石灰化を軽減するための生物学的組織の処理方法
【課題】固定化生物学的組織を処理する方法は、哺乳動物身体内への移植後の生物学的
組織の石灰化を阻害する。
【解決手段】この方法は、生物学的組織を処理溶液に接触させて配置する工程、相対的
な組織/溶液運動を起こす工程、および処理溶液を加熱する工程を包含する。この相対的
運動を起こすには、組織が処理溶液に浸漬されている容器を振とうするか、または容器内
の溶液を攪拌する。この運動を起こすにはまた、処理溶液を、処理する組織を通して流し
ても良い。組織は処理容器内で自由に動き得、または大きく動かないようにされ得る。流
れはレザバを有する循環システムの一部であり得、ヒーターが設けられており、これによ
ってレザバ内の処理溶液を加熱する。
組織の石灰化を阻害する。
【解決手段】この方法は、生物学的組織を処理溶液に接触させて配置する工程、相対的
な組織/溶液運動を起こす工程、および処理溶液を加熱する工程を包含する。この相対的
運動を起こすには、組織が処理溶液に浸漬されている容器を振とうするか、または容器内
の溶液を攪拌する。この運動を起こすにはまた、処理溶液を、処理する組織を通して流し
ても良い。組織は処理容器内で自由に動き得、または大きく動かないようにされ得る。流
れはレザバを有する循環システムの一部であり得、ヒーターが設けられており、これによ
ってレザバ内の処理溶液を加熱する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には生物医学材料の調製方法に関し、より具体的には、流体/組織運
動の相対的処理を用いた、哺乳動物身体内に移植するための保存生物学的組織(例えば、
ウシ心膜)の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術は、生物学的組織を哺乳動物身体内へ続いて移植することを可能とするために
、このような組織を保存するかまたは固定する数多くの方法を包含する。これまでに外科
移植に利用されている生物学的組織のタイプの例としては、心臓弁、血管組織、皮膚、硬
膜、心膜、靭帯、および腱が挙げられる。
【0003】
本明細書中で使用される用語「移植する」は、任意の生組織または器官を内移植する(implanting)かまたは移植する(transplanting)こととして定義される(DorlandsIllustrated Medical Dictionary、27版、W.B. Saunders Co. 1988を参照のこと)。哺乳動物の身体内へ移植される生物学的組織は、異種性(すなわち、異種移植片)または同種性(すなわち、同種移植片)であり得る。
【0004】
用語「生体補綴物」は、移植前に化学的に前処理された生物学的組織の多くのタイプを定義する(Carpentier − Lonescu(編者)、BiologicalTissue in Heart Valve Replacement, Butterworths, 1972を参照のこと)。移植片とは異なり、生体補綴物の結果は、化学的に処理された生物学的材料の安定性に基づくものであり、細胞の生存能力または宿主細胞の増殖(ingrowth)に基づくものではない。化学的前処理は、生物学的組織の「固定」またはなめしを包含する。このような組織の固定またはなめしは、組織内でコラーゲン分子を架橋し得る1つ以上の化合物に組織を曝露することにより遂げられる。
【0005】
種々の化合物(ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、ジアルデヒドデンプン、ヘキサメチレンジイソシアネート、および特定のポリエポキシ化合物を含む)が、生物学的組織の固定または架橋に用いられている。
【0006】
特に、グルタルアルデヒドは、比較的生理的に不活性であり、そして続いて行う外科移植のための種々の生物学的組織の固定に適切である(Carpentier, A.、J.Thorac. Cardiovasc. Surg. 58:467−68 (1969))。特に、これまでグルタルアルデヒド固定に供されている生物学的組織のタイプの例としては、ブタ生体補綴心臓弁およびウシ心膜組織が挙げられる。
【0007】
臨床経験は、グルタルアルデヒド固定化生体補綴組織が石灰化する傾向があり得ることを示している。このようなグルタルアルデヒド固定化生体補綴組織の石灰化は、小児患者において最も優位的に生じることが報告されている(Carpentierら、および「ContinuingImprovements in Valvular Bioprostheses」, J. Thorac Cardiovasc. Surg. 83:27−42,1982を参照のこと)。このような石灰化は、組織の機械特性の劣化および/または組織機能不全を生じ得るので望ましくない。このことを考慮して、外科医はグルタルアルデヒド保存ブタ弁を利用するよりも、むしろ機械心臓血管弁を小児患者に移植することを選択している。しかし、機械弁インプラントを受ける小児患者は、抗凝固薬投薬法による長期間の治療を必要とし、そしてこのような抗凝固は、出血の危険性の増加に関連する。
【0008】
グルタルアルデヒド固定化生体補綴組織に生じる石灰化の機構は、完全に解明されてい
ない。しかし、石灰化率に影響を与えると考えられる因子が挙げられる:
a)患者の年齢
b)現存する代謝障害
(すなわち、カルシウム過剰血症、糖尿病、腎不全)
c)食事因子
d)人種
e)感染
f)非経口カルシウム投与
g)脱水
h)歪曲/機械的因子
i)外科移植後の初期期間の不適当な凝固療法;および
j)宿主組織化学
哺乳動物身体内への移植後の組織の石灰化を阻害するための、固定された生物学的組織
の処理方法は、哺乳動物身体内への移植後のこのような組織の使用可能な寿命を実質的に
増加させる傾向があり、それ故、次の組織の取換えの必要性を軽減させる。当業者が理解
するように、このような組織の取換えは、しばしば患者に実質的な外傷を引き起こし、時
には、患者の死を招く。このように、移植された生物学的組織の取換えの必要性を避ける
かまたは延期することのいずれかが可能なことは、大いに有益である。
【0009】
グルタルアルデヒド固定化生体補綴物組織の石灰化の軽減法を見出すために、種々の試みが着手されている。米国特許第4,885,005号(Nashefら)SURFACTANTTREATMENT OF IMPLANTABLE BIOLOGICAL TISSUE TO INHIBIT CALCIFICATION; 米国特許第4,648,881号(Carpentierら)IMPLANTABLEBIOLOGICAL TISSUE AND PROCESS FOR PREPARATION THEREOF; 米国特許第4,976,733号(Girardot)PREVENTIONOF PROSTHESIS CALCIFICATION; 米国特許第4,120,649号(Schechter)TRANSPLANTS; 米国特許第5,002,2566号(Carpentier)CALCIFICATIONMITIGATION OF BIOPROSTHETIC IMPLANTS; EP 103947A2(Pollockら)METHOD FORINHIBITING MINERALIZATION OF NATURAL TISSUE DURING IMPLANTATION;WO84/01879(Nashefら)SURFACTANTTREATMENT OF IMPLANTABLE BIOLOGICAL TISSUE TO INHIBIT CALCIFICATION;米国特許第5,595,571号(Jaffe)BIOLOGICALMATERIAL PREFIXATION TREATMENT;およびWO95/11047(Levyら)METHOD OF MAKINGCALCIFICATION−RESISTANT BIOPROSTHETIC TISSUEに記載される方法が、これらの石灰化軽減技術の内に含まれる。
【0010】
グルタルアルデヒドが実際に石灰化の危険性を増加させると信じている研究者もいるが、これは依然として最も受け入れられている固定化溶液である。例えば、上記のLevyの特許出願は、グルタルアルデヒドによる固定化に加えて、アルコール処理を利用して石灰化を軽減している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
重大な研究が、上記の石灰化を引き起こす機構の範囲に存在する。多くの工程が石灰化を軽減すると信じられているが、それらの支持者にも正確にはなぜだかわからない。実際に、Levyの特許には、なぜアルコールが石灰化の軽減に効果があるのかは開示しておらず、アルデヒドより好ましいということを述べるのみである。
【0012】
多くの試験が、様々な石灰化軽減処理の効果を見積るのに慣習的に用いられる。最も確実な試験は、実際に生組織内、好ましくはヒトに移植することである。もちろん、このような宿主研究はその性質から長期にわたるものであり、この結果はいくぶん、個々の宿主内に存在する変化によりゆがめられる。したがって研究者は、実験室での処理した組織についての試験(例えばカルシウム捕捉研究のような)を用いて、特別な処理の最終的な石灰化軽減の利益を無理やり予測している。最終的に、このような実験室での試験の実験データからかなりの量の推測がなされているが、現在まで、石灰化を軽減するとわかる有力な機構はない。
【0013】
化学的固定化生物学的物組織の石灰化を阻害するかまたは軽減する新規方法の開発の必
要性が未だ残っている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(発明の要旨)
本発明の他の利点と同様にこれらは、以下の記載および図面からより明白にされる。示され、かつ記載された特定の構造の変化は、本発明の精神から逸脱することなく本請求項の範囲内でなされ得ることが理解される。
【0015】
本発明は、少なくとも部分的に固定された生物学的組織を処理して、その組織を、哺乳動物身体内に移植した後での石灰化を阻害する方法を提供し、この方法は、組織を処理溶液に浸漬すること、相対的かつ反復的な組織/溶液運動を誘発すること、および誘発工程の間、溶液を加熱することを含む。誘発工程は、処理流体を組織を横切って流れさせること、および浸漬した組織が大きく動かないようにすること、あるいは処理溶液を容器に入れて、その容器を振とうするか、または容器内の溶液を撹拌することを含み得、このとき浸漬した組織は、自由に漂わせるか、もしくは容器内で大きく動かないようにする。加熱工程は、容器の外側に熱を加えてその中の溶液を間接的に加熱すること、または処理容器を囲い(enclosure)に入れて、その囲いを加熱することであり得る。あるいは加熱工程は、処理溶液に直接熱を加えることであり得る。
【0016】
本発明はまた、少なくとも部分的に固定された生物学的組織を処理して、その組織を、哺乳動物身体内に移植した後での石灰化を阻害する方法をも包含し、この方法は、組織をフロー容器内に置くこと、組織が容器内で大きく動かないようにすること、処理溶液をフロー容器を通じて流し、組織と接触させること、および流し工程の間、溶液を加熱することを含む。動かないようにする工程は、組織を平坦な配置で、流れる溶液の流れ方向に実質的に平行に設けることを含む。組織は、流れる溶液の流れ方向に実質的に直角に向く断面を有するフロー容器内に配置され得、バッフルの下流に位置する組織は、その断面に亘って実質的に均一な下流の流れのプロファイルを作る。ある実施態様においては、処理溶液はフロー容器の入り口にレザバから供給され、流体はフロー容器の出口からレザバへと排出される。処理溶液はレザバ内で加熱され得る。好ましくは、処理溶液はフロー容器を通って入り口から出口へと上方に流れ、組織と接触する。
【0017】
本発明によれば、少なくとも部分的に固定された生物学的組織を処理して、その組織を、哺乳動物身体内に移植した後での石灰化を阻害するための装置が提供される。この装置は、フロー容器、処理溶液の供給源、容器への流体インプット、容器からの流体アウトプット、少なくとも部分的に固定された生物学的組織を容器内のインプットとアウトプットとの間に配置し、そこで大きく動かないようにするための組織マウント、および流体を加熱する手段を有する。フロー容器は好ましくはミシン目の付いたバッフルによって分けられた、連続した少なくとも2つのセクションに分割されており、少なくとも1つの組織マウントがそれぞれのセクションにある。フロー容器は長いチューブであり得、バッフルは円形であり得る。組織マウントは、組織を平坦な配置で、容器を通じて流れる溶液の流れ方向に対して実質的に平行に設けるように、配置され得る。装置はさらに、フロー容器内の組織マウントの上流側に位置する1つのバッフルを有し得、このバッフルは、実質的に均一な下流の流れを作り、フロー容器の断面の輪郭を作るように、配置される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、グルタルアルデヒド溶液を用いた生物学的組織の固定を包含する、哺乳動物身体内への移植のための生物学的組織を調製するための先行技術プロセスを図示する流れ図である。
【図2】図2は、本発明による生物学的組織の石灰化を阻害するための方法を包含する、哺乳動物身体内への移植のための生物学的組織の調製のフローチャートである。
【図3】図3は、閉じた処理容器および容器移動装置を有する、一実施例の組織処理装置の概略図である。
【図4】図4は、開いた処理容器および流体撹拌ロッドを有する、他の実施例の組織処理装置の概略図である。
