石油タンク用泡消火設備
【課題】地中に埋設された覆土式石油タンクの火災を適切に消火することができる、石油タンク用泡消火設備を提供する。
【解決手段】本発明の石油タンク用泡消火設備は、オリフィス35及び吸気口36を有し、外部から供給される消火剤水溶液に空気を混合して消火用泡とする発泡器31と、該発泡器31から吐出される消火用泡の勢いによって破損される遮蔽部材38を有し、該遮蔽部材38の破損よって該発泡器31と連通状態となる泡チャンバー32と、該泡チャンバー32から吐出される消火用泡を前記石油タンク1上端から内壁に沿って流下するように案内するデフレクタ33とを備えている。消火剤水溶液はオリフィス35に対して水平方向から導入されるようになっている。
【解決手段】本発明の石油タンク用泡消火設備は、オリフィス35及び吸気口36を有し、外部から供給される消火剤水溶液に空気を混合して消火用泡とする発泡器31と、該発泡器31から吐出される消火用泡の勢いによって破損される遮蔽部材38を有し、該遮蔽部材38の破損よって該発泡器31と連通状態となる泡チャンバー32と、該泡チャンバー32から吐出される消火用泡を前記石油タンク1上端から内壁に沿って流下するように案内するデフレクタ33とを備えている。消火剤水溶液はオリフィス35に対して水平方向から導入されるようになっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は地中に埋設される覆土式石油タンク用の泡消火設備に関する。
【背景技術】
【0002】
屋外タンク貯蔵所などの石油タンクは地上に立設されるものが多く、そのような石油タンク用の泡消火設備として、図7に示すように、石油タンク100の上端周縁に発泡器101、泡チャンバー102及びデフレクタ103を取付けた消火設備が知られている(例えば特許文献1)。この消火設備では、発泡器101で生成した消火用泡が泡チャンバー102から吐出され、デフレクタ103によって石油タンク100の上端から内壁に沿って流下するように案内される。そして、貯留されている石油の表面に消火用泡が展開され、タンク内の火災の消火が行なわれる。
【0003】
しかし、一部の石油タンクは、図8に示すように、地中に石油タンク104の全部を完全に埋設したり、図9に示すように、石油タンク105の一部を埋設し、地上に突出する部分に盛り土106を施したりする覆土式石油タンクとして施工される場合がある。このような覆土式石油タンクでは、従来の地上に立設された石油タンクにおいて用いられているような消火設備では、発泡器、泡チャンバー及びデフレクタをタンク壁に取り付けるためのスペースが無いため、取付けることができない。
【0004】
このような場合、図10に示すように、覆土式石油タンク105の外周に沿ってトンネル106等を施工し、泡消火剤水溶液を輸送する配管110を下方に下げてから再び立ち上げ、従来と同様の発泡器107、泡チャンバー108及びデフレクタ109を取り付けることも考えられる。しかしながら、万一、覆土式石油タンク105が爆発を起こした場合、図11に示すように、屋根及び盛り土が崩落してデフレクタ109が破損したり、トンネル106に充満した煙が発泡器107の図示しない空気取り入れ口から入り込んで消火液が適正に発泡しなかったりして、消火設備が本来の消火性能を発揮できないおそれがある。
【0005】
【特許文献1】実開昭60−081897号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、地中に埋設された覆土式石油タンクの火災を適切に消火することができる、石油タンク用泡消火設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の石油タンク用泡消火設備は、地中に埋設される覆土式石油タンクの上端から消火用泡を放出するための石油タンク用泡消火設備であって、
オリフィス及び吸気口を有し、外部から供給される泡消火剤水溶液に空気を混合して消火用泡とする発泡器と、該発泡器から吐出される消火用泡の勢いによって破損される遮蔽部材を有し、該遮蔽部材の破損よって該発泡器と連通状態となる泡チャンバーと、該泡チャンバーから吐出される消火用泡を前記石油タンク上端から内壁に沿って流下するように案内するデフレクタとを備え、
該泡消火剤水溶液は地面に対して水平方向から該オリフィスに噴出されることを特徴とする。
【0008】
本発明の石油タンク用泡消火設備は、地中に埋設される覆土式石油タンクに用いられる消火設備である。ここで覆土式石油タンクとは、地下に完全に埋設された石油タンクのみならず、地下に石油タンクの下部が埋設され、地上に突出する部分に覆土がされた石油タンクも含まれる。
【0009】
