説明

硫黄含有接合物の製造法及び輻射型加熱溶融装置

【課題】硫黄含有資材同士等を接合するにあたり、該資材の接合面外縁等の所望箇所を容易に短時間に加熱溶融でき、再利用も可能であって、資材の形態に合わせて逐次、効率良く、改質硫黄等を加熱溶融できる輻射型加熱溶融装置及び該装置等を用いた硫黄含有接合物の製造法を提供すること。
【解決手段】本発明の製造法は、改質硫黄等を溶融し得る輻射熱を放射する発熱部を備えた輻射型加熱溶融装置を用いて、硫黄含有資材の接合面を密着させた外縁の少なくとも一部を加熱溶融する工程、該溶融箇所を冷却固化する工程を含み、前記装置による加熱溶融を、発熱部を前記加熱溶融箇所から離隔して実施する。本発明の装置は、輻射熱を放射する発熱部と、該発熱部から放射される熱を反射し、加熱溶融箇所に輻射熱を集中させるように湾曲した、可撓性の熱反射板と、発熱部の温度を制御する熱制御手段と、発熱部及び熱反射板を所定箇所に保持し得る把持部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温泉施設等における硫黄含有資材を利用したタイル目地部の接合や、硫黄含有資材を用いた床材、浴槽、壁等を施工又は改修する際に有用な硫黄含有接合物の製造法及び該製造法等に利用可能な、硫黄及び/又は改質硫黄含有物を加熱溶融するための輻射型加熱溶融装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンクリートに代わる土木、建設資材として、耐酸性、機械的強度、遮水性等に優れる硫黄含有資材が多数提案され、利用されはじめている。
このような硫黄含有資材は、該資材中の硫黄又は改質硫黄の溶融温度が通常120℃以上であるため、120〜160℃程度に保持した溶融硫黄含有物を、所定の型枠に流し込み成型固化させることにより製造されている。
しかし、硫黄含有資材が、大型である場合や連続する場合等にはその製造を1つの型枠で行うことが極めて困難であるため、そのような硫黄含有資材を製造する場合には、成型された複数の硫黄含有資材を所望形態にするために接合する必要がある。
【0003】
従来、硫黄含有資材の接合方法としては、例えば、接合するための硫黄固化成型体パネルを離隔して固定し、該パネル間の隙間に溶融硫黄含有資材を流し込んで固化させることによりこれらのパネルを接合する方法(特許文献1参照)や、接合するための端部に凹部を設けた硫黄固化成型体パネルを、該凹部同士で接合用の硫黄含有棒と電熱ヒーターとを挟み込むように密着させ、該電熱ヒーターに通電させることによって硫黄棒と硫黄固化成型体パネルの両方を融解させた後に固化してこれらパネルを接合する方法(特許文献2参照)が知られている。
しかし、特許文献1に記載された方法は、冷えた硫黄固化成型体パネルの隙間に、熱い溶融硫黄含有資材を流し込んで接触させるため、流し込んだ溶融硫黄含有資材が固化した場合であっても該固化物は硫黄固化成型体パネルに単に接して固化しているに過ぎず、該パネルと一体化しない。従って、例えば、高い耐酸性と遮水性が要求される温泉関連施設等には採用し難い。
一方、特許文献2に記載された方法は、電熱ヒーターを硫黄固化成型体及び硫黄棒に接触させて溶融させる方法であるが、硫黄は熱伝導度が非常に小さいため、電熱ヒーターのような線接触による加熱では溶融に長時間を要し、工程が非常に煩雑になり易い。そこで、該時間を短縮するために電熱ヒーターの温度を相当に上昇させる方法も考えられるが、このような高温にした場合には硫黄又は改質硫黄の性質が変化し、所望の強度等が得られない恐れがある。
更に、このような電熱ヒーターは、硫黄棒や当該パネルに接触させて溶融させるために、溶融時にも溶融硫黄と接触している必要があり、その後の固化に際しては該硫黄固化物中に使用した電熱ヒーターを埋入させた状態で留めなければならず再使用ができない。
【特許文献1】特開2004−160693号公報
