説明

硬化性樹脂組成物、その硬化物、及びプラスチックレンズ

【課題】硬化物における屈折率が高く、かつ、粘度も低く、また、硬化性にも優れる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、該組成物を硬化してなる硬化物及びプラスチックレンズを提供する。
【解決手段】芳香環に重合性不飽和二重結合が直接結合している化合物(A)とホスフィンオキサイド系光重合開始剤(B)と無水マレイン酸(C)とを含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を活性エネルギー線照射により硬化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化性組成物に関する。更に詳しくは、高い屈折率を有するプラスチックレンズ形成に有用な活性エネルギー線硬化性組成物に関する。更に詳しくは、光学材料や電子材料等の透光性材料において、光の利用効率を高くするために有用な活性エネルギー線硬化性組成物に関する。特に、液晶表示装置のバックライトユニットに使用されるプリズムシートや拡散シートや輝度向上フィルム、プロジェクションテレビ等のスクリーンに使用されるフレネルレンズシートやレンチキュラレンズシート等のプラスチックレンズ、又はこのようなシートを用いたバックライトユニット等の光学部材用活性エネルギー線硬化性組成物、及びその硬化物からなる光学部材に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置のバックライトユニットに使用されるプリズムシートや拡散シートや輝度向上フィルム、プロジェクションテレビ等のスクリーンに使用されるフレネルレンズシートやレンチキュラレンズシート等のプラスチックレンズシートは、活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させて作られている。このようなプラスチックレンズシートは、例えば、透明基材とその上に形成された活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物からなるレンズ部とから構成されている。このレンズ部を構成するために使用される活性エネルギー線硬化性組成物としては、透明基材との密着性、鋳型との離型性、透明性や高屈折率性などのレンズシートとしての光学特性等、種々の特性が要求される。
【0003】
屈折率が高いレンズシートが得られる活性エネルギー線硬化型樹脂として、フルオレン環を有する(メタ)アクリレート(例えば、特許文献1〜5参照)、硫黄含有(メタ)アクリレート(例えば、特許文献6〜8参照)、ハロゲン含有(メタ)アクリレート(例えば、特許文献9〜11参照)などが使用されてきた。これらの樹脂自体が高粘度である。その為、注型重合等の方法でレンズシートを製造する際には適正な程度まで粘度を下げる必要がある。
【0004】
低粘度の反応性希釈剤を前記樹脂に混合する事で注型重合に適した粘度にまで樹脂(組成物)の粘度を下げることができる。しかしながら、反応性希釈剤は屈折率が低く、該希釈剤を混合することで前記樹脂の本来有する高屈折性を発揮できず、得られる硬化物の屈折率は低くなってしまっていた。
【0005】
低粘度で屈折率が高い反応性希釈剤として、例えば、O−フェニルーフェノキシエチルアクリレート(例えば、特許文献12、13参照。)やフェノキシエチルアクリレート(例えば、特許文献14参照。)等が知られている。しかしながら、これらの化合物でも要求される硬化物の屈折率を維持し、且つ、前記高屈折材料の粘度を低減することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平04−337307号公報
【特許文献2】特開平05−164903号公報
【特許文献3】特開平06−220131号公報
【特許文献4】特開平10−067977号公報
【特許文献5】特開平10−067977号公報
【特許文献6】特開平02−160762号公報
【特許文献7】特開平05−142501号公報
【特許文献8】特開平06−003628号公報
【特許文献9】特開昭58−052601号公報
【特許文献10】特開平01−135853号公報
【特許文献11】特開平03−036582号公報
【特許文献12】特許第3209554号公報
【特許文献13】特開2005−272773号公報
【特許文献14】特開2007−277456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明が解決しようとする課題は、硬化物における屈折率が高く、かつ、粘度も低く、また、硬化性にも優れる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、該組成物を硬化してなる硬化物及びプラスチックレンズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、ジビニルベンゼン等の芳香環に直接ビニル基が結合している化合物は低粘度ながら硬化後の屈折率が高いこと、該化合物は活性エネルギー線照射による硬化性が良好ではないものの、この硬化性はホスフィンオキサイド系光重合開始剤と無水マレイン酸とを併用することにより改善できること、芳香環に直接ビニル基が結合している化合物とフィンオキサイド系光重合開始剤と無水マレイン酸とを含有する組成物は、高粘度の活性エネルギー線硬化型樹脂に対する反応性希釈剤として有用であり、また、該組成物のみの硬化物も屈折率が高いこと等を見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、芳香環に重合性不飽和二重結合が直接結合している化合物(A)とホスフィンオキサイド系光重合開始剤(B)と無水マレイン酸(C)とを含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させてなることを特徴とする硬化物を提供するものである。
【0011】
更に、本発明は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を成形、硬化させてなるプラスチックレンズを提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、低粘度でありながら有機系光学材料として硬化物における屈折率が高い活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供できる。また、該組成物は、粘度が高い高屈折率の活性エネルギー線硬化型樹脂の反応性希釈剤として有用である。