本発明の石油タンク用泡消火設備では、外部から発泡器に泡消火剤水溶液が供給されてオリフィスを通過する際、外部との圧力差が生じて吸気口から空気が入り込み、泡消火剤水溶液と混合されて消火用泡となる。こうして発泡器から吐出された消火用泡の勢いによって、泡チャンバーを外部から閉鎖している遮蔽部材を破損し、連通状態となった泡チャンバー内に侵入する。さらには泡チャンバーから吐出される消火用泡がデフレクタによって案内され、石油タンク上端から内壁に沿って流下し、火災発生箇所で展開された消火用泡により、空気との接触が断たれて消火が行なわれる。
【0010】
また、覆土式石油タンクの泡消火設備では、発泡器に泡消火剤水溶液を送る配管が地面に対して平行に敷設される。本発明の石油タンク用泡消火設備では、消火剤水溶液が地面に対して水平方向から発泡器のオリフィスに導入されるため、発泡器に対して泡消火剤水溶液を送る配管を立ち上げることなくそのまま接続することができる。このため、設置工事が容易となり、設置に要する費用も低廉となる。また、発泡器の高さも低くなるため、設置スペースの確保が容易となる。
【0011】
発泡器及び泡チャンバーは火災による熱や爆風や飛散物等の影響から守るための防護室内に設けられていることが好ましい。こうであれば火災時においても、確実に泡消火剤水溶液を発泡させることができる。
【0012】
また、発泡器及び泡チャンバーは石油タンクを覆う防護用盛土の傾斜面に設けてもよい。こうであれば、防護用盛土によって発泡器及び泡チャンバーが火災から守ることができるため、確実に泡消火剤水溶液を発泡させることができる。
【0013】
さらに、デフレクタと発泡器との距離は1〜5mとされていることが好ましい。デフレクタと発泡器とが1m以上離れていれば、タンク内火災における熱や爆風等の影響によって発泡器が破損されるおそれが少なくなる。また、デフレクタと発泡器との距離が50m以下であれば、消火用泡が発泡器からデフレクタに到達するまでの間に発泡率が低下による消火性能の悪化のおそれがほとんどなくなる。さらに好ましい距離は概ね5.5mである。
【0014】
また、デフレクタは通常時において石油タンク壁の外側に配置され、消火用泡の吐出力によって石油タンク壁の内側に突出するようスライド可能に取付けられていることが好ましい。こうであれば、石油タンクの屋根や盛り土が崩落してデフレクタが破損することを防ぐことができる。
このような構造として、例えば、デフレクタは、両端が開放されたデフレクタ外管にデフレクタ内管が挿通されており、該デフレクタ内管の泡チャンバー側の一端は開放されており、該デフレクタ内管の石油タンク側の一端は閉じられ、下方に向けて泡を吐出するための泡吐出口が設けられていることとすること等が挙げられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面を参照しつつ説明する。
【0016】
(実施形態1)
実施形態1の石油タンク用泡消火設備は、図1に示すように、円錐形の固定屋根を有する地下タンク1に備えられるものである。この地下タンク1は灯油、ジェット燃料、軽油など、引火点の高い液体燃料2を貯留するものであり、地下タンク1の下約半分は地中に埋設されており、上約半分は盛土3で覆われている。
【0017】
次に、この地下タンク1に備えられた石油タンク用泡消火設備について説明する。地下タンク1から離れた地上には、泡消火剤供給装置20が備えられている。泡消火剤供給装置20には貯水槽21が設置されており、貯水槽21から加圧ポンプ22を経由して混合器23まで水を供給する水供給管24が接続されている。なお、貯水槽21を設ける代わりに、河川や池の水を利用したり、海から海水を利用する方式としても良い。混合器23は原液タンク25にも接続されており、原液タンク25内には、泡消火剤が貯留されている。混合器23は泡消火剤と水とを、発泡に適切な量で混合する構造とされており、混合器23で調製された泡消火剤水溶液(すなわち泡消火剤を淡水又は海水で薄めたもの)は、バルブ26及び泡消火剤供給管27を経由して、地下タンク1の上端に設置された泡発生装置30に接続されている。
【0018】
この泡発生装置30は、図2に示すように、発泡器31と、泡チャンバー32とデフレクタ33とから構成されている。発泡器31は水平方向に延在する管状の発泡器外管34と、発泡器外管34内に挿嵌され、軸方向に貫通孔35aを有するオリフィス35と、発泡器外管34に対して径外方向に突設され空気取入口36とが設けられており、貫通孔35aを通過する泡消火剤水溶液と、オリフィス35の下流に生じる負圧によって空気取入口36から取り込まれる空気とが混合されて発泡するようになっている。発泡器31の下流側にはライザーパイプ37が接続されており、ライザーパイプ37の途中はエルボー37aによって立ち上げられて泡チャンバー32に接続されている。ライザーパイプ37は泡チャンバー32に嵌挿して溶着されており、ライザーパイプ37より大径で斜めに切断した円筒箱形状のチャンバー本体32aを有しており、ライザーパイプ37の先端はチャンバー本体32a下端から内部に挿入されており、ネジ止めされた遮蔽板38によって遮蔽されている。また、チャンバー本体32aの上端はネジ止めされたチャンバー蓋39によって遮蔽されている。チャンバー本体32aの下端は地下タンク1側に突出しており、先端にはフランジ40が設けられており、フランジ40にはデフレクタ33が取付けられている。
