説明

石膏粒状特殊肥料の製造方法

【課題】 本発明は、建築廃材である石膏ボードの再利用が図られると共に、土壌への機械施肥が容易であり、空中への飛散による損失も殆ど無い、肥料として非常に有用な石膏粉末から成る石膏粒状特殊肥料の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 石膏層とシート層とを含んで成る石膏ボードから石膏粉末を得る準備工程と、前記石膏粉末を加圧成形して平板状の石膏フレークを得る加圧成形工程と、前記石膏フレークを粒状に破砕する破砕工程と、前記粒状に破砕された石膏フレークを篩い分けする篩い分け工程とを含む石膏粒状特殊肥料の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築廃材である石膏ボードを再利用した石膏粒状特殊肥料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、石膏を利用した粒状農薬や、粒状肥料の製造方法が多数開示されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照。)。特許文献1に係る粒状農薬は、繊維状石膏より形成された軽量球状石膏及び/又は繊維状石膏に、水又は水及び結合剤を加えて粒状化した担体と農薬有効成分より成る。繊維状石膏という特定の結晶形態を有する石膏を選択することによって、必ずしも結合剤を用いずとも粒状農薬を得ることを可能としたものである。一方、特許文献2に係る粒状肥料の製造方法は、石膏とフッ化カルシウムとを結合剤として使用する方法であり、特に粒状化が困難であったNK化成肥料の粒状化において、結合剤として石膏及びフッ化カルシウムを使用することによりNK化成肥料の粒状化を可能としたものである。
【0003】
また、本願発明者は、建築廃材として排出される石膏ボードを粉砕処理して粉末化された石膏分を取り出す粉末化装置を先に出願している(特許文献3参照。)。石膏ボードの粉末化装置を用いて得られた、粉末化された石膏分から成る特殊肥料は、施肥することによって土壌のpHを変えることなくカルシウム分を補給できる。また、土壌に硫黄成分を供給することもできる。更には、土壌を団粒化して、土壌の通気、排水を改善する効果もある。
【0004】
【特許文献1】特公昭61−36721号公報(請求項1)
【特許文献2】特許第3383224号公報(請求項1)
【特許文献3】特開2003−88775号(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述の粒状農薬は、繊維状石膏という特定の結晶形態を有する石膏のみから得ることができるものであり、通常の結晶形態、例えば粉状、粒状等の石膏からは粒状農薬を得ることはできなかった。
【0006】
また、粒状肥料の製造方法における石膏は、NK化成肥料の粒状化を可能とするための結合剤としてフッ化カルシウムと共に使用されるものであり、石膏を主成分とした粒状肥料を得ることは困難であった。
【0007】
更に、粉末化された石膏分から成る特殊肥料は、土壌に施肥することによって種々の効果が得られ、建築廃材の再利用も図られる点で非常に好ましい。しかし、一般に粉末状の肥料は、機械施肥が困難であると共に、空中への飛散による損失も多く、また飛散した肥料は環境汚染を招く恐れもある。
【0008】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、建築廃材である石膏ボードの再利用が図られると共に、土壌への機械施肥が容易であり、空中への飛散による損失も殆ど無い、肥料として非常に有用な石膏粉末から成る石膏粒状特殊肥料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、本発明の要旨とするところは、石膏層とシート層とを含んで成る石膏ボードから石膏粉末を得る準備工程と、前記石膏粉末を加圧成形して平板状の石膏フレークを得る加圧成形工程と、前記石膏フレークを粒状に破砕する破砕工程と、前記粒状に破砕された石膏フレークを篩い分けする篩い分け工程とを含む石膏粒状特殊肥料の製造方法である。