【図5】図5は、処理溶液に熱および運動を加えることを包含する、図3または図4のシステムを用いた、生態学的組織の調製のフローチャートである。
【図6】図6は、フローストリーム内に位置された処理容器を有する、一実施例の組織処理装置の概略図である。
【図7】図7は、熱を加えることおよび処理溶液を組織を通過して流すことを包含する、図5のシステムを用いた、生物学的組織の調製のフローチャートである。
【図8】図8は、直立したフローカラムおよび、処理する組織が中に設けられる複数の垂直なセクションを有する、他の好ましい組織処理装置の斜視図である。
【図9】図9は、図8のフローカラムの1つの垂直なセグメントの拡大斜視図であり、フローストリーム内のバッフルから吊るされた一片の組織を図示する。
【図10】図10は、フローカラムの1つの垂直セクションを通る、図9の10−10線に沿った、水平断面図である。
【図11】図11は、図10の11−11線に沿い、バッフルおよび組織懸垂マウントを通る、垂直断面図である。
【図12】図12は、ウシ心膜の、従来の方法で処理したもの、熱処理のみのもの、および熱および運動で処理したものについて測定したカルシウム捕捉を比較する棒グラフである。
【図13】図13は、ウシ心膜の、従来の方法で処理したもの、および様々な源からの熱および運動で処理したものについて測定したカルシウム捕捉を比較する棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(好ましい実施態様の詳細な説明)
添付した図に関連して下記に示される詳細な説明は、本発明の現在好ましい実施態様の
説明として意図され、そして本発明が構築され得るかあるいは利用され得る唯一の形態を
表すことは意図されない。この説明は、図示された実施態様に関連して、本発明を構築ま
たは実行するための工程の機能および順序を示す。しかし、本発明の精神および範囲内に
含まれることも意図される異なる実施態様によって、同様または同等の機能および順序が
成し遂げられ得ることが、理解されるべきである。
【0020】
哺乳動物身体内への移植後の生物学的組織の石炭化を阻害するために、グルタルアルデ
ヒド固定化生物学的組織を処理するための1つの方法を図2に図示する。図2は、本発明
の現在好ましい実施態様のフローチャートを描く。図1は、哺乳動物身体内への移植用の
生物学的組織を調製するための先行技術方法のフローチャートを描く。
【0021】
ここで、図1に言及すれば、哺乳動物身体内への移植用生物学的組織を調製するための先行技術プロセスは、最初に動物またはヒトの死体から組織を採取する工程を包含する(10)。当業者が認識するように、種々の異なるタイプの組織が、異なる動物および/またはヒトの死体から日常的に採取される。例えば、心臓弁は日常的にブタから採取され、心膜は日常的にウシまたはブタから採取され、皮膚は日常的にヒトの死体から採取される。さらに当業者は、新しい組織が、哺乳動物身体内に移植可能であることが、時々見出されていることを認識している。
【0022】
採取後生物学的組織は、代表的には1〜6時間の期間の間、生理食塩水溶液中で洗浄さ
れる(12)。
【0023】
次に組織は、室温で少なくとも3時間、適切な濃度、例えば0.2%と0.8%との間の緩衝化グルタルアルデヒド溶液を用いて固定される(14)。周知であるように、グルタルアルデヒドは組織内でコラーゲンのようなタンパク質の架橋をもたらす。このような架橋は、組織をより丈夫にする傾向があり、そして組織の保存性をもたらす。架橋したタンパク質は、タンパク質分解切断に対する増加した抵抗性を示すことが知られている。さらに、循環する血液が組織を破壊し得る主要なプロセスの1つは、酵素の加水分解を促進するためにタンパク質基質の折りたたみ構造の広がり(unfolding)を伴う酵素活性を介していることが知られている。組織のタンパク質の架橋は、このような折りたたみ構造の広がりに対して組織を抵抗性にし、その結果、血液の酵素活性による組織の劣化を防ぐ傾向がある。
【0024】
次に組織を、好ましくは、室温で2時間、アルコール/ホルムアルデヒド溶液を用いて滅菌する(16)。組織の滅菌を達成するための好ましい溶液は、約12 ml/lのTween80;約2.65 gms/lのMgCl2・(H2O;約108 ml/lのホルムアルデヒド(37%);約220ml/lのエチルアルコール(100%)および約4.863 gms/lのHEPES緩衝液を含む。残部は、二重濾過した水を含む。溶液のpHは、代表的にはNaOHの添加により7.4に調整される。当業者は、種々の他の滅菌溶液が同様に適していることを認識している。
【0025】
必要であれば、抗無機質化(antimineralization)処理(18)を行い、哺乳動物身体移植後の生物学的組織上での無機物沈澱物の蓄積を阻害する。当業者が認識するように、生物学的組織上での種々の異なる無機物の沈澱を防ぐために、種々の異なる抗無機質化処理が用いられる。
【0026】
組織から余分なものを除き、次いで非生物学的成分を組織に加える(20)。例えば、弁ホルダーに心臓弁を縫い付けることは、一般的である。この弁ホルダーは、心臓弁の取扱いを助け、そして哺乳動物身体内に移植する時、弁の台としてさらに機能し得る。
【0027】
次に、生物学的組織を、好ましくは上記のアルコール/ホルムアルデヒド溶液中でさらにもう一度、滅菌する(22)。生物学的組織の調製が実質上完了し、次に生物学的組織はおそらく長期間保存されるので、以前に用いられた滅菌手順よりもより厳密な滅菌手順が一般的に使用される。この段階で、一般的に生物学的組織を34〜38℃で約9時間滅菌する。
【0028】
滅菌後、生物学的組織を室温でグルタルアルデヒド中に貯蔵する(24)。
(熱を用いた組織処理)
ここで、図2について言及すれば、哺乳動物身体内への移植後の生物学的組織の石灰化を阻害するための、グルタルアルデヒド固定化生物学的組織の処理のための方法は、好ましくはグルタルアルデヒドが生物学的組織と接触している時、約4〜22週間、より好ましくは22週間以内の数日間、約35〜75℃に加熱するさらなる工程を含む。
【0029】
処理溶液は、体温より高い温度(37℃)まで加熱されるべきであるが、組織あるいは処理溶液のいずれかに損傷を与えるほど高くはない。したがって好ましい加熱範囲は35〜75℃である。しかし、温度は石灰化の軽減の量および処理時間に影響を与えるので、好ましくは45℃と55℃との間であり、より好ましくは50℃±1℃の間である。
【0030】
生物学的組織の加熱は、動物またはヒトの死体からの組織採取後、そして哺乳動物身体内への組織移植前の任意の時に、行われ得る。しかし、生物学的組織の加熱は、先行技術によるプロセスの種々の段階で生ずるような、好ましくは生物学的組織調製のためのプロセス内の、生物学的組織が既にグルタルアルデヒド溶液の槽中に配置された時点で行われる。従って、本発明によるグルタルアルデヒド固定化生物学的組織を処理するための方法は、好ましくはグルタルアルデヒド溶液で、生物学的組織を固定する間、グルタルアルデヒド溶液で生物学的組織を固定する直後、あるいはグルタルアルデヒド溶液中に貯蔵する直前または貯蔵した後のどちらかで、行われる。
【0031】
さらなる代替として、グルタルアルデヒド固定生物学的組織を処理するための方法は、グルタルアルデヒドを抗無機質化溶液に添加し、そして好ましくは約4〜22週間、約35〜75℃に溶液を熱することにより、抗無機質化処理の間に行われ得る。より好ましくは、組織は、22週間以内の数日間、50℃±1℃で熱処理される。
【0032】
例えば、室温で少なくとも3時間、適切な濃度、例えば0.2%と0.8%との間の、緩衝化グルタルアルデヒド溶液を用いて組織を固定した(14)後に、生物学的組織は、同じあるいは異なるグルタルアルデヒド溶液のいずれかで、好ましくは約35〜75℃で22週間以内の数日間、熱処理され得る(15)。
【0033】
上記の代替の1つとして、生物学的組織を、0.2〜0.8%グルタルアルデヒド溶液中で、再度好ましくは約35〜75℃で22週間以内の数日間、同時に固定し、熱処理する(13)。別の代替は、固定(21)の前に生理食塩水中で組織を熱すること(17)である。
【0034】
上記の他の代替として、生物学的組織は抗無機質化処理および加熱処理を同時に行い得る(19)。哺乳動物身体内への移植後の組織の石灰化の阻害をもたらすために、グルタルアルデヒドを抗無機質化溶液に加える。
(相対的組織/流体運動を用いた組織処理)
図3は、本発明の組織処理システム20の好ましい実施態様を図示する。1片あるいはそれ以上の組織22あるいはリーフレットが、閉じた容器25内の処理溶液24に浸漬される。容器25は振とうテーブル26上にあり、これはベース27に対して1方向あるいはそれ以上に、往復運動する。1つの特に好ましいタイプの振とう装置は、オービタルシェイカー(orbitalshaker)である。1つの例示の実施態様において、オービタルシェイカー26はほぼ55 RPMの回転速度で作動される。容器25およびその内容物は、図示するような放射ヒーター28のようなもので加熱される。もちろん、容器25を加熱するためのたくさんの方法が公知であり、例えば抵抗ヒーター、対流などである。
【0035】
溶液24は好ましくは緩衝化グルタルアルデヒドであるが、Denacol(登録商標)あるいはその他の、これに関して実質的に同じ作用をするあらゆる化学品溶液であり得る。振とうおよび/または熱が、固定化の間あるいは固定化後、加えられ得る。組織は好ましくは、本明細書に記載する石灰化軽減処理の前に、少なくとも部分的に固定され、より好ましくは、組織は処理の前に固定化を完了する。好ましい実施態様では、30分〜14日の間の期間にわたって固定化された組織を、適切な濃度、例えば0.2%と0.8%の間の緩衝化グルタルアルデヒド溶液と共に、容器25に入れる。そしてこの溶液を30分間振とうし、その後、容器25を14日間静置する。
【0036】
組織22は、ウシ心膜組織のシート、プレカットしたリーフレット、または完全に形成したブタ心臓弁であり得る。プレカットしたリーフレットまたはブタ心臓弁を使用することの1つの潜在的な不利な点は、石灰化軽減処理の間の組織の収縮能が不均一であることである。この現象を堅実に、かつ正確に補うことは、不可能ではないが、困難であり得る。処理の後のリーフレットの最終形状を予測するには、個々のリーフレットの繊維の配向、厚さ、およびその他の特性を詳細にマッピングすることが要求される。したがって、好ましい手順は、組織のシートまたは片を容器に入れて、これを振とうおよび/または熱に供することである。その後、リーフレットを処理した組織から切り出す。
【0037】
溶液24中の組織22が自由に動き得ることが注目される。他の実施態様では、および図6の実施態様に関して以下に述べるように、組織は大きく動かないようにされ得るが、29で概略的に示す装置を用いるなどして、自由に収縮するようにできる。
【0038】
振とうにおける他の変更では、処理システム30が図4に示されており、ここで撹拌ロッド32が振とうテーブル28の代わりに容器34内に位置している。この撹拌ロッドは好ましくは容器を隔てて磁気的に作動されるが、シャフト駆動装置を有しても良い。撹拌ロッド32は好ましくは組織36をつぶさず、流体37を組織に対して穏やかに動かすのみであるように設計される。したがって、図示した実施態様において、1枚の濾紙38、またはその他の類似の多孔性基質あるいはメッシュが、容器の上縁にドレープされ、その中に組織片36が置かれる。この方法で、撹拌ロッド32が容器34中の流体37に回転またはその他のモーメントを与えるが、組織36は撹拌ロッドの上方にあり、その動きによって損傷を受けない。図4にも加熱された囲いまたはインキュベーター39が示されており、この中に装置30全体が置かれる。
【0039】
振とうのその他の形態では、処理溶液および組織サンプルを入れた多数のフラスコまたは容器が、回転するフェリス−ホイール(ferris−wheel)装置にクランプされる。この装置は傾斜した軸の周りで回転するホイールを有し、これによってフラスコが傾いた円形軌道に従う。この方法で、フラスコ内の流体が、ホイールの回転にしたがって、組織片を穏やかに洗う。
【0040】
図3および図4の容器25および34は、開いているか閉じているかであり得、それは主として処理流体の性質に依存する。グルタルアルデヒドは毒性の物質であり、蒸発して危険なガスを発生する。したがって、グルタルアルデヒドによる処理は好ましくは閉じた容器内で行われる。一方、例えばDenacol(登録商標)のような危険性の少ない物質もあり、このときは容器はフードの下で開けたままにされ得る。
【0041】
組織と処理流体との間の相対的運動は、石灰化の軽減を増すと信じられている。この結果の機構は完全には公式化されていないが、組織を囲む流体の物質輸送(masstransport)が関係し得る。実際に、1つの定石は、ある細胞物質、例えばタンパク質が、処理溶液によって組織から抽出あるいは除去され、この除去が、流体の運動によって、静止した処理方法と比べて増加する、というものである。すなわち、組織のあらゆる一部分を囲む流体が、流体中の組織の相対的運動によって、繰り返し補充される。本発明による様々な方法で処理した組織のサンプルに関する図12および図13に示す結果は、熱および相対的な組織/流体運動の組み合わせにより、ラットに移植した後のカルシウム捕捉の量が減少することを示しており、このことは、このような処理が、ヒトへの移植の石灰化を長期間あるいは短期間、軽減することを示唆している。
【0042】