【特許文献2】特開2004−160694号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、硫黄含有資材同士等を接合するにあたり、硫黄含有資材の接合面外縁等の所望箇所を容易にしかも短時間に加熱溶融することができ、また加熱溶融後の再利用も可能であって、加熱溶融する所望箇所が複数箇所に及ぶ場合や連続する場合であっても、その形態に合わせて逐次、効率良く、硫黄及び/又は改質硫黄を加熱溶融することができる輻射型加熱溶融装置を提供することにある。
本発明の別の目的は、上記輻射型加熱溶融装置等を利用した、硫黄含有資材の接合面外縁を容易にしかも短時間に加熱溶融し、冷却固化することが可能な、実質的に一体化した耐酸性及び遮水性等に優れた硫黄含有接合物の製造法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、複数の硫黄含有資材を接合し一体化した硫黄含有接合物の製造法であって、硫黄及び/又は改質硫黄を溶融し得る輻射熱を放射する発熱部を備えた輻射型加熱溶融装置を用いて、各硫黄含有資材の接合面を密着させた外縁の少なくとも一部を加熱溶融する工程(A)と、該工程(A)で加熱溶融した箇所を冷却固化する工程(B)とを含み、該工程(A)における輻射型加熱溶融装置による加熱溶融を、発熱部を前記加熱溶融箇所から離隔して実施することを特徴とする硫黄含有接合物の製造法が提供される。
また本発明によれば、硫黄及び/又は改質硫黄を溶融し得る輻射熱を放射する発熱部と、該発熱部から放射される熱を反射し、加熱溶融するための所望箇所に輻射熱を集中させるように湾曲した、可撓性の熱反射板と、発熱部の温度を制御する熱制御手段と、発熱部及び熱反射板を所定箇所に保持し得る把持部とを備えることを特徴とする硫黄及び/又は改質硫黄を加熱溶融するための輻射型加熱溶融装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明の製造法は、前記工程を採用し、特に工程(A)における加熱溶融を、該加熱溶融箇所から離隔して熱する、輻射熱を放射する発熱部を備えた輻射型加熱溶融装置を用いて行うので、硫黄含有資材同士を、容易にしかも短時間に接合することができ、また、該発熱部を硫黄含有資材に接触させる必要が無いので再利用が可能であって、所望の接合部を連続的に接合することができる。従って、得られる硫黄含有接合物は、実質的に一体化され、硫黄含有資材としての優れた耐酸性及び遮水性等が維持される。
また本発明の輻射型加熱溶融装置は、発熱部として、硫黄及び/又は改質硫黄を離隔して溶融し得る輻射熱を放射する発熱部を採用し、しかも該発熱部からの熱を反射する湾曲した熱反射板として、曲率を変更しうる可撓性を有する熱反射板を採用するので、硫黄及び/又は改質硫黄を含有する硫黄含有資材等の所望箇所を、効率良く加熱溶融することができる。従って、本発明の輻射型加熱溶融装置は、硫黄含有資材の接合等に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の製造法では、まず、硫黄及び/又は改質硫黄を溶融し得る輻射熱を放射する発熱部を備えた輻射型加熱溶融装置を用いて、各硫黄含有資材の接合面を密着させた外縁の少なくとも一部を加熱溶融する工程(A)を行う。
前記硫黄含有資材は、例えば、溶融硫黄及び/又は溶融改質硫黄と、骨材とを含む混練物を所望形態の型枠内に流し込んで成型した、耐酸性、遮水性に優れた各種土木・建設用資材、温泉施設等に利用できる複数のタイルを硫黄含有資材により板状等に固定したタイル板等が挙げられる。
前記硫黄含有資材は、好ましくは小ガス炎着火試験によって検定される非危険物であることを充足するように、特定割合の骨材と、改質硫黄からなる硫黄材料とを含むものが好ましい。
前記改質硫黄は、例えば、天然産又は、石油や天然ガスの脱硫によって生成した硫黄等を硫黄変性剤により重合したものであって、硫黄と硫黄変性剤との反応物であることが好ましい。
【0008】
硫黄変性剤としては、例えば、ジシクロペンタジエン(DCPD)、テトラハイドロインデン(THI)、若しくはDCPDと、シクロペンタジエンのオリゴマー(2〜5量体混合物)、ジペンテン、ビニルトルエン、ジシクロペンテン等のオレフィン化合物類の1種又は2種以上との混合物が挙げられる。
