破壊確率算出方法
【課題】モンテカルロシミュレーション法を用いて、複数の亀裂の発生から破壊に至る過程を確率論的に解析する破壊確率算出方法を提供する。
【解決手段】破壊確率算出方法は、亀裂個数決定工程21と、試行回数指定工程22と、決定配列工程23と、決定配列工程23の結果を受けて、複数の亀裂に関する進展過程及び合体過程を確率論を用いて解析する進展・合体解析工程24と、測定対象である機器又は部材が破壊される破壊過程を確率論を用いて解析する破壊解析工程25とを備える。
【解決手段】破壊確率算出方法は、亀裂個数決定工程21と、試行回数指定工程22と、決定配列工程23と、決定配列工程23の結果を受けて、複数の亀裂に関する進展過程及び合体過程を確率論を用いて解析する進展・合体解析工程24と、測定対象である機器又は部材が破壊される破壊過程を確率論を用いて解析する破壊解析工程25とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モンテカルロシミュレーション法を用いて、信頼性の高い破壊確率を算出する破壊確率算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の原子力プラントの定期検査等において、原子力プラントの機器又は部材の破壊リスクは、原子力プラントの機器又は部材を安全かつ効率的に維持するための指標となっている。この破壊リスクは、機器に応力腐食割れ(SCC)による亀裂などが発見された場合に、プラントが稼動することによって、この亀裂が進展したところへ、地震などの過大荷重が作用して破損を生ずる破壊確率と、復旧の費用などを含む損傷による損害との積として表わされる。
【0003】
しかしながら、従来から、原子力機器の保全は設計・建設規格に従っていたため、検査で亀裂が検出されたとしても、亀裂による破壊確率を定量的に評価するための亀裂の分布、検査能力、荷重条件、材料特性等に関する統計的なデータは削除され、ほとんど蓄積されていない。また、破壊リスクの評価に必要な費用も個々のプラントで大きく異なる上、その情報は入手することが難しい。このため破壊確率も破壊リスクもともに評価することが困難であった。
【0004】
このため、原子力機器又は部材の破壊リスクに関する考え方が示された文献(例えば、非特許文献1、特許文献1乃至5など)が存在しているが、実際のプラントの維持に積極的に活用する段階に至っていない。また、原子力プラントの安全性評価や安全性設計にもリスクが用いられている(例えば、特許文献6及び7)が、実際の亀裂が起こす破壊現象のリスクとは異なっており、プラント全体の安全性に影響するような過酷な事象が連鎖する場合についてのみ重点がおかれている。
【0005】
一方、火力プラントではリスクに基づく維持が検討され、当該リスクに基づく維持に関する特許出願も行われている。しかしながら、原子力プラントにおける維持規格のような体系的な法規、基準の下での維持ではなく、事業者の裁量が大きく、維持管理体系が異なっている。また、亀裂の進展性特性評価及び破壊確率評価も、破壊力学に基づいた予測ではなく、多くのプラントデータに基づく複数の亀裂の進展傾向に基づいた予測法である。このため原子力プラントでは、火力プラントほど多くの亀裂データが無いため、原子力プラント機器への適用は実質的に困難である。
【非特許文献1】ASME Code Sec.XI, Code Case N-560,577,578.
【特許文献1】特開2005-3730
【特許文献2】特開2005-26250
【特許文献3】特開2003-303243
【特許文献4】特開2003-4599
【特許文献5】特開2004-191359
【特許文献6】特願平6-250348
【特許文献7】特開2002−73155
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、実験室データをもとに、モンテカルロシミュレーション法を用いて、複数の亀裂の発生から破壊に至る過程を確率論的に解析することによって信頼性の高い破壊確率を算出することができる破壊確率算出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、原子炉等の発電プラントまたは化学プラント等の各種プラントに用いられる機器又は部材が破壊される確率を算出する破壊確率算出方法において、モンテカルロシミュレーション法を用いて予め表面に発生する亀裂の個数Nを決定する亀裂個数決定工程と、亀裂によって測定対象である機器又は部材が破壊されるかを評価する全試行回数Mを指定する試行回数指定工程と、試行毎に定められる各亀裂の発生位置(xi,yi,zi)、寸法・形状(a0i,c0i)及び方向d0i(i=1,2,…,N)を決定し配列する決定配列工程と、決定配列工程の結果を受けて、1回の試行で、任意の複数の亀裂に関する進展過程及び合体過程を確率論を用いて解析する進展・合体解析工程と、進展・合体解析工程の結果を受けて、測定対象である機器又は部材が破壊される破壊過程を確率論を用いて解析する破壊解析工程とを備え、決定配列工程、進展・合体解析工程及び破壊解析工程は全試行回数Mだけ繰り返され、破壊確率算出工程において、破壊解析工程の評価の結果、測定対象である機器又は部材が破壊されると評価された試行回数mFを全試行回数Mで除算して破壊確率Pfを算出し、決定配列工程は、各亀裂について発生時間t0i、発生位置(xi,yi,zi)、寸法・形状(a0i,c0i)及び方向d0i(i=1,2,…,N)をモンテカルロシミュレーション法により決定する亀裂決定工程と、亀裂決定工程で決定されたN個の亀裂を、発生時間t0i順に、発生位置(xi,yi,zi)、寸法・形状(a0i,c0i)及び方向d0i(i=1,2,…,N)を並べかえる亀裂配列工程とを有することを特徴とする破壊確率算出方法である。
【0008】
本発明は、決定配列工程において、実際の亀裂の表面に直交する主応力方向から投影して得られる亀裂の投影発生位置、投影寸法及び投影方向を、亀裂の発生位置(xi,yi,zi)、寸法・形状(a0i,c0i)及び方向d0i(i=1,2,…,N)として用いること特徴とする破壊確率算出方法である。
【0009】
本発明は、決定配列工程において、実際の亀裂の表面に直交する複数の主応力方向から投影して得られる複数の亀裂の投影発生位置、投影寸法及び投影方向を各々、亀裂の発生位置(xi,yi,zi)、寸法・形状(a0i,c0i)及び方向d0i(i=1,2,…,N)として用い、破壊確率算出工程において、複数の主応力方向からの投影毎に求められた各投影発生位置、投影寸法及び投影方向に対応する破壊確率を各々算出し、算出された破壊確率のうち最大となるものを、破壊確率算出工程における破壊確率Pfとして用いることを特徴とする破壊確率算出方法である。
【0010】
本発明は、決定配列工程において、複数の亀裂の投影発生位置を用いて実際の亀裂の発生位置を算出し、亀裂の発生位置(xi,yi,zi)として用いることを特徴とする破壊確率算出方法である。
【0011】
本発明は、1回の試行で、全亀裂に対して、進展・合体解析工程において進展過程及び合体過程が解析され、かつ破壊解析工程において破壊過程が解析されることを特徴とする破壊確率算出方法である。
【0012】
本発明は、n回目の試行で、0から所定の時間間隔ΔT×nまでの間に発生する亀裂について、進展・合体解析工程において進展過程及び合体過程が解析され、かつ破壊解析工程において破壊過程が解析されることを特徴とする破壊確率算出方法である。
【0013】
本発明は、進展・合体解析工程において、亀裂の進展過程及び合体過程は第一材料特性及び第一負荷条件を用いて解析され、当該第一材料特性及び第一負荷条件は、進展・合体解析工程において解析される進展過程及び合体過程のいずれの時間においても、全ての亀裂に対して同一であることを特徴とする破壊確率算出方法である。
【0014】
本発明は、進展・合体解析工程において、亀裂の進展過程及び合体過程は第一材料特性及び第一負荷条件を用いて解析され、第一負荷条件は、時間間隔ΔT毎に行われる1回の試行の全工程において同一であるが、第一材料特性は、同一の試行であっても、亀裂毎にモンテカルロシミュレーション法により決定されることを特徴とする破壊確率算出方法である。
【0015】
本発明は、進展・合体解析工程において、亀裂の進展過程及び合体過程は第一材料特性及び第一負荷条件を用いて解析され、第一材料特性は、時間間隔ΔT毎に行われる1回の試行の全工程において同一であるが、第一負荷条件は、同一の試行であっても、亀裂毎にモンテカルロシミュレーション法により決定されることを特徴とする破壊確率算出方法である。
【0016】
本発明は、進展・合体解析工程において、亀裂の進展過程及び合体過程は第一材料特性及び第一負荷条件を用いて解析され、第一材料特性及び第一負荷条件は、時間間隔ΔT毎に行われる1回の試行であっても、亀裂毎にモンテカルロシミュレーション法により決定されることを特徴とする破壊確率算出方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、モンテカルロシミュレーション法を用いて、複数の亀裂の発生から破壊に至る過程を確率論的に解析することによって信頼性の高い破壊確率を算出する破壊確率算出方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
第1の実施の形態
以下、本発明に係る破壊確率算出方法の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。ここで、図1乃至図4は本発明の第1の実施の形態を示す図である。
【0019】
まず図3を用いて、本発明の破壊確率算出方法が実行される計算システム40について説明する。なお本発明の破壊確率算出方法は、原子炉の機器又は部材が破壊される確率を算出するために用いられる。
【0020】
図3に示すように、計算システム40は、発生する亀裂を確率論を用いて決定し、かつ配列する決定配列機能9と、亀裂の進展過程及び合体過程を確率論を用いて解析する進展・合体解析機能10と、測定対象である機器又は部材が破壊される破壊過程を確立論を用いて解析する破壊解析機能11と、測定対象である機器又は部材が破壊されると評価された試行回数mFを全試行回数で除算して破壊確率Pfを算出する破壊確率算出機能12とを有している。
