説明

研磨用ブラシ毛材および研磨ブラシ

【課題】金属板の製造工程における圧延ロールの洗浄および研磨に使用する際に、砥材粒子が研磨用ブラシ毛材から脱落しにくくなるとともに、洗浄や研磨時に毛材の折損がなく、且つ植毛した毛材の根元部分における屈曲疲労性にも優れるなど耐久性に優れ、研磨性能を持続的に発揮する研磨用ブラシ毛材および研磨ブラシの提供。
【解決手段】二重芯鞘構造を有する複合モノフィラメントからなる研磨用ブラシ毛材であって、この複合モノフィラメントの芯部が合成樹脂と砥材粒子との混合物からなり、且つ鞘部が芯部の合成樹脂とは異なる他の合成樹脂からなることを特徴とする研磨用ブラシ毛材およびこの毛材を少なくとも一部に使用した研磨ブラシ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属板の製造工程の一つである金属圧延工程において、圧延ロールの表面を洗浄および研磨するために使用する研磨用ブラシ毛材の改良に関し、さらに詳しくは、アルミニウム板などの金属板の圧延ロールの表面を傷つけることなく効率よく洗浄および研磨することができ、さらに耐久性に優れ、持続的な研磨性能を発揮する研磨用ブラシ毛材および研磨ブラシに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金属板の製造工程における圧延ロール表面の洗浄および研磨には、ディスクロールブラシ、チャンネルロールブラシ、カップ状ブラシなどの研磨ブラシが使用されており、さらにこれらの研磨ブラシの毛材には砥材粒子を含有したモノフィラメントが使用されている。
【0003】
これらの研磨ブラシは、回転しながら圧延ロールの表面に押圧され、圧延ロール上に付着したスラッジや錆を除去するものであるが、使用中に毛材同士が擦れ合うために毛材表面の砥材粒子が脱落したり、毛材が折損したりするなどの問題があり、その対策として、毛材の表面の砥粒粒子を予め落とすなどの手段が採られている。
【0004】
特に、ジュース缶などの食品分野で数多く使用されるアルミニウム板は、その表面に傷が付いていたり、アルミ板に折損した毛材や脱落した砥材粒子が付着していたりすると、製品安全上の問題となることから、その取り扱いが特に厳しくなっている。
【0005】
こうした問題に対して、砥材粒子と合成樹脂との接着力を向上させるために、砥材粒子表面にシランカップリング処理を施した研磨用ブラシ毛材(例えば、特許文献1参照)、合成樹脂と研磨砥材粒子とからなる繊維にマルチ繊維をカバーリングした研磨用ブラシ毛材(例えば、特許文献2参照)、芯鞘複合構造から成り、鞘部に研磨剤が5〜60重量%含有した研磨用モノフィラメント(例えば、特許文献3参照)が既に知られている。
【0006】
しかし、シランカップリング処理を施した研磨用ブラシ毛材は、シランカップリング処理を施していない研磨用ブラシ毛材に比べてある程度の改善はされるものの、洗浄や研磨時に毛材同志が強く擦れ合うために、やはり砥材粒子の脱落防止に十分な効果を発揮せず、また植毛した毛材の根元部分の屈曲疲労性が低いため、毛材の折損が発生する場合があった。
【0007】
また、マルチ繊維でカバーリングした研磨用ブラシ毛材についても、やはり毛材同志が強く擦れ合うために、マルチ繊維が解れてしまうばかりか、マルチ繊維が切れて圧延ロールに付着したり、圧延ロールの冷却工程において、切れたマルチ繊維が冷却配管内に詰まったりするなどの支障をきたすため、研磨用ブラシ毛材の更なる改善が強く要望されていた。
【0008】
さらに従来の研磨用ブラシ毛材を使用した研磨ブラシは、研磨用ブラシ毛材から砥材粒子が脱落しやすいために、洗浄や研磨を繰り返していくうちに研磨力が低下する傾向にあり、研磨性能を持続的に発揮する研磨用ブラシ毛材の実現が求められていた。
【特許文献1】特開昭55−51813号公報
【特許文献2】特開2001−32756号公報