図5は、図3または図4に示すシステムを用いて組織を処理するための好ましい方法を示すフローチャートである。図1および図2に関して記載した多くの細かい前処理および後処理を、簡潔にするために省略したが、依然として適用できる。まず、組織を採取し、すすぎ、固定して、好ましくは正方形または長方形の小片に切って、これからリーフレットを形成し得る。次に組織の小片を容器内の処理流体に浸漬し、流体を所定の温度まで加熱する。組織片と周囲の処理媒体との間に相対的運動を起こし、所定の時間、続ける。相対的な組織/流体運動の誘起は、本明細書に示すあらゆる配置(例えば、組織および流体の容器を振とうあるいは振動させるような)により、または処理流体を組織上に流すことにより、達成し得る。最後に、組織片を容器から除き、すすいで、後の使用のために貯蔵する。もちろん、組織を貯蔵するよりむしろ、処理工程の直後に直接リーフレットを形成し、組み立てて心臓弁にし得る。
【0043】
図3に示す放射ヒーター28を用いるなどして、溶液を周囲の空気を隔てて間接的に加熱し、約50℃プラスマイナス1℃の温度にする。容器を振とうするか、または流体を撹拌するかして、相対的な組織/流体運動を起こさせる。処理時間には14日間から2ヶ月間の幅があるが、好ましくは2ヶ月に近い。容器25は好ましくはガラス製の組織培養フラスコであり、約250mlの容積を有し、そして溶液は適切な濃度、例えば0.2%と0.8%の間の緩衝化グルタルアルデヒド溶液である。上記の通り、多数片の組織22を、容器25内で一度に処理し得る。組織と溶液の一つの提案される比率は、溶液150mlごとに対して約12のリーフレットまたはリーフレット大の組織片である。
(相対的組織/流体流れを用いた組織処理)
図6は、処理システム40の他の変形を概略的に示し、これは、容器の振とうまたは組織が入っている流体の撹拌に対して、組織を通過する流れを利用する。この流れが処理溶液と組織との間に相対的運動を生じさせ、これが、有利な石灰化軽減効果をもたらすと信じられている。
【0044】
システム40はフロー容器42を有し、この中に組織44が置かれる。多数の導管46によってフロー容器42の一方の端がポンプ50に、そして溶液レザバ48へと接続される。導管47は、破線で示してあるが、フロー容器42の他方の端とレザバ48との間に接続され得、閉じた循環ループを完成させる。ポンプは処理溶液を前進させ、矢印52で示す方向にシステム40を通過させる。組織44は好ましくは、56で概略的に図示する手段を用いて、フロー容器42内に束縛される。抵抗ヒーター54が、レザバ48を囲んで図示されている。浸漬ヒーターを用いるならば、これらは腐食性であり得る処理溶液に長期間さらされることに耐え得るものでなければならない。もちろん、一方あるいは両方の抵抗加熱要素54をレザバの周囲から除き得、または代替の加熱装置を用い得る。例えば、処理システム40、およびこれについてさらに図3および図4に示すシステム20または30を、より大きい囲いまたは部屋58内に収容し得、これが内部または外部ヒーターによって好ましい温度まで加熱される。図示した実施態様では、熱電対59が設けられて、フロー容器42およびレザバ48の両方の内部の温度を感知する。レザバ内の熱電対59は好ましくはフィードバックエレクトロニクスに接続され、レザバ内の流体の温度に基づいてヒーター56を制御する。これは、温度が高く上昇しすぎて組織を損傷し得るレベルになるのを防ぐためである。フロー容器内の温度は熱電対を用いてモニターされるが、これは安全のため、かつ処理流体の正確な温度プロフィルを記録するためである。
【0045】
システム40を用いた組織処理方法の基礎的な成分を、図7に示す。まず、組織を入手し、すすぎ、固定して、好ましくは正方形または長方形の小片に切り、これからリーフレットを形成し得る。
【0046】
組織(またはいくつかの例ではリーフレット)をフロー容器42内に置き、固定の間または固定後、流れにさらす。好ましい実施態様では、組織44はシステム40内で流れにさらされる前に少なくとも部分的に固定され、より好ましくは組織は処理の前に完全に固定される。そして組織片を処理容器内に置き、溶液をそれを通じて流し、組織片とその周りの処理媒体との間に相対的運動を開始させ、これを所定の時間続ける。溶液を容器の外で直接、または容器を加熱することにより間接的に、加熱する。最後に、組織片を容器から除き、すすいで、後の使用のために貯蔵する。もちろん、組織を貯蔵するよりむしろ、処理工程の直後に直接リーフレットを形成し、組み立てて心臓弁にし得る。
【0047】
図6を参照すると、組織をまず30分〜14日間の間にわたって固定して、フロー容器42内に置く。代替例では、組織をまず図3に示すように容器25内に置いて、30分間振とうする。固定化の後(または所望ならば振とうの後)、組織をフロー容器42内に置き、1分間に10ガロン〜15ガロン(38〜57lpm)の間の流速の溶液流れに、15日〜60日間の間、さらす。溶液は好ましくはレザバ48内で約50℃の温度まで直接加熱される。溶液は好ましくは0.2%〜0.8%の緩衝化グルタルアルデヒドであり、組織44は動かないようにされるが、収縮はできる。
【0048】
システム40内での組織処理の代替方法では、処理時間が30日と60日との間である。流速は平均して約1分間につき7.4ガロン(28 lpm)であり、フロー容器42内の流れに垂直な断面を通じて均一である。組織44は好ましくは長方形のウシ心膜であり、寸法が2インチかける4インチである。この大きさの組織サンプルは、処理の後で、1個または2個のリーフレットを形成するのに用いられ得る。
【0049】
上記のシステムおよび、流体の移動および/または組織の加熱に対する変形が利用可能であることを、当業者は理解する。例えば、組織を通過する溶液の流れは、フロー容器42の振動または振とう運動と組み合わされ得、これによってそれぞれの方法から得られるあらゆる石灰化軽減の利益が増加される。加えて、システム40は閉じた循環装置として図示されているが、新しい溶液をフロー容器42内にポンプで送り、容器を通した後で、排出し得る(したがって導管47を任意のものとして示す)。もちろん、これには手が出ないほど高価であり得る処理溶液をかなりの量必要とする。それでも、流れを含めた本発明の処理方法の有益な局面の理論的な機構の1つは、溶液が組織を囲む領域で絶えず補充されるので、化学的および/または生物学的材料(例えばタンパク質のような)の組織から溶液への最大物質輸送が実現されるということである。したがって、溶液をレザバを通じて再利用するのではなく、新しい処理溶液をインプットするシステムは、このことについては、理論的により効率が良い。
(フローカラム装置)
図8はフローカラム60の斜視図であり、これは図6に概略的に示したフロー容器42の置換物であり得る。カラム60は好ましくは透明なアクリルチューブ61であり、内径約6インチ(15.2cm)、高さ約6フィート(1.8 m)、および容積約10ガロン(38 l)である。シリンダー60の上端および下端はそれぞれキャップ62aおよび62bで閉じられ、これらはO−リング(図示せず)によりシリンダー60の内表面に密着されている。キャップ62bの中央にある下方入り口取付具64は導管を提供し、これによって処理溶液をシリンダー60の下端に導入する。同様に、キャップ62aに接続された上方取付具66は、処理溶液用の出口を提供する。ある長さのホース68によって下方取付具64がポンプ70に接続され、これが次にホース72によって流体レザバ74に接続される。循環処理システムがある長さのホース76によって完成され、これは上方固定具66をレザバ74に接続する。流体連結および必要条件を当業者は理解し、これらは本明細書ではさらに述べない。
【0050】
上記の通り、レザバ74内の溶液は好ましくは所望の温度まで直接加熱される。図示しないが、レザバは望ましくは1個または2個の浸漬式抵抗ヒーターを備える。熱電対77がレザバの温度を感知し、好ましくはフィードバックエレクトロニクスに接続されて、浸漬式ヒーターを制御し、溶液の温度が高く上がりすぎて組織を損傷し得るレベルにならないようにする。フロー容器内の温度は熱電対78を用いてモニターされ、これは安全のため、および処理流体の正確な温度プロフィルを記録するために、行われる。処理溶液自身が過剰の温度の影響を受けて損傷されるので、加熱は段階的に、温度制御性の良いヒーターを用いて、行うべきである。
【0051】
垂直フローカラムまたはシリンダー60は、ミシン目83を有する、多数の一定間隔のバッフル82によって、複数の垂直セクション80(図9に拡大して示す)に区分される。バッフルは実質的に円形の、ミシン目の付いた円盤であり、垂直シリンダー60内に水平に、流体流れに垂直に、配置される。個々のバッフル82の外径が、チューブ61の内表面と接触するか、または近接する。フローカラム60は垂直に図示されているが、他の配列でも機能する。しかし、垂直な流れ方向が、初めにフローカラムから気泡をパージするのを助けるので、好ましい。すなわち、例えば水平な流路とは対照的に、気泡がフローカラムから非常に短時間で自然に出てくる。ミシン目は図8および図9には明確に示していないが、図10に示してあることにもまた注目するべきである。
【0052】
バッフル82は一般的に、垂直支持ロッド84上に設けられ、このロッドはシリンダー60の軸に沿って延びる。支持ロッド84は底のキャップ62bと接触し、上方に延びて、上方キャップ62aに接近する。図8の下端に見られるように、支持ロッド84は好ましくはスタンド部材86まで延びており、このスタンド部材は1対の二又脚88を有し、この二又脚は入り口開口90のそれぞれの側の下方キャップ62bの頂面と接触する。この方法で、支持ロッド84はシリンダー60の軸に沿って位置され得、一方ポンプ70から流れる入り口をふさがない。
【0053】
上述の通り、バッフル82によってシリンダー60が複数の垂直セクション80に分割される。これに関して、垂直セクション80は、2つのバッフル82の間の領域を有する。図示した実施態様では、このような垂直セクション80が8つあり、これらの高さは7インチと8インチの間(17.8cm〜20.3 cm)である。カラム60の全高はほぼ6フィート(1.8 m)であり、したがって一番上のバッフルの上と一番下のバッフルの下とにスペースが残る。バッフル82は支持ロッド84上にスライド可能に設けられているので、所望ならば、これらの間の間隔を調節し得る。さらに、バッフル82をシステムから除けば組織片82を容易に設け得、その後、バッフルを支持ロッド上でスライドさせ、そしてそのロッドをチューブ61内に配置する。処理する組織片を特別の様式で支持ロッド84の周りに円周アレイ状に設ける。これは図9〜図11の記載により明らかである。
【0054】
シリンダー60の頂部には、垂直スペースが上方バッフルと上方キャップ62aとの間に作られ、この中で、中央の支持ロッド84が終わっている。スペースは、上方バッフル82を通過する流れが過度に乱されないことを保証し、上方の垂直セクション80の流れの水平断面が均一なままであるようにする必要がある。実際に、バッフル間のあらゆる水平断面を横切る流れが均一であることが、任意のある組織片を過ぎる流れが他の組織を過ぎる流れと等しくなることを保証するために、本発明の配置において重要である。このような均一な流れを保証する主要な機構は、バッフル82自身である。好ましくは、ミシン目83が十分多く、十分な直径を有して、これによってバッフルの82の断面積がオープンフローチャネルよりも少ない構造物質を有する。したがってバッフル82は、個々のフローセクション80を通じて均一な、層流ではない、上方への流れを保持するように設計される。
【0055】
シリンダー60の下端においては、最も下のバッフル82の下で、整流装置(flowstraightener)92が減速板(velocity reducer plate)94の真上に配置される。したがって開口90を通る入り口流れは、減速板94および整流装置92を通って上方に通過し、最下バッフル82に衝突する。減速板94は円盤状プレートであり、複数の開口96がそれに形成されている。これらの開口は板94上で比較的広く間隔を開けられており、流れをドラッグしてその速度を遅くする。整流装置92はハニカム構造に似ており、比較的密集した多数の別個のフローチャネルを有し、垂直寸法が減速板94やバッフル82より大きい。流れが開口90を通ってカラム60に入り、上方に流れ続けて減速板94および整流装置92を通過する。流れが整流装置92を通過した後で、最下バッフル82に衝突する。処理溶液は上方に流れて個々のバッフル82を通過し、個々の相次ぐセクション80に入り、カラム60の頂上に出る。カラム60は初め空気で満たされているが、上昇する処理溶液の流れがカラムを通って上方に通過するに連れて、外に押し出される。
【0056】
ここで図9を参照すると、垂直セクション80が拡大されており、複数の組織マウント100が上方バッフル82からぶら下がっているのが示される。組織マウント100はU字型部材102を有し、図11により明らかに示されている。図10はマウント100の円周状アレイが中央の支持ロッド84を囲んでいるのを示す。個々のマウント100がほぼ長方形の配置をしており、バッフル82で放射状に配向している。すなわち、U字型部材102の自由端が、同じような大きさに下向きに開けられた、バッフル82の開口104に挿入される。個々のマウント100のための開口104の1つは、支持ロッド84に接近して位置し、一方別のものはチューブ61に接近して位置する。開口104はバッフル82の厚さのほぼ半分にわたって延び、直径の小さい貫通孔106が上方に、バッフルの頂面まで続いている。この孔106は、処理が終わったときに、マウント100を開口104から押すのに必要である。好ましくは、U字型部材102の脚がわずかに外側に広がっており、これらが互いに圧搾されて、2つの開口104内に適合する。これにより、確実にきつく適合して、マウント100が開口104から外れて落ちない。
