説明

石炭乾燥装置及び石炭乾燥方法

【課題】単位発電量当たりの石炭消費量やCO2排出量を削減し得る石炭乾燥装置を提供する。
【解決手段】スチームチューブドライヤ1から排出される乾燥された乾燥石炭DCが投入可能なように、微粉砕機2が配置される。微粉砕機2で粉砕されて粉状になった石炭が投入可能なように、ボイラ3が取り付けられる。ボイラ3で発生した蒸気S1及びボイラ燃焼排ガスEG4が、第1過熱器4を介して高圧蒸気タービン7に送り込まれる。高圧蒸気タービン7と繋がる低圧蒸気タービン8から排気蒸気S5が排出されるが、この排気蒸気S5は復水器9に送り込まれる。復水器9で排気蒸気S5が復水されて、ドレインD1が熱交換機11に送り込まれ、熱交換機11で乾燥排ガスDEGと熱交換されて、乾燥排ガスDEGから熱回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単位発電量当たりの石炭使用量やCO2排出量を削減し得る石炭乾燥装置及び石炭乾燥方法に関し、石炭を燃料とする石炭火力発電設備に適用可能なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、石炭価格の高騰により、石炭火力発電所においては、高い水分を含有した高水分石炭を燃料として使用するようになってきている。しかし、高水分石炭を燃料とした場合、発電効率が低下して石炭の使用量が増加するだけでなく、CO2の排出量も増加する。さらに、石炭使用量が増加するのに伴い、石炭火力発電所の石炭破砕機やボイラの排ガスブロワの動力も増加する事から、経済的ではなかった。
【0003】
また、石炭火力発電所において石炭を一般に乾燥しているが、この石炭の乾燥は、ローラーミル等の微粉砕機で石炭を微粉砕する際に、微粉砕機に低酸素濃度のボイラ燃焼排ガスを供給することで、石炭の粉塵爆発を防止しながら微粉砕と共に行っている。この際、微粉砕機に供給するボイラ燃焼排ガスの温度で、乾燥の調整をし、ボイラ燃焼排ガスから空気加熱器等で熱回収する熱回収前の高温排ガスと熱回収後の低温排ガスを適宜混合して温度調整をしている。
【0004】
微粉砕機に供給するボイラ燃焼排ガスの量は、微粉砕機の風力分級能力等に関連するが、微粉砕機の振動の原因や過負荷の原因になるため、上限値と下限値がある。さらに、微粉砕機に供給するボイラ燃焼排ガスの温度は、微粉砕機の設計温度から上限値がある。従って、微粉砕機の仕様範囲を超えた高い水分を含有するような高水分石炭には従来対応できなかった。
【0005】
尚、微粉砕機に供給されたボイラ燃焼排ガスは、石炭の乾燥により発生した水蒸気と共に微粉砕石炭を伴ってそのままボイラに供給される。但し、省エネルギーの効果はないので、発電効率の向上やCO2の削減にはほとんど寄与しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−279621号公報
【特許文献2】特開平6−108058号公報
【特許文献3】特開2005−172391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この一方、蒸気タービンから蒸気を抽気して、該抽気蒸気を加熱源として空気を加熱し、微粉砕機に供給する方法も提案されている(特許文献1)。しかし、上記で説明したように高水分石炭にはこの特許文献1は適用できないし、微粉砕機での酸素濃度の上昇につながり、炭塵爆発の危険性が増大する欠点を有していた。
【0008】
他方、蒸気タービンから蒸気を抽気して、該抽気蒸気を加熱源として石炭を乾燥する方法も、既に提案されている(特許文献2)。しかし、石炭の乾燥排ガスは、集塵機で除塵された後、大気に通常放出されていて、熱回収(主に蒸発潜熱回収)をこの特許文献2も経済的に行うことはできなかった。
【0009】
