説明

石製灯籠用扉および石製灯籠

【課題】連結部材の一部を変形させることにより発生する付勢力を利用して石製灯籠に対してワンタッチで着脱可能とする石製灯籠用扉および該扉を備えた石製灯籠において、石製灯籠への装着作業性を向上させる。
【解決手段】左側および右側当接部材4L、4Rを付勢部材53、54のみにより連結するのではなく、さらに上側および下側連結部材51、52によっても連結するとともに、それらの連結部材51、52が、付勢部材53、54の変形により付勢力が発生している状態を維持しつつ、左側または右側当接部材4L、4Rの移動を規制している。このため、扉1を石製灯籠2に装着する前において既に付勢部材53、54の中央部は変形され、付勢力が左側および右側当接部材4L、4Rに作用している状態となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、寺院の境内や墓前等に設置される石製灯籠、該灯籠に適した扉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、寺院の境内や墓前等に設置される石製灯籠として、例えば特許文献1や特許文献2に記載されたものが知られている。これらの石製灯籠では、石柱内部を刳り貫くとともに、その石柱正面に開口部を設けることによって灯籠本体部が形成されている。そして、灯籠本体部の内部に位置するロウソク立てにロウソクを立てることで、ロウソクから放射される光が開口部を介して灯籠本体部の外部に導かれて灯籠本体部の正面側を照らすことが可能となっている。また、従来例では、灯籠本体部に対するロウソクの収容および取出しを容易とし、しかもロウソクの火が消えるのを防止するために、石製灯籠用扉が開口部に対して開閉可能に灯籠本体部に装着されている。
【0003】
【特許文献1】特許第3012200号公報
【特許文献2】特許第3623957号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、石製灯籠用扉を灯籠本体部に装着固定するにあたって、従来例では石製灯籠用扉の固定部の全部または一部を灯籠本体部の内部に配置するとともに、ネジ等を操作して灯籠本体部への固定部の固定作業を行う必要がある。例えば特許文献1に記載の石製灯籠では、固定部全体が灯籠本体部の内底部側に配置されている。この固定部にはネジ部が設けられるとともに、該ネジ部の端部に回転操作部が取り付けられている。そして、回転操作部を操作することで、ネジ部の後端部と螺合されている角材部が灯籠本体部の内周面に押し付けられるとともに、ネジ部の先端が灯籠本体部の内周面に押し付けられて固定部全体が灯籠本体部に強固に固定される。
【0005】
このように、従来の石製灯籠では、灯籠本体部の内部でネジを操作する必要があり、取付作業者は開口部や別の開口部(例えば灯籠本体部の底部や頂上部等)から手を灯籠本体部の内部に差し入れる必要がある。したがって、灯籠本体部への石製灯籠用扉の装着作業が煩雑なものとなっていた。また、灯籠本体部から石製灯籠用扉を取り外す場合にも、灯籠本体部の内部に手を差し入れてネジの回転操作が必要となり、装着作業と同様に取外し作業も煩雑なものとなっていた。
【0006】
この点に関し、特許文献2によれば、石製灯籠の内部に向けて連結部位を強制湾曲しながら開口部を介して石製灯籠の内部に挿入し、その付勢力によって石製灯籠用扉を装着固定しているため、灯籠本体部への石製灯籠用扉の装着作業を容易なものとすることができる。すなわち、連結部位を強制湾曲させたまま開口部から石製灯籠の内部に挿入することのみで石製灯籠用扉を石製灯籠に装着することができる。また、取り外す場合には、連結部位を強制湾曲させたまま開口部から引き抜くことで石製灯籠用扉を取り外すことができる。このように、石製灯籠用扉をワンタッチで着脱することができ、石製灯籠に対する石製灯籠用扉の着脱作業性を大幅に向上させることができる。
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載の石製灯籠では、同文献の図3や図4に記載されていように、伸びきった状態にある連結部位(本願発明の「連結部材」に相当)を強制湾曲させた上で石製灯籠用扉を灯籠本体部に装着する必要がある。しかも、強制湾曲により発生する付勢力が石製灯籠用扉の固定力に直接関連するため、扉の装着固定後に灯籠本体部から石製灯籠用扉が自然にあるいは僅かの外力で脱落しないように、付勢力をある程度高めておく必要がある。そのため、作業者は装着時に比較的大きな力を扉に加えて連結部材を大きく湾曲変形する必要があり、このことが作業性を低下させる要因となっていた。
