基を表わす。RとRは互いに結合して、5員環、6員環または7員環を形成してもよい。R11、およびR12は、各々独立に、水素原子、アルキル基、またはアリール基を表す。R11、R12は互いに結合して、5員環、6員環または7員環を形成してもよい。R〜Rは、解離性基を有しない。
【化3】


一般式(3)中、Rは水素原子、アルキル基、アリール基、−COOR11、または−CONR1112を表し、R、R、およびRは、各々独立に、水素原子、アルキル基、またはアリール基を表し、Rは水素原子、アルキル基、またはアリール基を表す。RとRは互いに結合して、5員環または6員環を形成してもよい。R11、およびR12は、各々独立に、水素原子、アルキル基、またはアリール基を表す。R11、R12は互いに結合して、5員環、6員環または7員環を形成してもよい。R、R〜Rは、解離性基を有しない。
【請求項3】
前記一般式(2)におけるR、R、およびRの少なくとも1種が、炭素数7以上30以下のアルキル基である、請求項2に記載の着色組成物。
【請求項4】
前記一般式(1)におけるnが1または2である、請求項1に記載の着色組成物。
【請求項5】
前記メチン系色素の比誘電率が、2以上10以下である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の着色組成物。
【請求項6】
前記着色組成物の20℃における粘度が、0.01mPa・s以上10mPa・s以下である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の着色組成物。
【請求項7】
エレクトロウェッティング法の原理で動作する表示装置の光シャッター層の作製に用いられる請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の着色組成物。
【請求項8】
電気泳動法で動作する表示装置のカラーフィルタの作製に用いられる請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の着色組成物。
【請求項9】
表面が疎水性である疎水性ポリマー層と、
前記表面に接触させて配置され、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の着色組成物を用いて形成されたオイル層と、
前記オイル層に接触させて配置された親水性液層と、
を有する画像表示構造。

【図1】
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【公開番号】特開2013−82864(P2013−82864A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−274606(P2011−274606)
【出願日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】