説明

研磨装置

【課題】研磨対象物である水晶片の品質を確保しながら生産性を向上させることができる研磨装置を提供する。
【解決手段】センターギアと下定盤とインターナルギアとラッピングキャリアと上定盤とを備えた両面研磨装置であって、下定盤が下定盤の外周面の中心を回転軸に回転可能でかつ上定盤が上定盤の外周面の中心を回転軸に回転可能となっており、
上定盤側を向く下定盤の面に第一の環状溝及び第一の直線溝が形成され、上定盤側を向く前下定盤の面を見た場合、第一の環状溝の縁部を外周とする面の下定盤の外周面に近い面と第一の環状溝の縁部を外周とする面の下定盤の外周面の中心に近い面とが同心円となり、第一の環状溝の縁部を外周とする面の下定盤の外周面に近い面の中心から放射状に第一の直線溝が形成され、第一の環状溝の縁部を外周とする面の下定盤の外周面に近い面の中心が下定盤の外周面の中心と異なる位置に位置していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨対象物である水晶片を研磨する研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水晶振動子の製造工程には、切断されることによって得られた水晶片を研磨し、水晶片の厚さを薄くすることにより、水晶片の厚さを調整する研磨工程がある。この研磨工程を実行する際には、水晶片の両主面を研磨するための研磨装置が使用される。
【0003】
かかる研磨装置は、研磨方式として、例えば、遊離砥粒による研磨方式を採用する。
この遊離砥粒による研磨方式では、例えば、図4に示すように、回転する下定盤220に配置された研磨対象物Sである水晶片の両主面付近に遊離砥粒及び水を含む混合液であるスラリーを供給しながら、回転する上定盤250を下定盤220方向に移動させることにより、研磨対象物Sである水晶片の両主面を研磨する。
【0004】
このような研磨装置200は、上定盤250側を向く下定盤220の面を見た場合、上定盤250側を向く下定盤220の面が円形形状となっており、上定盤250側を向く下定盤220の面の縁部の中心、つまり、下定盤220の外周面の中心C22(図5(a)参照)を回転軸に面内回転する構成となっている。
また、このような研磨装置200は、下定盤220側を向く上定盤250の面を見た場合、下定盤220側を向く上定盤250の面が円形形状となっており、下定盤220側を向く上定盤250の面の縁部の中心、つまり、上定盤250の外周面の中心C25(図5(b)参照)を回転軸に面内回転する構成となっている。
また、このような研磨装置200は、上定盤250の回転軸と下定盤220の回転軸とが一致するように上定盤250と下定盤220とが設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
前述した研磨装置200は、例えば、図5(a)に示すように、上定盤250側を向く下定盤220の面に格子状の溝222が形成され、図5(b)に示すように、下定盤220側を向く上定盤250の面に格子状の溝252が形成されている。
このとき、溝222が形成されていない上定盤250側を向く下定盤220の面の面積と溝252が形成されていない下定盤220側を向く上定盤250の面の面積とを比較した場合、溝222が形成されていない上定盤250側を向く下定盤220の面の面積の方が大きくなっている。
このため、研磨方式を用いて研磨し研磨装置200から研磨後の研磨対象物Sを回収するとき、研磨後の研磨対象物Sと下定盤220との表面張力に対して研磨後の研磨対象物Sと上定盤250との表面張力が弱くなり、上定盤250側を向く下定盤220の面で研磨後の研磨対象物Sを回収することができる(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
研磨装置200の一例として、下定盤220に格子状の溝222が形成されつつ上定盤250に格子状の溝252が形成されている場合について説明したが、他の一例として、図6(a)及び図6(b)に示すように、下定盤320に直線溝323と環状溝322が形成されつつ上定盤350に直線溝353と環状溝352が形成されている場合がある。
【0007】
このような研磨装置では、上定盤350側を向く下定盤320の面を見た場合、図6(a)に示すように、上定盤350側を向く下定盤320の面に環状溝322と直線溝が形成されている。
【0008】
ここで、下定盤320は、上定盤350側を向く下定盤320の面を見た場合、図6(a)に示すように、下定盤320の外周面の中心C32を中心とした円形形状となっている。
また、上定盤350は、下定盤320側を向く上定盤350の面を見た場合、図6(b)に示すように、上定盤350の外周面の中心C35を中心とした円形形状となっている。
【0009】
ここで、下定盤320に形成されている環状溝を第一の環状溝322とし、下定盤320に形成されている直線溝を第一の直線溝323とする。
