説明

砥石工具及びその製造方法

【課題】切粉の排出性を向上させることにより、切粉によるチップポケットの目詰まりを防止して、高精度に研削することができる砥石工具及びその製造方法を提供する。
【解決手段】台金11の外周面13aに、当該外周面13aの幅方向におけるいずれの位置においても、その周方向において点在する数量が同じになるように形成されるディンプル14と、外周面13a上に、複数の砥粒22をめっき層23により固着させることによって形成される研削面21と、研削面21におけるディンプル14と対応した部分が凹むことによって形成され、その内部に砥粒22の研削によって生じた切粉が排出される凹部24とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台金の表面形状を適切に設定することにより、研削性の向上を図るようにした砥石工具及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
研削加工は、砥石工具を高速で回転させながら、この砥石工具に対して、一定量の切り込みと送りとを与えることにより、ワークの成形や仕上げを行うものである。そして、このような研削加工に用いられる砥石工具としては、電気めっきの原理を利用した電着法により、砥粒を台金上に固着させたものが、一般的に知られている。
【0003】
また、上述した砥石工具においては、砥粒を小さくする程、研削精度(ワークの面粗度)を向上させることができるが、砥粒が小さくなった分、各砥粒間に形成されるチップポケットの容量も小さくなってしまう。このように、チップポケットの容量が小さくなると、研削によって生じた切粉が、そのチップポケット内に詰まり易くなるため、当該チップポケットの目詰まりを発生させるおそれがある。
【0004】
そこで、従来から、切粉によるチップポケットの目詰まりを防止することにより、高精度な研削を可能とした砥石工具が、提供されている。そして、このような、従来の砥石工具は、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−25230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の砥石工具においては、複数の凹部を研削面に格子状または網目状に形成している。これにより、研削によって生じた切粉を、それら複数の凹部内に排出させて、チップポケットの目詰まりを防止するようにしている。
【0007】
ここで、上記従来の砥石工具は、円板状に形成されたものであって、その研削面は、平面状に形成されている。そして、研削時においては、その平面状の研削面全域をワークの被研削面に接触させた状態で、この砥石工具を、その中心軸周りに回転させながら、ワークの径方向に揺動させるようにしている。これにより、従来の砥石工具においては、複数の凹部を格子状または網目状に配置しているものの、それら凹部の配置を特に規定しなくても、十分に要求される研削精度を得ることができる。
【0008】
これに対して、砥石工具の中には、その形状が、円柱状や円筒状に形成されたものもある。このように、円柱状や円筒状に形成された、所謂、砥石車のような砥石工具においては、研削時に、その研削面の一部分をワークの被研削面に接触させた状態で、その中心軸周りに回転することになる。これにより、単に、凹部を研削面に格子状または網目状に配置したのでは、研削時における凹部の移動位置に偏りが発生してしまい、切粉によるチップポケットの目詰まりを十分に防止することができないおそれがある。
【0009】
従って、本発明は上記課題を解決するものであって、切粉の排出性を向上させることにより、切粉によるチップポケットの目詰まりを防止して、高精度に研削することができる砥石工具及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する第1の発明に係る砥石工具は、
台金の外周面に、当該外周面の幅方向におけるいずれの位置においても、その周方向において点在する数量が同じになるように形成されるディンプルと、
前記外周面上に、複数の砥粒をめっき層により固着させることによって形成される研削面と、
前記研削面における前記ディンプルと対応した部分が凹むことによって形成され、その内部に前記砥粒の研削によって生じた切粉が排出される凹部とを備える
ことを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決する第2の発明に係る砥石工具は、
前記ディンプルの開口部を、砥石回転方向下流側に向けて開口するように形成する
ことを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決する第3の発明に係る砥石工具の製造方法は、