尚ここで、石炭火力発電所の熱収支を考えると、入熱と出熱は概略次のようになる。入熱としては、燃料の熱量、燃焼空気(大気)の熱量、補給純水(室温)の熱量であり、また、出熱としては、復水器放散放熱量、排ガス熱量、機器等の放熱量、発電量である。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、単位発電量当たりの石炭消費量やCO2排出量を削減し得る石炭乾燥装置及び石炭乾燥方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る石炭乾燥装置は、ケーシング内に装入した石炭を、ケーシング内に設けた加熱用蒸気を流通させる加熱路の壁面を通して間接加熱するのに伴い乾燥排ガスを排出する間接加熱型乾燥機と、
乾燥後の石炭を燃料とする石炭燃焼ボイラと、
該石炭燃焼ボイラが発生する蒸気により駆動する蒸気タービンと、
蒸気タービンの復水器と、
前記間接加熱型乾燥機からの乾燥排ガスと前記復水器の復水を接触させて復水を加熱することで、乾燥排ガスのもっている熱を回収すると共に、この復水を前記石炭燃焼ボイラに送る熱回収手段と、
を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項1に係る石炭乾燥装置の作用を以下に説明する。
本請求項の石炭乾燥装置によれば、石炭を装入して加熱することで乾燥した石炭を間接加熱型乾燥機が排出し、この乾燥された石炭を石炭燃焼ボイラが燃焼して蒸気等の熱媒体を発生する。また、石炭燃焼ボイラで発生した熱媒体により蒸気タービンを駆動し熱媒体の温度が低下するが、間接加熱型乾燥機から排出された乾燥排ガスより熱回収手段が熱回収して、例えば復水とされるこの熱媒体を再加熱してから、この加熱された復水を石炭燃焼ボイラに送る。
【0013】
従って、本請求項の石炭乾燥装置によれば、蒸気タービンを駆動して温度が低下した熱媒体を熱回収手段が乾燥排ガスより熱回収して再加熱することで、従来用いられずに捨てられていた熱を有効利用できるようになった。このことから、単位発電量当たりの石炭消費量やCO2排出量を削減することが可能となるのに伴い、例えば石炭火力発電所等の石炭火力発電設備においてより効率的な発電が出来るようになった。なお、キルン、流動層乾燥機等の直接加熱型乾燥機でも適用自体は可能であるが、間接加熱型乾燥機の方が、乾燥排気ガス中の露点が高く、潜熱回収が容易で、潜熱回収量も大きくなる。それに伴い、発電効率の向上もより得やすい利点がある。
【0014】
ここで、入熱量を一定として発電量を増加させて発電効率を向上するには、復水器からの放散熱量を低減することや排ガス熱量を低減する事が有効である。これに伴い、従来は、蒸気タービンの途中から蒸気を抽気して、ボイラへの給水を加熱するいわゆる再生方式や、高圧蒸気タービンの排気蒸気をボイラで再過熱して次の蒸気タービンに供給するいわゆる再過熱方式により、復水器からの放散熱量を低減し発電効率の向上を果たしてきた。
【0015】
これに対して、本請求項では、蒸気タービンの拙気蒸気を使用してボイラへの給水を加熱する再生方式を採用することによって発電効率を向上できるだけでなく、蒸気タービンの抽気蒸気の加熱源として、ボイラで燃焼させる石炭を予め乾燥する乾燥機の乾燥排ガスを用いている。このことで、発電効率を向上し、単位発電量当たりの石炭消費量やCO2排出量を削減することができた。
【0016】
請求項2に係る石炭乾燥装置の作用を以下に説明する。
本請求項に係る石炭乾燥装置は請求項1と同一の作用を奏する。但し、本請求項では、前記熱回収手段が、前記乾燥排ガスと前記復水との間で間接的に熱交換する間接型熱交換器とされるという構成を有している。
【0017】
本請求項によれば、間接型熱交換機という簡単な装置により、乾燥排ガスの凝縮潜熱の約90%が回収できる。つまり、これにより乾燥機に供給した熱量の大部分を回収できるので、ボイラで発生させる必要蒸気量は、ほとんど増加する必要がなくなる。
【0018】
請求項3に係る石炭乾燥装置の作用を以下に説明する。
本請求項に係る石炭乾燥装置は請求項1と同一の作用を奏する。但し、本請求項では、前記熱回収手段が、乾燥排ガスが送り込まれる湿式スクラバーと、この湿式スクラバーの循環液と復水との間で熱交換する間接型熱交換器を含むという構成を有している。
【0019】
本請求項によれば、湿式ガススクラバー及び間接型熱交換機という簡単な装置により、乾燥排ガスの凝縮潜熱の約90%が回収できる。つまり、これにより請求項2と同様に、乾燥機に供給した熱量の大部分を回収できるので、ボイラで発生させる必要蒸気量は、ほとんど増加する必要がなくなる。
