説明

研磨材固定用両面粘着テープ

【課題】 適度の粘着力と、再剥離性を備えるとともに、レンズ等の被研磨材が滑らかに研磨され得るような研磨材固定用両面粘着テープを提供する。
【解決手段】 厚さが0.2〜0.5mmで弾性率が150〜1500MPaのフィルムからなる基材(好ましくはポリプロピレンとエチレン−酢酸ビニル共重合体の共押出し複層フィルム)の両面に、厚さが0.02〜0.07mmの粘着剤層が設けられ、弾性率が200〜2000MPaである研磨材固定用両面粘着テープ。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、シリコンウエハー、液晶用ガラス、ハードディスク、レンズ等の被研磨材を研磨する際に研磨材の固定に用いられる両面粘着テープに関し、特に、レンズ等の研磨紙の固定に好適に用いられる両面粘着テーに関する。尚、本発明の研磨材固定用両面粘着テープは、所謂粘着フィルムや粘着シートを包含するものである。
【0002】
【従来の技術】上記被研磨材の研磨に用いられる研磨材は、通常、研磨紙、研磨布や研磨パッドの形態で用いられる。これを研磨装置の金属製又はセラミック製等の研磨定盤に固定し、相対する研磨定盤に被研磨材料であるシリコンウエハー、液晶用ガラス、ハードディスク、レンズ等を固定し、例えば、スラリー液の存在下で研磨材と被研磨材料を圧着し、研磨定盤を回転させ、被研磨材を研磨する。
【0003】従来、合成樹脂フィルム、不織布等からなる基材の両面に粘着剤層及び離型材がこの順に積層されてなる両面粘着テープは、上記研磨材の固定用にも使用されている。このような着テープが一面に貼付された研磨材は、離型材を剥離して露3した粘着剤層を、例えば、ポリッシングマシンの上下一対の研磨定盤における内側の所定の箇所に貼着し、定盤同士を当接させるようにして、シリコンウエハー、ハードディスク、レンズ等を研磨する方法で使用される。
【0004】例えば、レンズ等の研磨に用いられる研磨紙は、両面粘着テープと貼り合わされて、例えば所望の形状に打ち抜かれた後、上記研磨定盤に貼着されてレンズ等を研磨し、研磨紙が或る程度磨り減った段階でテープと共に剥がされ、新しい研磨紙と交換される。
【0005】この様な研磨材固定用両面粘着テープは、従来、不織布やポリエチレンテレフタレート(PET)などの固いフィルムの両面に厚さ約0.02〜0.10mmの粘着剤層を形成したものが用いられていたが、粘着剤としてはコスト及び品質安定性の面からアクリル系粘着剤が汎用されていた。しかし、アクリル系粘着剤を両面粘着テープの粘着剤層として塗工する場合は、溶剤型もしくはエマルジョン型の粘着剤を塗工で塗工乾燥して生産されるが、上記厚みの粘着剤層を形成するには、塗工量が非常に多くなるために乾燥させる溶剤や水の量も必然的に多くなり、その結果生産性が低いという問題点があった。
【0006】一方、研磨材固定用両面粘着テープに要求される特性としては、研磨時に研磨定盤に接着する粘着力と、研磨材の交換時に糊残り現象を生じたり基材が破断しない再剥離性が挙げられていたが、これらの特性を満足していても、レンズの被研磨面が滑らかに仕上らない場合があるという問題点があった。このような問題点に対し、例えば、研磨材の有する硬度を特定することにより、レンズ等の被研磨面の仕上りを良好にする試みが提案されている(特開平5−57622号公報参照)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかし、本発明者の検討によれば、レンズの被研磨面の良好な仕上り状態を確保するには、単に研磨材の弾性等を特定するだけでは不十分であって、本発明者は粘着剤層も含めた両面粘着テープ全体の弾性が研磨の仕上りに対する重要な要素であるとの知見を得て本発明を完成した。本発明は、上記従来の研磨材固定用両面粘着テープの問題点に鑑み、適度の粘着力と、再剥離性を備えるとともに、レンズ等の被研磨材が滑らかに研磨され得るような研磨材固定用両面粘着テープを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するために、本発明は、厚さが0.2〜0.5mmで弾性率が150〜1500MPaのフィルムからなる基材の両面に、厚さが0.02〜0.07mmの粘着剤層が設けられ、弾性率が200〜2000MPaである研磨材固定用両面粘着テープを提供する。
【0009】基材を構成するフィルムの材質は、上記弾性率を満たすものであれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、軟質ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート(PET)に代表されるポリエステル等からなる合成樹脂フィルムや、不織布、織布、セロハン、上質紙、クラフト紙、グラシン紙、コート紙、キャストコート紙、樹脂含浸紙、金属箔ラミネートフィルム、金属蒸着フィルム等が挙げられる。
