説明

破砕装置

【課題】被破砕物を効率的かつ確実に破砕することができる破砕装置を提供することである。
【解決手段】上記した目的を達成するため、本発明の課題解決手段は、表側に刃4a,5aを備えた複数のプレート4,5を表側を外周側に向けて環帯状に連結して形成される一対のカッタベルト2,3と、各カッタベルト2,3を回転駆動する駆動手段とを備え、これらカッタベルト2,3に直線部2a,3aを設けるとともにこれらカッタベルト2,3を各々の直線部2a,3aを正対させて配置し、直線部2a,3a間に投入される被破砕物を破砕する破砕装置において、一方のカッタベルト2と他方のカッタベルト3のいずれか一方または両方に直線部2a,3aにおける部長さを変更する変更手段を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、破砕装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、破砕装置は、たとえば、回転軸と、外周に刃を備えて回転軸の外周に多数装着されるカッタリングとを備えた一対のローラ状のカッタを備え、これらカッタを僅かに隙間を設けて回転軸が平行となるように対向させて構成され、カッタ間に投入された被破砕物をカッタの回転によってカッタ間に引き込みつつ破砕するようになっている(たとえば、特許文献1、2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−11370号公報
【特許文献2】特開2002−11371号公報
【特許文献3】特開2002−273253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような破砕装置では、カッタがローラ状であるため、カッタ間に引き込まれた被破砕物が短時間しかカッタ間に滞留せず、充分に被破砕物を破砕することができない場合があった。そのため、被破砕物が所望の粒度になるまで、何度も破砕装置へ投入しなければならない場合があった。
【0005】
また、被破砕物の物性や破砕後に得たい粒度に応じて被破砕物のカッタ間に滞留する滞留時間を調節したい場合もあるが、従来の破砕装置ではカッタの回転速度の調節することによって当該滞留時間の調節を行うしかなく、滞留時間を長くしたい場合には、カッタの回転速度を遅くする必要があり、破砕効率が著しく悪化するという問題もあった。
【0006】
そこで、本発明は上記した点を改善するために創案されたものであって、その目的とするところは、被破砕物を効率的かつ確実に破砕することができる破砕装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するため、本発明の課題解決手段は、表側に刃を備えた複数のプレートを表側を外周側に向けて環帯状に連結して形成される一対のカッタベルトと、各カッタベルトを回転駆動する駆動手段とを備え、これらカッタベルトに直線部を設けるとともにこれらカッタベルトを各々の直線部を正対させて配置し、当該直線部間に投入される被破砕物を破砕する破砕装置において、一方のカッタベルトと他方のカッタベルトのいずれか一方または両方に直線部における直線部長さを変更する変更手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の破砕装置によれば、駆動輪を回転させることによって、カッタベルトが回転駆動され、被破砕物をカッタベルト間に投入すると、カッタベルトの回転によって、被破砕物を直線部間の隙間へ引き込みつつ、刃で破砕することができる。
【0009】
そして、変更手段によって、カッタベルトのうち被破砕物を破砕する範囲である直線部の全長である直線部長さを変更することができるので、被破砕物における物性、破砕後の被破砕物の粒度に応じて、直線部長さを最適に設定でき、被破砕物を破砕し損じなく確実に望む粒度に破砕することができ、再度の被破砕物の破砕装置への投入といった作業を無くすことができる。
【0010】
さらに、被破砕物が直線部間に投入されてから排出されるまでの滞留時間を長く設定したい場合にあっても、直線部長さを長く設定することで、カッタベルトの回転数を著しく低下させずとも従来のローラ状のカッタに比較して飛躍的に滞留時間を長くすることができ、破砕効率の著しい低下を招くことがない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態における破砕装置の正面視断面図である。
【図2】本発明の一実施の形態における破砕装置の側面視断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態における破砕装置のプレートの拡大斜視図である。
