説明

砂地盤の液状化対策工法

【課題】砂地盤の締固めは土被り圧に大きく依存している。従来工法は土被り圧が小さい浅い層、大規模な地震動に対応する締固めに課題がある。
【解決手段】地盤の増加土被り圧に大気圧を利用し、合わせて最適周波数で繰り返し荷重を作動させると大きく圧縮する特性が確認された。繰り返し荷重の大きさ、周期、作動時間の各要素の数値を設定し、対象地盤に、繰り返し荷重を面的に鉛直下方に作動させて、地盤の密度増加の定量的改良管理を実現する。図3は対象地盤の改良状況の断面図である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震によって液状化現象の恐れのある地盤を圧縮沈下させ、密度を高めて改良する液状化対策工法に関するもので、更に云えば、対象地盤の改良密度は、想定地震に十分に対応できる履歴密度とする動的圧縮工法で、地表面の沈下を許さない場合は静的圧入工法を併用する工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液状化のメカニズムは、ゆるい飽和砂地盤に地震動が作用すると、砂粒子間の有効応力による摩擦抵抗力が低下し、土被り圧で砂粒子は圧縮沈下しようとする。しかし、飽和砂の間隙水は、瞬時には移動できないので水圧は上昇し、その分の有効応力が低下する。有効応力がゼロになれば摩擦抵抗力もゼロとなり液状化となる。間隙水の水圧は過剰間隙水圧となり、ある臨界値に達すると地表面に向かって浸透水流となる。圧縮相当分の間隙水が地表に排除されたとき、浸透水流は停止し液状化状態が停止する。このときの地盤密度は、受けた地震動の履歴密度となる。
【0003】
地震動に見られるように、ゆるい砂地盤は、振動または衝撃で圧縮沈下する。従って地震の前に振動または衝撃による動的締固め工法が有効である。従来、このことから多くの工法が実施されている。これの原理は地盤内の土粒子の有効応力をいったん解除して摩擦を切り、土粒子が容易に移動できる状態で締固めるものである。この原理の基本的な振動工法として、ロッドをバイブロハンマーで地中に貫入させ、バイブロハンマーの振動を介して地盤の締固めするロッドコンパクション工法。棒状の振動機を振動とウオータジェット併用で地中に貫入させ、振動と水締めで地盤を締固めると同時に生じた空隙に砂利などを補給するバイブロフローテーション工法がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
砂の締固めは、動的締固めであっても静的締固めであっても対象地盤の土被り圧(有効応力)に大きく依存し、土被り圧が大きいほど締固め効果は大きい。従来の動的締固め工法は締固めの効率が中心で、土被り圧の効果を生かした締固め工法になっていない。いずれにせよ、従来の締固め工法は土被り圧の小さい浅い層の締固めに課題を残している。想定地震が大規模になれば必要とする地盤の相対密度は極めて大きくなり、締固め改良は容易ではない。
【0005】
飽和砂地盤の液状化は、地震時に地盤に作用する動的せん断力に対して地盤の液状化抵抗が小さい場合発生する。液状化は砂の密度が低いほど起こりやすいのは当然である。しかし、液状化抵抗は同じ密度でも堆積時間や繰り返しせん断ひずみ等の砂が受けた履歴によって変わることが知られている。砂の圧縮沈下は鉛直下方向である。砂の締固めは水平方向よりも鉛直下方が厳しく、静的締固めよりも動的締固めの方が厳しくなる。砂地盤の密度を高める液状化対策は、想定地震動よりも厳しい条件で締固めることが肝要である。しかし、上記の従来工法は動的締固め工法ではあるが、この視点が欠落し、定量的な対策がなされていない。
【0006】
液状化のメカニズムから知れるように、地盤の過剰間隙水圧がある臨界値に達すると地表面に向かって浸透水流となる。この浸透水流は圧縮沈下とは逆向きの力で、締固めを阻害する力である。従来の工法は有効応力の活用の問題の他に、振動棒周辺が早くから液状化し、振動エネルギー周囲に伝わりにくいという問題があった。つまり、過剰間隙水圧が発生すると締固め効果が極端に低下する。このため、間隙水を抜きながら振動させる排水・振動併用工法が試みられている。この工法が有効であるためには透水性がある程度高いことが必要である。従来工法は、細粒分が含まれてくると締固め効果が大幅に低減する欠点がある。
