説明

石油原料からのプロピレン生成量を最大化するための過酷度流動接触分解方法の高度制御方法

プロピレン生成量を最適化する目的をもって、安定Y型ゼオライトと少量の希土類金属酸化物とを含む基本分解触媒と、形状選択性ゼオライトとからなる触媒混合物とを、再生域、分離域、及びストリップ域を有する、比較的過酷な条件下で炭化水素の転化が起こる下向流型流動接触分解装置において接触させることによりガスオイルのような石油を接触分解させる。本流動接触分解プロセスに従い、適切な工程制御を適用し、システムを監視することにより、プロピレンのような軽質オレフィンの生成を最大化する。予測システムをテストする工程モデル及び履歴データは、FCC装置における潜在的劣化及び装置の欠陥を早期警告することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石油の接触分解方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、石油を分解してプロピレンのような軽質オレフィンの収率を最大にして、炭化水素原料からの単位当りのプロピレン生成量を最大化することを包含する、比較的高過酷な条件で操作する流動接触分解(“FCC”)方法に適切な制御・監視条件を施すことに関する。
【背景技術】
【0002】
石油分解法において水蒸気熱分解法が広く行われているが、この方法は、エネルギー集約的であり、また、余り選択的ではなく、コークスを生じ、多量の二酸化炭素を大気中に放出する。化学メーカーは、長い間、代替の炭化水素分解法が必要であることを認識してきた。水蒸気熱分解法の一つの代替法は、接触分解法である。
【0003】
典型的な接触分解装置において、石油系炭化水素は、触媒と接触分解して、主な製品としてガソリンと、少量のLPG、及び分解ガスオイルを生成する。次いで、触媒上に付着したコークスは、空気により焼失され、再生された触媒を再利用のために再循環される。
【0004】
典型的なFCC法においては、反応温度を上げて熱分解の寄与部分を増やすことによって、軽質オレフィンを、選択的に増産することができ、このようにして、軽質製品の生成量を増大させる。例えば、深度接触分解(“DCC”)法と呼ばれる特定のタイプのFCC法においては、より高い温度を用い、水蒸気量を増やしている。しかしながら、DCC法における熱分解は、余り選択的でなく、水素、メタン、エタン及びエチレンのような比較的価値の低い生成物を多量に、“湿性ガス”(H2及びC1〜C4生成物を含む)の形で生成する。湿性ガスの加圧は、精製操作をしばしば抑制する。
【0005】
軽質オレフィンを選択的に増加させるもう一つの方法は、この方法にZSM−5含有添加物のようなオレフィン選択性ゼオライト含有添加物を入れることである。ZSM−5のような通常の添加物は、初期分解生成物(例えば、ガソリンオレフィン)を、C3、C4オレフィンに選択的に変換する。リンに対する活性性又は選択性を改良すると、ZSM−5の有効性を増大することが知られている。しかしながら、添加物は、触媒の残存量を減らし、残油転化を減らすことができる。
【0006】
公知のFCC法は、十分な軽質オレフィンを選択的に生成することはできない。例えば、高温分解反応は、石油を一斉に熱分解させ、原料油からの乾性ガスの収量を増加する。
【0007】
原料油と触媒との反応が短い接触時間で行われると、水素移動反応阻止により、軽質オレフィンの軽質パラフィンへの転化を減殺する。短い接触時間での反応中に、石油の軽質留分油への転化は、余り増加しない。さらに、ペンタシル型ゼオライトのみを使用した場合、一旦生成すると、ガソリンの過剰分解により、軽質留分炭化水素の生成量を高める。それ故、これらの公知の技術のいずれかを用いて高い収率で高分子油から軽質留分油を生成することは難しい。それ故、生成条件を最適化する新たな方法を使用する必要性があり、その方法は、ある所望の目的生成物を製造する観点から反応時間を最適化する。
【0008】
さらに、一般的に、FCCにおける難しさは、再生装置の温度を最低にしようとしながら、反応装置及びストリップ装置の温度を最高にしなければならないことである。このように温度を制御することは、反応装置温度を上げることが、本質的には、再生装置の温度をも上げてしまうことになるから、従来のやり方で熱をバランスさせた操作では有効に働かない。それ故、FCCの装置において、適切な熱バランスを可能にする適切なコントロールシステムの必要性がある。
【0009】
さらに、典型的なFCC法においては、精製工程中に手作業で触媒量を増やして、流出物及び生成混合物を制御している。言い換えると、そのような手作業を最適化する系統だったフィードバックメカニズムは存在しない。
【0010】
FCCシステムに入る原料の化学組成が一定しないために、流出物及び生成混合物共に、精製の途中に、方法のターゲットから変化し、又はずれることがある。結果として、システム操作者は、システム産出物を常に監視しなければならず、必要に応じて触媒投入のスケジュールを手作業で調整するために、常時待機しなければならない。このように操作することは、過酷な条件で本システムが運転される場合、大きな負担が生じる。したがって、プロセス全体を遠隔で監視し、制御することができれば、また、監視や、触媒投入スケジュールを手動で変更するといった人への依存性を減らしながら、本プロセスモデムが触媒投入からシステム産出物までの調整を知らせることができれば、便利であろう。
【0011】
さらに、特にFCCが過酷な態様で運転される場合、プロピレン転化を最大にする現存のFCC法において、工程の変数は、必ずしも最適化されない。最良の転化水準は、所定の供給率、原料の質、一連の処理目的物及び他の装置の制限(例えば、湿性ガス加圧装置の能力、分留能力、反応装置温度、再生装置温度、触媒の循環)を受ける触媒に対応する。それ故、操作者は、幾つもの変数を同時に手作業で調整しなければならず、そのような作業を最良化するのに容易に使うことのできる適当な自動処理装置がないために、仕事をほとんど不可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】US2002/0195373A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来の方法は、ガソリンの製造に絞ったシステムを目的とするので、例えば、プロピレンのような軽質オレフィンの製造には最適ではなかった。それ故、本発明は、一側面において、比較的軽質なオレフィンを製造する方法である。特に、本発明の目的の一つは、プロピレン生成を最適化する仕組みを提供することにある。
本明細書に記載するように、本明細書における最良のプロピレン生成のための教示に従って適切に改変された流動接触分解装置は、軽質オレフィンを製造するのに用いることができる。そのような流動接触分解装置を用いることは、特に、石油化学工業と密接に結びついている石油精製において経済的に有利となり得る。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前述のように、ゼオライトZSM−5のようなゼオライト材料は、炭化水素転化触媒として公にされている。本発明は、一側面において、反応装置への触媒の流れを最適化する高度制御システムを導入し、種々のセンサーを用いてライン上の供給物及び組成を監視し、そして、プロピレン生成を最適化する統計的手法を用いることにより、炭化水素材料を選択的に分解するためのゼオライト触媒システムの組合せの特定使用に関する。出願人の知るところでは、特にプロピレンの生成のための炭化水素分解についての従来の試みは、これらの特徴を備えていない。
【0015】
本発明は、一側面において、大孔径と中孔径の形状選択性ゼオライト成分の両方を含む分解触媒を用い、かつ、高度プロセス制御及び最適化システムを用いることにより、軽質オレフィン、特に、プロピレンの生成量を最大化するためのFCC法に関する。FCCの原料は、接触分解し、ナフサ及びプロピレンを含む分解物を生成することができ、その原料は、回収物及び分解物の少なくとも一部の原料としての再循環物を含むことがあり、再循環物は、比較的過酷な操作条件で接触分解されて追加のプロピレンを含む生成物になる。このようにして、高度プロセス制御により、炭化水素原料の単位当りのプロピレン生成量を最大化することができる。
【0016】
本発明のもう一つの目的は、石油流動接触分解用の改良触媒プロセス方法を提供することであり、この方法は、方法の適切な自動化及び制御により、石油の熱分解で発生する気体状の水素、メタン及びエタンのような乾性ガスの量を減らす一方、軽質オレフィンを高収率で生成することができる。一側面では、この目的は、下向流反応装置又は下向流FCC反応装置を用いて逆混合を減らすことにより達成することができる。逆混合は、大量の乾性ガスを発生する過剰分解の主たる理由である。逆混合を減らすと、コークス及び乾性ガスを減らし、ガソリンとプロピレンの生成を増やすことになる。
【0017】
軽質オレフィンの収率を高めようとする場合、石油流動接触分解は、石油と触媒混合物とを高温、短時間で接触させることにより行われる。触媒混合物は、特定の基本分解触媒と形状選択性ゼオライト含有添加物とを含むことが好ましい。高度制御システムを用いて、最小のコストでプロピレン生成量を最大にすることは、FCC法の一部として好ましいことである。
【0018】
本発明による石油流動接触分解方法は、その一態様において、石油を触媒混合物と接触させる工程を包含する。触媒混合物は、60〜95重量%の“超”安定Y型ゼオライト含有基本分解触媒、0.5重量%未満の希土類金属酸化物、及び5〜40重量%の形状選択性ゼオライト含有添加物を含む。具体的な一態様において、触媒は、外部からのリン成分を含んでいてもよい。任意には同じ結果を得るのに市販の触媒混合物を使うこともできる。