【図4】本発明の一実施の形態の破砕装置のカッタベルトの直線部における直線部長さの変更手順について説明する図である。
【図5】本発明の一実施の形態の一変形例における破砕装置の正面視概略図である。
【図6】本発明の一実施の形態の破砕装置のカッタベルトの一バリエーションを説明する側面図である。
【図7】本発明の一実施の形態の破砕装置のカッタベルトの一バリエーションを説明する一部拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図に示した一実施の形態に基づいて本発明の粉砕装置について説明する。一実施の形態における破砕装置1は、基本的には、図1および図2に示すように、表側に刃4a,5aを備えた複数のプレート4,5を表側を外周側に向けて環帯状に連結して形成される一対のカッタベルト2,3と、各カッタベルト2,3を回転駆動する駆動手段と、各カッタベルト2,3に設けられて互いに正対する直線部2a,3aの双方における直線部2a,3aにおける直線部長さを変更する変更手段とを備え、各カッタベルト2,3を互いの直線部2a,3a同士が対向するように配置して構成されている。
【0013】
そして、この破砕装置1は、カッタベルト2,3間に投入された被破砕物をカッタベルト2,3の回転によって直線部2a,3a間に引き込んで破砕するようになっている。
【0014】
以下、各部について詳細に説明すると、カッタベルト2(3)は、複数のプレート4(5)を環帯状にヒンジ結合して形成されている。プレート4(5)は、表側に多数の刃4a(5a)を備えていて、これら刃4a(5a)を備えた表側がカッタベルト2(3)の外周となるように連結されている。なお、この破砕装置1の場合、被破砕物を細かく破砕することが可能なように、プレート4(5)に設けられる刃4a(5a)の刃丈やピッチ(回転方向幅)を細かくしてあるが、破砕後の被破砕物の大きさに応じてこれらは任意に設定することができる。また、この場合、刃4a(5a)は、回転方向に対して直交する方向に間欠的に設けてあるが、連続して設けるようにしてもよく、刃幅および刃間隔についても破砕後に得たい被破砕物の大きさに応じて任意に設定することができる。
【0015】
また、カッタベルト2(3)の内周側を向くプレート4(5)の裏側には、溝4b(5b)が設けてあって、この溝4b,5bとなるには、後述する駆動輪6(7)の外周に設けた歯6a(7a)が歯合し、また、カッタベルト2(3)の内周には従動輪10(11)が設けられていて、カッタベルト2(3)がこれら駆動輪6(7)と従動輪10(11)に巻回されていて、駆動輪6(7)を回転駆動することでカッタベルト2(3)を回転駆動することができるようになっている。
【0016】
さらに、図3に示すように、プレート4(5)の一方の回転方向側端には、図示するところでは、凸部4c(5c)が七個設けられており、他方の回転方向側端には凹部4d(5d)が七個設けられている。凸部4c(5c)および凹部4d(5d)の設置数は、図示したところに限られず任意に設定することができる。
【0017】
この凸部4c(5c)には、回転方向に直交する方向に孔4e(5e)が設けられ、凹部4d(5d)が形成されるプレート4,5の他方の回転方向側端の側方から回転方向に直交するように孔4f(5f)が設けられている。
【0018】
そして、プレート4,4(5,5)同士を連結するには、プレート4(5)の凸部4c(5c)を隣のプレート4(5)の凹部4d(5d)内に挿入し、孔4e,4f(5e,5f)にピン8(9)を挿通することによってなされ、各プレート4(5)が互いにヒンジ結合されて環帯状に連結され1つのカッタベルト2(3)が形成される。なお、プレート4(5)の交換に便利なように、ピン8(9)は、取外し可能とされていて、ピン8(9)を取外すことで、カッタベルト2(3)をプレート4に分解することができるようになっている。
【0019】
このように、交換対象となるプレート4,5のみをカッタベルト2,3から取外して新しい物と交換すればよく、また、その交換に当たって、カッタベルト2,3の全部を駆動輪6,7および従動輪10,11から取外してハウジング15内から取り出す必要も無いので、その交換作業も容易となり、交換作業時間と労力をも軽減することができる。
【0020】
また、一のプレート4(5)の一方の回転方向側端の端面4g(5g)、すなわち、凸部4c(5c)の端面を含めてこのプレート4における隣のプレート4(5)(以下、「隣接プレート」という)と対向する端面と、当該隣接プレート4(5)の他方の回転方向側端の端面4h(5h)、すなわち、凹部4d(5d)の端面を含めて隣接プレート4(5)における一のプレート4(5)と対向する端面は、これらプレート4,4(5,5)が表面同士が面一となる位置関係となると当接して、プレート4,4(5,5)がカッタベルト2(3)の内周側への撓みを規制するようになっている。端面4g,4h(5h,5g)の形状は、端面4g,4h(5h,5g)の全体同士が密着する形状であってもよいし、部分的に当接する形状であってもよい。
