説明

石炭ミルの火災予防方法及びその装置

【課題】石炭ミルが非常停止や異常停止等により緊急停止したときに、簡単且つ確実に、石炭ミル内部炭の自然発火による火災を予防することができる石炭ミルの火災予防方法及びその装置を提供する。
【解決手段】石炭ミル1の異常を検出する異常検出手段と、前記石炭ミル1の異常を検出したときに石炭ミル1内部への空気流入を遮断する空気遮断手段と、空気流入を遮断後に前記石炭ミル1内部へ不活性ガスを所定圧力で所定容量注入する不活性ガス注入手段10とから構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭ミルの火災予防方法及びその装置に関し、石炭ミルの緊急停止時等における石炭ミル内部炭の自然発火による火災を予防するものである。
【背景技術】
【0002】
石炭ミルが非常停止や異常停止等により緊急停止すると、ボイラーに供給されるべき細かく砕かれた微粉炭が石炭ミル内部に残る。この微粉炭が高い温度にさらされた状態で石炭ミル内部に長時間滞留すると、自然発火する恐れがある。
従来、石炭ミルのトリップ時には、石炭ミル内部に蒸気を投入してミル本体内をイナート化し、炭塵爆発や自然発火を防止するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−29835号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の石炭ミルのイナート化方法では、石炭ミル内部に蒸気を投入するために、温度の低下により蒸気が結露して石炭ミル内部に石炭が付着し易い。このように石炭が付着したまま石炭ミルを起動すると、石炭ミル内部の温度が上昇したときに石炭が自然発火して爆発を起こす恐れがある。
【0005】
また、特許文献1には、石炭ミルのトリップ時に、ミル内の温度が所定の温度以上の時にのみ蒸気を投入し、所定の温度以下ではイナートガス(CO、N等)を投入してミル内の蒸気をパージし、温度低下時に石炭が付着しないように蒸気の投入を制御する石炭ミルのイナート化方法が記載されている。しかし、特許文献1に記載のイナート化方法は、装置が複雑になると共に手順が煩雑であるという課題があった。
【0006】
そこで、本発明は、石炭ミルが非常停止や異常停止等により緊急停止したときに、簡単且つ確実に、石炭ミル内部炭の自然発火による火災を予防することができる石炭ミルの火災予防方法及びその装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、石炭ミルの異常を検出する異常検出工程と、前記石炭ミルの異常を検出したときに石炭ミル内部への空気流入を遮断する空気遮断工程と、空気流入を遮断後に前記石炭ミル内部へ不活性ガスを所定圧力で所定容量注入する不活性ガス注入工程とからなる石炭ミルの火災予防方法を提供するものである。
【0008】
また、本発明は、前記異常検出工程が、石炭ミルトリップ、石炭ミル入口/出口の温度上昇、又は石炭ミル内部の火災の発生を検出するようにした請求項1に記載の石炭ミルの火災予防方法を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、前記不活性ガス注入工程が0.3〜0.5MPaの圧力で不活性ガスを前記石炭ミル内部へ注入するようにした請求項1又は2に記載の石炭ミルの火災予防方法を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、前記不活性ガス注入工程が、前記石炭ミル内部の上部に不活性ガスを注入する第一注入工程と、前記石炭ミル内部の下部に不活性ガスを注入する第二注入工程とからなる請求項1乃至3の何れかに記載の石炭ミルの火災予防方法を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、石炭ミルの異常を検出する異常検出手段と、前記石炭ミルの異常を検出したときに石炭ミル内部への空気流入を遮断する空気遮断手段と、空気流入を遮断後に前記石炭ミル内部へ不活性ガスを所定圧力で所定容量注入する不活性ガス注入手段とからなる石炭ミルの火災予防装置を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、前記異常検出手段が、石炭ミルトリップ、石炭ミル入口/出口の温度上昇、又は石炭ミル内部の火災の発生を検出するようにした請求項5に記載の石炭ミルの火災予防装置を提供するものである。