【0010】
かかる石膏粒状特殊肥料の製造方法において、前記石膏フレークの厚みは3.0mm乃至6.0mmであることが好ましく、より好ましいのは4.0mm乃至5.0mmである。
【0011】
かかる石膏粒状特殊肥料の製造方法において、前記篩い分け工程で使用する篩の目開きは1.40mm乃至7.00mmであることが好ましい。
【0012】
かかる石膏粒状特殊肥料の製造方法において、前記準備工程は、前記石膏ボードを粉砕して石膏ボード粉末を得る工程と、前記石膏ボード粉末から、風力分級手段によって、前記石膏ボードの粉砕時に生じる極微粒子が除かれた石膏ボード粉末を得る工程と、前記極微粒子が除かれた石膏ボード粉末から、篩い分け手段によって、前記石膏ボードの粉砕時に生じる粗粒子が除かれた石膏粉末を得る工程とを含み得る。
【0013】
かかる石膏粒状特殊肥料の製造方法において、前記篩い分け手段はトロンメルであることが好ましい。
【0014】
かかる石膏粒状特殊肥料の製造方法において、前記トロンメルが備える筒形の回転金網の網目は8メッシュ乃至16メッシュであることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の石膏粒状特殊肥料の製造方法によって得られる石膏粒状特殊肥料は、建築廃材である石膏ボードから得られる石膏粉末を主原料としているため、石膏ボードの再利用が図られると共に、粒状であるため土壌への機械施肥も容易であり、空中への飛散による損失も殆ど無い。
【0016】
また、本発明によって得られる石膏粒状特殊肥料は、石膏粉末を一旦、平板状の石膏フレークに加圧成形した後に破砕して粒状化されるため、石膏粉末を直接粒状化した場合に比べて適度な脆さを備えており、破砕時における粒度も比較的揃い易い。更に、本発明によって得られる石膏粒状特殊肥料は、従来の球状等の粒状肥料に比べて表面積が大きくなるため、水分を吸収し易く、土壌に施肥された際に分解され易い。
【0017】
また、本発明によって得られる石膏粒状特殊肥料の原料となる石膏粉末には、僅かではあるが紙片の破砕物が含まれており、石膏粒状特殊肥料を施肥した際に、この紙片が土壌の水分を吸収することにより石膏粒状特殊肥料の崩壊が促進される。すなわち、本発明によって、施肥後に土壌中で分解され易い石膏粒状特殊肥料が得られる。
【0018】
更に、本発明によって得られる石膏粒状特殊肥料は、石膏フレークを破砕することによって得られるため、従来の粒状肥料のように必ずしも粒子径が一定とはならず、大小のばらつきが生じる。従って、施肥した際には粒子径の細かいものから順次分解されていき、施肥後の早い段階で肥効が得られると共に、肥効を長期間にわたって持続させることができる。
【0019】
また、発明によって得られる石膏粒状特殊肥料は、土壌のpHを変えることなくカルシウム分の補給、硫黄成分の供給ができるため、肥料として非常に有用である。更に、石膏粒状特殊肥料には除塩効果もあり、土壌に硫黄成分を供給することもできる。また更に、土壌の団粒化や通気、排水の改善といった土壌の改質剤としても非常に好適に使用され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の態様について、図1に示す工程図に沿って説明する。本発明によって得られる石膏粒状特殊肥料は、石膏層とシート層を含んで成る石膏ボードから得られる石膏粉末を主原料とする。石膏ボードとしては、建築物の解体現場から大量に排出されたものや、建築現場において寸法取りで切り出された不要部分、或いは石膏ボードの製造時にトリミングされた不要部分等、従来は産業廃棄物として高価な廃棄コストを払って廃棄処理されていたものが使用できる。準備工程においては、まずこれらの石膏ボードから、例えば本願発明者が先に開示した石膏ボードの粉末化装置(特開2003−88775号)を使用して、石膏粉末を得る。