【0057】
長方形の組織片108を、縫合または他の方法でマウントに取り付ける。図示した実施態様では、個々の組織片108の下縁110がU字型部材102のブリッジ部に巻きつき、組織片の本体に線112に沿って縫い付けられる。この方法で、上方へのフローストリーム内の組織片108の主要な縁が丸くなり、したがって縫い付けによる摩擦や磨耗から保護される。1つまたはそれ以上の縫合114により、組織片108の上方の角がU字型部材112の脚の上端に接続される。好ましくは組織片108は、その垂直方向の長さに沿って1箇所または2箇所のみで接続され、組織が大きく動いたりはためいたりするのを防ぎ、一方で組織の自由な収縮を最大限に許容する。O−リング116または他の同様な装置が部材112の個々の脚に位置され、縫合114が脚から滑り落ちるのを防ぐ。処理溶液の上方へと流れ118もまた、個々の組織片108がほぼ平坦な配置を保持するのを助ける。
【0058】
組織片108を平坦な配置で、溶液の流れ方向に実質的に平行に設けることにより、等しい量の溶液が組織の両側に確実に接触する。すなわち、組織片が流れに対して傾斜していると、その背面が暴露される直接的な流れが少なくなり、渦流などが起こり得、さらに流体への暴露が不均一になる。加えて、好ましい平行な配向によって、長期にわたる処理期間の間、組織の伸長(例えば流体が組織の一方または他方の表面に向くと起こり得るような)が最小化される。
【0059】
個々の組織片108の平面が放射状に配向することによって、望ましくは、カラム60を通じて流れている流体と確実に均一に接触する。理想的には、バッフル82が図10に示すようにミシン目120を有し、これが均一な、層流でない流れを作る。同じ速度の流れが、支持ロッド84から外側の任意の半径方向の地点において、作り出される。もちろん、たとえ同じ心膜嚢からのものであっても、異なる組織片108は大きく異なる性質を有することが示されている。それでも、本発明の処理配置は、個々の組織片108における条件を最大限に均一化するよう設計されている。流体ヘッドの違いにより、容器の頂部と底部の広がりの間には処理条件にいくらかの変化があり得るが、本出願人は、このような変化は本明細書で述べる6フィート高のカラム60において最小であると信じている。
【0060】
好ましくは8個の垂直セクション80があり、これらの中に6片の組織108を設けて、計48片の組織を一度に処理する。もちろん、他の数のセクションおよびセクションごとの組織片数が可能である。本発明のフローカラムは、高品質に処理した生体補綴組織を一貫して製造するのに極めて適している。区分したフローカラムの、流れが均一で、個々の組織片108が垂直に配向したものは、均一性の高い処理を提供する。カラムの支持ロッド84全体に全てのバッフル82が取り付けられている、構成単位の性質は、製造において大きな利点である。組織の1バッチを処理し、そして除去すると、そのシステムをフラッシュした後で、新たなバッチを取り付け、処理する準備ができる。さらに、フローカラムは、相対的な組織/流体速度および温度のようなパラメーターを、システム全体にわたって高度に制御する目的にかなう。意味深いことに、カラムないには流れが停滞した大きな地帯がなく、特に個々の垂直セグメント80内にはない。
(ラット皮下試験)
図12および13は、様々な方法で処理し、ラットに数ヶ月間皮下移植し、取り出した組織から測定したカルシウム捕捉の結果である。これらのグラフは、熱処理のみのものはコントロールと比べてカルシウム捕捉が減少すること、および熱および運動で処理したものはさらにカルシウム捕捉が減少することを示す。多数の振とう、撹拌または運動装置を2つの異なる温度で用い、同様な、一般的な結果が得られた。
【0061】
図12は、3つのグループの、未処理および処理したウシ心膜組織のサンプルからの結果を示す。第一グループ(GLUT CONTROL)は、12個の組織サンプルからの平均測定値で約16%のカルシウムを示した。これらのサンプルは、過熱しない、静止したグルタルアルデヒドによる後固定化(post−fixation)処理に供したものである。第二グループ(HEAT)は、8個の組織サンプルからの平均測定値で約7%のカルシウムを示した。これらのサンプルは、50℃の温度に加熱した、静止したグルタルアルデヒドによる後固定化処理に供したものである。最後に、第三グループ(HEATAND SHAKING)は、7個の組織サンプルからの平均測定値で約4%のカルシウムを示した。これらのサンプルは、50℃の温度に加熱した、静止したグルタルアルデヒドによる後固定化処理に供したものである。3つ全てのグループの処理溶液は同一の、pH7.4の0.6% HEPES−グルタルアルデヒドであり、処理期間は等しく、2ヶ月間であった。第三グループを、ボトルまたは容器内で、80 RPMで作動される相互軌道振とう器(reciprocalorbital shaker)を用いて振とうした。ラットは全て生後約12日であり、組織サンプルは8週間、移植したままにした。
【0062】
図13は、未処理および処理したウシ心膜組織の多数のグループからの結果である。これらのグループのカルシウム捕捉の結果を、全処理摂生に依存して、異なった影付き棒で示す。したがって、黒い棒はグループ1を示し、コントロール(加熱も振とうもなし)であり、中央の影付き棒は、振とうおよび50℃の熱処理に供したサンプルを示し、右手の白い棒は、振とうおよび42℃の加熱処理に供したサンプルを示す。
【0063】
左側のグループ1はコントロールであり、2つのサブグループ(それぞれ7サンプル、4サンプル)の結果を示す。コントロールサンプルを2ヶ月間、pH 7.4の0.6%HEPES−グルタルアルデヒド内で、加熱および振とうなしで、処理した。個々のサンプルを生後16日のラットに移植し、3ヶ月と4ヶ月の間の期間、移植したままにし、その後、カルシウム試験のために取り出した。
【0064】
中央のグループ4〜6は全て、グループ1と同じ溶液中で同じ期間、50℃で加熱処理した。グループ2〜6間の処理摂生の違いは、組織/流体の相対的運動を起こすのに用いる方法である。それらの方法を図式的に、個々のグループの下に示す。グループ27は2つのサブグループ(7サンプルおよび8サンプル)を含み、それぞれを相互軌道振とう器に供した。グループ3 7は2つのサブグループ(2サンプルおよび11サンプル)を含み、それぞれを、底にマグネティックスターラーバーを入れたフラスコに入れた。グループ4は、2つのサブグループ(8サンプルずつ)をそれぞれ、フラスコ内を漂わせるのではなく、フィルター上に置いた以外は、グループ3と同じ方法である。グループ5は2つのサブグループ(12サンプルずつ)を含み、それぞれを第一容器内に入れ、傾斜したフェリスホイール装置を用いて、回転運動に供した。グループ6は2つのサブグループ(20サンプルおよび12サンプル)を含み、それぞれを第二容器内に入れ、同様に回転運動にさらした。
【0065】
右側のグループ7〜9は全て、グループ1〜8と同じ処理溶液内で同じ時間、42℃で熱処理した。再び、グループ7〜9の間の処理摂生の違いは、組織/流体の相対的運動を起こすのに用いる方法であり、各グループの下に図式的に示す。グループ7は2つのサブグループ(8サンプルおよび4サンプル)を含み、それぞれを相互軌道振とう器に供した。グループ8は2つのサブグループ(8サンプルおよび11サンプル)を含み、それぞれを、マグネティックスターラーバーを底に入れたフラスコ内に入れた。グループ9は、2つのサブグループ(8サンプルずつ)を、フラスコ内を漂わせるのではなく、フィルター上に置いたこと以外は、グループ8と同じ方法である。
【0066】
これらの試験から、振とうおよび加熱処理により、コントロールグループおよび熱処理のみのものに比べてカルシウム捕捉が減少することが明らかである。また、50℃での処理は実質的に42℃での処理より効果的であった。振とう/撹拌方法の違いの比較は、フラスコ内のマグネティックロッドを用いて撹拌すると、温度に関係なく、カルシウム捕捉の量が少なくなることを示すが、恐らく50℃では差はさほど大きくない。
【0067】
本明細書中に記載され、そして図面に示された、グルタルアルデヒド固定化生物学的組織を処理するための典型的な方法は、本発明の現在好ましい実施態様を表すことが理解される。確かに、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、種々の改変および付加がこのような実施態様に対してなされ得る。例えば、Denacol(登録商標)またはグルタルアルデヒド以外のアルデヒドのような種々の固定化剤は、本発明における使用にそれらを適するように、グルタルアルデヒドの特性と類似した特性を示し得る。それ故、同様に使用され得る。従って、これらおよび他の改変および付加は、当業者にとって自明であり、そして種々の異なる適用における使用に対して本発明を適応させるために実行され得る。さらに、本発明の範囲は、添付の請求の範囲を参照して規定されるべきである。
【符号の説明】
【0068】
20 組織処理システム20
24 処理溶液
25 容器25
30 組織処理システム20
40 組織処理システム20
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には生物医学材料の調製方法に関し、より具体的には、流体/組織運
動の相対的処理を用いた、哺乳動物身体内に移植するための保存生物学的組織(例えば、
ウシ心膜)の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術は、生物学的組織を哺乳動物身体内へ続いて移植することを可能とするために
、このような組織を保存するかまたは固定する数多くの方法を包含する。これまでに外科
移植に利用されている生物学的組織のタイプの例としては、心臓弁、血管組織、皮膚、硬
膜、心膜、靭帯、および腱が挙げられる。
【0003】
本明細書中で使用される用語「移植する」は、任意の生組織または器官を内移植する(implanting)かまたは移植する(transplanting)こととして定義される(DorlandsIllustrated Medical Dictionary、27版、W.B. Saunders Co. 1988を参照のこと)。哺乳動物の身体内へ移植される生物学的組織は、異種性(すなわち、異種移植片)または同種性(すなわち、同種移植片)であり得る。
【0004】
用語「生体補綴物」は、移植前に化学的に前処理された生物学的組織の多くのタイプを定義する(Carpentier − Lonescu(編者)、BiologicalTissue in Heart Valve Replacement, Butterworths, 1972を参照のこと)。移植片とは異なり、生体補綴物の結果は、化学的に処理された生物学的材料の安定性に基づくものであり、細胞の生存能力または宿主細胞の増殖(ingrowth)に基づくものではない。化学的前処理は、生物学的組織の「固定」またはなめしを包含する。このような組織の固定またはなめしは、組織内でコラーゲン分子を架橋し得る1つ以上の化合物に組織を曝露することにより遂げられる。
【0005】
種々の化合物(ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、ジアルデヒドデンプン、ヘキサメチレンジイソシアネート、および特定のポリエポキシ化合物を含む)が、生物学的組織の固定または架橋に用いられている。
【0006】
特に、グルタルアルデヒドは、比較的生理的に不活性であり、そして続いて行う外科移植のための種々の生物学的組織の固定に適切である(Carpentier, A.、J.Thorac. Cardiovasc. Surg. 58:467−68 (1969))。特に、これまでグルタルアルデヒド固定に供されている生物学的組織のタイプの例としては、ブタ生体補綴心臓弁およびウシ心膜組織が挙げられる。
【0007】
臨床経験は、グルタルアルデヒド固定化生体補綴組織が石灰化する傾向があり得ることを示している。このようなグルタルアルデヒド固定化生体補綴組織の石灰化は、小児患者において最も優位的に生じることが報告されている(Carpentierら、および「ContinuingImprovements in Valvular Bioprostheses」, J. Thorac Cardiovasc. Surg. 83:27−42,1982を参照のこと)。このような石灰化は、組織の機械特性の劣化および/または組織機能不全を生じ得るので望ましくない。このことを考慮して、外科医はグルタルアルデヒド保存ブタ弁を利用するよりも、むしろ機械心臓血管弁を小児患者に移植することを選択している。しかし、機械弁インプラントを受ける小児患者は、抗凝固薬投薬法による長期間の治療を必要とし、そしてこのような抗凝固は、出血の危険性の増加に関連する。
【0008】
グルタルアルデヒド固定化生体補綴組織に生じる石灰化の機構は、完全に解明されてい
ない。しかし、石灰化率に影響を与えると考えられる因子が挙げられる:
a)患者の年齢
b)現存する代謝障害
(すなわち、カルシウム過剰血症、糖尿病、腎不全)