【0010】特に、研磨紙固定用両面粘着テープとして用いる場合は、弾性の異なる樹脂により多層化すると、硬い層で研磨時の強度を確保し、柔軟な層で全体の弾性をコントロールできるので好ましく、例えば、ポリプロピレンフィルムの如く硬い層とエチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムの如く柔らかい層とからなる多層フィルムの場合は、両者の厚さの比は1:0.5〜1:4程度が好ましい。
【0011】基材としてのフィルムは、厚さが0.2〜0.5mmで弾性率が150〜1500MPaとされる。基材フィルムの厚さや弾性率がこの範囲外であると、一般的な粘着剤層を両面に設けて本発明の粘着テープを得ようとしても、テープ全体の弾性率が所定の範囲となり難いからである。
【0012】基材フィルムの両面に設けられる粘着剤層の厚さは、各々0.02〜0.07mmとされる。この範囲の厚さにすることにより、例えば、汎用されるアクリル系粘着剤を用いる場合でも工業的生産性を確保できるとともに、テープ全体の弾性率を所定の範囲とすることができる。
【0013】本発明のテープは、全体の弾性率が200〜2000MPaとされ、200MPa未満では、被研磨表面は鏡面になるものの、面全体の平坦度が安定しない。一方、2000MPaを越えると研磨中に微小な傷(スクラッチ)が付いて研磨の仕上がり度が安定せず、いずれにしても、レンズ等の被研磨面の仕上りが良好なものとならない。
【0014】基材フィルムには、粘着着剤との密着性を向上させるために、例えば、コロナ放電処理等の下地処理(前処理)が施されていても良い。
【0015】本発明においては、粘着剤層を構成する粘着剤は特に限定されないが、上記基材に対する密着性、塗工性、耐候性、耐久性等に優れ、取扱い時の汚れも少ないため、アクリル系粘着剤(アクリル系樹脂からなるもの)が好ましく用いられ、また、ゴム系粘着剤も使用可能である。
【0016】上記アクリル系樹脂としては、例えば、アルキル基の炭素数が1〜12のアルキル基を有するアルコールの(メタ)アクリル酸エステルモノマー、好ましくは炭素数が4〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーの単独重合体もしくは(メタ)アクリル酸エステルモノマー同士の共重合体、又は上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーと該(メタ)アクリル酸エステルモノマーと共重合可能な重合性モノマーとの共重合体等を主成分としてなるものが挙げられる。尚、本発明で言う(メタ)アクリレートとはアクリレートまたはメタクリレートを意味する。
【0017】上記アルキル基の炭素数が4〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸nーブチル、(メタ)アクリル酸2ーエチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸nーオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸ラウリル等を挙げることができる。これらは、単独で、又は組み合わせて用いることができるが、得られる粘着剤の粘着性や、粘着力と凝集性とのバランスに優れたものとするために、通常、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)がー50℃以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とし、更に、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の低級のアルコールの(メタ)アクリル酸エステルを併用することが好ましい。
【0018】また、これらのビニルモノマー以外のこれらと共重合可能なモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有モノマー又はその無水物や2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロオキシブチルアクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート、カプロラクトン変成(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマー等が挙げられる。
【0019】上記粘着剤は、例えばイソシアネート系やエポキシ系の、架橋剤を含有して粘着力が調節されているものであってもよい。架橋剤の含有量は特に限定されるものではなく、通常、粘着剤中の上記アクリルル系樹脂に対して0.5〜4.0重量%、例えば、2−ヒドロキシアクリレートを構成単位として2重量%含むアクリルル系共重合体に対して0.5〜4.0重量%程度配合される。