【0021】
具体的には、石膏から成る板状の石膏層と、紙等のシート層とを含んで成る石膏ボードを、粉砕機により細かく粉砕することによって石膏ボード粉末が得られる。次いで、石膏ボード粉末をサイクロン等の風力分級手段に導入して風力分級することにより、石膏ボード粉末中に存在する、空中に浮遊するような極微粒子が除去される。極微粒子は、石膏ボードの粉砕時に生じる、石膏及びシート層を構成する紙から成る。更に、この極微粒子が除かれた石膏ボード粉末から、トロンメル(回転篩)等の篩い分け手段によって、石膏ボードの粉砕時に生じる粗粒子が除去されて、石膏粉末が得られる。
【0022】
ここで、トロンメル(回転篩)は、筒形の篩エレメントの回転を利用して篩い分けを行う篩い分け手段であり、振動篩とは異なり、過激な力が石膏ボード粉末に影響しないため、篩い分けの過程で石膏粉末が砕けて極微粒子化することが殆ど無い。トロンメルは、筒形の篩エレメント、つまり筒形の回転金網を備えている。風力分級手段によって極微粒子が除かれた石膏ボード粉末は、この回転金網の内部に導入されて、石膏ボードの粉砕時に生じる粗粒子が除かれる。石膏ボードの粉砕時に生じる粗粒子は、シート層を構成する紙片、紙が付着したままの石膏、及び粒子径の大きい石膏片から成る。すなわち、本発明によって得られる石膏粒状特殊肥料の主原料となる石膏粉末は、石膏ボード粉末から、石膏ボードの粉砕時に生じる極微粒子及び粗粒子、特にシート層を構成する紙片が殆ど除去されたものである。なお、回転金網の網目は、8メッシュ乃至20メッシュであることが好ましく、より好ましいのは9メッシュ乃至16メッシュである。網目が8メッシュより粗いと、得られる石膏粉末に紙片が混入する恐れがある。一方、20メッシュより細かいと、石膏ボードの再利用率が低下するため好ましくない。
【0023】
以上の準備工程を経て得られた石膏粉末は、続く加圧成形工程において、加圧成形されて平板状の石膏フレークが形成される。石膏粉末を加圧成形する手段は特に限定されないが、特にコンパクティングマシンが好適に使用される。図2に示すように、コンパクティングマシン1は、縦型のフィーダ2を備えるホッパ3と、回転する二個のロール4とで構成されている。ホッパ3に石膏粉末5を投入すると、フィーダ2によって脱気と予備圧縮されながら二個のロール4間に供給される。そして、このロール4間に供給された石膏粉末5は、ロール4間で圧縮成形され、平板状の石膏フレーク6となって排出される。
【0024】
コンパクティングマシン1で成形された石膏フレーク6は、破砕工程において、ハンマークラッシャ等の公知の破砕機で粒状に破砕される。更に、この粒状に破砕された石膏フレークを篩い分け工程において篩い分けすることによって、製品として好ましい所定の粒子径の範囲に収まる石膏粒状特殊肥料7が得られる。この時、所定の粒子径の範囲未満のものは、ホッパ3に戻されて石膏フレーク6に成形された後、破砕される。一方、所定の粒子径の範囲を超えるものは、所定の粒子径の範囲に収まるように更に破砕される。
【0025】
ここで、石膏粒状特殊肥料7の粒子径は、篩い分けで使用される篩の目開きを意味し、製品として好ましい粒子径の範囲は1.40mm乃至7.00mmであり、特に好ましいのは1.68mm〜6.73mmである。つまり、目開き1.68mmの篩に残留し、且つ目開き6.73mmの篩を通過する石膏粒状特殊肥料が、製品として特に好ましい粒子径を備えた石膏粒状特殊肥料である。粒子径が1.40mmに満たない石膏粒状特殊肥料、すなわち目開き1.40mmの篩を通過する石膏粒状特殊肥料であっても肥料として使用することは十分可能であるが、あまりに粒子径が細かいと土壌へ施肥する際に空中へ飛散し易く、特に機械施肥を行う際に損失量が増大し、機械施肥自体も困難となる。一方、粒子径が7.00mmを超える石膏粒状特殊肥料は、機械施肥する際に肥料散布機の出口で詰まり易い。そこで、1.40mmに満たない石膏粒状特殊肥料は、ホッパ3に戻されて再び石膏フレーク6に成形され、7.00mmを超える石膏粒状特殊肥料は、7.00mm以下となるように更に破砕されることが好ましい。