【0021】
つまり、カッタベルト2(3)は、隣り合うプレート4,4(5,5)の表面同士が面一となる直線部2a(3a)の部位においては、各プレート4,4(5,5)がピン8(9)によるヒンジ結合部にてカッタベルト2(3)の内周側へ折れず、カッタベルト2(3)における直線部2a(3a)が内周側に撓んでしまうことが無いようになっている。
【0022】
なお、上述したところでは、各プレート4(5)が、凸部4c(5c)と、凸部4c(5c)が挿入される凹部4d(5d)とを備えて、端部に設けた孔4e,4f(5e,5f)内に挿入されるピン8(9)にて連結される、いわゆる入子式にヒンジ結合されるようになっているが、凸部と凹部を備えずにプレート4(5)をたとえば表側から見て矩形としておき、各プレート4(5)の回転方向の両端部の右側部と左側部に突出するピンを設けておいて、プレート4(5)の一方の回転方向端のピンと隣接プレート4(5)の他方の回転方向端のピンを保持する保持部材でプレート4(5)と隣接プレート4(5)とをヒンジ結合して連結せしめてもよい。ここで、保持部材がピンを回転自在に保持してもよいし、ピンがプレート4(5)に回転自在に取付けられていてもよい。なお、この場合には、保持部材が取外し可能とされていると、カッタベルト2(3)をプレート4(5)に分解することができ、プレート4(5)の交換に便利である。
【0023】
また、直線部2a(3a)においては、プレート4(5)とこれに隣接する隣接プレート4(5)との間に隙間が生じないようにしておくことで、破砕された被破砕物や、細かい被破砕物が上記隙間を介してカッタベルト2(3)の内周側へ入り込んでしまうことを抑制できる。
【0024】
このように構成されたカッタベルト2(3)は、内部が中空な箱型のハウジング15内に収容されており、このハウジング15に回転自在に装着される駆動輪6(7)と従動輪10(11)に巻回されて、駆動輪6(7)を回転させることによって、回転駆動されるようになっている。
【0025】
なお、ハウジング15は、この場合、上方と下方に開口部15a,15bが設けられていて、上方の開口部15aには被破砕物をスムーズに内部へ投入可能なようにホッパ15cを備えている。そして、ホッパ15c内に投入される被破砕物は、当該ホッパ15cによってカッタベルト2,3間に導かれ、カッタベルト2,3によって破砕された後は、ハウジング15の下方の開口部15bから排出されるようになっている。なお、ハウジング15の形状は、上記に限られるものではなく、被破砕物に適するように設計することができる。
【0026】
駆動輪6(7)は、具体的には、外周に放射状に設けた複数の歯6a(7a)を備えてハウジング15に回転自在に装着されており、当該歯6a(7a)がプレート4(5)に設けた溝4b(5b)に入り込んで、歯車の要領でカッタベルト2(3)に動力伝達することができるようになっている。なお、歯6a(7a)と溝4b(5b)の形状は、互いに噛むことが可能であればよいが、インボリュート歯車に使用される歯形に準じるものとするとよい。また、溝4b(5b)は、図示するように、プレート4(5)の側部から側部へ横幅一杯に設けてもよいが、駆動輪6(7)の歯6a(7a)に符合する位置のみに設けるようにしてもよい。
【0027】
他方の従動輪10(11)は、具体的には、ハウジング15に対して取付位置を変更可能な保持部材22(23)に回転自在に装着されており、外周に放射状に設けた複数の歯10a(11a)を備え、当該歯10a(11a)がプレート4(5)に設けた溝4b(5b)に入り込むようになっていて、駆動輪6(7)と協働してカッタベルト2(3)に適度な張力を負荷している。なお、従動輪10(11)にもプレート4(5)に設けた溝4b(5b)に入り込む歯10a(11a)を設けているが、これを設けなくともよい。
【0028】
そして、駆動輪6,7は、駆動源としてのモータ12に減速機16を介して接続されており、モータ12を正方向に回転させると、カッタベルト2を図1中時計回りに、カッタベルト3を図1中反時計回りに回転駆動させることができるようになっていて、反対にモータ12を逆方向に回転させると、カッタベルト2を図1中反時計回りに、カッタベルト3を図1中時計回りに回転駆動させることができるようになっている。また、この実施の形態の破砕装置1にあっては、減速機16によってカッタベルト2,3の回転速度に差が生じるようにしている。すなわち、駆動手段は、この実施の形態の場合、駆動輪6(7)、従動輪10(11)、モータ12および減速機16で構成されている。