c)食事因子
d)人種
e)感染
f)非経口カルシウム投与
g)脱水
h)歪曲/機械的因子
i)外科移植後の初期期間の不適当な凝固療法;および
j)宿主組織化学
哺乳動物身体内への移植後の組織の石灰化を阻害するための、固定された生物学的組織
の処理方法は、哺乳動物身体内への移植後のこのような組織の使用可能な寿命を実質的に
増加させる傾向があり、それ故、次の組織の取換えの必要性を軽減させる。当業者が理解
するように、このような組織の取換えは、しばしば患者に実質的な外傷を引き起こし、時
には、患者の死を招く。このように、移植された生物学的組織の取換えの必要性を避ける
かまたは延期することのいずれかが可能なことは、大いに有益である。
【0009】
グルタルアルデヒド固定化生体補綴物組織の石灰化の軽減法を見出すために、種々の試みが着手されている。米国特許第4,885,005号(Nashefら)SURFACTANTTREATMENT OF IMPLANTABLE BIOLOGICAL TISSUE TO INHIBIT CALCIFICATION; 米国特許第4,648,881号(Carpentierら)IMPLANTABLEBIOLOGICAL TISSUE AND PROCESS FOR PREPARATION THEREOF; 米国特許第4,976,733号(Girardot)PREVENTIONOF PROSTHESIS CALCIFICATION; 米国特許第4,120,649号(Schechter)TRANSPLANTS; 米国特許第5,002,2566号(Carpentier)CALCIFICATIONMITIGATION OF BIOPROSTHETIC IMPLANTS; EP 103947A2(Pollockら)METHOD FORINHIBITING MINERALIZATION OF NATURAL TISSUE DURING IMPLANTATION;WO84/01879(Nashefら)SURFACTANTTREATMENT OF IMPLANTABLE BIOLOGICAL TISSUE TO INHIBIT CALCIFICATION;米国特許第5,595,571号(Jaffe)BIOLOGICALMATERIAL PREFIXATION TREATMENT;およびWO95/11047(Levyら)METHOD OF MAKINGCALCIFICATION−RESISTANT BIOPROSTHETIC TISSUEに記載される方法が、これらの石灰化軽減技術の内に含まれる。
【0010】
グルタルアルデヒドが実際に石灰化の危険性を増加させると信じている研究者もいるが、これは依然として最も受け入れられている固定化溶液である。例えば、上記のLevyの特許出願は、グルタルアルデヒドによる固定化に加えて、アルコール処理を利用して石灰化を軽減している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
重大な研究が、上記の石灰化を引き起こす機構の範囲に存在する。多くの工程が石灰化を軽減すると信じられているが、それらの支持者にも正確にはなぜだかわからない。実際に、Levyの特許には、なぜアルコールが石灰化の軽減に効果があるのかは開示しておらず、アルデヒドより好ましいということを述べるのみである。
【0012】
多くの試験が、様々な石灰化軽減処理の効果を見積るのに慣習的に用いられる。最も確実な試験は、実際に生組織内、好ましくはヒトに移植することである。もちろん、このような宿主研究はその性質から長期にわたるものであり、この結果はいくぶん、個々の宿主内に存在する変化によりゆがめられる。したがって研究者は、実験室での処理した組織についての試験(例えばカルシウム捕捉研究のような)を用いて、特別な処理の最終的な石灰化軽減の利益を無理やり予測している。最終的に、このような実験室での試験の実験データからかなりの量の推測がなされているが、現在まで、石灰化を軽減するとわかる有力な機構はない。
【0013】
化学的固定化生物学的物組織の石灰化を阻害するかまたは軽減する新規方法の開発の必
要性が未だ残っている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(発明の要旨)
本発明の他の利点と同様にこれらは、以下の記載および図面からより明白にされる。示され、かつ記載された特定の構造の変化は、本発明の精神から逸脱することなく本請求項の範囲内でなされ得ることが理解される。
【0015】
本発明は、少なくとも部分的に固定された生物学的組織を処理して、その組織を、哺乳動物身体内に移植した後での石灰化を阻害する方法を提供し、この方法は、組織を処理溶液に浸漬すること、相対的かつ反復的な組織/溶液運動を誘発すること、および誘発工程の間、溶液を加熱することを含む。誘発工程は、処理流体を組織を横切って流れさせること、および浸漬した組織が大きく動かないようにすること、あるいは処理溶液を容器に入れて、その容器を振とうするか、または容器内の溶液を撹拌することを含み得、このとき浸漬した組織は、自由に漂わせるか、もしくは容器内で大きく動かないようにする。加熱工程は、容器の外側に熱を加えてその中の溶液を間接的に加熱すること、または処理容器を囲い(enclosure)に入れて、その囲いを加熱することであり得る。あるいは加熱工程は、処理溶液に直接熱を加えることであり得る。
【0016】
本発明はまた、少なくとも部分的に固定された生物学的組織を処理して、その組織を、哺乳動物身体内に移植した後での石灰化を阻害する方法をも包含し、この方法は、組織をフロー容器内に置くこと、組織が容器内で大きく動かないようにすること、処理溶液をフロー容器を通じて流し、組織と接触させること、および流し工程の間、溶液を加熱することを含む。動かないようにする工程は、組織を平坦な配置で、流れる溶液の流れ方向に実質的に平行に設けることを含む。組織は、流れる溶液の流れ方向に実質的に直角に向く断面を有するフロー容器内に配置され得、バッフルの下流に位置する組織は、その断面に亘って実質的に均一な下流の流れのプロファイルを作る。ある実施態様においては、処理溶液はフロー容器の入り口にレザバから供給され、流体はフロー容器の出口からレザバへと排出される。処理溶液はレザバ内で加熱され得る。好ましくは、処理溶液はフロー容器を通って入り口から出口へと上方に流れ、組織と接触する。
【0017】
本発明によれば、少なくとも部分的に固定された生物学的組織を処理して、その組織を、哺乳動物身体内に移植した後での石灰化を阻害するための装置が提供される。この装置は、フロー容器、処理溶液の供給源、容器への流体インプット、容器からの流体アウトプット、少なくとも部分的に固定された生物学的組織を容器内のインプットとアウトプットとの間に配置し、そこで大きく動かないようにするための組織マウント、および流体を加熱する手段を有する。フロー容器は好ましくはミシン目の付いたバッフルによって分けられた、連続した少なくとも2つのセクションに分割されており、少なくとも1つの組織マウントがそれぞれのセクションにある。フロー容器は長いチューブであり得、バッフルは円形であり得る。組織マウントは、組織を平坦な配置で、容器を通じて流れる溶液の流れ方向に対して実質的に平行に設けるように、配置され得る。装置はさらに、フロー容器内の組織マウントの上流側に位置する1つのバッフルを有し得、このバッフルは、実質的に均一な下流の流れを作り、フロー容器の断面の輪郭を作るように、配置される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、グルタルアルデヒド溶液を用いた生物学的組織の固定を包含する、哺乳動物身体内への移植のための生物学的組織を調製するための先行技術プロセスを図示する流れ図である。
【図2】図2は、本発明による生物学的組織の石灰化を阻害するための方法を包含する、哺乳動物身体内への移植のための生物学的組織の調製のフローチャートである。
【図3】図3は、閉じた処理容器および容器移動装置を有する、一実施例の組織処理装置の概略図である。
【図4】図4は、開いた処理容器および流体撹拌ロッドを有する、他の実施例の組織処理装置の概略図である。
【図5】図5は、処理溶液に熱および運動を加えることを包含する、図3または図4のシステムを用いた、生態学的組織の調製のフローチャートである。
【図6】図6は、フローストリーム内に位置された処理容器を有する、一実施例の組織処理装置の概略図である。
【図7】図7は、熱を加えることおよび処理溶液を組織を通過して流すことを包含する、図5のシステムを用いた、生物学的組織の調製のフローチャートである。
【図8】図8は、直立したフローカラムおよび、処理する組織が中に設けられる複数の垂直なセクションを有する、他の好ましい組織処理装置の斜視図である。
【図9】図9は、図8のフローカラムの1つの垂直なセグメントの拡大斜視図であり、フローストリーム内のバッフルから吊るされた一片の組織を図示する。
【図10】図10は、フローカラムの1つの垂直セクションを通る、図9の10−10線に沿った、水平断面図である。
【図11】図11は、図10の11−11線に沿い、バッフルおよび組織懸垂マウントを通る、垂直断面図である。
【図12】図12は、ウシ心膜の、従来の方法で処理したもの、熱処理のみのもの、および熱および運動で処理したものについて測定したカルシウム捕捉を比較する棒グラフである。
【図13】図13は、ウシ心膜の、従来の方法で処理したもの、および様々な源からの熱および運動で処理したものについて測定したカルシウム捕捉を比較する棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(好ましい実施態様の詳細な説明)
添付した図に関連して下記に示される詳細な説明は、本発明の現在好ましい実施態様の
説明として意図され、そして本発明が構築され得るかあるいは利用され得る唯一の形態を
表すことは意図されない。この説明は、図示された実施態様に関連して、本発明を構築ま
たは実行するための工程の機能および順序を示す。しかし、本発明の精神および範囲内に
含まれることも意図される異なる実施態様によって、同様または同等の機能および順序が
成し遂げられ得ることが、理解されるべきである。
【0020】
哺乳動物身体内への移植後の生物学的組織の石炭化を阻害するために、グルタルアルデ
ヒド固定化生物学的組織を処理するための1つの方法を図2に図示する。図2は、本発明
の現在好ましい実施態様のフローチャートを描く。図1は、哺乳動物身体内への移植用の
生物学的組織を調製するための先行技術方法のフローチャートを描く。
【0021】
ここで、図1に言及すれば、哺乳動物身体内への移植用生物学的組織を調製するための先行技術プロセスは、最初に動物またはヒトの死体から組織を採取する工程を包含する(10)。当業者が認識するように、種々の異なるタイプの組織が、異なる動物および/またはヒトの死体から日常的に採取される。例えば、心臓弁は日常的にブタから採取され、心膜は日常的にウシまたはブタから採取され、皮膚は日常的にヒトの死体から採取される。さらに当業者は、新しい組織が、哺乳動物身体内に移植可能であることが、時々見出されていることを認識している。
【0022】
採取後生物学的組織は、代表的には1〜6時間の期間の間、生理食塩水溶液中で洗浄さ
れる(12)。
【0023】
次に組織は、室温で少なくとも3時間、適切な濃度、例えば0.2%と0.8%との間の緩衝化グルタルアルデヒド溶液を用いて固定される(14)。周知であるように、グルタルアルデヒドは組織内でコラーゲンのようなタンパク質の架橋をもたらす。このような架橋は、組織をより丈夫にする傾向があり、そして組織の保存性をもたらす。架橋したタンパク質は、タンパク質分解切断に対する増加した抵抗性を示すことが知られている。さらに、循環する血液が組織を破壊し得る主要なプロセスの1つは、酵素の加水分解を促進するためにタンパク質基質の折りたたみ構造の広がり(unfolding)を伴う酵素活性を介していることが知られている。組織のタンパク質の架橋は、このような折りたたみ構造の広がりに対して組織を抵抗性にし、その結果、血液の酵素活性による組織の劣化を防ぐ傾向がある。
【0024】
次に組織を、好ましくは、室温で2時間、アルコール/ホルムアルデヒド溶液を用いて滅菌する(16)。組織の滅菌を達成するための好ましい溶液は、約12 ml/lのTween80;約2.65 gms/lのMgCl2・(H2O;約108 ml/lのホルムアルデヒド(37%);約220ml/lのエチルアルコール(100%)および約4.863 gms/lのHEPES緩衝液を含む。残部は、二重濾過した水を含む。溶液のpHは、代表的にはNaOHの添加により7.4に調整される。当業者は、種々の他の滅菌溶液が同様に適していることを認識している。
【0025】
必要であれば、抗無機質化(antimineralization)処理(18)を行い、哺乳動物身体移植後の生物学的組織上での無機物沈澱物の蓄積を阻害する。当業者が認識するように、生物学的組織上での種々の異なる無機物の沈澱を防ぐために、種々の異なる抗無機質化処理が用いられる。
【0026】
組織から余分なものを除き、次いで非生物学的成分を組織に加える(20)。例えば、弁ホルダーに心臓弁を縫い付けることは、一般的である。この弁ホルダーは、心臓弁の取扱いを助け、そして哺乳動物身体内に移植する時、弁の台としてさらに機能し得る。
【0027】