【0021】
また図3に示すように、計算システム40は、亀裂の発生時間、寸法・形状、発生位置及び方向に関するデータが入力されているSCC発生データベース(DB)5と、材料に関するデータが入力されている材料データベース(DB)6と、荷重に関するデータが入力されている荷重データベース(DB)7とを備えている。このうち材料データベース6は、亀裂の進展特性(第一材料特性)41に関するデータの入った第一材料特性データベース51と、強度特性及び破壊靭性(第二材料特性)42に関するデータの入った第二材料特性データベース52とを有している。また荷重データベース7は、残留応力及び運転荷重(第一負荷条件)43に関する第一負荷条件データベース53と、運転荷重及び地震荷重(第二負荷条件)44に関する第二負荷条件データベース54とを有している。
【0022】
なお図3において、計算システム40の決定配列機能9は、亀裂の発生時間、寸法・形状、発生位置及び方向に関するデータの入ったSCC発生データベース5を用いて発生する亀裂を決定する。
【0023】
また図3において、計算システム40の進展・合体解析機能10は、亀裂の進展特性(第一材料特性)41に関するデータの入った第一材料特性データベース51と、残留応力及び運転荷重(第一負荷条件)43に関するデータの入った第一負荷条件データベース53とを用いて、亀裂の進展過程及び合体過程を解析する。
【0024】
また図3において、破壊解析機能11は、強度特性及び破壊靭性(第二材料特性)42に関するデータの入った第二材料特性データベース52と、運転荷重及び地震荷重(第二負荷条件)44に関するデータの入った第二負荷条件データベース54とを用いて、測定対象である機器又は部材が破壊される破壊過程を解析する。
【0025】
なお計算システム40は、図3に示すように、解析対象及び解析条件を入力したり、データベースの参照を指定したりする解析条件設定機能8を有している。更に計算システム40は、入力条件、個々の亀裂寸法の時間変化に対する数値データ、一定時間間隔毎の破壊確率Pf(図4(a)参照)、指定した時刻における複数の亀裂14の状態(図4(b1)−(b3)参照)及び時間軸に対する亀裂寸法の変化(図4(c)参照)を図表示する解析結果表示機能13を有している。
【0026】
このうち図4(b1)−(b3)において、運転時間tはt0<t1<t2となっており、図4(b1)は亀裂14が発生した様子を示し、図4(b2)は発生した亀裂14が進展した様子を示し、図4(b3)は進展した複数の亀裂14が合体した様子を示している。
【0027】
次に、本発明による破壊確率算出方法について述べる。
【0028】
亀裂の発生個数も確率変数と考えられるため、まずモンテカルロシミュレーション法を用いて予め表面に発生する亀裂の個数Nを決定する(亀裂個数決定工程21)(図1参照)。
【0029】
次に図1に示すように、亀裂によって測定対象である機器又は部材が破壊されるかを評価する全試行回数Mを指定する(試行回数指定工程22)。
【0030】
次に図1及び図3に示すように、決定配列機能9において、一試行毎に定められる各亀裂の発生位置(xi,yi,zi)、寸法・形状(a0i,c0i)及び方向d0i(i=1,2,…,N)を確率論を用いて決定し、配列する(決定配列工程23)。なお、この決定配列工程23については、後で説明する。
【0031】
次に図1及び図3に示すように、進展・合体解析機能10において、決定配列工程23の結果を受けて、1回の試行で、複数の亀裂に関する進展過程及び合体過程を確率論を用いて解析する(進展・合体解析工程24)。
【0032】
次に図1及び図3に示すように、破壊解析機能11において、進展・合体解析工程24の結果を受けて、測定対象である機器又は部材が破壊される破壊過程を確立論を用いて解析する(破壊解析工程25)。
【0033】
次に図1に示すように、破壊解析工程25の結果を受けて、測定対象である機器又は部材が破壊に至ったかどうかを評価する(破壊評価工程26)。
【0034】
なお図1に示すように、上述した決定配列工程23、進展・合体解析工程24、破壊解析工程25及び破壊評価工程26は予め指定した試行回数Mだけ繰り返される。
【0035】
最後に図1及び図3に示すように、破壊確率算出機能12において、破壊解析工程25の評価の結果を受けて、測定対象である機器又は部材が破壊されると評価された試行回数mFを全試行回数Mで除算して破壊確率Pfを算出する(破壊確率算出工程27)。すなわち、破壊確率Pfは、mF/Mと定義される。なお、測定対象である機器又は部材が破壊されないと評価された試行回数をmNFとすると、M=mF+mNFとなる。
【0036】
次に図2を用いて、上述した決定配列工程23について説明する。
【0037】
決定配列工程23においては、まず図2に示すように、各亀裂について発生時間t0i、発生位置(xi,yi,zi)、寸法・形状(a0i,c0i)及び方向d0i(i=1,2,…,N)をモンテカルロシミュレーション法により決定する(亀裂決定工程31)。
【0038】
次に亀裂決定工程31で決定されたN個の亀裂を、図2に示すように、発生時間t0i順に、発生位置(xi,yi,zi)、寸法・形状(a0i,c0i)及び方向d0i(i=1,2,…,N)を並べかえる(亀裂配列工程32)。
【0039】
このように、発生時間t0i順に、亀裂の発生位置(xi,yi,zi)、寸法・形状(a0i,c0i)及び方向d0i(i=1,2,…,N)を並びかえることによって、所定の時間までに発生し進展する亀裂と、発生していない亀裂とを区別できる。このため、時間とともに複数の亀裂が発生、進展、合体して行く過程を詳しく解析することができる。
【0040】
第2の実施の形態
次に図5により本発明の第2の実施の形態について説明する。図5に示す第2の実施の形態は、決定配列機能9で行われる決定配列工程23において、実際の亀裂17の表面に直交する主応力σ1方向から投影して得られる投影亀裂18の投影発生位置、投影寸法及び投影方向を、亀裂の発生位置(xi,yi,zi)、寸法・形状(a0i,c0i)及び方向d0i(i=1,2,…,N)として用いたものであり、他は図1乃至図4に示す第1の実施の形態と略同一である。
【0041】
図5に示す第2の実施の形態において、図1乃至図4に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0042】
決定配列機能9で行われる決定配列工程23において、実際の亀裂17の表面に直交する主応力σ1方向から投影して主応力σ1面19内に得られる投影亀裂18の投影発生位置、投影寸法及び投影方向(図5参照)を、亀裂の発生位置(xi,yi,zi)、寸法・形状(a0i,c0i)及び方向d0i(i=1,2,…,N)として用いる。
【0043】
このため、亀裂の発生過程、進展過程、合体過程及び破壊過程を解析する際に、モンテカルロシミュレーション法で用いられる変数を少なくすることができ、容易かつ迅速に解析することができる。
【0044】
第3の実施の形態
次に図6により本発明の第3の実施の形態について説明する。図6に示す第3の実施の形態は、決定配列機能9で行われる決定配列工程23において、実際の亀裂17の表面に直交する主応力σ1方向及び主応力σ2方向から投影して得られる2種類の投影亀裂18,20の投影発生位置、投影寸法及び投影方向を各々、亀裂の発生位置(xi,yi,zi)、寸法・形状(a0i,c0i)及び方向d0i(i=1,2,…,N)として用いたものである。また破壊確率算出機能12で行われる破壊確率算出工程27において、主応力σ1方向及び主応力σ2方向からの投影毎に求められた各投影発生位置、投影寸法及び投影方向に対応する破壊確率を各々算出し、算出された破壊確率のうち最大となるものを、破壊確率算出工程27における破壊確率Pfとして用いたものである。なお他の構成は、図5に示す第2の実施の形態と略同一である。
【0045】
図6に示す第3の実施の形態において、図5に示す第2の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0046】
破壊確率算出機能12で行われる破壊確率算出工程27において、主応力σ1方向及び主応力σ2方向からの投影毎に求められた各投影発生位置、投影寸法及び投影方向に対応する破壊確率のうち最大となるものを、破壊確率Pfとして用いることができる。このため、原子炉に用いられる機器又は部材が破壊されるかについて、最も高い破壊確率Pfを用いて評価することができるため、高い安全性を維持してこれらの機器や部材を用いることができる。
【0047】
第4の実施の形態
次に図7乃至図9により本発明の第4の実施の形態について説明する。図7に示す第4の実施の形態は、決定配列機能9で行われる決定配列工程23において、主応力σ1方向及び主応力σ2方向から投影して得られる投影亀裂18,20の投影発生位置を用いて実際の亀裂17の発生位置を算出し、当該実際の亀裂17の発生位置を亀裂の発生位置(xi,yi,zi)として用いたものであり、他は図5に示す第2の実施の形態と略同一である。
【0048】
図7乃至図9に示す第5の実施の形態において、図5に示す第2の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0049】
決定配列機能9で行われる決定配列工程23において、実際の亀裂17の発生位置を算出し、実際の亀裂17の発生位置を亀裂の発生位置(xi,yi,zi)として用いることができるため、より精度の高い破壊確率Pfを算出することができる。
【0050】
複数の亀裂の投影発生位置を用いて実際の亀裂17の発生位置を算出する方法としては、例えば、図8に示すように主応力σ1面19に投影して得られた投影亀裂18の発生位置(xi,yi,0)と、図9に示すように主応力σ2面21に投影して得られた投影亀裂20の発生位置(0,yi,zi)より、図7に示すように実際の亀裂17の発生位置を(xi,yi,zi)と算出することができる。