【0008】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、連結部材の一部を変形させることにより発生する付勢力を利用して石製灯籠に対してワンタッチで着脱可能とする石製灯籠用扉および該扉を備えた石製灯籠において、石製灯籠への装着作業性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明にかかる石製灯籠用扉は、その正面に開口部を有する石製灯籠に対して開口部の周縁部に着脱自在な固定部と、石製灯籠に装着固定された固定部に対して回動自在に取り付けられた扉本体とを備え、扉本体の回動動作によって開口部を開閉する石製灯籠用扉であって、上記目的を達成するため、固定部は、周縁部の右側端部に対して石製灯籠の正面側から当接可能に設けられた右側当接部材と、周縁部の左側端部に対して石製灯籠の正面側から当接可能に設けられた左側当接部材と、左側および右側当接部材を開口部の左右方向において相互に離間させた状態で連結する連結機構とを備え、連結機構は、開口部の左右方向に開口部よりも長く設けられ、左右方向における左側または右側当接部材の移動を規制しながら左側および右側当接部材の上端部と連結された上側連結部材と、開口部の左右方向に開口部よりも長く設けられ、左右方向における左側または右側当接部材の移動を規制しながら左側および右側当接部材の下端部と連結された下側連結部材と、その一部が変形された状態で石製灯籠の内部に向けて配置され、その右側端部が右側当接部材に接続される一方その左側端部が左側当接部材に接続されて左側および右側当接部材を互いに離間する方向に付勢して左側および右側当接部材をそれぞれ周縁部に当接させる付勢部材とを有し、上側および下側連結部材は、付勢部材の変形により付勢力が発生している状態を維持しつつ、左側または右側当接部材の移動を規制することを特徴としている。
【0010】
このように構成された発明にかかる石製灯籠用扉では、付勢部材の一部が変形された状態で石製灯籠の内部に向けて配置され、これによって付勢部材からの付勢力が左側および右側当接部材に作用し、両者を互いに離間する方向に付勢する。その結果、左側および右側当接部材がそれぞれ周縁部に当接される。ここで、付勢部材の変形量、つまり左側および右側当接部材の離間間隔が付勢力と密接に関連する。つまり、付勢部材を変形させて離間間隔を小さくしていくにしたがって、付勢力も増大する。特に、特許文献2に記載の装置のように、全く付勢力が発生していない状態から扉の装着を行う場合には、作業者が付勢部材に対して与える変形量も、それに要する外力も非常に大きなものとなり、このことが作業性を低下させている要因となっていた。
【0011】
これに対し、本発明では、左側および右側当接部材を付勢部材のみにより連結するのではなく、さらに上側および下側連結部材によっても連結している。そして、それらの連結部材は、付勢部材の変形により付勢力が発生している状態を維持しつつ、左側または右側当接部材の移動を規制している。このため、扉を石製灯籠に装着する前において既に付勢部材の一部は変形され、付勢力が左側および右側当接部材に作用している状態となっている。しかも、付勢力を受けて左側および右側当接部材は互いに離間しようとしているが、その離間間隔は上側および下側連結部材により規制されて石製灯籠の外径よりも短くなっている。したがって、扉の固定部を石製灯籠に装着固定する作業に際して必要となる作業量は小さくなり、装着作業性を高めることができる。また、取り外す際に付勢力によって左側および右側当接部材が離間移動しようとするが、上側および下側連結部材により規制され、当接部材を大きく移動させるのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は本発明にかかる石製灯籠の一実施形態を示す斜視図であり、図2は図1の石製灯籠の断面図であり、図3および図4は図1の石製灯籠に装着される石製灯籠用扉を示す斜視図である。この実施形態では、石製灯籠用扉1が石製灯籠2に対して着脱自在となっており、石製灯籠2に装着された状態で石製灯籠2の開口部に対して水平方向に開閉自在となっている。また、その開閉動作について、「左開き」および「右開き」を選択的に切替可能となっている。なお、この明細書では、図3に示すように扉本体12の正面左側部を回動中心として水平方向に開閉する動作を「左開き」と称する一方、図4に示すように扉本体12の正面右側部を回動中心として水平方向に開閉する動作を「右開き」と称する。
【0013】