【0020】
請求項4に係る石炭乾燥装置の作用を以下に説明する。
本請求項に係る石炭乾燥装置は請求項1と同一の作用を奏する。但し、本請求項では、前記間接加熱型乾燥機内に送り込まれるキャリアガスと前記加熱用蒸気のドレインを熱交換してキャリアガスを加熱した後、前記加熱された復水と一緒に前記石炭燃焼ボイラに送るという構成を有している。
つまり、これにより石炭燃焼ボイラに送られる復水の温度が高まって、より効率的な石炭乾燥装置となる。
【0021】
請求項5に係る石炭乾燥装置の作用を以下に説明する。
本請求項に係る石炭乾燥装置は請求項1と同一の作用を奏する。但し、本請求項では、前記石炭燃焼ボイラの排ガスを、前記間接加熱型乾燥機内に吹き込むキャリアガスとして利用するという構成を有している。
つまり、石炭燃焼ボイラの排ガスをキャリアガスとして用いることで、より一層の効率化が図られる。
【0022】
請求項6に係る石炭乾燥方法は、石炭を装入して間接加熱型乾燥機で加熱することで、乾燥した石炭を排出すると共に乾燥排ガスを排出し、
次に乾燥された石炭を石炭燃焼ボイラで燃焼して蒸気を発生し、
この後、この蒸気で蒸気タービンを駆動し、
間接加熱型乾燥機から排出された乾燥排ガスより熱回収手段が熱回収して、蒸気タービンを駆動し温度が低下し、復水器で復水となったこの復水を再加熱すると共に、この加熱された復水を石炭燃焼ボイラに送る、
ことを含む。
【0023】
請求項6に係る石炭乾燥方法は、請求項1の石炭乾燥装置と同様に、発電効率を向上し、単位発電量当たりの石炭消費量やCO2排出量を削減することができる。
【0024】
請求項7に係る石炭乾燥方法の作用を以下に説明する。
本請求項に係る石炭乾燥方法は請求項6と同一の作用を奏する。但し、本請求項では、石炭を装入して間接加熱型乾燥機で加熱する際に間接加熱型乾燥機からドレインが排出され、このドレインにより、間接加熱型乾燥機に送り込まれるキャリアガスを加熱した後、
乾燥排ガスから熱回収した後の復水とこのドレインを混合するという構成を有している。
つまり、間接加熱型乾燥機から排出されるドレインによりキャリアガスを加熱することで、発電効率のより一層の向上が図れるようになる。
【0025】
請求項8に係る石炭乾燥方法の作用を以下に説明する。
本請求項に係る石炭乾燥方法は請求項6と同一の作用を奏する。但し、本請求項では、ボイラで石炭を燃焼する際に燃焼排ガスが排出され、
この燃焼排ガスの一部を間接加熱型乾燥機に送り込まれるキャリアガスとして使用するという構成を有している。
つまり、大気放散しているボイラの燃焼排ガスの一部を間接加熱型乾燥機のキャリアガスとして使用すれば、40℃程度まで顕熱も回収できて、発電効率のより一層の向上が図れる。
【発明の効果】
【0026】
以上に示したように本発明によれば、単位発電量当たりの石炭消費量やCO2排出量を削減可能な石炭乾燥装置及び石炭乾燥方法を提供することができる。
すなわち、本発明によれば、乾燥排ガスからの潜熱回収するための装置や、排ガスをキャリアガスとして供給するための装置といった簡単な設備の組み合わせで、単位発電量当たりの石炭消費量やCO2排出量を削減可能な石炭火力発電設備を提供する事ができるようにもなる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施の形態に適用されるスチームチューブドライヤの一部破断した斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態が適用される再過熱・再生方式の石炭火力発電設備を示す概略図であって、スチームチューブドライヤのキャリアガスがSTDキャリアガス加熱器で加熱される場合を示す。
【図3】本発明の第2の実施の形態が適用される再過熱・再生方式の石炭火力発電設備を示す概略図であって、スチームチューブドライヤのキャリアガスがボイラ排ガスとされる場合を示す。