【0019】
デフレクタ33は筒状のデフレクタ外管33a内にデフレクタ内管33bがスライド可能に挿入された構造とされており、デフレクタ内管33bの先端には下向きに開いた開口33cが設けられている。また、デフレクタ内管33bの後端は拡径されており、デフレクタ外管33aの内側先端近くには、径内方向に突出するストッパ33dが設けられており、デフレクタ内管33bが消火用泡の勢いに押されてスライドした場合に、デフレクタ内管33bの後端がストッパ33dによって停止されるようになっている。また、デフレクタ外管33aとデフレクタ内管33bとの間には、コイルバネ33eが挿入されており、デフレクタ内管33bはコイルバネ33eの付勢力によりデフレクタ外管33a内に挿入される方向に付勢されている。
【0020】
以上のように構成された実施形態1の石油タンク用泡消火設備では、火災時あるいは火災発生のおそれが生じた場合、以下に示すように消火用泡がタンク内に放出される。
【0021】
例えば、落雷等によって地下タンク1内で火災が発生した場合、石油タンク用泡消火設備の操作者は、図1に示すバルブ26を開け、加圧ポンプ22を駆動させる。これにより、貯水槽21の水が混合器23に送水され、原液タンク25から供給される泡消火剤と混合されて泡消火剤水溶液となり、泡消火剤供給管27を経て図2に示す泡発生装置30の発泡器31に送られる。そして、オリフィス35の貫通孔35aから泡消火剤水溶液が高速で放出される。このとき、オリフィス35の下流に生じる負圧によって、空気取入口36から空気が吸い込まれ、泡消火剤水溶液と空気とが混合されて発泡し、消火用泡となる。こうして発生した消火用泡は、エルボー37aによって立ち上げられたライザーパイプ37を通って泡チャンバー32に送られる。そして、図3に示すように、遮蔽板38が消火用泡の勢いによって突破され、チャンバー本体32a内に入り、さらにはデフレクタ33に進む。そして、消火用泡の勢いによってデフレクタ内管33bがコイルバネ33eの付勢力に逆らって押し出されて地下タンク1内に方向にスライドし、デフレクタ内管33bの後端がストッパ33dに当たって停止する。デフレクタ内管33bの先端は下向きに開いた開口33cを有しているため、消火用泡は開口33cを通り、地下タンク1の内壁に沿って流下する。そして、火災の起こっているジェット燃料2表面で消火用泡が展開し、消火される。そして、消火用泡の放出が終了した場合には、デフレクタ内管33bがコイルバネ33eの付勢力によって、再びデフレクタ外管33a内に挿入される。
【0022】
以上のように、この石油タンク用泡消火設備では、消火剤水溶液が図2に示す発泡器31のオリフィス35に対して水平方向から導入されるため、泡消火剤供給管27(図1参照)を立ち上げることなくそのまま発泡器31に接続することができる。このため、設置工事が容易となり、設置費用も低廉となる。また、発泡器30全体の高さも低くなるため、設置スペースの確保が容易となる。
【0023】
また、この石油タンク用泡消火設備のデフレクタ33のデフレクタ内管33bは、通常時においてデフレクタ外管33a内に挿入されているため、地震等によって石油タンク1の屋根や盛土が崩落しても、デフレクタ33が破損することなく、正常に機能させることができる。
【0024】
なお、実施形態1におけるデフレクタの変形例として、図4に示すようにデフレクタ管33fの先端に開閉蓋33gを取り付け、コイルバネ33hの付勢力でデフレクタ管33fの先端を閉じておく構造としても良い。こうであれば、消火用泡の放出の勢いにより、開閉蓋33gが開き消火用が放出され、消火用泡の放出が終了した場合には、開閉蓋33gがコイルバネ33hの付勢力によって閉じられる。
【0025】
(実施形態2)
実施形態2の石油タンク用泡消火設備は、図5に示すように、発泡器50及び泡チャンバー51が防護室52内に設けられており、泡チャンバー51には送泡管53が接続されている。送泡管53は下方に曲げられて地下に潜り、他端が地下タンク54上端のすぐ横の地中内に設けられたデフレクタ55に接続されている。発泡器50とデフレクタ55とは、概ね10m離れた位置とされている。発泡器50、泡チャンバー51及びデフレクタ55の構造は実施形態1と同様であり、図5に示されていないその他の構造も実施形態1と同様であり、説明を省略する。
