説明

石炭灰溶融繊維化装置

【課題】石炭灰からフライアッシュファイバーを製造する装置において、エネルギーに電気を使用せず、未燃炭素分を除去する前処理が不要で、均質のフライアッシュファイバーを製造できるようにする。
【解決手段】石炭を燃料に用いて石炭灰を溶融し、溶融スラグをスラグタップから落下させる構造の溶融炉を備え、スラグタップの下部にスラグ池を設け、スラグ池に出滓口を設ける。また、前記出滓口は溶融スラグ溜まりが形成される構造とし、前記出滓口よりも高い位置で溶融スラグをオーバーフローさせる溶融スラグ出滓手段を設ける。さらに、前記出滓口から流出、落下する溶融スラグにエアーを吹き付けて繊維化する繊維化機を備える。出滓口から一定量の溶融スラグを排出させることができ、エアーノズルのエアー噴出量を一定に保つことで均質なフライアッシュファイバーを製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭灰を溶融して繊維化する石炭灰溶融繊維化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭焚きボイラから排出される石炭灰は、土壌改良材、セメント原料などに再利用されているが、大半は埋め立て処分されている。近年、石炭灰に微量含まれる有害物質の溶出及び埋立地の枯渇化が問題となり、石炭灰を溶融してスラグ化することが検討されている。スラグ化することで、有害物質の溶出を防ぎ、かつ減容化することができる。スラグの再利用も検討されており、石炭灰を溶融し、溶融スラグを水で急冷することにより製造された水砕スラグは、セメント用骨材、アスファルト路盤材として既に再利用されている。
【0003】
さらに、最近、石炭灰を溶融、繊維化し、ロックウール、グラスファイバー、セラミックファイバーの代替として有効利用を図ることが検討されている。以下、石炭灰を溶融、繊維化して製造したものをフライアッシュファイバーと記載する。フライアッシュファイバーの製造方法としては、バッチ式の電気炉法が知られている(たとえば、特許文献1参照)。電気炉法は最高2000℃まで高温化できるため、多種類の石炭灰を対象にでき、品質の高いフライアッシュファイバーを製造できる点で優れている。しかし、石炭灰には未燃炭素分が5%以下含まれており、電気炉内から一酸化炭素ガスが発生し、通電阻害を起こす問題がある。これを防ぐためには、予め未燃炭素分を除去する焼成工程が必要になる。電気炉法では、エネルギーとして高価な電気を使用し、さらに前処理の焼成工程を必要とするため、フライアッシュファイバーの製造コストは高くなる。
【0004】
【特許文献1】特開2004−137625号公報(要約)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、電気よりも安価なエネルギーを用いて石炭灰を溶融し、石炭灰に含まれる未燃炭素分を除去する前処理工程を不要にでき、しかも均質なフライアッシュファイバーを製造できるようにした石炭灰溶融繊維化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、石炭灰を溶融し繊維化する石炭灰溶融繊維化装置において、石炭を燃料として石炭灰を溶融し溶融スラグを下部のスラグタップから落下させる構造の溶融炉と、前記スラグタップから排出された溶融スラグを貯留するスラグ池と、前記スラグ池から溶融スラグを出滓する出滓口と、前記出滓口から流出し落下する溶融スラグに対してエアーを吹き付けて溶融スラグを飛散させ繊維化する繊維化機と、前記出滓口がその周囲に比べて窪み、前記出滓口よりも高い位置で溶融スラグをオーバーフローさせる溶融スラグ出滓手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、石炭灰を溶融するための炉に、電気よりも安価な石炭を燃料とする石炭燃焼式溶融炉を採用した。石炭燃焼式溶融炉では、石炭灰を直接溶融炉に投入することができ、また、石炭灰中の未燃炭素分を除去することができる。このため、石炭灰を予め焼成するための前処理工程が不要にでき、フライアッシュファイバーの製造コストを電気炉法に比べて低減することが可能である。