台金の外周面に、ディンプルを、前記外周面の幅方向におけるいずれの位置においても、その周方向において点在する数量が同じになるように形成し、
前記外周面上に、複数の砥粒をめっき層により固着させて、研削面を形成し、
前記研削面における前記ディンプルと対応した部分を凹ませて、その内部に前記砥粒の研削によって生じた切粉が排出される凹部とした
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
従って、本発明に係る砥石工具によれば、台金の外周面に点在するディンプルと対応した凹部を、研削面に形成することにより、砥粒の研削によって生じた切粉を、その凹部内に排出することができるので、切粉の排出性を向上させることができる。これにより、切粉による各砥粒間のチップポケットの目詰まりを防止することができるので、高精度に研削することができる。
【0014】
また、本発明に係る砥石工具の製造方法によれば、ディンプルを点在させた台金の外周面上に、研削面を形成するときに、当該研削面におけるディンプルと対応した部分を凹ませることにより、その内部に砥粒の研削によって生じた切粉が排出される凹部を、形成することができる。これにより、研削性に優れた砥石工具を、容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例に係る砥石工具の側面図である。
【図2】ワークを砥石工具により研削するときの様子を示した図である。
【図3】(a),(b)は本発明の一実施例に係る砥石工具の製造方法を順に示した断面図である。
【図4】台金に形成したディンプルの配置を示した図である。
【図5】台金に形成した傾斜ディンプルの配置を示した図である。
【図6】傾斜凹部が形成された研削面を有する砥石工具の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る砥石工具及びその製造方法について、図面を用いて詳細に説明する。
【実施例】
【0017】
図1に示すように、砥石工具1は、円柱状の台金11の外周部に、研削面21を有した構造となっている。具体的には、台金11は、基端側の小径部12と、先端側の大径部13とから構成されており、大径部13は、小径部12の径よりも大きな径を有している。そして、大径部13の外周面13aには、上述した研削面21が形成されており、この研削面21は、電気めっきの原理を利用した電着法によって、粒度の小さな砥粒22が点在された構成となっている。
【0018】
また、研削加工(トリミング加工)を行う場合には、図2に示すように、砥石工具1を、その軸心周りに回転させた後、この砥石工具1に対して、その軸心と直交する方向に送りを与える。これにより、ワークWへの研削加工が可能となっている。
【0019】
次に、砥石工具1の製造方法について、図3及び図4を用いて詳細に説明する。
【0020】
先ず、図3(a)に示すように、台金11の外周面13aに、複数のディンプル14を規則的に形成する。なお、ディンプル14は、ドリル等を用いた切削加工によって、台金11の軸心に向けて形成されており、その開口部は、台金11の径方向外側に向けて開口している。また、ディンプル14の内径は、砥粒22の直径よりも十分に大きな寸法となっている。
【0021】
具体的には、図4に示すように、ディンプル14は、外周面13aの幅方向(研削面12の幅方向)において、所定のピッチP1で形成されると共に、外周面13aの周方向(研削面12の周方向)において、所定のピッチP2で形成されている。更に、ディンプル14は、上記ピッチP1,P2に配置された上で、外周面13aの幅方向全域に亘って、隙間なく配置されると共に、外周面13aの幅方向におけるいずれの位置においても、その周方向において点在する数量が同じになるように配置されている。
【0022】
次いで、図3(b)に示すように、台金11の外周面13aに対して、めっきを施して、めっき層23を形成し、このめっき層23によって、ディンプル14の表面を含む外周面13aの全域に、砥粒22を固着させる。これにより、台金11の外周面13aに研削面21が形成される。
【0023】
このとき、研削面21においては、固着された各砥粒22間に隙間が形成されることになり、この隙間によって、チップポケット26が形成されると共に、台金11のディンプル14と対応した部分が、他の部分よりも凹むことになり、この凹んだ部分によって、凹部24が形成される。
【0024】
従って、図2に示すように、ワークWを砥石工具1により研削する場合には、ワークWの被研削面が研削面21の砥粒22により研削されることになるが、この砥粒22の研削によって生じた切粉は、チップポケット26内に排出されると共に、凹部24内にも排出される。
【0025】
