説明

石積工事方法及び石積工事施工器具

【課題】石材が投入される際の網籠の変形等を防止する養生作業を合理化し、工期を短縮して施工コストを低減できる石積工事方法及び石積工事施工器具を提供すること。
【解決手段】網籠20の中に石材を詰めて石積みをする石積工事方法であって、網籠20の内側22に、内側22の全体を実質的に占めるように設けられると共に上下が開放した枠体11を配置する工程と、枠体11の内側へ石材30を充填する工程と、枠体11を網籠20から抜き取る工程とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、網籠の中に石材を詰めて石積みをする石積工事方法及びその石積工事方法に用いる石積工事施工器具に関する。
【背景技術】
【0002】
網籠の中に石材を詰めて石積みをする石積工事方法としては、かごマット工法がある。このかごマット工法によれば、崖法面、河川の護岸や河川敷等を、迅速に整備することが可能であり、石材を用いることから環境保全にも有効である。
なお、網籠の中に詰める石材としては、主に玉石、栗石、割石等の自然石が用いられる。但し、網籠の中には、上記の石材のみを詰めることに限定されるのではなく、他の機能性のある材料を詰めることも可能である。例えば、石材に相当する人工物や、植生を向上させるための植物繊維から成る塊状物を詰めてもよい。
【0003】
このかごマット工法に用いられる網籠は、一般的に、線径が4〜6mm程度の軟鋼線材に亜鉛アルミニウム合金めっき等の表面処理がなされた材料で形成された金網及び枠線材から構成されている。また、網目の大きさは、一般的に、65〜100mm角程度になっている。
このように網籠は、線材によって形成され、且つ網目が大きいため、変形し易い。また、内部に詰められる石の重量と比較して軽いため、石が詰められる前の現場に設置された状態では、滑って移動し易い。
【0004】
このため、従来は、網籠の回りを木製の板材等で囲って養生し、石材が投入される際に網籠が変形することを防止していた。この場合、その養生作業に労力がかかり、施工時間が長くなっていた。
これに対して、網籠の中に底のある木箱を入れ、その木箱の内部に詰石及び現地土等を投入し、その木箱ごと現場に設置する緑化用かごマットが提案されている。なお、この木箱ごと設置する工法は特殊な場合に利用できるが、一般的なかごマット工法ではないと考えられる。
【特許文献1】特開平11−343623号公報(第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
石積工事方法及び石積工事施工器具に関して解決しようとする問題点は、石材が投入される際に網籠の変形や設置場所からのズレが発生することを防止するため、養生作業に労力がかかり、施工時間が長くなっていることにある。
そこで本発明の目的は、石材が投入される際の網籠の変形等を防止する養生作業を合理化し、工期を短縮して施工コストを低減できる石積工事方法及び石積工事施工器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために次の構成を備える。
本発明にかかる石積工事方法の一形態によれば、網籠の中に石材を詰めて石積みをする石積工事方法であって、前記網籠の内側に、該内側の全体を実質的に占めるように設けられる共に上下が開放した枠体を配置する工程と、前記枠体の内側へ石材を充填する工程と、前記枠体を前記網籠から抜き取る工程とを有することを特徴とする。
【0007】
また、本発明にかかる石積工事方法の一形態によれば、前記網籠及び前記枠体が矩形に設けられており、前記網籠から前記枠体を抜き取る工程の該枠体を中途まで引き上げた時点において、該枠体の対向する一対の側壁に下方から高さ方向の中途部まで切り込まれて設けられた一対のスリットに亘って、前記網籠の上縁部が広がることを防止する線材状の補強材を挿通し、該補強材の両端を前記網籠に固定する工程を有することを特徴とすることができる。
【0008】
また、本発明にかかる石積工事方法の一形態によれば、前記枠体は、重機によって吊り下げて前記網籠の内側へ配置し、重機によって吊り上げて前記網籠から抜き取ることを特徴とすることができる。
また、本発明にかかる石積工事方法の一形態によれば、石材が充填された前記網籠を法面に複数段に配設し、該網籠による複数段の石積法面を形成することができる。
また、本発明にかかる石積工事方法の一形態によれば、石材が充填された前記網籠を法面に多数隣接させて配設し、該網籠によるスロープ状の石積法面を形成することを特徴とすることができる。
【0009】
また、本発明にかかる石積工事施工器具の一形態によれば、以上の石積工事方法に用いるべく設けられた前記枠体から成ることを特徴とする。
また、本発明にかかる石積工事施工器具の一形態によれば、前記枠体の上縁に、鍔が設けられていることを特徴とすることができる。
また、本発明にかかる石積工事施工器具の一形態によれば、前記枠体は矩形に設けられ、該枠体の四つの角上部に吊り下げ用の被吊掛部が設けられていることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかる石積工事方法及び石積工事施工器具によれば、石材が投入される際の網籠の変形等を防止する養生作業を合理化し、工期を短縮して施工コストを低減できるという特別有利な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明にかかる石積工事方法及び石積工事施工器具について最良の形態の一例を添付図面(図1〜8)に基づいて詳細に説明する。図1は本発明にかかる石積工事施工器具の一例を説明する斜視図である。図2は本発明に用いられる網籠の一例を示す斜視図である。また、図3〜8は本発明にかかる石積工事方法を説明する斜視図である。