【0008】
また、本発明の石炭灰溶融繊維化装置は、出滓口で溶融スラグ溜まりを形成することにより、溶融スラグの排出量を一定に保つことができ、このため、エアーの噴出量を一定に保ち、均質なフライアッシュファイバーを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明において、溶融スラグ出滓手段は、溶融スラグをオーバーフローさせる出滓口を有する樋を、繊維化のために溶融スラグを流出落下する出滓口が設けられている樋とは別に備えることによって実現することができる。また、繊維化のために溶融スラグを流出落下する出滓口が設けられている樋に出滓口を設けることによって実現することができる。
【0010】
繊維化するための溶融スラグを流出落下させる出滓口は、φ10mm〜φ20mmの穴径であることが好ましく、また、その出滓口の周辺は厚さが50mm以下になっていること好ましい。これにより、安定したスラグ排出を実現することができる。
【0011】
溶融スラグ溜まりの下方には、出滓口から流出し繊維化機で繊維化されずに落下した溶融スラグ及び溶融スラグ出滓手段によって流出した溶融スラグを受ける水槽を設けて、溶融スラグを水砕スラグとして回収することが望ましい。また、加熱バーナを設けて、溶融スラグ溜まりの溶融スラグ、特に繊維化側の樋および繊維化側の出滓口に存在する溶融スラグを加熱することが望ましい。さらに、繊維化用の溶融スラグを流出落下する出滓口の近くに温度測定器を設けて、温度の測定値をもとに加熱バーナの負荷を制御することが望ましい。
【0012】
以下、図面を用いて、本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は本発明の実施例による石炭灰溶融繊維化装置の構成を示す概略図である。図2は、溶融炉とスラグ池の近傍の斜視図である。石炭灰を溶融する溶融炉は、コークスベッド、熱分解の直接式溶融炉及び表面溶融、旋回溶融の燃料燃焼式溶融炉が可能である。本実施例では、燃料燃焼式溶融炉の一種である旋回式溶融炉を用いた。
【0014】
旋回式溶融炉1は、炉本体の側壁に空気ノズル2、灰ノズル3および石炭ノズル4を備えており、石炭を燃料にして、旋回流によって炉底のスラグタップ5の上部で高温場を形成し、灰を溶融する。石炭の燃焼による排ガスは炉本体の上部から排出される。
【0015】
石炭灰は5%以下の未燃炭素分を含んでいるが、この未燃炭素分は旋回式溶融炉1で燃焼するため、石炭灰を予め焼成し、未燃炭素分を除去する前処理は必要でない。また、溶融炉本体のエネルギーとして安価な石炭を用いるので、製造するフライアッシュファイバーの製造コストを低減することができる。
【0016】
前記の高温場に炉内温度測定器7を設置し、炉内温度の測定値から溶融炉制御装置8を介して石炭ノズル4の石炭量を制御する。前記の高温場は、灰の融点以上の温度に保つ必要があり、それより低い場合には石炭量を増加して、温度を上昇させる。炉内温度測定器7の温度測定値が、溶融させる灰の融点以上に達した後、灰ノズル3から灰を供給する。灰を供給すると、炉内温度測定器7の温度が低下するので、この測定値が灰の融点以下に低下した場合には、石炭ノズル4から供給する石炭の量を増加させる。
【0017】
旋回式溶融炉1で溶融したスラグは、スラグタップ5から流下し、スラグ池6に滞留する。溶融スラグ10は、繊維化のための溶融スラグを誘導する樋15と、溶融スラグをオーバーフローさせるために誘導する樋25に分かれて流れる。
【0018】