【0013】
また、本発明は、前記不活性ガス注入手段が0.3〜0.5MPaの圧力で不活性ガスを前記石炭ミル内部へ注入するようにした請求項5又は6に記載の石炭ミルの火災予防装置を提供するものである。
【0014】
また、本発明は、前記不活性ガス注入手段が、前記石炭ミル内部の上部に不活性ガスを注入する第一注入手段と、前記石炭ミル内部の下部に不活性ガスを注入する第二注入手段とからなる請求項5乃至7の何れかに記載の石炭ミルの火災予防装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る石炭ミルの火災予防方法によれば、石炭ミルの異常を検出する異常検出工程と、前記石炭ミルの異常を検出したときに石炭ミル内部への空気流入を遮断する空気遮断工程と、空気流入を遮断後に前記石炭ミル内部へ不活性ガスを所定圧力で所定容量注入する不活性ガス注入工程とからなる構成を有することにより、石炭ミルの異常を検出したときに、石炭ミル内部に不活性ガスを迅速に封入することができ、石炭ミル内部に滞留する微粉炭の自然発火による火災を予防することができる効果がある。
【0016】
また、本発明は、前記異常検出工程が、石炭ミルトリップ、石炭ミル入口/出口の温度上昇、又は石炭ミル内部の火災の発生を検出するようにした請求項1に記載の構成を有することにより、石炭ミルトリップ又は石炭ミル入口/出口の温度上昇時に、石炭ミル内部に不活性ガスを封入して微粉炭の自然発火による石炭ミル内部の火災を予防することができるのみならず、石炭ミル内部に万一火災が発生したときにも石炭ミル内部に不活性ガスを封入して消火することができる効果がある。
【0017】
また、本発明は、前記不活性ガス注入工程が0.3〜0.5MPaの圧力で不活性ガスを前記石炭ミル内部へ注入するようにした請求項1又は2に記載の構成を有することにより、石炭ミル内部の異常昇圧を防止することができ、且つ、石炭ミル内部に不活性ガスを迅速に封入することができる効果がある。
【0018】
また、本発明は、前記不活性ガス注入工程が、前記石炭ミル内部の上部に不活性ガスを注入する第一注入工程と、前記石炭ミル内部の下部に不活性ガスを注入する第二注入工程とからなる請求項1乃至3の何れかに記載の構成を有することにより、不活性ガスを石炭ミル内部全体に効率よく迅速に注入することができる効果がある。
【0019】
また、本発明に係る石炭ミルの火災予防装置によれば、石炭ミルの異常を検出する異常検出手段と、前記石炭ミルの異常を検出したときに石炭ミル内部への空気流入を遮断する空気遮断手段と、空気流入を遮断後に前記石炭ミル内部へ不活性ガスを所定圧力で所定容量注入する不活性ガス注入手段とからなる構成を有することにより、石炭ミルの異常を検出したときに、石炭ミル内部に不活性ガスを迅速に封入し、石炭ミル内部に滞留する微粉炭の自然発火による火災を予防することができる効果がある。
【0020】
また、本発明は、前記異常検出手段が、石炭ミルトリップ、石炭ミル入口/出口の温度上昇、又は石炭ミル内部の火災の発生を検出するようにした請求項5に記載の構成を有することにより、石炭ミルトリップ又は石炭ミル入口/出口の温度上昇時に、石炭ミル内部に不活性ガスを封入して微粉炭の自然発火による石炭ミル内部の火災を予防することができるのみならず、石炭ミル内部に万一火災が発生したときにも石炭ミル内部に不活性ガスを封入して消火することができる効果がある。
【0021】
また、本発明は、前記不活性ガス注入手段が0.3〜0.5MPaの圧力で不活性ガスを前記石炭ミル内部へ注入するようにした請求項5又は6に記載の構成を有することにより、石炭ミル内部の異常昇圧を防止することができ、且つ、石炭ミル内部に不活性ガスを迅速に封入することができる効果がある。