そして、凹部24は、台金11のディンプル14と対応した部分に形成されているため、研削面21上において、ピッチP1,P2で配置されるだけでなく、研削面21の幅方向全域に亘って、隙間なく配置されると共に、研削面21の幅方向におけるいずれの位置においても、その周方向において点在する数量が同じになるように配置されている。これにより、ワークWの被研削面に対して、凹部24をその幅方向及び周方向に万遍なく平均して対向させることができるので、切粉を凹部24内に容易に排出させることができる。
【0026】
この結果、砥粒22の粒度が小さく、その突き出し量が十分に確保できない場合、即ち、チップポケット26の容量が非常に小さい場合でも、切粉によるチップポケット26の目詰まりを防止することができるので、ワークWを砥石工具1により高精度に研削することができる。
【0027】
また、上記砥石工具1においては、その開口部が台金11の径方向外側に向けて開口するディンプル14を、台金11に点在させるようにしているが、図5及び図6に示すように、その開口部が砥石工具1の回転方向下流側に向けて開口する傾斜ディンプル15を、台金11に点在させても構わない。
【0028】
これにより、図6に示すように、研削面21においては、台金11の傾斜ディンプル15と対応した部分が、他の部分よりも、台金11の軸心に対して斜め方向に凹むことになり、この凹んだ部分によって、傾斜凹部25が形成される。従って、傾斜凹部25を研削面21に形成することにより、当該傾斜凹部25内から、切粉を流出し易くすることができるので、切粉の排出性を更に向上させることができる。
【0029】
なお、上述した実施形態においては、凹部24,25内に、砥粒22及びめっき層23を配置させているが、凹部24,25内は研削に関与しないため、それらの内部に砥粒22及びめっき層23を配置しなくても構わない。
【0030】
従って、本発明に係る砥石工具1によれば、台金11の外周面13aに点在するディンプル14,15と対応した凹部24,25を、研削面21に形成することにより、砥粒22の研削によって生じた切粉を、その凹部24,25内に排出することができるので、切粉の排出性を向上させることができる。これにより、切粉によるチップポケット26の目詰まりを防止することができるので、高精度に研削することができる。
【0031】
また、本発明に係る砥石工具1の製造方法によれば、ディンプル14,15を点在させた台金11の外周面13a上に、研削面21を形成するときに、当該研削面21におけるディンプル14,15と対応した部分を凹ませることにより、その内部に砥粒22の研削によって生じた切粉が排出される凹部24,25を、形成することができる。これにより、切粉の排出性が優れた砥石工具1を、容易に製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、砥粒の間隔及び先端高さを調整して、チップポケットの容量を大きくすることにより、研削性の向上を図るようにした砥石工具及びその製造方法に適用可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 砥石工具
11 台金
12 小径部
13 大径部
13a 外周面
14 ディンプル
15 傾斜ディンプル
21 研削面
22 砥粒
23 めっき層
24 凹部
25 傾斜凹部
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
台金の外周面に、当該外周面の幅方向におけるいずれの位置においても、その周方向において点在する数量が同じになるように形成されるディンプルと、
前記外周面上に、複数の砥粒をめっき層により固着させることによって形成される研削面と、
前記研削面における前記ディンプルと対応した部分が凹むことによって形成され、その内部に前記砥粒の研削によって生じた切粉が排出される凹部とを備える
ことを特徴とする砥石工具。
【請求項2】
請求項1に記載の砥石工具において、
前記ディンプルの開口部を、砥石回転方向下流側に向けて開口するように形成する
ことを特徴とする砥石工具。
【請求項3】
台金の外周面に、ディンプルを、前記外周面の幅方向におけるいずれの位置においても、その周方向において点在する数量が同じになるように形成し、
前記外周面上に、複数の砥粒をめっき層により固着させて、研削面を形成し、
前記研削面における前記ディンプルと対応した部分を凹ませて、その内部に前記砥粒の研削によって生じた切粉が排出される凹部とした
ことを特徴とする砥石工具の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−52466(P2013−52466A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191240(P2011−191240)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】