【0012】
本発明にかかる石積工事施工器具10は、網籠20の中に石材30を詰めて石積みをする石積工事方法に用いられる。この石積工事施工器具10は、網籠20の内側22に、その内側22の全体を実質的に占めるように設けられると共に上下が開放した枠体11によって構成されている。
なお、網籠20の内寸法と、その内側22に嵌る枠体11の外寸法とのクリアランスは、石材30を網籠20内へ一杯に詰めるために原則的としては小さい方が良い。一方、枠体11を網籠20内に設置するための作業性の上では、クリアランスが大きい方が良い。従って、そのクリアランスは、作業性が良いところで可及的に小さく設定されればよい。
【0013】
そして、本発明にかかる石積工事方法では、この石積工事施工器具10を、網籠20の内側22に配置する工程と、枠体11の内側12へ石材30を充填する工程と、枠体11を網籠20から抜き取る工程とを有する。
この石積工事方法は、かごマット工法等の石積工法の特に養生作業を合理化するものである。なお、かごマット工法等の石積工法の基本については、周知であり、説明を省略する。
【0014】
枠体11は、図1に示すように、4面の側壁に囲まれた形態の矩形に設けられている。つまり、この枠体11の上下面には、蓋或いは底がなく、上下に開放された角筒状となっている。また、平面的には長方形に形成されている。本形態では長辺と短辺の比が略2:1となっている。さらに、この枠体11は、実質的に網籠20の内側に配置されるが、高さ寸法が網籠20の高さよりも若干高く設定されている。これにより、枠体11の設置作業及び抜き取り作業を好適に行うことができる。
なお、側壁の板材は、投入される石材によって簡単に変形することがない程度の強度を要する一方、石材を効果的に詰めることと網籠20から抜き取る工程のためには極力薄くて軽い方が良い。そのような条件に適応するものとして、本形態では厚さ7mmの鋼板を用いている。
【0015】
この枠体11には、その枠体11の対向する一対の側壁11a、11bのそれぞれに、スリット13が設けられている。このスリット13は、長辺の側壁11a、11bの幅方向の中央部に設けられ、枠体11の下縁11eから、その枠体11の高さ方向の中途部まで切り込まれた溝状に形成されている。
このように一対のスリット13が設けられていることで、網籠20から枠体11を抜き取る工程のその枠体11を中途まで引き上げた時点において、網籠20の上縁部24が広がることを防止する線材状の補強材40を挿通できる(図6参照)。
【0016】
また、この枠体11の上縁11fには、鍔14が設けられている。この鍔14が設けられた部分は、外側に折り曲げられたアングル状に形成されている。本形態では、上縁11fの全周に亘って設けられている。この鍔14によれば、かごマット(網籠20)に石材30が当たることを防ぎ、網籠20が変形することを防止できる。
鍔14の大きさは、複数の枠体11を図4のように並べて配置する場合があるため、鍔14同士が重ならない程度に外方に張り出すように設定すればよい。例えば、厚さ7mmの鋼板から成る枠体11の側壁に対して約10mm程度張り出して形成されるとよい。これによれば、網籠20を好適に保護できると共に、複数の枠体11を並べる場合にも好適に配置できる。
【0017】
さらに、この枠体11の四つの角部11gには、吊り下げ用の被吊掛部15が設けられている。この被吊掛部15にワイヤ50を掛けて、そのワイヤ50で枠体11をバランスよく吊り下げて昇降させることができる(図3及び6参照)。なお、この被吊掛部15は、ワイヤ50で吊り下げるための形状となっていればよい。例えば、フック状に形成されていてもよく、周知の他の吊り下げ用の形態を利用してもよい。また、被吊掛部15が設けられる位置も角部11gに限定されるものではなく、吊り下げる際にバランスが取れる位置等に適宜に設ければよい。この吊り下げ作業は、パワーショベル等の重機を用いて行うことができる。機械化ができるため、作業性がよい。
なお、ワイヤ50で枠体11を吊り下げることに限定されるものではなく、専用の装置、例えばパワーショベルのアームの先端に取り付ける専用のアタッチメントを製作し、それを用いて枠体11を設置してもよい。
【0018】
次に、以上に説明した枠体11から構成された石積工事施工器具10によって、網籠の中に石材を詰めて石積みをする石積工事方法について、図2〜8に基づいて以下に説明する。
先ず、図2に示すような網籠20を現場に設置する。この網籠20は、底がある箱形状であり、蓋25が開閉可能に設けられている。なお、蓋25は別体に設けられる場合もあり、以下の説明では蓋25を省略して説明する。
【0019】
次に、図3に示すように、網籠20の内側22に、その内側22の全体を実質的に占めるように設けられると共に上下が開放した枠体11を配置する。本形態では、枠体11を、パワーショベル等の重機によってワイヤ50で吊り下げ、作業者がその枠体11を押さえて位置調整をしつつ網籠20内へ嵌め込む。図4は、長尺の網籠20の内側22に、二つの枠体11を隣接させて配置した状態を示している。
【0020】