【0007】
また、従来の動的締固め工法は平面的にも深度的にも締固めにムラが生じる。この欠点は工法的に避けられない。従って、きちんとした改良管理、施工管理ができていない。
【0008】
また、従来の動的締固め工法は、大規模な液状化対策には効率が悪く、地表面の沈下が許されない場合の液状化対策には対処できない。
【問題を解決するための手段】
【0009】
対象地盤の表面を面的に静的載荷して土被り圧の増大を図ることで、土被り圧が小さい場合においても、大規模地震に必要な土被り圧を確保し所定の締固めを確保する。
【0010】
最近の研究で、砂地盤はある周波数の適当な繰り返し荷重を作動させると、作動方向に急激に圧縮沈下する圧縮特性が確認された。繰り返し荷重のある周波数とは、土の圧縮には最適周波数が存在する。砂質土の最適周波数は細粒分の含有量によって違いがあるようでばらつきがある。従って、対象地盤ごとに最適周波数を確認する必要がある。1993年の釧路沖地震、1995年の兵庫県南部地震の周波数は2Hz程度で、主要動の継続時間はそれぞれ40,10秒程度ある。繰り返し荷重は大きいほど効果が大きいが、繰り返し荷重が小さくても、最適周波数で作動時間を長くすれば大規模地震時の圧縮を実現することは可能である。例えば、土被り圧(有効応力)の数%程度の繰り返し荷重でも最適周波数で、作動時間を5分10分と長くすれば十分な圧縮が生じる。また、対象土の最適周波数に合わせれば、細粒分が含まれていても締固め効果の低減は小さい。
【0011】
本発明は土被り圧の増加を図り、上記の砂の圧縮特性を最大限に活用する。これにより、対象地盤の改良密度は、増加土被り圧と繰り返し荷重の組合せ荷重で想定地震に十分に対応できる履歴密度を確保する。改良される履歴密度は、増加土被り圧を含めた全土被り圧と繰り返し荷重の要素である方向、大きさ、周波数、作動時間で決定される。
【0012】
本発明は対象地盤の地表面または海底面から、全土被り圧と地盤圧縮の最適周波数とした繰り返し荷重における必要な荷重の大きさ及び時間を面的に鉛直下方に作動させ、対象地盤を想定地震に対応できる履歴密度とする。鉛直下方の作動とは、繰返し荷重の方向と圧縮沈下の方向を一致させることで、対象地盤には鉛直下方の繰返し圧縮応力・剪断応力が発生する。面的作動とは一定の面積を有する加圧版による増加荷重と繰り返し荷重との組合せ荷重の作動である。対象区域の改良施工は、加圧版を順次移動して組合せ荷重を作動させる。これにより対象地盤には、鉛直下方の繰返し圧縮応力・剪断応力が発生する。
【0013】
また、必要に応じて、予め設置した吸水パイプで、液状化中間層より下の下部層から圧縮沈下に相当する間隙水を吸水し、直接外部へ排除することにより過剰間隙水圧の発生を抑制する。
【0014】
また、地表面の沈下を許さない施設の対策は、増加土被り圧となる載荷重と繰り返し荷重の組み合わせ荷重を作動させて圧縮沈下を進め、併行して予め設置した圧入パイプで所定の深さの液状化地盤に圧縮沈下の相当量の非液状化材を圧入して地表面の沈下と隆起を平衡させる。
【発明の効果】
【0015】
第一の効果は、土被り圧の増大を図ることで、土被り圧が小さい場合においても、必要な土被り圧を定量的に確保できるため、繰返し荷重による砂の圧縮特性を有効に活用させて、想定地震に対応する地盤密度を計画的に確保される。
【0016】
第二の効果は、必要な土被り圧のもと、繰り返し荷重の要素である方向、大きさ、周波数、作動時間ごとの改良数値が設定できるので、総合的に効果を予測ができ、定量的改良管理ができることである。まず、圧縮沈下に対して、締固めは水平方向よりも鉛直下方、静的締固めよりも動的締固めの方が厳しい条件となる。また、面的な鉛直下方の繰り返し荷重は、土被り圧の増加となる。次に、繰り返し荷重の大きさ、周波数、作動時間は、圧縮量と直接の関係にあり、これらを計画的に設定できる。また、締固め改良による密度の履歴要素が明確で、要素ごとの効果が判断される。以上の設定数値を定量的改良管理のもとそれぞれクリアすることにより、想定地震に十分に対応できる履歴密度を確保される。
