説明

石油樹脂製造用ルイス酸性固体酸触媒の製造方法

【課題】 触媒相、未反応原料相、及び精製した重合体との分離が容易でかつ、触媒のリサイクルが容易、また、フッ素及び/又は塩素の含有量が極めて少ない石油樹脂を製造することが可能となる石油樹脂製造用ルイス酸性固体酸触媒の製造方法を提供する。
【解決手段】 錫、ガリウム、鉄、ハフニウム、アルミニウム、ジルコニウム、チタンからなる群より選択される少なくとも1種類の元素の塩又はアルコキサイドをケイ素からなる担体に担持し、塩基性物質と接触した後、焼成することにより複合酸化物とする石油樹脂製造用ルイス酸性固体酸触媒の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は石油樹脂製造用ルイス酸性固体酸触媒の製造方法に関するものであり、特に錫、ガリウム、鉄、ハフニウム、アルミニウム、ジルコニウム、チタンから選択される元素の塩又はアルコキサイドをケイ素からなる担体に担持し、塩基性物質と接触した後、焼成し複合酸化物とすることにより、フッ素、塩素の含有量の少ない石油樹脂を効率的に製造することが可能となる石油樹脂製造用ルイス酸性固体酸触媒の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
石油樹脂としては、石油類の分解により得られる沸点範囲20〜110℃のC5留分を重合して得られる脂肪族系石油樹脂、沸点範囲140〜280℃のC9留分を重合して得られる芳香族系石油樹脂、該C5留分と該C9留分とを共重合して得られる脂肪族/芳香族共重合石油樹脂、ジシクロペンタジエン類を単独または該C5留分や該C9留分とを共重合して得られるジシクロペンタジエン系石油樹脂等が知られている。
【0003】
このような石油樹脂は、一般的にはルイス酸である三弗化硼素(BF)、三弗化硼素の錯体、三塩化アルミニウム(AlCl)、塩化アルキルアルミニウムなどのフリーデルクラフツ重合触媒を用い、カチオン重合により製造される。この際、これらの触媒は重合後に反応液中に触媒が均一に溶解しているため、塩基である水酸化ナトリウムや水酸化カルシウム、アンモニアなどで触媒を失活させ、反応系中から触媒を除去した後に石油樹脂を回収する方法により製造されている。例えば、三弗化硼素錯体を用いて重合させた場合、反応後の有機相に水酸化ナトリウム水溶液を加えて触媒を中和反応で水溶性の塩に変更させて触媒を除去し、有機相から溶媒成分を留去し石油樹脂を単離・回収する方法。また、塩化アルミニウムを用いた場合、重合後にメタノールと28%アンモニア水を添加して塩化アルミニウムを分解し、発生する触媒粒子はろ過除去して、ろ液から溶媒成分を蒸発させて石油樹脂を回収する方法、が行われている。
【0004】
これら従来の方法では触媒除去の工程が必要になり、しかも触媒はリサイクルできず廃棄物(廃触媒)が発生することが課題となる。また、製品である石油樹脂中に触媒残渣としてフッ素や塩素を数十ppm含有し、これらフッ素、塩素は用途によっては腐食や被毒物質として作用することから新たな課題を発生する場合もある。
【0005】
そこで、固体酸触媒を用い石油樹脂を製造する方法が検討され、例えばクレー、シリカ−アルミナ、非晶質シリカ−アルミナ、シリカ、ゼオライト、メソ多孔質シリカ−アルミナ上のブレンステッド酸を触媒として用い石油樹脂を製造する方法(例えば特許文献1参照。)、フッ化固体酸を触媒として用い石油樹脂を製造する方法(例えば特許文献2参照。)、ヘテロポリ酸を触媒として用い石油樹脂を製造する方法(例えば特許文献3参照。)、金属ハライドを固体酸として用い石油樹脂を製造する方法(例えば特許文献4参照。)、等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2001−509185号公報(特許請求の範囲参照。)
【特許文献2】特表2001−511194号公報(特許請求の範囲参照。)
【特許文献3】特表2001−508102号公報(特許請求の範囲参照。)
【特許文献4】特表2001−508103号公報(特許請求の範囲参照。)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1〜4に提案された方法においても、触媒の活性が不十分であり、石油樹脂の製造に際して多量の触媒が必要となり、経済性はもとより触媒残渣にも課題を有するものであった。
【0008】
そこで、本発明は、フッ素、塩素の含有量の少ない石油樹脂を効率的に製造ことが可能となる石油樹脂製造用ルイス酸性固体酸触媒の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の金属元素の塩又はアルコキサイドを特定の担体に担持し、塩基性物質と接触した後に焼成することにより、高い活性でフッ素、塩素の含有量の少ない石油樹脂を製造することが可能となるルイス酸性固体酸触媒が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、錫、ガリウム、鉄、ハフニウム、アルミニウム、ジルコニウム、チタンからなる群より選択される少なくとも1種類の元素の塩又はアルコキサイドをケイ素からなる担体に担持し、塩基性物質と接触した後、焼成することにより複合酸化物とすることを特徴とする石油樹脂製造用ルイス酸性固体酸触媒の製造方法に関するものである。