樋15は先端部分が閉じられた構造をしており、樋15の底部に溶融スラグを排出するための穴すなわち出滓口16が設けられている。出滓口16はオーバーフロー側の樋25に設けられた出滓口26よりも低い位置に設けられているので、スラグタップ5からスラグ池6に流下した溶融スラグは、繊維化側の樋15、繊維化側の出滓口16に優先的に流下する。出滓口16は穴径を小さくする等により空間を小さくして、溶融スラグで埋まりやすい構造にすることが好ましい。溶融スラグ量が多い場合、スラグ池6から溢れた溶融スラグは、樋25を流れて出滓口26から排出される。オーバーフロー側の出滓口26は、空間を大きくし、溶融スラグで埋まりにくい構造にすることが望ましい。オーバーフロー方式を採用することにより、出滓口16の上部に形成されるスラグ溜まりの厚さを一定に保つことができ、出滓口16における溶融スラグの排出量を一定に保つことができる。
【0019】
オーバーフロー側の樋25の出滓口26から流下した溶融スラグは、スラグ排出筒24を経て水槽41に落下し、水砕スラグとして回収される。一方、繊維化側の出滓口16から流下した溶融スラグは、起動初期においては、溶融スラグの温度が繊維化に必要な温度に達していないため、エアーノズル12から空気を噴出せず、スラグ排出筒14を経て水槽41に落下させ、水槽41で急冷し、水砕スラグとして回収する。
【0020】
繊維化に必要な溶融スラグの温度は、一般にスラグタップ5及びオーバーフロー側の出滓口26から流下する溶融スラグの温度よりも高い。溶融スラグを繊維化に必要な温度にまで上昇させるため、加熱バーナ11によりスラグ池6の溶融スラグ、特に繊維化側の樋15及び繊維化側の出滓口16に滞留している溶融スラグを加熱する。温度測定器17は繊維化側の溶融スラグの温度を測定あるいは評価するものである。温度測定器を耐火材の内部に埋め込み、間接的に溶融スラグの温度を推定してもよい。また、本実施例における温度測定器17は、出滓口近傍の雰囲気温度を計測してもよい。雰囲気温度は加熱バーナ11の負荷変化に対して敏感であり、迅速に加熱バーナの負荷制御をすることができる。溶融スラグあるいは出滓口近傍の雰囲気の温度情報から加熱バーナ制御装置18を介して加熱バーナ11の負荷を制御する。樋15及び出滓口16に滞留している溶融スラグの温度が、繊維化に好適な溶融スラグ温度範囲以下であれば、加熱バーナ11の負荷を上げ、溶融スラグ温度を上昇させる。一方、繊維化に必要な溶融スラグ温度範囲よりも高ければ、加熱バーナ11の負荷を除々に下げ、繊維化に必要な溶融スラグ温度範囲にする。
【0021】
繊維化に必要な溶融スラグ温度に達した後、エアーノズル12から高速の空気を噴出し、溶融スラグを細かな液滴として飛散させ、繊維化する。液滴は繊維状になって凝固し、繊維回収装置13で回収される。本実施例では、繊維化機はエアーノズル12と繊維回収装置13とから構成した。繊維化側の出滓口16からの溶融スラグの排出量とエアーノズル12の噴出空気量を一定に保つことにより、均質なフライアッシュファイバーを製造することができる。
【0022】
繊維化作業を行わないときは、エアーノズル12からの空気の噴出を停止し、スラグ排出筒14を経て水槽41に溶融スラグを落下させ、水砕スラグとして回収する。なお、出滓口16を複数個設けて、大量生産をはかることも可能である。
【0023】
本実施例により、エネルギーとして電気を使用する場合に必要になる未燃炭素分を除去する前処理工程を行わずに、均質なフライアッシュファイバーを製造することができた。また、石炭灰を連続的に溶融し、繊維化できるようになった。
【実施例2】
【0024】
樋15の出滓口16近傍の構造を変更した実施例について、図3の(a)(b)(c)を用いて説明する。
【0025】
図3の(a)は、出滓口16の近傍の構造を示した平面図である。(b)は(a)のA−A断面図であり、(c)は(a)のB−B断面図である。本実施例では出滓口16の空間を小さくするために穴構造とした。また、(b)に示すように、出滓口16の上部はスラグ溜まりを形成するために窪みを有する凹構造とした。