石製灯籠2は、図1および図2に示すように、その下部が径大な基台部21と、この基台部21の上部に連設された灯籠本体部22とで構成されている。そして、灯籠本体部22の正面側(図2の右側)に開口部23が設けられており、灯籠本体部22の内部に位置するロウソク立てに立てられたロウソク(図示省略)から放射される光を石製灯籠2の外部に導いて石製灯籠2の正面側(図2の右側)を照らすことが可能となっている。また、この実施形態においても、灯籠本体部22に対するロウソクの収容および取出しを容易とし、しかもロウソクの火が消えるのを防止するために、開口部23に対して石製灯籠用扉1を装着可能で、しかも石製灯籠2への装着状態で石製灯籠2の開口部23に対して開閉可能となっている。以下、石製灯籠用扉1の構成について詳述する。
【0014】
石製灯籠用扉1は、灯籠本体部22に対して固定可能な固定部11と、扉本体12とを備えている。この扉本体12は例えばステンレス製などの金属製であり、その略中央部には、1つの窓部121が設けられている。そして、この窓部121にガラスなどの耐熱性透明部材14が取着されている。具体的には、扉本体12の上下部に固着された4つの係止爪部122によって、透明部材14は扉本体12に固定されている。また、扉本体12の下部中央にロウソク立て15が支持板16を介して取り付けられている。したがって、必要に応じて扉本体12を後述するように「左開き」や「右開き」に回動させることで、扉本体12および透明部材14が一体的に開口部23に対して開閉される。なお、この実施形態では、ロウソク立て15が支持板16の先端部に固着されているが、ロウソク立て15を支持板16に対して着脱自在に構成してもよい。また、扉本体12の左右側部は灯籠本体部22に向けて折り曲げられるとともに、各側辺部の裏面側において上下2箇所で合計4個の枢支部3L,3Rが取り付けられている。すなわち、扉本体12の左側辺部の裏面側上下に左側枢支部3L、3Lが設けられる一方、扉本体12の右側辺部の裏面側上下に右側枢支部3R、3Rが設けられている。なお、この実施形態では、枢支部3L、3L、3R、3Rを互いに独立して設けているが、これらについては以下の態様で構成してもよい。すなわち、上側枢支部3Lと上側枢支部3Rとを一体化するとともに、下側枢支部3Lと下側枢支部3Rとを一体化してもよい。また、左上側枢支部3Lと左下側枢支部3Lとを一体化するとともに、右上側枢支部3Rと右下側枢支部3Rとを一体化してもよい。しかも、このように一体化した左側および右側枢支部を用いて透明部材14を扉本体12に固定するように構成してもよく、この場合、一体化した左側および右側枢支部は係止爪部122と同様の機能を奏することとなり、係止爪部122を省略することが可能となる。
【0015】
一方、固定部11は開口部23の周縁部に着脱自在となっている。より詳しくは、固定部11は、開口部23の左側端部(図7中の符号23L)に当接可能に設けられた左側当接部材4Lと、開口部23の右側端部(図7中の符号23R)に当接可能に設けられた右側当接部材4Rとを備えている。また、各当接部材4L、4Rは上下方向Yにおいて開口部23よりも若干短く、しかも水平断面形状が略レ状に仕上げられたステンレス製金属片で構成されている。そして、各当接部材4L、4Rの折り曲げ部分が開口部23の周縁部の端部に向いている。また、この固定部11では、左側および右側当接部材4L、4Rは互いに対向配置された状態で連結機構5により相互に連結されている。
【0016】
図5は固定部を示す斜視図である。また、図6は図5の固定部の分解組立斜視図である。連結機構5は左側および右側当接部材4L、4Rを連結するために上側連結部材51、下側連結部材52および2つの付勢部材53、54を有している。これらのうち、上側連結部材51は断面L字形状を有するとともに、灯籠本体部22の円筒表面に対応して緩やかに湾曲整形されながら、開口部23の左右方向Xに伸びている。また、この左右方向Xにおける上側連結部材51の長さW51は開口部23の長さよりも長くなっている。さらに、この上側連結部材51には後述する2本のヒンジピンを固定するために2つの貫通孔51L、51Rが互いにX方向に離間して穿設されている。
【0017】