【0026】
この石油タンク用泡消火設備は、発泡器50及び泡チャンバー51が防護室52内に設けられているため、火災による熱や爆風や飛散物等の影響から守られ、火災時においても発泡器50及び泡チャンバー51が正常に機能し、確実に泡消火剤水溶液を発泡させることができる。また、発泡器50とデフレクタ55とは概ねm離れているため、タンク内火災における熱や爆風等の影響による発泡器のダメージが少なく、かつ、消火用泡が発泡器50からデフレクタ55に到達するまでの間の泡の消火性能の悪化のおそれもほとんどない。もちろん、火災による熱や爆風や飛散物等の影響が小さい範囲に発泡器50及び泡チャンバー51を設ける場合は、防護室52を設けないこともできる。
【0027】
(実施形態3)
実施形態3の石油タンク用泡消火設備は、図6に示すように、は地下タンク60の上部を覆う盛土61の傾斜面を一部削って平らにした切り欠け62上に発泡器63及び泡チャンバー64が設けられており、泡チャンバー64から水平方向に送泡管65が延在しており、地下タンク60の上端に設けられたデフレクタ66に接続されている。発泡器63、泡チャンバー64及びデフレクタ66の構造は実施形態1と同様であり、説明を省略する。
【0028】
この石油タンク用泡消火設備は、盛土61によって発泡器63及び泡チャンバー64が火災から守られるため、確実に泡消火剤水溶液を発泡させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の石油タンク用泡消火設備は、地中に埋設される覆土式石油タンクの消火設備として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施形態1の石油タンク用泡消火設備の模式図である。
【図2】実施形態1の石油タンク用泡消火設備に用いられている泡発生装置の通常時における断面図である。
【図3】実施形態1の石油タンク用泡消火設備に用いられている泡発生装置のタンク内火災発生時における断面図である。
【図4】実施形態1のデフレクタ部分の変形例を示す断面図である。
【図5】実施形態2の石油タンク用泡消火設備の一部模式図である。
【図6】実施形態3の石油タンク用泡消火設備の一部模式図である。
【図7】従来の石油タンク用の泡消火設備の模式図である。
【図8】覆土式石油タンクの一例の模式断面図である。
【図9】覆土式石油タンクの別の例の模式断面図である。
【図10】覆土式石油タンクに従来の消火設備を取り付けた状態を示す模式図である。
【図11】覆土式石油タンクに従来の消火設備を取り付けた場合における火災発生時の模式図である。
【符号の説明】
【0031】
1,60…覆土式石油タンク(地下タンク)
35…オリフィス
36…吸気口
31,50,63…発泡器
38…遮蔽部材(遮蔽板)
32…泡チャンバー
33…デフレクタ
52…防護室
61…防護用盛土
33a…デフレクタ外管
33b…デフレクタ内管
33c…泡吐出口
【技術分野】
【0001】
本発明は地中に埋設される覆土式石油タンク用の泡消火設備に関する。
【背景技術】
【0002】
屋外タンク貯蔵所などの石油タンクは地上に立設されるものが多く、そのような石油タンク用の泡消火設備として、図7に示すように、石油タンク100の上端周縁に発泡器101、泡チャンバー102及びデフレクタ103を取付けた消火設備が知られている(例えば特許文献1)。この消火設備では、発泡器101で生成した消火用泡が泡チャンバー102から吐出され、デフレクタ103によって石油タンク100の上端から内壁に沿って流下するように案内される。そして、貯留されている石油の表面に消火用泡が展開され、タンク内の火災の消火が行なわれる。
【0003】
しかし、一部の石油タンクは、図8に示すように、地中に石油タンク104の全部を完全に埋設したり、図9に示すように、石油タンク105の一部を埋設し、地上に突出する部分に盛り土106を施したりする覆土式石油タンクとして施工される場合がある。このような覆土式石油タンクでは、従来の地上に立設された石油タンクにおいて用いられているような消火設備では、発泡器、泡チャンバー及びデフレクタをタンク壁に取り付けるためのスペースが無いため、取付けることができない。
【0004】
このような場合、図10に示すように、覆土式石油タンク105の外周に沿ってトンネル106等を施工し、泡消火剤水溶液を輸送する配管110を下方に下げてから再び立ち上げ、従来と同様の発泡器107、泡チャンバー108及びデフレクタ109を取り付けることも考えられる。しかしながら、万一、覆土式石油タンク105が爆発を起こした場合、図11に示すように、屋根及び盛り土が崩落してデフレクタ109が破損したり、トンネル106に充満した煙が発泡器107の図示しない空気取り入れ口から入り込んで消火液が適正に発泡しなかったりして、消火設備が本来の消火性能を発揮できないおそれがある。