【0051】
なお図7に示すa0iはi番目の実際の亀裂17の深さを示し、a0i’はi番目の投影亀裂18の深さ、a0i”はi番目の投影亀裂20の深さを示している。またc0iはi番目の実際の亀裂17の半長を示し、c0i’はi番目の投影亀裂18の半長、c0i”はi番目の投影亀裂20の半長を示している。
【0052】
第5の実施の形態
次に本発明の第5の実施の形態について説明する。第5の実施の形態は、1回の試行で、全亀裂(N個)に対して、進展・合体解析機能10で行われる進展・合体解析工程24において進展過程及び合体過程を解析し、次に破壊解析工程25において破壊過程を解析し、次に破壊評価工程26において測定対象である機器又は部材が破壊されるかを評価したものであり、他は図1乃至図4に示す第1の実施の形態と略同一である。
【0053】
原子炉に用いられる機器や部材の健全性を評価する際には、一般的に、亀裂が最も長くなる期間末期に地震荷重などの過大荷重を作用させて評価される。このため、一回の試行で、全亀裂(N個)に対して、進展・合体解析工程24、破壊解析工程25及び破壊評価工程26をそれぞれ行うことによって、より精度の高い破壊確率Pfを算出することができる。
【0054】
第6の実施の形態
次に図10により本発明の第6の実施の形態について説明する。図10に示す第6の実施の形態は、n回目の試行で、0から所定の時間間隔ΔT×nまでの間に発生する亀裂について、進展・合体解析機能10で行われる進展・合体解析工程24において進展過程及び合体過程を解析し、次に破壊解析機能11で行われる破壊解析工程25において破壊過程を解析し、次に破壊評価工程26において測定対象である機器又は部材が破壊されるかを評価したものであり、他は図1乃至図4に示す第1の実施の形態と略同一である。
【0055】
図10に示す第6の実施の形態において、図1乃至図4に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0056】
本実施の形態によると、図10に示すように、1回目の試行では、0からΔTまでの間に発生する亀裂について、まず進展・合体解析工程24において進展過程及び合体過程が解析され、次に破壊解析工程25において破壊過程を解析され、次に破壊評価工程26において測定対象である機器又は部材が破壊されるかを評価され、次に破壊確率算出工程27において0からΔTまでの破壊確率Pfが算出される。2回目の試行では、0からΔT×2までの間に発生する亀裂について、上述したように、進展・合体解析工程24、破壊解析工程25、破壊評価工程26及び破壊確率算出工程27が順次繰り返される。そして、n回目の試行では、0から所定の時間間隔ΔT×nまでの間に発生する亀裂について、進展・合体解析工程24、破壊解析工程25、破壊評価工程26及び破壊確率算出工程27が順次行われ、予め定めて最終時刻tFに到達するまで繰り返し行われる。
【0057】
このように、時間経過に応じて測定対象である機器又は部材が破壊される確率の運転時間に対する変化を求めることができるため、時間経過に応じた破壊確率Pfの変化を得ることができる。このため、より実際の状況に近い破壊確率Pfを得ることができ、機器や部材の維持を確実に行うことができる。
【0058】
第7の実施の形態
【0059】
次に図11を用いて本発明の第7の実施の形態について説明する。第7の実施の形態は、進展・合体解析機能10で行われる進展・合体解析工程24において、進展過程及び合体過程のいずれの時間においても、全ての亀裂に対して同一の進展特性(第一材料特性)41及び残留応力及び運転荷重(第一負荷条件)43を用いたものであり、他は第5の実施の形態と略同一である。
【0060】
進展・合体解析機能10で行われる進展・合体解析工程24において、進展過程及び合体過程のいずれの時間においても、全ての亀裂に対して同一の進展特性(第一材料特性)41及び残留応力及び運転荷重(第一負荷条件)43を用いて破壊確率Pfを算出するため、試行毎にこれらの進展特性(第一材料特性)41及び残留応力及び運転荷重(第一負荷条件)43を決定する必要が無くなるため、破壊確率Pfを容易かつ迅速に算出することができる。
【0061】
次に、本実施の形態における各工程の流れについて図11を用いて説明する。
【0062】
まず図11に示すように、モンテカルロシミュレーション法により進展特性(第一材料特性)41と、残留応力及び運転荷重(第一負荷条件)43を決定する。
【0063】
次に図11に示すように、時刻tまでに亀裂が発生しているかを評価する。
【0064】
ここで亀裂が発生していない場合には、図11に示すように、発生している亀裂の合体過程を解析し、亀裂が合体するかどうかを判定し、その後亀裂の数及び寸法を更新する。
【0065】
一方、亀裂が発生している場合には、図11に示すように、亀裂の進展過程をモンテカルロシミュレーション法を用いて解析し、その後亀裂の寸法を更新する。
【0066】
ここで、一試行毎に増やされる亀裂数Niが全亀裂数Nに到達している場合には、図11に示すように、上述した亀裂が発生していない場合と同様に、発生している亀裂の合体過程を解析し、亀裂が合体するかどうかを判定し、その後亀裂の数及び寸法を更新する。
【0067】
一方、亀裂数Niが全亀裂数Nに到達していない場合には、図11に示すように、進展した亀裂によって新たな亀裂が発生しているかを評価し、それ以降は、亀裂の進展によって新たな亀裂が発生しないか、又は亀裂数Niが全亀裂数Nに到達するまで上述した工程を繰り返し行う。
【0068】
また図11に示すように、発生している亀裂の合体過程を解析し、亀裂が合体するかどうかを判定し、亀裂の数及び寸法を更新した後で、時刻tが予め定めた最終時刻tFに到達しているかを判断する。ここで、到達してなければ時刻tに所定の時間間隔ΔTを加えた時刻から再度上述した工程を繰り返し行う。一方、時刻tが予め指定した最終時刻tFに到達していれば、その時点で進展・合体解析工程24を終了し、破壊解析工程25に進む。
【0069】
変形例7−1
次に図12を用いて変形例7−1について説明する。変形例7―1は、進展・合体解析機能10で行われる進展・合体解析工程24において、時間間隔ΔT毎に行われる1回の試行の全工程において同一の残留応力及び運転荷重(第一負荷条件)43を用い、かつ同一の試行であっても、亀裂毎にモンテカルロシミュレーション法により決定される進展特性(第一材料特性)41を用いたものであり、他は第5の実施の形態と略同一である。
【0070】
材料が微視的レベルで不均一なこと、化学成分の分布が不均一なこと、非金属介在物の分布が不均一なことなどから、進展特性(第一材料特性)41はランダムな状態になっている。ここで上述のように、時間間隔ΔT毎に行われる1回の試行の全工程において同一の残留応力及び運転荷重(第一負荷条件)43を用いることによって、ランダムな進展特性(第一材料特性)41を適切に考慮することができ、より精度の高い破壊確率Pfを算出することができる。また一方で、同一の試行であっても、亀裂毎にモンテカルロシミュレーション法により決定される進展特性(第一材料特性)41を用いることによって、容易性と迅速性を維持することもできる。
【0071】
次に、本実施の形態における各工程の流れについて図12を用いて説明する。
【0072】
まず図12に示すように、モンテカルロシミュレーション法により残留応力及び運転荷重(第一負荷条件)43を決定する。
【0073】
次に図12に示すように、時刻tまでに亀裂が発生しているかを評価する。
【0074】
ここで亀裂が発生していない場合には、図12に示すように、発生している亀裂の合体過程を解析し、亀裂が合体するかどうかを判定し、その後亀裂の数及び寸法を更新する。
【0075】
一方、亀裂が発生している場合には、図12に示すように、モンテカルロシミュレーション法により進展特性(第一材料特性)41を決定する。
【0076】
次に図12に示すように、亀裂の進展過程をモンテカルロシミュレーション法を用いて解析し、その後亀裂の寸法を更新する。
【0077】
ここで、一試行毎に増やされる亀裂数Niが全亀裂数Nに到達している場合には、図12に示すように、上述した亀裂が発生していない場合と同様に、発生している亀裂の合体過程を解析し、亀裂が合体するかどうかを判定し、その後亀裂の数及び寸法を更新する。
【0078】
一方、亀裂数Niが全亀裂数Nに到達していない場合には、図12に示すように、進展した亀裂によって新たな亀裂が発生しているかを評価し、それ以降は、亀裂の進展によって新たな亀裂が発生しないか、又は亀裂数Niが全亀裂数Nに到達するまで上述した工程を繰り返し行う。
【0079】
また図12に示すように、発生している亀裂の合体過程を解析し、亀裂が合体するかどうかを判定し、亀裂の数及び寸法を更新した後で、時刻tが予め定めた最終時刻tFに到達しているかを判断する。ここで到達してなければ時刻tに所定の時間間隔ΔTを加えた時刻から再度上述した工程を繰り返し行う。一方、時刻tが予め指定した最終時刻tFに到達していれば、その時点で進展・合体解析工程24を終了し、破壊解析工程25に進む。
【0080】
変形例7−2
次に図13を用いて変形例7−2について説明する。変形例7−2は、進展・合体解析機能10で行われる進展・合体解析工程24において、時間間隔ΔT毎に行われる1回の試行の全工程において同一の進展特性(第一材料特性)41を用い、かつ同一の試行であっても、亀裂毎にモンテカルロシミュレーション法により決定される残留応力及び運転荷重(第一負荷条件)43を用いたものであり、他は第5の実施の形態と略同一である。
【0081】
一般的に、残留応力及び運転荷重は、亀裂の進展すなわち時間により変化する(なお、地震動も発生が予想される時期により生ずる荷重の大きさが異なっている)。ここで上述のように、時間間隔ΔT毎に行われる1回の試行の全工程において同一の進展特性(第一材料特性)41を用いることによって、時間によって変化する残留応力及び運転荷重(第一負荷条件)43を適切に考慮することができ、より精度の高い破壊確率Pfを算出することができる。一方、同一の試行であっても、亀裂毎にモンテカルロシミュレーション法により決定される残留応力及び運転荷重(第一負荷条件)43を用いることによって、容易性と迅速性を維持することもできる。