【0011】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明の石油樹脂製造用ルイス酸性固体酸触媒の製造方法は、錫、ガリウム、鉄、ハフニウム、アルミニウム、ジルコニウム、チタンからなる群より選択される少なくとも1種類の元素の塩又はアルコキシドをケイ素からなる担体に担持し、塩基性物質と接触した後、焼成することにより複合酸化物とすることにより、高い活性でフッ素、塩素の含有量の少ない石油樹脂を製造することが可能となる固体酸触媒を製造するものである。
【0013】
そして、錫、ガリウム、鉄、ハフニウム、アルミニウム、ジルコニウム、チタンからなる群より選択される少なくとも1種類の元素を含んでなる塩又はアルコキサイドとしては、これら範疇に属するものであれば如何なるものを用いることも可能であり、該塩としては、例えば硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、オキシ硝酸塩、水酸化物、オキシ水酸化物、塩化物、オキシ塩化物等が挙げられ、アルコキシドとしては、例えばメトキシド、エトキシド、イソプロポキシド、ブトキシド等が挙げられ、より具体的な塩又はアルコキシドとしては、例えば四塩化チタン、硫酸チタン、チタンイソプロポキシド、チタンブトキシド;オキシ硝酸ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、ジルコニウムブトキシド、ジルコノセンジクロリド;オキシ塩化ハフニウム;塩化鉄、硫酸アンモニウム鉄、クエン酸アンモニウム鉄、フマル酸鉄、乳酸鉄、シュウ酸鉄、過塩素酸鉄、クエン酸鉄、硝酸鉄、リン酸鉄、硫酸鉄;硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硫酸アンモニウムアルミニウム、乳酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、アルミニウムイソプロポキシド;硝酸ガリウム、トリメチルガリウム;テトラブチルスズ、塩化スズ、硫酸スズ、酢酸スズ、酢酸トリフェニルスズ、等を挙げることができる。ここで、錫、ガリウム、鉄、ハフニウム、アルミニウム、ジルコニウム、チタンからなる群より選択される少なくとも1種類の元素の塩又はアルコキサイド以外のものからなるものを触媒として用いてもフッ素、塩素の含有量の少ない石油樹脂を効率よく製造することはできない。
【0014】
また、ケイ素からなる担体としては、この範疇に属するものであれば如何なるものを用いることも可能であり、例えば酸化物である酸化ケイ素、シリカ、等を挙げることができる。
【0015】
そして、該塩又はアルコキシドをケイ素を含む担体に担持する方法としては、該塩又はアルコキシドが必要量担持できれば如何なる方法を用いることも可能であり、例えば、該塩又はアルコキシドを媒体に溶解または分散した溶液または分散液(以下、まとめて「溶液」という。)とし、この溶液を該担体に含浸させた後、媒体を除去する方法で均一に担持する方法を挙げることができる。また、その際には、予め該担体が吸収する媒体量を測定しておき、それとほぼ等しい媒体量の溶液となるように濃度調整して担体へ含浸する方法も、過剰な媒体を使用する必要がなくなるので好ましい。また、該溶液をスプレー等にて一度に広範囲の担体に散布する方法、担体を該溶液中に分散して撹拌する方法等も、該塩又はアルコキシドを担体全体に対して均一に担持させることができるという点で好ましい。また、この担持処理の前に担体を予め減圧処理しておいたり、担体と該塩又はアルコキシド含有溶液が接触した状態で減圧と復圧あるいは加圧を1回から数回行っておくと、担体への該溶液の浸透速度を向上させることができるので好ましい。その際の媒体としては、該塩又はアルコキシドを溶解または分散するが、該塩又はアルコキシドとは反応しない媒体であることが好ましく、該塩又はアルコキシドが水溶性で水に対して安定な場合には、水であることが好ましい。また、該塩又はアルコキシドが加水分解性を有する場合には、メタノール、エタノール等のアルコール類;アセトン、テトラヒドロフラン、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド等の有機化合物を媒体として用いることが好ましい。
【0016】
該塩又はアルコキシドの該担体への担持量としては特に制限はなく、その中でも該担体に対し0.01〜50重量%であることが好ましい。
【0017】