【0010】
また、このような研磨装置では、下定盤320側を向く上定盤350の面を見た場合、図6(b)に示すように、下定盤320側を向く上定盤350の面に環状溝と直線溝が形成されている。
【0011】
ここで、上定盤350に形成されている環状溝を第二の環状溝352とし、上定盤350に形成されている直線溝を第二の直線溝353とする。
【0012】
第一の環状溝322は、例えば、円形形状の環状に複数、形成されている。
これらの第一の環状溝322は、下定盤320の外周面の中心C32に対して同心円となるように半径を異にして形成される。
【0013】
第一の直線溝323は、例えば、図6(a)に示すように、上定盤350側を向く下定盤320の面を見た場合、下定盤320の外周面の中心C32から下定盤320の外周面に向かう方向に、放射状に形成されている。
【0014】
第二の環状溝352は、例えば、円形形状の環状に複数、形成されている。
これらの第二の環状溝352は、上定盤350の外周面の中心C35に対して同心円となるように半径を異にして形成される。
また、複数形成されている第二の環状溝352は、例えば、所定の第二の環状溝352が第一の環状溝322と対向する位置に形成されており、所定の他の第二の環状溝352が第一の環状溝322と対向しない位置に形成されている。このとき、例えば、所定の他の第二の環状溝352が所定の第二の環状溝352の間に形成されている。
【0015】
このような研磨装置では、例えば、第一の直線溝323と第二の直線溝353との数を比較すると第一の直線溝323の方が少なく、また、第二の環状溝322と第二の環状溝352との数を比較すると第一の環状溝322の方が少ない。
つまり、第一の環状溝322及び第一の直線溝323が形成されていない上定盤側350側を向く下定盤320の面の面積と第二の環状溝352及び第二の直線溝353が形成されていない下定盤側320側を向く上定盤350の面の面積とを比較した場合、第一の環状溝322及び第一の直線溝323が形成されていない上定盤側350側を向く下定盤320の面の面積の方が大きくなっている。
このため、研磨方式を用いて研磨し研磨装置から研磨後の研磨対象物Sを回収するとき、研磨後の研磨対象物Sと下定盤320との表面張力に対して研磨後の研磨対象物Sと上定盤350との表面張力が弱くなり、上定盤350側を向く下定盤320の面で研磨後の研磨対象物Sを回収することができる。
【0016】
これらの研磨装置は、研磨後に上定盤側を向く下定盤側の面で研磨後の研磨対象物Sを回収することができるように、上定盤側を向く下定盤の面の面積と比較して下定盤側を向く上定盤の面の面積が小さくなっており、上定盤側を向く下定盤の面で研磨後の研磨対象物Sを回収することができる構成となっている。
また、これらの研磨装置は、下定盤側を向く上定盤の面で研磨後の研磨対象物Sを回収することができるようにする場合には、上定盤側を向く下定盤の面の面積と比較して下定盤側を向く上定盤の面の面積が大きくなっている。
【0017】
また、これらの研磨装置では、研磨方式を用いて研磨対象物Sを研磨する前に、上定盤側を向く下定盤の面と下定盤側を向く上定盤の面とが平行となるように、上定盤と下定盤とを互いに研磨しあうように共ずりを行っているものとする。
【0018】
ここで、共ずりを行っている状態とは、上定盤側を向く下定盤の面と下定盤側を向く上定盤の面とをスラリーを介してすり合わせる状態とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2008−188678号公報
【特許文献2】特開平9−11112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、従来の研磨装置は、回転する下定盤に配置された研磨対象物である水晶片の両主面付近にスラリーを供給しながら、回転する上定盤を下定盤方向に移動させることにより、研磨対象物である水晶片の両主面を研磨する構成となっており、上定盤側を向く下定盤の面及び下定盤側を向く上定盤の面が円形形状となっており、上定盤側を向く下定盤の面及び下定盤側を向く上定盤の面に格子状の溝が形成されているので、研磨時に下定盤又は上定盤の縁部が欠落してしまう恐れがある。
このため、従来の研磨装置では、下定盤又は上定盤の縁部から欠落した欠片がスラリーに混在したまま研磨対象物である水晶片を研磨することとなり、欠落した欠片が研磨対象物である水晶片と接触し、研磨後に傷やチッピング等が発生し研磨対象物である水晶片の品質を低下させてしまう恐れがある。
従って、従来の研磨装置は、研磨対象物である水晶片の品質が低下してしまい生産性が低下する恐れがある。
【0021】
また、従来の研磨装置は、下定盤の外周面の中心を回転軸に面内回転しつつ上定盤の外周面の中心を回転軸に面内回転し、第一の環状溝が円形形状の環状に複数、形成され、これらの第一の環状溝が下定盤の外周面の中心に対して同心円となるように半径を異にして形成されているので、第一の環状溝の中心が下定盤の回転軸上に位置している。