【0013】
従って、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、光学用オーバーコート剤、ハードコート剤、反射防止膜、眼鏡レンズ、光ファイバー、光導波路、ホログラム、プリズムレンズ等の光学部品に広く適用することができ、特に眼鏡レンズ、プリズムレンズ等のプラスチックレンズに好ましく適用できる。また、固体撮像素子等に用いられるマイクロレンズアレイ用、発光ダイオード(LED)のような固体素子デバイスの封止剤用、干渉縞防止コーティング剤用にも好ましく適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は実施例1で得られた水酸基含有化合物(a)の13C−NMRスペクトルである。
【図2】図2は実施例1で得られた(メタ)アクリレート樹脂(D1)の13C−NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明で用いる化合物(A)は、芳香環に重合性不飽和二重結合が直接結合している化合物である。化合物(A)は、低粘度であるため、高屈折率高粘度の活性エネルギー線硬化型樹脂への配合量を増やしても作業性に問題のないレベルの粘度に調整が可能である。また、化合物(A)は高屈折率であるため、上記高屈折率高粘度材料の高い屈折率が低減することを抑制できる。
【0016】
前記化合物(A)としては、例えば、ビニルベンゼン系化合物、ビニルナフタレン系化合物、ビニルビフェニル系化合物等が挙げられる。
【0017】
前記ビニルベンゼン系化合物としては、例えば、スチレン、ヒドロキシスチレン、α−メチルスチレン、O-メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、1,3ージメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン及びこれらの誘導体からなる化合物等のスチレン化合物類;
【0018】
1,2−ジビニルベンゼン、1,3−ジビニルベンゼン、1,4−ジビニルベンゼン、2,5−ジヘプチル−1,4−ジビニルベンゼン、cis,cis,β,β´−ジエトキシ−m−m−ジビニルベンゼン、1,4−ジビニル−2,5−ジブチルベンゼン、1,4−ジビニル−2,5−ジデシルベンゼン、2,5−ジシクロヘキシル−1,4−ジビニルベンゼン、2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,4−ジビニルベンゼン、2−メトキシ−5−ドデシルオキシ−1,4−ジビニルベンゼン、1,4−ジビニル−2,5−ビス(オクチルオキシ)ベンゼン、1,2−ジニトロ−4,5−ジビニルベンゼン、1,4−ジビニル−2,5−ジヘキシルベンゼン、1,4−ジビニル−2,5−ジメトキシベンゼン及びこれらの誘導体からなる化合物のジビニルベンゼン系化合物;
【0019】
1,2,3−トリビニルベンゼン等のトリビニルベンゼン系化合物;1,2,4,5−テトラビニルベンゼン等のテトラビニルベンゼン系化合物等が挙げられる。
【0020】
前記ビニルナフタレン系化合物としては、例えば、2−ビニルナフタレン、1−ビニルナフタレン、1−ビニル−3,4−ジヒドロナフタレン等のナフタレン化合物類;
【0021】
1,3−ジビニルナフタレン、1,4−ジビニルナフタレン、1,5−ジビニルナフタレン、1,6−ジビニルナフタレン、1,7−ジビニルナフタレン、2,3−ジビニルナフタレン、2,6−ジビニルナフタレン、2,7−ジビニルナフタレン、3,4−ジビニルナフタレン、1,8−ジビニルナフタレン、1,5−ジメトキシ−4,8−ジビニルナフタレン及びこれらの誘導体からなる化合物等のジビニルナフタレン等が挙げられる。
【0022】
前記ビニルビフェニル系化合物としては、例えば、4−ビニルビフェニル、2´−ビニルビフェニル−4−オール、2−ビニルビフェニル、3−ビニル−1,1´−ビフェニル、4−クロロ−4´−ビニルビフェニル、4−ブロモ−4´−ビフェニル等のビニルビフェニル化合物類;
【0023】
2,2´−ジビニルビフェニル、4,4´−ジビニルビフェニル、2,5,2´,5´−テトラクロロ−4,4´−ジビニルビフェニル、2,2´−ジビニルビフェニル−4,4´−ジアミン、2,6−ジtert−ブチル−2´,4´−ジビニルビフェニル−4−オール、4,4´−ビ[3−ビニルフェノール]、5,5´,6,6´−テトラメトキシ−2,2´−ジビニルビフェニル、4,4´−ジニトロ−2,2´−ジビニルビフェニル、4,6´−ジニトロ−2,2´−ジビニルビフェニル、5−メトキシ−2,2´−ジビニルビフェニル及びこれらの誘導体からなる化合物等のジビニルビフェニル類等が挙げられる。
【0024】
化合物(A)の中でも、硬化性に優れ、且つ、屈折率の高い硬化物が得られる樹脂組成物となることから、ジビニルベンゼン系化合物、ジビニルナフタレン系化合物、ジビニルビフェニル系化合物及びこれらの誘導体からなる群から選ばれる1種以上の化合物が好ましく、ジビニルベンゼン系化合物及びジビニルベンゼン系化合物の誘導体からなる化合物がより好ましく、ジビニルベンゼン系化合物がより好ましい。更に、ジビニルベンゼン系化合物の中でも安定性が良好な1,3−ジビニルベンゼン、1,4−ジビニルベンゼンが好ましい
【0025】