【特許文献3】特開昭56−157956号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、金属板の製造工程における圧延ロール表面の洗浄および研磨に使用するに際し、砥材粒子が研磨用ブラシ毛材から脱落しにくくなるとともに、洗浄や研磨時に毛材の折損がなく、且つ植毛した毛材の根元部分における屈曲疲労性にも優れるなど耐久性が改善され、さらに研磨性能を持続的に発揮する研磨用ブラシ毛材および研磨ブラシを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明によれば、二重芯鞘構造を有する複合モノフィラメントからなる研磨用ブラシ毛材であって、前記複合モノフィラメントの芯部が合成樹脂と砥材粒子との混合物からなり、且つ鞘部が芯部の合成樹脂とは異なる他の合成樹脂からなることを特徴とする研磨用ブラシ毛材が提供される。
【0011】
なお、本発明の研磨用ブラシ毛材においては、
前記複合モノフィラメントの鞘部の重量比率が、この複合モノフィラメントの全重量に対して3〜40%であること、
前記複合モノフィラメントの少なくとも一端において、芯部が鞘部に覆われずに露出しており、且つ芯部の露出した部分の長さが1〜10mmであること、
前記複合モノフィラメントの芯部を構成する合成樹脂がポリアミド系樹脂であり、且つ鞘部を構成する合成樹脂がポリエステル系樹脂であること、および
前記複合モノフィラメントの芯部を構成する合成樹脂がポリエステル系樹脂であり、且つ鞘部を構成する合成樹脂がポリアミド系樹脂であること
がさらに好ましい条件として挙げられ、これらの条件を満たすことにより、より優れた効果を取得することができる。
【0012】
また、本発明の研磨用ブラシは、上記研磨用ブラシ毛材を毛材の少なくとも一部に使用したことを特徴とし、研磨用ブラシ毛材からの砥材粒子の脱落が極めて少なく、耐久性に優れ、研磨性能が持続的に発揮されるなど、従来の研磨用ブラシ毛材にはない優位な効果が得られる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、金属板の製造工程における圧延ロール表面の洗浄および研磨に使用するに際し、砥材粒子が研磨用ブラシ毛材から脱落しにくくなるとともに、洗浄や研磨時に毛材の折損がなく、且つ植毛した毛材の根元部分における屈曲疲労性にも優れるなど耐久性が改善され、持続的な研磨性能を有する研磨用ブラシ毛材および研磨ブラシが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の研磨用ブラシ毛材および研磨ブラシについて以下の通り説明する。
【0015】
本発明の研磨用ブラシ毛材は、二重芯鞘構造を有する複合モノフィラメントからなる研磨用ブラシ毛材であって、この複合モノフィラメントの芯部が合成樹脂と砥材粒子との混合物からなり、且つ鞘部が芯部の合成樹脂とは異なる他の合成樹脂からなることを特徴とするものである。
【0016】
つまり、本発明の研磨用ブラシ毛材は、合成樹脂と砥材粒子とからなる芯部の周囲に他の合成樹脂層(鞘部)が形成された複合モノフィラメントからなるため、砥材粒子の脱落が極めて少なくなるとともに、洗浄や研磨時に毛材同士の擦れ合いによる折損がなく、且つ植毛した毛材の根元部分の屈曲疲労性にも優れるなどの耐久性に優れたものとなるのである。
【0017】
ここで、本発明の研磨用ブラシ毛材の芯部および鞘部を構成する合成樹脂には、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610(以下、N610という)、ナイロン612、ナイロン6/66共重合体、ナイロン6/12共重合体などのポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(以下、PBTという)、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリメチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリプロピレン、低密度および高密度ポリエチレン、シンジオタクチックまたはアタクチックまたはイソタクチックポリスチレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド、ポリスチレン・ポリブタジエン・ポリスチレンブロックコポリマー、ポリスチレン・ポリイソプレン・ポリスチレンブロックコポリマーなどのスチレン系エラストマー、エチレン・プロピレン