説明

砂糖系潤滑剤

【課題】 材料同士が互いに擦り合う場合、その減摩策として、従来の鉱物油等の潤滑剤を用いた場合、潤滑性不良、あるいは油処理などの後処理などにおいて、作業がしにくいあるいは環境に対して優しくないなどのいろいろな課題が生じる。
【解決手段】 材料同士が互いに擦り合う場合、摩擦を軽減させるために材料の表面に潤滑剤を用いるが、従来の潤滑剤の代わりに、潤滑機能を発揮する水に砂糖、小麦粉、とうもろこし粉、米粉、片栗粉、そしてアルコールを含ませた液を潤滑剤として塗布して用いることにより、良好な潤滑性が得られ、かつ環境に対しても優しく、したがって従来に比べて良好な作業を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属あるいは非金属の材料と材料とが互いに擦り合うような際に、擦り合う材料の表面に従来のような鉱物油系等の潤滑剤を使用するのではなくて、水に砂糖そして小麦粉、とうもろこし粉、米粉、片栗粉を加えたもの、さらにアルコール(エチルアルコール)を含む液を材料の表面に塗布し、材料同士が互いに擦り合う際に、潤滑機能を発揮する潤滑剤に関するものである。そして、この潤滑剤適用の一つとして、例えば材料の成形加工時に適用できる潤滑剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金属材料などの材料同士が互いに擦り合うような場合、両材料の間には、潤滑剤がないと良好な作業ができないなど具合が悪い場合が多い。このような場合、従来の作業工程では、材料表面に主に鉱物油系の潤滑剤を塗布して減摩し作業が行われている。しかし地球環境に対して優しくないという問題がある。環境に優しい小麦粉など穀物系粉を水に溶かして懸濁液とし、これを材料表面に塗布、あるいは乾燥させて使用する場合(特開平10−180391号公報)もあるが、これらの場合、液そのものの腐敗、あるいは材料表面への塗布の際に水をはじいて均一に塗布し難い場合があり、かつ塗布されてもそれが乾いたりして表面から剥がれ落ちたりして、作業環境を悪くするなどの実用上の問題も多い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来使用されている潤滑剤は、鉱物油系が主なもので、油そのものの取り扱いにくさ、あるいは使用後の後処理など、油を使用して行う作業においては多くの課題を含んでいる。また、これらに使用される潤滑油は、使用後の後処理が必要であり、取り除くか、あるいは作業終了後も製品にそのまま付着したままになる場合も多い。いずれの場合でも、これらの潤滑剤が環境に害を与えるものであってはならない。鉱物油系以外の穀物系潤滑剤でも、腐敗、塗布性あるいは付着性など使用上の問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、材料と材料とが互いに擦り合う場合について、上記問題点を解決すべく種々検討した結果、材料同士が互いに擦り合う際に、従来の潤滑剤に代わって、水に砂糖、小麦粉などの穀物系粉を加える場合、そしてさらにこれらにアルコールを含ませた液とし、これらを互いに擦り合う材料の表面に塗布して、潤滑機能を発揮させる潤滑剤である。
【0005】
本発明潤滑剤は、まず水に砂糖、そして小麦粉などの穀物類を加えて、砂糖と穀物とを組み合わせることによって液をある程度の期間腐敗しない様にし、そしてさらにアルコールを含ませることによって、さらに腐敗防止効果を高めたものである。使用時には液の塗布性もよく、かつ塗布後成形加工などの次の工程に進む場合も、塗布後材料表面から剥がれ落ちることもなく付着性もよく取り扱い易く、良好な潤滑機能を発揮するものである。
【0006】
潤滑剤の塗布は、被加工材の両面、あるいは片面のいずれにも適用される。あるいは加工金型側に塗布してもよい。また成形加工後は材料表面から水などで容易に洗い落とすこともでき、しかも後処理した液も環境に対して害を与えるものではない。アルコールはエチルアルコールである。本発明潤滑剤の砂糖、小麦粉などの穀物系原料そしてアルコールは、通常食品に用いられているものでよく、環境に対してやさしく、また植物を通して得るものであるので、これらは育成すれば得ることのできる半永久的資源物質であり、本発明潤滑剤は、環境、資源の両面からの対策にもなり得るものである。
【0007】
本発明において、互いに擦り合う材料とは、鉄鋼系、ステンレス系、高合金系、チタン系、アルミ系、銅系など金属あるいは非金属材料などのことであり、その材料の形状については特定しない。この潤滑剤の適用の一つとしては、金属あるいは非金属材の成形加工時の潤滑剤に使用するのに適している。
【0008】
本発明潤滑剤の含有範囲は、まず水に砂糖を3%およびそれ以上、20%およびそれ以下、小麦粉、とうもろこし粉、米粉、片栗粉を4%およびそれ以上、40%およびそれ以下をそれぞれ単独もしくは複合に含むものである。これらの液を使用する場合、液を通常の大気中室温である程度の期間放置しても腐敗することはない。そしてさらにアルコールを3%およびそれ以上、9%およびそれ以下を含ませることで、液を長期間保存しても腐敗することもなく潤滑機能を発揮し得る。ここで表している%は重量%である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明潤滑剤は、良好な塗布性、付着性を有し、そして優れた潤滑機能を有するものである。材料と材料とが互いに擦り合う際に、材料の両面または片方の表面に塗布して使われるもので、金属、非金属材の成形加工時には、金型と金型の間にはさまれる被加工板材表面の両面もしくは片面、場合によっては金型にも塗布してもよく、塗布する箇所には特に限定しない。材料を成形加工後は、加工製品からのこの潤滑剤の除去は水などによって容易に洗い落とすことができる。
【実施例1】
【0010】
本発明の潤滑剤に関して、潤滑剤として水に砂糖を2〜22%、小麦粉を3%から42%を加え、液の腐敗防止性、そしてこれらを材料の表面に塗布する場合の塗布性、付着性、そして材料の成形加工性能を調べる深絞り試験を行った。比較に従来の鉱物油についても行った。材料には亜鉛メッキ鋼板(板厚0.8mm)を用いた。その結果を表1に示す。
【0011】
潤滑剤として水に砂糖を3〜20%含む糖液を使用することで、液も腐敗することもなく、かつ塗布性、付着性も良好であり、かつ小麦粉4%およびそれ以上、40%およびそれ以下を含ませることによって、高い深絞り(D)値、そして加工材の仕上がりの表面のきれいさなど良好な成形性が得られる。また砂糖の添加量が20%以上になるとD値も飽和し、液の粘度も増し取り扱いにくくなり好ましくない。よって、砂糖の適正な添加量の上限は20%である。また小麦粉40%以上では液の粘性が増し塗布性がやや悪くなり、均一な塗布が難しくなる。よって、小麦粉の適正な添加量の上限は40%である。
【表1】