【0022】
また、本発明は、前記不活性ガス注入手段が、前記石炭ミル内部の上部に不活性ガスを注入する第一注入手段と、前記石炭ミル内部の下部に不活性ガスを注入する第二注入手段とからなる請求項5乃至7の何れかに記載の構成を有することにより、不活性ガスを石炭ミル内部全体に効率よく迅速に注入することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の実施の形態を図示する実施例に基づいて説明する。
本発明に係る石炭ミルの火災予防装置は、石炭ミル1の異常を検出する異常検出手段と、前記石炭ミル1の異常を検出したときに石炭ミル1内部への空気流入を遮断する空気遮断手段と、空気流入を遮断後に前記石炭ミル1内部へ不活性ガスを所定圧力で所定容量注入する不活性ガス注入手段10とから構成してある。
【実施例1】
【0024】
実施例において、異常検出手段は、石炭ミル1の非常停止や異常停止等による石炭ミルトリップを検出する石炭ミルトリップ検出手段、石炭ミル1の入口/出口の温度を測定するミル温度測定手段、及び石炭ミル1内部の火災の発生を検出する火災検出手段を設けてある。また、石炭ミル1には空気遮断手段を設けてあり、空気遮断手段は、異常検出手段によって石炭ミルトリップ、石炭ミル1の入口/出口の所定温度以上の温度上昇、又は石炭ミル1内部の火災の発生を検出すると、石炭ミル1内部への空気流入を遮断することができるように構成してある。
【0025】
図1に示すように、不活性ガス注入手段10は、炭酸ガスボンベ2と、水分分離器3と、気化器4と、電磁弁5,6とからなり、炭酸ガス(CO)を石炭ミル1内部に所定圧力で所定容量注入することができるように構成してある。図示の実施例において、不活性ガス注入手段10は、1台の石炭ミル1に対して炭酸ガスボンベ2本分の炭酸ガス(CO)を注入するようにしてあり、石炭ミル4台分と予備2本の10本の炭酸ガスボンベ2を備えている。また、炭酸ガスボンベ2には、集合元弁2aを設けてある。
【0026】
炭酸ガスボンベ2と水分分離器3の間には、ボンベ圧力計7を設けてあり、炭酸ガスボンベ2の圧力を測定することができるようにしてある。また、気化器4の出口には、気化器圧力計8を設けてあり、石炭ミル1に注入する炭酸ガス(CO)の圧力を監視することができるようにしてある。
【0027】
図1に示す実施例において、水分分離器3は、炭酸ガス(CO)中の水分を取り除くことによって、石炭ミル1内部で結露して石炭が付着するのを防止することができるようにしてある。気化器4は、気化器定圧弁4bを全開にし、気化器膨張弁4aの開度を調節することにより、炭酸ガスボンベ2から供給される炭酸ガス(CO)を所定の圧力に減圧して石炭ミル1内部へ注入することができるように構成してある。実施例では、炭酸ガス(CO)を0.45MPaに減圧して注入するようにしてある。なお、石炭ミル内部の異常昇圧を防止することができ、且つ、石炭ミル内部に不活性ガスを迅速に封入することができることから、0.3〜0.5MPaの圧力で炭酸ガス(CO)を注入するようにしてあることが好ましい。
【0028】
図1に示す実施例において、不活性ガス注入手段10は、石炭ミル1内部の上部に炭酸ガス(CO)を注入する第一注入手段と、石炭ミル1内部の下部に炭酸ガス(CO)を注入する第二注入手段とから構成してある。第一注入手段は、電磁弁5を開閉操作して冷たい炭酸ガス(CO)を石炭ミル1内部の上側から注入することにより、注入された炭酸ガス(CO)は石炭ミル1内部を降下して効率よく注入することができる。また、第二注入手段は、石炭ミル1内部の上部に炭酸ガス(CO)の注入完了後に、電磁弁6を開閉操作して炭酸ガス(CO)を石炭ミル1内部の下部に注入することができるように構成してある。
【0029】
また、不活性ガス注入手段10は、ボンベ圧力計7の値が0.6MPa以下になると集合元弁2a及び電磁弁5,6を閉じて、石炭ミル1内部への炭酸ガス(CO)の注入を完了することができるように構成してある。
【0030】
次に、本発明に係る石炭ミルの火災予防装置の作用について図2に基づいて説明する。