【0005】
【特許文献1】実開昭60−081897号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、地中に埋設された覆土式石油タンクの火災を適切に消火することができる、石油タンク用泡消火設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の石油タンク用泡消火設備は、地中に埋設される覆土式石油タンクの上端から消火用泡を放出するための石油タンク用泡消火設備であって、
オリフィス及び吸気口を有し、外部から供給される泡消火剤水溶液に空気を混合して消火用泡とする発泡器と、該発泡器から吐出される消火用泡の勢いによって破損される遮蔽部材を有し、該遮蔽部材の破損よって該発泡器と連通状態となる泡チャンバーと、該泡チャンバーから吐出される消火用泡を前記石油タンク上端から内壁に沿って流下するように案内するデフレクタとを備え、
該泡消火剤水溶液は地面に対して水平方向から該オリフィスに噴出されることを特徴とする。
【0008】
本発明の石油タンク用泡消火設備は、地中に埋設される覆土式石油タンクに用いられる消火設備である。ここで覆土式石油タンクとは、地下に完全に埋設された石油タンクのみならず、地下に石油タンクの下部が埋設され、地上に突出する部分に覆土がされた石油タンクも含まれる。
【0009】
本発明の石油タンク用泡消火設備では、外部から発泡器に泡消火剤水溶液が供給されてオリフィスを通過する際、外部との圧力差が生じて吸気口から空気が入り込み、泡消火剤水溶液と混合されて消火用泡となる。こうして発泡器から吐出された消火用泡の勢いによって、泡チャンバーを外部から閉鎖している遮蔽部材を破損し、連通状態となった泡チャンバー内に侵入する。さらには泡チャンバーから吐出される消火用泡がデフレクタによって案内され、石油タンク上端から内壁に沿って流下し、火災発生箇所で展開された消火用泡により、空気との接触が断たれて消火が行なわれる。
【0010】
また、覆土式石油タンクの泡消火設備では、発泡器に泡消火剤水溶液を送る配管が地面に対して平行に敷設される。本発明の石油タンク用泡消火設備では、消火剤水溶液が地面に対して水平方向から発泡器のオリフィスに導入されるため、発泡器に対して泡消火剤水溶液を送る配管を立ち上げることなくそのまま接続することができる。このため、設置工事が容易となり、設置に要する費用も低廉となる。また、発泡器の高さも低くなるため、設置スペースの確保が容易となる。
【0011】
発泡器及び泡チャンバーは火災による熱や爆風や飛散物等の影響から守るための防護室内に設けられていることが好ましい。こうであれば火災時においても、確実に泡消火剤水溶液を発泡させることができる。
【0012】
また、発泡器及び泡チャンバーは石油タンクを覆う防護用盛土の傾斜面に設けてもよい。こうであれば、防護用盛土によって発泡器及び泡チャンバーが火災から守ることができるため、確実に泡消火剤水溶液を発泡させることができる。
【0013】
さらに、デフレクタと発泡器との距離は1〜5mとされていることが好ましい。デフレクタと発泡器とが1m以上離れていれば、タンク内火災における熱や爆風等の影響によって発泡器が破損されるおそれが少なくなる。また、デフレクタと発泡器との距離が50m以下であれば、消火用泡が発泡器からデフレクタに到達するまでの間に発泡率が低下による消火性能の悪化のおそれがほとんどなくなる。さらに好ましい距離は概ね5.5mである。
【0014】
また、デフレクタは通常時において石油タンク壁の外側に配置され、消火用泡の吐出力によって石油タンク壁の内側に突出するようスライド可能に取付けられていることが好ましい。こうであれば、石油タンクの屋根や盛り土が崩落してデフレクタが破損することを防ぐことができる。
このような構造として、例えば、デフレクタは、両端が開放されたデフレクタ外管にデフレクタ内管が挿通されており、該デフレクタ内管の泡チャンバー側の一端は開放されており、該デフレクタ内管の石油タンク側の一端は閉じられ、下方に向けて泡を吐出するための泡吐出口が設けられていることとすること等が挙げられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面を参照しつつ説明する。
【0016】
(実施形態1)
実施形態1の石油タンク用泡消火設備は、図1に示すように、円錐形の固定屋根を有する地下タンク1に備えられるものである。この地下タンク1は灯油、ジェット燃料、軽油など、引火点の高い液体燃料2を貯留するものであり、地下タンク1の下約半分は地中に埋設されており、上約半分は盛土3で覆われている。
【0017】