【0017】
第三の効果は、液状化中間層より下の下部層から、圧縮沈下に相当する間隙水を、直接外部へ排除する。これにより、過剰間隙水圧の発生を抑制する。また、通常、地表面に向かう浸透水流は下向きの水流となり、逆に地盤の締固めに寄与させる。
【0018】
第四の効果は、繰り返し荷重による圧縮沈下量と非液状化材の圧入量を調整して地表面の沈下と隆起を平衡させることができるので。岸壁のエプロン、滑走路等の地表面の沈下が許されない場合でも対処できることにある。
【0019】
第五の効果は、改良地盤の圧縮・密度の履歴は、面的にも深度的にも工法的なムラが生じないことにある。本発明は対象地盤に所定の繰り返し荷重を鉛直方向に作動させる。地盤の圧縮・締固めは、土被り圧(有効応力)と繰り返し荷重の要素に依存する。これを地盤の深度方向の変化で見ると、土被り圧は深度と共に増加し、繰り返し荷重による有効応力は深度と共に減少する。周波数及び作動時間は、深度に関係なく一定である。また、地盤の面的な改良は、加圧版を面的に余すことなく順次移動して所定の繰り返し荷重を作動させる。従って、面的改良条件は同一であるから、工法的ムラは生じない。
【0020】
第六の効果は、最適周波数の繰り返し荷重による圧縮締固めは、細粒分が含まれていても効果の低減は小さい。
【0021】
第七の効果は大規模液状化対策に適していることである。本発明の液状化対策は、加圧版を面的に余すことなく順次移動して所定の繰り返し荷重を作動させる。規模が大きくなればなるほど、スケールメリットがでて改良工事費が低減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下,本発明の砂地盤の液状化対策工法の実施形態、実施例1を図1〜図3、実施例2を図4〜図5に基づいて説明する。
【実施例1】
【0023】
図1は供用されている港湾の岸壁のエプロン、ヤード、空港の滑走路等の舗装の有害な地表面の沈下を許さない液状化対策工法の実施例で、改良対象地盤上に改良装置構造体を据付けた状態の断面図である。図において1は、液状化対象地盤。2は対象外の硬質地盤。3はエプロン・滑走路等の舗装構造物。4は繰り返し載荷装置構造体で、4aは繰り返し荷重装置、4bは加圧版、4cは加圧版の外枠、4dは繰り返し載荷装置構造体4の自重調整載荷物である。5bは非液状化材の圧入パイプ孔、6bは地盤の間隙水を吸水する吸水パイプ孔である。
【0024】
繰り返し荷重装置4aの一例として、建設機械用の大型上下方向振動モーターがある。これをもとに説明する。ただし、既知の一般的な設備の図化は省略した。繰り返し荷重装置4aの起振力、振動数は可変機能のあるもので、繰り返し載荷装置構造体4の自重は、繰り返し荷重装置4aの起振力よりも大きなものとする。これにより、繰り返し載荷装置構造体4は、これの稼動中であっても静止状態を保ち、不必要な振動、騒音を発生させない。また、繰り返し荷重の大きさは起振力の2倍である。
【0025】
図2は繰り返し載荷装置構造体4の平面図である。自重調整載荷物4dの1例としてコンクリートブロックがある。
【0026】
図3は対象地盤の改良状況の断面図である。図において、5aは非液状化材圧入パイプ、7は圧入された非液状化材、6aは吸水パイプである。
【0027】
実施例1の地盤締固めの作業工程は(1)事前に室内試験で想定地震に対応する地盤の締固めとする繰り返し荷重の要素である大きさ、最適周期、作動時間および非液状化材の圧入量、最大圧入圧の各設定値を決定する。(2)繰り返し載荷装置構造体4を所定の位置に据付け、対象地盤の所定の位置、深さに非液状化材圧入パイプ5a及び地盤の間隙水の吸水パイプ6aを設置する。(3)非液状化材7の圧入を開始する。(4)間隙水の吸水を開始する。(5)繰り返し荷重装置4aを稼動する。(6)所定の締固めが終了したら繰り返し載荷装置構造体4を移動する。
【0028】
作業工程(1)の各設定値を決定で大切なことは、現場の調査位置が改良対象区域を代表するモデル層になっているかにある。適正位置の選定に留意する。
【0029】