異常検出手段が、石炭ミルトリップ、石炭ミル1の入口/出口の所定温度以上の温度上昇、又は石炭ミル1内部の火災の発生を検出すると、空気遮断手段が、石炭ミル1内部への空気流入を遮断する。
【0031】
不活性ガス注入手段10は、第一注入手段により電磁弁5及び集合元弁2aを開き、気化器定圧弁4bを全開にすると共に、気化器膨張弁4aの開度を調節することにより、炭酸ガスボンベ2から供給される炭酸ガス(CO)を0.45MPaに減圧して石炭ミル1内部の上部へ注入する。第二注入手段は、石炭ミル1内部の上部に炭酸ガス(CO)の注入を確認後に、電磁弁6を開いて炭酸ガス(CO)を石炭ミル1内部の下部に注入する。
【0032】
不活性ガス注入手段10は、ボンベ圧力計7の値が0.6MPa以下になると、集合元弁2aを閉じ、電磁弁5,6を閉じて、石炭ミル1内部への炭酸ガス(CO)の注入を完了する。石炭ミル1内部に炭酸ガス(CO)を封入した状態で静置し、石炭ミル1内部の温度の低下を確認後に石炭ミル1を開放し、石炭ミル1内部残った微粉炭を取り除く。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る石炭ミルの火災予防装置の一実施例を示す構成図。
【図2】その一実施例を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0034】
1 石炭ミル
2 炭酸ガスボンベ
2a 集合元弁
3 水分分離器
4 気化器
4b 気化器定圧弁
4a 気化器膨張弁
5,6 電磁弁
7 ボンベ圧力計
8 気化器圧力計
10 不活性ガス注入手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭ミルの異常を検出する異常検出工程と、前記石炭ミルの異常を検出したときに石炭ミル内部への空気流入を遮断する空気遮断工程と、空気流入を遮断後に前記石炭ミル内部へ不活性ガスを所定圧力で所定容量注入する不活性ガス注入工程とからなる石炭ミルの火災予防方法。
【請求項2】
前記異常検出工程が、石炭ミルトリップ、石炭ミル入口/出口の温度上昇、又は石炭ミル内部の火災の発生を検出するようにした請求項1に記載の石炭ミルの火災予防方法。
【請求項3】
前記不活性ガス注入工程が0.3〜0.5MPaの圧力で不活性ガスを前記石炭ミル内部へ注入するようにした請求項1又は2に記載の石炭ミルの火災予防方法。
【請求項4】
前記不活性ガス注入工程が、前記石炭ミル内部の上部に不活性ガスを注入する第一注入工程と、前記石炭ミル内部の下部に不活性ガスを注入する第二注入工程とからなる請求項1乃至3の何れかに記載の石炭ミルの火災予防方法。
【請求項5】
石炭ミルの異常を検出する異常検出手段と、前記石炭ミルの異常を検出したときに石炭ミル内部への空気流入を遮断する空気遮断手段と、空気流入を遮断後に前記石炭ミル内部へ不活性ガスを所定圧力で所定容量注入する不活性ガス注入手段とからなる石炭ミルの火災予防装置。
【請求項6】
前記異常検出手段が、石炭ミルトリップ、石炭ミル入口/出口の温度上昇、又は石炭ミル内部の火災の発生を検出するようにした請求項5に記載の石炭ミルの火災予防装置。
【請求項7】
前記不活性ガス注入手段が0.3〜0.5MPaの圧力で不活性ガスを前記石炭ミル内部へ注入するようにした請求項5又は6に記載の石炭ミルの火災予防装置。
【請求項8】
前記不活性ガス注入手段が、前記石炭ミル内部の上部に不活性ガスを注入する第一注入手段と、前記石炭ミル内部の下部に不活性ガスを注入する第二注入手段とからなる請求項5乃至7の何れかに記載の石炭ミルの火災予防装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−237011(P2007−237011A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−59215(P2006−59215)
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】