前記DCPDとしては、DCPDの単体の他に、シクロペンタジエンの2〜5量体を主体に構成される混合物を用いることもできる。該混合物としては、DCPDの含有量が70質量%以上、好ましくは85質量%以上のものが挙げられ、また、いわゆるジシクロペンタジエンと称する市販品の多くを使用することができる。
前記THIとしては、THIの単体の他に、THIと、DCPDの単体、シクロペンタジエンとブタンジエンとの重合物、及びシクロペンタジエンの2〜5量体からなる群より選択される1種又は2種以上を主体に構成されるものとの混合物を用いることもできる。該混合物中のTHIの含有量は、通常50質量%以上、好ましくは65質量%以上である。該混合物としては、いわゆるテトラハイドロインデンと称する市販品やエチルノルボルネンの製造プラントから排出される副生成油の多くが使用できる。
【0009】
前記改質硫黄は、硫黄と硫黄変性剤とを溶融混合することにより得ることができる。この際、硫黄変性剤の使用割合は、硫黄と硫黄変性剤との合計量に対して、通常0.1〜30質量%、特に、1.0〜20質量%の割合が好ましい。
前記溶融混合は、例えば、インターナルミキサー、ロールミル、ドラムミキサー、ポニーミキサー、リボンミキサー、ホモミキサー、スタティックミキサー等を用いて行うことができる。
【0010】
前記硫黄含有資材において、前記改質硫黄の含有割合は、後述する骨材100質量部に対して、通常15〜400質量部、好ましくは20〜300質量部である。15質量部未満では、骨材との均一混練が十分でなく、400質量部を超えると、改質硫黄と骨材とが分離して均一な材料が得られ難いおそれがある。
【0011】
前記骨材は特に限定されないが、一般にコンクリートで用いられる骨材、例えば、天然石、砂、れき、硅砂、鉄鋼スラグ、フェロニッケルスラグ、銅スラグ、金属製造時に生成する副生物、石炭灰、燃料焼却灰、電気集塵灰、溶融スラグ類、貝殻及びこれらの混合物等からなる群より選択される1種又は2種以上が挙げられる。また、シリカヒューム、アルミナ、石英粉、石英質岩石、粘土鉱物、活性炭、ガラス粉末やこれらと同等の有害物質を含有しない無機系、有機系等の微粉末も使用可能である。
また、微粉末として産業廃棄物を使用した場合でも、前述の硫黄材料により無害化することが可能である。
【0012】
前記骨材としては、通常、粒径5mm以下、好ましくは1mm以下の細骨材を含むことが好ましいが、その用途に応じて適宜選択することができる。
前記硫黄含有資材には、前記改質硫黄や細骨材の他に、例えば、軽石、ビニロン繊維、パーライト等の軽量骨材、各種粗骨材、繊維質充填材、繊維状粒子、薄片状粒子等を含有させることができる。
繊維質充填材としては、例えば、カーボンファイバー、グラスファイバー、鋼繊維、アモルファス繊維、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、アラミド繊維又はこれらの混合物等が挙げられる。
繊維質充填材の繊維径は、材質により異なるが通常5μm〜1mmが好ましい。繊維形態は、短繊維、連続繊維のいずれでも良いが、短繊維の場合の繊維長は2〜30mmの均一分散が容易な長さが好ましい。連続繊維としては、骨材が通過できるような隙間を空けた格子状であれば良く、織構造又は不織布構造のいずれでも良い。
繊維状粒子としては、平均長さ1mm以下のウォラスナイト、ボーキサイト、ムライト等が挙げられる。
薄片状粒子としては、平均粒度1mm以下のマイカフレーク、タルクフレーク、バーミキュライトフレーク、アルミナフレーク等が挙げられる。
前記硫黄含有セグメントには、本発明の所望の効果を損なわない範囲で、上記以外にも必要に応じて他の成分が配合されていても良い。
【0013】
前記工程(A)において、前記硫黄含有資材同士の接合面を密着させた外縁の少なくとも一部の加熱溶融は、硫黄及び/又は改質硫黄を溶融し得る輻射熱を放射する発熱部を備えた輻射型加熱溶融装置を用いて、該発熱部を加熱溶融箇所から離隔して加熱溶融する方法により行うことができる。このような輻射型加熱溶融装置を用いることにより、硫黄含有資材における所望箇所の加熱溶融を短時間で効率良く行うことができる。
