説明

睡眠時無呼吸症防止用枕

【課題】イビキや無呼吸を防ぐ目的から、枕の形状を工夫して睡眠時の仰臥位を防止する考案はいくつもあるが、就寝時の仰臥位を一時的に防ぐにとどまっている。本発明は、睡眠時間を通じて仰臥位を防ぎ、睡眠時無呼吸症を防止する枕を提供する。
【解決手段】寝具の横幅ほどの幅の長い硬質の枕の中央部に、就寝者の天地方向一杯に幅の狭い凸部を設け、凸部の基部から左右に半ばまで下り傾斜部を設け、その外側に平坦部を設けた睡眠時無呼吸症防止用枕。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、睡眠時の仰臥位を自然に何度でも横臥位に誘導する形状を有する睡眠時無呼吸症を防止する枕に関するものである。
【背景技術】
【0002】
イビキや無呼吸を防ぐ目的から、枕の形状を工夫して睡眠時の仰臥位を防止する考案はいくつもあり、特許や実用新案の登録がなされているものも以下の通り多く見受けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許公開2006−231008号公報(図3)
【特許文献2】特許公開2000−23813号公報(図1)
【特許文献3】実用新案公開平6−33574号公報(図2)
【特許文献4】登録実用新案第3162500号公報(図2)
【特許文献5】登録実用新案第3152599号公報(図1)
【特許文献6】登録実用新案第3009844号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
(イ)仰臥位の睡眠がもたらす問題は、過去には主にイビキの騒音の問題ととらえられており、この観点からの考案も多かった。しかし、仰臥位がもたらす軟口蓋と舌根による上下からの気道の圧迫、閉塞は、今日ではより深刻な睡眠時無呼吸症候群の原因ととらえられている。
「厚生労働省メタボリック症候群が気になる方のための健康情報サイト」はこれについて、「高血圧が引き起されたり、動脈硬化が進行して心筋梗塞や脳梗塞を起こしやすくなったり、糖尿病が悪化したりと、生活習慣病が引き起こされます。このため、中等症以上の睡眠時無呼吸症候群を放置すると10年後には3〜4割の方が死亡してしまう」と警告している。
(ロ)しかしながら、これまで睡眠時無呼吸症を防止する枕はなかった。特許文献1)では、枕に内蔵する電動ローラーを一定時間ごとに左右に移動させることで、頭部を横向きにするとしているが、これでは頭部をいたずらに刺激するばかりで必ずしも横向きにはならない。特許文献2)では、中央部の凸部の両側に凹部が形成されていることから、むしろこの位置に頭部を捕え仰向けに誘導することで逆効果となる。特許文献3)一度だけ、仰向けから横向きに誘導するが、その後、繰り返される寝返りに対応していない。特許文献4)は単に中央部に凸部を設けるだけでは、図のように頭部は回転せず、凸部を外れて仰向けになるだけである。特許文献5)も特許文献4)と同様だが、横向き時に顎が落ちて気道を圧迫することはないので、長手方向の凸部は無意味である。特許文献6)は凹部に頭を捕えて寝返りを抑制するが、凹部で仰向けとなることを抑止できない。
(ハ)発明者自身の永年の工夫と経験では、就寝時の頭部の向きの変化や体幹の移動は、若干の左右への水平移動のほかは、頸椎や背骨を軸とする回転により生じるものである。このため、枕中央への凸部の設置だけでは、左右に外れた頭部がそこで仰向けとなるのを防げない。これまで無意識の睡眠時に、頭部を繰り返し横向きに回転させることが不可能であった。
(ニ)このため、睡眠時無呼吸症の対策には、肥満の解消のほかに軟口蓋の切除手術や就寝時のマウスピースの装着など、患者に大きな負担を強いるものであった。
(ホ)本発明は以上の問題点を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
寝具の横幅ほどの幅の長い硬質の枕の中央部に、就寝者の天地方向一杯に幅の狭い凸部を設け、凸部の基部から左右に半ばまで下り傾斜部を設け、その外側に平坦部を設けた睡眠時無呼吸症防止用枕。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、安眠を妨げることなく、睡眠時間を通じて何度でも仰臥位を横臥位へと誘導することができる。これにより、仰臥位が引き起こすイビキや睡眠時無呼吸症を防止することができる。睡眠時無呼吸症は、高血圧や心臓疾患など多くの成人病の原因であり、本発明は睡眠時無呼吸症のもたらす、これら深刻な健康被害を予防することができる。
【発明の効果】
【0007】
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の斜視図
【図2】本発明使用時の頭部の移動と気道の開閉を示す状態図
【符号の説明】
【0009】
1 凸部、2 傾斜部、3 平面部、4 頭頂部、5 気道、6 軟口蓋、7 舌根
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明の実施の形態を説明する。
(イ) 寝具の横幅ほどの幅の長い硬質の枕の中央部に、就寝者の天地方向一杯に幅の狭い凸部(1)を設ける。凸部(1)の幅は、仰臥位での就寝を可能にするものの、睡眠時の脱力で頭部が容易に左右に外れる程度である。
(ロ) 凸部(1)の基部から左右に半ばまで下り傾斜部(2)を設ける。傾斜角度は凸部(1)を外れた頭部を仰臥位で安定させず、徐々に平坦部(3)に向け回転させる程度の緩い角度とし、安眠を妨げたり、凸部(1)方向への寝返りを妨げない程度である。
(ハ) その外側に平坦部(3)を設ける。平坦部(3)の幅は横臥時の頭側部が安定し、横臥位での睡眠に適した幅とする。
本発明は以上のような構造である。
(ニ) 本発明を使用するときは、使用者は図2のAのように仰臥位で凸部に頭をおいて就寝する。これは無呼吸患者の習慣である仰臥位をとることで睡眠に入りやすくするためである。この状態では気道はaのように、舌恨の落ち込みと軟口蓋の下降により、閉鎖されやすい状態となっている。
(ホ) やがて、睡眠時の脱力により頭部は幅の狭い凸部(1)から左右いずれかの傾斜部(2)に外れBまたはB´の状態となる。この状態では、舌恨の落ち込みが緩和され、体幹を仰臥したまま残して首をひねる形となることから、軟口蓋がやや引き上げられる。このように頭部がわずか10度ほど左右に振れるだけで気道の閉塞は解消する。この状態では、傾斜が重力により頭部を徐々に下方へ回転させようとする働きをする。
(ヘ) この働きにより、やがてCまたはC´のように顔が真横を向いた状態で平坦部に至る。この平坦部で回転は止まり、頭部は安定する。さらに、この頭部の安定に、やがて体幹も追随して安定した横臥位の睡眠となる。この状態では、気道はcまたはc´のように十分解放されている。
(ト) 図2の示す流れのように、睡眠時間を通じて繰り返される寝返りや、習慣として無意識に取る仰臥位に対しても、必ずこの動きが繰り返されて仰臥位を許さず、姿勢は安定した横臥位に帰着する。このため就寝時から起床時まで、継続して仰臥位を防止し、無呼吸を防ぐことができる。
(チ) 加えて、使い続けることで安定した横臥位での良質な睡眠が習慣となる。このため、旅行先など本発明のない状況においても横臥位の姿勢での睡眠により睡眠時の無呼吸を予防することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
寝具の横幅ほどの幅の長い硬質の枕の中央部に、就寝者の天地方向一杯に幅の狭い凸部を設け、凸部の基部から左右に半ばまで下り傾斜部を設け、その外側に平坦部を設けた睡眠時無呼吸症防止用枕。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−249997(P2012−249997A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134585(P2011−134585)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(511060881)
【Fターム(参考)】