このため、従来の研磨装置によれば、研磨対象物を研磨する前に共ずりを行ったとき、下定盤が回転した場合、下定盤の回転軸と第一の環状溝の任意の一点との長さが常に一定となっており、上定盤側の下定盤の面に下定盤側を向く上定盤の面の形状が転写されてしまい、凸部が形成される。
従って、従来の研磨装置によれば、上定盤側を向く下定盤の面に凸部が形成された状態のまま研磨対象物である水晶片が研磨され、研磨後の研磨対象物である水晶片の平面度が低下し研磨対象物である水晶片の品質が低下する恐れがある。また、研磨対象物である水晶片が凸部によって破損する恐れもある。つまり、従来の研磨装置によれば、生産性が低下する恐れがある。
【0022】
また、従来の研磨装置は、下定盤の外周面の中心を回転軸に面内回転しつつ上定盤の外周面の中心を回転軸に面内回転し、第二の環状溝が円形形状の環状に複数、形成され、これらの第二の環状溝が上定盤の外周面の中心に対して同心円となるように半径を異にして形成されているので、第二の環状溝の中心が上定盤の回転軸上に位置している。
このため、従来の研磨装置によれば、研磨対象物を研磨する前に共ずりを行ったとき、上定盤が回転した場合、上定盤の回転軸と第二の環状溝の任意の一点との長さが常に一定となっており、下定盤側の上定盤の面に上定盤側を向く下定盤の面の形状が転写されてしまい、凸部が形成される。
従って、従来の研磨装置によれば、下定盤側を向く上定盤の面に凸部が形成された状態のまま研磨対象物である水晶片が研磨され、研磨後の研磨対象物である水晶片の平面度が低下し研磨対象物である水晶片の品質が低下する恐れがある。また、研磨対象物である水晶片が凸部によって破損する恐れもある。つまり、従来の研磨装置によれば、生産性が低下する恐れがある。
【0023】
本発明は、研磨対象物である水晶片の品質を確保しながら生産性を向上させることができる研磨装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
前記課題を解決するため、外周面の中心を回転軸として回転可能に中央に設けられ、外周面にセンターギア歯が形成されているセンターギアと、前記センターギアの先端付近の周囲付近に外周面の中心を回転軸として回転可能に設けられ、前記センターギアの外径より大きい内径を有するようにして、中央部分に形成されたセンターギア挿通貫通孔に前記センターギアの先端部分が挿通されつつ、外周面の中心が前記センターギアの回転軸上に位置するように配置されている下定盤と、
前記下定盤の周囲付近に外周面の中心を回転軸として回転可能に設けられ、前記下定盤の外径より大きい内径を有する下定盤挿通用貫通孔によって形成された内周面に、
インターナルギア歯が形成されているインターナルギアと、前記センターギアの外周面から前記インターナルギアの内周面までの長さに相当する外径を有し、かつ所望の内径を有する研磨対象物挿入用貫通孔が形成されると共に、研磨対象物の厚さより薄い厚さを有するように形成され、外周面に形成されたラッピングキャリア歯によって、前記センターギアと歯合されると共に前記インターナルギアと歯合されるようにして、前記下定盤上に配置されるラッピングキャリアと、外周面の中心を回転軸として回転可能に設けられ、
外周面の中心が前記サンギアの回転軸上に位置しつつ前記ラッピングキャリアが配置される前記下定盤の面と対向するように配置される上定盤と、を備え、前記上定盤側を向く前記下定盤の面に第一の環状溝及び第一の直線溝が形成され、前記上定盤側を向く前記下定盤の面を見た場合、前記第一の環状溝の縁部を外周とする面であって前記下定盤の外周面に近い面と前記第一の環状溝の縁部を外周とする面であって前記下定盤の外周面の中心に近い面とが同心円となり、前記第一の環状溝の縁部を外周とする面であって
前記下定盤の外周面に近い面の中心から放射状に前記第一の直線溝が形成され、前記第一の環状溝の縁部を外周とする面であって前記下定盤の外周面に近い面の中心が前記下定盤の外周面の中心と異なる位置に位置していることを特徴とする。
【0025】
また、前記課題を解決するため、前記請求項1の研磨装置であって、前記下定盤側を向く前記上定盤の面に第二の環状溝及び第二の直線溝が形成され、前記下定盤側を向く前記上定盤の面を見た場合、前記第二の環状溝の縁部を外周とする面であって前記上定盤の外周面に近い面と前記第二の環状溝の縁部を外周とする面であって前記上定盤の外周面の中心に近い面とが同心
円となり、前記第二の環状溝の縁部を外周とする面であって前記上定盤の外周面に近い面の中心から放射状に前記第二の直線溝が形成され、前記第二の環状溝の縁部を外周とする面であって前記上定盤の外周面に近い面の中心が全上定盤の外周面の中心と異なる位置となっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