前記輻射型加熱溶融装置の発熱部としては、輻射熱を放射し得る、円筒形、板状等のハロゲンヒーター等が好ましく挙げられる。また、輻射型加熱溶融装置としては、後述する本発明の輻射型加熱溶融装置等が好ましく挙げられる。
前記発熱部の温度は、前記硫黄含有資材の加熱溶融する箇所の表面温度が硫黄及び/又は改質硫黄の融点以上となるように、例えば、該表面温度が120〜180℃程度になるように制御することが好ましい。通常は、発熱部の温度を130〜250℃程度に制御して行うことが好ましい。
この輻射型加熱溶融装置による加熱溶融時間は、該加熱溶融状態を確認しながら作業を行うことができるので、その状態に応じて適宜決定することができる。
【0014】
前記加熱溶融箇所は、接合面を密着した外縁の少なくとも一部を含み、且つ硫黄含有資材同士を一体に接合しうる箇所であれば良く、例えば、接合面の外縁同士が接している表面又は裏面の少なくとも一方の面の外縁に沿った箇所を加熱溶融することが好ましい。
加熱溶融した箇所は、その状態に応じて、例えば、へら、電気コテ等を用いて平坦又は均一にならすこともできる。
工程(A)の加熱溶融は、例えば、加熱溶融箇所が硫黄含有資材により複数のタイルを固定したタイル板同士を接合する場合には、タイル板同士の接合面を密着させた後、該接合面の外縁に沿って前記輻射型加熱溶融装置を発熱部が硫黄含有資材に接触しないように載置し、該外縁の所望箇所の硫黄含有資材を加熱溶融した後、輻射型加熱溶融装置を次に加熱溶融する接合面の外縁箇所に移動し同様に加熱溶融を繰返すことにより実施することができる。加熱溶融が終了した箇所は、次の後述する工程(B)を行うか、若しくは前記平坦化又は均一化を施すこともできる。従って、前記輻射型加熱溶融装置を用いる加熱溶融は、その所望箇所を輻射型加熱溶融装置の移動により実質的に連続作業で行うことができる。
【0015】
本発明の製造法では、前記加熱溶融した箇所を冷却固化する工程(B)を行うことにより所望の接合物を得ることができる。
工程(B)は、通常、自然冷却、即ち放置することにより行うことができるが、強制的に冷却することも可能である。
【0016】
本発明の輻射型加熱溶融装置は、硫黄及び/又は改質硫黄を溶融し得る輻射熱を放射する発熱部と、該発熱部から放射される熱を反射し、所望の加熱溶融箇所に輻射熱を集中させるように湾曲した可撓性の熱反射板と、発熱部の温度を制御する熱制御手段と、発熱部及び熱反射板を所定箇所に保持し得る把持部とを備える。
前記発熱部としては、例えば、発熱部の温度を130〜250℃程度に上昇でき、輻射熱を放射し得る、円筒形、板状等のハロゲンヒーター等が好ましく挙げられる。
前記熱反射板としては、可撓性のアルミニウム板、ステンレス板等が挙げられ、少なくとも発熱部側の面を、輻射熱等を反射しうる鏡面仕上げした熱反射板等が挙げられる。該熱反射板は、可撓性を示すので、その湾曲した曲率を加熱溶融する箇所の形状等に合わせて変更することができる。また変更した曲率の状態を保持するために、該曲率固定手段を熱反射板に設けることもできる。
本発明の輻射型加熱溶融装置には、放射又は反射する輻射熱を効率良く加熱溶融する箇所に到達させる等のために、前記発熱部及び前記熱反射板を覆う耐熱性を有する、例えば金属性等の枠体を更に備えることもできる。
【0017】
本発明の輻射型加熱溶融装置は、例えば、硫黄及び/又は改質硫黄を含有する硫黄含有資材の所望箇所を加熱溶融させるために、該硫黄含有資材の所望箇所の上方に前記発熱部が位置するよう、前記湾曲した熱反射板の両端を硫黄含有資材上に固定するか、若しくは前記枠体を硫黄含有資材上に固定して、発熱部を所望温度制御して発熱させることにより使用することができる。
この際、前記熱反射板や前記枠体と硫黄含有資材とにより形成される空間内の温度が所望温度以上に上昇し、発熱部の破損や、硫黄又は改質硫黄の変質が生じないように、前記硫黄含有資材上に固定する熱反射板の両端又は硫黄含有資材上に接触させる前記枠体の端部が直接硫黄含有資材上に密着することを防止し、前記空間内の熱を放熱しうる隙間等を設けてこれらを硫黄含有資材上に固定し得る放熱手段を設けることもできる。