下側連結部材52も上側連結部材51と同様に構成されている。すなわち、下側連結部材52も断面L字形状を有するとともに、灯籠本体部22の円筒表面に対応して緩やかに湾曲整形されながら、開口部23の左右方向Xに伸びている。また、この左右方向Xにおける下側連結部材52の長さW52は開口部23の長さよりも長くなっている。さらに、この下側連結部材52には後述する2本のヒンジピンの下部を係止するために2つの係止孔52L、52Rが互いにX方向に離間して穿設されている。なお、この実施形態では、上側連結部材51のうち垂直部位の左右両側に湾曲切欠部511を設ける一方、下側連結部材52には湾曲切欠部511が設けられていないが、下側連結部材52の垂直部位に湾曲切欠部をさらに設けてもよい。また逆に、実施形態における下側連結部材52と同様に、上側連結部材51への湾曲切欠部511の形成を省略してもよい。さらに、下側連結部材52の垂直部位にのみ湾曲切欠部511を設けてもよい。要は、扉1の上下サイズやデザイン性などを勘案して切欠部の有無を設定することができる。
【0018】
また、これらの連結部材51、52の各々は次のようにして左側および右側当接部材4L、4Rを連結される。すなわち、左側当接部材4Lの上端部および下端部には、左右方向Xに伸びる長穴41、42がそれぞれ形成されている。そして、左側当接部材4Lの裏面側において、上側長穴41に対応して上側連結部材51の左側端部が配置されるとともに下側長穴42に対応して下側連結部材52の左側端部が配置されている。そして、ボルトやピンなどの係止部材61、62が上側および下側長穴41、42に挿通されるとともに上側および下側連結部材51、52にそれぞれ固定されている。このように係止部材61、62によって左側当接部材4Lが左右方向Xに移動自在に上側および下側連結部材51、52に連結されている。
【0019】
一方、右側についても全く同様に、係止部材63、64によって右側当接部材4Rが左右方向Xに移動自在に上側および下側連結部材51、52に連結されている。すなわち、右側当接部材4Rの上端部および下端部には、左右方向Xに伸びる長穴43、44がそれぞれ形成されている。そして、右側当接部材4Rの裏面側において、上側長穴43に対応して上側連結部材51の右側端部が配置されるとともに下側長穴44に対応して下側連結部材52の右側端部が配置されている。そして、ボルトやピンなどの係止部材63、64が上側および下側長穴43、44に挿通されるとともに上側および下側連結部材51、52にそれぞれ固定されている。このように係止部材63、64によって右側当接部材4Rが左右方向Xに移動自在に上側および下側連結部材51、52に連結されている。
【0020】
このような連結構成を採用しているため、左側および右側当接部材4L、4Rは長穴41〜44のサイズに応じた移動範囲でのみ左右方向Xに移動可能となっており、左側および右側当接部材4L、4Rの離間間隔も上記移動範囲に規制されている。なお、左側および右側当接部材4L、4Rの移動範囲を規制するために、本実施形態では上記のように左右両方に規制手段(長穴+係止部材)を設けているが、いずれか一方のみに規制手段を設けてもよい。つまり、連結部材51、52を、左右方向における左側または右側当接部材の移動を規制しながら左側および右側当接部材と連結するように構成することができる。
【0021】
また、この実施形態では、左側および右側当接部材4L、4Rを互いに左右方向Xに付勢する付勢部材53、54が設けられている。すなわち、左側および右側当接部材4L、4Rは2本の帯状形状を有する付勢部材53、54で相互に連結されている。また、各付勢部材53、54は石製灯籠2の内部に向けて湾曲した形状を有しており、外力付与が全くない状態では左右方向Xに伸びた帯状片であり、その長さは灯籠本体部22の外径よりも長くなっている。したがって、連結部材51、52との連結がなく、しかも外力付与が全くない状態では、単に当接部材4L、4Rの連結機能を発揮するのみであるが、後述するようにして強制湾曲させると、その強制湾曲状態に応じた付勢力が発生して当接部材4L、4Rを互いに離間する方向Xに付勢する。
【0022】
この実施形態の固定部11では、上記のように上側および下側連結部材51、52により左側および右側当接部材4L、4Rが互いに連結されており、図3〜図6に示すように、左側および右側当接部材4L、4Rが互い離間する方向に移動しようとしても、係止部材61〜64により係止されて強制湾曲した状態に保たれる。特に、この実施形態では、係止部材61、62が上側および下側連結部材51、52の左端部にそれぞれ固定される一方、係止部材63、64が上側および下側連結部材51、52の右端部にそれぞれ固定されている。このため、上記のように付勢部材53、54が取り付けられた固定部11では、左右方向Xにおける左側および右側当接部材4L、4Rの離間間隔が石製灯籠2の外径よりも短くなるように、左側または右側当接部材4L、4Rの移動を規制する。つまり、作業者が固定部11に外力を加えない状態であっても、すでに付勢部材53、54がある程度強制湾曲されており、左側および右側当接部材4L、4Rの離間距離が石製灯籠2の外径以下、特に開口部23よりも若干広い程度となっている。このように、この実施形態では、上側および下側連結部材51、52は、付勢部材53、54の変形により付勢力が発生している状態を維持しつつ、左側または右側当接部材4L、4Rの移動を規制している。