【0019】
石油と触媒混合物は、再生域、下向流型反応域、分離域、及びストリップ域を有する流動接触分解装置の中で接触する。石油と触媒混合物は、反応域出口温度が580℃を超え、触媒/石油比が15〜40重量/重量の範囲にあり、かつ反応域内での炭化水素の接触時間が0.1〜2.5秒の範囲にあるような条件の下で接触する。上記変数、例えば、触媒混合物、出口温度、触媒/石油比及び接触時間のそれぞれは、最少の経費でプロピレン生成量を最大にするように、すなわち、最適のプロピレン生成のために、高度プロセス制御システムによりコンピューター制御される。
【0020】
特に、触媒投入条件及び他の操作条件は、遠隔で監視することができ、システム産出物に対して自動調整することができ、したがって、監視、触媒投入スケジュール及び他のプロセス変数を手動で変更するような人への依存性を減ずることができる。未転化の石油の一部は、原料に再循環することができる。
【0021】
本発明のもう一つの目的は、石油を、高温度、短時間で流動接触分解させて、軽質オレフィンの収量を最大にすることであり、そこでは、石油は、特定の基本分解触媒と、形状選択性ゼオライトを含む添加物とからなる触媒混合物と接触する。軽質オレフィンの収量の最大化は、本発明の一側面に従って、高度制御システムを適用することにより、最少のコストでプロピレンの生成量を最大にすることによっても得ることができる。
【0022】
本発明のもう一つ別の目的は、所望の目的、すなわち、プロピレン生成のための触媒の最も適切な組合せを見出すことである。
【0023】
本発明のさらなる目的は、プロピレン生成を最良化するために、統計的モデル及び厳密なモデルを使用して制御システムの自動化を容易にすることである。
【0024】
本発明のさらなる目的は、様々な場面を受容する様々なモデルを選択し、プロピレンの生成を最適化するために必要に応じてモデル間で入れ替えることができるようにすることである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明の上記特徴及び他の特徴は、以下の発明の態様にさらに十分に記述される。記述は、添付の図面を参照してなされる。
【0026】
【図1】図1は、本発明の具体的な一態様に従う種々の制御システムを備えた一般的な流動接触分解プロセスの概略図である。
【0027】
【図2】図2は、一つの特定制御システムを備えた流動接触分解装置を組み込んだ本発明の具体的な態様の概略的なプロセスの流れ図である。
【0028】
【図3】図3は、本発明の具体的な一態様に従う種々の制御システムを備えた一般的な流動接触分解プロセスの概略的な流れ図である。
【0029】
【図4】本発明の具体的な一態様において利用された分散型制御システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、好ましい態様に関して説明されるが、発明はその態様に限定されるものでないことは理解されよう。逆に、添付の特許請求の範囲に記載された発明の範囲及び精神に含まれることのできるすべての変更、修正及び同等の態様を含むものとする。
【0031】
供給原料
本発明の流動接触分解において、原料油として石油を使用する。石油は、直留ガスオイル、減圧ガスオイル、常圧残油、減圧残油、コーカー・ガスオイル、及び上記残油及びガスオイルを水素化精製又は水素化処理をすることにより得られた石油を含む。上記の石油は、単独で用いるか、又は少量の軽質分留油との混合物として用いてもよい。
【0032】
FCC原料は、接触分解してナフサ及びプロピレンを含む分解物とすることができ、そのナフサ分解物の少なくとも一部を原料として下向流反応装置に回収又は循環させて、更なる接触分解により追加のプロピレンを含むようにできる。発明の実施に際して、下向流反応装置を通過するナフサ分解物は、本全ナフサ分を含むことができるけれども、追加の反応装置を通過させたナフサ分解物から単位当りもっと多くのプロピレン含有軽質オレフィンを得ることができることが見出された。
【0033】
もう一つの態様において、FCC原料は、重油、又は、例えば、ナフサ原料に比べて分解がより困難な、一般的により高い温度を必要とする残油であってもよい。しかしながら、与えられた原料、例えば、オレフィン系ナフサ対パラフィン系ナフサでは、後者の方がより高い温度を必要とすることに留意する必要がある。
【0034】
ナフサは、本発明の方法にとって多くの可能な原料の一つである。本明細書では、ナフサは、約3個〜約20個の炭素原子を有する炭化水素を含む炭化水素原料として定義される。ナフサ原料は、約4個〜約11個の炭素原子を有するパラフィン系又はイソパラフィン系炭化水素を含むことが好ましい。
【0035】
供給原料は、好ましくは、ペンタシルゼオライト触媒のような触媒を含む反応装置を流れる。システム中にオレフィンが存在すると、遊離基反応を促進するので有益である。さらに、ガスオイル(沸点範囲260℃〜340℃)、340℃より高い沸点を持つ燃料油又は残油までものような種々の炭化水素、又はそれらの水素化処理された材料は、適切な原料になり得る。
【0036】
もう一つの態様において、炭化水素原料は、一定量の硫黄分を含んでいてもよい。殆どの炭化水素油は、前処理及び加工により、1%未満の濃度の硫黄を含む。それ故、一側面において、FCC法は、硫黄含有炭化水素を、例えば、プロピレンのような付加価値のある製品に変えることができる。
【0037】
活性サイトの濃度又は有効サイトの活性性;触媒設計 触媒の物理的及び化学的物性は、選択性の相違を通じて転化率増加に寄与する。これらの物性は、ゼオライトの種類、孔径分布、全表面積対マトリックス表面積比、及び化学組成を含む。触媒の使用量、すなわち、触媒/油比は、最大のオレフィン生成にとって重要となることがある。
【0038】
大孔径ゼオライト分解触媒を用いる流動接触分解装置(“FCCU”)によるプロピレンの生成は、この装置に、分解装置の上向流管/下向流管及び中孔径ゼオライト触媒成分を加え、分解装置の上向流管/下向流管に分解物質の少なくとも一部を循環することにより、さらに多くのプロピレンを生成する。大孔径ゼオライトは、好ましくは、USYゼオライトを含み、中孔径は、好ましくは、ZSM−5であり、その両方とも市販のもの、ないし当業者に知られたものである。
【0039】
炭化水素の少なくとも一部は、一分子当り約2〜約3個の炭素原子を有するオレフィンに転化される。大孔径ゼオライト成分は、フォージャサイト型が好ましく、さらに好ましくは、Y型フォージャサイトである。中孔径ゼオライト成分は、ZSM−5型が好ましい。大孔径及び中孔径ゼオライト成分に加えて、結合剤として、少なくとも1種の多孔性、無機耐熱金属酸化物を含んでいてもよい。ある態様において、結合剤は、FCC原料の重質成分を分解するための酸分解の機能を持つこと、及び中孔径ゼオライト成分は、全重量を基準にして少なくとも1重量%の触媒を含むことが好ましい。
【0040】
別の態様において、触媒は、多孔性無機耐熱金属酸化物結合剤と共に大孔径ゼオライトを有する粒状物、及び多孔性無機耐熱金属酸化物結合剤と共に中孔径ゼオライトを有する粒状物を含むことができる。もう一つ別の態様においては、ゼオライト含有触媒は、リンを少なくとも0.5重量%〜約10重量%、及び、ガリウム、ゲルマニウム、スズ、及びそれらの混合物からなる群から選ばれる促進剤金属を約0.1〜約10重量%含むことができる。
【0041】
ある態様において、ゼオライトは、オレフィン選択性ゼオライト全量に基づいて約10重量%以下のリン含有化合物(Pとして計算して)で処理して、適切な軽質オレフィン選択性を確実なものとすることができる。リン含有化合物で処理した後、リン処理されたオレフィン選択性ゼオライトは、乾燥し、次いで300℃〜1000℃、好ましくは、450℃〜700℃の温度で約15分〜24時間仮焼して、適切なオレフィン選択性“分解触媒”を得ることができる。
【0042】
炭素質物質及び重質炭化水素が付着されることがある触媒を、ストリップ域から再生域に送給する。再生域において、炭素質物質等が付着した触媒を酸化処理し、付着物を減量して、再生触媒を得る。再生触媒は、反応域に連続的に再循環されて戻る。分解生成物は、分離装置の上流直近又は下流直近で急冷され、不必要なさらなる分解又は過剰分解を避ける。
【0043】
ある態様において、触媒混合物は、基本分解触媒と添加物からなる。基本分解触媒は、基本触媒の主活性成分である安定Y型ゼオライトと、ゼオライトの基体材料であるマトリックスとを含むことができる。基本分解触媒は、主として、超安定Y型ゼオライトに含まれる希土類金属酸化物を0.5重量%未満含むことができる。一般的に、安定Y型ゼオライトの触媒活性は、ゼオライト中の希土類金属含有量が増えるほど増大する。なぜなら、超安定Y型ゼオライトの熱安定性は、ゼオライトに希土類金属を入れることにより改良されるからである。
【0044】
Y型ゼオライトの水素移動反応活性も、ゼオライトに希土類金属を加えることによって増大させることができる。本発明で使用される基本分解触媒中の安定Y型ゼオライトの含有量は、好ましくは、5〜50重量%、より好ましくは、15〜40重量%の範囲にある。“安定”Y型ゼオライトは、“超安定な”ゼオライト材料を含む。
【0045】
本発明で用いられる基本分解触媒のマトリックスは、カオリン、モンモリロナイト及びベントナイトのような粘土、及びアルミナ、シリカ、マグネシア及びシリカ−アルミナのような無機多孔質酸化物を含む。基本分解触媒は、好ましくは、0.5〜1.0g/mlの嵩密度、50〜90マイクロメーターの平均粒子径、50〜350m/gの表面積、及び0.05〜0.5ml/gの孔容積を有する。