該塩基性物質としては塩基性物質であれば気体でも液体でも良く、例えばアンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、アミルアミン、ヘキシルアミン、アリルアミン等の飽和または不飽和の脂肪族第一アミン;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジアリルアミン等の飽和または不飽和の脂肪族第二アミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリアリルアミン等の飽和または不飽和の脂肪族第三アミン;シクロプロピルアミン、シクロブチルアミン、シクロヘキシルアミン等の脂環式アミン;アニリン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン等の芳香族アミン;エチレンジアミン、ジアミノプロパン、ジアミノ−i−プロパン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン;フェニレンジアミン等の芳香族ジアミン;炭酸アンモニウム等の炭酸塩;炭酸水素アンモニウム等の炭酸水素塩、が挙げられ、その中でも取り扱い性に優れることからアンモニア、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムが好ましく、特に炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムが好ましい。
【0018】
また、該塩基性物質は媒体に溶解又は分散してもよく、その際の媒体としては、例えば水、液体アンモニア、または、上記した該塩又はアルコキシドを溶解または分散する媒体を挙げることができ、中でも取り扱い性に優れることから水、メタノール、エタノールが好ましく、特に水が好ましい。
【0019】
そして、該塩基性物質と接触させた後は、ろ過、洗浄、乾燥を行い、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、又は、空気、希釈酸素ガス等の酸化性ガス雰囲気下で焼成し、複合酸化物とすることにより石油樹脂製造用ルイス酸性固体酸触媒を得ることができる。その際の焼成温度としては、例えば500〜1100℃であり、特に強ルイス酸性を示す固体酸触媒となることから700〜1000℃の温度が好ましい。また、焼成時間としては、例えば1分以上60時間以内が挙げられ、加熱及び生産の効率に優れ、強ルイス酸性を示す固体酸触媒となることから5分以上24時間以内であることが好ましい。焼成方法としては、従来から一般的に用いられている方法を用いることが可能であり、例えば装置としてロータリーキルン、固定床炉、流動床炉、過熱スチーム炉、熱風炉、マッフル炉、トンネル炉等を用いる方法を挙げることができ、特に装置の構造が単純であり、多量の処理が可能なことからロータリーキルン、マッフル炉、トンネル炉を用いることが好ましい。
【0020】
本発明により得られる石油樹脂製造用ルイス酸性固体酸触媒を構成する複合酸化物としては、例えば錫−ケイ素複合酸化物、ガリウム−ケイ素複合酸化物、鉄−ケイ素複合酸化物、ハフニウム−ケイ素複合酸化物、アルミニウム−ケイ素複合酸化物、ジルコニウム−ケイ素複合酸化物、チタン−ケイ素複合酸化物を挙げることができる。
【0021】
本発明により得られる石油樹脂製造用ルイス酸性固体酸触媒は、石油類の熱分解により得られる留分、例えば沸点範囲140〜280℃の留分(以下、C9留分と称する。)、沸点範囲20〜110℃の留分(以下、C5留分と称する。)、C5留分とC9留分の混合留分の重合反応に用いることが可能であり、該重合反応により石油樹脂を製造することができる。そして、該C5留分を構成する化合物としては、例えばイソプレン、トランス−1,3−ペンタジエン、シス−1,3−ペンタジエン、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン等に代表される炭素数4〜6の共役ジオレフィン性不飽和炭化水素類;ブテン、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、シクロペンテン等に代表される炭素数4〜6のモノオレフィン性不飽和炭化水素類;シクロペンタン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、n−ヘキサン等の脂肪族系飽和炭化水素、等が挙げられる。また、該C9留分を構成する化合物としては、例えばスチレン、そのアルキル誘導体であるα−メチルスチレンやβ−メチルスチレン、ビニルトルエン、インデン及びそのアルキル誘導体等に代表される炭素数8〜10のビニル芳香族炭化水素類;ジシクロペンタジエン及びその誘導体等に代表される環状不飽和炭化水素類;その他炭素数10以上のオレフィン類、炭素数9以上の飽和芳香族類、等が挙げられる。