作業工程(3)の非液状化材7は適度に流動性のあるもので、例えば貧配合の低強度なソイルセメント等である。本発明の非液状化材7は、繰り汳し荷重による圧縮沈下の相当分を圧入する。従って、圧入位置は対象層のほぼ中間となる。流動性のある非液状化材7の地上の流出管理は、中間層がある程度の深さとなるので防止は容易である。
【0030】
作業工程(4)の間隙水の吸水においては、浸透水流は下向きとする。従って、吸水位置は対象層の下層となる。図の地盤中の矢印は浸透水流の方向を示したものである。
【0031】
作業工程(5)の繰り返し載荷装置構造体4を稼動は繰返し荷重の周波数は最適周波数とする。荷重の大きさは非液状化材7の圧入圧の上昇に合わせて除々に上げていく。砂の振動による圧縮沈下は極めて短い時間で終了する。このときの砂の圧縮沈下の大きさを決定する要素は、その時点で可変なものとしては、繰り返し荷重の大きさ(方向は鉛直で固定)周期、稼動時間である。今、想定地震に十分に対応できる履歴密度は、繰り返し荷重の実施最大値、最適周期値および必要な作動時間で確保できるように設定する。最初から荷重を実施最大値とすると、所定の圧縮沈下は短時間で完了してしまい、非液状化材7の圧入は遅れ、地表面沈下を招いてしまう。そこで、繰り返し荷重装置4aの作動は、繰り返し荷重の大きさ、周期の値を下げ、作動時間を短く断続的に行い、地表面の隆起と沈下を平衡させる。実際には作業工程(3)(4)(5)は同時並行的に調整しながら実施される。
【0032】
作業工程(6)の最終段階では、非液状化材圧入パイプ5a、吸水パイプ6aを撤去して順次移動していく。対象地盤全域を繰り返し荷重の実施最大値、最適周期値として必要時間を作動させて、想定地震に十分に対応できる砂の履歴密度を確保する。
【0033】
定量的改良管理の核心は、地盤改良による液状化抵抗増大の確認調査にある。確認調査方法はN値などの貫入抵抗による簡易予測法、乱さない試料採取した室内液状化試験よる詳細予測法がある。最初の改良確認調査は詳細予測法で事前設定値である繰返し荷重の最適周波数、必要な荷重の大きさ及び作動時間の適性判定を行う。設定値が不適正ならば修正され改めて設定値が決定される。施工管理は各設定値で行う。以降の確認調査は詳細な方法と簡易な方法を組合せ適宜行う。また、確認調査位置は、圧入パイプ孔5b、吸水パイプ孔6bを利用すると位置が固定されるので、締固め改良の前後の比較に好適である。
【0034】
事前調査で液状化層の厚さ、広がりが把握できるので、地表面の沈下量または、非液状化材7圧入量は地盤の圧縮・締固め度の指標となり得る。本発明の改良は、工法的にムラが生じないので指標の信頼度は高い。また、モデル層はどこを選定しても良い状況にある。従って、確認調査位置は面的に偏りのない選定ができるので、全体的にバランスの良い改良管理を実現する。
【実施例2】
【0035】
図4は供用されている港湾の岸壁のエプロン、ヤード、空港の滑走路等の舗装の有害な地表面の沈下を許さない液状化対策工法において、大規模地震対応として地盤の土被り圧が不足している場合の実施例である。
【0036】
想定地震に対応する地盤密度は、地震規模が大きくなれば、既存の土被り圧では不足し、必要とする地盤密度が確保できないことが想定される。例えば、液状化対象地盤1に非液状化材7を圧入したとしても土被り圧がその圧力に見合った大きさがなければ、地盤が体積圧縮するのではなく、体積変形して地盤が隆起することになる。また、締固めにさらに大きな繰返し荷重が必要となることも考えられる。実施例1と大きく異なるところは、対象地盤の表面を面的に載荷して土被り圧を増大させる。すなわち、静的増加荷重と繰り返し荷重との組合せ荷重を作動させ、地盤の体積減少に見合う量の非液状化材7を圧入する圧力と平衡させると共に、動的締固めの特性を活用することにある。ここでは静的増加荷重として大気圧を利用する事例を示す。
【0037】