次に、生物学的組織を、好ましくは上記のアルコール/ホルムアルデヒド溶液中でさらにもう一度、滅菌する(22)。生物学的組織の調製が実質上完了し、次に生物学的組織はおそらく長期間保存されるので、以前に用いられた滅菌手順よりもより厳密な滅菌手順が一般的に使用される。この段階で、一般的に生物学的組織を34〜38℃で約9時間滅菌する。
【0028】
滅菌後、生物学的組織を室温でグルタルアルデヒド中に貯蔵する(24)。
(熱を用いた組織処理)
ここで、図2について言及すれば、哺乳動物身体内への移植後の生物学的組織の石灰化を阻害するための、グルタルアルデヒド固定化生物学的組織の処理のための方法は、好ましくはグルタルアルデヒドが生物学的組織と接触している時、約4〜22週間、より好ましくは22週間以内の数日間、約35〜75℃に加熱するさらなる工程を含む。
【0029】
処理溶液は、体温より高い温度(37℃)まで加熱されるべきであるが、組織あるいは処理溶液のいずれかに損傷を与えるほど高くはない。したがって好ましい加熱範囲は35〜75℃である。しかし、温度は石灰化の軽減の量および処理時間に影響を与えるので、好ましくは45℃と55℃との間であり、より好ましくは50℃±1℃の間である。
【0030】
生物学的組織の加熱は、動物またはヒトの死体からの組織採取後、そして哺乳動物身体内への組織移植前の任意の時に、行われ得る。しかし、生物学的組織の加熱は、先行技術によるプロセスの種々の段階で生ずるような、好ましくは生物学的組織調製のためのプロセス内の、生物学的組織が既にグルタルアルデヒド溶液の槽中に配置された時点で行われる。従って、本発明によるグルタルアルデヒド固定化生物学的組織を処理するための方法は、好ましくはグルタルアルデヒド溶液で、生物学的組織を固定する間、グルタルアルデヒド溶液で生物学的組織を固定する直後、あるいはグルタルアルデヒド溶液中に貯蔵する直前または貯蔵した後のどちらかで、行われる。
【0031】
さらなる代替として、グルタルアルデヒド固定生物学的組織を処理するための方法は、グルタルアルデヒドを抗無機質化溶液に添加し、そして好ましくは約4〜22週間、約35〜75℃に溶液を熱することにより、抗無機質化処理の間に行われ得る。より好ましくは、組織は、22週間以内の数日間、50℃±1℃で熱処理される。
【0032】
例えば、室温で少なくとも3時間、適切な濃度、例えば0.2%と0.8%との間の、緩衝化グルタルアルデヒド溶液を用いて組織を固定した(14)後に、生物学的組織は、同じあるいは異なるグルタルアルデヒド溶液のいずれかで、好ましくは約35〜75℃で22週間以内の数日間、熱処理され得る(15)。
【0033】
上記の代替の1つとして、生物学的組織を、0.2〜0.8%グルタルアルデヒド溶液中で、再度好ましくは約35〜75℃で22週間以内の数日間、同時に固定し、熱処理する(13)。別の代替は、固定(21)の前に生理食塩水中で組織を熱すること(17)である。
【0034】
上記の他の代替として、生物学的組織は抗無機質化処理および加熱処理を同時に行い得る(19)。哺乳動物身体内への移植後の組織の石灰化の阻害をもたらすために、グルタルアルデヒドを抗無機質化溶液に加える。
(相対的組織/流体運動を用いた組織処理)
図3は、本発明の組織処理システム20の好ましい実施態様を図示する。1片あるいはそれ以上の組織22あるいはリーフレットが、閉じた容器25内の処理溶液24に浸漬される。容器25は振とうテーブル26上にあり、これはベース27に対して1方向あるいはそれ以上に、往復運動する。1つの特に好ましいタイプの振とう装置は、オービタルシェイカー(orbitalshaker)である。1つの例示の実施態様において、オービタルシェイカー26はほぼ55 RPMの回転速度で作動される。容器25およびその内容物は、図示するような放射ヒーター28のようなもので加熱される。もちろん、容器25を加熱するためのたくさんの方法が公知であり、例えば抵抗ヒーター、対流などである。
【0035】
溶液24は好ましくは緩衝化グルタルアルデヒドであるが、Denacol(登録商標)あるいはその他の、これに関して実質的に同じ作用をするあらゆる化学品溶液であり得る。振とうおよび/または熱が、固定化の間あるいは固定化後、加えられ得る。組織は好ましくは、本明細書に記載する石灰化軽減処理の前に、少なくとも部分的に固定され、より好ましくは、組織は処理の前に固定化を完了する。好ましい実施態様では、30分〜14日の間の期間にわたって固定化された組織を、適切な濃度、例えば0.2%と0.8%の間の緩衝化グルタルアルデヒド溶液と共に、容器25に入れる。そしてこの溶液を30分間振とうし、その後、容器25を14日間静置する。
【0036】
組織22は、ウシ心膜組織のシート、プレカットしたリーフレット、または完全に形成したブタ心臓弁であり得る。プレカットしたリーフレットまたはブタ心臓弁を使用することの1つの潜在的な不利な点は、石灰化軽減処理の間の組織の収縮能が不均一であることである。この現象を堅実に、かつ正確に補うことは、不可能ではないが、困難であり得る。処理の後のリーフレットの最終形状を予測するには、個々のリーフレットの繊維の配向、厚さ、およびその他の特性を詳細にマッピングすることが要求される。したがって、好ましい手順は、組織のシートまたは片を容器に入れて、これを振とうおよび/または熱に供することである。その後、リーフレットを処理した組織から切り出す。
【0037】
溶液24中の組織22が自由に動き得ることが注目される。他の実施態様では、および図6の実施態様に関して以下に述べるように、組織は大きく動かないようにされ得るが、29で概略的に示す装置を用いるなどして、自由に収縮するようにできる。
【0038】
振とうにおける他の変更では、処理システム30が図4に示されており、ここで撹拌ロッド32が振とうテーブル28の代わりに容器34内に位置している。この撹拌ロッドは好ましくは容器を隔てて磁気的に作動されるが、シャフト駆動装置を有しても良い。撹拌ロッド32は好ましくは組織36をつぶさず、流体37を組織に対して穏やかに動かすのみであるように設計される。したがって、図示した実施態様において、1枚の濾紙38、またはその他の類似の多孔性基質あるいはメッシュが、容器の上縁にドレープされ、その中に組織片36が置かれる。この方法で、撹拌ロッド32が容器34中の流体37に回転またはその他のモーメントを与えるが、組織36は撹拌ロッドの上方にあり、その動きによって損傷を受けない。図4にも加熱された囲いまたはインキュベーター39が示されており、この中に装置30全体が置かれる。
【0039】
振とうのその他の形態では、処理溶液および組織サンプルを入れた多数のフラスコまたは容器が、回転するフェリス−ホイール(ferris−wheel)装置にクランプされる。この装置は傾斜した軸の周りで回転するホイールを有し、これによってフラスコが傾いた円形軌道に従う。この方法で、フラスコ内の流体が、ホイールの回転にしたがって、組織片を穏やかに洗う。
【0040】
図3および図4の容器25および34は、開いているか閉じているかであり得、それは主として処理流体の性質に依存する。グルタルアルデヒドは毒性の物質であり、蒸発して危険なガスを発生する。したがって、グルタルアルデヒドによる処理は好ましくは閉じた容器内で行われる。一方、例えばDenacol(登録商標)のような危険性の少ない物質もあり、このときは容器はフードの下で開けたままにされ得る。
【0041】
組織と処理流体との間の相対的運動は、石灰化の軽減を増すと信じられている。この結果の機構は完全には公式化されていないが、組織を囲む流体の物質輸送(masstransport)が関係し得る。実際に、1つの定石は、ある細胞物質、例えばタンパク質が、処理溶液によって組織から抽出あるいは除去され、この除去が、流体の運動によって、静止した処理方法と比べて増加する、というものである。すなわち、組織のあらゆる一部分を囲む流体が、流体中の組織の相対的運動によって、繰り返し補充される。本発明による様々な方法で処理した組織のサンプルに関する図12および図13に示す結果は、熱および相対的な組織/流体運動の組み合わせにより、ラットに移植した後のカルシウム捕捉の量が減少することを示しており、このことは、このような処理が、ヒトへの移植の石灰化を長期間あるいは短期間、軽減することを示唆している。
【0042】
図5は、図3または図4に示すシステムを用いて組織を処理するための好ましい方法を示すフローチャートである。図1および図2に関して記載した多くの細かい前処理および後処理を、簡潔にするために省略したが、依然として適用できる。まず、組織を採取し、すすぎ、固定して、好ましくは正方形または長方形の小片に切って、これからリーフレットを形成し得る。次に組織の小片を容器内の処理流体に浸漬し、流体を所定の温度まで加熱する。組織片と周囲の処理媒体との間に相対的運動を起こし、所定の時間、続ける。相対的な組織/流体運動の誘起は、本明細書に示すあらゆる配置(例えば、組織および流体の容器を振とうあるいは振動させるような)により、または処理流体を組織上に流すことにより、達成し得る。最後に、組織片を容器から除き、すすいで、後の使用のために貯蔵する。もちろん、組織を貯蔵するよりむしろ、処理工程の直後に直接リーフレットを形成し、組み立てて心臓弁にし得る。
【0043】
図3に示す放射ヒーター28を用いるなどして、溶液を周囲の空気を隔てて間接的に加熱し、約50℃プラスマイナス1℃の温度にする。容器を振とうするか、または流体を撹拌するかして、相対的な組織/流体運動を起こさせる。処理時間には14日間から2ヶ月間の幅があるが、好ましくは2ヶ月に近い。容器25は好ましくはガラス製の組織培養フラスコであり、約250mlの容積を有し、そして溶液は適切な濃度、例えば0.2%と0.8%の間の緩衝化グルタルアルデヒド溶液である。上記の通り、多数片の組織22を、容器25内で一度に処理し得る。組織と溶液の一つの提案される比率は、溶液150mlごとに対して約12のリーフレットまたはリーフレット大の組織片である。
(相対的組織/流体流れを用いた組織処理)
図6は、処理システム40の他の変形を概略的に示し、これは、容器の振とうまたは組織が入っている流体の撹拌に対して、組織を通過する流れを利用する。この流れが処理溶液と組織との間に相対的運動を生じさせ、これが、有利な石灰化軽減効果をもたらすと信じられている。
【0044】
システム40はフロー容器42を有し、この中に組織44が置かれる。多数の導管46によってフロー容器42の一方の端がポンプ50に、そして溶液レザバ48へと接続される。導管47は、破線で示してあるが、フロー容器42の他方の端とレザバ48との間に接続され得、閉じた循環ループを完成させる。ポンプは処理溶液を前進させ、矢印52で示す方向にシステム40を通過させる。組織44は好ましくは、56で概略的に図示する手段を用いて、フロー容器42内に束縛される。抵抗ヒーター54が、レザバ48を囲んで図示されている。浸漬ヒーターを用いるならば、これらは腐食性であり得る処理溶液に長期間さらされることに耐え得るものでなければならない。もちろん、一方あるいは両方の抵抗加熱要素54をレザバの周囲から除き得、または代替の加熱装置を用い得る。例えば、処理システム40、およびこれについてさらに図3および図4に示すシステム20または30を、より大きい囲いまたは部屋58内に収容し得、これが内部または外部ヒーターによって好ましい温度まで加熱される。図示した実施態様では、熱電対59が設けられて、フロー容器42およびレザバ48の両方の内部の温度を感知する。レザバ内の熱電対59は好ましくはフィードバックエレクトロニクスに接続され、レザバ内の流体の温度に基づいてヒーター56を制御する。これは、温度が高く上昇しすぎて組織を損傷し得るレベルになるのを防ぐためである。フロー容器内の温度は熱電対を用いてモニターされるが、これは安全のため、かつ処理流体の正確な温度プロフィルを記録するためである。
【0045】
システム40を用いた組織処理方法の基礎的な成分を、図7に示す。まず、組織を入手し、すすぎ、固定して、好ましくは正方形または長方形の小片に切り、これからリーフレットを形成し得る。
【0046】
組織(またはいくつかの例ではリーフレット)をフロー容器42内に置き、固定の間または固定後、流れにさらす。好ましい実施態様では、組織44はシステム40内で流れにさらされる前に少なくとも部分的に固定され、より好ましくは組織は処理の前に完全に固定される。そして組織片を処理容器内に置き、溶液をそれを通じて流し、組織片とその周りの処理媒体との間に相対的運動を開始させ、これを所定の時間続ける。溶液を容器の外で直接、または容器を加熱することにより間接的に、加熱する。最後に、組織片を容器から除き、すすいで、後の使用のために貯蔵する。もちろん、組織を貯蔵するよりむしろ、処理工程の直後に直接リーフレットを形成し、組み立てて心臓弁にし得る。
【0047】
図6を参照すると、組織をまず30分〜14日間の間にわたって固定して、フロー容器42内に置く。代替例では、組織をまず図3に示すように容器25内に置いて、30分間振とうする。固定化の後(または所望ならば振とうの後)、組織をフロー容器42内に置き、1分間に10ガロン〜15ガロン(38〜57lpm)の間の流速の溶液流れに、15日〜60日間の間、さらす。溶液は好ましくはレザバ48内で約50℃の温度まで直接加熱される。溶液は好ましくは0.2%〜0.8%の緩衝化グルタルアルデヒドであり、組織44は動かないようにされるが、収縮はできる。
【0048】
システム40内での組織処理の代替方法では、処理時間が30日と60日との間である。流速は平均して約1分間につき7.4ガロン(28 lpm)であり、フロー容器42内の流れに垂直な断面を通じて均一である。組織44は好ましくは長方形のウシ心膜であり、寸法が2インチかける4インチである。この大きさの組織サンプルは、処理の後で、1個または2個のリーフレットを形成するのに用いられ得る。