【0046】
触媒混合物は、基本分解触媒に加えて、形状選択性ゼオライト含有添加物を含む。本明細書で言う形状選択性ゼオライトとは、孔径がY型ゼオライトのそれより小さく、そのため、限られた形状の炭化水素しか孔を通じてゼオライトに入らないようなゼオライトを意味する。代表的な形状選択性触媒は、ZSM−5、オメガ、SAPO−5、及びケイ酸アルミニウムを包含し得る。ZSM−5は、これらの形状選択性ゼオライトのうちで最も好ましく使用される。添加物中の形状選択性ゼオライトの含有量は、20〜70重量%、より好ましくは、30〜60重量%の範囲内とすることができる。
【0047】
触媒混合物中の基本分解触媒の割合は、55〜95重量%の範囲に、触媒混合物中の添加物の割合は、5〜40重量%の範囲にすることができる。基本分解触媒の割合が55重量%未満であるか、又は添加物の割合が40重量%より多い場合、原料油の低い転化率のために軽質留分オレフィンの高い収量を得ることができない。基本分解触媒の割合が95重量%よりも大きいか、又は添加物の割合が5重量%未満の場合には、原料油の高い転化率を達成するが、それほど高い軽質留分オレフィン収量を得ることはできない。特に好ましい態様において、触媒は、少なくとも0.5重量%の、典型的には、Pとしてリンを含む。
【0048】
本発明において、例えば、OCTACAT(W.R.Grace Co.,Ltd.)のような市販の分解触媒を使用することができる。OCTACAT触媒は、24.50ANGの結晶格子定数を有するゼオライトを含む。他の適切な市販の“分解触媒”は、下記名称又は商標のものを含むが、それらに限定されない:Akzo、Engelhard(“Flex−Tec”(登録商標)又は分散型マトリックス構造又はDMS)、HARMOREX(CCIC)、OlefinsMAX(Devison社製)、Intercat、Stone & Webster、UOP、等。
【0049】
触媒対油比
しばしば“触媒/油比”と呼ばれる反応装置中の触媒濃度の増加は、触媒の最大転化率の可能性を増大させる。これは、反応装置の熱負荷を上げるか又は比較的低いコークス選択性(すなわち、より低いデルタコークス)触媒に切り替えることにより達成することができる。反応装置の熱負荷は、反応装置の上昇温度又はより低い供給速度によって上げることができる。これは、触媒/油比を上げることになり、装置の熱平衡を維持する。
【0050】
本発明において、触媒/油比[原料油の供給速度(トン/時)に対する触媒混合物の循環量(トン/時)]は、10〜45重量/重量の範囲にある。
【0051】
再生触媒上炭素
再生触媒上炭素(CRC)が低ければ低いほど、酸分解サイトをブロックするコークスが少ないから、分解サイトの有効性がより高くなる。CRCは、一酸化炭素酸化促進剤を用いて再生効率を高めることにより減らせる。再生装置の床レベルを上げても滞留時間が増えてCRCを改善するが、これは、短縮された希薄相分離器滞留時間及び触媒の損失量増加の可能性とバランスさせなければならない。
【0052】
触媒供給速度
触媒は、予め決められたスケジュールに基づいて一定間隔でFCC装置に加えることができる。本発明の一つの特定の側面において、供給触媒は、連続的に調整される。しかし、自動システムにおいて、新しい触媒の投入時期及び量は、FCCプロセス中に増量して生成収率、生成混合物を最良のものとするための規定とともに制御装置にプログラムすることができる。供給原料油の化学組成、及びその他のFCCシステムに加わる変数のような、生成プロセスに関わる不確実要因により、排出物、エネルギー使用、生成混合物は、従来技術の流動分解プロセスでの目的対象とするところから変移することがある。
【0053】
従来のFCCシステムは、操作者が、システム産出物を十分に監視し、触媒投入及び他の必要な操作条件を含むFCCシステムの操作を常時傍について手動で調製しなければならない。したがって、触媒投入のスケジュール及び他の工程変数を監視し、手動で変更するというような人への依存性を減らす一方、システム産出物に対する触媒投入及び他の操作条件に関し遠隔で調整することは有益である。本発明の一側面において、新しい触媒の供給速度は、具体的に設計された監視システムにより、監視し、制御することができる。1つの具体的態様において、供給速度は、原料組成に依存し、最適供給速度は、以下に詳細に説明するプロセスモデルにより予想することができる。
【0054】
反応時間
分解に有効な反応時間を増やすと、転化率も増える。新規原料供給速度、上向流管水蒸気速度、及び圧力は、所定の装置の形状について反応時間に影響する主な操作変数である。転化率は、分解に供される反応装置の限定された大きさとは逆に変動する。転化率は、幾つかの装置において、新規原料供給速度の3〜5%の相対値減少に対して絶対値1%だけ増加することが観察された。本明細書において使用される接触時間は、原料油と再生触媒との接触開始と、触媒からの分解生成物の離脱との間の時間、又は、分解生成物が分離域の上流直近で急冷される場合には、原料油と再生触媒との接触開始と急冷との間の時間のどちらかを意味する。好ましい態様において、接触時間は、約0.1〜1.5秒の範囲、より好ましくは、約0.2〜0.9秒の範囲である。接触時間が0.1秒未満の場合には、重質留分油の転化率が低いために、軽質留分オレフィンは、高収率で得られないであろう。逆に、接触時間が1.5秒よりも長い場合には、供給された石油の熱分解は、過剰になることがあり、それにより、乾性ガスの発生量が過度に増大する。しかしながら、接触時間は、供給システムに依存しており、最良の反応時間は、以下に詳細に説明するプロセスモデルにより予測することができる。
【0055】
反応装置の温度
反応装置の温度が増大すると、主として吸熱分解反応にとって反応速度が高まることにより、また、触媒/油比が増加することにより転化率を増大する。反応装置温度が約10°F上昇すると、転化率が絶対値約1〜2%増大させる。反応装置温度がより高いと、ガソリンのオクタン価を増大し、LPGのオレフィン率を上昇させる。これは、この方法による転化率の最大化の非常に望ましい副次的利益である。オクタン価がより高くなるということは、ガソリンの沸点範囲でオレフィンを飽和させ、ガソリンのオクタン価を低下させる二次的水素移動反応に比べて、主分解反応速度が大きいことによるものである。一般的に、反応装置温度が10°F上昇すると、リサーチオクタン価及びモーターオクタン価がそれぞれ0.8及び0.4まで上昇することができる。
【0056】
本明細書で使用される“反応出口温度”とは、下向流型反応域の出口温度として定義され、分解性生物が触媒から分離する前の温度である。反応域出口温度は、約500℃〜630℃の範囲であってよいけれども、好ましくは、約590℃〜620℃である。反応域出口温度が580℃より低い場合には、残油又は重質油の分解から高い収率で軽質留分オレフィンを得ることができない。一方、630℃より高い場合には、供給される重質留分油の熱分解は、乾性ガスの発生量が過度に増大するなど、重大なことになることがある。特定用途のためにナフサが原料である場合には、反応温度を、プロピレン生成の最適化のために残油を分解することに比べて、低くすることができる。しかしながら、反応温度及び時間は、供給システムに依存し、最適条件は、以下に詳細に説明するプロセスモデルにより予測することができる。
【0057】
圧力
転化率及びコークス収率がより高いことは、より高い圧力では熱力学的に好ましい。しかしながら、転化率は、装置の圧力により有意に影響されない。なぜなら、実質的な圧力上昇が、転化率を有意に上げるのに必要だからである。ある態様において、FCC装置は、好ましくは1〜3kg/cmの反応圧力かつ約650℃〜720℃の再生域温度で操作される。
【0058】
反応装置
本発明の本態様で使用される流動接触分解装置は、再生域(再生装置)、下向流型反応装置(下向流反応装置又は“下向流管”)、分離域(分離装置)、及びストリップ域(ストリップ装置)を包含し得る。反応装置は、反応装置の性能に基づいて触媒投入及び排出実時間を制御する手段ばかりでなく、オンラインで生成物及び供給物の組成を監視する複数のセンサーを備えることができ、制御システムと一体化する。
【0059】
熱平衡
FCC装置のコークス形成は、熱平衡を維持する最重要パラメーターである。上向流管又は下向流管内で生成したコークスは、再生装置中の空気の存在で燃焼する。吸熱性のコークス燃焼反応により生じた熱は、反応装置の熱需要、すなわち、蒸発熱、及び原料の関連顕熱、分解吸熱等を供給する。例えば、従来のFCC装置における減圧ガスオイル残物を含むコークス収量は、約4.5〜5.5重量%の範囲に入ることができる。完全燃焼から生じる熱は、反応装置の熱負荷を十分まかない得る。しかしながら、FCC装置の残油においては、原料は、コンラドソン・コークス及び芳香族環をより多く含む大量のコークス前駆物を含むので、コークスの生成はかなり増大する。このことにより、再生装置の温度を、従来のFCC装置の約650℃〜860℃から残油分解装置の約720℃〜250℃に上昇させる。
【0060】
操作条件及び変数の制御
本発明は、一側面において、“プロピレン生成を最適化する”ことを目的とする。このことは、“最低の生産コストでプロピレン生成を最大化する”ことを意味する。FCC装置における炭化水素転化率は、多くの変数の複雑な関数である。例えば、ガソリンのLPG及び乾性ガスへの過剰分解は、反応装置の対流時間の増大により起こることがある。潜在的な過剰分解を止める有効な手段は、さらなる上向流管水蒸気を加えてより選択的な分解のために炭化水素分圧を低下させること、反応装置の圧力を下げること、循環速度を増加して滞留時間を下げること、触媒/油比を下げて接触分解サイトの有効性を減じること、上記条件を組み合わせることを含む。