【0082】
次に、本実施の形態における各工程の流れについて図13を用いて説明する。
【0083】
まず図13に示すように、モンテカルロシミュレーション法により進展特性(第一材料特性)41を決定する。
【0084】
次に図13に示すように、時刻tまでに亀裂が発生しているかを評価する。
【0085】
ここで亀裂が発生していない場合には、図13に示すように、発生している亀裂の合体過程を解析し、亀裂が合体するかどうかを判定し、その後亀裂の数及び寸法を更新する。
【0086】
一方、亀裂が発生している場合には、図13に示すように、モンテカルロシミュレーション法により残留応力及び運転荷重(第一負荷条件)43を決定する。
【0087】
次に図13に示すように、亀裂の進展過程をモンテカルロシミュレーション法を用いて解析し、その後亀裂の寸法を更新する。
【0088】
ここで、一試行毎に増やされる亀裂数Niが全亀裂数Nに到達している場合には、図13に示すように、上述した亀裂が発生していない場合と同様に、発生している亀裂の合体過程を解析し、亀裂が合体するかどうかを判定し、その後亀裂の数及び寸法を更新する。
【0089】
一方、亀裂数Niが全亀裂数Nに到達していない場合には、図13に示すように、進展した亀裂によって新たな亀裂が発生しているかを評価し、それ以降は、亀裂の進展によって新たな亀裂が発生しないか、又は亀裂数Niが全亀裂数Nに到達するまで上述した工程を繰り返し行う。
【0090】
また図13に示すように、発生している亀裂の合体過程を解析し、亀裂が合体するかどうかを判定し、亀裂の数及び寸法を更新した後で、時刻tが予め定めた最終時刻tFに到達しているかを判断する。ここで到達してなければ時刻tに所定の時間間隔ΔTを加えた時刻から再度上述した工程を繰り返し行う。一方、時刻tが予め指定した最終時刻tFに到達していれば、その時点で進展・合体解析工程24を終了し、破壊解析工程25に進む。
【0091】
変形例7−3
次に図14を用いて変形例7−3について説明する。変形例7−3は、進展・合体解析機能10で行われる進展・合体解析工程24において、時間間隔ΔT毎に行われる1回の試行であっても、亀裂毎にモンテカルロシミュレーション法により決定される進展特性(第一材料特性)41と、残留応力及び運転荷重(第一負荷条件)43とを用いたものであり、他は第5の実施の形態と略同一である。
【0092】
材料が微視的レベルで不均一なこと、化学成分の分布が不均一なこと、非金属介在物の分布が不均一なことなどから、進展特性(第一材料特性)41はランダムな状態になっている。また、残留応力及び運転荷重は、亀裂の進展すなわち時間により変化している。ここで上述のように、時間間隔ΔT毎に行われる1回の試行であっても、亀裂毎にモンテカルロシミュレーション法により決定される進展特性(第一材料特性)41と、残留応力及び運転荷重(第一負荷条件)43とを用いることによって、ランダムな進展特性(第一材料特性)41と、時間によって変化する残留応力及び運転荷重(第一負荷条件)43とを適切に考慮することができ、より精度の高い破壊確率Pfを算出することができる。
【0093】
次に、本実施の形態における各工程の流れについて図14を用いて説明する。
【0094】
まず図14に示すように、時刻tまでに亀裂が発生しているかを評価する。
【0095】
ここで亀裂が発生していない場合には、図14に示すように、発生している亀裂の合体過程を解析し、亀裂が合体するかどうかを判定し、その後亀裂の数及び寸法を更新する。
【0096】
一方、亀裂が発生している場合には、図14に示すように、モンテカルロシミュレーション法により進展特性(第一材料特性)41と、残留応力及び運転荷重(第一負荷条件)43とを決定する。
【0097】
次に図14に示すように、亀裂の進展過程をモンテカルロシミュレーション法を用いて解析し、その後亀裂の寸法を更新する。
【0098】
ここで、一試行毎に増やされる亀裂数Niが全亀裂数Nに到達している場合には、図14に示すように、上述した亀裂が発生していない場合と同様に、発生している亀裂の合体過程を解析し、亀裂が合体するかどうかを判定し、その後亀裂の数及び寸法を更新する。
【0099】
一方、亀裂数Niが全亀裂数Nに到達していない場合には、図14に示すように、進展した亀裂によって新たな亀裂が発生しているかを評価し、それ以降は、亀裂の進展によって新たな亀裂が発生しないか、又は亀裂数Niが全亀裂数Nに到達するまで上述した工程を繰り返し行う。
【0100】
また図14に示すように、発生している亀裂の合体過程を解析し、亀裂が合体するかどうかを判定し、亀裂の数及び寸法を更新した後で、時刻tが予め定めた最終時刻tFに到達しているかを判断する。ここで到達してなければ時刻tに所定の時間間隔ΔTを加えた時刻から再度上述した工程を繰り返し行う。一方、時刻tが予め指定した最終時刻tFに到達していれば、その時点で進展・合体解析工程24を終了し、破壊解析工程25に進む。
【0101】
なお上述した実施の形態では、決定配列工程23の後、進展・合体解析工程24において、一回の試行で終了時間tFまで解析した後、破壊解析工程25及び破壊評価工程26を行い、破壊確率Pfを求める態様を示したが、これに限らず、決定配列工程23、進展・合体解析工程24、破壊解析工程25及び破壊評価工程26を行い、破壊確率Pfを求めた後で、時間間隔ΔTだけ変化させて再度決定配列工程23から繰り返して処理するフローであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明による破壊確率算出方法の第1及び第5の実施の形態を示すフロー図。
【図2】破壊確率算出方法の第1の実施の形態の破壊確率算出方法における決定配列工程を示すフロー図。
【図3】本発明による破壊確率算出方法を実行する計算システムを示す概略図。
【図4】(a)から(c)は本発明による破壊確率算出方法を実行する計算システムの一機能を説明するための概略図。
【図5】本発明による破壊確率算出方法の第2の実施の形態を説明するための概略図。
【図6】本発明による破壊確率算出方法の第3の実施の形態を説明するための概略図。
【図7】本発明による破壊確率算出方法の第4の実施の形態を説明するための概略図。
【図8】本発明による破壊確率算出方法の第4の実施の形態において亀裂を主応力σ1方向から投影した状態を示す概略図。
【図9】本発明による破壊確率算出方法の第4の実施の形態において亀裂を主応力σ1方向及び主応力σ2方向から投影した状態を示す概略図。
【図10】本発明による破壊確率算出方法の第6の実施の形態を示すフロー図。
【図11】本発明による破壊確率算出方法の第7の実施の形態における進展・合体解析工程を示したフロー図。
【図12】本発明による破壊確率算出方法の変形例7−1における進展・合体解析工程を示したフロー図。
【図13】本発明による破壊確率算出方法の変形例7−2における進展・合体解析工程を示したフロー図。
【図14】本発明による破壊確率算出方法の変形例7−3における進展・合体解析工程を示したフロー図。
【符号の説明】
【0103】
14 亀裂
21 亀裂個数決定工程
22 試行回数指定工程
23 決定配列工程
24 進展・合体解析工程
25 破壊解析工程
26 破壊評価工程
27 破壊確率算出工程
31 亀裂決定工程
32 亀裂配列工程
41 第一材料特性
42 第二材料特性
43 第一負荷条件
44 第二負荷条件
【技術分野】
【0001】
本発明は、モンテカルロシミュレーション法を用いて、信頼性の高い破壊確率を算出する破壊確率算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の原子力プラントの定期検査等において、原子力プラントの機器又は部材の破壊リスクは、原子力プラントの機器又は部材を安全かつ効率的に維持するための指標となっている。この破壊リスクは、機器に応力腐食割れ(SCC)による亀裂などが発見された場合に、プラントが稼動することによって、この亀裂が進展したところへ、地震などの過大荷重が作用して破損を生ずる破壊確率と、復旧の費用などを含む損傷による損害との積として表わされる。
【0003】
しかしながら、従来から、原子力機器の保全は設計・建設規格に従っていたため、検査で亀裂が検出されたとしても、亀裂による破壊確率を定量的に評価するための亀裂の分布、検査能力、荷重条件、材料特性等に関する統計的なデータは削除され、ほとんど蓄積されていない。また、破壊リスクの評価に必要な費用も個々のプラントで大きく異なる上、その情報は入手することが難しい。このため破壊確率も破壊リスクもともに評価することが困難であった。
【0004】
このため、原子力機器又は部材の破壊リスクに関する考え方が示された文献(例えば、非特許文献1、特許文献1乃至5など)が存在しているが、実際のプラントの維持に積極的に活用する段階に至っていない。また、原子力プラントの安全性評価や安全性設計にもリスクが用いられている(例えば、特許文献6及び7)が、実際の亀裂が起こす破壊現象のリスクとは異なっており、プラント全体の安全性に影響するような過酷な事象が連鎖する場合についてのみ重点がおかれている。
【0005】
一方、火力プラントではリスクに基づく維持が検討され、当該リスクに基づく維持に関する特許出願も行われている。しかしながら、原子力プラントにおける維持規格のような体系的な法規、基準の下での維持ではなく、事業者の裁量が大きく、維持管理体系が異なっている。また、亀裂の進展性特性評価及び破壊確率評価も、破壊力学に基づいた予測ではなく、多くのプラントデータに基づく複数の亀裂の進展傾向に基づいた予測法である。このため原子力プラントでは、火力プラントほど多くの亀裂データが無いため、原子力プラント機器への適用は実質的に困難である。
【非特許文献1】ASME Code Sec.XI, Code Case N-560,577,578.