【0023】
また、各付勢部材53、54には、当接部材4L、4Rの連結部近傍に係止部位が形成されている。より具体的には、付勢部材53、54の一部に各当接部材側より切り込み部を設けるとともに、図3〜図6の破線箇所を折り曲げ箇所として切り込み片部を灯籠本体部22の内壁面に向けて折り曲げることで、合計4個の切り込み片部が係止部位531、531、541、541として形成されている。これらの係止部位531、531、541、541は、後述するようにして固定部11が灯籠本体部22に対して装着されると、灯籠本体部22の内壁面と接触して付勢部材53、54の変位を防止している。
【0024】
このように構成された固定部11に対して2本のヒンジピン71、72が固定されている。より具体的には、各ヒンジピン71、72は上下方向Yにおける左側および右側当接部材4L、4Rの高さよりも若干長い棒状部材で構成されている。そして、各ヒンジピン71、72では、上下端部に雄ネジがそれぞれ螺刻されており、下端部が係止孔52L、52Rに螺入される一方、上端部が貫通孔51L、51Rに螺入されるとともに貫通孔51L、51Rから上方に突出した雄ネジに対してナット73が螺合されている。
【0025】
また、固定部11に扉本体12を回動自在に取り付けるために、固定部11にヒンジピン71、72が取り付けられるのに対し、扉本体12側に4つの枢支部3L、3L、3R、3Rが取り付けられている。これらのうち下側枢支部3Lは、図3の下方拡大図に示すように、左右方向Xに伸びる片状部材の後端部が扉本体12の裏面側、つまり透明部材14が取り付けられる側において左下位置にスポット溶接などにより固定されており、片持ちバネとなっている。そして、枢支部3Lの先端部では、ヒンジピン71の太さに対応した曲率を有する凹部31が形成されており、ヒンジピン71が凹部31に係合しながら扉本体12の裏面に押し付けられている。このように本実施形態では、枢支部3Lによりヒンジピン71が回動自在に枢支されている。このような構成については、上側の枢支部3Lについても全く同様であり、本実施形態では、これら2つの枢支部3Lによって扉本体12の左開きが可能となっている。また、各枢支部3Lの最先端については扉本体12から離れる方向に湾曲成形されて案内部32が構成されている。このため、ヒンジピン71に向けて扉本体12の枢支部3Lを移動させていくと、案内部32を構成する枢支部3Lの最先端がヒンジピン71によって押し広げられながらヒンジピン71を枢支部3Lの凹部31に案内する。そして、ヒンジピン71が枢支部3Lの凹部31に挿入されると、片状部材の弾性力により枢支部3Lで係合枢支される。逆に、扉本体12を固定部11から離す方向に移動させると、枢支部3Lの凹部31による係合が解除された後、案内部32に案内されて固定部11から完全に離れる。
【0026】
一方、右側の枢支部3R、3Rについても、左側と全く同様である。そのため、ここでは枢支部3R、3Rの構成は同一または相当符号を付して構成の説明を省略するとともに、それらの作用についての説明も省略する。
【0027】
次に、上記のように構成された扉1を石製灯籠2に取り付ける手順について図7を参照しつつ詳述する。図7は石製灯籠への石製灯籠用扉の取付手順を模式的に示す図である。なお、ここでは、灯籠本体部22への固定部11の装着手順を中心に説明するため、固定部11と接続されている扉本体12、透明部材14およびロウソク立て15の図示は省略する。
【0028】
石製灯籠用扉1を準備した段階(装着前)では、上記したように付勢部材53、54がある程度強制湾曲された状態に維持されており、左側および右側当接部材4L、4Rの離間距離は同図(a)に示すように石製灯籠2の外径以下、特に開口部23より若干広い程度となっている。そこで、取付作業者は、同図(b)の矢印AR1に示すように当接部材4L、4Rを互いに近接させて付勢部材53、54を強制的にさらに湾曲変形させるとともに、矢印AR2に示すように湾曲変形状態のまま付勢部材53、54を開口部23を介して灯籠本体部22の内部に挿入して当接部材4L、4Rを開口部23の左側端部23Lおよび右側端部23Rにそれぞれ当接させる。そして、取付作業者は当接部材4L、4Rから手を離して取付作業を終了する(同図(c))。
