説明

石抜装置のゲート部構造

【課題】構成の簡易化による製造コストの低減のみならず、信頼性およびメンテナンス性の向上により、穀粒選別部の振動および風選塵埃による過酷な条件下において無人自動システムのコンポーネントとしての適合性を確保することができる石抜装置のゲート部構造を提供することにある。
【解決手段】石抜装置のゲート部構造は、石抜ゲート12gと、回収ゲート14gとから構成され、上記石抜シャッター板12sは、石抜ゲート12gを開閉する第1と第2の動作位置A,Bについてスライド動作可能に支持するとともに、これら第1と第2の動作位置A,Bの他に第3の動作位置Cまで延長してスライド動作可能に支持し、この第3の動作位置Cは、石抜ゲート12gを閉じたまま上記回収ゲート14gを開くように回収シャッター板14sに作用する位置に設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精米前処理用の石抜装置において選別穀粒から分離された石等の異物および回収するべき残米を排出するゲート部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
石抜装置の穀粒選別部は、特許文献1に示すように、振動選別用の傾斜多孔板と、この傾斜多孔板を加振しつつその下方から送風する加振風洞等から構成され、傾斜多孔板が風洞から送風を受けつつ加振されて比重差で異物を振動移送することにより傾斜上部の石抜ゲートから分離異物を排出し、また、傾斜多孔板の側部に形成した残米回収通路と連通する回収ゲートを開けることにより傾斜多孔板上の残米を回収することができる。
【0003】
これら石抜ゲートおよび回収ゲートは、それぞれを開閉する石抜シャッター板、回収シャッター板および個別のアクチュエータを備え、穀粒選別部として風洞部から分離可能に構成することにより、メンテナンスの際は、可動構成の風洞部を残したまま石抜装置本体から取外すことにより、穀粒選別部から受けた風選塵埃等が付着したゲート部のシャッター板やアクチュエータを清掃することができる。
【特許文献1】特開平10−146567号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記ゲート部は、限られた狭い範囲内に2つのシャッター板とそれぞれの駆動部とを備えて近接して構成されていることから、その複雑性故に製造コストの面で大きな負担を要するのみならず、振動環境下で受ける風選塵埃の清掃のための頻繁なメンテナンスの都度、煩雑な操作を要し、無人自動精米システムのコンポーネントとして運用上のネックとなっていた。
【0005】
本発明の目的は、簡易な構成によって製造コストの低減のみならず、信頼性およびメンテナンス性の向上により、穀粒選別部の振動および風選塵埃による過酷な条件下において無人自動システムのコンポーネントとしての適合性を確保することができる石抜装置のゲート部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、穀粒選別部から受けた異物を開閉可能な石抜シャッター板により案内制御する石抜ゲートと、同穀粒選別部から受けた回収穀粒を開閉可能な回収シャッター板により案内制御する回収ゲートとからなる石抜装置のゲート部構造において、上記石抜シャッター板は、石抜ゲートを開閉する第1と第2の動作位置についてスライド動作可能に支持するとともに、これら第1と第2の動作位置の他に第3の動作位置まで延長してスライド動作可能に支持し、この第3の動作位置は、石抜ゲートを閉じたまま上記回収ゲートを開くように回収シャッター板に作用する位置に設けたことを特徴とする。
【0007】
石抜シャッター板のスライド動作により、第1の位置で石抜ゲートが開放され、第2の位置で閉鎖され、第3の位置で回収シャッター板に作用して回収ゲートが開放される。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1の構成において、前記石抜シャッター板は、そのスライド動作方向を機体横断方向に形成し、前記回収シャッター板は、石抜シャッター板のスライド動作を受けて側方展開可能に軸支したことを特徴とする。上記石抜ゲートと回収ゲートは、機体横断方向のスライド動作に基づいて開閉される。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の石抜装置のゲート部構造は、石抜シャッター板のスライド動作により、第1の位置で石抜ゲートが開放され、第2の位置で閉鎖され、第3の位置で回収シャッター板に作用して回収ゲートが開放されることから、石抜シャッター板の3位置スライド動作によって2つのゲートの開閉動作が可能となるので、石抜装置のゲート部構造は、単一のスライド駆動部によって簡易に構成することができるので、製造コストの低減のみならず、信頼性およびメンテナンス性の向上により、穀粒選別部の振動および風選塵埃による過酷な条件下において無人自動システムのコンポーネントとしての適合性を確保することができる。
【0010】
請求項2の石抜装置の穀粒選別部は、請求項1の効果に加え、上記石抜シャッター板を機体の横断方向にスライド動作させることにより、回収シャッター板がその側方に展開されて回収ゲートが開閉されることから、穀粒選別部の長手方向寸法の増加を要することなく、コンパクトな構成によって回収シャッター板の開閉動作を含む所要のスライドストロークを確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