【特許文献1】特開2005-3730
【特許文献2】特開2005-26250
【特許文献3】特開2003-303243
【特許文献4】特開2003-4599
【特許文献5】特開2004-191359
【特許文献6】特願平6-250348
【特許文献7】特開2002−73155
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、実験室データをもとに、モンテカルロシミュレーション法を用いて、複数の亀裂の発生から破壊に至る過程を確率論的に解析することによって信頼性の高い破壊確率を算出することができる破壊確率算出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、原子炉等の発電プラントまたは化学プラント等の各種プラントに用いられる機器又は部材が破壊される確率を算出する破壊確率算出方法において、モンテカルロシミュレーション法を用いて予め表面に発生する亀裂の個数Nを決定する亀裂個数決定工程と、亀裂によって測定対象である機器又は部材が破壊されるかを評価する全試行回数Mを指定する試行回数指定工程と、試行毎に定められる各亀裂の発生位置(xi,yi,zi)、寸法・形状(a0i,c0i)及び方向d0i(i=1,2,…,N)を決定し配列する決定配列工程と、決定配列工程の結果を受けて、1回の試行で、任意の複数の亀裂に関する進展過程及び合体過程を確率論を用いて解析する進展・合体解析工程と、進展・合体解析工程の結果を受けて、測定対象である機器又は部材が破壊される破壊過程を確率論を用いて解析する破壊解析工程とを備え、決定配列工程、進展・合体解析工程及び破壊解析工程は全試行回数Mだけ繰り返され、破壊確率算出工程において、破壊解析工程の評価の結果、測定対象である機器又は部材が破壊されると評価された試行回数mFを全試行回数Mで除算して破壊確率Pfを算出し、決定配列工程は、各亀裂について発生時間t0i、発生位置(xi,yi,zi)、寸法・形状(a0i,c0i)及び方向d0i(i=1,2,…,N)をモンテカルロシミュレーション法により決定する亀裂決定工程と、亀裂決定工程で決定されたN個の亀裂を、発生時間t0i順に、発生位置(xi,yi,zi)、寸法・形状(a0i,c0i)及び方向d0i(i=1,2,…,N)を並べかえる亀裂配列工程とを有することを特徴とする破壊確率算出方法である。
【0008】
本発明は、決定配列工程において、実際の亀裂の表面に直交する主応力方向から投影して得られる亀裂の投影発生位置、投影寸法及び投影方向を、亀裂の発生位置(xi,yi,zi)、寸法・形状(a0i,c0i)及び方向d0i(i=1,2,…,N)として用いること特徴とする破壊確率算出方法である。
【0009】
本発明は、決定配列工程において、実際の亀裂の表面に直交する複数の主応力方向から投影して得られる複数の亀裂の投影発生位置、投影寸法及び投影方向を各々、亀裂の発生位置(xi,yi,zi)、寸法・形状(a0i,c0i)及び方向d0i(i=1,2,…,N)として用い、破壊確率算出工程において、複数の主応力方向からの投影毎に求められた各投影発生位置、投影寸法及び投影方向に対応する破壊確率を各々算出し、算出された破壊確率のうち最大となるものを、破壊確率算出工程における破壊確率Pfとして用いることを特徴とする破壊確率算出方法である。
【0010】
本発明は、決定配列工程において、複数の亀裂の投影発生位置を用いて実際の亀裂の発生位置を算出し、亀裂の発生位置(xi,yi,zi)として用いることを特徴とする破壊確率算出方法である。
【0011】
本発明は、1回の試行で、全亀裂に対して、進展・合体解析工程において進展過程及び合体過程が解析され、かつ破壊解析工程において破壊過程が解析されることを特徴とする破壊確率算出方法である。
【0012】
本発明は、n回目の試行で、0から所定の時間間隔ΔT×nまでの間に発生する亀裂について、進展・合体解析工程において進展過程及び合体過程が解析され、かつ破壊解析工程において破壊過程が解析されることを特徴とする破壊確率算出方法である。
【0013】
本発明は、進展・合体解析工程において、亀裂の進展過程及び合体過程は第一材料特性及び第一負荷条件を用いて解析され、当該第一材料特性及び第一負荷条件は、進展・合体解析工程において解析される進展過程及び合体過程のいずれの時間においても、全ての亀裂に対して同一であることを特徴とする破壊確率算出方法である。
【0014】
本発明は、進展・合体解析工程において、亀裂の進展過程及び合体過程は第一材料特性及び第一負荷条件を用いて解析され、第一負荷条件は、時間間隔ΔT毎に行われる1回の試行の全工程において同一であるが、第一材料特性は、同一の試行であっても、亀裂毎にモンテカルロシミュレーション法により決定されることを特徴とする破壊確率算出方法である。
【0015】
本発明は、進展・合体解析工程において、亀裂の進展過程及び合体過程は第一材料特性及び第一負荷条件を用いて解析され、第一材料特性は、時間間隔ΔT毎に行われる1回の試行の全工程において同一であるが、第一負荷条件は、同一の試行であっても、亀裂毎にモンテカルロシミュレーション法により決定されることを特徴とする破壊確率算出方法である。
【0016】
本発明は、進展・合体解析工程において、亀裂の進展過程及び合体過程は第一材料特性及び第一負荷条件を用いて解析され、第一材料特性及び第一負荷条件は、時間間隔ΔT毎に行われる1回の試行であっても、亀裂毎にモンテカルロシミュレーション法により決定されることを特徴とする破壊確率算出方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、モンテカルロシミュレーション法を用いて、複数の亀裂の発生から破壊に至る過程を確率論的に解析することによって信頼性の高い破壊確率を算出する破壊確率算出方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
第1の実施の形態
以下、本発明に係る破壊確率算出方法の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。ここで、図1乃至図4は本発明の第1の実施の形態を示す図である。
【0019】
まず図3を用いて、本発明の破壊確率算出方法が実行される計算システム40について説明する。なお本発明の破壊確率算出方法は、原子炉の機器又は部材が破壊される確率を算出するために用いられる。
【0020】
図3に示すように、計算システム40は、発生する亀裂を確率論を用いて決定し、かつ配列する決定配列機能9と、亀裂の進展過程及び合体過程を確率論を用いて解析する進展・合体解析機能10と、測定対象である機器又は部材が破壊される破壊過程を確立論を用いて解析する破壊解析機能11と、測定対象である機器又は部材が破壊されると評価された試行回数mFを全試行回数で除算して破壊確率Pfを算出する破壊確率算出機能12とを有している。
【0021】
また図3に示すように、計算システム40は、亀裂の発生時間、寸法・形状、発生位置及び方向に関するデータが入力されているSCC発生データベース(DB)5と、材料に関するデータが入力されている材料データベース(DB)6と、荷重に関するデータが入力されている荷重データベース(DB)7とを備えている。このうち材料データベース6は、亀裂の進展特性(第一材料特性)41に関するデータの入った第一材料特性データベース51と、強度特性及び破壊靭性(第二材料特性)42に関するデータの入った第二材料特性データベース52とを有している。また荷重データベース7は、残留応力及び運転荷重(第一負荷条件)43に関する第一負荷条件データベース53と、運転荷重及び地震荷重(第二負荷条件)44に関する第二負荷条件データベース54とを有している。
【0022】
なお図3において、計算システム40の決定配列機能9は、亀裂の発生時間、寸法・形状、発生位置及び方向に関するデータの入ったSCC発生データベース5を用いて発生する亀裂を決定する。
【0023】
また図3において、計算システム40の進展・合体解析機能10は、亀裂の進展特性(第一材料特性)41に関するデータの入った第一材料特性データベース51と、残留応力及び運転荷重(第一負荷条件)43に関するデータの入った第一負荷条件データベース53とを用いて、亀裂の進展過程及び合体過程を解析する。
【0024】
また図3において、破壊解析機能11は、強度特性及び破壊靭性(第二材料特性)42に関するデータの入った第二材料特性データベース52と、運転荷重及び地震荷重(第二負荷条件)44に関するデータの入った第二負荷条件データベース54とを用いて、測定対象である機器又は部材が破壊される破壊過程を解析する。
【0025】
なお計算システム40は、図3に示すように、解析対象及び解析条件を入力したり、データベースの参照を指定したりする解析条件設定機能8を有している。更に計算システム40は、入力条件、個々の亀裂寸法の時間変化に対する数値データ、一定時間間隔毎の破壊確率Pf(図4(a)参照)、指定した時刻における複数の亀裂14の状態(図4(b1)−(b3)参照)及び時間軸に対する亀裂寸法の変化(図4(c)参照)を図表示する解析結果表示機能13を有している。
【0026】
このうち図4(b1)−(b3)において、運転時間tはt0<t1<t2となっており、図4(b1)は亀裂14が発生した様子を示し、図4(b2)は発生した亀裂14が進展した様子を示し、図4(b3)は進展した複数の亀裂14が合体した様子を示している。
【0027】
次に、本発明による破壊確率算出方法について述べる。
【0028】
亀裂の発生個数も確率変数と考えられるため、まずモンテカルロシミュレーション法を用いて予め表面に発生する亀裂の個数Nを決定する(亀裂個数決定工程21)(図1参照)。
【0029】
次に図1に示すように、亀裂によって測定対象である機器又は部材が破壊されるかを評価する全試行回数Mを指定する(試行回数指定工程22)。
【0030】
次に図1及び図3に示すように、決定配列機能9において、一試行毎に定められる各亀裂の発生位置(xi,yi,zi)、寸法・形状(a0i,c0i)及び方向d0i(i=1,2,…,N)を確率論を用いて決定し、配列する(決定配列工程23)。なお、この決定配列工程23については、後で説明する。
【0031】
次に図1及び図3に示すように、進展・合体解析機能10において、決定配列工程23の結果を受けて、1回の試行で、複数の亀裂に関する進展過程及び合体過程を確率論を用いて解析する(進展・合体解析工程24)。
【0032】
次に図1及び図3に示すように、破壊解析機能11において、進展・合体解析工程24の結果を受けて、測定対象である機器又は部材が破壊される破壊過程を確立論を用いて解析する(破壊解析工程25)。
【0033】
次に図1に示すように、破壊解析工程25の結果を受けて、測定対象である機器又は部材が破壊に至ったかどうかを評価する(破壊評価工程26)。
【0034】
なお図1に示すように、上述した決定配列工程23、進展・合体解析工程24、破壊解析工程25及び破壊評価工程26は予め指定した試行回数Mだけ繰り返される。
【0035】
最後に図1及び図3に示すように、破壊確率算出機能12において、破壊解析工程25の評価の結果を受けて、測定対象である機器又は部材が破壊されると評価された試行回数mFを全試行回数Mで除算して破壊確率Pfを算出する(破壊確率算出工程27)。すなわち、破壊確率Pfは、mF/Mと定義される。なお、測定対象である機器又は部材が破壊されないと評価された試行回数をmNFとすると、M=mF+mNFとなる。