【0026】
スラグ量80kg/h〜250kg/hで溶融試験した結果、溶融スラグ中には塊状スラグが混入することが分かった。この塊状スラグは、溶融炉に固着したスラグが脱落し、溶融スラグの流れに乗って搬送されたものであり、大きさは30〜40mm角である。
【0027】
穴径がφ10mm,φ15mm及びφ20mmの出滓口構造の樋を製作し、試験した結果、塊状スラグが出滓口を塞ぐことはあったが、出滓口は完全に塞がれることはなく、溶融スラグは流下し、塊状スラグは次第に溶融し、消滅した。穴径がφ10mmでは、溶融炉停止・冷却後に出滓口の底部がスラグで閉塞し、再起動時に出滓口の貫通作業が必要になった。一方、穴径がφ20mmでは、溶融運転時、出滓口の上部にスラグ溜まりが連続的に形成されず、スラグ排出量が変動した。穴径がφ15mmでは、溶融炉停止・冷却後の出滓口底部のスラグ閉塞はなく、溶融運転時に出滓口の上部にスラグ溜まりが連続的に形成され、スラグ排出量も安定した。このように、溶融炉を加熱する石炭量及び溶融する灰量が一定ならば出滓口の上部にスラグ溜まりを形成することでスラグ排出量が安定することがわかった。出滓口の穴径はφ10mm以上、20mm以下が好ましく、特にφ15mm前後のφ13〜17mmの範囲が好ましい。出滓口の穴径が塊状スラグの大きさよりも大きい場合には、塊状スラグが出滓口をすり抜け、製造繊維中に塊状スラグが混在するため、繊維の品質が悪化することが予想される。
【0028】
出滓口16の上部は高温状態にあるが、出滓口の穴底部は、溶融スラグを冷却する水槽41の水面に向かって熱放散し、温度が低下する。スラグ量が少ない場合、出滓口16の穴底部で溶融スラグが温度低下し、固化、閉塞する。そこで、A−A断面図及びB−B断面図に示すように出滓口の周辺部分の厚さを可能な限り薄くし、出滓口16の上部に溜まっている溶融スラグの熱で出滓口底部の温度低下を防ぐようにした。
【0029】
出滓口16の出滓口周辺部分の厚さが50mmと30mmの二つの出滓口構造を有する樋を製作し、溶融試験した結果、出滓口周辺部分の厚さが50mmでは、溶融炉の停止状態によっては停止・冷却後に出滓口16の穴が塞がることがあり、再起動するために出滓口を貫通させる作業が必要になった。一方、出滓口周辺部分の厚さが30mmでは、溶融炉停止・冷却後も出滓口が閉塞することはなかった。以上より、出滓口16の周辺部分の厚さは最大でも50mm以下とし、30mm前後の25〜35mmが特に好ましいことがわかった。
【0030】
図1において、出滓口16が閉塞した場合、出滓口16上部のスラグ溜まりは反対側の樋25の出滓口26と同じ高さにあるため、この状態で溶融炉を停止・冷却することになる。この場合、出滓口16の部分のみならず、スラグ池6および樋15および樋25の部分も解体・交換が必要になる。図3に示すように樋15の先端に先端空間19を備え、A−A断面図に示すようにオーバーフロー用の出滓口を設け、堰の高さを樋15と同じ高さにした。これにより、出滓口16が閉塞した場合でも、先端空間19から溶融スラグがオーバーフローして出滓することができた。この状態で、溶融炉を停止・冷却した場合、出滓口16の構造部だけを交換すれば良い。
【0031】
図1では繊維化用の出滓口16を有する樋とオーバーフロー用の出滓口26を有する樋を個別に設けたが、同一の樋に繊維化用の出滓口とオーバーフロー用の出滓口を設けることにより、樋構造を一つにすることができる。
【実施例3】
【0032】
図4及び図5は本発明の実施例による石炭溶融繊維化装置の他の実施例を示す概略構成図である。図5は図4の装置を加熱バーナ11の方向から見た図である。
【0033】