上記技術思想に基づいて具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ説明する。
図1は、石抜機の内部透視側面図(a)、および、その正面図(b)である。
石抜機1は、機体上部で穀粒を受ける投入ホッパ2と、穀粒中の異物を選別する穀粒選別部3と、その駆動系4とから構成される。
【0012】
穀粒選別部3は、投入ホッパ2の下端位置に傾斜姿勢で臨む傾斜多孔板5を取付けた風洞6と、この風洞6に送風する回転羽根7等から構成され、傾斜多孔板5の傾斜上端から穀粒混入異物を排出する石抜シュート8を機体後部に備え、また、傾斜多孔板5から残留穀粒を回収する回収シュート9による残米回収通路を傾斜多孔板5の側方に備え、この残米回収通路9とともに傾斜多孔板5の出口を機体正面に開口する。
【0013】
(風洞)
風洞6について詳細に説明すると、図2の平面図(a)およびその側面図(b)に示すように、左右の案内側壁11,11を送風口部6aまで延ばし、その左右の案内側壁11,11の全幅Wに及んで傾斜多孔板5を取付け、傾斜上部に石抜ゲート12g等を形成したゲートフレーム12を設ける。
【0014】
傾斜多孔板5は、回転羽根7による選別風を受ける多孔板であり、風洞6の振動を受けて石等の異物を傾斜上方に送るための凹凸を備え、傾斜上端が石抜ゲート12gに向かって狭まる選別通路を形成する。また、左右の案内側壁11,11の内面にそれぞれガイドレール13と押さえレール13aによって上下方向動作を規制するスライドガイドを設けることにより、傾斜多孔板5を傾斜面の長手方向にスライド動作可能に支持する。
【0015】
風洞6の左右の案内側壁11,11の一方(図例は右)の外側部には、残米回収通路としての回収シュート9を配置し、この回収シュート9は、傾斜多孔板5の傾斜上端の側部に形成した回収ゲート14gから排出に適する勾配に形成し、かつ、排出端の滞留の影響を受けることなく排出速度を確保するための段差部9a、9bを中間位置に形成する。
【0016】
傾斜多孔板5は、図3の拡大平面図(a)およびその側面図(b)に示すように、両側部に左右のサイドプレート21,22を起立し、傾斜上部側(図の右手)でそれぞれと接続して石抜ゲート12gに向かって狭まる左右のトッププレート21a、22aを起設し、これらトッププレート21a、22aには、傾斜上端のゲートフレーム12から突設したピン15,16と嵌合する位置決め孔21h、22hを穿設する。また、傾斜多孔板5の下端部にはワンタッチ操作で案内側壁11に固定するためのバックル型固定具23,23を設ける。
【0017】
傾斜多孔板5の装着方法は、選別穀粒排出開口の要部正面図を図4に示すように、風洞6の左右(図例は向かって左側)の案内側壁11に設けたガイドレール13、13aによって傾斜多孔板5のサイドプレート21を上下に規制してスライド支持し、バックル型固定具23によって開口端部を風洞6の案内側壁11に位置決め固定する。
【0018】
(ゲート部)
ゲート部のゲートフレーム12には、その要部拡大平面図を図5に示すように、傾斜多孔板5の傾斜上端に石抜ゲート12gを開口してスライド動作によって開閉可能に石抜シャッター板12sを備えるとともに、傾斜多孔板5と回収シュート9との間を仕切る案内側壁11には回収ゲート14gを開口して開閉可能に回収シャッター板14sを備える。また、石抜シャッター板12sの下方には、両シャッター板12s、14sを開閉駆動するシャッター駆動部31を設ける。
【0019】
石抜シャッター板12sは、機体の横断方向にスライド動作可能に支持するとともに、そのスライド駆動のための長穴状の係合部12rを形成してシャッター駆動部31と係合連結する。石抜シャッター板12sのスライド動作範囲は、石抜ゲート12gを開閉する第1と第2の位置A、Bを含み、そのスライド動作において石抜ゲート12gから外れた部位に回収シャッター板14sと干渉可能な作用部12aを形成するとともに、この作用部12aが回収シャッター板14sに作用して回収ゲート14gを開放する第3の位置Cまでスライド可能なスライドレバーとして構成する。
【0020】
回収ゲート14gの要部拡大平面図および同側面図を図6(a)(b)に、また、図6(b)におけるF矢視拡大図を図7にそれぞれ示すように、回収シャッター板14sは、その上端をヒンジ14h、14hで側転可能に回収シュート9内に支持するとともに石抜シャッター板12sと干渉しうる範囲に配置する。回収シャッター板14sには、アーム部14aをL字状に屈曲形成してこのアーム部14aと回収シュート9の天板9tとの間にガイド付きスプリングによる付勢機構14p、14pを介設することにより回収ゲート14gを弾性閉鎖する。
【0021】
(シャッター駆動部)
シャッター駆動部31は、その構成展開図を図8に示すように、ギヤドモータ32によって低速回動可能に支持された回動アーム33に偏心ピン34を起設し、また、回動アーム33の角度位置選択用の3箇の位置センサー35,36,37を所定形状のセンサー取付フレーム38によって取付ける。上記偏心ピン34は、石抜シャッター板12sをスライド駆動するべく、その係合部12rに係合する。
【0022】
回動アーム33はその両端をセンサー作用部33a、33bとしてその検出が可能なリミットスイッチ等による3箇の位置センサー35,36,37を180度の回動範囲内の3箇所に配置する。これら3箇の位置センサー35,36,37のそれぞれの位置は、偏心ピン34と係合する石抜シャッター板12sの前記スライド動作位置A〜Cと対応する回動位置に合わせて配置する。
