説明

睡眠時無呼吸判定装置

【課題】従来の非接触式の睡眠時無呼吸判定装置は、睡眠時の無呼吸状態で生じる胸部のみ止まり腹部は動作すると言う現象を捉えることができないので睡眠時無呼吸を正確に判定することができなかった。
【解決手段】睡眠中の被検者の胸部及び腹部にマイクロ波を照射し反射波から得られるマイクロ波ドップラシフト信号をフーリエ変換し、基本波と奇数高調波との周波数成分を比較し、その比較結果に基づいて被検者の正常呼吸状態と呼吸異常状態とを判別するようにした。これにより、被検者の睡眠時の無呼吸状態を正しく判定できるようになった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、睡眠中の被検者の呼吸状態を非接触で監視し、睡眠中に無呼吸状態を発生するいわゆる無呼吸症候群を判定する睡眠時無呼吸判定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、睡眠中に一時的に呼吸が停止するいわゆる睡眠時無呼吸症候群は、高血圧や睡眠障害につながる疾患として着目されている。
【0003】
睡眠時無呼吸症候群は、生活習慣病をさらに悪化させるばかりでなく、夜間十分な睡眠がとれないため、本来活動を行っている日中に居眠りや集中力低下などを引き起こすことがある。このような状態は、被検者が事故に遭遇してしまう機会を招くことにもなるため、一刻も早い診断と早期治療が必要である。
【0004】
一般的に睡眠時無呼吸症候群の診断は、手間が掛かると言われている。例えば、病院に入院し、呼吸モニタなどを用いた監視装置によって数日間睡眠状態を監視する。そして、その監視結果を医師などの専門家が精査してなくてはならないためである。
【0005】
もちろん、監視装置類を身体に装着しての睡眠や入院しての睡眠は、被検者にとって通常の睡眠とは異なるわけであるから、そのような、正常な睡眠ではないという状態で計測した監視結果の解析もかなりの専門知識を必要とする。
つまり、上述のような入院を行っての診断は、被検者側にも病院側にも相当な負担を強いていると言わざるを得ない。
【0006】
したがって、被検者の診断は、被検者が自宅などでリラックスできる場所で行うことが好ましく、もちろん、無呼吸の検出もできるだけ被検者と非接触で行うのが好ましい。
このような事情から、被検者に監視装置類を装着することなく、入院をせずに睡眠中の呼吸状態を簡便に、かつ正確に測定する技術が望まれている。
【0007】
そのような要望に対する提案は散見するが、例えば、ベッドにマット型の体動センサを備え、体動により睡眠中の呼吸動作を検出する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
特許文献1に示した従来技術は、被検者の自宅でも測定ができるため入院の必要がないという利点があるが、寝具そのものを専用品にする必要がある。
このため、測定装置としては大掛かりとなることと、体動センサを用いているため、睡眠中の被検者の体動と呼吸動作の識別が困難となり、正確に睡眠時の無呼吸を測定できないという課題がある。
【0009】
また、体動を検出に用いずに、呼吸音を主に用いて検出する技術も知られている。例えば、体温センサを用いると共にベッドサイドなどにマイクロホンを設置し、睡眠中の被検者の体温と呼吸音とから睡眠中の呼吸動作を監視する技術である(例えば、特許文献2参照。)。
【0010】
特許文献2に示した従来技術は、比較的小型の装置構成であり寝具などを特別なものに交換する必要がない。
しかし、主に呼吸音から無呼吸状態を判別するため、呼吸音と同じような周波数帯の音も呼吸音と認識してしまう場合があり、測定精度が高くないという問題がある。そして、
生活雑音などの他の音源が存在する場合や、部屋に被検者とは別の人間が寝ている場合などには使用できないという課題もある。
【0011】
なお、特許文献2に示した従来技術は、体温を計測するのであるが、非接触で正確に体温を検出することは難しく、温度センサなどを身体に装着する必要がある。これでは被検者は、リラックスした通常の睡眠状態にはならない場合が多い。
【0012】
また、呼吸音ではなく、睡眠中の被検者の状態を、マイクロ波を用いて非接触で測定する技術も知られている。マイクロ波は寝具や着衣を透過する性質があるから、これを用いて被検者の脈拍又は呼吸などを検知する技術である(例えば、特許文献3参照。)。
【0013】
特許文献3に示した従来技術は、比較的小型であり、生活雑音などがあっても睡眠中の被検者の状態を知り得ることができるという利点がある。
【0014】
特許文献3に開示された技術は、次のような構成である。
マイクロ波微動センサを備えており、マイクロ波インパルス送信器及び送信アンテナからなる送信手段と、マイクロ波受信器及び受信アンテナとからなる受信手段で構成している。
送受信アンテナの指向性から選択した検知面と、ゲート時間で選択した検知距離とにより検知空間を構成することで、外乱の影響を受けずに被検者の微動反射信号のみを検出し、データ送受信部で出力するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特許第2817472号公報(第3頁、図1)
【特許文献2】特開2007−061203号公報(第5頁、図1)
【特許文献3】特開2002−58659号公報(第3頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
知られているように、人間が呼吸を行うと、肺に空気が入るので胸部が拡張する。すると隣接する腹部も同時に動く。これは睡眠時も同様である。当然のことながら、活動時に意図的に呼吸を止めようとすれば、胸部も腹部も動かない。
しかし、睡眠時に無呼吸になると、この動きは変わる。すなわち、無呼吸になると肺への空気の流入がないから胸部の動きは止まるが、腹部の動きは止まらないのである。
【0017】
これは、人体の上気道の狭さに起因する現象である。上気道が狭くなると、呼吸をしようとしても肺に空気が入らない。したがって、胸部拡張が起こらず(胸部が止まり)、腹部のみが動くのである。
【0018】
ところで、睡眠時無呼吸症候群の大半(8割以上とも言われている)は、閉塞性睡眠時無呼吸症候群である。
これは、上気道が狭くなって空気が肺に送られなくなることで起こるものである。上気道が狭くなる理由は、睡眠により上気道筋の緊張が緩み、もともと狭い上気道がさらに狭くなること、肥満等により上気道が狭くなってしまうことなどが主な原因である。
【0019】
つまり、睡眠時に発生する無呼吸状態の大半は、胸部が止まり腹部のみ動いているといえる。
【0020】
発明者が検討したところによると、胸部及び腹部が同時に動く呼吸時の動作は、その波
形が正弦波に近い波形となり、胸部が止まり腹部のみが動く無呼吸時の動作の波形は、高調波を含む孤立波になることが分かった。
その理由は、胸部と腹部とが動作すると、肺に空気が入ることにより胸腹部は緩やかな動きとなるため、動作の波形は正弦波に近いものとなり、腹部のみ動作すると、肺に空気が入らず筋肉の収縮だけの動きとなるため、動作の波形は高調波を含む孤立波になると考えている。
【0021】
特許文献3に示した従来技術は、アンテナの指向性から得られるアンテナ検知角と、送信アンテナを動かす送信パルスのゲート時間を制御することで得られる検知距離とにより検知空間を形成し、これを被検者の上半身に設定している。そして、被検者の上半身全体の微動をまとめて検知し、その中で呼吸波形を検出することで被検者の呼吸の有無を発見する。
【0022】