【0029】
なお、モータ12の回転速度を減速しなくともよい場合、減速機16を省略することもでき、その場合、モータ12のみで二つの駆動輪6,7を駆動する場合には、歯車機構を設けて上記のような動作を実現するようにしてもよいし、また、モータを二つ設けて独立して駆動輪6,7を駆動するようにしてもよい。さらに、駆動源は、駆動輪6,7を駆動することができればよいので、上記のように回転電機であるモータ12以外の駆動源を採用することが可能であって、たとえば、液圧によって駆動する油圧モータとされもよいし、内燃機関を用いてもよい。
【0030】
そして、駆動輪6(7)と従動輪10(11)は、協働してカッタベルト2(3)に相手方のカッタベルト3(2)に対向する対向部2b(3b)を形成しており、これら駆動輪6(7)と従動輪10(11)は対向部形成輪として機能している。すなわち、カッタベルト2,3は、互いに対向部2b,3bを相手方のカッタベルト2,3に向かい合わせにしている。
【0031】
また、これら対向部形成輪としての駆動輪6(7)と従動輪10(11)との間には、カッタベルト2(3)の内周側に配置されて駆動輪6(7)と協働して対向部2b(3b)の範囲内に直線部2a(3a)を形成する調節輪20(21)が設けられている。この直線部2a,3aは、互いに正対していて、直線部2a,3a同士が正対している範囲にあっては同じ幅の隙間Wを介して正対するようになっている。直線部2a,3aが正対している範囲内の隙間Wの幅寸法、つまり、刃4aの刃先と刃5aの刃先との間の距離は、被破砕物の破砕後の大きさに応じて決定される。また、直線部2a,3aでは、プレート4(5)と隣接プレート4(5)の端面が当接してカッタベルト2(3)の内周側への撓みが規制されるので、直線部2a,3a間の隙間Wに被破砕物が投入されるとカッタベルト2(3)が撓むことなく被破砕物を破砕することができるようになっている。
【0032】
上記調節輪20(21)は、直線部2a(3a)に沿う方向となる図1中上下方向へ移動可能とされていて、駆動輪6(7)の近傍から従動輪10(11)の近傍まで移動することができるようになっており、カッタベルト2(3)の調節輪20(21)と駆動輪6(7)に巻回される区間に直線部2a(3a)が形成されている。そして、駆動輪6(7)の鉛直線上に従動輪10(11)が無い場合、調節輪20(21)を図1中上下方向へ移動させることによって、当該直線部2a(3a)が形成される区間における長さとなる直線部長さを調節できることになる。
【0033】
このように、調節輪20(21)を直線部2a(3a)に沿う方向へ移動させて直線部2a(3a)の直線部長さを変更しても、プレート4(5)の数を変更しない限りカッタベルト2(3)の長さは変わらないので、従動輪10(11)のハウジング15に対する取付位置を変更しないと、カッタベルト2(3)の長さが足りずに駆動輪6(7)、調節輪20(21)および従動輪10(11)に巻回することができないか、カッタベルト2(3)の長さが長すぎてカッタベルト2(3)に弛みができてしまいうまく回転駆動できない場合がある。
【0034】
そのため、従動輪10(11)は、上述したように、ハウジング15に対して取付位置を変更可能とされており、具体的には、保持部材22(23)に回転自在に装着されていて、調節輪20(21)で直線部2a(3a)における直線部長さを調節した際に、従動輪10(11)のハウジング15に対する取付位置を変更して、カッタベルト2(3)に弛みが生じないようにしている。
【0035】
そして、たとえば、図4に示すように、調節輪20(21)を破線の位置から実線の位置へ変更する場合、従動輪10(11)の取付位置を破線の位置から実線に示す位置へ変更するようにして、カッタベルト2(3)の長さを変更せずともカッタベルト2(3)に弛みが生じないようにしている。
【0036】
すなわち、この実施の形態における破砕装置1にあっては、変更手段は、調節輪20(21)と、従動輪10(11)を回転自在に保持するとともにハウジング15に対して取付位置を変更可能な保持部材22(23)とで構成されている。
【0037】
なお、この実施の形態の場合、駆動輪6(7)、従動輪10(11)および調節輪20(21)がカッタベルト2(3)の対向部2b(3b)を直線部2a(3a)と面一するように配置される場合、対向部2b(3b)の全部を直線部2a(3a)として使用でき、直線部2a(3a)の全長である直線部長さにおける最大長を対向部2b(3b)の長さにまで設定することができる。
【0038】