このような研磨装置によれば、上定盤側を向く下定盤の面に第一の直線溝と第一の環状溝とが形成され、下定盤側を向く上定盤の面に第二の直線溝と第二の環状溝とが形成されているので、従来の研磨装置と比較して上定盤側を向く下定盤の面の縁部及び下定盤側を向く上定盤の面の縁部が欠落する恐れを回避することができる。
このため、このような研磨装置によれば、従来の研磨装置のように下定盤又は上定盤の縁部から欠落した欠片が研磨対象物である水晶片を研磨することがなくなるので、研磨対象物である水晶片に接触することがなくなり、研磨対象物である水晶片の品質を向上させることができる。
従って、このような研磨装置によれば、研磨対象物である水晶片の品質が低下することなく生産性を向上させることができる。
【0027】
また、このような研磨装置によれば、下定盤の外周面の中心を回転軸に面内回転しつつ上定盤の外周面の中心を回転軸に面内回転し、第一の環状溝が下定盤の外周面の中心と異なる点に対して同心円となるように半径を異にして形成されているので、第一の環状溝を下定盤の回転軸に対して同心円とならない位置に形成することができる。
このため、このような研磨装置によれば、研磨を行う前に上定盤と下定盤とを共ずりするとき、従来の研磨装置と比較して、上定盤側を向く下定盤の面に下定盤側を向く上定盤の面の形状が転写され凸部が形成されることを抑えることができる。
従って、このような研磨装置によれば、従来の研磨装置と比較して、研磨後の研磨対象物である水晶片の平面度を向上させることができ研磨対象物である水晶片の品質を向上させることができる。また、研磨対象物である水晶片が下定盤に転写され形成された凸部によって破損する恐れを回避することができる。
つまり、このような研磨装置によれば、生産性を向上させることができる。
【0028】
また、このような研磨装置によれば、下定盤の外周面の中心を回転軸に面内回転しつつ上定盤の外周面の中心を回転軸に面内回転し、第二の環状溝が上定盤の外周面の中心と異なる点に対して同心円となるように半径を異にして形成されているので、第二の環状溝を上定盤の回転軸に対して同心円とならない位置に形成することができる。
このため、このような研磨装置によれば、研磨を行う前に上定盤と下定盤とを共ずりするとき、従来の研磨装置と比較して、下定盤側を向く上定盤の面に上定盤側を向く下定盤の面の形状が転写され凸部が形成されることを抑えることができる。
従って、このような研磨装置によれば、従来の研磨装置と比較して、研磨後の研磨対象物である水晶片の平面度を向上させることができ研磨対象物である水晶片の品質を向上させることができる。また、研磨対象物である水晶片が上定盤に転写され形成された凸部によって破損する恐れを回避することができる。
つまり、このような研磨装置によれば、生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態に係る研磨装置の概念の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る研磨装置の下定盤の概念の一例を示す概念図である。
【図3】本発明の実施形態に係る研磨装置の上定盤の状概念の一例を示す概念図である。
【図4】従来の研磨装置の概念の一例を示す断面図である。
【図5】(a)は、従来の研磨装置に用いられる下定盤の概念の一例を示す概念図であり、(b)は、従来の研磨装置に用いられる上定盤の概念の一例示す概念図である。
【図6】(a)は、従来の研磨装置に用いられる別の下定盤の概念の一例を示す概念図であり、(b)は、従来の研磨装置に用いられる下定盤の概念の一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、本発明を実施するための最良の形態について説明する。なお、各図面において各構成要素の状態を分かりやすくするために誇張して図示している。
【0031】
まず、本発明の実施形態に係る研磨装置について説明する。
なお、研磨装置が研磨される研磨対象物の対向しあう面を同時に研磨することができる両面研磨装置を例に説明する。
【0032】
また、本発明の実施形態に係る研磨装置は、研磨方式を用いて研磨対象物を研磨する前に、上定盤側を向く下定盤の面と下定盤側を向く上定盤の面とが平行となるように、上定盤と下定盤とを互いに研磨しあうように共ずりを行うものとして説明する。
ここで、共ずりを行っている状態とは、上定盤側を向く下定盤の面と下定盤側を向く上定盤の面とを研磨対象物を研磨するときに用いるスラリーを介してすり合わせる状態とする。
【0033】
本発明の実施形態に係る研磨装置100は、例えば、図1に示すように、センターギア110と下定盤120とインターナルギア130とラッピングキャリア140と上定盤150とから主に構成されている。
【0034】