しかしながら、睡眠時に発生する無呼吸状態の典型的な動作である「胸部のみ止まり腹部は動作する」という状態を積極的に検出していないから、就寝中の被検者の姿勢や動作などにより呼吸が検出されないと無呼吸と判断してしまうことがある。また、マイクロ波の検知空間が正常に形成されなくても無呼吸と判断されてしまう。
つまり、被検者ではなく装置側の都合で呼吸が検出できないときであっても、すべて睡眠時無呼吸と判定しまうおそれがある。
【0023】
ところで、上述のように、睡眠時無呼吸症候群のうち大半は閉塞性睡眠時無呼吸症候群であると言われているが、残りは中枢性睡眠時無呼吸症候群であると言われている。
この症状は、呼吸の指令を出力する脳に障害があることが原因と考えられている。胸部や腹部といった呼吸運動全体が消失するもので、呼吸の動きそのものが無くなる。被検者の身体にとっては危険な状態にあるといえる。
【0024】
このように、睡眠時無呼吸症候群は、そのなかでも中枢性睡眠時無呼吸症候群のように、状況を発見した後の対処に対して緊急性を要するようなものもある。
【0025】
中枢性睡眠時無呼吸症候群は、呼吸の動きそのものが無くなるから特許文献1に示した従来技術のように動体センサを有するものでも検出することができるかもしれない。しかし、特許文献2や3に示した従来技術のように呼吸の有無のみで判定しているものでは、閉塞性睡眠時無呼吸症候群か中枢性睡眠時無呼吸症候群かを見分けることはできない。
【0026】
発明者は、上述のような、胸部及び腹部が同時に動くときの正弦波に近い波形と、胸部が止まり腹部のみが動く高調波を含む孤立波の波形とを、正しく見分けることができれば、胸部も腹部も動いていないことも見分けることができるから、こうすれば、閉塞性睡眠時無呼吸症候群も中枢性睡眠時無呼吸症候群も検出でき、睡眠時無呼吸症候群を正確に検出することができると考える。
【0027】
しかしながら、従来知られている技術では、入院等をすることなく睡眠時の呼吸状態を検出するというような簡便に計測を行えることはできても、睡眠中の呼吸状態を正確に測定することはできないのである。もちろん、簡便さと正確さを両立させた技術も提案されていない。
【0028】
本発明の目的は上記課題を解決し、単なる体動検知や呼吸検知では検出が困難な、胸部のみ止まり腹部は動作するという無呼吸状態を見分け、睡眠中の呼吸及び無呼吸状態を簡便にかつ正確に検出できる睡眠時無呼吸判定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0029】
上記課題を解決するため本発明の睡眠時無呼吸判定装置は下記記載の構成を採用する。
【0030】
本発明の睡眠時無呼吸判定装置は、睡眠中の被検者の胸部及び腹部にマイクロ波を照射し被検者から反射される反射波に基づき被検者の睡眠中の無呼吸状態を判定する睡眠時無呼吸判定装置において、反射波から得られるマイクロ波ドップラシフト信号をフーリエ変換し、基本波と奇数高調波との周波数成分を比較し、その比較結果に基づいて被検者の正常呼吸状態と呼吸異常状態とを判別し、被検者の無呼吸状態を判定する無呼吸判別手段を備えることを特徴とする。
【0031】
このような構成とすれば、被検者から反射された反射波に含まれている基本波と奇数高調波との周波数成分から被検者の無呼吸状態を正確に検出することができ、睡眠時無呼吸判定が確実になる。
【0032】
また、無呼吸判別手段は、呼吸異常状態の積算時間が所定時間を越えることで被検者の無呼吸状態を判定する様にしてもよい。
【0033】
このような構成とすれば、無呼吸状態の判定が呼吸異常状態の積算時間を基準になされるので、睡眠時の無呼吸判定の判定基準が明確化される。
【0034】
また、マイクロ波を照射するマイクロ波発信器と、反射波Mを受信するマイクロ波受信器と、反射波Mからマイクロ波ドップラシフト信号Maを出力するマイクロ波復調器とを備えるマイクロ波ドップラセンサを備え、無呼吸判別手段はマイクロ波ドップラシフト信号を入力してマイクロ波デジタルデータを出力する信号処理手段と、マイクロ波デジタルデータを入力してフーリエ変換を行い、そのフーリエ変換結果に含まれる基本波と奇数高調波とから、被検者の胸部状態データと腹部状態データとを含む胸腹部状態データを出力する胸腹部状態検出手段と、胸腹部状態データを入力して被検者の呼吸パターンデータを出力する呼吸パターン判定部と、呼吸パターンデータを入力して無呼吸警報信号を出力する報知手段とを備えてもよい。
【0035】
このような構成とすれば、マイクロ波ドップラセンサに基づき胸腹部状態データが検出され、胸腹部状態データから被検者の呼吸状態を示す呼吸パターンデータが出力され、無呼吸が発生すれば無呼吸警報信号が出力され、外部に報知されるので睡眠時無呼吸判定の安全性が高まる。
【0036】
また、胸腹部状態検出手段5は、マイクロ波デジタルデータを入力してフーリエ変換し、フーリエ変換結果を出力するFFT部と、フーリエ変換結果を入力し、低い周波数側から順次周波数成分を調べることで基本波を検出し、基本波のスペクトル振幅を算出して被検者の胸部状態データとして出力する基本波検出手段と、フーリエ変換結果を入力し、基本波のスペクトル振幅の奇数倍周波数から奇数高調波を検出し、該奇数高調波のスペクトル振幅を算出して被検者の腹部状態データとして出力する奇数高調波検出手段とを備えてもよい。
【0037】
このような構成とすれば、胸腹部状態データが胸部状態データと腹部状態データで構成され、無呼吸状態で典型的な胸腹部状態が検出できるので、睡眠時無呼吸判定が確実になる。
【0038】
また、呼吸パターン判定部は、胸部状態データと腹部状態データとを比較し、被検者の胸部と腹部とが同時に動いている状態である正常呼吸状態と、胸部のみ止まり腹部が動作する状態である呼吸異常状態とを判別し、呼吸異常状態の時間を積算する積算時間により、被検者の無呼吸状態を判定する様にしてもよい。
【0039】
このような構成とすれば、胸部状態データと腹部状態データとに基づき様々な呼吸パターンから呼吸異常状態のパターンが確実に抽出され、かつ呼吸異常状態の継続時間が監視されるので、睡眠時無呼吸判定が確実になる。
【0040】
また、報知手段は、呼吸パターンデータを記憶するとともに呼吸パターン記憶データとして出力する記憶部と、呼吸パターン記憶データを入力として通報指示信号を出力する通報判断部と、通報指示信号を入力として無呼吸警報信号を出力する通信部と、呼吸パターンデータを表示する表示部とを備えてもよい。
【0041】
このような構成とすれば、記憶した過去の呼吸パターン記憶データから、より正確な通報判断が行えるので、信頼性に富む睡眠時無呼吸判定装置を構成することができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、胸部と腹部との状態から呼吸が正常か否か判定されるので、精度の高い睡眠時無呼吸判定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明による睡眠時無呼吸判定装置の第1の実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明による睡眠時無呼吸判定装置の第1の実施形態の詳細構成を示す機能ブロック図である。
【図3】本発明による睡眠時無呼吸判定装置の第1の実施形態の動作を説明する波形図である。
【図4】本発明による睡眠時無呼吸判定装置の第1の実施形態の動作を説明する波形図である。
【図5】本発明による睡眠時無呼吸判定装置の第1の実施形態の動作を説明する図表である。
【図6】本発明による睡眠時無呼吸判定装置の第1の実施形態の動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明による睡眠時無呼吸判定装置の第1の実施形態を示す外観図である。