【0026】
このようにして形成された石膏粒状特殊肥料は、建築廃材である石膏ボードから得られる石膏粉末を主原料としているため、従来は産業廃棄物として高価な廃棄コストを払って廃棄処理されていた石膏ボードの再利用が図られる。
【0027】
また、本発明によって得られる石膏粒状特殊肥料は、石膏フレークを破砕して得られる粒状の肥料であるため、粉状の肥料に比べて土壌への機械施肥が容易であり、空中への飛散による損失も殆ど無く、環境汚染の原因になることもない。
【0028】
また、本発明は、石膏粉末を一旦、平板状の石膏フレークに加圧成形した後に破砕して粒状化するため、本発明によって得られる石膏粒状特殊肥料は、従来のような、石膏粉末をブリケットマシン等で直接粒状化して得られる球状等の粒状肥料に比べて適度な脆さを備えており、破砕時における粒度も比較的揃い易い。更に、表面積も大きくなるため、土壌の水分を吸収し易く、土壌に施肥された際に分解され易い。
【0029】
また、本発明によって得られる石膏粒状特殊肥料の原料となる石膏粉末には、僅かではあるが紙片の破砕物が含まれており、石膏粒状特殊肥料を施肥した際に、この紙片が土壌の水分を吸収することにより石膏粒状特殊肥料の崩壊を促進する。すなわち、本発明によって、施肥後に土壌中で分解され易い石膏粒状特殊肥料が得られる。
【0030】
更に、本発明によって得られる石膏粒状特殊肥料は、石膏フレークを破砕して得られるため、ブリケットマシンで粒状化される従来の粒状肥料のように必ずしも粒子径が一定とはならず、大小のばらつきが生じる。従って、施肥した際には粒子径の細かいものから順次分解されていくため、施肥後の早い段階で肥効が得られると共に、肥効を長期間にわたって持続させることができる。
【0031】
また、本発明によって得られる石膏粒状特殊肥料は、石灰とは異なり施肥により土壌のpHを変えることなくカルシウム分を補給できる。更に、石膏粒状特殊肥料には除塩効果がある。つまり、高度化成や堆肥や家畜糞尿を多用してナトリウムやカリウムが多く蓄積されている土壌ハウス栽培等の塩類集積害に対して、有効な除塩を行なうことができる。
【0032】
また、本発明によって得られる石膏粒状特殊肥料は、土壌に硫黄成分を供給できる。更に、土壌を団粒化し、土壌の通気、排水を改善可能な土壌改質剤としても好適に使用し得る。また、カルシウム分不足による有機物の失効を防止し、有機物の分解を促進させることができる。また、土壌中の有効バクテリアの増殖を促進し、作物の病気や遅作障害をもたらす微生物を減少させることも可能である。更に、堆肥の発酵時に堆肥に混ぜることにより、発酵促進にも寄与する。
【0033】
以上、本発明の態様について説明したが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の知識に基づき種々の改良、修正、変形を加えた態様で実施し得るものである。
【0034】
例えば、本発明によって得られる石膏粒状特殊肥料の主原料となる石膏粉末には、この石膏粉末の含水量に応じて水が添加されてもよい。石膏粉末の含水量が10〜20%程度であれば、水を添加しなくとも石膏フレークを成形することは可能であるが、石膏分の含水量が少ない場合には、加圧成形工程において成形される石膏フレークが非常に脆くなる。そこで、加圧成形工程において、予め石膏粉末に適量の水を添加して混練し、石膏粉末の含水量を10〜20%程度に調整した上で石膏フレークを成形することが好ましい。
【0035】
なお、石膏粉末の含水量が20%を超える場合には、含水量が20%以下となるまで乾燥した上で加圧成形することが好ましい。或いは、加圧成形工程を経て得られた石膏フレークを乾燥した後に破砕してもよい。
【0036】