【0023】
この場合において、石抜ゲート12gを閉鎖する第2の位置Bと対応するセンサー36は、図8におけるS1−S2−S3線断面図を図9に示すように、石抜ゲート12gを開放する第1の位置Aおよび回収シャッター板14sを開放する第3の位置Cの中間部で確実に位置検出するために、プランジャースイッチにより構成する。また、第3の位置Cと対応するセンサー37は、第2の位置Bと近接していることから回動アーム33の他端33b側で検出可能に180度の角度差で配置する。
【0024】
上記両ゲート12g、14gについてのシャッター板による開閉動作は、その動作対応図表を図10に示すように、3箇の位置センサー35,36,37の検出信号と対応してギヤドモータ32によって回動アーム33を位置決めし、このシャッター駆動部31の回動制御に応じて、第1の位置Aで石抜ゲート12gが開放され、第2の位置Bで石抜ゲート12gが閉鎖され、第3の位置Cで回収ゲート14gが開放される。
【0025】
上記構成のゲート部は以下の効果を奏する。
石抜シャッター板12sのスライド範囲に第3の動作位置Cを設け、この第3の動作位置Cで石抜シャッター板12sが回収シャッター板14sに作用することによって石抜ゲート12gを閉じたまま回収ゲート14gを開くように構成したことにより、石抜シャッター板12sの3位置A〜C間のスライド動作によって2つのゲートの開閉動作が可能となることから、そのための駆動手段を単一のシャッター駆動部31によって簡易に構成することができる。したがって、製造コストの低減のみならず、信頼性およびメンテナンス性の向上により、穀粒選別部の振動および風選塵埃による過酷な条件下において無人自動システムのコンポーネントとしての適合性を確保することができる。
【0026】
また、前記石抜シャッター板12sは、そのスライド動作方向を機体の横断方向に形成し、前記回収シャッター板14sは、石抜シャッター板12sのスライド動作を受けて側方展開可能に軸支したことから、機体横断方向の石抜シャッター板12sのスライド動作により回収シャッター板14sがその側方に展開されて回収ゲート14gが開閉制御される。したがって、穀粒選別部の長手方向寸法の増加を要することなく、コンパクトな構成によって回収シャッター板14sの開閉動作を含む所要のスライドストロークを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】石抜機の内部透視側面図(a)、および、その正面図(b)である。
【図2】風洞の平面図(a)およびその側面図(b)である。
【図3】傾斜多孔板の拡大平面図(a)およびその側面図(b)である。
【図4】選別穀粒排出開口の要部正面図である。
【図5】ゲートユニットの要部拡大平面図である。
【図6】回収ゲート部の要部拡大平面図(a)および同側面図(b)である。
【図7】図6(b)におけるF矢視拡大図である。
【図8】シャッター駆動部の構成展開図である。
【図9】図8におけるS1−S2−S3線断面図である。
【図10】ゲートユニットの3位置動作の対応図表である。
【符号の説明】
【0028】
1 石抜機
3 穀粒選別部
5 傾斜多孔板
6 風洞
8 石抜シュート
9 回収シュート(残米回収通路)
12 ゲートフレーム
12a 作用部
12g 石抜ゲート
12r 係合部
12s 石抜シャッター板(スライドレバー)
14g 回収ゲート
14h ヒンジ
14s 回収シャッター板
31 シャッター駆動部
33 回動アーム
33a、33b センサー作用部
34 偏心ピン
35、36、37 位置センサー
A 石抜ゲート開放位置
B 石抜ゲート閉鎖位置
C 回収ゲート開放位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀粒選別部(5)から受けた異物を開閉可能な石抜シャッター板(12s)により案内制御する石抜ゲート(12g)と、同穀粒選別部(5)から受けた回収穀粒を開閉可能な回収シャッター板(14s)により案内制御する回収ゲート(14g)とからなる石抜装置のゲート部構造において、
上記石抜シャッター板(12s)は、石抜ゲート(12g)を開閉する第1と第2の動作位置(A,B)についてスライド動作可能に支持するとともに、これら第1と第2の動作位置(A,B)の他に第3の動作位置(C)まで延長してスライド動作可能に支持し、この第3の動作位置(C)は、石抜ゲート(12g)を閉じたまま上記回収ゲート(14g)を開くように回収シャッター板(14s)に作用する位置に設けたことを特徴とする石抜装置のゲート部構造。
【請求項2】
前記石抜シャッター板(12s)は、そのスライド動作方向を機体横断方向に形成し、前記回収シャッター板(14s)は、石抜シャッター板(12s)のスライド動作を受けて側方展開可能に軸支したことを特徴とする請求項1記載の石抜装置のゲート部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−279397(P2008−279397A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−127519(P2007−127519)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【出願人】(000113919)マルマス機械株式会社 (10)
【Fターム(参考)】