説明

石炭燃焼のためのガス化装置及びサイクロン分離器

【課題】直接燃焼式石炭燃焼システムを提供する。
【解決手段】本石炭燃焼システム(100)は、石炭水スラリーを受けるように構成された入力部を有し、また石炭水スラリーを圧縮機(106)からの吐出空気と混合して該石炭水スラリーをガス化しかつ合成ガスを生成する旋回チャンバ(114)を含む。本システムは、旋回チャンバの第2の端部に直接結合されたサイクロン分離器(116)と、該サイクロン分離器の出力部に結合された第2段燃焼入力部(112)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー生産に関し、具体的には、ガスタービンにおける直接燃焼式石炭燃焼に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス化コンバインドサイクル(IGCC)は、石炭をガス−合成ガス(シンガス)に変化させるクリーンな石炭技術である。この技術は次に、石炭ガスを燃焼させる前に該石炭ガスから不純物を除去する。それにより、二酸化硫黄、微粒子及び水銀の低排出(エミッション)が得られる。それによりまた、従来型の微粉炭に比べて効率の改善が得られる。既存のIGCCプラントは、石炭ガス化に加えて得られた合成ガスの浄化を実行して粒子状物質のガスタービンへの持越しを防ぐようために大きな資本の設備を必要とする。
【0003】
基本的な問題は、従来型の石炭燃焼ボイラと競合するのを困難にするIGCCプラントのコスト及び複雑さである。複合サイクルプラント内で石炭を直接燃焼させることができることにより、より高い複合サイクル(CC)効率による温室効果ガス(GHG)エミッションが低減することになる。付随する問題は、ガスタービン内で石炭を直接燃焼させることにより、大きな速度での高温ガス通路の侵食又は付着物堆積及び性能低下が生じることである。
【0004】
固体石炭燃料における灰分及び不燃物は、従来型のIGCCプラント内では後処理及び分離設備、並びにその温度を分離設備に対する許容レベルまで低下させる合成ガスとの熱交換を介して対処される。1つの方策は、多段燃焼及びガスタービンから分離したサイロ設備における微粒子分離を実行することであった。別の方策は、ガス化装置としてオフボード流動床燃焼器を用い、続いてオンボード希薄燃焼器を用いることであった。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の1つの態様では、直接燃焼式石炭燃焼システムを提供する。この実施形態のシステムは、石炭水スラリーを受けるように構成された入力部を有する旋回チャンバを含む。旋回チャンバは、石炭水スラリーを圧縮機からの吐出空気と混合して該石炭水スラリーをガス化しかつ合成ガスを生成する。旋回チャンバはまた、合成ガスを放出するように構成された第2の端部を有する。この実施形態のシステムはまた、旋回チャンバの第2の端部に直接結合されたサイクロン分離器を含む。サイクロン分離器は、抽出ポートを有しかつ合成ガス内の粒子状物質を該サイクロン分離器の周辺部に集積させる。サイクロン分離器はまた、濃厚ガス流を出力する出力部を有する。本システムはまた、サイクロン分離器の出力部に結合された第2段燃焼入力部を含む。
【0006】
本発明の別の態様では、ガス化コンバインドサイクルプラントを提供する。この実施形態の本プラントは、第2段燃焼入力部を有するガスタービンと旋回チャンバとを含む。この実施形態の旋回チャンバは、石炭水スラリーを受けるように構成された入力部を有し、石炭水スラリーを圧縮機からの吐出空気と混合して該石炭水スラリーをガス化しかつ合成ガスを生成する。旋回チャンバはまた、合成ガスを放出するように構成された第2の端部を有する。この実施形態の本プラントはまた、旋回チャンバの第2の端部に直接結合され、また抽出ポートを有しかつ合成ガス内の粒子状物質をその周辺部に集積させるサイクロン分離器を含む。サイクロン分離器はまた、第2段燃焼入力部に対して濃厚ガス流を出力する出力部を有する。
【0007】
これらの及びその他の利点及び特徴は、図面と関連させてなした以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0008】