保持部材22(23)は、従動輪10(11)を回転自在に支持しており、従動輪10(11)を駆動輪6(7)の鉛直線上に配置される位置から相手方のカッタベルト3(2)から離間する位置へ位置変更可能なようにハウジング15に固定される。なお、従動輪10(11)の両端に保持部材22(23)を設けて従動輪10(11)の両端を支持するようにしてもよい。また、調節輪20(21)と駆動輪6(7)についても両端をハウジング15に支持させるようにしてもよい。
【0039】
なお、直線部2a(3a)における直線部長さをある長さに設定する場合、調節輪20(21)の位置が決まり、調節輪20(21)の位置が決まると従動輪10(11)のハウジング15に対する取付位置は、カッタベルト2(3)の長さを変更しない場合、駆動輪6(7)と調節輪20(21)を焦点とした楕円の軌跡上に配置することができ、予め、調節輪20(21)の採り得る位置に対応して従動輪10(11)のハウジング15に対する取付位置を決めておくとよい。そして、調節輪20(21)の位置を駆動輪6(7)から遠ざかる方向へ変更する場合、従動輪10(11)の位置変更を調節輪20(21)の位置変更に先んじて行い、反対に、調節輪20(21)の位置を駆動輪6(7)へ接近する方向へ変更する場合、調節輪20(21)の位置変更を従動輪10(11)の位置変更に先んじて行うことで、カッタベルト2(3)の分解を行わずして直線部長さを調節することができる。
【0040】
保持部材22(23)は、具体的には、従動輪10(11)を回転自在に軸支する一対のベアリング22a(23a)と、各ベアリング22a(23a)をおのおのハウジング15へ固定する一対の固定部材22b(23b)とを備えている。固定部材22b(23b)とハウジング15の固定については、たとえば、固定部材22b(23b)に少なくとも2個以上の孔を設け、調節輪20(21)の採り得る位置に対応してハウジング15に対して固定部材22b(23b)を取付けるべき固定位置を予め決めておき、ハウジング15の当該決められた位置にそれぞれ固定部材22b(23b)に設けた複数の孔に符合する複数の孔を穿っておき、固定部材22b(23b)のハウジング15に対する固定したい位置にある孔に固定部材22b(23b)の孔を符合させて、これら孔にボルトを通してナットで固定部材22b(23b)をハウジング15に締付固定するようにすればよい。そして、このように保持部材22(23)をハウジング15に固定することで、保持部材22(23)をハウジング15に対して予め決められた複数の固定位置から調節輪20(21)の位置に対応する固定位置を選択でき、当該選択した固定位置に保持部材22(23)を固定することができる。
【0041】
なお、保持部材22(23)のハウジング15に対する固定位置を変更する手立てとしては、他の手段を用いてもよく、たとえば、調節輪20(21)がハウジング15に固定した送り螺子機構に連結されるなどして調節輪20(21)の位置を無段階に変更可能とする場合、保持部材22(23)のハウジング15に対する固定位置も同様に送り螺子機構を用いるなどして無段階に変更可能としておけばよい。また、調節輪20(21)のハウジング15に対する固定一の変更に際しては、従動輪10(11)と同様に、上記固定手段や送り螺子機構、その他の手段を用いることができる。
【0042】
上述したところでは、対向部形成輪である駆動輪6(7)と従動輪10(11)のうち、従動輪10(11)の取付位置を変更可能なようにしているが、駆動輪6(7)の取付位置を変更することができるようにしてもよい。また、従動輪10(11)の他に従動輪を一つ以上備えている場合には、従動輪のみを対向部形成輪として従動輪のみでカッタベルト2(3)に相手方のカッタベルト3(2)に対向する対向部2b(3b)を形成するようにしてもよい。この場合には、対向部形成輪である従動輪間に調節輪20(21)を配置するようにすればよい。
【0043】
このように、本実施の形態の破砕装置1にあっては、対向部形成輪のうち一方をカッタベルト2(3)が弛まない位置へ位置変更可能としたので、調節輪20(21)で直線部2a(3a)の直線部長さを変更しても、カッタベルト2(3)の長さを変更する必要も無く、カッタベルト2(3)の円滑な回転駆動も保証される。
【0044】
上述したところでは、調節輪20(21)の位置変更に対して従動輪10(11)或いは駆動輪6(7)のハウジング15に対する固定位置を変更してカッタベルト2(3)の長さを変更せずして直線部2a(3a)の直線部長さを変更するようにしているが、これとは別に、図5に示した一実施の形態の一変形例における破砕装置のように、駆動輪6(7)と従動輪10(11)がハウジング15に対して定位置に固定されて、駆動輪6,7間の隙間より図3中上方側に配置される従動輪10,11間の隙間を広く設定し、調節輪20(21)を駆動輪6(7)の鉛直方向へ移動可能に設け、カッタベルト2(3)の内周に配置されてカッタベルト2(3)を外側へ押圧してカッタベルト2(3)の弛みを防止する補助輪24(25)を設ける構成としてもよい。そして、この場合、カッタベルト2,3の対向部2b,3bにおける調節輪20,21より上方側は互いに末広がりとなる傾斜姿勢で相手方のカッタベルト2,3へ対向している。