【0049】
上記のシステムおよび、流体の移動および/または組織の加熱に対する変形が利用可能であることを、当業者は理解する。例えば、組織を通過する溶液の流れは、フロー容器42の振動または振とう運動と組み合わされ得、これによってそれぞれの方法から得られるあらゆる石灰化軽減の利益が増加される。加えて、システム40は閉じた循環装置として図示されているが、新しい溶液をフロー容器42内にポンプで送り、容器を通した後で、排出し得る(したがって導管47を任意のものとして示す)。もちろん、これには手が出ないほど高価であり得る処理溶液をかなりの量必要とする。それでも、流れを含めた本発明の処理方法の有益な局面の理論的な機構の1つは、溶液が組織を囲む領域で絶えず補充されるので、化学的および/または生物学的材料(例えばタンパク質のような)の組織から溶液への最大物質輸送が実現されるということである。したがって、溶液をレザバを通じて再利用するのではなく、新しい処理溶液をインプットするシステムは、このことについては、理論的により効率が良い。
(フローカラム装置)
図8はフローカラム60の斜視図であり、これは図6に概略的に示したフロー容器42の置換物であり得る。カラム60は好ましくは透明なアクリルチューブ61であり、内径約6インチ(15.2cm)、高さ約6フィート(1.8 m)、および容積約10ガロン(38 l)である。シリンダー60の上端および下端はそれぞれキャップ62aおよび62bで閉じられ、これらはO−リング(図示せず)によりシリンダー60の内表面に密着されている。キャップ62bの中央にある下方入り口取付具64は導管を提供し、これによって処理溶液をシリンダー60の下端に導入する。同様に、キャップ62aに接続された上方取付具66は、処理溶液用の出口を提供する。ある長さのホース68によって下方取付具64がポンプ70に接続され、これが次にホース72によって流体レザバ74に接続される。循環処理システムがある長さのホース76によって完成され、これは上方固定具66をレザバ74に接続する。流体連結および必要条件を当業者は理解し、これらは本明細書ではさらに述べない。
【0050】
上記の通り、レザバ74内の溶液は好ましくは所望の温度まで直接加熱される。図示しないが、レザバは望ましくは1個または2個の浸漬式抵抗ヒーターを備える。熱電対77がレザバの温度を感知し、好ましくはフィードバックエレクトロニクスに接続されて、浸漬式ヒーターを制御し、溶液の温度が高く上がりすぎて組織を損傷し得るレベルにならないようにする。フロー容器内の温度は熱電対78を用いてモニターされ、これは安全のため、および処理流体の正確な温度プロフィルを記録するために、行われる。処理溶液自身が過剰の温度の影響を受けて損傷されるので、加熱は段階的に、温度制御性の良いヒーターを用いて、行うべきである。
【0051】
垂直フローカラムまたはシリンダー60は、ミシン目83を有する、多数の一定間隔のバッフル82によって、複数の垂直セクション80(図9に拡大して示す)に区分される。バッフルは実質的に円形の、ミシン目の付いた円盤であり、垂直シリンダー60内に水平に、流体流れに垂直に、配置される。個々のバッフル82の外径が、チューブ61の内表面と接触するか、または近接する。フローカラム60は垂直に図示されているが、他の配列でも機能する。しかし、垂直な流れ方向が、初めにフローカラムから気泡をパージするのを助けるので、好ましい。すなわち、例えば水平な流路とは対照的に、気泡がフローカラムから非常に短時間で自然に出てくる。ミシン目は図8および図9には明確に示していないが、図10に示してあることにもまた注目するべきである。
【0052】
バッフル82は一般的に、垂直支持ロッド84上に設けられ、このロッドはシリンダー60の軸に沿って延びる。支持ロッド84は底のキャップ62bと接触し、上方に延びて、上方キャップ62aに接近する。図8の下端に見られるように、支持ロッド84は好ましくはスタンド部材86まで延びており、このスタンド部材は1対の二又脚88を有し、この二又脚は入り口開口90のそれぞれの側の下方キャップ62bの頂面と接触する。この方法で、支持ロッド84はシリンダー60の軸に沿って位置され得、一方ポンプ70から流れる入り口をふさがない。
【0053】
上述の通り、バッフル82によってシリンダー60が複数の垂直セクション80に分割される。これに関して、垂直セクション80は、2つのバッフル82の間の領域を有する。図示した実施態様では、このような垂直セクション80が8つあり、これらの高さは7インチと8インチの間(17.8cm〜20.3 cm)である。カラム60の全高はほぼ6フィート(1.8 m)であり、したがって一番上のバッフルの上と一番下のバッフルの下とにスペースが残る。バッフル82は支持ロッド84上にスライド可能に設けられているので、所望ならば、これらの間の間隔を調節し得る。さらに、バッフル82をシステムから除けば組織片82を容易に設け得、その後、バッフルを支持ロッド上でスライドさせ、そしてそのロッドをチューブ61内に配置する。処理する組織片を特別の様式で支持ロッド84の周りに円周アレイ状に設ける。これは図9〜図11の記載により明らかである。
【0054】
シリンダー60の頂部には、垂直スペースが上方バッフルと上方キャップ62aとの間に作られ、この中で、中央の支持ロッド84が終わっている。スペースは、上方バッフル82を通過する流れが過度に乱されないことを保証し、上方の垂直セクション80の流れの水平断面が均一なままであるようにする必要がある。実際に、バッフル間のあらゆる水平断面を横切る流れが均一であることが、任意のある組織片を過ぎる流れが他の組織を過ぎる流れと等しくなることを保証するために、本発明の配置において重要である。このような均一な流れを保証する主要な機構は、バッフル82自身である。好ましくは、ミシン目83が十分多く、十分な直径を有して、これによってバッフルの82の断面積がオープンフローチャネルよりも少ない構造物質を有する。したがってバッフル82は、個々のフローセクション80を通じて均一な、層流ではない、上方への流れを保持するように設計される。
【0055】
シリンダー60の下端においては、最も下のバッフル82の下で、整流装置(flowstraightener)92が減速板(velocity reducer plate)94の真上に配置される。したがって開口90を通る入り口流れは、減速板94および整流装置92を通って上方に通過し、最下バッフル82に衝突する。減速板94は円盤状プレートであり、複数の開口96がそれに形成されている。これらの開口は板94上で比較的広く間隔を開けられており、流れをドラッグしてその速度を遅くする。整流装置92はハニカム構造に似ており、比較的密集した多数の別個のフローチャネルを有し、垂直寸法が減速板94やバッフル82より大きい。流れが開口90を通ってカラム60に入り、上方に流れ続けて減速板94および整流装置92を通過する。流れが整流装置92を通過した後で、最下バッフル82に衝突する。処理溶液は上方に流れて個々のバッフル82を通過し、個々の相次ぐセクション80に入り、カラム60の頂上に出る。カラム60は初め空気で満たされているが、上昇する処理溶液の流れがカラムを通って上方に通過するに連れて、外に押し出される。
【0056】
ここで図9を参照すると、垂直セクション80が拡大されており、複数の組織マウント100が上方バッフル82からぶら下がっているのが示される。組織マウント100はU字型部材102を有し、図11により明らかに示されている。図10はマウント100の円周状アレイが中央の支持ロッド84を囲んでいるのを示す。個々のマウント100がほぼ長方形の配置をしており、バッフル82で放射状に配向している。すなわち、U字型部材102の自由端が、同じような大きさに下向きに開けられた、バッフル82の開口104に挿入される。個々のマウント100のための開口104の1つは、支持ロッド84に接近して位置し、一方別のものはチューブ61に接近して位置する。開口104はバッフル82の厚さのほぼ半分にわたって延び、直径の小さい貫通孔106が上方に、バッフルの頂面まで続いている。この孔106は、処理が終わったときに、マウント100を開口104から押すのに必要である。好ましくは、U字型部材102の脚がわずかに外側に広がっており、これらが互いに圧搾されて、2つの開口104内に適合する。これにより、確実にきつく適合して、マウント100が開口104から外れて落ちない。
【0057】
長方形の組織片108を、縫合または他の方法でマウントに取り付ける。図示した実施態様では、個々の組織片108の下縁110がU字型部材102のブリッジ部に巻きつき、組織片の本体に線112に沿って縫い付けられる。この方法で、上方へのフローストリーム内の組織片108の主要な縁が丸くなり、したがって縫い付けによる摩擦や磨耗から保護される。1つまたはそれ以上の縫合114により、組織片108の上方の角がU字型部材112の脚の上端に接続される。好ましくは組織片108は、その垂直方向の長さに沿って1箇所または2箇所のみで接続され、組織が大きく動いたりはためいたりするのを防ぎ、一方で組織の自由な収縮を最大限に許容する。O−リング116または他の同様な装置が部材112の個々の脚に位置され、縫合114が脚から滑り落ちるのを防ぐ。処理溶液の上方へと流れ118もまた、個々の組織片108がほぼ平坦な配置を保持するのを助ける。
【0058】
組織片108を平坦な配置で、溶液の流れ方向に実質的に平行に設けることにより、等しい量の溶液が組織の両側に確実に接触する。すなわち、組織片が流れに対して傾斜していると、その背面が暴露される直接的な流れが少なくなり、渦流などが起こり得、さらに流体への暴露が不均一になる。加えて、好ましい平行な配向によって、長期にわたる処理期間の間、組織の伸長(例えば流体が組織の一方または他方の表面に向くと起こり得るような)が最小化される。
【0059】
個々の組織片108の平面が放射状に配向することによって、望ましくは、カラム60を通じて流れている流体と確実に均一に接触する。理想的には、バッフル82が図10に示すようにミシン目120を有し、これが均一な、層流でない流れを作る。同じ速度の流れが、支持ロッド84から外側の任意の半径方向の地点において、作り出される。もちろん、たとえ同じ心膜嚢からのものであっても、異なる組織片108は大きく異なる性質を有することが示されている。それでも、本発明の処理配置は、個々の組織片108における条件を最大限に均一化するよう設計されている。流体ヘッドの違いにより、容器の頂部と底部の広がりの間には処理条件にいくらかの変化があり得るが、本出願人は、このような変化は本明細書で述べる6フィート高のカラム60において最小であると信じている。
【0060】
好ましくは8個の垂直セクション80があり、これらの中に6片の組織108を設けて、計48片の組織を一度に処理する。もちろん、他の数のセクションおよびセクションごとの組織片数が可能である。本発明のフローカラムは、高品質に処理した生体補綴組織を一貫して製造するのに極めて適している。区分したフローカラムの、流れが均一で、個々の組織片108が垂直に配向したものは、均一性の高い処理を提供する。カラムの支持ロッド84全体に全てのバッフル82が取り付けられている、構成単位の性質は、製造において大きな利点である。組織の1バッチを処理し、そして除去すると、そのシステムをフラッシュした後で、新たなバッチを取り付け、処理する準備ができる。さらに、フローカラムは、相対的な組織/流体速度および温度のようなパラメーターを、システム全体にわたって高度に制御する目的にかなう。意味深いことに、カラムないには流れが停滞した大きな地帯がなく、特に個々の垂直セグメント80内にはない。
(ラット皮下試験)
図12および13は、様々な方法で処理し、ラットに数ヶ月間皮下移植し、取り出した組織から測定したカルシウム捕捉の結果である。これらのグラフは、熱処理のみのものはコントロールと比べてカルシウム捕捉が減少すること、および熱および運動で処理したものはさらにカルシウム捕捉が減少することを示す。多数の振とう、撹拌または運動装置を2つの異なる温度で用い、同様な、一般的な結果が得られた。
【0061】
図12は、3つのグループの、未処理および処理したウシ心膜組織のサンプルからの結果を示す。第一グループ(GLUT CONTROL)は、12個の組織サンプルからの平均測定値で約16%のカルシウムを示した。これらのサンプルは、過熱しない、静止したグルタルアルデヒドによる後固定化(post−fixation)処理に供したものである。第二グループ(HEAT)は、8個の組織サンプルからの平均測定値で約7%のカルシウムを示した。これらのサンプルは、50℃の温度に加熱した、静止したグルタルアルデヒドによる後固定化処理に供したものである。最後に、第三グループ(HEATAND SHAKING)は、7個の組織サンプルからの平均測定値で約4%のカルシウムを示した。これらのサンプルは、50℃の温度に加熱した、静止したグルタルアルデヒドによる後固定化処理に供したものである。3つ全てのグループの処理溶液は同一の、pH7.4の0.6% HEPES−グルタルアルデヒドであり、処理期間は等しく、2ヶ月間であった。第三グループを、ボトルまたは容器内で、80 RPMで作動される相互軌道振とう器(reciprocalorbital shaker)を用いて振とうした。ラットは全て生後約12日であり、組織サンプルは8週間、移植したままにした。