【0036】
次に図2を用いて、上述した決定配列工程23について説明する。
【0037】
決定配列工程23においては、まず図2に示すように、各亀裂について発生時間t0i、発生位置(xi,yi,zi)、寸法・形状(a0i,c0i)及び方向d0i(i=1,2,…,N)をモンテカルロシミュレーション法により決定する(亀裂決定工程31)。
【0038】
次に亀裂決定工程31で決定されたN個の亀裂を、図2に示すように、発生時間t0i順に、発生位置(xi,yi,zi)、寸法・形状(a0i,c0i)及び方向d0i(i=1,2,…,N)を並べかえる(亀裂配列工程32)。
【0039】
このように、発生時間t0i順に、亀裂の発生位置(xi,yi,zi)、寸法・形状(a0i,c0i)及び方向d0i(i=1,2,…,N)を並びかえることによって、所定の時間までに発生し進展する亀裂と、発生していない亀裂とを区別できる。このため、時間とともに複数の亀裂が発生、進展、合体して行く過程を詳しく解析することができる。
【0040】
第2の実施の形態
次に図5により本発明の第2の実施の形態について説明する。図5に示す第2の実施の形態は、決定配列機能9で行われる決定配列工程23において、実際の亀裂17の表面に直交する主応力σ1方向から投影して得られる投影亀裂18の投影発生位置、投影寸法及び投影方向を、亀裂の発生位置(xi,yi,zi)、寸法・形状(a0i,c0i)及び方向d0i(i=1,2,…,N)として用いたものであり、他は図1乃至図4に示す第1の実施の形態と略同一である。
【0041】
図5に示す第2の実施の形態において、図1乃至図4に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0042】
決定配列機能9で行われる決定配列工程23において、実際の亀裂17の表面に直交する主応力σ1方向から投影して主応力σ1面19内に得られる投影亀裂18の投影発生位置、投影寸法及び投影方向(図5参照)を、亀裂の発生位置(xi,yi,zi)、寸法・形状(a0i,c0i)及び方向d0i(i=1,2,…,N)として用いる。
【0043】
このため、亀裂の発生過程、進展過程、合体過程及び破壊過程を解析する際に、モンテカルロシミュレーション法で用いられる変数を少なくすることができ、容易かつ迅速に解析することができる。
【0044】
第3の実施の形態
次に図6により本発明の第3の実施の形態について説明する。図6に示す第3の実施の形態は、決定配列機能9で行われる決定配列工程23において、実際の亀裂17の表面に直交する主応力σ1方向及び主応力σ2方向から投影して得られる2種類の投影亀裂18,20の投影発生位置、投影寸法及び投影方向を各々、亀裂の発生位置(xi,yi,zi)、寸法・形状(a0i,c0i)及び方向d0i(i=1,2,…,N)として用いたものである。また破壊確率算出機能12で行われる破壊確率算出工程27において、主応力σ1方向及び主応力σ2方向からの投影毎に求められた各投影発生位置、投影寸法及び投影方向に対応する破壊確率を各々算出し、算出された破壊確率のうち最大となるものを、破壊確率算出工程27における破壊確率Pfとして用いたものである。なお他の構成は、図5に示す第2の実施の形態と略同一である。
【0045】
図6に示す第3の実施の形態において、図5に示す第2の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0046】
破壊確率算出機能12で行われる破壊確率算出工程27において、主応力σ1方向及び主応力σ2方向からの投影毎に求められた各投影発生位置、投影寸法及び投影方向に対応する破壊確率のうち最大となるものを、破壊確率Pfとして用いることができる。このため、原子炉に用いられる機器又は部材が破壊されるかについて、最も高い破壊確率Pfを用いて評価することができるため、高い安全性を維持してこれらの機器や部材を用いることができる。
【0047】
第4の実施の形態
次に図7乃至図9により本発明の第4の実施の形態について説明する。図7に示す第4の実施の形態は、決定配列機能9で行われる決定配列工程23において、主応力σ1方向及び主応力σ2方向から投影して得られる投影亀裂18,20の投影発生位置を用いて実際の亀裂17の発生位置を算出し、当該実際の亀裂17の発生位置を亀裂の発生位置(xi,yi,zi)として用いたものであり、他は図5に示す第2の実施の形態と略同一である。
【0048】
図7乃至図9に示す第5の実施の形態において、図5に示す第2の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0049】
決定配列機能9で行われる決定配列工程23において、実際の亀裂17の発生位置を算出し、実際の亀裂17の発生位置を亀裂の発生位置(xi,yi,zi)として用いることができるため、より精度の高い破壊確率Pfを算出することができる。
【0050】
複数の亀裂の投影発生位置を用いて実際の亀裂17の発生位置を算出する方法としては、例えば、図8に示すように主応力σ1面19に投影して得られた投影亀裂18の発生位置(xi,yi,0)と、図9に示すように主応力σ2面21に投影して得られた投影亀裂20の発生位置(0,yi,zi)より、図7に示すように実際の亀裂17の発生位置を(xi,yi,zi)と算出することができる。
【0051】
なお図7に示すa0iはi番目の実際の亀裂17の深さを示し、a0i’はi番目の投影亀裂18の深さ、a0i”はi番目の投影亀裂20の深さを示している。またc0iはi番目の実際の亀裂17の半長を示し、c0i’はi番目の投影亀裂18の半長、c0i”はi番目の投影亀裂20の半長を示している。
【0052】
第5の実施の形態
次に本発明の第5の実施の形態について説明する。第5の実施の形態は、1回の試行で、全亀裂(N個)に対して、進展・合体解析機能10で行われる進展・合体解析工程24において進展過程及び合体過程を解析し、次に破壊解析工程25において破壊過程を解析し、次に破壊評価工程26において測定対象である機器又は部材が破壊されるかを評価したものであり、他は図1乃至図4に示す第1の実施の形態と略同一である。
【0053】
原子炉に用いられる機器や部材の健全性を評価する際には、一般的に、亀裂が最も長くなる期間末期に地震荷重などの過大荷重を作用させて評価される。このため、一回の試行で、全亀裂(N個)に対して、進展・合体解析工程24、破壊解析工程25及び破壊評価工程26をそれぞれ行うことによって、より精度の高い破壊確率Pfを算出することができる。
【0054】
第6の実施の形態
次に図10により本発明の第6の実施の形態について説明する。図10に示す第6の実施の形態は、n回目の試行で、0から所定の時間間隔ΔT×nまでの間に発生する亀裂について、進展・合体解析機能10で行われる進展・合体解析工程24において進展過程及び合体過程を解析し、次に破壊解析機能11で行われる破壊解析工程25において破壊過程を解析し、次に破壊評価工程26において測定対象である機器又は部材が破壊されるかを評価したものであり、他は図1乃至図4に示す第1の実施の形態と略同一である。
【0055】
図10に示す第6の実施の形態において、図1乃至図4に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0056】
本実施の形態によると、図10に示すように、1回目の試行では、0からΔTまでの間に発生する亀裂について、まず進展・合体解析工程24において進展過程及び合体過程が解析され、次に破壊解析工程25において破壊過程を解析され、次に破壊評価工程26において測定対象である機器又は部材が破壊されるかを評価され、次に破壊確率算出工程27において0からΔTまでの破壊確率Pfが算出される。2回目の試行では、0からΔT×2までの間に発生する亀裂について、上述したように、進展・合体解析工程24、破壊解析工程25、破壊評価工程26及び破壊確率算出工程27が順次繰り返される。そして、n回目の試行では、0から所定の時間間隔ΔT×nまでの間に発生する亀裂について、進展・合体解析工程24、破壊解析工程25、破壊評価工程26及び破壊確率算出工程27が順次行われ、予め定めて最終時刻tFに到達するまで繰り返し行われる。
【0057】
このように、時間経過に応じて測定対象である機器又は部材が破壊される確率の運転時間に対する変化を求めることができるため、時間経過に応じた破壊確率Pfの変化を得ることができる。このため、より実際の状況に近い破壊確率Pfを得ることができ、機器や部材の維持を確実に行うことができる。
【0058】
第7の実施の形態
【0059】
次に図11を用いて本発明の第7の実施の形態について説明する。第7の実施の形態は、進展・合体解析機能10で行われる進展・合体解析工程24において、進展過程及び合体過程のいずれの時間においても、全ての亀裂に対して同一の進展特性(第一材料特性)41及び残留応力及び運転荷重(第一負荷条件)43を用いたものであり、他は第5の実施の形態と略同一である。
【0060】
進展・合体解析機能10で行われる進展・合体解析工程24において、進展過程及び合体過程のいずれの時間においても、全ての亀裂に対して同一の進展特性(第一材料特性)41及び残留応力及び運転荷重(第一負荷条件)43を用いて破壊確率Pfを算出するため、試行毎にこれらの進展特性(第一材料特性)41及び残留応力及び運転荷重(第一負荷条件)43を決定する必要が無くなるため、破壊確率Pfを容易かつ迅速に算出することができる。
【0061】
次に、本実施の形態における各工程の流れについて図11を用いて説明する。
【0062】
まず図11に示すように、モンテカルロシミュレーション法により進展特性(第一材料特性)41と、残留応力及び運転荷重(第一負荷条件)43を決定する。
【0063】
次に図11に示すように、時刻tまでに亀裂が発生しているかを評価する。
【0064】
ここで亀裂が発生していない場合には、図11に示すように、発生している亀裂の合体過程を解析し、亀裂が合体するかどうかを判定し、その後亀裂の数及び寸法を更新する。
【0065】
一方、亀裂が発生している場合には、図11に示すように、亀裂の進展過程をモンテカルロシミュレーション法を用いて解析し、その後亀裂の寸法を更新する。
【0066】
ここで、一試行毎に増やされる亀裂数Niが全亀裂数Nに到達している場合には、図11に示すように、上述した亀裂が発生していない場合と同様に、発生している亀裂の合体過程を解析し、亀裂が合体するかどうかを判定し、その後亀裂の数及び寸法を更新する。
【0067】
一方、亀裂数Niが全亀裂数Nに到達していない場合には、図11に示すように、進展した亀裂によって新たな亀裂が発生しているかを評価し、それ以降は、亀裂の進展によって新たな亀裂が発生しないか、又は亀裂数Niが全亀裂数Nに到達するまで上述した工程を繰り返し行う。
【0068】
また図11に示すように、発生している亀裂の合体過程を解析し、亀裂が合体するかどうかを判定し、亀裂の数及び寸法を更新した後で、時刻tが予め定めた最終時刻tFに到達しているかを判断する。ここで、到達してなければ時刻tに所定の時間間隔ΔTを加えた時刻から再度上述した工程を繰り返し行う。一方、時刻tが予め指定した最終時刻tFに到達していれば、その時点で進展・合体解析工程24を終了し、破壊解析工程25に進む。