【0045】
この場合には、補助輪24(25)がハウジング15にばね等の弾性要素26(27)を介して取付けられており、カッタベルト2(3)を内側から外側へ弾性要素26(27)の弾発力によって押圧していて、調節輪20(21)の位置変更に応じて補助輪24(25)の位置が変化しつつもカッタベルト2(3)に押圧しつづけカッタベルト2(3)の弛みが防止されるので、カッタベルト2(3)の長さの変更も不要で、カッタベルト2(3)の円滑な回転駆動を保証することができる。なお、補助輪24(25)は、弾性要素26(27)を介してハウジング15に取付けられていなくとも、ハウジング15に対してカッタベルト2(3)の弛みを取り除くことが可能な位置に移動可能に取付けられていてもよい。また、補助輪24(25)は、カッタベルト2(3)の直線部2a(3a)となる範囲以外の部位に当接するように設けられればよい。
【0046】
上記したところから、図4に示した一実施の形態の一変形例における破砕装置にあっては、変更手段は、調節輪20(21)と、補助輪24(25)とで構成されている。
【0047】
なお、図1および図5に示したところでは、カッタベルト2,3の直線部2a,3aの直線部長さを調節することができるようになっているが、カッタベルト2,3の内いずれか一方のみの直線部長さを調節できるようになっていてもよい。
【0048】
このように構成された破砕装置1は、上述したように、駆動輪6,7を回転させることによって、カッタベルト2,3が回転駆動され、カッタベルト2,3の上方から被破砕物をカッタベルト2,3間に投入すると、カッタベルト2,3の回転によって、被破砕物を直線部2a,3a間の隙間Wへ引き込みつつ、刃4a,5aで破砕することができる。
【0049】
また、変更手段によって、カッタベルト2,3のうち被破砕物を破砕する範囲である直線部2a,3aにおける直線部長さを変更することができるので、被破砕物における物性、破砕後の被破砕物の粒度に応じて、直線部長さを最適に設定でき、被破砕物を破砕し損じなく確実に望む粒度に破砕することができ、再度の被破砕物の破砕装置1への投入といった作業を無くすことができる。
【0050】
さらに、被破砕物が直線部2a,3a間に投入されてから下方へ排出されるまでの滞留時間を長く設定したい場合にあっても、直線部長さを長く設定することで、カッタベルト2,3の回転数を著しく低下させずとも従来のローラ状のカッタに比較して飛躍的に滞留時間を長くすることができ、破砕効率の著しい低下を招くことがない。
【0051】
なお、この一実施の形態の破砕装置1の場合、カッタベルト2,3の対向部2b,3b全てを直線部2a,3aとする場合を除き、被破砕物の投入側の幅となる従動輪10,11間の隙間の幅が駆動輪6,7間、調節輪20,21間の隙間Wの幅より広くなるので、被破砕物の直線部2a,3a間への投入が容易となる。また、一実施の形態の一変形例における破砕装置にあっても被破砕物の投入側の幅となる従動輪10,11間の隙間の幅が駆動輪6,7間、調節輪20,21間の隙間Wの幅より広いので、被破砕物の直線部2a,3a間への投入が容易となる。
【0052】
さらに、上記した破砕装置1にあっては、変更手段が対向部形成輪間に上記直線部に沿う方向に移動可能に設けられて直線部長さを調節する調節輪20(21)を備えるとともに、対向部形成輪のうち一方をカッタベルト2(3)が弛まない位置へ位置変更可能としたので、カッタベルト2(3)の長さを変更することなく、直線部2a(3a)の直線部長さの変更が可能で、カッタベルト2(3)の円滑な回転駆動も保証される。同様に、一実施の形態の一変形例における破砕装置にあっても、変更手段が対向部形成輪間に上記直線部に沿う方向に移動可能に設けられて直線部長さを調節する調節輪20(21)と、カッタベルト2(3)の内周に配置されてカッタベルト2(3)の弛みを防止する補助輪24(25)とを備える場合にあっても、カッタベルト2(3)の長さを変更することなく、直線部2a(3a)の直線部長さの変更が可能で、カッタベルト2(3)の円滑な回転駆動も保証される。
【0053】