【図8】本発明による睡眠時無呼吸判定装置の第1の使用状態を示す側面図である。
【図9】本発明による睡眠時無呼吸判定装置の原理を説明するブロック図である。
【図10】本発明による睡眠時無呼吸判定装置の原理を説明する波形図である。
【図11】本発明による睡眠時無呼吸判定装置の原理を説明する波形図である。
【図12】本発明による睡眠時無呼吸判定装置の第2の実施形態の構成を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明による睡眠時無呼吸判定装置は、マイクロ波ドップラセンサから得られる信号を処理する。その波形に含まれる基本波と奇数高調波との周波数成分を比較し、その比較結果に基づいて被検者が正常呼吸状態か呼吸異常状態かを判別するという点に大きな特徴がある。
【0045】
つまり、睡眠時に胸部及び腹部が同時に動くときの正弦波に近い波形(正常な呼吸時の動作波形)と、胸部が止まり腹部のみが動く高調波を含む孤立波の波形(無呼吸時の動作波形)とを見分け、胸部と腹部の動作状態、すなわち胸腹部状態を判定するのである。
【0046】
単にドップラシフトした信号から呼吸に伴う信号を選択して呼吸の有無のみから睡眠時無呼吸を判定するのではないから、胸部が動かず腹部のみ動作する状態(閉塞性睡眠時無
呼吸症候群)か、または胸部も腹部も動かない状態(中枢性睡眠時無呼吸症候群)かも検出できる。
【0047】
ここで、睡眠時無呼吸判定装置の基本動作を大まかに説明しておく。もちろん、構成、動作の詳細は、後述する実施例にて詳述する。
【0048】
まず、マイクロ波を照射しその反射波を検出するマイクロ波ドップラセンサを用い、マイクロ波ドップラセンサからの信号をFFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換、以下FFTと略記する)処理して、マイクロ波ドップラセンサからの信号の各周波数成分すなわち基本波と奇数高調波とを抽出する。
【0049】
次に、抽出した基本波と奇数高調波とから、胸腹部状態を検出する。
すでに説明したように、胸部及び腹部が同時に動く呼吸時の動作は、その波形が正弦波に近い波形となり、胸部が止まり腹部のみが動く無呼吸時の動作の波形は、高調波を含む孤立波になる。
【0050】
胸部と腹部とが動作すると、肺に空気が入ることにより緩やかな動きとなり、動作の波形は正弦波に近いものとなるから、FFT処理をすると、基本波が主体となり、奇数高調波は基本波に比べて小さくなる。つまり、FFT処理し、このとき発見した基本波は、正常な呼吸動作に起因する正弦波に近い動作波形から得られる波形であり、このとき発見した奇数高調波はその他の動作波形に起因するものであるから、大きさを比較して見分けるのである。
【0051】
一方、腹部のみ動作すると、肺に空気が入らず筋肉の収縮だけの動きとなり、動作の波形は高調波を含む孤立波になることから、FFT処理をすると、基本波に比べ奇数高調波が相対的に大きくなる。FFT処理し、このとき発見した基本波は、そもそも正常な呼吸動作に起因するものではないから、このとき発見した高調波との差が正常な呼吸時に比べて小さくなる。この基本波と奇数高調波とを比較して見分けるのである。
【0052】
このように、胸部や腹部の動作により、FFT処理した後の波形には明瞭な違いがあり、基本波と奇数高調波との大きさから胸腹部状態を検出する。
【0053】
次に、胸腹部状態を検出したのち、胸部の状態と腹部の状態との2つの情報から呼吸パターンを判定し、この呼吸パターンから無呼吸状態を検出する。
【0054】
そして、表示部に情報を表示し必要な場合には通信手段によって外部に情報を発信するものである。
【0055】
ここで、奇数高調波を基本波との比較に用いる理由を説明する。
胸部及び腹部が同時に動く呼吸時の動作は、その波形が「吸う」、「吐く」の動作にそれぞれ対応した上下対称の対称波の性質を有する正弦波に近い波形となり、胸部が止まり腹部のみが動く無呼吸時の動作の波形は、同様に対称波の性質を有する高調波を含む孤立波になる。
上述のごとく、胸部と腹部とが動作すると、肺に空気が入ることにより緩やかな動きとなり、動作の波形は正弦波に近いものとなるから、FFT処理をすると、基本波が主体となり、高調波は基本波に比べて小さくなる。対称波は基本波と奇数高調波のみの成分とで構成される性質があるので、奇数高調波の割合の有意差となって表れる。
【0056】
以下、睡眠時無呼吸判定装置の実施形態を、図面を用いて説明する。説明にあって用いる図面には同一の構成には同一の番号を付与している。説明においては、使用する図を提
示して説明するものであるが、すでに説明を終えた図面があるときはそれも適宜参照していただきたい。
【0057】
なお、第1の実施形態は、本発明の睡眠時無呼吸判定装置を具現化するための基本となる構成を有している。第2の実施形態は、さらに睡眠時無呼吸判定装置の機能が正常であることを監視する異常測定検出部を加えた構成である。
【実施例1】
【0058】
以下、図1から図11を用いて睡眠時無呼吸判定装置の第1の実施形態を詳述する。
【0059】
[本発明の原理的説明:図9、図10、図11]
初めに、図9〜図11を用いて睡眠時無呼吸判定装置に搭載されているマイクロ波ドップラセンサによる信号検出の原理を説明する。
図9は、マイクロ波ドップラセンサと被検者とを示すブロック図である。図10、図11は、マイクロ波ドップラセンサで検出される信号波形を説明するために模式的に示す波形図である。
【0060】
図9において、31はマイクロ波発信器、32はマイクロ波受信器、33はマイクロ波復調器である。これらでマイクロ波ドップラセンサ3を構成している。
10は被検者、10aは被検者10の胸部と腹部とからなる上半身の部分であり、以後胸腹部と表現する。
胸腹部10aは、呼吸を行うときに胸郭を拡大するための横隔膜および付随する筋膜と、肺膜、肺尖、上中下葉、斜裂、水平裂などからなる肺本体とを含んでいる部分である。
【0061】
マイクロ波ドップラセンサ3は、一般的なマイクロ波ドップラセンサを用いることができる。マイクロ波ドップラセンサには、その出力信号がアナログ信号のものとデジタル信号のものとがあるが、本実施形態では、図9に示すように、マイクロ波復調器33からのマイクロ波ドップラシフト信号Maはアナログ信号であり、マイクロ波ドップラセンサ3にはアナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換器を搭載していない例で説明をする。
【0062】
マイクロ波発信器31は、約2.5GHzのマイクロ波Mを被検者10に発射すると共に、送信マイクロ波電気信号Emeを出力する。マイクロ波発信器31から発射されたマイクロ波Mは、一部が被検者10の体表で反射され、一部が被検者10の内部に入り、胸腹部10aで反射して再び被検者10を経由してマイクロ波受信器32で受信される。
【0063】
マイクロ波受信器32は、マイクロ波Mを受信すると共に、受信マイクロ波電気信号Emrを出力する。
マイクロ波復調器33は、送信マイクロ波電気信号Emeと受信マイクロ波電気信号Emrとから、マイクロ波ドップラシフト信号Maを出力する。
【0064】
受信マイクロ波信号Emrには被検者10の胸腹部10aの状態に対応したドップラシフトが生じているので、マイクロ波ドップラシフト信号Maは、被検者10の胸腹部10aの状態に対応した信号となる。
【0065】
図10(a)は、マイクロ波ドップラセンサ3と被検者10との距離が比較的近い場合(例えば、1m)のマイクロ波ドップラシフト信号Maの時間的変化を示し、図10(b)は、その距離が比較的長い場合(例えば、3m)のマイクロ波ドップラシフト信号Ma´の時間的変化を示すものである。距離の違いは波形の振幅の強弱となって現れるが、波形の変化の傾向には違いがない。