本発明で用いる開始剤(B)はホスフィンオキサイド系の光重合開始剤である。ホスフィンオキサイド系の光重合開始剤としては、例えば、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ーホスフィンオキサイド、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−4−ビフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−2−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−1−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−4−クロルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−2,2−ジメトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−ドデシルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−4−オクチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロル−3,4,5−トリメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロル−3,4,5−トリメトキシベンゾイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジクロルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド等を挙げることができる。
【0026】
本発明で用いる開始剤(B)の中でも環境対応という観点からハロゲンを含有せず、より高い硬化性の樹脂組成物となることからフェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ーホスフィンオキサイドが好ましい。
【0027】
前記開始剤(B)の使用量は、芳香環に重合性不飽和二重結合が直接結合している化合物(A)100質量部に対して0.5〜30質量部が好ましく、1〜20質量部がより好ましい。
【0028】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、無水マレイン酸(C)を含有する。開始剤(B)としてホスフィンオキサイド系の光重合開始剤を用い、更に無水マレイン酸(C)を混合することにより、硬化性の悪い芳香環に重合性不飽和二重結合が直接結合している化合物(A)の硬化性を向上させることができる。具体的には、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は例えば、活性エネルギー線の照射量が100〜500mj/cm)で硬化することができる。
【0029】
無水マレイン酸(C)の含有量としては、活性エネルギー線硬化型樹脂として前記化合物(A)のみを用いる場合、化合物(A)100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましく、3〜5質量部がより好ましい。また活性エネルギー線硬化型樹脂として前記化合物(A)に加え、後述する(メタ)アクリロイル基を有する化合物(D)を併用する場合、化合物(A)と化合物(D)との合計100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましく、1〜3質量部がより好ましい。
【0030】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物には(メタ)アクリロイル基を有する化合物(D)を含有させるのが好ましい。前記化合物(D)としては、例えば、(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。
【0031】
前記(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、アクリロイルモルホリン、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールモノ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルポリエトキシ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、p−クミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルフェノールポリエトキシ(メタ)アクリレート;
【0032】
1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリプロポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等;
【0033】
トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコールのε−カプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0034】
また、(メタ)アクリレートとして、ビナフタレン骨格及びラジカル重合性不飽和結合を有する重合性化合物(D1)も例示することができる。この化合物はビナフタレン骨格を有することから、耐熱性及び耐湿性が良好なものとなると共に、有機材料としては極めて高い1.60以上の屈折率を有する材料となる。以下に重合性化合物を詳細に説明する。
【0035】
ここでビナフタレン骨格は、1,1’−ビナフタレン骨格、1,2’−ビナフタレン骨格、2,2’−ビナフタレン骨格、4,4’−ビナフタレン骨格等が挙げられるが、低粘度、高屈折率といった観点から1,1’−ビナフタレン骨格であることが好ましい。
【0036】
前記重合性化合物(D1)は、例えば、ビナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂(a1)とラジカル重合性不飽和二重結合含有モノカルボン酸(x1)とを反応させて得られる構造を有する重合性化合物(ビニルエステル樹脂)(a2)等が挙げられる。
【0037】
ここで、ビナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂(a1)としては、例えば、ビナフトール類とエピハロヒドリン類とを反応させて得られるエポキシ樹脂、或いは、該エポキシ樹脂に更に前記ビナフトール類を反応させて得られるエポキシ樹脂が挙げられる。
【0038】
前記ビナフトール類としては、1,1'−ビ−2−ナフトール、4,4'−ビ−1−ナフトール等が挙げられる。中でも得られる硬化物の屈折率が高い硬化性樹脂組成物が得られることから1,1'−ビ−2−ナフトールが好ましい。
【0039】
前記1,1'−ビ−2−ナフトールとしては、具体的には、下記構造式(1)
【0040】
【化1】