【図4】本発明の第1の実施の形態が適用される再過熱・再生方式の石炭火力発電設備を示す概略図であって、乾燥排ガススクラバー及び間接型熱交換器を採用した場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明に係る石炭乾燥装置及び石炭乾燥方法の第1の実施の形態を、以下に図面を参照しつつ説明する。まず、本実施の形態を説明するに先立って、理解を深めるために本発明の実施の形態に適用される間接加熱回転乾燥機であるスチームチューブドライヤ(以下適宜STDという)の例について、図1に基づき予め説明する。
【0029】
図1に示すこのスチームチューブドライヤ1は、軸心周りに回転自在とされる回転筒30内において、両端板間に軸心と並行に複数の加熱管31が配管されていて、回転継手50に取付けられた熱媒体入口管51を通して、外部より送り込まれたSTD加熱用蒸気S11がこれらの加熱管31に加熱蒸気として供給され、各加熱管31に流通された後、熱媒体出口管52を介してこの加熱蒸気のドレインが排出されるようになっている。
【0030】
そして、被処理物を回転筒30内に装入する為にスクリュー等を有した図示しない装入装置がこのスチームチューブドライヤ1には備えられている。この装入装置の挿入口53より回転筒30内にその一端側から投入された被処理物である例えば水分を含有した石炭や有機物などを、加熱蒸気により加熱した加熱管31と接触させて乾燥させるようなる。これとともに回転筒30が下り勾配をもって設置されていることで、排出口54方向に順次円滑に移動させて、回転筒30の他端側からこの被処理物を連続的に排出させるようになっている。
【0031】
図1に示されるように、回転筒30は基台36の上に設置され、回転筒30の軸心と並行に相互に間隔を置いて配された2組の支承ローラ35,35によって、タイヤ34を介して支承されている。回転筒30の下り勾配および直径に合わせて2組の支承ローラ35,35間の幅およびそれらの長手方向傾斜角度が選択される。
【0032】
一方、回転筒30を回転させるために、回転筒30の周囲には、従動ギア40が設けられており、これに駆動ギア43が噛合し、原動機41の回転力が減速機42を介して伝達され、回転筒30の軸心回りに回転するようになっている。さらに、回転筒30の内部には、キャリアガス入口61からキャリアガスCGが導入され、これらキャリアガスCGは被処理物である石炭や有機物に含有される水分が蒸発した蒸気を同伴してキャリアガス排出口62より排出される。
【0033】
なお、上記スチームチューブドライヤ1の全体構成は一例であり、本発明は上記構成により限定されるものではない。
【0034】
図2は、本実施の形態が適用される再過熱・再生方式の石炭火力発電設備を示す概略図である。
この図2に示すように、スチームチューブドライヤ1から排出される乾燥された乾燥炭DCが投入可能なように、微粉砕機2が配置されており、また、この微粉砕機2で粉砕されて粉状になった乾燥炭DCが投入可能なように、ボイラ3が取り付けられている。ボイラ3で発生した蒸気S1及びボイラ燃焼排ガスEG4が、第1過熱器4に送り込まれるようになっていて、この第1過熱器4を通過した過熱蒸気S2が高圧蒸気タービン7に送り込まれて、この高圧蒸気タービン7が駆動されるようになっている。
【0035】
そして、この高圧蒸気タービン7は、低圧蒸気タービン8に連結されているだけでなく、図示しない発電機に繋がっていて、高圧蒸気タービン7と低圧蒸気タービン8とが連動して回転することで、電力を発生するようになっている。また、ボイラ燃焼排ガスEG4は第1過熱器4を通過して、ボイラ燃焼排ガスEG5として再過熱器5を通過するだけでなく、この後、ボイラ燃焼排ガスEG6として空気加熱器6に投入される。最終的には、ボイラ燃焼排ガスEG1となって、排ガスとされると共に、ボイラ燃焼排ガスEG2とされて微粉砕機2に送り込まれるようになっている。
【0036】
他方、過熱蒸気S2が投入された高圧蒸気タービン7からは排気蒸気S3が排出され、再過熱器5に投入されて、この再過熱器5で再過熱されて再過熱蒸気S4となり、低圧蒸気タービン8に供給されるようになっている。これに伴い、この低圧蒸気タービン8からは排気蒸気S5が排出されるが、この排気蒸気S5は復水器9に送り込まれるようになっていて、この復水器9で排気蒸気S5が復水されてドレインD1となる。この復水器9は熱交換機11に繋がっていて、このドレインD1が熱交換機11に送り込まれるようになり、この熱交換機11で乾燥排ガスDEGと熱交換されて、乾燥排ガスDEGから熱回収する。