また、石膏ボードから得られる、極微粒子及び粗粒子が除かれた石膏粉末は、上述の通り、トロンメルによって少なくとも8メッシュの網目を通過したものであるが、加圧成形工程において石膏フレークを成形する前に、予めこの石膏粉末を更に細かく粉砕してもよい。つまり、石膏粉末の準備工程においては、石膏ボードをあまりに細かく粉砕し過ぎると、風力分級手段によって回収されてしまい石膏ボードの再利用率の低下を招く。一方、石膏フレークを成形する際には、石膏粉末の粒径が10乃至500μmであることが好ましい。そこで、加圧成形工程において使用される石膏粉末は、準備工程で得られた石膏粉末を更に細かく粉砕したものであってもよく、これらの態様は何れも本発明の範囲に属するものである。
【実施例1】
【0037】
本発明に係る加圧成形工程を経て得られる石膏フレークを、コンパクティングマシンにおけるロール条件及びフィーダの回転数を変更して成形した。なお、使用した石膏粉末の含水量は13%であったため、水は添加せず、石膏粉末のみで成形を行った。その結果を表1に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
以上の結果より、ロールの油圧を高くすると、成形物(石膏フレーク)の厚みが薄くなり、非常に堅い石膏フレークが形成されると共に、黒っぽく変色することが判明した。また、高い油圧で成形された石膏フレークは、それ自体は非常に堅いが、破砕する前段階で割れ易く、取り扱いが困難となるため、少なくとも3.0mm以上の厚みが必要であることが判明した。更に、高い油圧で成形された石膏フレークは水に溶けにくくなるため、肥料としての効果も薄れてしまう。例えば、試験No.2とNo.4を比較した場合、得られた石膏フレークの厚みは共に3.0mmであったが、それぞれを破砕して得られた石膏粒状特殊肥料の水への溶け具合は、No.4の方が良好であった。
【0040】
一方、ロールの油圧を低くすると、若干ではあるが石膏フレークの厚みを増すことができた。しかし、単に油圧のみを低くして石膏フレークの厚みを増すと、石膏フレークが脆くなるため、破砕時や運搬・保管時に粉末状になり易く、肥料としては好ましくない。例えば、試験No.2、4、6、10を比較した場合、油圧の低下と共に厚みは徐々に増しているが、得られた石膏フレークは脆くなっていき、特にNo.10の石膏フレークは、破砕時や運搬・保管時に粉末状になり易かった。
【0041】
また、ロールの油圧を低くすると共に、フィーダの回転数を上げることによって、石膏フレークの厚みを増すことができた。表1において、試験No.1〜4に比較して、試験No.7、8、11、12の石膏フレークは、厚みが1mm程度増している。しかし、ロールの圧力が低いため、特に試験No.11、12の石膏フレークは脆くて割れ易く、破砕時や運搬・保管時に粉末状になり易かった。
【0042】
そこで、ロールの油圧を低くし、フィーダの回転数を上げると共に、ロールの回転数を下げることによって、適度な厚みと堅さを備えた石膏フレークが得られた。このような条件設定で得られた石膏フレークは、破砕する前段階で割れることが殆ど、或いは全く無いため取り扱いが容易で、運搬・保管時に粉末状になることも無かった。また、このようにして得られた石膏フレークを破砕して石膏粒状特殊肥料を製造した際、水に溶け易く、粒度の揃った良質の石膏粒状特殊肥料が得られた。
【0043】
本実施例で特に良好であったのは、試験No.13の石膏フレークであった。この石膏フレークは、ロール間の隙間1mmに対して4倍以上となる4mm以上の厚みを備えた石膏フレークであり、破砕する前段階で割れることが無いため取り扱いが容易で、運搬・保管時に粉末状になることも無かった。また、このようにして得られた石膏フレークを破砕して石膏粒状特殊肥料を製造した際、水に溶け易く、粒度の揃った良質の石膏粒状特殊肥料が得られた。
【0044】