【0066】
以上のように、被検者10から反射されるマイクロ波ドップラシフト信号Maを解析して、胸腹部10aの状態を検出し、胸部と腹部の状態を各々解析する。
【0067】
[無呼吸状態での胸腹部状態についての説明:図11]
図11を用いて無呼吸状態になった場合の胸部と腹部の状態について説明する。
図11は被検者10の睡眠時のマイクロ波ドップラシフト信号Maの時間変化を表した波形図であり、縦軸は波形の振幅を示しており、横軸は時間である。図11に示す区間Dnは正常呼吸の場合で、区間Daは無呼吸の場合を示す。
【0068】
図11の区間Dnに示すマイクロ波ドップラシフト信号Maは、肺に空気が入るので胸部と腹部が共に動き、波形は緩やかで正弦波に近い波形となる。
一方、図11の区間Daに示すマイクロ波ドップラシフト信号Ma´は、変化の早い孤立波状の波形となり高調波を含んだ尖った波形に変わる。
すでに説明したように、睡眠時の無呼吸のときは、上気道が狭くなるか詰まる。このため、体は呼吸をしようとするので腹部は動くものの、肺に空気が入らないから肺の拡張が起きずに胸部は動かない。そして腹部のみが動いている。このため、マイクロ波ドップラシフト信号Ma´は正弦波に近い波形とは異なる波形となる。
【0069】
本発明の特徴的な部分は、このように胸腹部10aの状態の違い(呼吸の有無)を2つの異なる波形で判断する点にある。
そして、マイクロ波ドップラシフト信号Maを、胸腹部の動きの違いに関わる波形の違いを見分けるアルゴリズムを用いて解析して、胸部が動かず腹部のみ動作する状態(閉塞性睡眠時無呼吸症候群)か、または胸部も腹部も動かない状態(中枢性睡眠時無呼吸症候群)かも検出でき、被検者10の睡眠中の無呼吸状態を正しく判定できるのである。
【0070】
[睡眠時無呼吸判定装置の構成説明:図1、図2]
次に、図1と図2とを用いて睡眠時無呼吸判定装置の構成を説明する。
初めに、図1を用いて睡眠時無呼吸判定装置1の概念的な構成を説明する。図1は、睡眠時無呼吸判定装置1のブロック図である。睡眠時無呼吸判定装置1は、マイクロ波ドップラセンサ3と、無呼吸判別手段2とを有している。
【0071】
無呼吸判別手段2は、信号処理手段4と、胸腹部状態検出手段5と、呼吸パターン判定部6と、報知手段7と、計時部9とを備えている。
【0072】
マイクロ波ドップラセンサ3は、図9を用いてすでに説明したように、被検者10にマイクロ波Mを発信し、反射してきたマイクロ波Mから、被検者10の身体の動きや呼吸動作を反映するマイクロ波ドップラシフト信号Maを出力するものである。
【0073】
無呼吸判別手段2の信号処理手段4は、マイクロ波ドップラシフト信号Maをデータ処理に適した信号に変えマイクロ波デジタルデータMdとして出力する。
胸腹部状態検出手段5は、このマイクロ波デジタルデータMdに基づき被検者10の胸腹部状態データTsを出力する。
なお、胸腹部状態データTsは、胸部状態データKsと腹部状態データFsとで構成される。詳しくは後述する。
【0074】
呼吸パターン判定部6は、胸腹部状態データTsに基づき被検者10の呼吸状態を判別して呼吸パターンデータRpを出力する。
【0075】
報知手段7は、呼吸パターンデータRpに基づき情報を報知するものである。呼吸パタ
ーンデータRpの内容を文字などで表示したり、ブザー等の報音機構を併設してもよい。そして、情報を外部に出力することもできる。この信号は、無呼吸警報信号Nである。
【0076】
計時部9は、無呼吸判別手段2の各要素に、時間情報を供給する手段である。詳しくは後述するが、第1計時信号T1と第2計時信号T2と第3計時信号T3とからなる基準信号を供給する。
【0077】
第1計時信号T1は、後述する信号処理手段4の内部のAD変換部のサンプリング時間を決めるための時刻情報を有している。例えば、周期を10msecとしたパルス信号である。
第2計時信号T2は、胸腹部状態検出手段5の動作を制御する時刻情報を有している。例えば、パルス周期が10秒〜60秒のパルス信号である。
第3計時信号T3は、日付や時間などの情報を有する時刻情報である。
【0078】
次に、図2を用いて無呼吸判別手段2の構成を詳細に説明する。
図2は、図1に示した睡眠時無呼吸判定装置1の各要素の構成を更に分解した詳細の機能ブロック図である。
【0079】
信号処理手段4は、帯域制限部41とAD変換部42とから構成している。
帯域制限部41は、マイクロ波ドップラシフト信号Maを入力してマイクロ波ドップラシフト信号Maのうちの不要な周波数帯域の成分を除去し、マイクロ波帯域制限信号Msとして出力する。
【0080】
AD変換部42は、マイクロ波帯域制限信号Msを入力して、第1計時信号T1によるサンプリングレート10msecにてアナログ信号であるマイクロ波帯域制限信号Msをデジタル信号であるマイクロ波デジタルデータMdに変換して出力する。
【0081】
胸腹部状態検出手段5は、マイクロ波デジタルデータMdを入力し、この信号を第2計時信号T2に基づき所定時間蓄積してFFT処理により周波数スペクトル情報であるフーリエ変換結果Mfを出力するFFT部51と、フーリエ変換結果Mfを入力してフーリエ変換結果Mfに含まれる基本波を胸部状態データKsとして出力する基本波検出部52と、フーリエ変換結果Mfに含まれる奇数高調波を腹部状態データFsとして出力する奇数高調波検出部53とから構成している。
【0082】
呼吸パターン判定部6は、胸部状態データKsと腹部状態データFsとからなる胸腹部状態データTsと日付や時間などの情報を有する第3計時信号T3とから呼吸パターンデータRpを出力する。
【0083】
報知手段7は、呼吸パターンデータRpを記憶し呼吸パターン記憶データSdを出力する記憶部71と、呼吸パターン記憶データSdに基づき通報指示信号Edを出力する通報判断部72と、通報指示信号Edに基づき無呼吸警報信号Nを発信する通信部73と、表示部74とから構成される。
【0084】
表示部74は、呼吸パターン判定部6から出力される呼吸パターンデータRpの内容を表示する。表示部74は周囲にいる医療関係者や家族に、被検者10に無呼吸状態が発生したことを知らせるためのもので、必要に応じブザー等の報音機構を併設することができる。
【0085】
計時部9は、第1計時信号T1、第2計時信号T2、第3計時信号T3を出力しているが、図示はしないが、例えば、水晶振動子などを用いて所定の周波数のクロック信号を出
力する源振クロック部、そのクロック信号を分周して所定の分周信号を生成する分周回路部、その分周信号から時刻情報を生成する時刻生成部などで構成することができる。これらの構成は知られている時計回路で広く知られているものであるから、詳細な説明は省略する。
【0086】
[睡眠時無呼吸判定装置の動作説明:図2〜図8]
次に図2〜図8を用いて睡眠時無呼吸判定装置1の各要素の詳細を説明する。
まず、胸腹部状態検出手段5の基本動作を説明する。
【0087】
[胸腹部状態検出手段5の説明]
まず、胸腹部状態検出手段5の大まかな動きを説明する。
胸腹部状態検出手段5は、信号処理手段4から入力したマイクロ波デジタルデータMdをフーリエ変換し、フーリエ変換した波形から、基本波と奇数高調波とを見つける。
基本波から、もっとも高いスペクトル振幅を探し、3倍高調波からもっとも高いスペクトル振幅を探し、5倍高調波からもっとも高いスペクトル振幅を探し、基本波と3倍、5倍の奇数高調波からなるパターン判断をして、胸部及び腹部が動く通常の呼吸か、腹部のみ動く無呼吸(閉塞性睡眠時無呼吸症候群)か、あるいは胸部と腹部ともに動かない無呼吸(中枢性睡眠時無呼吸症候群)かを判定するものである。