【0029】
なお、上記においては図7を参照しつつ装着手順について説明したが、灯籠本体部22から石製灯籠用扉1を取り外す場合には、装着手順と逆の手順を行うことができる。
【0030】
以上のように、本実施形態によれば、左側および右側当接部材4L、4Rを付勢部材53、54のみにより連結するのではなく、さらに上側および下側連結部材51、52によっても連結するとともに、それらの連結部材51、52が、付勢部材53、54の変形により付勢力が発生している状態を維持しつつ、左側または右側当接部材4L、4Rの移動を規制している。このため、扉1を石製灯籠2に装着する前において既に付勢部材53、54の中央部は変形され、付勢力が左側および右側当接部材4L、4Rに作用している状態となっている。しかも、付勢力を受けて左側および右側当接部材4L、4Rは互いに離間しようとしているが、その離間間隔は上側および下側連結部材51、52により規制されて灯籠本体部22の外径よりも短くなっている。したがって、扉1の固定部11を石製灯籠2に装着固定する作業に際して必要となる作業量は小さくなり、装着作業性を高めることができる。また、取り外す際に付勢力によって左側および右側当接部材4L、4Rが離間移動しようとするが、上側および下側連結部材51、52により規制され、灯籠本体部22の外径より大きく移動するのを防止することができる。
【0031】
また、付勢部材53,54が開口部23から灯籠本体部22の内部に挿入されると、図7(c)に示すように、切り込み片部(係止部位531、531、541、541)が灯籠本体部22の内壁面に係止され、固定部11の固定強度をさらに高めることができる。すなわち、この実施形態では、強制湾曲された付勢部材53、54による離間付勢力によって固定部11を開口部23の左側および右側端部23L,23Rで当接固定しているが、離間付勢力以外に固定部11全体を正面側に付勢する力も発生する。しかしながら、この実施形態では、4本の係止部位を設け、該係止部位が灯籠本体部22の内壁面に当接することによって正面側への固定部11の移動を防止している。その結果、石製灯籠用扉1をより強固に石製灯籠2に固定することができる。なお、ここでは、係止部位531、531、541、541が内壁面に当接して係止されているが、灯籠本体部22との摩擦力により係止されるように構成してもよい。
【0032】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、ヒンジピン71、72を枢支する枢支部3L、3Rをそれぞれ片持ちバネで構成しているが、枢支部を用いてヒンジピンを枢支して扉本体を回動させる点については既に公知(特開2006−228445号公報)であり、これら公知の構成態様を採用することができる。
【0033】
また、上記実施形態では、2つの左側枢支部3Lに対して1本のヒンジピン71を設けるとともに、2つの右側枢支部3Rに対して1本のヒンジピン72を設けているが、各枢支部に対応してヒンジピンを設け、合計4本のヒンジピンを設けてもよい。
【0034】
また、上記実施形態では、扉本体12に枢支部を設けるとともに、固定部11にヒンジピンを設けているが、これらの配置関係に限定されるものではなく、特開2006−228445号公報に記載したと同様の組み合わせを採用することができる。
【0035】
また、係止部位531、531、541、541を設けることは固定強度を高める上では有用であるが、本発明の必須構成要件というわけではなく、必要に応じて設けることができる。つまり、この種の固定方式自体は従来よりいくつか提案されており、それらを適宜採用することができる(特許文献2、特開2006−228445号公報など)。例えば、係止部位を設けずに固定するためには、例えば特開2006−228445号公報に記載されているように構成することができる。
【0036】
また、上記実施形態では、本願発明の「付勢部材」としてステンレス鋼やばね鋼などの金属材料により構成された帯状片(板バネ)を用いているが、これ以外にコイルバネ、あるいは棒状のばね鋼線の中央部にコイル部を形成して両端部間で付勢力を発生させる、いわゆる巻きバネ等を用いることができる。
【0037】
また、上記実施形態では、固定部11に対して扉本体12を左右両開き可能に構成しているが、固定部11に対して扉本体12を片開きに取り付けてもよい。その取付態様については例えば特許文献1や特許文献2に記載された態様を採用することができる。
【0038】