また、カッタベルト2,3の回転速度に差がつけられていて、直線部2a,3aにおける刃4a,5aの相対位置関係が変化するため、刃4a,5a間で被破砕物を砕く動作に加えて被破砕物を挽くような動作が加わり、被破砕物を細かく破砕することができる。さらに、カッタベルト2,3の回転速度に差をつけておくことで、被破砕物を挽くような動作が加わるので、被破砕物を均一な大きさに破砕できるとともに、樹木などの繊維質の被破砕物を効果的に解すことが可能である。
【0054】
さらに、一変形例の破砕装置のように、補助輪24(25)がカッタベルト2(3)の内周に配置されてカッタベルト2(3)を外側へ押圧してカッタベルト2(3)の弛みを防止する場合には、調節輪20(21)のみを位置変更するだけで、カッタベルト2(3)の長さを変更せずとも自動的にカッタベルト2(3)の弛みが解消されるので、直線部2a(3a)の直線部長さの変更作業が非常に容易となり、作業者の負担が軽減される。
【0055】
なお、カッタベルト2,3間で被破砕物が詰まってしまった場合には、カッタベルト2,3を逆回転させて、被破砕物をカッタベルト2,3投入側となる上方へ導き排出させることができる。
【0056】
また、カッタベルトの構成としては、プレート4(5)を環帯状にヒンジ結合して連結すること以外にも、たとえば、図6に示したカッタベルト30のように、駆動輪としての駆動スプロケット31と従動輪としての従動スプロケット32とに巻回されて回転駆動されるチェーン33に、当該チェーン33に環帯状に刃34aを備えた複数のプレート34を取付けて構成するようにしてもよい。そして、このように構成したカッタベルト30の二つを対として対向させるようにし、駆動スプロケット31と従動スプロケット32との間にチェーン33が巻回される調節輪35を配置し、駆動スプロケット31と調節輪35とでカッタベルト30に直線部30aを形成するようにしてもよい。調節輪35は、一実施の形態と同様に、直線部30aに沿う方向となる図6中上下方向へ位置変更可能とされている。
【0057】
また、この場合には、一実施の形態と同様に、従動スプロケット32のハウジング36に対する取付位置を変更可能としておき、調節輪35の位置変更に伴ってチェーン33の弛みを防止できるようにしておけばよい。
【0058】
この場合、駆動スプロケット31をモータ12で回転駆動可能に連結してモータ12で各カッタベルト30を回転駆動するようにしておけばよく、カッタベルト30の直線部30a間に投入される被破砕物を粉砕することができる。
【0059】
より詳しくは、駆動スプロケット31は、二つの歯車31aを軸31bで連結した構造をしており、従動スプロケット32も同様に二つの歯車32aを軸32bで連結した構造をしていて、チェーン33は対とされて、駆動スプロケット31の歯車31a,31aと従動スプロケット32の歯車32a,32aにそれぞれ巻回されている。調節輪35も二つの歯車35aを軸35bで連結した構造をしており、対となるチェーン33に歯合している。なお、従動スプロケット32は、各カッタベルト30につき二つ以上設けられるようにされてもよい。
【0060】
また、図7に示すように、チェーン33,33を構成するコマ33aに間欠的にブラケット33bが設けられていて、当該ブラケット33bを介して対となるチェーン33,33の外周側に横架するように矩形の刃付きのプレート34が着脱可能に取付けられている。なお、プレート34のブラケット33bへの固定は、たとえば、ネジ締結などを採用することができる。
【0061】
そして、プレート34は、この実施の形態では、矩形であってカッタベルト40の外周側を向く表側の面に設けた多数の刃34aを備えている。なお、この実施の形態の場合、プレート34の回転方向幅がチェーン33のコマ33aの回転方向長さより長く設定されているので、上述のように、チェーン33のコマ33aに間欠的にブラケット33bを設けてこれにプレート34を取付けるようにしているが、プレート34の回転方向幅の設定によっては、チェーン33の全てのコマ33aにブラケット33bを設けて、全てのコマ33aにプレート34を取付けるようにしてもよい。
【0062】
そして、駆動スプロケット31と従動スプロケット31とでカッタベルト30に形成した対向部同士30bを対向させ、直線部30a同士を正対させるようにすればよい。なお、直線部30aの範囲にあるプレート34は、一実施の形態のプレート4(5)と同様に、隣のプレート34と面一された状態で端面同士を当接させてカッタベルト30の内周側への撓みを阻止できるようになっている。
【0063】
このようにカッタベルト30を構成するようにしても、被破砕物を破砕するカッタベルト30における直線部30aの直線部長さを調節輪35と従動側スプロケット32とで変更することができるので、一実施の形態の破砕装置1と同様の作用効果を奏することができる。また、従動側スプロケット32と移動不能としておき、カッタベルト30の内周に一実施の形態の一変形例に開示した補助輪を設けるようにしてもよく、この場合も一実施の形態の破砕装置1および一変形例における破砕装置と同様の作用効果を奏することが可能であることは当然である。