【0020】また、上記粘着剤中には、さらに必要に応じて、粘着性付与剤、無機もしくは有機充填剤、酸化防止剤(老化防止剤)、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤等各種の添加剤が添加されていても良い。
【0021】特に、例えば研磨材の貼り合わせ面となる側の、接着性を高めたい場合は、熱活性のアクリル系接着剤層、所謂ホットメルト接着剤層等を設けてもよい。
【0022】粘着剤層に対し、一般に貼着される離型材としては、特に限定されず、例えば、シリコーン樹脂系離型剤や長鎖アルキル基ペンダント型グラフトポリマー系離型剤等により、紙やプラスチックフィルム等の少なくとも片面に離型処理を施して得られる離型紙や離型フィルム等が挙げられる。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例及び比較例を示す。
(実施例1)ポリプロピレンとエチレン−酢酸ビニル共重合体の多層共押出し複層フィルム(厚さ0.3mm、厚さの比、ポリプロピレン:エチレン−酢酸ビニル共重合体として、1:2.5程度、弾性率200MPa、アキレス社製、商品名Povic−T)を基材として、両面に、各々厚さ0.05mmのアクリル系粘着剤層(積水化学工業社製の「WHD」糊と日本ポリウレタン社製の架橋剤「コロネートL−55E」とからなるもの)を設けた、両面粘着テープを用意した。この両面粘着テープの弾性率は200MPaであり、以下に示す通り、研磨紙に貼着してレンズ研磨装置にてレンズを研磨したところ、被研磨表面の仕上り状態は良好であった。
【0024】(実施例2)ポリプロピレンとエチレン−酢酸ビニル共重合体の共押出し多層フィルム(厚さ0.2mm、厚さの比、前記順に1:3.5程度、弾性率400MPa、オカモト社製、商品名エコロフィンスーパー)を基材として、両面に、各々厚さ0.05mmのアクリル系粘着剤層(積水化学工業社製の「WHD」糊と日本ポリウレタン社製の架橋剤「コロネートL−55E」とからなるもの)を設けた、両面粘着テープを用意した。この両面粘着テープの弾性率は420MPaであり、以下に示す通り、研磨紙に貼着してレンズ研磨装置にてレンズを研磨したところ、被研磨表面の仕上り状態は良好であった。
【0025】(比較例1)ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ0.2mm、弾性率8000MPa、三菱樹脂社製、商品名ダイアラミー)を基材として、両面に、各々厚さ0.05mmのアクリル系粘着剤層(積水化学工業社製の「WHD」糊と日本ポリウレタン社製の架橋剤「コロネートL−55E」とからなるもの)を設けた、両面粘着テープを用意した。この両面粘着テープの弾性率は8000MPaであり、以下に示す通り、研磨紙に貼着してレンズ研磨装置にてレンズを研磨したところ、レンズの表面に微細な傷が無数に生じて平滑な表面が確保されず、被研磨表面の仕上り状態は良好とは言えないものであった。
【0026】〔弾性率の測定方法〕基材又は両面粘着テープの弾性率は、ASTM D882に準拠して測定した。
【0027】〔研磨紙〕2dのナイロン繊維と1.5dのレーヨン繊維を略同じ割合で混用してなる、目付70g/m、厚さ0.35mmの不織布の表面に、砥粒を固着して研磨紙(研磨用不織布)とした。
〔レンズの研磨〕研磨紙に貼着した両面テープの他面をポリッシングマシンの上下一対の研磨定盤のホルダーに取り付け、相対する研磨定盤に被研磨材料であるレンズを固定し、研磨液の存在下で研磨材とレンズを圧着し、研磨定盤を回転させることによりレンズを研磨した。
【0028】
【発明の効果】本発明の粘着テープは、従来から研磨材固定用として要請される適度の粘着力と、再剥離性とを備えるとともに、厚さと弾性率が特定された基材フィルムの両面に厚さが特定された粘着剤層が設けられ、弾性率が特定されてなるので、本発明の研磨材固定用両面粘着テープを用いることによって、レンズ等の被研磨材の研磨仕上がり状態を滑らかな良好なものとすることが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 厚さが0.2〜0.5mmで弾性率が150〜1500MPaのフィルムからなる基材の両面に、厚さが0.02〜0.07mmの粘着剤層が設けられ、弾性率が200〜2000MPaであることを特徴とする研磨材固定用両面粘着テープ。

【公開番号】特開2002−294179(P2002−294179A)
【公開日】平成14年10月9日(2002.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−93381(P2001−93381)
【出願日】平成13年3月28日(2001.3.28)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】