【0022】
石油樹脂の製造方法としては、例えば本発明により得られる石油樹脂製造用ルイス酸性固体酸触媒に該C5留分、該C9留分のそれぞれを単独、または該C5留分及び該C9留分の混合物を加え、加熱を行い重合する方法を挙げることができる。その際の重合温度としては、例えば0〜100℃を挙げることができ、特に0〜90℃であることが好ましい。また、該石油樹脂製造用ルイス酸性固体酸触媒量としては、例えば、該C5留分及び/又は該C9留分の総量に対して0.1〜30重量%であることが好ましく、特に1〜20重量%の範囲であることが好ましい。重合時間としては、例えば0.1〜10時間が好ましい。反応圧力としては、例えば大気圧〜1MPaが好ましい。
【0023】
また、石油樹脂の製造方法は、該C5留分及び/又は該C9留分と該石油樹脂製造用ルイス酸性固体酸触媒を反応器に仕込み重合を行う方法(回分方式)、該C5留分及び/又は該C9留分と石油樹脂製造用ルイス酸性固体酸触媒を含む反応仕込み組成液を連続的に反応器に供給し、重合を行った後、連続的に反応液を抜き取っていく方法(連続方式)のいずれの方法により行っても良く、その際の反応形式としては、例えば槽型、塔型等を挙げることができる。
【0024】
本発明により得られる石油樹脂製造用ルイス酸性固体酸触媒を用い得られる石油樹脂は、フッ素及び/又は塩素の含有量が極めて少ない石油樹脂として製造することが可能となり、その際の含有量としては1ppm以下であることが好ましい。なお、フッ素及び/又は塩素は、環境負荷物質として認識される場合が多く、そのような場面では石油樹脂の使用をも制限するものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、石油樹脂製造用固体酸触媒を製造するものであり、特に触媒相、未反応原料相、及び精製した重合体との分離が容易でかつ、触媒のリサイクルが容易、また、フッ素及び/又は塩素の含有量が極めて少ない石油樹脂を製造することが可能となる石油樹脂製造用ルイス酸性固体酸触媒の製造方法を提供するものである。
【実施例】
【0026】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限を受けるものではない。尚、実施例、比較例において用いた原材料、分析方法を以下に示す。
【0027】
(原材料)
沸点範囲20〜110℃の留分(以下、C5留分(1)と称する。);表1に示す組成を有するナフサの熱分解により得られる沸点範囲20〜110℃の留分。
【0028】
沸点範囲140〜280℃の留分(以下、C9留分(1)と称する。);表2に示す組成を有するナフサの熱分解により得られる沸点範囲140〜280℃の留分。
【0029】
【表1】

【0030】
【表2】

(分析方法)
原材料の組成分析;ガスクロマトグラフ法を用い分析した。
【0031】
石油樹脂の重量平均分子量:ゲル浸透クロマトグラフィーにより標準ポリスチレン換算値として測定した。
【0032】
石油樹脂の軟化点:JIS K−2531(1960)(環球法)に準拠し、測定した。
【0033】
石油樹脂中のフッ素、塩素の含有量(焼成管燃焼イオンクロマト法):石油樹脂を燃焼させた後吸収液に吸収させ、イオンクロマトにより測定した。
【0034】
実施例1
担体として酸化ケイ素(富士シリシア社製、(商品名)キャリアクトQ−15;平均粒径200μm)60gに、原料金属塩として酸化ジルコニウム(ZrO)換算で9重量%相当のオキシ硝酸ジルコニウム(ZrO(NO)水溶液69gを加えた。良く撹拌した後に蒸発皿に移し、120℃に予熱した乾燥機にて3時間乾燥した。オキシ硝酸ジルコニウムを担持した酸化ケイ素を取り出して充分に冷却した後に、塩基性化合物として12重量%炭酸水素アンモニウム水溶液を102g加えて撹拌し、その後、水洗を行って過剰のアンモニア及び生成した硝酸アンモニウムを除去した上で、蒸発皿に移し、乾燥器にて120℃ 1晩乾燥した。得られた乾燥固体を石英管(直径約3cm)に充填し、空気流通下で昇温し、900℃で3時間保持して焼成し、約5モル%のジルコニウムを含むジルコニウム−ケイ素複合酸化物(以下、石油樹脂製造用ルイス酸性固体酸触媒(A)と称する。)を得た。
【0035】
実施例2〜7
オキシ硝酸ジルコニウムの代わりに、表3に示す金属塩を用いた以外は、実施例1と同様の方法によりルイス酸性を有する金属−ケイ素複合酸化物を調製し、石油樹脂製造用ルイス酸性固体酸触媒を得た。なお、石油樹脂製造用ルイス酸性固体酸触媒中の金属の量は、実施例1のジルコニウムと等モルとした。
【0036】
【表3】

参考例1
内容積2リットルのガラス製オートクレーブに、トルエン100g、実施例1により得られた石油樹脂製造用ルイス酸性固体酸触媒(A)50gを仕込み、窒素雰囲気下で80℃に調節した。次に、原料油としてナフサの分解により得たC5留分(1)250gとC9留分(2)250gの混合留分を滴下し4時間重合を行った。その後、濾過により石油樹脂製造用ルイス酸性固体酸触媒(A)を除去し、油相の未反応油を蒸留して脂肪族/芳香族共重合石油樹脂の製造を行った。