【0061】
現存するFCC装置でプロピレンの転化率を最大化することについて、上記の変数は、一般的に最適化されない。最良の転化率水準は、所与の供給速度、原料の質、一連の処理目的物、及び、他の制限(例えば、湿性ガス圧縮装置の能力、分留の能力、送風機の能力、反応装置温度、再生装置温度、触媒の循環)下の触媒に対応する。それ故、FCC操作者は、同時に幾つかの変数を調整する必要がある。最良の転化率水準が見つかった場合にのみ、操作者は、適切な触媒を作成、恐らく、触媒の物性を再考慮し、操作制限を除き、操作をより高い水準の最良の転化率に持っていくことができる。しかしながら、そのような操作行為を最適化するのに容易に使用できる適切な自動処理装置が存在しない。
【0062】
オンライン能力監視
管理制御回路は、設備自動化階層の基礎としての役割を持つ。保守及び制御技術要員は、転化率資産の能力を維持しようと努力する。装置及び技術の信頼性の課題、設備作業者の変更、上記資産の監視・保守のための熟練技術資産が少ないことは、すべて共通の問題である。その結果は、品質、エネルギー消費、装置の摩損・破損、設備の処理量、最後に収益性にとって不利な要因を抱える。能力を監視することにより、(1)業界標準に対して流量制御能力のベンチマークテストを行い、(2)問題を確認し、優先順位をつけて保守情報源に焦点を当て、(3)オンライン及びオフラインの記録について問題を分析、診断し、(4)規定の制御装置及び高度制御装置の両方について全セットのツールにより制御能力を改良し、(5)包括的な、自動化された記録について改善を監視、維持するツールを提供する。例えば、マトリコン(Matrikon)社製プロセスドクター(ProcessDoctor)、ハネウェル(Honeywell)社製ループスカウト(LoopScout)又は横河社製MDダイアグノスチック(Diagnostic)は、そのような機能を提供する。
【0063】
モデル化と最適化のパッケージ
初期撹乱(incipient disturbances)のある連続方法の処理量と制御を改良する高度ソフトウェアを用いてFCC装置を最適化することができる。そのようなソフトウェアのパッケージは、従来の自動化技術では制御が難しい連続方法に対して自動制御を提供する。従来の手動又は自動制御にとって対応するには余りにも開始が速すぎる撹乱を生じる方法が多く存在する。モデル化と最適化のパッケージを使用すると、通常の工程中の優れた制御により、また、停止させることがある工程の混乱状態を避けるか又は減ずることにより、処理量を増やし、かつエネルギー消費を減らす結果となる。また、工程に責任を持つ操作者の手作業の関わりを少なくする必要があり、そこで、操作者は、より高いレベルの製造制御活動に注意を集中することができる。本発明のある態様の方法は、例えば、ユーメトリック(Umetric)社のSIMCA P11及びマス・ワークス・インク(Math Works Inc.)社のマトラブ(Matlab)の最適化ツールのようなソフトウェアパッケージを利用することができる。
【0064】
上記パッケージの多くは、方法と生成物とエネルギーコストの項目を含む数学関数を最短化したものとして定義される最適化ルーチンを提供する。
【0065】
操作条件の検出とプロセスモデルの選択
本発明の一つの具体的態様において、システムは、種々のセンサー信号を用いて操作条件を決定し、流れ操作を最も良く表現するプロセスモデルを選択することができる。モデルは、以然に開発したプロセスモデルから選択することができる。次いで、選択されたモデルを、最適化アルゴリズムにおいて用いて最適なプロセス設定値を計算する。
【0066】
1つの具体的態様において、新たな触媒をFCC装置に投入するシステム及び方法が提供される。一態様において、触媒をFCC装置に投入するシステムは、触媒をFCC装置に提供するための少なくとも一つの触媒投入装置、流動接触分解装置内の生成物流の組成に関する情報を提供するのに適した少なくとも一つのセンサー、及びセンサーによって提供される数値に応じて触媒投入システムによりなされる新たな触媒の追加を制御するためのセンサーに接続した制御装置を含む。
【0067】
もう一つの態様において、計測された量の触媒を、オレフィン生成量を最大化するように設計されたFCC装置に触媒投入システムから投入するための方法が提供され、その方法は、触媒投入システムへの触媒を流動接触分解装置に分配する工程、流動接触分解装置において産出物を感知する工程、及び少なくとも一つの感知された数値に応じて触媒分配量を自動調整する工程を含む。
【0068】
図1を参照すると、提案の接触分解法は、場合により種々の制御システム(“プロセス制御”)を備え得る。さらに、FCC法は、下記特徴の全部又は一部を備えており、必要と思われるときに説明する。
【0069】
FCC装置からの信号は、センサーと制御装置と操作者端末と作動装置の間で相互接続するネットワークを有するプロセス制御システムである分散型制御システム(“DCS”)に導かれる。DCSは、コンピューターを含み、他のシステムと相互接続する。
【0070】
モデル予測制御(“MPC”)は、例えば、蒸留のような工程が熱入力のような入力に対しどのように反応するかを予測することにより、標準フィードバック制御に改良を加える高度なプロセス制御方法である。これは、入力効果が数学的経験モデルから導かれるから、多かれ少なかれフィードバックに頼ることができることを意味する。フィードバックを利用してモデルの不正確性について修正することができる。制御装置は、設備テストを行って、動的システムの従属変数の未来の挙動を独立変数の過去の応答を基にして予測するにより得たプロセスの経験モデルに依拠する。しばしば、制御装置は、プロセスの線形モデルに依拠する。
【0071】
MPCソフトウェアの大きな供給者は、アスペンテック(AspenTech)(DMC+)、ハネウェル(Honeywell)(RMPCT)、シェル・グローバル・ソリューションズ(Shell Global Solutions)(SMOC)、カレル・ヴァン・ビラントラーン(Carel van Bylandtlaan)(23,2596HP;オランダ、ハーグ)等である。
【0072】
制御回路運転動作の監視(“CLMP”)。能力の監視は、(1)工業標準に対して流量制御能力のベンチマークテストを行い、(2)問題を確認し、優先順位をつけて保守情報源に焦点を当て、(3)オンライン及びオフライン記録で問題を分析、診断し、(4)規定の制御装置及び高度制御装置の両方について全セットのツールにより制御能力を改善し、(5)包括的な、自動化された記録について改善を監視し、維持することを包含する。例えば、マトリコン(Matrikon)社製プロセスドクター(ProcessDoctor;カナダ国、アルバータ州、エドモントン市、ジャスパー・アベニュー、10405番のマトリコン社により販売)、ハネウェル(Honeywell)社製プロフィット・エキスパート(Profit Expert;ニュージャージー州、モーリスタウン、コロンビアロード、101番地のハネウェル・インターナショナル・インクから販売)又は横河電機製MDダイアグノスチック(Diagnostic;日本国東京都武蔵野市の横河電機)、及びアスペンウォッチ(AspenWatch;マサチューセッツ州、ケンブリッジ、テン・カナル・パークのアスペン・テクノロジー・インク)は、そのような機能を提供する。
【0073】
操作条件の検出及びプロセスモデル選択(“SPM”)。このシステムは、プロセスにおいて流れ供給速度、原料組成、及び周囲温度のような操作条件を測定するセンサー信号を用いて、流れの操作を最も良く表すプロセスモデルを選択する。次いで、この選択されたプロセスモデルは、最適プロセス設定を計算する最適化のアルゴリズムにおいて用いられる。このツールは、マットラブ(Matlab)(マスワークス社(Mathworks Inc.)、マサチューセッツ州、ナチック、アップル・ドライブ 3番 01760−2098)、ビジュアル・ベーシック・コード(Visual Basic code)又は他のソフトウェア・プログラミング言語により発展させることができる。
【0074】
実時間最適化及び動的最適化(“RTO”)。工業的処理システムの最適化は、工程制御変数を調整して、コスト又は他の可能性のある結果を最小として最大のプロピレン収量を達成する反応条件を見つける一手段である。通常、多くの相容れない応答を同時に最適化しなければならない。系統的な手段がない場合には、最適化は、“試行錯誤”により、又は、一つの制御変数を変える一方他の変数を固定することにより行うことができる。そのような方法は、一般的に、真の最良点を見つけるには十分でない。通常、最適化技術は、厳密な方法モデルを発展させることを包含する。この数学的モデルは、化学及び熱力学の数式を含む。そのような機能を含む代表的ツールは、例えば、PAS社(米国テキサス州、ヒューストン、スペースセンタービル)のNOVAである。設備の操業データに対してモデルを有効化して、モデルが設備の動きを正確に表現していることを証明することができる。このモデルは、処理変数の変移時間をモデル化する意味で動的である。
【0075】
エネルギー管理技術(“PMS”)。PMSは、入手可能なエネルギー供給量に対してエネルギーの必要量をバランスさせ、操業の混乱又は停止すら防ぐ。さらに、PMSは、エネルギーコストをより良く制御することを可能にし、安全性を高め、環境破壊を減らすことを可能にする。ABB社(スイス国、チューリッヒ、アフォルテルンシュトラーセ CH−8050)は、このような技術の提供者の一つである。