次に、この地下タンク1に備えられた石油タンク用泡消火設備について説明する。地下タンク1から離れた地上には、泡消火剤供給装置20が備えられている。泡消火剤供給装置20には貯水槽21が設置されており、貯水槽21から加圧ポンプ22を経由して混合器23まで水を供給する水供給管24が接続されている。なお、貯水槽21を設ける代わりに、河川や池の水を利用したり、海から海水を利用する方式としても良い。混合器23は原液タンク25にも接続されており、原液タンク25内には、泡消火剤が貯留されている。混合器23は泡消火剤と水とを、発泡に適切な量で混合する構造とされており、混合器23で調製された泡消火剤水溶液(すなわち泡消火剤を淡水又は海水で薄めたもの)は、バルブ26及び泡消火剤供給管27を経由して、地下タンク1の上端に設置された泡発生装置30に接続されている。
【0018】
この泡発生装置30は、図2に示すように、発泡器31と、泡チャンバー32とデフレクタ33とから構成されている。発泡器31は水平方向に延在する管状の発泡器外管34と、発泡器外管34内に挿嵌され、軸方向に貫通孔35aを有するオリフィス35と、発泡器外管34に対して径外方向に突設され空気取入口36とが設けられており、貫通孔35aを通過する泡消火剤水溶液と、オリフィス35の下流に生じる負圧によって空気取入口36から取り込まれる空気とが混合されて発泡するようになっている。発泡器31の下流側にはライザーパイプ37が接続されており、ライザーパイプ37の途中はエルボー37aによって立ち上げられて泡チャンバー32に接続されている。ライザーパイプ37は泡チャンバー32に嵌挿して溶着されており、ライザーパイプ37より大径で斜めに切断した円筒箱形状のチャンバー本体32aを有しており、ライザーパイプ37の先端はチャンバー本体32a下端から内部に挿入されており、ネジ止めされた遮蔽板38によって遮蔽されている。また、チャンバー本体32aの上端はネジ止めされたチャンバー蓋39によって遮蔽されている。チャンバー本体32aの下端は地下タンク1側に突出しており、先端にはフランジ40が設けられており、フランジ40にはデフレクタ33が取付けられている。
【0019】
デフレクタ33は筒状のデフレクタ外管33a内にデフレクタ内管33bがスライド可能に挿入された構造とされており、デフレクタ内管33bの先端には下向きに開いた開口33cが設けられている。また、デフレクタ内管33bの後端は拡径されており、デフレクタ外管33aの内側先端近くには、径内方向に突出するストッパ33dが設けられており、デフレクタ内管33bが消火用泡の勢いに押されてスライドした場合に、デフレクタ内管33bの後端がストッパ33dによって停止されるようになっている。また、デフレクタ外管33aとデフレクタ内管33bとの間には、コイルバネ33eが挿入されており、デフレクタ内管33bはコイルバネ33eの付勢力によりデフレクタ外管33a内に挿入される方向に付勢されている。
【0020】
以上のように構成された実施形態1の石油タンク用泡消火設備では、火災時あるいは火災発生のおそれが生じた場合、以下に示すように消火用泡がタンク内に放出される。
【0021】
例えば、落雷等によって地下タンク1内で火災が発生した場合、石油タンク用泡消火設備の操作者は、図1に示すバルブ26を開け、加圧ポンプ22を駆動させる。これにより、貯水槽21の水が混合器23に送水され、原液タンク25から供給される泡消火剤と混合されて泡消火剤水溶液となり、泡消火剤供給管27を経て図2に示す泡発生装置30の発泡器31に送られる。そして、オリフィス35の貫通孔35aから泡消火剤水溶液が高速で放出される。このとき、オリフィス35の下流に生じる負圧によって、空気取入口36から空気が吸い込まれ、泡消火剤水溶液と空気とが混合されて発泡し、消火用泡となる。こうして発生した消火用泡は、エルボー37aによって立ち上げられたライザーパイプ37を通って泡チャンバー32に送られる。そして、図3に示すように、遮蔽板38が消火用泡の勢いによって突破され、チャンバー本体32a内に入り、さらにはデフレクタ33に進む。そして、消火用泡の勢いによってデフレクタ内管33bがコイルバネ33eの付勢力に逆らって押し出されて地下タンク1内に方向にスライドし、デフレクタ内管33bの後端がストッパ33dに当たって停止する。デフレクタ内管33bの先端は下向きに開いた開口33cを有しているため、消火用泡は開口33cを通り、地下タンク1の内壁に沿って流下する。そして、火災の起こっているジェット燃料2表面で消火用泡が展開し、消火される。そして、消火用泡の放出が終了した場合には、デフレクタ内管33bがコイルバネ33eの付勢力によって、再びデフレクタ外管33a内に挿入される。
【0022】