センターギア110は、両主面が円形の円柱形状となっており、本発明の実施形態に係る研磨装置100の中央に回転可能に設けられている。
また、センターギア110は、外周面にセンターギア歯(図示せず)が形成され、このセンターギア歯によって外歯車として機能する。なお、センターギア110は、一方の主面の中心と他方の主面の中心を通過する軸を回転軸として面内回転する。言い換えると、センターギア110は、外周面の中心を回転軸としてこの外周面に対して面内回転する。
【0035】
下定盤120は、両主面が円形の円柱形状となっており、センターギア110の外径より大きい内径を有するセンターギア挿通用貫通孔121が形成されている。
また、下定盤120は、センターギア110の一方の先端部が挿通され、センターギア110の周囲に設けられている。
なお、下定盤120は、センターギア110の回転軸と同一の回転軸を中心としてセンターギア110と同一方向に回転するように回転可能に設けられている。このとき、一方の主面の中心及び他方の主面の中心、つまり、下定盤120の外周面の中心C12(図2参照)が、下定盤120の回転軸上に位置している。
また、下定盤120は、図2に示すように、一方の主面に第一の環状溝122及び第一の直線溝123が形成されている。ことのき、下定盤120の一方の主面は、本発明の実施形態に係る研磨装置100において後述する上定盤150側を向いている。
【0036】
第一の環状溝122は、例えば、図2に示すように、下定盤120の一方の主面に環状に形成されている。つまり、第一の環状溝122は、上定盤150側を向く下定盤120の面に環状に形成されている。
また、第一の環状溝122は、上定盤150側を向く下定盤120の面を見た場合、第一の環状溝122の縁部である外周面であって下定盤120の外周面に近い面と第一の環状溝122の縁部である外周面であって下定盤120の外周面の中心C12に近い面とが所定の一点P12を中心とした同心円形状となっている。つまり、第一の環状溝122は、円形形状の環状となっており、その幅が一定となっている。
また、第一の環状溝122の縁部である外周面の中心P12が下定盤120の外周面の中心C12と重ならない位置に位置しているので、第一の環状溝122の縁部である外周面の中心P12が、下定盤120の回転軸上に位置しない構成となっている。従って、第一の環状溝122は、下定盤120の外周面の中心C12と異なる点P12に対して同心円となるように半径を異にして形成される。
【0037】
このため、上定盤150側を向く下定盤120の面を見て第一の環状溝122の任意の一点に着目し下定盤120を回転させた場合、この任意の一点と下定盤120の回転軸との長さが一定となっていない。
従って、下定盤120と上定盤150とを共ずりするとき、上定盤150側を向く下定盤120の面に下定盤120側を向く上定盤150の面の形状が転写されにくくなり、上定盤150側を向く下定盤120の面に凸部が形成されることを防ぐことができる。
【0038】
第一の直線溝123は、上定盤150側を向く下定盤120の面を見た場合、第一の環状溝122の縁部である外周面の中心P12から下定盤120の外周面に向かう向きに形成されている。
また、第一の直線溝123は、複数形成されており、第一の環状溝122の縁部である外周面の中心P12を基準に放射状に形成されている。
【0039】
インターナルギア130は、下定盤挿通用貫通孔131が形成され円筒形状となっている。
また、インターナルギア130は、下定盤120の回転軸と同一の回転軸を中心として下定盤120と同一の方向に回転するように回転可能に設けられている。このとき、インターナルギア130の外周面の中心がインターナルギア130の回転軸上に位置している。
【0040】
下定盤挿通用貫通孔131は、その内径が下定盤120の外径より大きくなっている。
また、下定盤挿通用貫通孔131は、下定盤挿通用貫通孔131を形成する内周面の中心が回転軸上に位置している。
【0041】
また、インターナルギア130は、下定盤挿通用貫通孔131を形成する内周面にインターナルギア歯(図示せず)が形成され、これにより、内歯車として機能する。
【0042】
従って、インターナルギア130は、インターナルギア130の外周面の中心がインターナルギア130の回転軸上に位置するように下定盤120の周囲付近に回転可能に設けられ、下定盤120の外径より大きい内径を有した下定盤挿通用貫通孔131によって形成された内周面に、インターナル歯が形成されている。
【0043】
ラッピングキャリア140は、研磨対象物Sである水晶片を挿入することができる程度の内径を有する研磨対象物挿入用貫通孔141が形成されている。
また、ラッピングキャリア140は、センターギア歯及びインターナルギア歯と噛み合うようにラッピングキャリア歯(図示せず)がラッピングキャリア140の外周面に形成されている。