【0076】
フィールドバス技術(“FFS”)。プロセス計装において用いられるフィールド信号は、既に標準化され、制御システムを可能にし、種々の供給者からのフィールドデバイスは、標準の4ないし20mAのアナログ信号を用いて相互に接続することができる。フィールドバス・ファンデーション(Fieldbus Foundation)(登録商標)により修正されたファンデーション・フィールドバス(FOUNDATION fieldbus)(登録商標)の標準は、標準化の次世代を構成し、次世代の要請に合うように設計されている。ファンデーション・フィールドバスは、従来のフィールド・ネットワークにおける4ないし20mAのアナログ信号を用いる入手可能なものと同等の相互接続性を備えていることに加えて、種々のタイプの情報の相互伝達を可能にし、自己診断及び制御機能を含む知的機能のフィールドにおいて分散を可能にする。焦点は、フィールド信号に加えて種々のタイプの情報を転送する能力及び分散型フィールドデバイスに情報を分散させる能力にある。これらの特徴は、フィールドコミュニケーションを用いる設備の資材管理ばかりでなく、遠隔監視、実時間自己診断、及びフィールドデバイスの原因除去型保全(プロアクティブ・メンテナンス)を可能にする。このことは、操作の装備システムコストを大きく減額する。エマーソン社(Emerson Corporate;ミズーリ州、セントルイス、ウエストフロリサント・アベニュー、P.O.Box4100,8000)は、これらの技術の代表的な供給者である。
【0077】
FCC装置の収益とコストの計算(“FUPEC”)は、例えば、FCCの水蒸気、触媒、電力及び製品コストのような種々の工程データを用いて監視及び/又は計算され、FCC装置により得られる生成物の単位当りのコスト(ドル)を実時間監視することができる計算を含む。
【0078】
ある態様において、必要に応じて工程を自動監視・調整することができる。提案される高過酷度流動接触分解転化工程の能力の監視は、(a)流れ制御性能を所望の標準に対してベンチマークテストし;(b)オンラインでの監視及び制御について問題点を解析・診断し;(c)高度制御装置の全セット及びツールについて制御性能を改良し;(d)監視により、包括的、自動化された記録についての改善点を維持するように監視し;及び(e)触媒投入のスケジュール及びその他の工程変数を監視したり、手動で変更したりといった人への依存性を減らす一方、複数の感知装置を用いて遠隔監視し、システム産出物に対し触媒投入及び他の操作条件に関して調整するツールを提供することができる。そのようなシステムは、前記したような多くの一般供給者により、FCC装置として組み立てることができる。ある態様において、監視システムは、FCCの至る所に配置されことのできるセンサーを含み、原料及び製品の物性及び反応状態を監視することができる。ある態様においては、センサーは、装置への配線を通してDCS制御システムと接続できる。他の態様においては、センサーは、ワイヤレス又はRFID接続手段を通してDCS制御システムと接続するように設置できる。このように、図3に示されているように、DCS装置は、FCC装置に存在する流量制御バルブ又はセンサーと接続されているように示されていないけれども、DCSは、動作するようにFCC装置に接続されていると理解される。
【0079】
図2を参照すると、流動接触分解(“FCC”)装置の一例の一般的模式図が示されている。ある態様において、流動接触分解触媒装置は、上向流型反応域を含むことができる。
【0080】
本明細書に説明されるFCC法は、図3及び図4に例示されたように、単一の分離−ストリップ槽と、大孔径及び中孔径、両方の大きさの孔を含む、形状選択性ゼオライト成分からなる分解触媒とに対して上向流型反応装置を用いて、プロピレンを含む軽質オレフィンの生産量を増大させることができる。
【0081】
図3は、プロピレン生成を最適化する目的でDCSシステム(“プロセス制御”)と一体化することができるFCC装置の例示的な操作を示す。DCSシステムと一体化されたFCC装置の操作を以下に記載する。
【0082】
ガスオイル、又は、例えば、ナフサ又は炭化水素油のような液状原料は、ライン10を通して混合域7に装入することができる。図3及び図4に示されるプロセス制御(DCS)30は、FCC装置と一体化され、プロセス制御モデルを発展することができる。ライン10を流れる原料は、DCS30及び流量制御バルブ40により監視され、制御される。このことは、例えば、バルブの開口、圧力及び温度のようなプロセスの制限を重視する場合、かつ、FCCの生成物の設定に合わせる場合には、制御及び最適化の計画によって、この流れの設定値を変更して、FCC装置により多くの原料を送ることを意味する。原料10は、ライン17を経て、触媒ホッパー6から混合域7へ供給される再生触媒と混合される。混合域7への触媒の投入量は、流量制御バルブ41を用いて制御される。ライン17及び流量制御バルブ41を通る触媒の流量は、(a)エネルギーコスト及び触媒コストを最少にし、(b)FCCの生成物の質を改良し、かつ、(c)単位処理量を増大させるように、設計された最適化計画、及び発展させたFCC装置のプロセスモデルを用いて最適化することができる。
【0083】
プロセスモデルは、実際の設備での実験及び試験ばかりでなく、操業データを用いて発展させることができる。このモデルは、人為処理変数(操作者が操作中に変更できる変数)と、制御変数(人為処理変数の変更に基づいて変化する工程変数)との間での数学的関係を利用する。
【0084】
混合物は、反応域1を降下し、そこでは、高い反応温度と短い接触時間で炭化水素油の分解反応が起こる。次いで、反応域1から来る、消費済み触媒、未反応原料及び生成物の混合物は、反応域1の下方に配置された気固分離域2に入る。ある態様において、気固分離域2は、サイクロン型の装置とすることができる。消費済み触媒は、気固分離域2において、分解生成物及び未反応原料油から分離される。次いで、その触媒を、ディップレッグ9を介してストリップ域3に送ることができる。殆どの消費済み触媒から分離された炭化水素ガスを、ライン26を介して第二分離装置に送ることができ、そこで、消費済み触媒の残りを、生成ガスから分離することができる。次いで、炭化水素ガスは、生成物回収区域に送ることができる。
【0085】
ある態様において、サイクロンは、第二分離装置8として使用するのに好ましい。第二分離装置8により分離された触媒は、ライン23を介してストリップ域3に送られる。そこで、触媒上に吸着された重質の炭化水素は、ライン11を介してストリップ域に導入されるストリップガスにより除去される。ストリップガスの流れは、流量制御バルブ42により制御される。ライン11を通るストリップガスの流れは、制御計画の中で制御され、最適化されて、(a)触媒の不活性化と相関するエネルギー及び触媒コストの最小化、(b)FCC生成物の品質の改良、及び(c)単位処理量の増大を達成することが可能になる。
【0086】
ボイラーで得られた水蒸気、又は窒素のような不活性ガスは、加圧装置で加圧され、ストリップガスとして使用できる。ストリップ域において使用される水蒸気又は不活性ガスは、プロセスモデルを用いて計算された最適化値にまで加圧又は加熱され、(a)エネルギー及び触媒コストを最小化し、(b)FCC生成物品質を改良し、(c)単位処理量を増大することができる。
【0087】
ストリップの条件について、ある態様においては、500℃〜640℃のストリップ温度、1〜10分の触媒滞留時間が好ましい。ストリップ温度及び滞留時間は、プロセスモデルを用いて制御、最適化され、(a)エネルギー及び触媒コストの最小化、(b)FCC生成物品質の改良、(c)単位処理量の増大、を達成することができる。
【0088】
分解生成物及び未反応原料油の蒸気は、ストリップ域3において消費済み触媒からストリップされ、ストリップ域の頂部に配置されたライン12を介して取り出される。次いで、これらのガスは、生成物回収区域(図示せず)に送られるか、又は代わりに、ライン12を介して第二分離装置8に送られる。流量制御バルブ43は、ライン12内のガスの流れを制御する。
【0089】
ストリップされた消費済み触媒は、ライン22により典型的レベル制御装置を介して再生域4に移される。再生域4への流れは、流量制御バルブ44により制御できる。新しい触媒は、流量制御バルブ(図示せず)を含むことのできるライン13を介してシステムに投入できる。流れ制御装置は、制御され、最適化されて、(a)エネルギー及び触媒コストを最小化し、(b)FCC生成物品質を改良し、(c)単位処理量を増大することができる。
【0090】
ストリップ域3における見掛けガス速度は、ストリップ域の流動床を気泡相に維持するために、0.05〜0.4m/sの範囲内に維持することができる。ガス速度は気泡相内では比較的低いから、ストリップガスの消費を最小化することができる。さらに、ライン13の操作圧力の範囲は、気泡相の状態の間、床の密度が大きいから、広くすることができる。それ故、ストリップ域3から再生域4への触媒粒子の移動を容易にすることができる。ストリップ域3において、孔あきトレー又はその他の中間構造体を使用して、ストリップガスと触媒との間のストリップ効率を改善することができる。再生域4は、頂部で垂直のライン5(上向流型再生装置)に接続された円錐型カラムから構成される。消費済み触媒は、ライン14を通して再生域4に供給できる燃焼ガス(典型的には、空気のような酸素含有ガス)で再生される。
【0091】
再生は、分解反応で得られた炭素質物質(コークス)及び消費済み触媒上に付着した重質炭化水素を、流動状態で、部分又は完全燃焼することにより達成される。
【0092】