ところで、上記実施形態では、付勢部材53、54により左側および右側当接部材4L、4Rが相互に連結されている。また、上側および下側連結部材51、52は、付勢部材53、54の変形により付勢力が発生している状態を維持しつつ、左側または右側当接部材4L、4Rの移動を規制している。したがって、扉の着脱作業を行うために左側または右側当接部材4L、4Rを移動させる際には、作業者は必ず付勢力に抗しながら当接部材の移動操作を行う必要がある。そこで、扉の着脱時に必要とされる力を低減すると、作業性をさらに高めることができる。以下、このような要望を満足する実施形態について図8および図9を参照しつつ以下に説明する。
【0039】
図8は石製灯籠用扉の他の実施形態を示す斜視図である。また、図9は図8に示す石製灯籠用扉の石製灯籠への取付手順を模式的に示す図である。この実施形態が先の実施形態と大きく相違する点は、固定部の構成、特に左側および右側当接部材4L、4Rを左右方向Xに移動させる構成、ならびに左側および右側当接部材4L、4Rを石製灯籠2に固定する構成であり、その他の構成は基本的に先の実施形態と同一である。したがって、以下の説明においては、その相違点を中心に説明する。
【0040】
この実施形態では、左側当接部材4Lに対し、その裏面上端部に湾曲部材81が片持ちバネ状態で取り付けられるとともに、その裏面下端部に湾曲部材82が片持ちバネ状態で取り付けられている。また、右側当接部材4Rに対応して、上記と同様に、湾曲部材83、84が設けられている。すなわち、右側当接部材4Rに対し、その裏面上端部に湾曲部材83が片持ちバネ状態で取り付けられるとともに、その裏面下端部に湾曲部材84が片持ちバネ状態で取り付けられている。なお、これらの湾曲部材81〜84は灯籠本体部22の内周面に沿うように湾曲成形されている。
【0041】
また、各湾曲部材81〜84には、その一部に当接部材側より切り込み部が設けられるとともに、図8の破線箇所を折り曲げ箇所として切り込み片部を石製灯籠2の内部に折り曲げることで、合計4個の切り込み片部が係止部位811、821、831、841として形成されている。これらの係止部位811、821、831、841は、後述するようにして固定部11が灯籠本体部22に対して装着されると、灯籠本体部22の内壁面と接触する。
【0042】
さらに、この実施形態では、左側および右側当接部材4L、4Rを左右方向Xにおいて多段階(この実施形態では5段階)で位置決め・固定するために、左右方向Xに伸びる長穴41A〜44Aに固定凹部が形成されている。つまり、図9の最下段の長穴拡大図に示すように、各長穴41A〜44Aにおいては、下部が波型形状に仕上げられて5箇所の凹部が設けられている。このため、上側および下側連結部材51、52に対して左側当接部材4Lを左右方向Xに移動させるのに伴い係止部材61、62が各凹部を乗り越えながら移動する。そして、左側当接部材4Lの移動を停止すると、その停止位置の凹部に係止部材61、62がしっかりと嵌まり込んで左側当接部材4Lが位置決め固定される。なお、右側当接部材4Rについても、左側当接部材4Lと全く同様である。
【0043】
次に、上記のように構成された扉1を石製灯籠2に取り付ける手順について図9を参照しつつ詳述する。図9は石製灯籠への石製灯籠用扉の取付手順を模式的に示す図である。なお、ここでは、灯籠本体部22への固定部11の装着手順を中心に説明するため、固定部11と接続されている扉本体12、透明部材14およびロウソク立て15の図示は省略する。
【0044】
石製灯籠用扉1を準備した段階(装着前)では、左側および右側当接部材4L、4Rは任意の位置にある。というのも、本実施形態では、先の実施形態のように左側および右側当接部材4L、4Rに対して両者を相互に離間する方向に作用させる付勢力は発生しておらず、作業者は左側および右側当接部材4L、4Rをそれぞれ独立して、しかも係止部材61〜64を長穴41A〜44Aの各凹部を乗り越えるのに必要な程度の力を作用させることで所望の位置に位置決めすることができる。なお、同図(a)では、左側および右側当接部材4L、4Rを最も離間させた状態にセットされている。
【0045】