【0037】
さらに、この熱交換機11はボイラ3に繋がっていて、このドレインD1は熱交換機11を通過してボイラ給水D2となって、ボイラ3に送り込まれるようになる。この際、低圧蒸気タービン8の途中から排出された蒸気の一部とされる抽気蒸気S9、S10及び、高圧蒸気タービン7の途中から排出された蒸気の一部とされる抽気蒸気S7、S8が、この途中に投入されて、ボイラ給水D2を加熱する。
【0038】
他方、スチームチューブドライヤ1から排出されたドレインD3は、STDキャリアガス加熱器10で外気A3を加熱してキャリアガスCGとすると共に、ドレインD4となってボイラ給水D2に混合されるようになっている。
【0039】
次に、本実施の形態が適用される石炭火力発電設備における手順を説明する。
図2に示すようにスチームチューブドライヤ1に石炭Cが供給されると、乾燥されて乾燥炭DCとなり、乾燥した乾燥炭DCを排出すると共に乾燥排ガスDEGを排出し、この乾燥炭DCが微粉砕機2で微粉砕される。他方、空気加熱器6前後の温度の相互に異なる出口燃焼排ガスEG6と出口燃焼排ガスEG1とが混合されて温度調整された排ガスEG2とされ、この排ガスEG2が微粉砕機2に供給され、この微粉砕機2が石炭を乾燥しながら微粉砕する。そして、この排ガスEG2が微粉砕物を同伴してボイラ3に供給され、このボイラ3内の図示しないバーナーで燃焼される。
【0040】
ボイラ3で発生した熱媒体である蒸気S1は、第1過熱器4においてボイラ燃焼排ガスEG4により加熱されて過熱蒸気S2となり、高圧蒸気タービン7に供給され、この高圧蒸気タービン7を駆動する。この高圧蒸気タービン7の途中から蒸気の一部が抽出されて抽気蒸気S7、S8となり、ボイラ給水D2を加熱する。残りの大部分の蒸気は、高圧蒸気タービン7から排気蒸気S3として排出され、再過熱器5でボイラ燃焼排ガスEG5により再過熱されて再過熱蒸気S4となり、低圧蒸気タービン8に供給される。
【0041】
低圧蒸気タービン8の途中から蒸気の一部は抽気蒸気S9、S10として排出され、同じくボイラ給水D2を加熱する。また、低圧蒸気タービン8の途中の1ケ所からSTD加熱用蒸気S11が抽気され、スチームチューブドライヤ1に供給される。この際のSTD加熱用蒸気S11の圧力は、3MPa以下望むらくはO.3MPa〜1.5MPaの範囲とされる。このSTD加熱用蒸気S11はスチームチューブドライヤ1で石炭Cを加熱して乾燥させ、凝縮してドレインD3となり排出される。このドレインD3は、STDキャリアガス加熱器10において外部から取り込んだ空気A3を加熱してキャリアガスCGとした後、ドレインD4となってボイラ給水D2の加熱に利用される。
【0042】
低圧蒸気タービン8の排気蒸気S5は復水器9で復水した後、熱交換機11で乾燥排ガスDEGから熱回収されて再加熱された後、ドレインD4と混合されて昇温し、さらに、前述のように高圧蒸気タービン7及び低圧蒸気タービン8の抽気蒸気S7〜S10で加熱され、ボイラ給水D2となりボイラ3に給水する。
【0043】
他方、再過熱器5から排出された出口燃焼排ガスEG6は、空気加熱器6でボイラ燃焼空気A1を加熱した後、燃焼排ガスEG1となって、大部分は図示していない排ガス処埋設備で処理された後、放出される。尚、空気加熱器6の代わりにボイラ給水を加熱する節炭器とすることもできる。
【0044】
次に、本実施の形態に係る石炭乾燥装置及び石炭乾燥方法の作用を以下に説明する。
本実施の形態によれば、石炭Cを装入して加熱することで乾燥した乾燥石炭DCをスチームチューブドライヤ1が排出し、この乾燥された乾燥石炭DCをボイラ3が燃焼して蒸気である熱媒体を発生する。また、ボイラ3で発生した蒸気により蒸気タービン7,8を駆動し蒸気の温度が低下して復水となるが、スチームチューブドライヤ1から排出された乾燥排ガスDEGより熱回収手段である熱交換機11が熱回収して、復水とされるこの熱媒体を再加熱する。
【0045】