再生域4における触媒滞留時間は、1〜5分の範囲とすることができ、また、見掛けガス速度は、0.4〜1.2m/sの範囲であることが好ましい。自動化技術で用いられる制御・最適化計画は、触媒対流時間及び見掛けガス速度について最良の値を算出するのに用いることができる。これは、(a)エネルギー及び触媒コストの最小化、(b)プロピレン生成物品質の最良化、及び(c)単位処理量の増加、を達成するために、試験し、滞留時間及び見掛けガス速度の最適値を検出する、FCC装置の操作データ又はFCCプロセスから得られたデータを分析することによってなされ得る。
【0093】
再生域4において消費済み触媒の再生後、乱流相の流動床の上部にある再生触媒は、上向流型再生装置5に移される。上向流型再生装置5からの再生触媒は、上向流型再生装置の頂部に位置する触媒ホッパー6に運ばれる。触媒ホッパーは、気固分離装置として機能し、そこでは、コークスの燃焼による副生成物を含む排ガスを、再生触媒から分離し、ライン25を経て第二分離装置15を通して除去できる。ライン25は、流量制御バルブ46を含むことができる。第二分離装置は、ライン27を介して供給される。触媒は、ライン24を介して第二分離装置15から触媒ホッパー6に戻される。ある態様においては、第二分離装置15は、サイクロンであってよい。
【0094】
触媒ホッパー内の触媒の一部を、流量制御バルブ45を備えたバイパスライン16を通して再生域4に戻すことができる。この流量制御装置は、制御・最適化を受けて、(a)エネルギー及び触媒コストの最小化、(b)FCC生成物品質の改良、(c)単位処理量の増大を達成することができる。
【0095】
FCC生成物の一部は、ライン19及び/又はライン12から採取され、流量制御バルブ47を備えることができるバイパスライン20を介して混合域7に戻されることができる。ライン20及び流れ制御装置47により再循環された生成物は、制御・最適化を受けて、(a)エネルギー及び触媒コストの最小化、(b)FCC生成物品質の改良、(c)単位処理量の増大を達成することができる。
【0096】
上記のように、FCC触媒は、装置内で、反応域1、気固分離域2、ストリップ域3、再生域4、上向流型再生装置5、触媒ホッパー6、及び混合域7を循環する。
【0097】
もう一つ別の態様は、触媒を、触媒投入システムから、オレフィン生成量を最大にするように設計されたFCC装置に投入する方法を含む。その方法は、触媒投入システムのための触媒を流動接触分解装置に投入し、流動接触分解装置内の出力を感知し、触媒投入量を、少なくとも一つの感知した応答18に対応して自動的に調整し、決まった最適化手順だけでなく、前以て発展させたプロセスモデルを用いて、(a)エネルギー及び触媒コストの最小化、(b)FCC生成物品質の最良化、及び(c)単位処理量の増大、を達成する工程を含む。
【0098】
さらに、一つ以上のセンサーを、触媒の監視をするライン上に置いて、反応温度、反応圧力、流速、触媒粒子径、流れの化学組成、再生域温度及び圧力を含むがそれらに限定されない種々の所望の反応条件及び物性のオンライン測定を提供することができる。センサーは、所望の反応条件及び物性を得るのに、FCCシステム全体に、必要に応じて有効に設置することができると理解される。例えば、粒子径を他の工程変数とリンクさせる工程モデルを発展させるのに、センサーを制御計画に有効にリンクさせることができる。オレフィン生成を最適化するために、種々の物性に関して生じた信号を用いて、触媒及びストリップガスの投与量を最適化することができる。
【0099】
炭化水素油、減圧ガスオイル又はナフサのような、予熱された原料を、ライン01を介して混合域7に投入することができ、これは、バルブ入口40により制御される。この入口を通過する原料の流量は、制御変数である。制御及び最適化計画は、バルブ開口、圧力及び温度範囲のようなプロセスの制限に注意を払い、かつ、FCC生成物の仕様に合わせる限り、この流れの目標値を変えて、FCC装置へのより多く供給することを許すことになろう。この原料10は、混合域7において、触媒ホッパー6からの再生触媒と混合することができる。混合域7への触媒投入量は、流れ制御装置17を用いて制御することができる。触媒の流れは、(a)エネルギー及び触媒コストを最小化し、(b)FCC生成物品質を改良し、(c)単位処理量を増大化するように、設計された最適化計画、及び発展させたFCC装置のプロセスモデルを用いて、最適化することができる。
【0100】
高度プロセス制御のもう一つの利点に着目すると、それは、種々の操作条件下での出力を監視する技術が通常の操作のいわゆる“指紋”を残すことである。次いで、本システムは、指紋からの変位を検出することができ、指紋のデータベースは、装置に起こっていることを予想するのに作成し、使用することができる。履歴データは、テストに使用でき、予想システムは、FCC装置の潜在的な装置欠陥の早期警報ができる。このアプローチは、問題点が従来の監視方法を用いて明らかになったよりも早く問題点を検出することができる。
【実施例】
【0101】
本高度プロセス制御・監視法を用いる利点を証明するために比較例を以下に説明する。追試システム及びデータは、2002年12月26日に公開された米国特許出願公開No.US2002/0195373A1、(その内容は、本明細書において、従来技術事例Aとして参照される。)に記載され、本高度プロセス制御・監視のツールなしで使用された。引用された追試の条件及び結果は、下記の通りである。
原料: ハイドロ脱硫アラビアンライト減圧ガスオイル
触媒: HARMOREX(CCIC)
反応域温度: 600℃
反応圧力: 1.0Kg/cm
触媒対油比: 15.5重量/重量
接触時間: 0.4秒
再生域触媒温度: 720℃
事例Aの結果:
転化率(重量%):95.6%
収率(重量%):
乾性ガス 4.1
プロピレン 18.2
ブテン 22.5
ガソリン 42.5
LCO+ 4.4
コークス 1.0
【0102】
上記特許出願に記載された、本高度プロセス制御・監視法を用いない事例Bが行われた。事例Bは、事例Aとは以下の点で異なる。
反応域出口温度: 600℃
水素分圧: 65Kg/cm
触媒/油比: 14.9重量/重量
事例Bの結果:
転化率: 86.3%(比較例2)
収率(重量%):
乾性ガス 3.8
プロピレン 11.3
ブテン 15.0
ガソリン 48.7
LCO+ 13.7
コークス 2.7
【0103】
事例Cは、本明細書に記載された教示に従って行われ、本高度プロセス制御・監視ツールを含む。
【0104】
事例Cの結果:
転化率(重量%) 97.6(APCでの例)
収率(重量%):
乾性ガス 4.2
プロピレン 18.7
ブテン 22.95
ガソリン 41.65
LCO+ 4.3
コークス 0.98
【0105】
事例Cに示したように、自動化監視ツールを用いる利点は、以下を含むが、限定されない。事例A及び事例Bにおいて知ることができるように、転化率は、86.3%から95.6%に変化し、プロピレン収率は、11.3から18.7までの範囲であった。これは、操作条件、主として、触媒/油比及び反応温度を変えることにより、転化率でほぼ11%変化し、プロピレン収率でほぼ65%変化したことを示す。これは、本発明が提案するオンライン監視及び高度制御計画を用いることによる高い改良性能を示す。
【0106】
単位処理量の少なくとも3%の増加及び生成物の質の変動可能性の少なくとも10%の減少は、高度制御により達成された利点の一部に過ぎない。
【0107】
上記例は、本高度プロセス制御の利点と共に、プロピレンの所望の生成物収率だけでなく、エネルギー投入を最低にしつつ転化率までも最適化すことができることを示している。この特定の例において、高度制御・監視ツールは、収率を約2%増加させ、工程処理量を増加させ、生産の変動可能性を10%だけ減少させ、かつエネルギーを基準例から3%減少させた。
【0108】
特定の一側面において、石油の流動接触分解方法が提供される。この方法は、(a)0.6重量%未満の希土類金属酸化物を有する安定Y型ゼオライトを含む55〜95重量%の基本分解触媒、及び形状選択性ゼオライトを含む5〜40%の添加物、及びオレフィン選択性ゼオライトの全量に基づいてPとして計算して約10%の外部で活性化されたリン含有物質と共に維持する工程、(b)該混合物を、再生域、分離域及びストリップ域を有する下向流型流動接触分解装置において、500℃〜650℃で、0.05〜1.2秒の時間反応させる工程、(c)プロセス制御により、新しい触媒の投入を制御する工程、(d)生成物流の一部を分離する工程、及び原料流に混ざった未転化物質の一部を再循環する工程、(e)原料と生成物の物性のデータ及び操作条件をオンラインで連続的に監視する工程、(f)工程(e)において得られた観察結果に基づいてプロセスモデルを発展させる工程、(g)工程の性能をモデルの予測値と比較する工程、(h)工程(g)のモデルを用いてプロピレンの収率を最適化するように操作条件を調整する工程、からなる。
【0109】
本発明のさらなる特徴は、反応域出口温度を500℃より高くできることである。もう一つ別の特徴は、反応域における炭化水素の接触時間を0.05〜1.5秒の範囲にすることができることである。追加の特徴は、原料の組成、生成物の組成及び操作条件を監視し、それを利用してプロピレンの収率を最大化するのに使用できるプロセスモデルを発展させることができることである。なおさらなる特徴は、流動接触分解装置を10〜42重量/重量の触媒/油比で操作できることである。さらなる特徴は、基本分解触媒中の希土類金属酸化物の含有量を0.6重量%未満とすることができることである。もう一つ別の特徴は、基本分解触媒中の希土類金属酸化物の含有量を0.08重量%未満とすることができることである。追加の特徴は、基本分解触媒中のゼオライト含有量を5〜55重量%の範囲とすることができ、ZSM−5が添加物であることである。なおさらなる特徴は、石油が、ナフサ、原油、脱瀝油、減圧ガスオイル、ガスオイル、石油残油、対応の水素化処理物及びそれらの混合物からなる群から選択された油を含むことができることである。