図4の大気圧を取り入れた締固め改良において、非液状化材の圧入パイプ5a、吸水パイプ6aは二重管とし、外管を圧入パイプ5a、内管を吸水パイプ6aとした。これは既存の舗装構造物3の削孔を必要最小限とするためである。また、吸水パイプ6aの先端部には砂等の流入を防ぐメッシュ構造のストレーナーが付けられている。8は真空ポンプ、9は減圧用パイプで、舖装構造物3の上部と下部の気密性を確保する構造とする。10は気密シール材で、加圧版4bと舗装構造物3の気密性を確保する。13は間隙水圧計で吸水パイプ6aの表面に取り付けてある。
【0038】
繰り返し載荷装置構造体4の自重は、繰り返し荷重装置4aの起振力よりも大きなものとする必要がある。ここでの大気圧の働きは、土被り圧の増加荷重と繰り返し載荷装置構造体4の自重増加荷重としての二つの役割を持たせる。土被り圧の増加荷重は舗装構造物3直下の路床を減圧し、舗装構造物3を巨大な加圧版として活用して大気圧を作用させる。つまり、二段重ねの加圧版となる。自重増加荷重は同様に加圧版4b下を減圧するものである。作用させる大気圧は、舗装構造物3直下の状態によって異なるが50kPa程度を期待している。
【0039】
図5は大気圧を取り入れた繰り返し載荷装置構造体4の底面の平面図である。11は二重管用孔、12は加圧版4bの底部に設置された荷重計である。配置は一例を示したものである。
【0040】
図4において、浸透水流はサクションの位置により加圧版4bと吸水パイプ6a先端部に分かれ下向きとはならないが、過剰間隙水圧の消散機能としては強化されている。図の地盤中の矢印は浸透水流の方向を示したものである。
【0041】
本発明は大気圧と繰り返し荷重との組合せ荷重を作動させて地盤の圧縮圧力を発生させる。併行して地盤の体積減少に見合う量の非液状化材7を圧入して必要な地盤密度を確保する。ここで重要なことは、大気圧50kPa、組合せ荷重の極限では100kPaの極めて大きな荷重であり、非液状化材7の圧入圧力と平衡させて構造物表面の変位を生じさせないように施工管理することである。
【0042】
組合せ荷重を作動させないで非液状化材7を圧入続けると、やがて舗装表面は圧入位置の鉛直線上を中心に隆起を始める。加圧版4bの底部の荷重計は、初期値はほぼ同じであるが、舗装隆起に伴い二重管用孔12付近の荷重計の計測値が上昇を始め、他の荷重計は減少始める。舗装隆起を続けると舗装の弾性領域を超え塑性領域に入り破壊に至る。逆に組合せ荷重だけを作動させると、二段の加圧版形式となり、小さな組合せ荷重には舗装版は剛体として挙動し、大きな組合せ荷重には舗装版は弾性体として挙動し、舗装隆起と逆の現象が発生して破壊に至る。ただし、舗装版には路床支持力が働くのでその分余裕がある。本発明は複数の荷重計の荷重変化の推移をリアルタイムに測定し、これにより上下両方向の圧力の平衡を把握して施工管理する。これは構造物の弾性領域の微少変位を直接観測することは困難であるが、荷重の変化は容易に観測でき、これにより正確な変位予測ができることにある。
【0043】
砂地盤の締固めは、過剰間隙水圧が発生すると大幅に低下する。本発明は圧縮沈下に相当する間隙水を吸水して直接外部に排除することで、過剰間隙水圧の発生を抑制しているが、この抑制の状況把握として間隙水圧をリアルタイムに測定して施工管理する。
【0044】
実施例2の地盤締固めの作業工程は(1)事前に室内試験で想定地震に対応する地盤の締固めとする増加土被り圧の大きさ、繰り返し荷重の要素である大きさ、最適周期、作動時間および非液状化材の圧入量、最大圧入圧の各設定値を決定する。(2)繰り返し載荷装置構造体4を所定の位置に据付け、対象地盤の所定の位置、深さに非液状化材圧入パイプ5a及び吸水パイプ6aの二重管を設置する。(3)大気圧を作用させ、加圧版4bの底部の荷重計で加圧初期値を測定する。(4)非液状化材7の圧入を開始し、非液状化材7の流量および圧入圧力を計測する。(5)間隙水の吸水を開始し、間隙水圧を計測する。(6)加圧版4bの複数点の荷重を計測する。(7)繰り返し荷重装置4aを稼動する。(8)所定の締固めが終了したら繰り返し載荷装置構造体4を移動する。
【0045】
作業工程(3)の大気圧初期値は、加圧による舗装構造物3の弾性領域に収まる大気圧の大きさである。初期値は理論的に一定であるから、荷重計設置圧を調整して一定とする。
【0046】
作業工程(5)過剰間隙水圧が上がるようであれば、非液状化材7の圧入能力をそれに合わせて下げる。