また、ラッピングキャリア140は、センターギア110と歯合させると共にインターナルギア130と歯合させるようにして下定盤120上に配置される。
【0044】
ところで、本発明の実施形態に係る研磨装置100は、研磨工程を実行する際、センターギア110とインターナルギア130とを異なる角速度で同一方向にそれぞれ回転させることで、ラッピングキャリア140が自転しつつセンターギア110の周囲を公転する構成となっている。
つまり、ラッピングキャリア140は、センターギア110と外歯車対となっており、インターナルギア130と内歯車対となっている。
【0045】
なお、ラッピングキャリア140は、研磨対象物Sである水晶片の厚みより薄い厚さとなっており、研磨対象物Sである水晶片の研磨後の所望の厚さと同じ厚みとなっている。
ここで、ラッピングキャリア140の厚みとは、下定盤120に接している面からこの面に対向する面までの長さとする。また、研磨対象物Sである水晶片の厚みとは、研磨される研磨対象物の対向しあう面の間の長さとする。
【0046】
従って、ラッピングキャリア140は、センターギア110の外周面からインターナルギア130の下定盤挿通用貫通孔131の縁部である外周面までの長さに相当する外径を有し、かつ、所望の内径を有する研磨対象物挿入用貫通孔141が形成されると共に、研磨対象物Sである水晶片研磨後の所望の厚さと同じ厚さを有するように形成され、外周面に形成されたラッピングキャリア歯よって。センターギア110と歯合されると共にインターナルギア130と歯合されるようにして、下定盤120上に配置される。
【0047】
上定盤150は、両主面が円形の円柱形状となっており、センターギア110の外径より大きい内径を有する上定盤貫通孔151が形成されている。
また、上定盤150は、両主面がラッピングキャリア120に接している下定盤120の面と同じ大きさとなっている。
また、上定盤150は、センターギア110の他方の先端部が挿入され、センターギア110の周囲に設けられつつ、ラッピングキャリア140を挟んで下定盤120と対向するように設けられている。
また、上定盤150は、センターギア110の下定盤120の回転軸と同一の回転軸を中心として下定盤120の回転方向と逆方向に回転するように回転可能に設けられている。このとき、下定盤120側を向く上定盤150の面の中心、つまり、上定盤150の外周面の中心が上定盤150の回転軸上に位置している。
また、上定盤150は、下定盤120側を向く面に、後述する第二の環状溝152及び第二の直線溝153が形成されている。
【0048】
第二の環状溝152は、例えば、図3に示すように、下定盤120側を向く上定盤150の面に、環状に形成されている。
また、第二の環状溝152は、下定盤120側を向く上定盤150の面を見た場合、第二の環状溝152の縁部である外周面であって上定盤150の外周面に近い面と第二の環状溝152の外周面の中心C15に近い面とが所定の一点P15を中心とした同心円形状となっている。つまり、第二の環状溝152は、円形形状の環状となっており、その幅が一定となっている。
また、第二の環状溝152の縁部である外周面の中心P15が上定盤150の外周面の中心C15と重ならない位置に位置しているので、第二の環状溝152の縁部である外周面の中心P21が上定盤150の回転軸上に位置しない構成となっている。従って、第二の環状溝152は、上定盤150の外周面の中心C15と異なる点P15に対して同心円となるように半径を異にして形成される。
【0049】
このため、下定盤120側を向く上定盤150の面を見て第二の環状溝152の任意の一点に着目した上定盤150を回転させた場合、この任意の点と上定盤150の回転軸との長さが一定となっていない。
従って、下定盤120と上定盤150とを共ずりするとき、下定盤120側を向く上定盤150の面に上定盤150側を向く下定盤120の面の形状が転写されにくくなり、下定盤120側を向く上定盤150の面に凸部が形成されることを防ぐことができる。
【0050】
第二の直線溝153は、下定盤120側を向く上定盤150の面を見た場合、第二の環状溝152の縁部である外周面の中心P15から上定盤150の外周面に向かう向きに形成されている。
また、第二の直線溝153は、複数形成されており、第二の環状溝152の縁部である外周面の中心P15を基準に放射状に形成されている。
【0051】
本発明の実施形態に係る研磨装置100には、特に図示しないが、回転する下定盤120上に遊離砥粒及び水を含む混合液であるスラリーを供給することができる構成となっている。
【0052】
また、本発明の実施形態に係る研磨装置100には、特に図示しないが、センターギア110とインターナルギア130と下定盤120とを独立して回転させる駆動手段を備えている。
【0053】
従って、本発明の実施形態に係る研磨装置100は、研磨対象物Sである水晶片の両主面付近に遊離砥粒及び水を含む混合液であるスラリーを供給しながら、回転する上定盤150を下定盤120方向に移動させることにより、研磨対象物Sである水晶片の両主面を研磨する構成となっている。