(式中、X〜X12は、各々独立的に水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10の炭化水素基、又は炭素原子数1〜10のアルコキシ基を表す。)で表されるものが挙げられる。
【0041】
これらの中でも特に、屈折率と粘度の両特性の両立、合成上の難易度およびコストの面から、上記一般式(1)中の、X〜X12は、各々独立的に水素原子又は炭素原子数1〜3のアルキル基であることが好ましく、特にその全てが水素原子であることが好ましい。
【0042】
前記エピハロヒドリン類には、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、β−メチルエピクロロヒドリン等が挙げあれるが、入手の容易さや経済性を考慮すればエピクロロヒドリンが好ましい。
【0043】
本発明では特に硬化物の耐熱性と基板との密着性の点から前記エポキシ樹脂(a1)のなかでも1,1'−ビ−2−ナフトールとエピハロヒドリンとを反応させて得られるエポキシ樹脂が好ましい。
【0044】
また、前記エポキシ樹脂(a1)は、エポキシ当量200〜500g/eq.の範囲であるものが硬化物の可撓性、光照射に対する感度が良好となる点から好ましく、特に200〜300g/eq.の範囲であることが好ましい。
【0045】
一方、前記エポキシ樹脂(a1)と反応させるラジカル重合性不飽和二重結合含有モノカルボン酸(x1)としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸などの(メタ)アクリル酸;アクリル酸クロリド、メタクリル酸クロリドなどの(メタ)アクリル酸ハロゲン;アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸アルキルが挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリル酸ハロゲンは反応時に塩酸などの酸性物質が副生し反応釜腐食の問題を引き起こす他、(メタ)アクリル酸アルキルを用いた場合には、副生するアルコールを除去するための脱アルコール処理を施す必要があることから(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0046】
前記エポキシ樹脂(a1)と、ラジカル重合性不飽和二重結合含有モノカルボン酸(x1)との反応比率は、特に制限されるものではないが、エポキシ樹脂のエポキシ基1当量当たり、アクリル酸類のカルボキシル基が0.4〜1、1当量となる範囲であることが好ましく、なかでも光硬化性及び貯蔵安定性に優れる樹脂が得られる点で0.8〜1.0モルとなる範囲が好ましい。
【0047】
前記エポキシ樹脂(a1)のうち、も1,1'−ビ−2−ナフトールとエピハロヒドリン類とを反応させて得られるエポキシ樹脂、或いはこれに更にも1,1'−ビ−2−ナフトールを反応させて得られるエポキシ樹脂を用い、かつ、ラジカル重合性不飽和二重結合含有モノカルボン酸(x1)として(メタ)アクリル酸を用いた場合、得られる重合性化合物(a2)は、具体的には、下記一般式(2)で示されるものが挙げられる。(式中のnは繰り返し数の平均値を示し0〜10の範囲であり、R1は水素原子或いは置換基を有していてもよいアルキル基、またR2は水素原子またはメチル基を表す。)
【0048】
【化2】