【実施例2】
【0012】
水に砂糖5%、そしてとうもろこし粉、米粉そして片栗粉をそれぞれ単独に15%ずつ添加した液について同様の試験を行った。その結果を表2に示す。いずれもすぐれた結果が得られている。なお、小麦粉そしてこれらの粉を複合に添加して、その合計が、4%およびそれ以上、40%およびそれ以下においても、同様の良好な結果が得られている。
【表2】

【実施例3】
【0013】
水に砂糖5%、小麦粉15%そしてアルコールを2%から10%を含む液を作成し、腐敗防止性、塗布性、付着性を調べ、そして材料として亜鉛メッキ鋼板を用いて深絞り試験を行った。その結果を表3に示す。アルコール2%では腐敗防止性においては顕著な効果が得られないが、3%およびそれ以上、9%およびそれ以下を含む液では、長期間腐敗することなく保存が可能で、しかもすぐれた成形加工性を示す。9%を超えると成形性が劣化し始めるので、長期保存が可能で、優れた成形加工性を示すアルコールの適正な含有量の上限は9%である。
【表3】

【実施例4】
【0014】
水に砂糖5%、とうもろこし粉、あるいは米粉そして片栗粉を単独に15%ずつ加え、さらにアルコール7%を含む液とし、これらを用いて、亜鉛メッキ鋼板に塗布して深絞り試験を行った。その結果を表4に示す。この場合も液の長期保存が可能で、塗布性、付着性、そして成形加工性のいずれの面においてもすぐれた結果を示している。なお、この場合も、小麦粉およびこれらの粉を複合に含んだ場合においても同様の良好な結果が得られている。
【表4】

【実施例5】
【0015】
水に砂糖5%、小麦粉15%を加えた液を用いて、これをステンレス、高ニッケル合金、チタン、アルミそして銅板に適用して深絞り試験を行った。その結果を表5に示す。腐敗防止性、塗布性、付着性において良好な結果を示し、またいずれの板材でも良好な成形加工性を示している。
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明は、以上のように構成されているので、以下に記載されるような産業上の利用可能性を有する。
【0017】
すなわち、産業上において材料と材料とが互いに擦り合うことは非常に多くあり、このときに、本発明のように材料の表面に潤滑機能を発揮する本液を潤滑剤として適量使用することにより、材料が擦り合う際の材料同士の摩擦を軽減し、良好な潤滑機能を発揮する。液は腐敗せず、これを材料の成形加工時の潤滑剤として適用するとき、塗布、付着しやすいなど取り扱い易く、実用上において良好な成形加工を行うことができる。
また本発明潤滑剤は、その主原料が植物からつくられたものであるから、資源も半永久的であり、かつ使用した後においても環境に対して優しい潤滑剤として提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水に砂糖を添加し、さらに小麦粉、とうもろこし粉、米粉、片栗粉を単独あるいは複合に添加した液体の潤滑機能を発揮する潤滑剤。
【請求項2】
請求項1記載の砂糖の添加量を3%およびそれ以上、20%およびそれ以下とし、小麦粉、とうもろこし粉、米粉、片栗粉については単独もしくは複合の添加量を4%およびそれ以上、40%およびそれ以下とした液体の潤滑機能を発揮する潤滑剤。
【請求項3】
請求項2記載の液体において、アルコールの含有量を3%およびそれ以上、9%およびそれ以下とした液体の潤滑機能を発揮する潤滑剤
【請求項4】
請求項1.2.および3記載の潤滑剤を、金属および非金属材を成形加工する際に材料表面に塗布して使用する潤滑剤。

【公開番号】特開2010−168519(P2010−168519A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−31939(P2009−31939)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(505357476)株式会社岡村鉄工所 (3)
【出願人】(599063550)
【Fターム(参考)】