次に、扉1を石製灯籠2にセットするために、取付作業者は、同図(b)の矢印AR1に示すように当接部材4L、4Rを互いに最近接させる。そして、その最近接状態のまま、矢印AR2に示すように湾曲部材81〜84を開口部23を介して灯籠本体部22の内部に挿入する。その後、同図(c)の矢印AR3に示すように、取付作業者は当接部材4L、4Rを互いに離間する方向に移動させて当接部材4L、4Rを開口部23の左側端部23Lおよび右側端部23Rにそれぞれ当接させる。この状態で係止部材61〜64は凹部にしっかりと嵌まり込んで当接部材4L、4Rを位置決め固定する。また、この状態では、各係止部位811、821、831、841が灯籠本体部22の内周面に当接している。しかも、湾曲部材81〜84は同図(c)に示すように撓んで係止部位811、821、831、841を灯籠本体部22の内周面に押し付ける方向の付勢力を発生させている。そのため、当接部材4L、4Rがそれぞれ開口部23の左側端部23Lおよび右側端部23Rに確実に固定される。なお、上記においては図9を参照しつつ装着手順について説明したが、灯籠本体部22から石製灯籠用扉1を取り外す場合には、装着手順と逆の手順を行うことができる。
【0046】
以上のように、本実施形態によれば、先の実施形態に比べて小さな力で扉1を石製灯籠2に着脱することができ、扉の着脱作業性をより一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明にかかる石製灯籠の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1の石製灯籠の断面図である。
【図3】図1の石製灯籠に装着される石製灯籠用扉を示す斜視図である。
【図4】図1の石製灯籠に装着される石製灯籠用扉を示す斜視図である。
【図5】固定部を示す斜視図である。
【図6】図5の固定部の分解組立斜視図である。
【図7】石製灯籠への石製灯籠用扉の取付手順を模式的に示す図である。
【図8】石製灯籠用扉の他の実施形態を示す斜視図である。
【図9】図8に示す石製灯籠用扉の石製灯籠への取付手順を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0048】
1…石製灯籠用扉
2…石製灯籠
4L…左側当接部材
4R…右側当接部材
5…連結機構
11…固定部
12…扉本体
22…灯籠本体部
23…開口部
23L…(周縁部の)左側端部
23R…(周縁部の)右側端部
51…上側連結部材
52…下側連結部材
53、54…付勢部材
X…左右方向
Y…上下方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その正面に開口部を有する石製灯籠に対して前記開口部の周縁部に着脱自在な固定部と、前記石製灯籠に装着固定された前記固定部に対して回動自在に取り付けられた扉本体とを備え、前記扉本体の回動動作によって前記開口部を開閉する石製灯籠用扉において、
前記固定部は、前記周縁部の右側端部に対して前記石製灯籠の正面側から当接可能に設けられた右側当接部材と、前記周縁部の左側端部に対して前記石製灯籠の正面側から当接可能に設けられた左側当接部材と、前記左側および右側当接部材を前記開口部の左右方向において相互に離間させた状態で連結する連結機構とを備え、
前記連結機構は、
前記開口部の左右方向に前記開口部よりも長く設けられ、前記左右方向における前記左側または右側当接部材の移動を規制しながら前記左側および右側当接部材の上端部と連結された上側連結部材と、
前記開口部の左右方向に前記開口部よりも長く設けられ、前記左右方向における前記左側または右側当接部材の移動を規制しながら前記左側および右側当接部材の下端部と連結された下側連結部材と、
その一部が変形された状態で前記石製灯籠の内部に向けて配置され、その右側端部が前記右側当接部材に接続される一方その左側端部が前記左側当接部材に接続されて前記左側および右側当接部材を互いに離間する方向に付勢して前記左側および右側当接部材をそれぞれ前記周縁部に当接させる付勢部材とを有し、
前記上側および下側連結部材は、前記付勢部材の変形により付勢力が発生している状態を維持しつつ、前記左側または右側当接部材の移動を規制することを特徴とする石製灯籠用扉。
【請求項2】
その正面に開口部が形成された灯籠本体部と、
請求項1記載の石製灯籠用扉とを備え、
前記固定部が前記灯籠本体部に対して前記開口部の周縁部に装着固定され、前記扉本体の回動動作によって前記開口部を開閉可能となっていることを特徴とする石製灯籠。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−150779(P2008−150779A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−336573(P2006−336573)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(504260416)精和電機産業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】