このとき、センターギア110とインターナルギア130とを異なる角速度で同一の方向にそれぞれ回転しており、下定盤120の回転方向と上定盤150の回転方向とが逆となっている。
【0054】
このような本発明の実施形態に係る研磨装置100によれば、上定盤120側を向く下定盤120の面に第一の直線溝123と第一の環状溝122とが形成され、下定盤150側を向く上定盤150の面に第二の直線溝153と第二の環状溝152とが形成されているので、従来の研磨装置と比較して上定盤150側を向く下定盤120の面の縁部及び下定盤120側を向く上定盤150の面の縁部が欠落する恐れを回避することができる。
このため、このような本発明の実施形態に係る研磨装置100によれば、従来の研磨装置のように下定盤又は上定盤から欠落した欠片が研磨対象物Sである水晶片を研磨することがなくなるので、研磨対象物Sである水晶片に接触することがなくなり、研磨対象物Sである水晶片の品質を向上させることができる。
従って、このような本発明の実施形態に係る研磨装置100によれば、研磨対象物Sである水晶片の品質が低下することなく生産性を向上させることができる。
【0055】
また、このような本発明の実施形態に係る研磨装置100によれば、下定盤120の外周面の中心C12を回転軸に面内回転しつつ上定盤150の外周面の中心C15を回転軸に面内回転し、第一の環状溝122が下定盤120の外周面の中心C12と異なる点に対して同心円となるように半径を異にして形成されているので、第一の環状溝122を下定盤120の回転軸に対して同心円とならない位置に形成することができる。
このため、このような本発明の実施形態に係る研磨装置100によれば、研磨を行う前に上定盤120と下定盤150とを共ずりするとき、従来の研磨装置と比較して、上定盤150側を向く下定盤120の面に下定盤120側を向く上定盤150の面の形状が転写され凸部が形成されることを抑えることができる。
従って、このような本発明に係る研磨装置100によれば、従来の研磨装置と比較して、研磨後の研磨対象物Sである水晶片の平面度を向上させることができ研磨対象物Sである水晶片の品質を向上させることができる。また、研磨対象物でSある水晶片が下定盤に転写され形成された凸部によって破損する恐れを回避することができる。
つまり、このような研磨装置によれば、生産性を向上させることができる。
【0056】
また、このような本発明の実施形態に係る研磨装置100によれば、下定盤120の外周面の中心C12を回転軸に面内回転しつつ上定盤150の外周面の中心C15を回転軸に面内回転し、第二の環状溝152が上定盤150の外周面の中心C15と異なる点に対して同心円となるように半径を異にして形成されているので、第二の環状溝152を上定盤150の回転軸に対して同心円とならない位置に形成することができる。
このため、このような本発明の実施形態に係る研磨装置100によれば、研磨を行う前に上定盤150と下定盤120とを共ずりするとき、従来の研磨装置と比較して、下定盤120側を向く上定盤150の面に上定盤150側を向く下定盤120の面の形状が転写され凸部が形成されることを抑えることができる。
従って、このような本発明に係る研磨装置100によれば、従来の研磨装置と比較して、研磨後の研磨対象物Sである水晶片の平面度を向上させることができ研磨対象物Sである水晶片の品質を向上させることができる。
また、研磨対象物Sである水晶片が凸によって破損する恐れを回避することができる。
つまり、このような本発明の実施形態に係る研磨装置100によれば、生産性を向上させることができる。
【0057】
また、本発明の実施形態に係る研磨装置100によれば、第一の環状溝122の縁部を外周とする面が所定の一点P12を中心に同心円形状に形成され、この所定の一点P12が下定盤120の回転軸上に位置していないので、従来の形成方法をそのまま用いて第一の環状溝122を容易に形成することができる。
【0058】
また、本発明の実施形態に係る研磨装置100によれば、第二の環状溝152の縁部を外周とする面が所定の一点P15を中心に同心円形状に形成され、この所定の一点P15が上定盤150の回転軸上に位置していないので、従来の形成方法をそのまま用いて第二の環状溝152を容易に形成することができる。
【0059】
なお、第一の環状溝及び第一の直線溝が形成されていない上定盤側を向く下定盤の面の面積と第二の環状溝及び第二の直線溝が形成されていない下定盤側を向く上定盤の面の面積とを比較した場合、第一の環状溝及び第一の直線溝が形成されていない上定盤側を向く下定盤の面の面積の方が大きい場合について説明したが、例えば、第二の環状溝及び第二の直線溝が形成されていない下定盤側を向く上定盤の面の面積が大きくてもよい。このとき、研磨後の研磨対象物が下定盤側を向く上定盤の面で回収される。