【0069】
変形例7−1
次に図12を用いて変形例7−1について説明する。変形例7―1は、進展・合体解析機能10で行われる進展・合体解析工程24において、時間間隔ΔT毎に行われる1回の試行の全工程において同一の残留応力及び運転荷重(第一負荷条件)43を用い、かつ同一の試行であっても、亀裂毎にモンテカルロシミュレーション法により決定される進展特性(第一材料特性)41を用いたものであり、他は第5の実施の形態と略同一である。
【0070】
材料が微視的レベルで不均一なこと、化学成分の分布が不均一なこと、非金属介在物の分布が不均一なことなどから、進展特性(第一材料特性)41はランダムな状態になっている。ここで上述のように、時間間隔ΔT毎に行われる1回の試行の全工程において同一の残留応力及び運転荷重(第一負荷条件)43を用いることによって、ランダムな進展特性(第一材料特性)41を適切に考慮することができ、より精度の高い破壊確率Pfを算出することができる。また一方で、同一の試行であっても、亀裂毎にモンテカルロシミュレーション法により決定される進展特性(第一材料特性)41を用いることによって、容易性と迅速性を維持することもできる。
【0071】
次に、本実施の形態における各工程の流れについて図12を用いて説明する。
【0072】
まず図12に示すように、モンテカルロシミュレーション法により残留応力及び運転荷重(第一負荷条件)43を決定する。
【0073】
次に図12に示すように、時刻tまでに亀裂が発生しているかを評価する。
【0074】
ここで亀裂が発生していない場合には、図12に示すように、発生している亀裂の合体過程を解析し、亀裂が合体するかどうかを判定し、その後亀裂の数及び寸法を更新する。
【0075】
一方、亀裂が発生している場合には、図12に示すように、モンテカルロシミュレーション法により進展特性(第一材料特性)41を決定する。
【0076】
次に図12に示すように、亀裂の進展過程をモンテカルロシミュレーション法を用いて解析し、その後亀裂の寸法を更新する。
【0077】
ここで、一試行毎に増やされる亀裂数Niが全亀裂数Nに到達している場合には、図12に示すように、上述した亀裂が発生していない場合と同様に、発生している亀裂の合体過程を解析し、亀裂が合体するかどうかを判定し、その後亀裂の数及び寸法を更新する。
【0078】
一方、亀裂数Niが全亀裂数Nに到達していない場合には、図12に示すように、進展した亀裂によって新たな亀裂が発生しているかを評価し、それ以降は、亀裂の進展によって新たな亀裂が発生しないか、又は亀裂数Niが全亀裂数Nに到達するまで上述した工程を繰り返し行う。
【0079】
また図12に示すように、発生している亀裂の合体過程を解析し、亀裂が合体するかどうかを判定し、亀裂の数及び寸法を更新した後で、時刻tが予め定めた最終時刻tFに到達しているかを判断する。ここで到達してなければ時刻tに所定の時間間隔ΔTを加えた時刻から再度上述した工程を繰り返し行う。一方、時刻tが予め指定した最終時刻tFに到達していれば、その時点で進展・合体解析工程24を終了し、破壊解析工程25に進む。
【0080】
変形例7−2
次に図13を用いて変形例7−2について説明する。変形例7−2は、進展・合体解析機能10で行われる進展・合体解析工程24において、時間間隔ΔT毎に行われる1回の試行の全工程において同一の進展特性(第一材料特性)41を用い、かつ同一の試行であっても、亀裂毎にモンテカルロシミュレーション法により決定される残留応力及び運転荷重(第一負荷条件)43を用いたものであり、他は第5の実施の形態と略同一である。
【0081】
一般的に、残留応力及び運転荷重は、亀裂の進展すなわち時間により変化する(なお、地震動も発生が予想される時期により生ずる荷重の大きさが異なっている)。ここで上述のように、時間間隔ΔT毎に行われる1回の試行の全工程において同一の進展特性(第一材料特性)41を用いることによって、時間によって変化する残留応力及び運転荷重(第一負荷条件)43を適切に考慮することができ、より精度の高い破壊確率Pfを算出することができる。一方、同一の試行であっても、亀裂毎にモンテカルロシミュレーション法により決定される残留応力及び運転荷重(第一負荷条件)43を用いることによって、容易性と迅速性を維持することもできる。
【0082】
次に、本実施の形態における各工程の流れについて図13を用いて説明する。
【0083】
まず図13に示すように、モンテカルロシミュレーション法により進展特性(第一材料特性)41を決定する。
【0084】
次に図13に示すように、時刻tまでに亀裂が発生しているかを評価する。
【0085】
ここで亀裂が発生していない場合には、図13に示すように、発生している亀裂の合体過程を解析し、亀裂が合体するかどうかを判定し、その後亀裂の数及び寸法を更新する。
【0086】
一方、亀裂が発生している場合には、図13に示すように、モンテカルロシミュレーション法により残留応力及び運転荷重(第一負荷条件)43を決定する。
【0087】
次に図13に示すように、亀裂の進展過程をモンテカルロシミュレーション法を用いて解析し、その後亀裂の寸法を更新する。
【0088】
ここで、一試行毎に増やされる亀裂数Niが全亀裂数Nに到達している場合には、図13に示すように、上述した亀裂が発生していない場合と同様に、発生している亀裂の合体過程を解析し、亀裂が合体するかどうかを判定し、その後亀裂の数及び寸法を更新する。
【0089】
一方、亀裂数Niが全亀裂数Nに到達していない場合には、図13に示すように、進展した亀裂によって新たな亀裂が発生しているかを評価し、それ以降は、亀裂の進展によって新たな亀裂が発生しないか、又は亀裂数Niが全亀裂数Nに到達するまで上述した工程を繰り返し行う。
【0090】
また図13に示すように、発生している亀裂の合体過程を解析し、亀裂が合体するかどうかを判定し、亀裂の数及び寸法を更新した後で、時刻tが予め定めた最終時刻tFに到達しているかを判断する。ここで到達してなければ時刻tに所定の時間間隔ΔTを加えた時刻から再度上述した工程を繰り返し行う。一方、時刻tが予め指定した最終時刻tFに到達していれば、その時点で進展・合体解析工程24を終了し、破壊解析工程25に進む。
【0091】
変形例7−3
次に図14を用いて変形例7−3について説明する。変形例7−3は、進展・合体解析機能10で行われる進展・合体解析工程24において、時間間隔ΔT毎に行われる1回の試行であっても、亀裂毎にモンテカルロシミュレーション法により決定される進展特性(第一材料特性)41と、残留応力及び運転荷重(第一負荷条件)43とを用いたものであり、他は第5の実施の形態と略同一である。
【0092】
材料が微視的レベルで不均一なこと、化学成分の分布が不均一なこと、非金属介在物の分布が不均一なことなどから、進展特性(第一材料特性)41はランダムな状態になっている。また、残留応力及び運転荷重は、亀裂の進展すなわち時間により変化している。ここで上述のように、時間間隔ΔT毎に行われる1回の試行であっても、亀裂毎にモンテカルロシミュレーション法により決定される進展特性(第一材料特性)41と、残留応力及び運転荷重(第一負荷条件)43とを用いることによって、ランダムな進展特性(第一材料特性)41と、時間によって変化する残留応力及び運転荷重(第一負荷条件)43とを適切に考慮することができ、より精度の高い破壊確率Pfを算出することができる。
【0093】
次に、本実施の形態における各工程の流れについて図14を用いて説明する。
【0094】
まず図14に示すように、時刻tまでに亀裂が発生しているかを評価する。
【0095】
ここで亀裂が発生していない場合には、図14に示すように、発生している亀裂の合体過程を解析し、亀裂が合体するかどうかを判定し、その後亀裂の数及び寸法を更新する。
【0096】
一方、亀裂が発生している場合には、図14に示すように、モンテカルロシミュレーション法により進展特性(第一材料特性)41と、残留応力及び運転荷重(第一負荷条件)43とを決定する。
【0097】
次に図14に示すように、亀裂の進展過程をモンテカルロシミュレーション法を用いて解析し、その後亀裂の寸法を更新する。
【0098】
ここで、一試行毎に増やされる亀裂数Niが全亀裂数Nに到達している場合には、図14に示すように、上述した亀裂が発生していない場合と同様に、発生している亀裂の合体過程を解析し、亀裂が合体するかどうかを判定し、その後亀裂の数及び寸法を更新する。
【0099】
一方、亀裂数Niが全亀裂数Nに到達していない場合には、図14に示すように、進展した亀裂によって新たな亀裂が発生しているかを評価し、それ以降は、亀裂の進展によって新たな亀裂が発生しないか、又は亀裂数Niが全亀裂数Nに到達するまで上述した工程を繰り返し行う。
【0100】
また図14に示すように、発生している亀裂の合体過程を解析し、亀裂が合体するかどうかを判定し、亀裂の数及び寸法を更新した後で、時刻tが予め定めた最終時刻tFに到達しているかを判断する。ここで到達してなければ時刻tに所定の時間間隔ΔTを加えた時刻から再度上述した工程を繰り返し行う。一方、時刻tが予め指定した最終時刻tFに到達していれば、その時点で進展・合体解析工程24を終了し、破壊解析工程25に進む。
【0101】
なお上述した実施の形態では、決定配列工程23の後、進展・合体解析工程24において、一回の試行で終了時間tFまで解析した後、破壊解析工程25及び破壊評価工程26を行い、破壊確率Pfを求める態様を示したが、これに限らず、決定配列工程23、進展・合体解析工程24、破壊解析工程25及び破壊評価工程26を行い、破壊確率Pfを求めた後で、時間間隔ΔTだけ変化させて再度決定配列工程23から繰り返して処理するフローであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明による破壊確率算出方法の第1及び第5の実施の形態を示すフロー図。
【図2】破壊確率算出方法の第1の実施の形態の破壊確率算出方法における決定配列工程を示すフロー図。
【図3】本発明による破壊確率算出方法を実行する計算システムを示す概略図。
【図4】(a)から(c)は本発明による破壊確率算出方法を実行する計算システムの一機能を説明するための概略図。
【図5】本発明による破壊確率算出方法の第2の実施の形態を説明するための概略図。
【図6】本発明による破壊確率算出方法の第3の実施の形態を説明するための概略図。
【図7】本発明による破壊確率算出方法の第4の実施の形態を説明するための概略図。
【図8】本発明による破壊確率算出方法の第4の実施の形態において亀裂を主応力σ1方向から投影した状態を示す概略図。
【図9】本発明による破壊確率算出方法の第4の実施の形態において亀裂を主応力σ1方向及び主応力σ2方向から投影した状態を示す概略図。
【図10】本発明による破壊確率算出方法の第6の実施の形態を示すフロー図。
【図11】本発明による破壊確率算出方法の第7の実施の形態における進展・合体解析工程を示したフロー図。
【図12】本発明による破壊確率算出方法の変形例7−1における進展・合体解析工程を示したフロー図。
【図13】本発明による破壊確率算出方法の変形例7−2における進展・合体解析工程を示したフロー図。
【図14】本発明による破壊確率算出方法の変形例7−3における進展・合体解析工程を示したフロー図。