・ジエチレンコポリマーなどのオレフィン系ゴムとポリプロピレンまたはエチレンなどのポリオレフィンとのブレンドなどのポリオレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、フッ素ゴム系エラストマー、ポリエーテルエステル、ポリウレタン、ポリカボネート、ポリアリレート、エチレンテトラフロロエチレン、ポリビニリデンフロライドなどのフッ素系樹脂を使用することができるが、後に説明するように、酸やアルカリ溶液を使用して毛材の一端の鞘部を溶解し、容易に芯部を露出せしめることができるとの理由から、ポリアミド系樹脂およびポリエステル系樹脂の使用が好ましく、さらにはPBT、N610の使用がより好ましい。
【0018】
また、本発明で使用するポリアミド系樹脂は、その相対粘度が低いと溶融紡糸が不安定となる場合があるため、相対粘度が3.0以上であるものが好ましく、ポリエステル系樹脂の場合は、その固有粘度が低いと同じく溶融紡糸が不安定となる場合があるため、固有粘度が0.6以上であるものが好ましい。
【0019】
なお、ポリアミド系樹脂の相対粘度は、濃度98%の硫酸25ccの中にポリアミド系樹脂0.25gを溶解し、この溶液を25℃の温度条件下でオストワルド粘度管を使用して測定したものであり、ポリエステル系樹脂の固有粘度は、濃度98.5%のオルトクロロフェノール25ml中にポリエステル系樹脂2.0gを溶解し、この溶液を25℃の温度条件下でオストワルド粘度管を使用して測定したものである。
【0020】
なお、本発明の研磨用ブラシ毛材を構成する複合モノフィラメントにおいて、鞘部を芯部の合成樹脂とは異なる他の合成樹脂から形成する理由は、芯部と鞘部を同じ合成樹脂から形成した場合には、鞘部が剥離しにくくなるため、洗浄および研磨作業中、砥材粒子を含有する芯部が露出しにくくなり、研磨性能が持続的に発揮しにくくなるからである。
【0021】
次に、本発明の研磨用ブラシ毛材を構成する複合モノフィラメントの芯部に含有する砥材粒子には、炭化ケイ素、緑色炭化ケイ素、酸化アルミナ、および人工ダイヤモンドなどを使用することができ、その番手については#36〜#3000、特に#60〜#1500のものを好ましく使用することができる。
【0022】
なお、芯部に含まれる砥材粒子の含有量は、その量が少ない場合は、研磨能力が不十分になる傾向にあり、逆に多い場合は、研磨用ブラシ毛材の強度が低下するばかりか、折損耐久性も低下する傾向にあることから、芯部の合成樹脂に対して5〜40重量%の範囲にあることが好ましく、さらには10〜30重量%の範囲にあることがより好ましい。
【0023】
また、本発明の研磨用ブラシ毛材を構成する複合モノフィラメントにおいては、鞘部の重量比率が、この複合モノフィラメントの全重量に対して3〜40%であることが好ましく、さらには10〜25%であることがより好ましい。
【0024】
これは、鞘部の重量比率が上記範囲を下まわる場合は、芯部に含有する砥材粒子によって鞘部が破損し、その結果、砥材粒子が脱落しやすくなる傾向にあり、逆に鞘部の重量比率が上記範囲を上回る場合は、毛材全体に対して砥材粒子の含有量が少なくなり、研磨性が低下しやすい傾向となるからである。
【0025】
さらに、本発明の研磨用ブラシ毛材を構成する複合モノフィラメントは、その少なくとも一端において、芯部が鞘部に覆われずに露出していることがより好ましく、複合モノフィラメントの一端をこのように形成することにより、砥材粒子を含有する芯部が露出するため、より研磨性の高い研磨用ブラシ毛材が得られるのである。
【0026】
また、芯部の露出した部分の長さは1〜10mmであることが好ましく、さらには3〜7mmであることがより好ましい。
【0027】
これは、芯部の露出長さが上記範囲を下まわると研磨性の更なる向上が得られにくく、逆に上記範囲を上回ると砥材粒子が脱落しやすくなるからである。
【0028】
なお、複合モノフィラメントの一端に芯部を露出せしめる方法としては、ヤスリ等を使用して物理的に鞘部を研磨除去する方法や、酸・アルカリ溶液を使用して化学的に溶解除去する方法が挙げられるが、本発明においては、芯部を傷めることなく容易に露出せしめることができるとの理由から、酸・アルカリ溶液による溶解除去が好ましい。