【0060】
また、下定盤と上定盤とで研磨対象物である水晶片を同時に研磨する両面研磨装置の場合で説明したが、例えば、研磨対象物である水晶片の下定盤側を向く面のみを研磨する片面研磨装置であってもよい。
【0061】
また、第一の環状溝の縁部である外周面の中心が下定盤の回転軸上に位置せず、かつ、第二の環状溝の縁部である外周面の中心が上定盤の回転軸上に位置していない場合について説明しているが、第一の環状溝の縁部である外周面の中心が下定盤の回転軸上に位置していなければ、例えば、第二の環状溝の縁部である外周面の中心が上定盤の回転軸上に位置していてもよい。
【0062】
また、第一の環状溝の縁部である外周面の中心が下定盤の回転軸上に位置せず、かつ、第二の環状溝の縁部である外周面の中心が上定盤の回転軸上に位置していない場合について説明しているが、第二の環状溝の縁部である外周面の中心が上定盤の回転軸上に位置していなければ、例えば、第一の環状溝の縁部である外周面の中心が下定盤の回転軸上に位置していてもよい。
【符号の説明】
【0063】
100,200 研磨装置
110,210 センターギア
120,220,320 下定盤
121,221,321 センターギア挿通用貫通孔
122,322 第一の環状溝
123,323 第一の直線溝
130,230 インターナルギア
131,231 下定盤挿通用貫通孔
140,240 ラッピングキャリア
141,241 研磨対象物挿通用貫通孔
150,250,350 上定盤
151,251,351 上定盤貫通孔
152,352 第二の環状溝
153,353 第二の直線溝
S 研磨対象物
C12,C32 下定盤の外周面の中心
C15,C35 上定盤の外周面の中心
P12 第一の環状溝の縁部である外周面の中心
P15 第二の環状溝の縁部である外周面の中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面の中心を回転軸として回転可能に中央に設けられ、外周面にセンターギア歯が形成されているセンターギアと、
前記センターギアの先端付近の周囲付近に外周面の中心を回転軸として回転可能に設けられ、前記センターギアの外径より大きい内径を有するようにして、中央部分に形成されたセンターギア挿通貫通孔に前記センターギアの先端部分が挿通されつつ、外周面の中心が前記センターギアの回転軸上に位置するように配置されている下定盤と、
前記下定盤の周囲付近に外周面の中心を回転軸として回転可能に設けられ、前記下定盤の外径より大きい内径を有する下定盤挿通用貫通孔によって形成された内周面に、インターナルギア歯が形成されているインターナルギアと、
前記センターギアの外周面から前記インターナルギアの内周面までの長さに相当する外径を有し、かつ所望の内径を有する研磨対象物挿入用貫通孔が形成されると共に、研磨対象物の厚さより薄い厚さを有するように形成され、外周面に形成されたラッピングキャリア歯によって、前記センターギアと歯合されると共に前記インターナルギアと歯合されるようにして、前記下定盤上に配置されるラッピングキャリアと、
外周面の中心を回転軸として回転可能に設けられ、外周面の中心が前記サンギアの回転軸上に位置しつつ前記ラッピングキャリアが配置される前記下定盤の面と対向するように配置される上定盤と、
を備え、
前記上定盤側を向く前記下定盤の面に第一の環状溝及び第一の直線溝が形成され、
前記上定盤側を向く前記下定盤の面を見た場合、
前記第一の環状溝の縁部を外周とする面であって前記下定盤の外周面に近い面と前記第一の環状溝の縁部を外周とする面であって前記下定盤の外周面の中心に近い面とが同心円となり、
前記第一の環状溝の縁部を外周とする面であって前記下定盤の外周面に近い面の中心から放射状に前記第一の直線溝が形成され、
前記第一の環状溝の縁部を外周とする面であって前記下定盤の外周面に近い面の中心が前記下定盤の外周面の中心と異なる位置に位置している
ことを特徴とする研磨装置。
【請求項2】
前記請求項1の研磨装置であって、
前記下定盤側を向く前記上定盤の面に第二の環状溝及び第二の直線溝が形成され、
前記下定盤側を向く前記上定盤の面を見た場合、
前記第二の環状溝の縁部を外周とする面であって前記上定盤の外周面に近い面と前記第二の環状溝の縁部を外周とする面であって前記上定盤の外周面の中心に近い面とが同心円となり、
前記第二の環状溝の縁部を外周とする面であって前記上定盤の外周面に近い面の中心から放射状に前記第二の直線溝が形成され、
前記第二の環状溝の縁部を外周とする面であって前記上定盤の外周面に近い面の中心が全上定盤の外周面の中心と異なる位置となっている、
ことを特徴とする研磨装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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