次に、図5に示すように、枠体11の内側へ石材30を充填する。この作業は、パワーショベル等の重機を使用して効率的に行うことができる。この際、石材30を投入しても枠体11に保護されて網籠20が変形することを防止できる。また、枠体11の重量によって、網籠20の位置がずれることも防止できる。従って、作業性が良く、施工時間を大幅に短縮できる。
【0021】
次に、パワーショベル等の重機を使用して枠体11を網籠20から抜き取る。この工程の枠体11を中途まで引き上げた時点において、図6に示すように、その枠体11の対向する一対の側壁11a、11bに下縁から高さ方向の中途部まで切り込まれて設けられた一対のスリット13、13に亘って、網籠20の上縁部24が広がることを防止する線材状の補強材40を挿通する。
そして、その補強材40の両端を網籠20に固定する。補強材40は図6に示すように両端に折り曲げられて形成された係止部40a、40aが設けられている。この係止部40aを、網籠20の上縁部24の枠線材に引っ掛けることで、図7に示すように補強材40を網籠20に固定する。これにより、網籠20の上縁部24が広がることを防止して、石材30を網籠20内に好適に収納することができる。
【0022】
次に、枠体を重機によってさらに吊り上げて網籠20から完全に抜き取る。
そして、蓋25をして一つの網籠20にかかる石積工程が終了し、以上の工程を順次繰り返すことで、法面や護岸の石積面を構築する。
【0023】
以上の工法によれば、石材30が充填された網籠20を法面に複数段に配設し、その網籠による複数段の石積法面を好適に形成することができる(図8参照)。
また、石材30が充填された網籠20を法面に多数隣接させて配設し、その網籠20によるスロープ状の石積法面を好適に形成することができる。
そして、この工法によれば、上記のような機械化によって極めて迅速に施工できるため、特に災害時の復旧工事において、その緊急性に好適に対応できる。
【0024】
以上、本発明につき好適な実施の形態例を挙げて種々説明してきたが、本発明はこの実施の形態例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのは勿論のことである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る石積工事施工器具を示す斜視図である。
【図2】本発明に用いられる網籠を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る石積工事方法を説明する斜視図である。
【図4】本発明に係る石積工事方法を説明する斜視図である。
【図5】本発明に係る石積工事方法を説明する斜視図である。
【図6】本発明に係る石積工事方法を説明する斜視図である。
【図7】本発明に係る石積工事方法を説明する斜視図である。
【図8】本発明に係る石積工事方法を説明する斜視図である。
【符号の説明】
【0026】
10 石積工事施工器具
11 枠体
12 内側
13 スリット
14 鍔
15 被吊掛部
20 網籠
22 内側
30 石材
40 補強材
50 ワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
網籠の中に石材を詰めて石積みをする石積工事方法であって、
前記網籠の内側に、該内側の全体を実質的に占めるように設けられると共に上下が開放した枠体を配置する工程と、
前記枠体の内側へ石材を充填する工程と、
前記枠体を前記網籠から抜き取る工程とを有することを特徴とする石積工事方法。
【請求項2】
前記網籠及び前記枠体が矩形に設けられており、前記網籠から前記枠体を抜き取る工程の該枠体を中途まで引き上げた時点において、該枠体の対向する一対の側壁に下縁から高さ方向の中途部まで切り込まれて設けられた一対のスリットに亘って、前記網籠の上縁部が広がることを防止する線材状の補強材を挿通し、該補強材の両端を前記網籠に固定する工程を有することを特徴とする請求項1記載の石積工事方法。
【請求項3】
前記枠体は、重機によって吊り下げて前記網籠の内側へ配置し、重機によって吊り上げて前記網籠から抜き取ることを特徴とする請求項1又は2記載の石積工事方法。
【請求項4】
石材が充填された前記網籠を法面に複数段に配設し、該網籠による複数段の石積法面を形成することを特徴とする請求項1、2又は3記載の石積工事方法。
【請求項5】
石材が充填された前記網籠を法面に多数隣接させて配設し、該網籠によるスロープ状の石積法面を形成することを特徴とする請求項1、2又は3記載の石積工事方法。
【請求項6】
請求項1、2、3、4又は5記載の石積工事方法に用いるべく設けられた前記枠体によって構成されることを特徴とする石積工事施工器具。
【請求項7】
前記枠体の上縁に、鍔が設けられていることを特徴とする請求項6記載の石積工事施工器具。
【請求項8】
前記枠体は矩形に設けられ、該枠体の四つの角部に吊り下げ用の被吊掛部が設けられていることを特徴とする請求項6又は7記載の石積工事施工器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−70836(P2007−70836A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−257036(P2005−257036)
【出願日】平成17年9月5日(2005.9.5)
【出願人】(505334525)株式会社新光建設工業 (1)
【Fターム(参考)】