【符号の説明】
【0103】
14 亀裂
21 亀裂個数決定工程
22 試行回数指定工程
23 決定配列工程
24 進展・合体解析工程
25 破壊解析工程
26 破壊評価工程
27 破壊確率算出工程
31 亀裂決定工程
32 亀裂配列工程
41 第一材料特性
42 第二材料特性
43 第一負荷条件
44 第二負荷条件
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器又は部材が破壊される確率を算出する破壊確率算出方法において、
モンテカルロシミュレーション法を用いて予め表面に発生する亀裂の個数Nを決定する亀裂個数決定工程と、
亀裂によって測定対象である機器又は部材が破壊されるかを評価する全試行回数Mを指定する試行回数指定工程と、
試行毎に定められる各亀裂の発生位置(xi,yi,zi)、寸法・形状(a0i,c0i)及び方向d0i(i=1,2,…,N)を決定し配列する決定配列工程と、
決定配列工程の結果を受けて、1回の試行で、任意の複数の亀裂に関する進展過程及び合体過程を確率論を用いて解析する進展・合体解析工程と、
進展・合体解析工程の結果を受けて、測定対象である機器又は部材が破壊される破壊過程を確率論を用いて解析する破壊解析工程とを備え、
決定配列工程、進展・合体解析工程及び破壊解析工程は全試行回数Mだけ繰り返され、
破壊確率算出工程において、破壊解析工程の評価の結果、測定対象である機器又は部材が破壊されると評価された試行回数mFを全試行回数Mで除算して破壊確率Pfを算出し、
決定配列工程は、
各亀裂について発生時間t0i、発生位置(xi,yi,zi)、寸法・形状(a0i,c0i)及び方向d0i(i=1,2,…,N)をモンテカルロシミュレーション法により決定する亀裂決定工程と、
亀裂決定工程で決定されたN個の亀裂を、発生時間t0i順に、発生位置(xi,yi,zi)、寸法・形状(a0i,c0i)及び方向d0i(i=1,2,…,N)を並べかえる亀裂配列工程とを有することを特徴とする破壊確率算出方法。
【請求項2】
前記決定配列工程において、実際の亀裂の表面に直交する主応力方向から投影して得られる亀裂の投影発生位置、投影寸法及び投影方向を、亀裂の発生位置(xi,yi,zi)、寸法・形状(a0i,c0i)及び方向d0i(i=1,2,…,N)として用いること特徴とする請求項1記載の破壊確率算出方法。
【請求項3】
前記決定配列工程において、実際の亀裂の表面に直交する複数の主応力方向から投影して得られる複数の亀裂の投影発生位置、投影寸法及び投影方向を各々、亀裂の発生位置(xi,yi,zi)、寸法・形状(a0i,c0i)及び方向d0i(i=1,2,…,N)として用い、
前記破壊確率算出工程において、複数の主応力方向からの投影毎に求められた各投影発生位置、投影寸法及び投影方向に対応する破壊確率を各々算出し、算出された破壊確率のうち最大となるものを、破壊確率算出工程における破壊確率Pfとして用いることを特徴とする請求項2記載の破壊確率算出方法。
【請求項4】
前記決定配列工程において、複数の亀裂の投影発生位置を用いて実際の亀裂の発生位置を算出し、亀裂の発生位置(xi,yi,zi)として用いることを特徴とする請求項3記載の破壊確率算出方法。
【請求項5】
1回の試行で、全亀裂に対して、前記進展・合体解析工程において進展過程及び合体過程が解析され、かつ前記破壊解析工程において破壊過程が解析されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の破壊確率算出方法。
【請求項6】
n回目の試行で、0から所定の時間間隔ΔT×nまでの間に発生する亀裂について、前記進展・合体解析工程において進展過程及び合体過程が解析され、かつ前記破壊解析工程において破壊過程が解析されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の破壊確率算出方法。
【請求項7】
前記進展・合体解析工程において、亀裂の進展過程及び合体過程は第一材料特性及び第一負荷条件を用いて解析され、
当該第一材料特性及び第一負荷条件は、前記進展・合体解析工程において解析される進展過程及び合体過程のいずれの時間においても、全ての亀裂に対して同一であることを特徴とする請求項5又は6のいずれか1項に記載の破壊確率算出方法。
【請求項8】
前記進展・合体解析工程において、亀裂の進展過程及び合体過程は第一材料特性及び第一負荷条件を用いて解析され、
この第一負荷条件は、時間間隔ΔT毎に行われる1回の試行の全工程において同一であるが、
前記第一材料特性は、同一の試行であっても、亀裂毎にモンテカルロシミュレーション法により決定されることを特徴とする請求項5又は6のいずれか1項に記載の破壊確率算出方法。
【請求項9】
前記進展・合体解析工程において、亀裂の進展過程及び合体過程は第一材料特性及び第一負荷条件を用いて解析され、
この第一材料特性は、時間間隔ΔT毎に行われる1回の試行の全工程において同一であるが、
前記第一負荷条件は、同一の試行であっても、亀裂毎にモンテカルロシミュレーション法により決定されることを特徴とする請求項5又は6のいずれか1項に記載の破壊確率算出方法。
【請求項10】
前記進展・合体解析工程において、亀裂の進展過程及び合体過程は第一材料特性及び第一負荷条件を用いて解析され、
この第一材料特性及び第一負荷条件は、時間間隔ΔT毎に行われる1回の試行であっても、亀裂毎にモンテカルロシミュレーション法により決定されることを特徴とする請求項5又は6のいずれか1項に記載の破壊確率算出方法。
【請求項1】
機器又は部材が破壊される確率を算出する破壊確率算出方法において、
モンテカルロシミュレーション法を用いて予め表面に発生する亀裂の個数Nを決定する亀裂個数決定工程と、
亀裂によって測定対象である機器又は部材が破壊されるかを評価する全試行回数Mを指定する試行回数指定工程と、
試行毎に定められる各亀裂の発生位置(xi,yi,zi)、寸法・形状(a0i,c0i)及び方向d0i(i=1,2,…,N)を決定し配列する決定配列工程と、
決定配列工程の結果を受けて、1回の試行で、任意の複数の亀裂に関する進展過程及び合体過程を確率論を用いて解析する進展・合体解析工程と、
進展・合体解析工程の結果を受けて、測定対象である機器又は部材が破壊される破壊過程を確率論を用いて解析する破壊解析工程とを備え、
決定配列工程、進展・合体解析工程及び破壊解析工程は全試行回数Mだけ繰り返され、
破壊確率算出工程において、破壊解析工程の評価の結果、測定対象である機器又は部材が破壊されると評価された試行回数mFを全試行回数Mで除算して破壊確率Pfを算出し、
決定配列工程は、
各亀裂について発生時間t0i、発生位置(xi,yi,zi)、寸法・形状(a0i,c0i)及び方向d0i(i=1,2,…,N)をモンテカルロシミュレーション法により決定する亀裂決定工程と、
亀裂決定工程で決定されたN個の亀裂を、発生時間t0i順に、発生位置(xi,yi,zi)、寸法・形状(a0i,c0i)及び方向d0i(i=1,2,…,N)を並べかえる亀裂配列工程とを有することを特徴とする破壊確率算出方法。
【請求項2】
前記決定配列工程において、実際の亀裂の表面に直交する主応力方向から投影して得られる亀裂の投影発生位置、投影寸法及び投影方向を、亀裂の発生位置(xi,yi,zi)、寸法・形状(a0i,c0i)及び方向d0i(i=1,2,…,N)として用いること特徴とする請求項1記載の破壊確率算出方法。
【請求項3】
前記決定配列工程において、実際の亀裂の表面に直交する複数の主応力方向から投影して得られる複数の亀裂の投影発生位置、投影寸法及び投影方向を各々、亀裂の発生位置(xi,yi,zi)、寸法・形状(a0i,c0i)及び方向d0i(i=1,2,…,N)として用い、
前記破壊確率算出工程において、複数の主応力方向からの投影毎に求められた各投影発生位置、投影寸法及び投影方向に対応する破壊確率を各々算出し、算出された破壊確率のうち最大となるものを、破壊確率算出工程における破壊確率Pfとして用いることを特徴とする請求項2記載の破壊確率算出方法。
【請求項4】
前記決定配列工程において、複数の亀裂の投影発生位置を用いて実際の亀裂の発生位置を算出し、亀裂の発生位置(xi,yi,zi)として用いることを特徴とする請求項3記載の破壊確率算出方法。
【請求項5】
1回の試行で、全亀裂に対して、前記進展・合体解析工程において進展過程及び合体過程が解析され、かつ前記破壊解析工程において破壊過程が解析されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の破壊確率算出方法。
【請求項6】
n回目の試行で、0から所定の時間間隔ΔT×nまでの間に発生する亀裂について、前記進展・合体解析工程において進展過程及び合体過程が解析され、かつ前記破壊解析工程において破壊過程が解析されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の破壊確率算出方法。
【請求項7】
前記進展・合体解析工程において、亀裂の進展過程及び合体過程は第一材料特性及び第一負荷条件を用いて解析され、
当該第一材料特性及び第一負荷条件は、前記進展・合体解析工程において解析される進展過程及び合体過程のいずれの時間においても、全ての亀裂に対して同一であることを特徴とする請求項5又は6のいずれか1項に記載の破壊確率算出方法。
【請求項8】
前記進展・合体解析工程において、亀裂の進展過程及び合体過程は第一材料特性及び第一負荷条件を用いて解析され、
この第一負荷条件は、時間間隔ΔT毎に行われる1回の試行の全工程において同一であるが、
前記第一材料特性は、同一の試行であっても、亀裂毎にモンテカルロシミュレーション法により決定されることを特徴とする請求項5又は6のいずれか1項に記載の破壊確率算出方法。
【請求項9】
前記進展・合体解析工程において、亀裂の進展過程及び合体過程は第一材料特性及び第一負荷条件を用いて解析され、
この第一材料特性は、時間間隔ΔT毎に行われる1回の試行の全工程において同一であるが、
前記第一負荷条件は、同一の試行であっても、亀裂毎にモンテカルロシミュレーション法により決定されることを特徴とする請求項5又は6のいずれか1項に記載の破壊確率算出方法。
【請求項10】
前記進展・合体解析工程において、亀裂の進展過程及び合体過程は第一材料特性及び第一負荷条件を用いて解析され、
この第一材料特性及び第一負荷条件は、時間間隔ΔT毎に行われる1回の試行であっても、亀裂毎にモンテカルロシミュレーション法により決定されることを特徴とする請求項5又は6のいずれか1項に記載の破壊確率算出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−198838(P2007−198838A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−16300(P2006−16300)
【出願日】平成18年1月25日(2006.1.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月25日(2006.1.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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