【0088】
すなわち、基本波のスペクトル振幅をF1とし、3倍高調波のスペクトル振幅をF3とし5倍高調波のスペクトル振幅をF5としたとき、次式の式を用いて判断する。
【0089】
α×F1>F3>β×F1
【0090】
α×F1>F5>β×F1
【0091】
上記の判断式によって、腹部のみ動作する呼吸の時間と、胸部と腹部ともに動かない時間を無呼吸時間として積算し、この積算時間が所定時間より多ければ睡眠時無呼吸と判定する。なおαは上限定数、βは下限定数と呼称する。
【0092】
[FFT部の説明]
次に、FFT部51の動作を説明する。
FFT部51は、第2計時信号T2に基づきマイクロ波デジタルデータMdを所定時間蓄積しFFT処理を行なう。
このFFT処理は、入力信号に対し高速フーリエ変換処理を行なうものである。すなわち、蓄積したマイクロ波デジタルデータMdをフーリエ変換し、個々の信号成分に分解した後、各成分を周波数スペクトル上に表す処理を行い、フーリエ変換結果Mfとして基本波検出部52と奇数高調波検出部53とに出力する。
また、マイクロ波デジタルデータMdを所定時間蓄積する第2計時信号T2は、この場合、例えば、30secである。
【0093】
次に、基本波検出部52及び奇数高調波検出部53を、図3及び図4を用いて説明する。
基本波検出部52及び奇数高調波検出部53の説明にあっては、基本波検出部52の説明に用いる図3は、被検者10が正常な呼吸をしているときの波形とし、奇数高調波検出部53の説明に用いる図4は、被検者10が無呼吸であるときの波形というように、状態を分けている。図11に示す区間Dnの波形が図3の場合、図11に示す区間Daの波形が図4の場合と考えると理解しやすい。
【0094】
これら2つの検出部に入力するフーリエ変換結果Mfは、被検者10の胸腹部10aの
動きに応じたマイクロ波ドップラシフト信号Maによるものであるから、被検者10の呼吸や無呼吸や体動を含んでいる。これら2つの検出部は、それぞれ独立して基本波及び奇数高調波を見分けるのであるが、説明しやすいようにするため、呼吸と無呼吸とを分けてそれぞれ図3及び図4に図示する形態で説明するようにした。
【0095】
[基本波検出部の説明:図3]
まず、基本波検出部52について図3を用いて説明する。
図3は被検者10の呼吸が正常の場合の波形を示している。図3(a)は、FFT部51に入力するマイクロ波デジタルデータMdを示しており、図3(b)は、マイクロ波デジタルデータMdに基づきFFT部51が出力したフーリエ変換結果Mfであり、双方を見やすいように並べて示したものである。図3(a)は横軸を時間とし縦軸を信号の振幅としており、図3(b)では、横軸を周波数とし、縦軸をスペクトル振幅として表したものである。
【0096】
フーリエ変換結果Mfは、周波数成分ごとに分解できる。図3(b)に示す例では、これを基本周波数成分fbとしている。そして、基本周波数成分fbのうち、もっともスペクトル振幅の大きなものを基本波スペクトル振幅F1とする。
【0097】
基本波検出部52は、フーリエ変換結果Mfを、低い周波数側からスキャンする。予め設定した所定の周波数範囲に入ったものを基本周波数成分fbとし、この中で予め設定した所定のスペクトル振幅を超える大きなものを基本波スペクトル振幅F1とするのである。
【0098】
基本波検出部52は、図示しない記憶手段に、予め上述の所定の周波数範囲や所定のスペクトル振幅の大きさを記憶しており、これとフーリエ変換結果Mfとを比較するのである。
【0099】
そして、基本波検出部52は、基本波成分のスペクトル振幅を胸部状態データKsとして出力するので、この例では次式のようになる。
【0100】
胸部状態データKs=F1
【0101】
[奇数高調波検出部の説明:図4]
次に、奇数高調波検出部53について図4を用いて説明する。
図4は被検者10の呼吸が無呼吸の場合の波形を示している。図4は、図3と同様に、図4(a)にマイクロ波デジタルデータMdを、図4(b)にフーリエ変換結果Mfをそれぞれ示している。また、図の軸も図3と同様である。
【0102】
フーリエ変換結果Mfは、周波数成分ごとに分解できる。図4(b)に示す例では3つに分解される。基本周波数成分fb、奇数高調波のうちの3次高調波成分f3、同じく5次高調波成分f5である。それぞれの周波数成分のうち、もっともスペクトル振幅の大きなものを、それぞれF1´、F3、F5とする。
【0103】
奇数高調波検出部53は、基本波検出部52と同様に、フーリエ変換結果Mfを、低い周波数側からスキャンする。予め設定した所定の周波数範囲に入ったものを基本周波数成分fbとし、この中で予め設定した所定のスペクトル振幅を超える大きなものを基本波スペクトル振幅F1´とする。
そして、この基本波スペクトル振幅F1´の3倍及び5倍の周波数位置に対して、それぞれ予め設定した所定の周波数範囲に入ったものを3次高調波成分f3、5次高調波成分f5とし、それぞれ予め設定した所定のスペクトル振幅を超える大きなものを3倍波スペ
クトル振幅F3、5倍波スペクトル振幅F5とする。
【0104】
奇数高調波検出部53は、基本波検出部52と同様に、図示しない記憶手段に、予め上述の所定の周波数範囲や所定のスペクトル振幅の大きさを記憶しており、これとフーリエ変換結果Mfとを比較するのである。
【0105】
奇数高調波検出部53は、それぞれの奇数次高調波成分のスペクトル振幅を腹部状態データFsとして出力する。
図4(b)に示すように、スペクトル振幅は、3次高調波に基づくものと5次高調波に基づくものとで2データ存在するので、腹部状態データFsは次式のようになる。
【0106】
3次高調波に基づく腹部状態データFs1=F3
5次高調波に基づく腹部状態データFs2=F5
【0107】
なお、図2に記載の腹部状態データFsは、Fs=Fs1+Fs2としてまとめて表現している。
【0108】
なお、奇数高調波には3次高調波、5次高調波、以下(2n−1)次高調波が存在する。本実施形態では、図4に示すように、5次高調波までを抽出する例を示した。もちろん、これに限らず7次、9次と高い次数の高調波を捉えてもよい。その場合の一例の腹部状態データFsは次式のようになる。
【0109】
7次高調波に基づく腹部状態データFs3=F7
9次高調波に基づく腹部状態データFs4=F9
【0110】
奇数高調波は、高次になるにつれスペクトル振幅も低くなるから、各周波数成分からもっとも大きなスペクトル振幅を選定することが難しくなるため、使用する次数を適宜選ぶことが重要である。
【0111】
[呼吸パターン判定部の動作説明:図5]
次に、図2と図5とを用いて胸部状態データKsと腹部状態データFsとで無呼吸を判断する呼吸パターン判定部6の動作を説明する。
【0112】
図5は、被検者10の呼吸動作を、胸腹部の動作を伴う「胸腹部呼吸」と、腹部のみ動作する「腹部呼吸」と、胸部も腹部も動作を伴わない「胸腹部無呼吸」との3つの呼吸パターンに分け、各々の呼吸パターンでの胸部状態データKsであるF1と、腹部状態データFsであるF3、F5の一例を図表にまとめたもので、呼吸パターン判定部6の動作の基本アルゴリズムである。
【0113】
呼吸パターン判定部6は、図示しない記憶手段を備えており、図5に示す3つの呼吸パターンと条件とを記憶している。また後述するスペクトル振幅を取り込む時間や「無呼吸状態a」を判定するための所定の時間t1、「無呼吸状態b」を判定するための所定の時間t2なども記憶している。
【0114】
図5に示す3つの呼吸パターンのうち、「胸腹部呼吸」は、胸腹部が共に動作する正常呼吸のパターンであり、呼吸パターン判定部6は呼吸パターンデータRpとして「正常呼吸」を出力する。