従って、本実施の形態によれば、蒸気タービン7,8を駆動して温度が低下した復水を熱交換機11が乾燥排ガスDEGより熱回収して再加熱することで、従来用いられずに捨てられていた熱を有効利用できるようになった。このことから、単位発電量当たりの石炭消費量やCO2排出量を削減することが可能となるのに伴い、例えば石炭火力発電所等の石炭火力発電設備においてより効率的な発電が出来るようになった。
【0046】
さらに、スチームチューブドライヤ1から排出される乾燥排ガスDEGの露点が、通常80℃(0.546kg−H2O/kg−air)〜95℃であるのに対して、復水器9での復水の温度は通常30℃〜35℃とされている。この為、スチームチューブドライヤ1の乾燥排ガスDEGは、露点が40℃(0.04884kg−H2O/kg−air)程度まで復水で凝縮潜熱を回収する事ができる。
【0047】
すなわち、スチームチューブドライヤ1から排出される乾燥排ガスDEGと復水との間で熱交換する間接型熱交換器である熱交換機11により構成され、この乾燥排ガスDEGと復水との間で熱交換するという簡単な装置で、この乾燥排ガスDEGの凝縮潜熱の約90%が回収できる。
【0048】
以上より、上記方法で、スチームチューブドライヤ1に供給した熱量の大部分を回収できるので、ボイラ3で発生させる必要蒸気量は、ほとんど増加する必要がない。さらに、大気放散しているボイラ燃焼排ガス(通常120℃〜200℃)の一部をスチームチューブドライヤ1のキャリアガスCGとして使用すれば、40℃程度まで顕熱も回収できる。
【0049】
次に、本発明に係る石炭乾燥装置及び石炭乾燥方法の第2の実施の形態を、図3を参照しつつ説明する。尚、第1の実施の形態で説明した部材には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
第1の実施の形態ではSTDキャリアガス加熱器10により空気A3を加熱したが、本実施の形態では、ボイラ燃焼排ガスEG1の一部である排ガスEG7をキャリアガスCGとして用いるようにした。このことでも、排ガスの有効利用ができて、単位発電量当たりの石炭消費量やCO2排出量を削減することが可能となる。
【0050】
次に、本発明に係る石炭乾燥装置及び石炭乾燥方法の第3の実施の形態を、図4を参照しつつ説明する。尚、第1の実施の形態で説明した部材には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
第1の実施の形態では、ドレインD1が熱交換機11に送り込まれて、この熱交換機11で乾燥排ガスDEGと熱交換されて、乾燥排ガスDEGから熱回収するようになっていたが、本実施の形態では、スチームチューブドライヤ1から排出される乾燥排ガスDEGが乾燥排ガススクラバー12に投入されるようになっている。
【0051】
そして、乾燥排ガススクラバー12の循環液と復水との間で熱交換する間接型熱交換機13が、この乾燥排ガススクラバー12に隣り合って配置されている。従って、本実施の形態によれば、熱交換器が乾燥排ガススクラバー12及び間接型熱交換機13という簡単な熱交換器により、乾燥排ガスDEGの凝縮潜熱の約90%が回収できるようになる。
【0052】
次に、本発明に係る実施の形態による効果の一例を以下に説明する。
下記の表1には、各条件について石炭の水分を25%、15%、10%、5%にそれぞれ乾燥させた場合の発電端効率の値を示す。尚、この際の主蒸気条件は、10MPaで540℃であり、再過熱・再生方式を採用した。
【0053】
(表1)
水分率 25% 15% 10% 5%
STD 35.9% 36.2% 36.3% 36.4%
潜熱回収 36.3% 36.8% 37.0% 37.2%
潜熱回収+排ガス 36.4% 37.0% 37.2% 37.3%
【0054】
ここで、下記に各条件の内容を説明する。
「STD」とは、タービンの抽気蒸気を加熱源としてSTDを通常に用いて石炭を乾燥した場合である。
「潜熱回収」とは、STDの乾燥排ガスDEGから熱回収(潜熱回収)しこれを熱源として、復水を加熱した場合である。
「潜熱回収+排ガス」とは、上記潜熱回収だけでなく、大気放出前のボイラ排ガスをSTDのキャリアガスCGとして使用することを付加した場合である。
【0055】