【0037】
得られた石油樹脂の収率、軟化点、重量平均分子量、フッ素含有量、塩素含有量を表4に示す。
【0038】
参考例2〜7
石油樹脂製造用ルイス酸性固体酸触媒(A)の代わりに、石油樹脂製造用ルイス酸性固体酸触媒(B)〜(G)を用いた以外は、参考例1と同様の方法により脂肪族/芳香族共重合石油樹脂の製造を行った。
【0039】
得られた石油樹脂の収率、軟化点、重量平均分子量、フッ素含有量、塩素含有量を表4に示す。
【0040】
比較例1
内容積2リットルのガラス製オートクレーブに、塩化ベンゼン250gとフリーデルクラフツ型触媒として塩化アルミニウム(和光純薬工業(株))1.5gを仕込み、窒素雰囲気下で60℃に調節した。原料油としてナフサの分解により得たC5留分(1)500gを滴下して2時間重合した。その後、苛性ソーダ水溶液で触媒を濾別除去し、油相の未反応油を蒸留して脂肪族系石油樹脂の製造を行った。
【0041】
得られた石油樹脂の収率、軟化点、重量平均分子量、フッ素含有量、塩素含有量を表4に示す。
【0042】
比較例2
内容積2リットルのガラス製オートクレーブに、原料油としてナフサの分解により得たC9留分(1)500gを仕込んだ。次に、窒素雰囲気下で40℃に調節した後、液体触媒として三フッ化ホウ素フェノール錯体(ステラケミファ(株)三フッ化ホウ素フェノール)を原料油に対して、0.7重量%加えて2時間重合した。その後、苛性ソーダ水溶液で触媒を油相から失活・除去し、油相を蒸留して未反応油を取り除き芳香族系石油樹脂の製造を行った。
【0043】
得られた石油樹脂の収率、軟化点、重量分子量、フッ素含有量、塩素含有量を表4に示す。
【0044】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の製造方法により得られる石油樹脂製造用ルイス酸性固体酸触媒は、環境負荷物質として認識される場合の多いフッ素及び/又は塩素の含有量が極めて少ない石油樹脂を製造することが可能となるものであり、その利用価値は極めて高いものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
錫、ガリウム、鉄、ハフニウム、アルミニウム、ジルコニウム、チタンからなる群より選択される少なくとも1種類の元素の塩又はアルコキサイドをケイ素からなる担体に担持し、塩基性物質と接触した後、焼成することにより複合酸化物とすることを特徴とする石油樹脂製造用ルイス酸性固体酸触媒の製造方法。
【請求項2】
上記の担体に対して、上記の塩又はアルコキサイドを0.01〜50重量%担持することを特徴とする請求項1に記載の石油樹脂製造用ルイス酸性固体酸触媒の製造方法。
【請求項3】
上記の塩又はアルコキサイドが、四塩化チタン、硫酸チタン、チタンイソプロポキシド、チタンブトキシド、オキシ硝酸ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、ジルコニウムブトキシド、ジルコノセンジクロリド、オキシ塩化ハフニウム、塩化鉄、硫酸アンモニウム鉄、クエン酸アンモニウム鉄、フマル酸鉄、乳酸鉄、シュウ酸鉄、過塩素酸鉄、クエン酸鉄、硝酸鉄、リン酸鉄、硫酸鉄、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硫酸アンモニウムアルミニウム、乳酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、アルミニウムイソプロポキシド、硝酸ガリウム、トリメチルガリウム、テトラブチルスズ、塩化スズ、硫酸スズ、酢酸スズ、酢酸トリフェニルスズからなる群より選択される少なくとも1種類以上の塩又はアルコキサイドであり、上記担体が酸化ケイ素又はシリカであることを特徴とする請求項1又は2に記載の石油樹脂製造用ルイス酸性固体酸触媒の製造方法。
【請求項4】
塩基性物質がアミン類、炭酸塩、炭酸水素塩からなる群より選択されるものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の石油樹脂製造用ルイス酸性固体酸触媒の製造方法。
【請求項5】
500〜1100℃で、1分間以上60時間以内で焼成することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の石油樹脂製造用ルイス酸性固体酸触媒の製造方法。

【公開番号】特開2012−107159(P2012−107159A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258878(P2010−258878)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】