また、本発明の輻射型加熱溶融装置は、前記発熱部の温度を制御する熱制御手段を備えるが、該熱制御手段は、発熱部に通電する電気量を制御する装置の他、前記熱反射板や前記枠体と硫黄含有資材とにより形成される空間内の温度を感知し、前記電気量を制御しうる温度センサー等を備えていても良い。
【0018】
以下、本発明の輻射型加熱溶融装置の好ましい実施形態を図面を参照して説明するが、本発明の装置はこれらに限定されない。
図1は、本発明の輻射型加熱溶融装置の一実施形態を示す一部透視斜視図である。図1において10は、輻射型加熱溶融装置であり、該装置10は、硫黄及び/又は改質硫黄を溶融し得る輻射熱を放射する、円筒状のハロゲンヒーター11と、該ハロゲンヒーター11に通電することにより放射される輻射熱等を反射し、下方の所望加熱溶融箇所に輻射熱等を集中させるように湾曲した可撓性のアルミニウム製熱反射板12と、ハロゲンヒーター11及び熱反射板12を保持し、ハロゲンヒーター11の温度を制御する熱制御手段(図示せず)が内蔵されたコントロールボックス13とを備えている。
【0019】
ボックス13には、装置10を把持するための把持部15と、電源に接続するためのコード14が備えられており、該コード14はボックス13内で図示しない熱制御手段に接続されている。また、ハロゲンヒーター11は、通電のために該ボックス13からのコード(11a,11b)に接続されている。
一方、熱反射板12は、ハロゲンヒーター11を覆うように湾曲しており、この曲率は、加熱溶融する箇所に輻射熱等が集中するように所望の曲率に変更することができる。また、熱反射板12の両端辺上方には、前記曲率を固定するための金属製の棒状固定具(12a,12b,12c)を設けている。
【0020】
輻射型加熱溶融装置10は、熱反射板12の湾曲状態を所望の曲率になるよう調整した後、棒状固定具(12a,12b,12c)により該曲率を固定する。次いで、把持部15により装置10を移動し、加熱溶融するための硫黄含有資材の接合面を密着させた外縁等の所望箇所上方に、前記ハロゲンヒーター11が位置するよう、熱反射板12の両端辺を該硫黄含有資材上に載置固定する。続いて、ハロゲンヒーター11に該温度が130〜250℃程度となるように通電することによって、該ハロゲンヒーター11から放射される輻射熱等が、熱反射板12によって所望の加熱溶融箇所に集中され、短時間で硫黄及び/又は改質硫黄を溶融することができる。
【0021】
図2は、本発明の輻射型加熱溶融装置の他の実施形態を示す一部透視斜視図である。図2において図1と同一番号を付した部材は図1と同一のものであり、その説明を省略する。
図2に示す輻射型加熱溶融装置20は、図1の輻射型加熱溶融装置10のハロゲンヒーター11及び熱反射板12を、金属性の枠体21により覆ったものであり、その他は図1の装置と同様である。
ここで、棒状固定具(12a,12b,12c)は、枠体21の側面(21a,21b)と熱反射板12の各端辺上方との間にそれぞれ設けることによって、図示するような棒状固定具がハロゲンヒーター11の下方を横切ることを防止することもできる。
【0022】
図3は、本発明の更に他の実施形態である輻射型加熱溶融装置を用いて、硫黄含有資材の接合物を製造する一例の方法を説明するための一部透視概略説明図である。
図3において図1と同一番号を付した部材は図1と同一のものであり、その説明を省略する。また、図3において、32a及び32bは、硫黄含有資材の板状物であり、外縁33が形成されるように接合面が密着固定されている。
図3に示す輻射型加熱溶融装置30は、図1の輻射型加熱溶融装置10における熱反射板12の両端辺に、該熱反射板12と硫黄含有資材(32a,32b)により形成される空間内の温度が所望温度以上に上昇し、ハロゲンヒーター11の破損等が生じないように、該装置を硫黄含有資材(32a,32b)上に固定するための放熱用固定具31を図示するように設けた輻射型加熱溶融装置である。