【0047】
作業工程(7)荷重計の測定値の一定がくずれ始めたら、繰り返し荷重装置4aを稼動させて繰返し荷重も除々に上げる。この時、非液状化材7の流量計および圧力計、加圧版4bの荷重計、間隙水圧計の測定値をもとに、組合せ荷重の大きさ、4過所の非液状化材7の圧入能力を調整して圧力を平衡させるように管理する。
【0048】
地盤の液状化抵抗の定量的改良管理は、実施例2、実施例1も同様に行われる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】対象地盤上に繰り返し載荷装置構造体4を据付けた状態の断面図
【図2】繰り返し載荷装置構造体4の平面図
【図3】対象地盤の締固め改良状況を示した断面図
【図4】大気圧を取り入れた対象地盤の締固め改良状況を示した断面図
【図5】大気圧を取り入れた繰り返し載荷装置構造体4の底面の平面図
【符号の説明】
【0050】
1 液状化対象地盤
3 舗装構造物
4 繰り返し載荷装置構造体
4a 繰り返し荷重装置
4b 加圧版
5a 非液状化材圧入パイプ
6a 吸水パイプ
7 非液状化材
8 真空ポンプ
9 減圧用パイプ
12 荷重計
13 間隙水圧計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状化の可能性のある地盤に、圧縮の最適周波数とした繰り返し荷重における必要な荷重の大きさ及び時間を面的に鉛直下方に作動させて圧縮し、液状化対象地盤を想定地震に対応できる履歴密度とすることを特徴とする液状化対策工法。
【請求項2】
請求項1の液状化対策工法において、繰り返し荷重の作動時に、液状化対象地盤の中間層より下の下部層から圧縮沈下量に相当する間隙水を吸水し、直接外部へ排除することにより浸透水流を下向きとすることを特徴とする液状化対策工法。
【請求項3】
請求項1の液状化対策工法で構造物表面沈下を許さない対策において、繰り返し載荷装置4aの繰り返し荷重の要素である大きさ、周波数、作動時間を調整しながら、液状化対象地盤1の圧縮沈下の相当量の非液状化材7を液状化対象地盤1の所定の深さに圧入して構造物表面の隆起と沈下を平衡させることを特徴とする液状化対策工法。
【請求項4】
請求項1の液状化対策工法における地盤の液状化抵抗の改良管理において、最初の改良確認調査は詳細予測法で事前設定値である繰返し荷重の最適周波数、必要な荷重の大きさ及び作動時間の適性判定を行い、施工管理は各設定値で行い、中間の改良確認調査は簡易予測法または必要に応じて詳細予測法により改良判定を行うことで、定量的改良管理を実施することを特徴とする液状化対策工法。
【請求項5】
液状化の可能性のある地盤に土被り圧増大の静荷重と繰返し荷重の組合せ荷重を面的に鉛直下方に作動させて圧縮し、液状化対象地盤を想定地震に対応できる履歴密度とすることを特徴とする液状化対策工法。
【請求項6】
請求項5の液状化対策工法で構造物の表面沈下を許さない対策において、土被り圧増大の静荷重を大気圧とし、大気圧と繰り返し荷重の組合せ荷重の作動により地盤に圧縮圧力を発生させ、併行して地盤の体積減少に見合う量の非液状化材7を圧入し、圧縮圧力と圧入による地盤隆起圧力を平衡させて必要な地盤密度を確保すると共に、構造物表面の変位を生じさせないことを特徴とする液状化対策工法。
【請求項7】
請求項5の液状化対策工法の圧縮圧力と隆起圧力の平衡についての施工管理において、加圧版4bの底部に設置された複数の荷重計12の荷重変化の推移をリアルタイムに測定し、両圧力の平衡を把握して施工管理することを特徴とする液状化対策工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−196464(P2010−196464A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35362(P2010−35362)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(506101805)
【出願人】(506147755)
【Fターム(参考)】