【0110】
もう一つの側面において、少なくとも一つの軽質オレフィン生成物を製造する方法が提供される。この方法は、(a)炭化水素混合物を525℃超の温度及び1〜5気圧の圧力で接触する工程、(b)0.5〜10重量%のリンを含むZSM−5ゼオライト触媒からなる分解触媒と0.1〜10重量%の促進剤金属とを混合する工程、(c)オンライン反応装置条件を、プロピレン生成を最適化するように設計されたプロセス制御装置により管理維持する工程、を含む。
【0111】
本発明のさらなる特徴は、複数の感知装置が原料及び生成物の収率、組成をオンラインで分析できることである。もう一つ別の特徴は、最良の処理条件をプロセスモデルと最適化ルーチンにより決定できることである。
【0112】
さらなる側面において、石油がナフサからなる石油接触分解法が提供される。この方法は、(a)石油を分解触媒混合物と接触させる工程、(b)工程(a)で生じた混合物を、再生域、分離域及びストリップ域を有する流動接触分解装置において、525℃〜650℃の範囲の温度、10〜42重量/重量の範囲の触媒/油比、そして0.05〜1.2秒の反応域における炭化水素の接触時間で反応させる工程、(c)混合物中への新しい触媒の供給速度、及び操作工程条件のデータばかりでなく原料及び生成物の物性のデータを監視する工程、(d)これらのデータを用いて、プロセスモデル及び種々の操作管理形態に対する制御された最適化ルーチンを修正する工程、(e)最少の運転コストでプロピレン生成の収率を最大にすることを目的に、プロセス履歴データにより該モデルを調整・修正する工程、(f)原料と混合されたより低分子のナフサ分解物質の少なくとも一部を分離、回収、及び再循環する工程であって、最少の運転コストでプロピレン生成の収率を最大にすることを目的に、ナフサを接触分解して追加のプロピレンからなる生成物とする、工程、を含む。
【0113】
本方法のさらなる特徴は、原料組成、生成物組成及び操作条件を監視し、利用して、プロピレンの収率を最大にすることができる統計的モデルを発展させることができることである。もう一つ別の特徴は、(f)における未転化物の再循環の程度が(d)におけるプロセスモデルにより推定できることである。
【0114】
なおもう一つの側面において、石油が重質油からなる石油流動接触分解方法が提供される。この方法は、(a)石油を、安定Y型ゼオライト及び希土類金属酸化物を含む基本分解触媒と形状選択性ゼオライトとからなる触媒混合物と接触する工程、(b)該混合物を、再生域、分離域及びストリップ域を有する流動接触分解装置において接触する工程、(c)該混合物を、反応域出口温度が500℃〜650℃の範囲にある条件下で加熱する工程、(d)、操作条件の関数としての触媒供給速度、原料油及び生成物の収率及び物性のデータをオンラインで遠隔に監視する工程であって、そのデータを用いて種々の操作管理形態に対するプロセス制御モデルを修正する工程、(e)プロセス試験から得られるデータの利用により該モデルを修正する工程であって、最小の運転コストでプロピレン生成物の収率を最大化する目的をもって、通常からは逸脱したプロセス条件を含む該プロセス試験が生じるプロセスデータを修正する、工程、(f)後に接触分解され、追加のプロピレンを含む生成物になる原料と混合された未分解物質の少なくとも一部を分離、回収、及び再循環する工程、及び(g)少なくとも一つの触媒投入装置及び流動接触分解装置において生成したプロピレン生成物流の組成を測定するのに適した少なくとも一つのセンサー、及び、センサーにより得られた応答で、かつFCCの生成物品質及び処理量を増加しつつ、プロセスモデルを利用し、エネルギー及び触媒コストの最小化を達成する最適化ルーチンからの計算を利用する、センサーに接続された触媒投入システムを制御するための制御装置を含む、触媒を投入するためのシステムを本プロセスに提供する工程、を含む。
【0115】
なおもう一つ別の側面において、重質留分油の接触分解法が提供される。この方法は、該油を、安定Y型ゼオライトと0.5重量%の希土類金属酸化物とからなる基本分解触媒60〜95重量%と、形状選択性ゼオライトを含む添加物5〜40重量%との触媒混合物と接触させる工程を含み、この接触工程は、再生域、下向流型反応域、分離域及びストリップ域を有する流動接触分解装置内において、反応域出口温度が580℃〜630℃の範囲にあり、触媒/油比が10〜45重量/重量の範囲にあり、反応域内の炭化水素の接触時間が0.1〜1.5秒の範囲にある条件下で行われ、この場合、操作処理条件の機能としての新しい触媒の供給速度、及び原料油速度及び生成物の物性データを遠隔でオンライン監視し、得られた結果を用いて種々の操作管理形態に対応する種々のプロセスモデルを展開する。この方法は、(a)最少の運転コストでプロピレン生成の収率を最大にすることを目的にプロセス試験により該モデルを実証する工程、(b)後に接触分解され、追加のプロピレンを含む生成物になる原料と混合された未転化物質の少なくとも一部を分離、回収、及び再循環する工程、(c)そこで再循環を、該プロセスモデルにより最適化し、及び(d)少なくとも一つの触媒投入装置、流動接触分解装置において生じたオレフィン流の組成を測定するのに適した少なくとも一つのセンサー、及び最少の運転コストでプロピレン生成の収率を最大にする目的で、センサーにより得た数値に応じて触媒投入装置により行う添加を制御するための、センサーに接続する制御装置を含む新しい触媒を投入するためのシステムを本プロセスに提供する工程、を含む。
【0116】
本方法のさらなる特徴は、重質留分油が、重質原油、脱瀝油、減圧ガスオイル、石油残油、及び対応の水素化処理物、及びそれらの混合物からなる群から選ばれる油を含むことができることである。
【0117】
さらなる側面において、石油のガスオイル又は重質油からなる石油を流動接触分解する方法が提供される。この方法は、(a)安定Y型ゼオライト及び希土類金属酸化物を含む基本分解触媒と、形状選択性ゼオライトを含む添加物とからなる触媒混合物に上記油を接触させる工程、(b)接触させる混合物を、再生域、分離域及びストリップ域を有する流動接触分解装置に導入する工程、(c)混合物を、反応域出口温度が500℃〜650℃の範囲にある条件下で分解する工程、(d)操作処理条件の関数として原料速度、原料及び生成物の物性データをオンライン実時間で遠隔監視する工程、及び得られたデータを、種々の操作管理形態に対する統計的プロセスモデルを展開するために使用する工程、そして(e)最少の運転コストでプロピレン生成の収率を最大化する目的でもって履歴処理データを修正する工程、を含む。
【0118】
本方法のさらなる特徴は、未転化分解物質の少なくとも一部を再循環して、最終的に接触分解して追加のプロピレンからなる生成物にすることができることである。本方法のもう一つの特徴は、本プロセスに触媒を投入するシステムを提供し得ることであり、該システムは触媒投入装置及び少なくとも一つのセンサーを備え、該センサーは生成物流の組成の指標を提供するのに適合し、該生成物流は接触分解装置にて生成され、及び、該センサーに接続したプロセスモデルを提供し得ることであり、最適化プロセスモデルにより提供される応答に応じて、触媒投入装置によりなされる添加を制御するためである。本方法のさらなる特徴は、石油が、ナフサ、原油、脱瀝油、減圧ガスオイル、石油残油、及び対応の水素化処理生成物、及びそれらの混合物から選ばれる油を含むことができる。
【0119】
もう一つの側面において、本発明は、重質留分油の流動接触分解法に関する。本方法は、(a)重質留分油を下向流反応域入口に供給する工程であって、重質留分油を再生触媒に接触させ、0.1〜3.0秒の接触時間、500℃超の反応出口温度、及び10〜50重量/重量の触媒/油比の条件で接触分解を行って分解生物、未反応物質及び消費済み触媒の混合物を得、この混合物から消費済み触媒を分離し、ストリップ域において触媒から炭化水素をストリップし、再生域において再生触媒を得、そして、反応域入口に再生触媒を再循環する工程、(b)反応域出口温度が500℃〜650℃の範囲にある条件で該混合物を分解する工程、(c)操作処理条件の関数としての供給速度、原料及び生成物の物性を、実時間で遠隔オンライン監視し、得られたデータを、種々の操作管理形態に対してプロセスモデルを展開するために使用する工程、(d)最少の運転コストでプロピレン生成の収率を最大化することを目的として履歴処理データを使用することにより修正し、(e)最終的に接触分解され、追加のプロピレンを含む生成物になる原料と混合された未転化分解物質の少なくとも一部を再循環する工程、(f)本プロセスに触媒を投入するためのシステムを提供する工程で、該システムは少なくとも一つの触媒投入装置、及び接触触媒装置内に発生した生成物流の組成を提供するのに適合した少なくとも一つのセンサー、及び該センサーにより提供された数値に応じて新しい触媒の投入システムを制御するための、該センサーに接続した制御装置、を備えた、工程、を含み、本方法では、触媒添加の流量制御バルブの開放を、プロピレン生成の最適化のためのDCS制御回路において計算された信号により決定する。
【0120】
本方法のさらなる特徴は、石油が、ナフサ、原油、脱瀝油、減圧ガスオイル、石油残油、及び対応の水素化処理された生成物、及びそれらの混合物からなる群から選ばれる油を含むことができることである。
【0121】