【0029】
さらにまた、本発明の研磨用ブラシ毛材においては、上述のとおり、酸・アルカリ溶液により容易に芯部を露出せしめることができるとの理由から、複合モノフィラメントの芯部を構成する合成樹脂がポリアミド系樹脂であり、且つ鞘部を構成する合成樹脂がポリエステル系樹脂であること、または複合モノフィラメントの芯部を構成する合成樹脂がポリエステル系樹脂であり、且つ鞘部を構成する合成樹脂がポリアミド系樹脂であることが好ましく、さらには、複合モノフィラメントの芯部を構成するポリアミド系樹脂がN610、且つ鞘部を構成するポリエステル系樹脂がPBTであること、または複合モノフィラメントの芯部を構成するポリエステル系樹脂がPBT、且つ鞘部を構成するポリアミド系樹脂がN610であることがより好ましい。
【0030】
この際、複合モノフィラメントの芯部または鞘部を構成するポリエステル系樹脂にポリエステル系エラストマーが含有されていると、折損耐久性効果が得られるため、特に好ましい。
【0031】
なお、本発明においては、砥材粒子の脱落をより効果的に低減させるために、使用する砥材粒子の表面に予めシランカップリング処理を施すことも可能である。
【0032】
本発明の研磨用ブラシ毛材の製造方法については、何ら特殊な製造装置を使用する必要はなく、例えば、公知の二重芯鞘複合用の溶融紡糸機を使用してまず二重芯鞘の複合モノフィラメントを溶融紡糸し、得られた複合モノフィラメントを必要な長さに切断して得ることができる。
【0033】
また、複合モノフィラメントの一端に芯部を露出せしめる場合には、必要な長さに切断した複合モノフィラメントの一端を酸またはアルカリ溶液に浸漬し、鞘部を溶解除去することにより得ることができる。
【0034】
こうして得られた本発明の研磨用ブラシ毛材は、ディスクロールブラシ、チャンネルロールブラシ、カップ状ブラシなどの研磨ブラシの少なくとも一部に使用され、得られた研磨ブラシは、砥材粒子の脱落が極めて少なく、洗浄や研磨時の毛材の折損がないなどの効果に加え、持続的な研磨性能を遺憾なく発揮する。
【実施例】
【0035】
以下に、実施例を挙げ本発明の構成および効果をさらに説明する。
【0036】
なお、以下の実施例における砥粒粒子の脱落評価、折損耐久性評価および研磨性評価は下記の方法により行ったものである。
【0037】
[砥材粒子の脱落性評価]
50mmにカットした複合モノフィラメントを20本束ね、まずこの束の質量A(g)を測定した。次に、この束を上下2枚の金属板に挟み、1kgの荷重で押圧しながら、上側の金属板を複合モノフィラメント束が転がる方向に往復距離5cm、且つ5分間往復運動させた。その後複合モノフィラメント束の質量Bを再び測定し、次式100×(A−B)/Aから砥材粒子脱落率(%)を算出した。砥材粒子脱落率(%)が低いほど砥材粒子の脱落が少ないことを示す。
【0038】
[折損耐久性]
JIS P8115に記載する屈曲揉み疲労(MIT)試験機を使用し、荷重15.7N(1.5kgf)、折り曲げ角度270°(左右135°)、且つ毎分175±10回の速度で、得られた複合モノフィラメントを繰り返し折り曲げ、複合モノフィラメントが切断するまでの往復折り曲げ回数を5回測定した。この5回の測定値の平均が大きいほど折損耐久性に優れていることを示す。
【0039】
[研磨性]
得られた複合モノフィラメントを使用し、内径45mm、外径70mm、毛丈30mmのカップ状ブラシを作製した。そして、このカップ状ブラシをハンドグラインダーに取り付け、圧力50N、回転数12000rpmで真鍮金属板の表面を30分間研磨し、削り取られた真鍮金属の質量を測定した。この質量が大きいほど研磨性に優れていることを示す。
【0040】
また、上記研磨作業を引き続き5回繰り返し行い、最後の5回目に削り取られた真鍮金属の質量についても測定した。5回目の質量が1回目の質量と比べて少ない場合は、研磨用ブラシ毛材の研磨性能が低下していることを示す。
【0041】
[実施例1〜3]