以上のように、この石油タンク用泡消火設備では、消火剤水溶液が図2に示す発泡器31のオリフィス35に対して水平方向から導入されるため、泡消火剤供給管27(図1参照)を立ち上げることなくそのまま発泡器31に接続することができる。このため、設置工事が容易となり、設置費用も低廉となる。また、発泡器30全体の高さも低くなるため、設置スペースの確保が容易となる。
【0023】
また、この石油タンク用泡消火設備のデフレクタ33のデフレクタ内管33bは、通常時においてデフレクタ外管33a内に挿入されているため、地震等によって石油タンク1の屋根や盛土が崩落しても、デフレクタ33が破損することなく、正常に機能させることができる。
【0024】
なお、実施形態1におけるデフレクタの変形例として、図4に示すようにデフレクタ管33fの先端に開閉蓋33gを取り付け、コイルバネ33hの付勢力でデフレクタ管33fの先端を閉じておく構造としても良い。こうであれば、消火用泡の放出の勢いにより、開閉蓋33gが開き消火用が放出され、消火用泡の放出が終了した場合には、開閉蓋33gがコイルバネ33hの付勢力によって閉じられる。
【0025】
(実施形態2)
実施形態2の石油タンク用泡消火設備は、図5に示すように、発泡器50及び泡チャンバー51が防護室52内に設けられており、泡チャンバー51には送泡管53が接続されている。送泡管53は下方に曲げられて地下に潜り、他端が地下タンク54上端のすぐ横の地中内に設けられたデフレクタ55に接続されている。発泡器50とデフレクタ55とは、概ね10m離れた位置とされている。発泡器50、泡チャンバー51及びデフレクタ55の構造は実施形態1と同様であり、図5に示されていないその他の構造も実施形態1と同様であり、説明を省略する。
【0026】
この石油タンク用泡消火設備は、発泡器50及び泡チャンバー51が防護室52内に設けられているため、火災による熱や爆風や飛散物等の影響から守られ、火災時においても発泡器50及び泡チャンバー51が正常に機能し、確実に泡消火剤水溶液を発泡させることができる。また、発泡器50とデフレクタ55とは概ねm離れているため、タンク内火災における熱や爆風等の影響による発泡器のダメージが少なく、かつ、消火用泡が発泡器50からデフレクタ55に到達するまでの間の泡の消火性能の悪化のおそれもほとんどない。もちろん、火災による熱や爆風や飛散物等の影響が小さい範囲に発泡器50及び泡チャンバー51を設ける場合は、防護室52を設けないこともできる。
【0027】
(実施形態3)
実施形態3の石油タンク用泡消火設備は、図6に示すように、は地下タンク60の上部を覆う盛土61の傾斜面を一部削って平らにした切り欠け62上に発泡器63及び泡チャンバー64が設けられており、泡チャンバー64から水平方向に送泡管65が延在しており、地下タンク60の上端に設けられたデフレクタ66に接続されている。発泡器63、泡チャンバー64及びデフレクタ66の構造は実施形態1と同様であり、説明を省略する。
【0028】
この石油タンク用泡消火設備は、盛土61によって発泡器63及び泡チャンバー64が火災から守られるため、確実に泡消火剤水溶液を発泡させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の石油タンク用泡消火設備は、地中に埋設される覆土式石油タンクの消火設備として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施形態1の石油タンク用泡消火設備の模式図である。
【図2】実施形態1の石油タンク用泡消火設備に用いられている泡発生装置の通常時における断面図である。
【図3】実施形態1の石油タンク用泡消火設備に用いられている泡発生装置のタンク内火災発生時における断面図である。
【図4】実施形態1のデフレクタ部分の変形例を示す断面図である。
【図5】実施形態2の石油タンク用泡消火設備の一部模式図である。
【図6】実施形態3の石油タンク用泡消火設備の一部模式図である。
【図7】従来の石油タンク用の泡消火設備の模式図である。
【図8】覆土式石油タンクの一例の模式断面図である。
【図9】覆土式石油タンクの別の例の模式断面図である。
【図10】覆土式石油タンクに従来の消火設備を取り付けた状態を示す模式図である。
【図11】覆土式石油タンクに従来の消火設備を取り付けた場合における火災発生時の模式図である。
【符号の説明】
【0031】
1,60…覆土式石油タンク(地下タンク)
35…オリフィス
36…吸気口
31,50,63…発泡器
38…遮蔽部材(遮蔽板)
32…泡チャンバー
33…デフレクタ
52…防護室
61…防護用盛土
33a…デフレクタ外管
33b…デフレクタ内管
33c…泡吐出口
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設される覆土式石油タンクの上端から消火用泡を放出するための石油タンク用泡消火設備であって、