また、試験No.13におけるロールの回転数を6rpmとし、他の条件は変更せずに石膏フレークを成形した結果、厚さ4.5mmの石膏フレークが得られ、試験No.13で得られた石膏フレークと同様、破砕する前段階で割れることが無いため取り扱いが容易で、運搬・保管時に粉末状になることも無かった。また、この石膏フレークを破砕して石膏粒状特殊肥料を製造した際、水に溶け易く、粒度の揃った良質の石膏粒状特殊肥料が得られた。なお、同様にして、ロールの回転数を調整しつつ厚さ6.0mm程度の石膏フレークを成形したが、比較的良好な石膏フレーク、更には石膏粒状特殊肥料が得られた。但し、これ以上ロールの回転数を遅くすると石膏フレークが堅くなり過ぎて水に溶けにくくなり、また、破砕工程において粒度の揃った石膏粒状特殊肥料が得難くなり、好ましくない。
【0045】
また、試験No.13におけるロールの回転数を9rpmとし、他の条件は変更せずに石膏フレークを成形した結果、厚さ4.1mmの石膏フレークが得られ、この石膏フレークも良好であった。
【0046】
なお、表1に示すように、何れの条件においても、石膏フレークの機械通過量に対する1.68mm以上の割合は8割程度であった。本発明によって得られる石膏粒状特殊肥料は、粒子径1.68mm以上のものが製品として特に好ましいため、1.68mm以上の石膏フレークの量を測定したが、条件の変化に伴う違いは特に見られなかった。
【実施例2】
【0047】
実施例1で得られた試験No.13に係る石膏フレークを、ハンマークラッシャで破砕して、石膏粒状特殊肥料を得た。これを、現在一般に広く使用されているブロカス式肥料散布機で散布した。その結果、本発明によって得られる石膏粒状特殊肥料は、散布機の出口で詰まることが無く、予め散布機に入れた石膏粒状特殊肥料の全量を散布することができた。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の工程図である。
【図2】本発明に係る石膏フレークを製造するために使用されるコンパクティングマシンの模式図である。
【符号の説明】
【0049】
1:コンパクティングマシン
2:フィーダ
3:ホッパ
4:ロール
5:石膏粉末
6:石膏フレーク
7:石膏粒状特殊肥料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石膏層とシート層とを含んで成る石膏ボードから石膏粉末を得る準備工程と、
前記石膏粉末を加圧成形して平板状の石膏フレークを得る加圧成形工程と、
前記石膏フレークを粒状に破砕する破砕工程と、
前記粒状に破砕された石膏フレークを篩い分けする篩い分け工程と
を含む石膏粒状特殊肥料の製造方法。
【請求項2】
前記石膏フレークの厚みが3.0mm乃至6.0mmである請求項1に記載の石膏粒状特殊肥料の製造方法。
【請求項3】
前記篩い分け工程で使用する篩の目開きが1.40mm乃至7.00mmである請求項1又は請求項2に記載の石膏粒状特殊肥料の製造方法。
【請求項4】
前記準備工程が、
前記石膏ボードを粉砕して石膏ボード粉末を得る工程と、
前記石膏ボード粉末から、風力分級手段によって、前記石膏ボードの粉砕時に生じる極微粒子が除かれた石膏ボード粉末を得る工程と、
前記極微粒子が除かれた石膏ボード粉末から、篩い分け手段によって、前記石膏ボードの粉砕時に生じる粗粒子が除かれた石膏粉末を得る工程と
を含む請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の石膏粒状特殊肥料の製造方法。
【請求項5】
前記篩い分け手段がトロンメルである請求項4に記載の石膏粒状特殊肥料の製造方法。
【請求項6】
前記トロンメルが備える筒形の回転金網の網目が8メッシュ乃至16メッシュである請求項5に記載の石膏粒状特殊肥料の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−124187(P2006−124187A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−310382(P2004−310382)
【出願日】平成16年10月26日(2004.10.26)
【出願人】(501308281)株式会社 ビルクリーン (1)
【出願人】(390025793)岩手県 (38)
【Fターム(参考)】