芯部には相対粘度が3.8のN610樹脂(東レ(株)製M2041)77重量%と、シランカップリング剤(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製SH6020)を0.2重量%被覆処理した粒度番手#100の炭化ケイ素砥材粒子(昭和電工社製)23重量%との混合物を使用し、鞘部には固有粘度が1.5のPBT樹脂(東レ(株)製1500S)80重量%とポリエステルエラストマー(ポリエステルポリエーテルブロックコポリマ:東レ・デュポン(株)製、商品名ハイトレル7247、以下PEEと言う)20重量%との混合物を使用した。
【0042】
これら各混合物をそれぞれ2基のエクストルダー型複合紡糸機に供給し、260℃の温度で溶融混練した後、表1に示す芯鞘複合重量比で芯鞘複合口金孔から押出した。次に押出された糸条を20℃の冷却浴で冷却固化した後、引き続き180℃の熱風雰囲気中で3.2倍に延伸することにより、直径1.0mmの円形断面複合モノフィラメントを得た。
【0043】
そして、得られた複合モノフィラメントをカットし、これを研磨用ブラシ毛材としてカップ状ブラシの作製に使用した。複合モノフィラメントおよびカップ状ブラシの各評価結果を表1に併せて示す。
【0044】
[実施例4、5]
実施例2で得られた複合モノフィラメントを複数本に束ね、その束の周囲に紙テープを巻いてカットした後、その切断端部を水酸化ナトリウム水溶液に浸漬して複合モノフィラメントの鞘部を溶解除去することにより、芯部の露出部分の長さが表1に示したようにそれぞれ異なる研磨用ブラシ毛材を得た。そして、この研磨用ブラシ毛材を使用してカップ状ブラシを作製し、各評価を行った。その各評価結果を表1に併せて示す。
【0045】
[実施例6]
実施例2において、芯部を構成する合成樹脂をN610からPBT樹脂80重量%とPEE樹脂20重量%との混合物に変更し、さらに鞘部を構成する合成樹脂をPBTとPEEの混合物からN610に変更したこと以外は、実施例2と同じ条件で複合モノフィラメントを得た。
【0046】
その後、得られた複合モノフィラメントを複数本に束ね、その束の周囲に紙テープを巻いてカットした後、その切断端部を蟻酸水溶液に浸漬して複合モノフィラメントの鞘部を溶解除去することにより、芯部を露出せしめた研磨用ブラシ毛材を作製した。そして、この研磨用ブラシ毛材を使用してカップ状ブラシを作製し、各評価を行った。その結果を表1に併せて示す。
【0047】
[実施例7]
芯部を構成する砥材粒子の含有量を23重量%から40重量%に変更したこと以外は、実施例6と同じ条件で複合モノフィラメントを得た。そして、この研磨用ブラシ毛材を使用してカップ状ブラシを作製し、各評価を行った。その結果を表1に併せて示す。
【0048】
[比較例1]
実施例1で芯部に使用したN610樹脂と炭化ケイ素砥材粒子との混合物をエクストルダー型紡糸機に供給し、260℃の温度で溶融混練した後、口金孔から押出した。次に、押出された糸条を20℃の冷却浴で冷却固化した後、引き続き180℃の熱風雰囲気中で3.2倍に延伸することにより、直径1.0mmの円形断面モノフィラメントを得た。
【0049】
そして、得られたモノフィラメントをカットし、これを研磨用ブラシ毛材としてカップ状ブラシの作製に使用した。モノフィラメントおよびカップ状ブラシの各評価結果を表1に併せて示す。
【0050】
[比較例2]
芯部にN610樹脂のみを使用し、鞘部に実施例6の芯部と同じ組成の混合物を使用したこと以外は、実施例1と同じ条件で複合モノフィラメントを得た。
【0051】
そして、得られた複合モノフィラメントをカットし、これを研磨用ブラシ毛材としてカップ状ブラシの作製に使用した。複合モノフィラメントおよびカップ状ブラシの各評価結果を表1に併せて示す。
【0052】
[比較例3]
実施例1において、鞘部を構成する合成樹脂をPBT樹脂80重量%とPEE樹脂20重量%との混合物からN610に変更したこと以外は、実施例1と同じ条件で複合モノフィラメントを得た。
【0053】
そして、得られた複合モノフィラメントをカットし、これを研磨用ブラシ毛材としてカップ状ブラシの作製に使用した。複合モノフィラメントおよびカップ状ブラシの各評価結果を表1に併せて示す。
【0054】
[比較例4]
実施例1において、芯部を構成する合成樹脂をN610からPBT樹脂80重量%とPEE樹脂20重量%との混合物に変更したこと以外は、実施例1と同じ条件で複合モノフィラメントを得た。