オリフィス及び吸気口を有し、外部から供給される消火剤水溶液に空気を混合して消火用泡とする発泡器と、該発泡器から吐出される消火用泡の勢いによって破損される遮蔽部材を有し、該遮蔽部材の破損よって該発泡器と連通状態となる泡チャンバーと、該泡チャンバーから吐出される消火用泡を前記石油タンク上端から内壁に沿って流下するように案内するデフレクタとを備え、
該消火剤水溶液は地面に対して水平方向から該オリフィスに導入されることを特徴とする石油タンク用泡消火設備。
【請求項2】
前記発泡器及び前記泡チャンバーは火災による熱や爆風や飛散物等の影響から守るための防護室内に設けられていることを特徴とする請求項1記載の石油タンク用泡消火設備。
【請求項3】
前記発泡器及び前記泡チャンバーは前記石油タンクを覆う防護用盛土の傾斜面に設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の石油タンク用泡消火設備。
【請求項4】
前記デフレクタと前記発泡器との距離は1m以上50m以下とされていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の石油タンク用泡消火設備。
【請求項5】
前記デフレクタは通常時において石油タンク壁の外側に配置され、消火用泡の吐出力によって石油タンク壁の内側に突出するようスライド可能に取付けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の石油タンク用泡消火設備。
【請求項6】
前記デフレクタは、両端が開放されたデフレクタ外管にデフレクタ内管が挿通されており、該デフレクタ内管の泡チャンバー側の一端は開放されており、該デフレクタ内管の石油タンク側の一端は閉じられ、下方に向けて泡を吐出するための泡吐出口が設けられていることを特徴とする請求項5記載の石油タンク用泡消火設備。
【請求項1】
地中に埋設される覆土式石油タンクの上端から消火用泡を放出するための石油タンク用泡消火設備であって、
オリフィス及び吸気口を有し、外部から供給される消火剤水溶液に空気を混合して消火用泡とする発泡器と、該発泡器から吐出される消火用泡の勢いによって破損される遮蔽部材を有し、該遮蔽部材の破損よって該発泡器と連通状態となる泡チャンバーと、該泡チャンバーから吐出される消火用泡を前記石油タンク上端から内壁に沿って流下するように案内するデフレクタとを備え、
該消火剤水溶液は地面に対して水平方向から該オリフィスに導入されることを特徴とする石油タンク用泡消火設備。
【請求項2】
前記発泡器及び前記泡チャンバーは火災による熱や爆風や飛散物等の影響から守るための防護室内に設けられていることを特徴とする請求項1記載の石油タンク用泡消火設備。
【請求項3】
前記発泡器及び前記泡チャンバーは前記石油タンクを覆う防護用盛土の傾斜面に設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の石油タンク用泡消火設備。
【請求項4】
前記デフレクタと前記発泡器との距離は1m以上50m以下とされていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の石油タンク用泡消火設備。
【請求項5】
前記デフレクタは通常時において石油タンク壁の外側に配置され、消火用泡の吐出力によって石油タンク壁の内側に突出するようスライド可能に取付けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の石油タンク用泡消火設備。
【請求項6】
前記デフレクタは、両端が開放されたデフレクタ外管にデフレクタ内管が挿通されており、該デフレクタ内管の泡チャンバー側の一端は開放されており、該デフレクタ内管の石油タンク側の一端は閉じられ、下方に向けて泡を吐出するための泡吐出口が設けられていることを特徴とする請求項5記載の石油タンク用泡消火設備。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−131335(P2010−131335A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−312765(P2008−312765)
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【出願人】(000192338)深田工業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【出願人】(000192338)深田工業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】
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