本実施例では、樋15の出滓口16の上部に監視窓20を設け、監視窓20を介して出滓口上部の溶融スラグ状態を監視するスラグ状態監視装置21を設けている。スラグ状態監視装置21には例えば放射式温度計を用いることができる。溶融スラグを繊維化する条件はスラグ粘度によって決まり、溶融繊維化試験によって検討した結果、1Pa・s以下であった。高温スラグほど低粘度の特徴があり、スラグ温度から粘度を評価することができる。スラグ温度と粘度の関係は、例えば高温回転式粘度計による基礎試験で得ることができる。
【0034】
出滓口16から溶融スラグが出滓する初期段階は、スラグ温度が低く高粘度であるが、次第にスラグ温度が上昇し、スラグ粘度1Pa・s以下に到達する。この条件が、繊維化機であるエアーノズル12と繊維回収装置13を起動する第一の成立条件である。
【0035】
さらに、安定した繊維を製造するためには、スラグ溜まりを形成した出滓が必要である。例えば、溶融試験でスラグ状態監視装置21にビデオカメラを用い、出滓口16の穴の開閉状態を監視できる。そして、ビデオカメラにより得られる出滓口付近の画像情報を解析することで、出滓口の穴の開閉状態を監視し、スラグ溜まりの形成を監視できる。また、その他の監視装置に使用するビデオカメラでも画像情報の解析によりスラグの状態を監視する。
【0036】
スラグ排出筒14に設けた監視窓35は、スラグがスラグ排出筒14を流下する状態を監視する窓であり、スラグ監視装置36として例えばビデオカメラを用いる。スラグ監視装置36でスラグ流下が確認されれば、出滓口16の穴の固化閉塞はなく、繊維化装置であるエアーノズル12と繊維回収装置13を起動する第二の成立条件となる。
【0037】
繊維化機を起動する二つの条件が成立した後、繊維化制御装置34によってポンプ33,39を制御しエアーノズル12と繊維回収装置13を起動することができる。ここで、スラグ監視装置36でスラグ流下が確認されなければ、出滓口16で溶融スラグが固化閉塞したことになるため、エアーノズル12と繊維回収装置13を起動せず、先端空間19から溶融スラグを排出し、水砕スラグを製造する。
【0038】
繊維化装置であるエアーノズル12と繊維回収装置13を起動した後は、監視窓37から繊維製造状態を監視する。例えば、繊維製造監視装置38にビデオカメラを用い、繊維製造が正常であるかどうかを監視する。異常があった場合には、繊維化制御装置34によってエアーノズル12と繊維回収装置13を停止する。
【0039】
スラグ排出筒14は水槽41に接続された水封構造とし、圧力測定器30とガス吸引口29を設け、圧力測定値をもとにガス吸引ポンプ32の出力をガス吸引制御装置31で制御する。旋回式溶融炉1の石炭及び加熱バーナ11の燃焼状態が不安定の場合、スラグ池6、樋15、出滓口16を通じてスラグ排出筒14内の圧力が変動する。スラグ排出筒14は水槽41によって水封されているが、圧力変動の程度が大きい場合、水槽14の水とともに燃焼ガスを装置外に漏洩させる危険性がある。また、エアーノズル12から空気を供給しているにもかかわらず、繊維回収吸引のためのポンプ33が稼動しない場合も、スラグ排出筒14が加圧され、水槽14から水とともにガスが装置外に漏洩する。これを防止するためには、スラグ排出筒14の内部の圧力を負圧に維持すればよい。スラグ排出筒内の圧力を圧力測定器30で監視し、ガス吸引制御装置31を介して、ガス吸引ポンプ32を制御する。これにより、スラグ排出筒14からの燃焼ガスの漏洩を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施例による石炭灰溶融繊維化装置の構成を示す概略図。
【図2】溶融炉とスラグ池の近傍の構造を示す斜視図。
【図3】出滓口近傍の構造を示す概略図。
【図4】石炭灰溶融繊維化装置の他の実施例を示す概略図。
【図5】図4の装置を加熱バーナの方向から見た概略図。
【符号の説明】
【0041】