また、「腹部呼吸」は、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の疑いがあるため無呼吸状態と判定し、呼吸パターン判定部6は呼吸パターンデータRpとして「無呼吸a」を出力する。
また、「胸腹部無呼吸」も、中枢性睡眠時無呼吸症候群の疑いがあるため無呼吸状態と
判定し、呼吸パターン判定部6は呼吸パターンデータRpとして「無呼吸b」を出力する。
【0115】
呼吸パターン判定部6の判定の具体的な動作は、次のようなものである。
呼吸パターン判定部6は、胸腹部状態検出手段5から出力される胸部状態データKsである基本波スペクトル振幅F1と、腹部状態データFsである3倍波スペクトル振幅F3及び5倍波スペクトル振幅F5と、計時部9から入力される第3計時信号T3とを用いて、図5に示す図表に従って呼吸パターンを判別する。
【0116】
なお、睡眠時無呼吸の検出の精度を向上させるためには、ある一定時間の胸腹部10aの動きを捉えるほうが好ましい。したがって、まず、第3計時信号T3に含まれる時刻情報から、所定の時間、複数波形分の基本波スペクトル振幅F1、倍波スペクトル振幅F3、5倍波スペクトル振幅F5を、それぞれ取り込む。
次に、それぞれの平均である、平均基本波スペクトル振幅F10、平均3倍波スペクトル振幅F30、平均5倍波スペクトル振幅F50を算出する。
そして、この3つのスペクトル振幅の大小関係を図5に示す図表に従って判定を行うのである。
【0117】
以下は、図5に示す条件に伴う判定のさまを説明するものであるが、あくまでも原理的な説明であるから、平均基本波スペクトル振幅F10、平均3倍波スペクトル振幅F30、平均5倍波スペクトル振幅F50は用いず、基本波スペクトル振幅F1、3倍波スペクトル振幅F3、5倍波スペクトル振幅F5を用いて説明する。
【0118】
例を示すならば、基本波スペクトル振幅F1、3倍波スペクトル振幅F3、5倍波スペクトル振幅F5の大小関係が、次式のようであれば、胸腹部呼吸であって「正常呼吸」と判定する。
【0119】
F1>>F3
及び
F1>>F5
【0120】
基本波スペクトル振幅F1、3倍波スペクトル振幅F3、5倍波スペクトル振幅F5の大小関係が、次式のようであっても、胸腹部呼吸であり「正常呼吸」と判定する。
【0121】
0.3F1>F3>0.1F5
又は
0.3F1>F5>0.1F3
【0122】
基本波スペクトル振幅F1、3倍波スペクトル振幅F3、5倍波スペクトル振幅F5の大小関係が、次式のようであったとき、その状態の継続時間を第3計時信号T3により計測し、所定の時間t1を超えた場合、「無呼吸状態a」と判定する。
【0123】
F1>F3>F5
又は
0.7F1>F3>0.5F1
又は
0.4F1>F5>0.3F3
【0124】
また、基本波スペクトル振幅F1、3倍波スペクトル振幅F3、5倍波スペクトル振幅F5が、次式のように、0に近い小さい値であり、その状態が所定の時間t2を超えた場
合は、「無呼吸状態b」と判定する。
【0125】
F1≒0
及び
F3≒0
及び
F5≒0
【0126】
なお、「無呼吸状態b」は、すでに説明したように中枢性睡眠時無呼吸症候群の疑いがあるため緊急度が高く、「無呼吸状態b」を判定するための所定の時間t2は、「無呼吸状態a」の所定の時間t1より短い。
【0127】
なお、この判定に要する所定の時間t1、t2は、おおよそ前者が15sec、後者が10secである。しかしこれらの時間は、被検者10の生理状況などに応じて変わるものであるから、変更できるようにしておくのが望ましい。
【0128】
さらに、緊急性が比較的低い閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、1回の判定だけでなく、一晩に相当する6から7時間の睡眠で「無呼吸状態b」が20回以上発生した場合に無呼吸症候群と判定するなど、一晩の発生頻度を判定基準としてもよい。
【0129】
なお、上述した不等式における基本波スペクトル振幅F1、3倍波スペクトル振幅F3、5倍波スペクトル振幅F5の0.1や0.3などの係数は、一実施例であって被検者10の生理状況に応じ、適切な値を採用することができることは言うまでもない。
【0130】
すなわち一般的には、次式のように被検者10の固有の生理状態や、健康状態に応じて数値管理を行なう。
【0131】
α×F1>F3>β×F1
又は
α×F1>F5>β×F1
【0132】
つまり、基本波スペクトル振幅F1を基準に、3倍波スペクトル振幅F3及び5倍波スペクトル振幅F5を評価し、αは上限定数、βは下限定数として数値管理を行なうことが可能である。
【0133】
なお、上記アルゴリズムの一般的判別条件を詳述すると以下の様になる。
すなわち、基本波スペクトル振幅F1、3倍波スペクトル振幅F3、5倍波スペクトル振幅F5において、3倍波スペクトル振幅F3,5倍波スペクトル振幅F5に関する上限定数をα3,α5とし、下限定数をβ3,β5と表現するとき、次式のように基本波スペクトル振幅F1を基準に3倍波スペクトル振幅F3と5倍波スペクトル振幅F5の割合を規定する。
【0134】
α3×F1>F3>β3×F1 :式1
及び
α5×F1>F5>β5×F1 :式2
【0135】
まず、胸部及び腹部が同時に動く通常の呼吸は、胸腔に空気が流入するので呼吸波形は正弦波に近くなり、基本波スペクトル振幅F1に対し3倍波スペクトル振幅F3、5倍波スペクトル振幅F5は非常に小さくなる。
【0136】
実際は、ノイズや体動があり3倍波スペクトル振幅F3、5倍波スペクトル振幅F5は完全なゼロにならず、例えばF3、F5に関する上限定数をα3、α5としF3、F5に関する下限定数をβ3、β5と表現すると、例えば、次式のようにすることができる。
【0137】
α3,α5=0.3
β3,β5=0
【0138】
そして、式1及び式2は、次式に示すようにすることができる。
【0139】
0.3×F1>F3>0×F1
0.3×F1>F5>0×F1
【0140】
一方、胸部が止まり腹部のみの呼吸動作では、胸腔に空気が流入せず腹部の筋肉のみ間欠的に動作するので呼吸波形は孤立波に近いものになる。例えば、次式のようにすることができる。
【0141】
α3=0.7、β3=0.5、α5=0.4、β5=0.3
【0142】
そして、式1及び式2は、次式に示すようにすることができる。
【0143】
0.7×F1>F3>0.5×F1
0.4×F1>F5>0.3×F1
【0144】
以上のように、胸部状態データKsである基本波スペクトル振幅F1と、腹部状態データFsである3倍波スペクトル振幅F3及び5倍波スペクトル振幅F5との相対的大小関係から無呼吸状態を判定する。
【0145】
このように、胸腹部状態検出手段5により、被検者10の状態が検出され、呼吸パターン判定部6により、上述のごとく呼吸パターンが判別されるから、閉塞性睡眠時無呼吸症候群か中枢性睡眠時無呼吸症候群かを見分けることができるのである。
【0146】
[安否報知手段の動作説明:図2〜図4]
次に、報知手段7の動作を説明する。
呼吸パターン判定部6から出力された呼吸パターンデータRpは、一旦記憶部71に記憶され、記憶部71から呼吸パターン記憶データSdとして読み出され通報判断部72に出力される。
【0147】
呼吸パターンデータRpと呼吸パターン記憶データSdは共に「正常呼吸」、「無呼吸a」、「無呼吸b」から構成される。
通報判断部72は、呼吸パターン記憶データSdが通報を要するレベルか否か判断する。
【0148】
一例としては、呼吸パターン記憶データSdの内容が、被検者10に異常がないと判定した「正常呼吸」、また無呼吸であっても「無呼吸判定a」であれば、通報を要するレベルではないと判断する。