【0055】
そして、得られた複合モノフィラメントをカットし、これを研磨用ブラシ毛材としてカップ状ブラシの作製に使用した。複合モノフィラメントおよびカップ状ブラシの各評価結果を表1に併せて示す。
【0056】
【表1】

【0057】
表1の結果から明らかなように、本発明の条件を満たす研磨用ブラシ毛材(実施例1〜3)は砥材粒子の脱落がなく、折損耐久性に優れ、持続的な研磨性能を持った毛材であることが分かる。
【0058】
また、芯部を露出せしめた本発明の研磨用ブラシ毛材(実施例4〜7)についても、砥材粒子の脱落が極めて少なく、折損耐久性にも優れ、実施例1〜3の研磨用ブラシ毛材に比べてさらに高い研磨性を有するものであることが分かる。
【0059】
これに対し、本発明の条件を満たさない研磨ブラシ毛材は、上記効果を十分には発揮せず、例えば、複合構造を成さない従来の研磨用ブラシ毛材(比較例1)は、砥材粒子の脱落が多いばかりか折損耐久性にも欠け、鞘部に砥材粒子を含有せしめた複合構造の研磨用ブラシ毛材(比較例2)は、砥材粒子の脱落が多いばかりか、鞘部が破損し、研磨性が低下するなどの問題が生じた。
【0060】
また、芯部と鞘部を構成する合成樹脂を互いに同じものにした研磨用ブラシ毛材(比較例3、4)は、鞘部が剥離しにくいために砥材粒子を含有する芯部が露出しにくく、実施例の研磨用ブラシ毛材に比べて、研磨性能が持続的に発揮されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の研磨用ブラシ毛材は、砥材粒子が研磨用ブラシ毛材から脱落しにくくなるとともに、洗浄や研磨時に毛材の折損がなく、且つ植毛した毛材の根元部分における屈曲疲労性にも優れるなどの耐久性が改善され、持続的な研磨性能を有するものであることから、特に金属板表面に傷が付いていたり、折損した毛材や脱落した砥材粒子が付着していたりすると製品安全上の問題となりやすいアルミニウム板の洗浄および研磨に使用するディスクロールブラシ、チャンネルロールブラシ、カップ状ブラシに本発明の研磨用ブラシ毛材を利用した場合は、これらの効果を遺憾なく発揮することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重芯鞘構造を有する複合モノフィラメントからなる研磨用ブラシ毛材であって、前記複合モノフィラメントの芯部が合成樹脂と砥材粒子との混合物からなり、且つ鞘部が芯部の合成樹脂とは異なる他の合成樹脂からなることを特徴とする研磨用ブラシ毛材。
【請求項2】
前記複合モノフィラメントの鞘部の重量比率が、この複合モノフィラメントの全重量に対して3〜40%であることを特徴とする請求項1に記載の研磨用ブラシ毛材。
【請求項3】
前記複合モノフィラメントの少なくとも一端において、芯部が鞘部に覆われずに露出しており、且つ芯部の露出した部分の長さが1〜10mmであることを特徴とする請求項1または2に記載の研磨用ブラシ毛材。
【請求項4】
前記複合モノフィラメントの芯部を構成する合成樹脂がポリアミド系樹脂であり、且つ鞘部を構成する合成樹脂がポリエステル系樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の研磨用ブラシ毛材。
【請求項5】
前記複合モノフィラメントの芯部を構成する合成樹脂がポリエステル系樹脂であり、且つ鞘部を構成する合成樹脂がポリアミド系樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の研磨用ブラシ毛材。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の研磨用ブラシ毛材を毛材の少なくとも一部に使用したことを特徴とする研磨ブラシ。

【公開番号】特開2007−136571(P2007−136571A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−331002(P2005−331002)
【出願日】平成17年11月16日(2005.11.16)
【出願人】(000219288)東レ・モノフィラメント株式会社 (239)
【Fターム(参考)】