本発明は、本明細書と共に提出した特許請求の範囲において具体的に指摘しかつ明確に特許請求している。本発明の上記の及びその他の特徴及び利点は、添付図面と関連させてなした以下の詳細な説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係るシステムの実施例を示す図。
【図2】本発明のオンボード実施形態の実施例を示す図。
【図3】本発明のオンボード実施形態における濃厚段及び希薄段間の連結部の詳細図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
この詳細な説明は、図面を参照しながら実施例によって、その利点及び特徴と共に本発明の実施形態を説明する。
【0011】
IGCCプラントにおいて、本発明の実施形態を利用して、微粒子の全てではないがその殆どを除去するシステム及び方法を構成した高温ガス通路の寿命を改善することができる。一実施形態では、本発明は、石炭ガス化装置、微粒子(灰分、スラグ)除去のためのサイクロン分離器、合成ガスを燃焼させる第2段燃焼段、及びガスタービンに内臓された高温ガス通路内への遷移(トランジション)部を含む。一実施形態では、第2段燃焼段は、従来型の産業用缶型燃焼器と同様の構造を備えることができる。一実施形態では、ガス化装置は、ガスタービンに近接近させて配置しかつ合成ガスを第2段に導く冷却ダクトを備えた分離サイロ型ユニットとするか、又は缶型燃焼器構造と一体形にするかのいずれかとすることができる。一実施形態では、本システムは、熱回収蒸気発生器(HRSG)及び蒸気タービンを備えた従来型の複合サイクルプラント内に統合されることになる。第1段からのガス流の僅かな割合部分をサイクロン分離器内で抽出して、粒子状物質を取り除くことができる。この流からの熱は、蒸気ループとの間の熱交換を介して複合サイクルで利用することができる。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係るシステム100の実施例を示している。一実施形態では、システム100は、ガスタービン102を含む。ガスタービン102は、圧縮機106に結合された発電機104を含むことができる。圧縮機106は、燃焼室108に結合することができる。
【0013】
燃焼タービンとも呼ばれるガスタービン102は、燃焼ガス流からエネルギーを抽出する回転エンジンである。ガスタービン102は、それらの間に燃焼室108を設けた状態で下流タービン110に結合された上流圧縮機106を有する。エネルギーが、燃焼室108内でガス流に付加され、この燃焼室108内では、圧縮機106からの空気が燃料と混合されかつ点火される。燃焼により、ガス流の温度、速度及び体積が増大する。ガス流は、タービン110のブレード(図示せず)上に導かれ、タービン110を回転させかつ圧縮機106に動力供給する。
【0014】
一実施形態では、燃焼室108は、第2段燃焼入力部112を含むことができる。この第2段燃焼入力部112は、本明細書ではガスタービン102の「缶型構造物」の一部と呼ぶことができる。
【0015】
システム100はまた、旋回チャンバ114を含むことができる。旋回チャンバ114は、濃厚サイクロンサイロバーナとして実施することができる。旋回チャンバ114は、その第1の端部において入力燃料115を受けることができる。入力燃料115は、石炭水スラリーとすることができかつ蒸気を含むことができる。一実施形態では、石炭水スラリー(入力燃料115)は、旋回チャンバ114内で圧縮機106からの吐出空気と混合することができる。このように作動する時、旋回チャンバ114は、空気ブローガス化装置として作用する。旋回チャンバ114内で行なわれるガス化(燃焼)により、合成ガスが生成され、このガス化は、本発明の「濃厚段」の一部とすることができる。一実施形態では、旋回チャンバ114は、不活性(N2)担体と共に可燃生成物として主にCO及びH2を有する空気ブローガス化装置として作用しかつ合成ガスを生成する。
【0016】
合成ガスによる旋回流は、旋回チャンバ114の第2の端部に直接結合されたサイクロン分離器116に流入する。サイクロン分離器116において、旋回合成ガスのサイクロン流(矢印122で示すような)は、粒子状物質の幾らか又は実質的に全てをサイクロン分離器116の周辺部に向けて遠心分離させかつ該周辺部に集積させて抽出ポート120を通して抽出するようにする。