また、呼吸パターン記憶データSdの内容が、被検者10に緊急度が高い異常があると判定した「無呼吸判定b」であれば、通報指示信号Edを出力する。
【0149】
通報指示信号Edは、通信部73によって外部に無呼吸警報信号Nとして発信される。
通信部73としては、デジタル変調器と一般電話回線に接続する回線制御装置の組合せ
や、アナログもしくはデジタル無線送信機を用いることができる。
【0150】
[外観説明:図7、図8]
次に、図7及び図8を用いて睡眠時無呼吸判定装置1の外観を説明する。
図7は本発明の睡眠時無呼吸判定装置1の主要部分である無呼吸判別手段2の一実施例を示す外観図であり、図8は睡眠時の被検者10に対し使用している状態を示す側面図である。
【0151】
図7に示すように、無呼吸判別手段2はデスクトップ型のフォトフレームに近い外観を有し、前面には表示部74と報音機構741と操作スイッチ742とが設けられている。
【0152】
表示部74は、液晶表示器を用いることができる。すでに説明したように、呼吸パターン判定部6から出力される呼吸パターンデータRpの内容に応じて、無呼吸状態の発生時間や緊急度などを表示することができる。
【0153】
報音機構741は、被検者10の周辺にいる医療関係者や家族などに、無呼吸状態の発生と緊急度などを音声で報知するためのもので、セラミック音響素子やダイナミックスピーカで構成することができる。
無呼吸判別手段2は、緊急時の対応のため外部と通話を行なうこともあるため、報音機構741は、報音のためのセラミック音響素子やダイナミックスピーカとダイナミックマイクロホンとの組合せで構成することができる。
【0154】
操作スイッチ742は、表示部74の表示内容や音響レベルの操作、また報音機構741から報じられる外部からの問い合せに対する返事を行なうものであって、ボタン型のスイッチを用いることができる。
【0155】
図8は睡眠時無呼吸判定装置1の実際の使用状態を示しており、被検者10の頭上方向から足方向を見た側面図である。
図8に示すように、マイクロ波ドップラセンサ3は、センサ支持台20に、被検者10の胸腹部10aにマイクロ波Mが照射する様に固定されている。
なお図8では無呼吸判別手段2は省略されている。
【0156】
図8に示す例は、センサ支持台20は、被検者10の下部又は図示を省略しているが被検者10が用いる敷き布団などの寝具の下部まで延長する様子を示している。このような構成は、被検者10の体重によってセンサ支持台20が固定されるため便利である。
【0157】
もちろんこれは一例である。マイクロ波ドップラセンサ3を支持する構成は、角度や高さ、向きなどを自由に変えられるような、例えば、デスクトップ型のスタンドライトのような形状であってもかまわない。このような構成のときは、無呼吸判別手段2と別体でありケーブルなどで接続するようにしてもかまわない。
【0158】
[第1の実施形態の動作フローの説明:図2、図6]
次に、図2及び図6を用いて、睡眠時無呼吸判定装置1の動作フローを詳述する。
図6は睡眠時無呼吸判定装置1の動作を説明する動作フローである。
【0159】
まず、被検者10が就寝開始時、又は就寝後に、図示しない測定開始ボタン等を用いて睡眠時無呼吸判定装置1を起動させる。
【0160】
被検者からの反射波を取り込む。
すなわち、睡眠中の対象者にマイクロ波を当て、反射されるマイクロ波ドップラシフト
信号Maを検出する。(S1)
【0161】
マイクロ波ドップラシフト信号Maをデジタル信号に変換する。
すなわち、マイクロ波ドップラシフト信号Maの周波数帯域を、信号処理に必要な範囲に制限し、例えば、分解能10bitにてサンプリングレート約10msec毎で、マイクロ波デジタルデータMdに変換する。(S2)
【0162】
FFT処理を行なう。
すなわち、マイクロ波デジタルデータMdを約10sec〜数分間蓄積し、変換に必要なデータを蓄積したのちフーリエ変換を行なう。(S3)
【0163】
基本波検出を行なう。
すなわち、フーリエ変換結果Mfを低い周波数側からスキャンし、予め設定した所定の周波数範囲に入ったものを基本周波数成分fbとし、この中で予め設定した所定のスペクトル振幅を超える大きなスペクトル振幅を基本波スペクトル振幅F1として記憶する。(S4)
【0164】
S5においては、奇数高調波検出を行なう。
すなわち、フーリエ変換結果Mfを低い周波数側からスキャンし、予め設定した所定の周波数範囲に入ったものを基本周波数成分fbとし、この中で予め設定した所定のスペクトル振幅を超える大きなものを基本波スペクトル振幅F1´として記憶する。この基本波スペクトル振幅F1´を基本にして3倍及び5倍の周波数位置のスペクトルをサーチして、3倍波スペクトル振幅F3及び3倍波スペクトル振幅F5としてそれぞれ記憶する。(S5)
【0165】
S6においては、胸腹部状態に応じて呼吸パターン判定を行なう。
すなわち、胸部の動きの状態と腹部の動きの状態に応じて3種の呼吸パターンの何れかであるかを決定する。(S6)
【0166】
S7においては、睡眠時無呼吸か否かを判定する。
すなわち、3種の呼吸パターンのうちの何れの呼吸パターンであるかを決定する。もし無呼吸状態が発生したら開始時間と終了時間を表示器に表示する。(S7)
【0167】
S8においては、睡眠時無呼吸の緊急度を判定する。
すなわち、4種の無呼吸状態呼吸のうちの緊急度が高い「無呼吸b」状態か、また過去の呼吸パターン記憶データSdの内容を参照して、緊急度を判断する。(S8)
【0168】
S9においては、睡眠時無呼吸警報を外部に発信する。
すなわち、S8にて緊急度が高いと判定された場合は報知音や電話無線機器などを通じて内外部に警報を発する。(S9)
【0169】
以上のステップによって、単に上半身全体の微動を検出するのみでは睡眠時無呼吸状態を正確に検出することが困難であった従来方式の欠点が克服される。
【実施例2】
【0170】
[睡眠時無呼吸判定装置の構成説明:図12]
次に、図12を用いて、睡眠時無呼吸判定装置の第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態である睡眠時無呼吸判定装置100は、胸腹部状態検出手段5に睡眠時無呼吸判定装置1の機能が正常であることを監視する異常測定検出部50を加え、睡眠時無呼吸判定動作をより信頼性の高いものにしたものである。
【0171】
図12は、睡眠時無呼吸判定装置100の構成の一部を示す機能ブロック図であり、第1の実施形態と異なる要素である胸腹部状態検出手段5aおよび呼吸パターン判定部6及び報知手段7のみが表現されている。
【0172】
胸腹部状態検出手段5aの異常測定検出部50は、フーリエ変換結果Mfを入力して、フーリエ変換結果Mfが0であれば、マイクロ波ドップラセンサ3又は信号処理手段4又はFFT部51に異常があることを知らせる機能異常信号E0を出力し、報知手段7の通信部73に入力する。
【0173】
報知手段7の通信部73は、異常測定検出部50が出力する機能異常信号E0を入力すると装置動作異常信号Nmを出力し、睡眠時無呼吸判定装置100の機器としての異常を外部に発信する。
同時に、表示部74は “装置の動作に異常があります”などの、機器の異常を知らせるメッセージや警告音声を発生し、被検者10の周囲にいる家族や医療関係者に睡眠時無呼吸判定装置100の異常を知らせる。
第2の実施形態の他の要素は第1の実施形態と同じなので、重複する説明は省略する。
【0174】
[第2の実施形態の効果説明]