上記のように、石炭を予備乾燥する事で発電端効率が向上することで、「STD」と比較して、「潜熱回収」や「潜熱回収+排ガス」の条件では、発電端効率が約O.5%〜1.0%程度向上していることが確認された。
【0056】
以上、本発明に係る実施の形態を説明したが、本発明は係る実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、乾燥機のキャリアガスとしては、空気やボイラ燃焼排ガスの一部だけでなく、窒素ガス等の不活性ガスの何れか、もしくはこれらの混合したガスから選ぶことができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、樹脂、食品、有機物などの乾燥をはじめとして、木質バイオマスや有機廃棄物などの乾燥などを目的とした乾燥に応用できる他、他の産業用機械に適用可能となる。
【符号の説明】
【0058】
1 スチームチューブドライヤ(間接加熱型乾燥機)
2 微粉砕機(微粉砕手段)
3 ボイラ(石炭燃焼ボイラ)
7 高圧蒸気タービン
8 低圧蒸気タービン
9 復水器
11 熱交換機(熱回収手段)
12 乾燥排ガススクラバー(熱回収手段、湿式スクラバー)
13 間接型熱交換機(熱回収手段)
30 回転筒(ケーシング)
31 加熱管(加熱路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング内に装入した石炭を、ケーシング内に設けた加熱用蒸気を流通させる加熱路の壁面を通して間接加熱するのに伴い乾燥排ガスを排出する間接加熱型乾燥機と、
乾燥後の石炭を燃料とする石炭燃焼ボイラと、
該石炭燃焼ボイラが発生する蒸気により駆動する蒸気タービンと、
蒸気タービンの復水器と、
前記間接加熱型乾燥機からの乾燥排ガスと前記復水器の復水を接触させて復水を加熱することで、乾燥排ガスのもっている熱を回収すると共に、この復水を前記石炭燃焼ボイラに送る熱回収手段と、
を備えることを特徴とする石炭乾燥装置。
【請求項2】
前記熱回収手段が、前記乾燥排ガスと前記復水との間で間接的に熱交換する間接型熱交換器とされる請求項1記載の石炭乾燥装置。
【請求項3】
前記熱回収手段が、乾燥排ガスが送り込まれる湿式スクラバーと、この湿式スクラバーの循環液と復水との間で熱交換する間接型熱交換器を含む請求項1記載の石炭乾燥装置。
【請求項4】
前記間接加熱型乾燥機内に送り込まれるキャリアガスと前記加熱用蒸気のドレインを熱交換してキャリアガスを加熱した後、前記ドレインを前記加熱された復水と一緒に前記石炭燃焼ボイラに送る請求項1記載の石炭乾燥装置。
【請求項5】
前記石炭燃焼ボイラの排ガスを、前記間接加熱型乾燥機内に吹き込むキャリアガスとして利用する請求項1記載の石炭乾燥装置。
【請求項6】
石炭を装入して間接加熱型乾燥機で加熱することで、乾燥した石炭を排出すると共に乾燥排ガスを排出し、
次に乾燥された石炭を石炭燃焼ボイラで燃焼して蒸気を発生し、
この後、この蒸気で蒸気タービンを駆動し、
間接加熱型乾燥機から排出された乾燥排ガスより熱回収手段が熱回収して、蒸気タービンを駆動し温度が低下し、復水器で復水となったこの復水を再加熱すると共に、この加熱された復水を石炭燃焼ボイラに送る、
ことを含む石炭乾燥方法。
【請求項7】
石炭を装入して間接加熱型乾燥機で加熱する際に間接加熱型乾燥機からドレインが排出され、このドレインにより、間接加熱型乾燥機に送り込まれるキャリアガスを加熱した後、
乾燥排ガスから熱回収した後の復水とこのドレインを混合する請求項6記載の石炭乾燥方法。
【請求項8】
ボイラで石炭を燃焼する際に燃焼排ガスが排出され、
この燃焼排ガスの一部を間接加熱型乾燥機に送り込まれるキャリアガスとして使用する請求項6記載の石炭乾燥方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−83031(P2012−83031A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229925(P2010−229925)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(000165273)月島機械株式会社 (253)
【Fターム(参考)】