1…旋回式溶融炉、2…空気ノズル、3…灰ノズル、4…石炭ノズル、5…スラグタップ、6…スラグ池、7…炉内温度測定器、8…溶融炉制御装置、10…溶融スラグ、11…加熱バーナ、12…エアーノズル、13…繊維回収装置、14…スラグ排出筒、15…樋、16…出滓口、17…温度測定器、18…加熱バーナ制御装置、19…先端空間、20…監視窓、21…スラグ状態監視装置、24…スラグ排出筒、25…樋、26…出滓口、29…ガス吸引口、30…圧力測定器、31…ガス吸引制御装置、32…ガス吸引ポンプ、33…ポンプ、34…繊維化制御装置、35…監視窓、36…スラグ監視装置、37…監視窓、38…繊維製造監視装置、39…ポンプ、41…水槽。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭灰を溶融し繊維化する石炭灰溶融繊維化装置において、石炭を燃料として石炭灰を溶融し溶融スラグを下部のスラグタップから落下させる構造の溶融炉と、前記スラグタップから排出された溶融スラグを貯留するスラグ池と、前記スラグ池から溶融スラグを出滓する出滓口と、前記出滓口から流出し落下する溶融スラグに対してエアーを吹き付けて溶融スラグを飛散させ繊維化する繊維化機と、前記出滓口が溶融スラグで埋まるように前記出滓口よりも高い位置で溶融スラグをオーバーフローさせる溶融スラグ出滓手段とを備えたことを特徴とする石炭灰溶融繊維化装置。
【請求項2】
石炭灰を溶融し繊維化する石炭灰溶融繊維化装置において、石炭を燃料として石炭灰を溶融し溶融スラグを下部のスラグタップから落下させる構造の溶融炉と、前記スラグタップから排出された溶融スラグを貯留するスラグ池と、前記スラグ池から溶融スラグを誘導する樋と、前記樋の出滓口から流出し落下する溶融スラグに対してエアーを吹き付けて溶融スラグを飛散させ繊維化する繊維化機と、前記樋の出滓口が溶融スラグで埋まるように前記出滓口よりも高い位置で溶融スラグをオーバーフローさせる溶融スラグ出滓手段とを備えたことを特徴とする石炭灰溶融繊維化装置。
【請求項3】
請求項2において、前記溶融スラグ出滓手段として、前記樋の出滓口よりも高い位置に出滓口を有する別の樋を備えたことを特徴とする石炭灰溶融繊維化装置。
【請求項4】
請求項2において、前記出滓口を有する樋に、前記出滓口よりも高い位置で溶融スラグをオーバーフローさせる出滓口を備えたことを特徴とする石炭灰溶融繊維化装置。
【請求項5】
請求項2において、前記出滓口を有する樋の前記出滓口の部分がその周囲に比べて窪んでおり、そこにスラグ溜まりが形成されるようにしたことを特徴とする石炭灰溶融繊維化装置。
【請求項6】
請求項1あるいは2において、前記出滓口がφ10mm〜φ20mmの穴径を有することを特徴とする石炭灰溶融繊維化装置。
【請求項7】
請求項1あるいは2において、前記出滓口の周辺の厚さが50mm以下であることを特徴とする石炭灰溶融繊維化装置。
【請求項8】
請求項1あるいは2において、前記出滓口から流出し前記繊維化機で繊維化されずに落下した溶融スラグ及び前記溶融スラグ出滓手段によって流出した溶融スラグを受ける水槽を備えたことを特徴とする石炭灰溶融繊維化装置。
【請求項9】
石炭灰を溶融し繊維化する石炭灰溶融繊維化装置において、石炭を燃料として石炭灰を溶融し溶融スラグを下部のスラグタップから落下させる構造の溶融炉と、前記スラグタップから排出された溶融スラグを貯留するスラグ池と、前記スラグ池から溶融スラグを誘導する樋と、前記樋の出滓口から流出し落下する溶融スラグに対してエアーを吹き付けて溶融スラグを飛散させ繊維化する繊維化機と、前記樋の出滓口が溶融スラグで埋まるように前記出滓口よりも高い位置で溶融スラグをオーバーフローさせる溶融スラグ出滓手段と、前記樋の出滓口の近傍に溜まっている溶融スラグを加熱する加熱手段を備えたことを特徴とする石炭灰溶融繊維化装置。
【請求項10】
請求項9において、前記加熱手段として、前記出滓口の近傍に溜まっている溶融スラグを加熱する加熱バーナと、溶融スラグ温度あるいは前記出滓口の近傍の雰囲気温度を測定して前記加熱バーナの負荷を制御する加熱バーナ制御装置を備えたことを特徴とする石炭灰溶融繊維化装置。