【0017】
濃厚段(これは旋回チャンバ114及びサイクロン分離器116の両方を含む)は、サイロ構造物におけるオフボードとするか又はオンボードとしてかつガスタービンの缶型構造物と一体形にするかのいずれかとすることができる。オンボード実施形態では、高温ガス流の全体積及び表面積を減少させることができる。サイクロン分離器116の出力は、濃厚ガス流118と呼ぶことにする。
【0018】
一実施形態では、付加的燃焼空気が、濃厚段からの濃厚ガス流118と混合されて、燃焼器108で燃焼させる希薄ガス流を生成する。燃焼器108内における燃焼は、本明細書では「希薄段」と呼ぶことができる。図1に示すようにシステムを作動させる利点には、それに限定されないが、直接石炭燃焼式ガスタービンの高温ガス通路における粒子充満を減少させること、従来型のIGCCに比べて資本コストを低下させること、ガス化及び分離処理における少ない熱損失により燃料効率を一層良好にすること、少ない配管及び圧力損失により効率を一層良好にすること、並びにあらゆる既存の技術よりも全体的に良好な効率で石炭を利用するのを可能にすることを含むことができる。
【0019】
図2は、本発明によるシステムの一実施形態を示している。この実施形態のシステムは、濃厚段140が希薄段150に直接結合されているいわゆる「オンボード」実施形態である。具体的には、この実施形態では、旋回チャンバ114は、サイクロン分離器116に直接結合される。サイクロン分離器116の出口端部117は、第2段燃焼段入力部112の一部分内に配置される。当然のことながら、抽出ポート120(図1)は、粒子状物質がサイクロン分離器から除去されかつ第2段燃焼段入力部112内に流れないように、配置することができる。
【0020】
この実施形態では、サイクロン分離器116の出口端部117から流出する濃厚ガス流118は、第2段燃焼段入力部112内に直接流入する。そこから、濃厚ガス流118は、燃焼室内に移動し、燃焼室内において、濃厚ガス流118は、付加的燃焼空気と混合されて希薄ガス流を生成し、この希薄ガス流が、燃焼器108内で最終的に燃焼される。
【0021】
図3は、いわゆるオンボード実施形態における濃厚段及び希薄段間の連結部の詳細図を示している。入力燃料115(一般的には、石炭水スラリーの形態の)は、旋回チャンバ114内で圧縮機吐出空気及び蒸気と混合される。このようにして、旋回チャンバ114は、空気ブローガス化装置として作用する。旋回チャンバ114は、サイクロン分離器116に直接結合される。サイクロン分離器116は、上部ダンプ領域302及び下部ダンプ領域304を含むことができる。旋回チャンバ114の出力は、上部ダンプ領域302においてサイクロン分離器116に流入する。上部ダンプ領域302内において、濃厚な部分酸化及び水シフト反応が安定化して、石炭+酸素をCO+H2に転換させる。
【0022】
下部ダンプ領域304は、分離器スロート領域306を含み、分離器スロート領域306は、サイクロン分離器116の外壁よりも狭い。遠心分離による粒子状物質は、サイクロン分離器の壁に沿ってスロート領域306の外側に集積する傾向にある。下部ダンプ領域304の底部において、蒸気冷却抽出マニホルド308及び抽出パイプ310が、濃厚生成物の僅かな部分を除去し、この僅かな部分が、遠心分離による粒子状物質(固体物質)の大部分を含む。
【0023】
第2段燃焼入力部112の入口スロート部312は、分離器スロート領域306から直接濃厚混合物を受ける。一実施形態では、付加的圧縮機吐出空気が、例えば圧縮機吐出空気入口314によって分離器スロート領域306及び入口スロート部312の周りの領域内の濃厚混合物に対して噴射される。従って、分離器スロート領域306及び入口スロート部312の周りの領域は、サイクロン分離器116から導出する高速ベンチュリセクションとして機能する。一実施形態では、混合率を高くして、化学量論的条件になる可能性を制限する。一実施形態では、次に希薄流が第2段燃焼入力部112の上部部分316内に流入すると、希薄反応が、第2の安定火炎として完了する。
【0024】
一実施形態では、第2段燃焼入力部112はまた、空気を供給してNOx反応を終了させる1以上の消炎/希釈空気入力318を含むことができる。一実施形態では、燃焼ガス320は、第2段燃焼入力部112から流出し、粒子状物質が大部分なくなった状態で従来型のトランジションピースを通してタービン(図示せず)内に流入する。