【0064】
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、破砕装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 破砕装置
2,3,30 カッタベルト
2a,3a,30a 直線部
2b,3b,30b 対向部
4,5,34 プレート
4a,5a,34a 刃
4b,5b 溝
4c,5c 凸部
4d,5d 凹部
4e,4f,5e,5f 孔
4g,4h,5g,5h 端面
6,7 駆動輪
6a,7a,10a,11a 歯
8,9 ピン
10,11 従動輪
12 モータ
15,36 ハウジング
15a,15b 開口部
15c ホッパ
16 減速機
20,21,35 調節輪
22,23 保持部材
22a,23a ベアリング
22b,23b 固定部材
24,25 補助輪
26,27 弾性要素
30 カッタベルト
31 駆動輪としての駆動スプロケット
31a,32a,35ab 歯車
31b,32b,35b 軸
32 従動輪としての従動スプロケット
33 チェーン
33a コマ
33b ブラケット
W 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表側に刃を備えた複数のプレートを表側を外周側に向けて環帯状に連結して形成される一対のカッタベルトと、各カッタベルトを回転駆動する駆動手段とを備え、これらカッタベルトに直線部を設けるとともにこれらカッタベルトを各々の直線部を正対させて配置し、当該直線部間に投入される被破砕物を破砕する破砕装置において、一方のカッタベルトと他方のカッタベルトのいずれか一方または両方に直線部における直線部長さを変更する変更手段を備えたことを特徴とする破砕装置。
【請求項2】
駆動手段は、上記カッタベルトの内周側に配置されて当該カッタベルトが巻回される駆動輪と少なくとも1つ以上の従動輪とを備え、駆動輪と従動輪または従動輪を二つ以上備えている場合にあっては駆動輪と従動輪若しくは二つの従動輪を当該カッタベルトに相手方のカッタベルトと対向する対向部を形成する対向部形成輪としてなり、変更手段は、対向部形成輪間に配置されて対向部内に直線部を形成するとともに当該直線部に沿う方向に移動可能に設けられて直線部長さを調節する調節輪を備えるとともに、対向部形成輪のうち一方をカッタベルトが弛まない位置へ位置変更可能としたことを特徴とする請求項1に記載の破砕装置。
【請求項3】
駆動手段は、上記カッタベルトの内周側に配置されて当該カッタベルトが巻回される駆動輪と少なくとも1つ以上の従動輪とを備え、駆動輪と従動輪または従動輪を二つ以上備えている場合にあっては駆動輪と従動輪若しくは二つの従動輪を当該カッタベルトに相手方のカッタベルトと対向する対向部を形成する対向部形成輪としてなり、変更手段は、対向部形成輪間に配置されて対向部内に直線部を形成するとともに当該直線部に沿う方向に移動可能に設けられて直線部長さを調節する調節輪と、カッタベルトの内周に配置されてカッタベルトの弛みを防止する補助輪とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の破砕装置。
【請求項4】
カッタベルトの内周に配置されてカッタベルトを外側へ押圧してカッタベルトの弛みを防止する補助輪を備えたことを特徴とする請求項3に記載の破砕装置。
【請求項5】
カッタベルトは、プレート同士をヒンジ結合して構成されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の破砕装置。
【請求項6】
カッタベルトは、駆動手段によって回転駆動されるチェーンと、当該チェーンに取付けられる複数のプレートとを備えて構成されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の破砕装置。
【請求項7】
各カッタベルトは、異なる回転速度で回転して被破砕物を粉砕することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の破砕装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−173044(P2011−173044A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37656(P2010−37656)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】