【0023】
図3に示す輻射型加熱溶融装置30を用いて硫黄含有資材(32a,32b)の接合物を製造するには、矢印方向に連続する硫黄含有資材(32a,32b)を図示するように密着固定した後、予め熱反射板12の湾曲率を所望曲率に調整固定した装置30の把持部15を持って、図示するように、ハロゲンヒーター11が外縁33の上方に位置するように硫黄含有資材(32a,32b)上に載置する。
続いて、ハロゲンヒーター11に該温度が130〜250℃程度となるように通電することによって、該ハロゲンヒーター11から放射される輻射熱等が、熱反射板12によって外縁33周辺に集中され、短時間でその表面が溶融する。溶融状態を確認した後、把持部15を持って、装置30を矢印方向に移動し、次の加熱溶融する外縁33の上方にハロゲンヒーター11が位置するように上記と同様に載置して加熱溶融操作を繰返す。
前記加熱溶融した外縁33及びその周辺部は、加熱溶融後の装置30の移動により放置され、冷却される。この冷却により、硫黄含有資材(32a,32b)が一体に接合固化され、所望の硫黄含有接合物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の輻射型加熱溶融装置の一実施形態を示す一部透視斜視図である。
【図2】本発明の輻射型加熱溶融装置の他の実施形態を示す一部透視斜視図である。
【図3】本発明の更に他の実施形態である輻射型加熱溶融装置を用いて、硫黄含有資材の接合物を製造する一例の方法を説明するための一部透視概略説明図である。
【符号の説明】
【0025】
10,20,30:輻射型加熱溶融装置
11:ハロゲンヒーター
12:熱反射板
12a,12b,12c:棒状固定具
13:コントロールボックス
11a,11b,14:コード
15:把持部
21:枠体
21a,21b:枠体の側面
31:放熱用固定具
32a,32b:硫黄含有資材
33:外縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の硫黄含有資材を接合し一体化した硫黄含有接合物の製造法であって、
硫黄及び/又は改質硫黄を溶融し得る輻射熱を放射する発熱部を備えた輻射型加熱溶融装置を用いて、各硫黄含有資材の接合面を密着させた外縁の少なくとも一部を加熱溶融する工程(A)と、
該工程(A)で加熱溶融した箇所を冷却固化する工程(B)とを含み、
該工程(A)における輻射型加熱溶融装置による加熱溶融を、発熱部を前記加熱溶融する箇所から離隔して実施することを特徴とする硫黄含有接合物の製造法。
【請求項2】
前記輻射型加熱溶融装置が、発熱部と、該発熱部から放射される熱を反射し、且つ前記加熱溶融する箇所に輻射熱を集中させる熱反射板と、発熱部の温度を制御する熱制御手段と、前記発熱部を所定箇所に保持し得る把持部とを備えることを特徴とする請求項1記載の製造法。
【請求項3】
前記熱反射板が、発熱部からの熱を前記加熱溶融する箇所に集中させるように湾曲しており、且つ該湾曲率を変更しうる可撓性を有することを特徴とする請求項2記載の製造法。
【請求項4】
硫黄及び/又は改質硫黄を溶融し得る輻射熱を放射する発熱部と、該発熱部から放射される熱を反射し、加熱溶融するための所定箇所に輻射熱を集中させるように湾曲した、可撓性の熱反射板と、発熱部の温度を制御する熱制御手段と、発熱部及び熱反射板を所定箇所に保持し得る把持部とを備えることを特徴とする硫黄及び/又は改質硫黄を加熱溶融するための輻射型加熱溶融装置。
【請求項5】
前記発熱部と前記熱反射板とを覆う耐熱性枠体を備えることを特徴とする請求項4記載の輻射型加熱溶融装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−159829(P2006−159829A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−358050(P2004−358050)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】