なおさらに別の側面においては、重質油の流動接触分解法が提供される。本方法は、(a)重質留分油を下向流反応域入口に供給する工程で、重質留分油を再生触媒と接触させ、0.1〜3.0秒の接触時間、500℃超の反応域出口温度、及び10〜50重量/重量の触媒/油比である条件で接触分解を行って分解生成物、未反応物質及び消費済み触媒の混合物を得、消費済み触媒を混合物から分離し、ストリップ域において触媒から炭化水素をストリップし、再生域において再生触媒を得、再生触媒を反応域入口に再循環する、工程、(b)反応域出口温度が500℃〜650℃の範囲にある条件で混合物を分解する工程、(c)操作処理条件の関数としての供給速度、原料及び生成物の物性を、実時間で遠隔オンライン監視し、及び得られたデータを、種々の操作管理形態に対してプロセスモデルを展開するために使用する工程、(d)最少の運転コストでプロピレン生成の収率を最大化することを目的として履歴処理データ及び設備テストを使用することにより修正する工程、(e)最終的に接触分解され、追加のプロピレンを含む生成物になる原料と混合された未転化分解物質の少なくとも一部を再循環する工程、(f)本プロセスに触媒を投入するためのシステムを提供する工程で、該システムは少なくとも一つの触媒投入装置、及び接触触媒装置内に生成した生成物流の組成の指標を提供するのに適合した少なくとも一つのセンサー、及び該センサーにより提供された数値に応じて触媒投入システムを制御するための、該センサーに接続した制御装置、を備えた、工程、及び、(g)高度制御計画及びFCCU生成物を分析するのに使用するオンラインセンサーを使用することによりオレフィンに品質及び原料流を最大化するために流動分解工程変数を最適化する工程、を含み、本高度制御は、プロセスモデル及び、原料の単位コスト、中間生成物、水蒸気単位コスト、触媒コスト及びその他の運転コストに関わるパラメーターを含む経済的変数ばかりでなく、一つ以上の感知された変数、作動装置の位置をも利用する。
【0122】
本方法のさらなる特徴は、石油が、ナフサ、原油、脱瀝油、減圧ガスオイル、石油残油及び対応する水素化処理された生成物、及びそれらの混合物からなる群から選ばれる油を含むことができることである。本方法のもう一つの特徴は、粒子径センサーを設けてFCC消費済み触媒の大きさをオンラインで監視し、オンライン測定を行い、信号を制御計画と連携させて、この粒子径を他の工程変数と関連付けたプロセスモデルを展開することである。本方法のさらなる特徴は、オレフィンの生成を最適化するために、粒子径の信号を用いて触媒とストリッピングガスの使用量を最適化することができることである。
【0123】
本発明を特定の組成、効果の理論等々に関して説明してきたが、本発明は、そのような具体的な態様又はメカニズムによって限定されるものでないこと、また、添付の特許請求の範囲に記載したように、本発明の範囲又は精神から逸脱することなく修正が可能であることは、当業者にとって明白である。そのような自明の修正及び変更は、添付の特許請求の範囲に明示された本発明の範囲内に含まれることが意図される。特許請求の範囲は、特に文脈が逆の意味を示さない限り、そこで意図された目的に合致するように働くいかなる道筋でも特許請求の範囲に開示された成分及び工程をカバーすることを意味する。本明細書に示された特定の方法の例は、主として例示であると考えるべきである。記載された事項を超える種々の変更は、疑いもなく当業者にとって起こるであろう。そのような変更は、特許請求の範囲及び精神内に入る限り、本発明の一部を構成するものとして理解すべきである。
【符号の説明】
【0124】
1 反応域、
2 気固分離域、
3 ストリップ域、
4 再生域、
5 ライン(上向流型再生装置)、
6 触媒ホッパー、
7 混合域、
8 第二分離装置、
9 ディップレッグ、
10 ライン(原料)、
11、12、13、14 ライン、
15 第二分離装置、
16 バイパスライン、
17、19 ライン、
20 バイパスライン、
22、23、24、25、26、27 ライン、
30 プロセス制御(DSC)、
40 制御バルブ(バルブ入口)、
41、42、43、44、45、46、47 流量制御バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石油供給原料の流動接触分解方法であって、
(A)石油供給原料を分解触媒混合物と接触させる工程であって、
該分解触媒混合物は
(i)安定Y型ゼオライトと0.6重量%未満の希土類金属酸化物とを含む基本分解触媒55〜95重量%、
(ii)形状選択性ゼオライト5〜45重量%、及び
(iii)リン含有化合物10重量%以下
を含む工程、
(B)500℃〜650℃の温度、約0.05〜3.0秒の接触時間に維持した流動接触分解装置の反応域において、該分解触媒混合物と供給原料油とを反応させ、生成物流、未反応供給原料油及び消費済み触媒の混合物を得る工程であって、
該反応域への供給原料油及び触媒の添加は、プロセス制御により制御される工程、
及び
(C)消費済み触媒及び未反応供給原料油から、生成物流を分離及び収集する工程、
を含む方法であって、
該プロセス制御が
(a)原料データ、生成物物性データ及び操作条件を連続監視するステップ、
(b)監視された原料データ、生成物物性データ及び操作条件に基づいて、プロセスモデルを発展させるステップ、
(c)プロセス性能を該プロセスモデルと比較するステップ、及び
(d)最適化されたプロピレン生成が得られるように操作条件を調整するステップ
を含む
方法。
【請求項2】
流動接触分解装置が下向流型流動接触分解反応装置である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
流動接触分解装置が、さらに、再生域、分離域及びストリップ域を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
分離域がサイクロン分離装置を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
流動接触分解装置が、さらに、分離域に結合した第二分離装置を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
流動接触分解装置が、さらに、新しい触媒を反応域に供給するための触媒ホッパーを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
さらに、未反応供給原料油を反応域に再循環する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
さらに、再生域において消費済み触媒を再生する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
生成物流の少なくとも一部を反応域に再循環する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
反応域出口温度が500℃よりも高い、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
反応域における触媒と石油供給原料との接触時間が0.1〜1.5秒である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
反応域における触媒と石油供給原料との接触時間が0.2〜0.9秒である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
供給原料の組成、生成物の組成及び操作条件を監視し、利用して、プロセスモデルを発展することができ、その後それをプロピレンの収率を最大化するのに用いる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
流動接触分解装置における触媒/油比が10〜50重量/重量である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
基本分解触媒の希土類金属酸化物含有量が0.08重量%未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
添加物がZSM−5である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
石油供給原料が、ナフサ、原油、脱瀝油、減圧ガスオイル、ガスオイル、石油残油、水素化処理石油製品、及びそれらの混合物からなる群から選ばれる油からなる群から選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
分解触媒混合物と供給原料油との反応が1〜5気圧で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
基本分解触媒が促進剤金属を0.1〜10重量%含む、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−509329(P2010−509329A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−536277(P2009−536277)
【出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【国際出願番号】PCT/US2007/023405
【国際公開番号】WO2008/057546
【国際公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(506018363)サウジ アラビアン オイル カンパニー (11)
【Fターム(参考)】