【0062】
図13は、未処理および処理したウシ心膜組織の多数のグループからの結果である。これらのグループのカルシウム捕捉の結果を、全処理摂生に依存して、異なった影付き棒で示す。したがって、黒い棒はグループ1を示し、コントロール(加熱も振とうもなし)であり、中央の影付き棒は、振とうおよび50℃の熱処理に供したサンプルを示し、右手の白い棒は、振とうおよび42℃の加熱処理に供したサンプルを示す。
【0063】
左側のグループ1はコントロールであり、2つのサブグループ(それぞれ7サンプル、4サンプル)の結果を示す。コントロールサンプルを2ヶ月間、pH 7.4の0.6%HEPES−グルタルアルデヒド内で、加熱および振とうなしで、処理した。個々のサンプルを生後16日のラットに移植し、3ヶ月と4ヶ月の間の期間、移植したままにし、その後、カルシウム試験のために取り出した。
【0064】
中央のグループ4〜6は全て、グループ1と同じ溶液中で同じ期間、50℃で加熱処理した。グループ2〜6間の処理摂生の違いは、組織/流体の相対的運動を起こすのに用いる方法である。それらの方法を図式的に、個々のグループの下に示す。グループ27は2つのサブグループ(7サンプルおよび8サンプル)を含み、それぞれを相互軌道振とう器に供した。グループ3 7は2つのサブグループ(2サンプルおよび11サンプル)を含み、それぞれを、底にマグネティックスターラーバーを入れたフラスコに入れた。グループ4は、2つのサブグループ(8サンプルずつ)をそれぞれ、フラスコ内を漂わせるのではなく、フィルター上に置いた以外は、グループ3と同じ方法である。グループ5は2つのサブグループ(12サンプルずつ)を含み、それぞれを第一容器内に入れ、傾斜したフェリスホイール装置を用いて、回転運動に供した。グループ6は2つのサブグループ(20サンプルおよび12サンプル)を含み、それぞれを第二容器内に入れ、同様に回転運動にさらした。
【0065】
右側のグループ7〜9は全て、グループ1〜8と同じ処理溶液内で同じ時間、42℃で熱処理した。再び、グループ7〜9の間の処理摂生の違いは、組織/流体の相対的運動を起こすのに用いる方法であり、各グループの下に図式的に示す。グループ7は2つのサブグループ(8サンプルおよび4サンプル)を含み、それぞれを相互軌道振とう器に供した。グループ8は2つのサブグループ(8サンプルおよび11サンプル)を含み、それぞれを、マグネティックスターラーバーを底に入れたフラスコ内に入れた。グループ9は、2つのサブグループ(8サンプルずつ)を、フラスコ内を漂わせるのではなく、フィルター上に置いたこと以外は、グループ8と同じ方法である。
【0066】
これらの試験から、振とうおよび加熱処理により、コントロールグループおよび熱処理のみのものに比べてカルシウム捕捉が減少することが明らかである。また、50℃での処理は実質的に42℃での処理より効果的であった。振とう/撹拌方法の違いの比較は、フラスコ内のマグネティックロッドを用いて撹拌すると、温度に関係なく、カルシウム捕捉の量が少なくなることを示すが、恐らく50℃では差はさほど大きくない。
【0067】
本明細書中に記載され、そして図面に示された、グルタルアルデヒド固定化生物学的組織を処理するための典型的な方法は、本発明の現在好ましい実施態様を表すことが理解される。確かに、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、種々の改変および付加がこのような実施態様に対してなされ得る。例えば、Denacol(登録商標)またはグルタルアルデヒド以外のアルデヒドのような種々の固定化剤は、本発明における使用にそれらを適するように、グルタルアルデヒドの特性と類似した特性を示し得る。それ故、同様に使用され得る。従って、これらおよび他の改変および付加は、当業者にとって自明であり、そして種々の異なる適用における使用に対して本発明を適応させるために実行され得る。さらに、本発明の範囲は、添付の請求の範囲を参照して規定されるべきである。
【符号の説明】
【0068】
20 組織処理システム20
24 処理溶液
25 容器25
30 組織処理システム20
40 組織処理システム20
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物身体内への移植後の生物学的組織の石灰化を阻害するために、処理された生物学的組織を製造する方法であって、以下の工程:
取得した生物学的組織を固定溶液中で固定する工程;
該固定された生理学的組織を、容器中の溶液に入れる工程;
該固定した生物学的組織を、該容器中で45〜55℃の温度で熱処理する工程;および
熱処理の間、該容器を少なくとも30分間の反復運動に供する工程
を包含する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、アルコール、ホルムアルデヒドおよびTween80を含む溶液に、前記生物学的組織を浸漬する工程
をさらに包含する、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、ここで、アルコール、ホルムアルデヒドおよびTween80を含む溶液に、生物学的組織を浸漬する工程が、該組織を滅菌するために実施される、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、アルコール、ホルムアルデヒドおよびTween80を含む溶液に、生物学的組織を浸漬する工程が、室温で、2時間に亘って実施される、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、前記時間が、4〜22週間の範囲である、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、前記時間が、14日間〜2ヶ月の範囲である、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、前記時間が、30日間〜60日間である、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、前記生物学的組織が、50℃±1℃の範囲の温度で熱処理される、方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、前記生物学的組織が、生理学的溶液およびグルタルアルデヒド溶液からなる群より選択される溶液中で熱処理される、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、前記生物学的組織が、グルタルアルデヒド溶液中で処理され、
該溶液が、以下:
a)26ml/lグルタルアルデヒド;
b)4.893g/l HEPES緩衝液
c)2.65g/l MgCl2・6H2O;
d)4.71g/l NaCl;
を含み、そして
e)残りが二重濾過されたH2Oであり、ここで、
該方法は、該溶液のpHを7.4に調整する工程をさらに包含する、
方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法であって、前記容器を反復運動に供する工程が、該容器を振とうする工程を包含する、方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法であって、前記容器を反復運動に供する工程が、前記溶液を回転する工程を包含する、方法。
【請求項13】
前記容器を反復運動に供する工程が、該容器を、回転するフェリス−ホイール(ferris-wheel)装置上に置く工程を包含する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記容器を反復運動に供する工程が、該容器を、軌道振とう器上に置く工程を包含する、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記容器を反復運動に供する工程の間、前記容器内で、前記浸漬された組織を動かないようにする工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記容器中の溶液が固定化溶液である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記容器中の溶液がグルタルアルデヒドである、請求項1に記載の方法。
【請求項1】
哺乳動物身体内への移植後の生物学的組織の石灰化を阻害するために、処理された生物学的組織を製造する方法であって、以下の工程:
取得した生物学的組織を固定溶液中で固定する工程;
該固定された生理学的組織を、容器中の溶液に入れる工程;
該固定した生物学的組織を、該容器中で45〜55℃の温度で熱処理する工程;および
熱処理の間、該容器を少なくとも30分間の反復運動に供する工程
を包含する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、アルコール、ホルムアルデヒドおよびTween80を含む溶液に、前記生物学的組織を浸漬する工程
をさらに包含する、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、ここで、アルコール、ホルムアルデヒドおよびTween80を含む溶液に、生物学的組織を浸漬する工程が、該組織を滅菌するために実施される、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、アルコール、ホルムアルデヒドおよびTween80を含む溶液に、生物学的組織を浸漬する工程が、室温で、2時間に亘って実施される、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、前記時間が、4〜22週間の範囲である、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、前記時間が、14日間〜2ヶ月の範囲である、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、前記時間が、30日間〜60日間である、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、前記生物学的組織が、50℃±1℃の範囲の温度で熱処理される、方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、前記生物学的組織が、生理学的溶液およびグルタルアルデヒド溶液からなる群より選択される溶液中で熱処理される、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、前記生物学的組織が、グルタルアルデヒド溶液中で処理され、
該溶液が、以下:
a)26ml/lグルタルアルデヒド;
b)4.893g/l HEPES緩衝液
c)2.65g/l MgCl2・6H2O;
d)4.71g/l NaCl;
を含み、そして
e)残りが二重濾過されたH2Oであり、ここで、
該方法は、該溶液のpHを7.4に調整する工程をさらに包含する、
方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法であって、前記容器を反復運動に供する工程が、該容器を振とうする工程を包含する、方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法であって、前記容器を反復運動に供する工程が、前記溶液を回転する工程を包含する、方法。
【請求項13】
前記容器を反復運動に供する工程が、該容器を、回転するフェリス−ホイール(ferris-wheel)装置上に置く工程を包含する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記容器を反復運動に供する工程が、該容器を、軌道振とう器上に置く工程を包含する、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記容器を反復運動に供する工程の間、前記容器内で、前記浸漬された組織を動かないようにする工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記容器中の溶液が固定化溶液である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記容器中の溶液がグルタルアルデヒドである、請求項1に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−31054(P2011−31054A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211453(P2010−211453)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【分割の表示】特願2005−235083(P2005−235083)の分割
【原出願日】平成10年5月18日(1998.5.18)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【分割の表示】特願2005−235083(P2005−235083)の分割
【原出願日】平成10年5月18日(1998.5.18)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【Fターム(参考)】
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