【0025】
限られた数の実施形態のみに関して本発明を詳細に説明してきたが、本発明がそのような開示した実施形態に限定されるものではないことは、容易に理解される筈である。むしろ、本発明は、これまで説明していないが本発明の技術思想及び技術的範囲に相応するあらゆる数の変形、変更、置換え又は均等な構成を組込むように改良することができる。さらに、本発明の様々な実施形態について説明してきたが、本発明の態様は説明した実施形態の一部のみを含むことができることを理解されたい。従って、本発明は、上記の説明によって限定されるものと見なすべきでなく、本発明は、特許請求の範囲の技術的範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0026】
100 システム
102 ガスタービン
104 発電機
106 圧縮機
108 燃焼室
110 下流タービン
112 燃焼入力部
114 旋回チャンバ
115 入力燃料
116 サイクロン分離器
117 出口端部
118 ガス流
120 抽出ポート
122 濃厚サイクロン流
302 上部ダンプ領域
304 下部ダンプ領域
306 スロート領域
308 抽出マニホルド
310 抽出パイプ
312 入口スロート部
314 圧縮機吐出空気入口
316 上部部分
318 空気入力
320 燃焼ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭燃焼システム(100)であって、
石炭水スラリーを受けるように構成された入力部を有し、前記石炭水スラリーを圧縮機(106)からの吐出空気と混合して該石炭水スラリーをガス化しかつ合成ガスを生成し、また前記合成ガスを放出するように構成された第2の端部を有する旋回チャンバ(114)と、
前記旋回チャンバ(114)の第2の端部に直接結合され、抽出ポート(120)を有しかつ前記合成ガス内の粒子状物質をその周辺部に集積させ、また濃厚ガス流(118)を出力する出力部(117)を有するサイクロン分離器(116)と、
前記サイクロン分離器(116)の出力部(117)に結合された第2段燃焼入力部(112)と
を備えるシステム。
【請求項2】
前記第2段燃焼入力部(112)に結合されたガスタービン(102)をさらに含む、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記濃厚ガス流(118)が、圧縮機からの吐出空気と混合されて希薄ガス流を生成する、請求項2記載のシステム。
【請求項4】
前記希薄ガス流が、前記ガスタービン(102)の燃焼器(108)内で燃焼される、請求項3記載のシステム。
【請求項5】
圧縮機(106)をさらに含み、前記圧縮機が、前記燃焼器(108)、旋回チャンバ(114)及びサイクロン分離器(116)に結合される、請求項4記載のシステム。
【請求項6】
前記圧縮機(106)に結合された発電機(104)をさらに含む、請求項5記載のシステム。
【請求項7】
前記サイクロン分離器(116)が、前記第2段燃焼入力部(112)に直接結合される、請求項1記載のシステム。
【請求項8】
前記サイクロン分離器が、
該サイクロン分離器の外壁よりも狭くなった分離器スロート領域(306)と、
前記分離器スロート領域の外側に配置された冷却抽出マニホルド(308)と、
前記冷却抽出マニホルド(308)に結合されかつ粒子状物質を除去するように構成された抽出パイプ(310)と
を備える請求項7記載のシステム。
【請求項9】
前記第2段燃焼入力部(112)が、前記分離器スロート領域(306)に結合された入口スロート部(312)を含む、請求項8記載のシステム。
【請求項10】
前記入口スロート部内における圧縮機吐出入口(314)をさらに含む、請求項9記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−90895(P2010−90895A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232064(P2009−232064)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】