【請求項11】
石炭灰を溶融し繊維化する石炭灰溶融繊維化装置において、石炭を燃料として石炭灰を溶融し溶融スラグを下部のスラグタップから落下させる構造の溶融炉と、前記スラグタップから排出された溶融スラグを貯留するスラグ池と、前記スラグ池から溶融スラグを誘導する樋と、前記樋の出滓口から流出し落下する溶融スラグに対してエアーを吹き付けて溶融スラグを飛散させ繊維化する繊維化機と、前記樋の出滓口が溶融スラグで埋まるように前記出滓口よりも高い位置で溶融スラグをオーバーフローさせる溶融スラグ出滓手段と、前記樋の出滓口の上部に存在する溶融スラグの温度を測定する温度計測器と、前記温度計測器により計測された溶融スラグの温度が所定の温度範囲にあるときに前記繊維化機を稼動する繊維化機制御装置を備えたことを特徴とする石炭灰溶融繊維化装置。
【請求項12】
石炭灰を溶融し繊維化する石炭灰溶融繊維化装置において、石炭を燃料として石炭灰を溶融し溶融スラグを下部のスラグタップから落下させる構造の溶融炉と、前記スラグタップから排出された溶融スラグを貯留するスラグ池と、前記スラグ池から溶融スラグを誘導する樋と、前記樋の出滓口から流出し落下する溶融スラグに対してエアーを吹き付けて溶融スラグを飛散させ繊維化する繊維化機と、前記樋の出滓口が溶融スラグで埋まるように前記出滓口よりも高い位置で溶融スラグをオーバーフローさせる溶融スラグ出滓手段と、前記出滓口を監視し溶融スラグ溜まりを形成しているときに前記繊維化機を稼動するようにした繊維化機制御装置を備えたことを特徴とする石炭灰溶融繊維化装置。
【請求項13】
石炭灰を溶融し繊維化する石炭灰溶融繊維化装置において、石炭を燃料として石炭灰を溶融し溶融スラグを下部のスラグタップから落下させる構造の溶融炉と、前記スラグタップから排出された溶融スラグを貯留するスラグ池と、前記スラグ池から溶融スラグを誘導する樋と、前記樋の出滓口から流出し落下する溶融スラグに対してエアーを吹き付けて溶融スラグを飛散させ繊維化する繊維化機と、前記樋の出滓口が溶融スラグで埋まるように前記出滓口よりも高い位置で溶融スラグをオーバーフローさせる溶融スラグ出滓手段と、前記樋の出滓口から流出し落下する溶融スラグの流下状態を監視し溶融スラグの流れが連続しているときに前記繊維化機を稼動するようにした繊維化機制御装置を備えたことを特徴とする石炭灰溶融繊維化装置。
【請求項14】
石炭灰を溶融し繊維化する石炭灰溶融繊維化装置において、石炭を燃料として石炭灰を溶融し溶融スラグを下部のスラグタップから落下させる構造の溶融炉と、前記スラグタップから排出された溶融スラグを貯留するスラグ池と、前記スラグ池から溶融スラグを誘導する樋と、前記樋の出滓口から流出し落下する溶融スラグに対してエアーを吹き付けて溶融スラグを飛散させ繊維化する繊維化機と、前記樋の出滓口が溶融スラグで埋まるように前記出滓口よりも高い位置で溶融スラグをオーバーフローさせる溶融スラグ出滓手段と、前記樋の出滓口から流出し前記繊維化機で繊維化されずに落下した溶融スラグ及び前記溶融スラグ出滓手段によって流出した溶融スラグを受ける水槽と、前記樋の出滓口と前記水槽との間を包囲するように設けられたスラグ排出筒と、前記スラグ排出筒を負圧に制御する制御装置を備えたことを特徴とする石炭灰溶融繊維化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−233408(P2006−233408A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−22355(P2006−22355)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000217686)電源開発株式会社 (207)
【出願人】(000005441)バブコック日立株式会社 (683)
【Fターム(参考)】