睡眠時無呼吸判定装置の最も重要な点は、呼吸を監視する機能が正確であることと、測定した情報を外部に発信する機能である。つまり、正確に測定しその情報を報知するということである。異常測定検出部50により睡眠時無呼吸判定装置100の機能を監視すれば睡眠時無呼吸判定装置の信頼性がより高まるといえる。
【0175】
以上説明した実施形態は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を満たすものであれば任意に変更することができることはいうまでもない。
【0176】
例えば、基本波検出部52及び奇数高調波検出部53は、第1の実施形態では、それぞれがどのようにして基本波スペクトル振幅F1や3倍波スペクトル振幅F3、5倍波スペクトル振幅F5を見つけるかを説明した。その説明にあっては、理解しやすいように、基本波検出部52には正常な呼吸に伴う波形が入力する例を、奇数高調波検出部53には無呼吸に伴う波形が入力する例を、それぞれ説明した。もちろん、それぞれの検出部には同じフーリエ変換結果Mfが入力しているから、1つの検出部として構成し、基本波スペクトル振幅F1、3倍波スペクトル振幅F3、5倍波スペクトル振幅F5を見つけるようにしてもよい。
【0177】
また、基本波検出部52及び奇数高調波検出部53は、フーリエ変換結果Mfを入力し、各周波数成分のうちもっともスペクトル振幅の大きなものを基本波スペクトル振幅F1や3倍波スペクトル振幅F3、5倍波スペクトル振幅F5とする例を説明したが、もちろんこれは一例である。
例えば、予め所定のスペクトル振幅の情報を複数用意しておき、もっともスペクトル振幅の大きなものと次にスペクトル振幅の大きなものとの2つから基本波スペクトル振幅F1、3倍波スペクトル振幅F3、5倍波スペクトル振幅F5を選出してもかまわない。
【産業上の利用可能性】
【0178】
本発明の睡眠時無呼吸判定装置は、装置として大掛かりにならずに精度の高い睡眠時無呼吸判定が可能となるから、家庭内での睡眠時無呼吸症候群の発見装置として好適である。もちろん、呼吸動作状態の良否は循環器機能の良否に密接に関係するため、呼吸循環生理学における基礎、臨床研究用にも用いることができる。
【符号の説明】
【0179】
1,100 睡眠時無呼吸判定装置
2 無呼吸判別手段
3 マイクロ波ドップラセンサ
31 マイクロ波発信器
32 マイクロ波受信器
33 マイクロ波復調器
4 信号処理手段
41 帯域制限部
42 AD変換部
5 胸腹部状態検出手段
50 異常測定検出部
51 FFT部
52 基本波検出部
53 奇数高調波検出部
6 呼吸パターン判定部
7 報知手段
71 記憶部
72 通報判断部
73 通信部
74 表示部
741 報音機構
742 操作スイッチ
8 機能監視手段
9 計時部
10 被検者
10a 胸腹部
20 センサ支持台
M マイクロ波
Ma マイクロ波ドップラシフト信号
Ms マイクロ波帯域制限信号
Md マイクロ波デジタルデータ
Mf フーリエ変換結果
F1 基本波スペクトル振幅
F3 3倍波スペクトル振幅
F5 5倍波スペクトル振幅
fb 基本波周波数成分
Ks 胸部状態データ
Fs 腹部状態データ
As 呼吸パターンデータ
Ts 胸腹部状態データ
Sd 呼吸パターン記憶データ
E0 機能異常信号E0
Ed 通報指示信号
T1 第1計時信号
T2 第2計時信号
T3 第3計時信号
N 無呼吸警報信号
Nm 装置動作異常信号
α 上限定数
β 下限周波数
Eme マイクロ波電気信号
Emr 受信マイクロ波電気信号


【特許請求の範囲】
【請求項1】
睡眠中の被検者の胸部及び腹部にマイクロ波を照射し前記被検者から反射される反射波に基づき前記被検者の睡眠中の無呼吸状態を判定する睡眠時無呼吸判定装置において、
前記反射波から得られるマイクロ波ドップラシフト信号をフーリエ変換し、基本波と奇数高調波との周波数成分を比較し、その比較結果に基づいて前記被検者の正常呼吸状態と呼吸異常状態とを判別し、前記被検者の無呼吸状態を判定する無呼吸判別手段を備えることを特徴とする睡眠時無呼吸判定装置。
【請求項2】
前記無呼吸判別手段は、呼吸異常状態の積算時間が所定時間を越えることで前記被検者の無呼吸状態を判定することを特徴とする請求項1に記載の睡眠時無呼吸判定装置。
【請求項3】
前記マイクロ波を照射するマイクロ波発信器と、前記反射波Mを受信するマイクロ波受信器と、前記反射波Mからマイクロ波ドップラシフト信号Maを出力するマイクロ波復調器と、を備えるマイクロ波ドップラセンサを備え、
前記無呼吸判別手段は、
前記マイクロ波ドップラシフト信号Maを入力してマイクロ波デジタルデータMdを出力する信号処理手段と、
前記マイクロ波デジタルデータMdを入力してフーリエ変換を行い、そのフーリエ変換結果Mfに含まれる基本波と奇数高調波とから、前記被検者の胸部状態データKsと腹部状態データFsとを含む胸腹部状態データTsを出力する胸腹部状態検出手段と、
前記胸腹部状態データTsを入力して前記被検者の呼吸パターンデータRpを出力する呼吸パターン判定部と、
前記呼吸パターンデータRpを入力して無呼吸警報信号Nを出力する報知手段と、
を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の睡眠時無呼吸判定装置。
【請求項4】
前記胸腹部状態検出手段は、
前記マイクロ波デジタルデータMdを入力してフーリエ変換し、前記フーリエ変換結果Mfを出力するFFT部と、
前記フーリエ変換結果Mfを入力し、低い周波数側から順次周波数成分を調べることで基本波を検出し、該基本波のスペクトル振幅を算出して前記被検者の胸部状態データKsとして出力する基本波検出手段と、
前記フーリエ変換結果Mfを入力し、前記基本波のスペクトル振幅の奇数倍周波数から奇数高調波を検出し、該奇数高調波のスペクトル振幅を算出して前記被検者の腹部状態データFsとして出力する奇数高調波検出手段と、
を備えることを特徴とする請求項3に記載の睡眠時無呼吸判定装置。
【請求項5】
前記胸腹部状態検出手段は、
前記フーリエ変換結果Mfを入力し、スペクトル振幅が所定の振幅値よりも低いときに異常測定データE0を出力する異常測定検出部を備え、前記胸部状態データKsと前記腹部状態データFsと前記異常測定データE0とを含む前記胸腹部状態データTsを出力することを特徴とする請求項4に記載の睡眠時無呼吸判定装置。
【請求項6】
前記呼吸パターン判定部は、
胸部状態データKsと腹部状態データFsとを比較し、前記被検者の胸部と腹部とが同時に動いている状態である前記正常呼吸状態と、胸部のみ止まり腹部が動作する状態である呼吸異常状態とを判別し、前記呼吸異常状態の時間を積算する積算時間により、前記被検者の無呼吸状態を判定することを特徴とする請求項3又は4に記載の睡眠時無呼吸判定装置。
【請求項7】
前記報知手段は、
前記呼吸パターンデータRpを記憶するとともに呼吸パターン記憶データSdとして出力する記憶部と、
前記呼吸パターン記憶データSdを入力として通報指示信号Edを出力する通報判断部と、
前記通報指示信号Edを入力として前記無呼吸警報信号Nを出力する通信部と、
前記呼吸パターンデータRpを表示する表示部と、
を備えることを特徴とする請求項3に記載の睡眠時無呼吸判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−170528(P2012−170528A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33079(P2011−33079)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【出願人】(507351883)シチズン・システムズ株式会社 (82)
【Fターム(参考)】