【0049】
これらの例としては、下記構造式(2−1)或いは(2−2)が挙げられる。(式中のnは0〜10である。)
【0050】
【化3】

【0051】
本発明で用いる重合性化合物(D1)は、25℃での粘度が3000Pa・s以下であることが、流動性が良好で各種用途への応用範囲が広がる他、粘度調整に使用する低屈折率物質である希釈剤の使用量を低減できることから好ましい。特にこの効果が顕著なものとなる点から1000〜100Pa・sの範囲であることが好ましい。
【0052】
重合性化合物(D1)は、上記した通り、それ自体高い屈折率を有するものであり、具体的には、1.55以上の屈折率、分子構造の選択によっては1.60以上の屈折率を有する材料となる。
【0053】
また、好ましい化合物(D)としてフェニルフェノールポリアルコキシ(メタ)アクリレート(D2)も挙げることができる。フェニルフェノールポリアルコキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、下記一般式(3)
【0054】
【化4】

(式中、Rは水素原子又はメチル基であり、nの平均値は1〜5である。)で表される化合物等が挙げられる。
【0055】
前記一般式(3)で表される化合物は、例えば、P−フェニルフェノール或いはO−フェニルフェノールと、エチレンオキサイド或いはプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドとの反応物と、(メタ)アクリル酸とを反応させることにより得ることができる。
【0056】
フェニルフェノールポリアルコキシ(メタ)アクリレートの中でもフェニルフェノールポリエトキシ(メタ)アクリレート〔前記一般式(3)においてRが水素原子〕が好ましい。
【0057】
前記フェニルフェノールポリアルコキシ(メタ)アクリレートの中でもO−フェニルフェノールポリアルコキシ(メタ)アクリレートが好ましく、O−フェニルフェノールポリエトキシ(メタ)アクリレートがより好ましい。O−フェニルフェノールポリエトキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、下記一般式(3−1)で表される化合物
【0058】
【化5】

(式中、nの平均値は1〜5である。)等が挙げられる。
【0059】
また、好ましい化合物(D)として、下記一般式(4)
【0060】
【化6】

【0061】
(式中、R、Rはそれぞれ水素原子またはアルキル基である。Xはそれぞれ水素原子または水酸基である。m、nはそれぞれ0〜5である。)で表される化合物(D3)も例示できる。
【0062】
前記R、Rのアルキル基としては、例えば、炭素原子数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基が好ましい。
【0063】
、Rは中でも、それぞれ水素原子又はメチル基がより好ましい。
【0064】
前記一般式(4)におけるm、nは、それぞれ1〜3が好ましい。また、mとnの合計は平均0〜4が好ましく、2〜4がより好ましい。
【0065】
また、一般式(4)の中でも、下記式(4−1)
【0066】
【化7】

で表される化合物、または、式(4−2)
【0067】
【化8】

で表される化合物がより好ましい。
【0068】
更に、前記化合物(D)として、ビナフタレン骨格を分子構造中に有すると共に、該ビナフタレン骨格の芳香核上の置換基として、下記構造式(5)
【0069】
【化9】

【0070】
(式中、Rは炭素原子数2〜5の直鎖状又は分岐状アルキレン基、Rは水素原子又はメチル基であり、lは繰り返し単位で1〜10の整数である。)
で表される置換基を有する化合物(D4)も挙げられる。このようなビナフタレン骨格を有することから、耐熱性及び耐湿性が良好なものとなると共に、有機材料としては極めて高い1.60以上の屈折率を有する材料となる。また、該ビナフタレン骨格上の置換基として末端にアクリロイルオキシ基又はメタクロイルオキシ基を有するアルキルオキシ基又はポリオキシアルキレン基を有することから反応性官能基である(メタ)アクリロイルオキシ基の自由度が高くなり、反応性に優れ硬化物の耐熱性・耐湿性が高くなる。
【0071】
ここでビナフタレン骨格は、1,1−ビナフタレン骨格、1,2−ビナフタレン骨格、2,2−ビナフタレン骨格等が挙げられるが、低粘度、高屈折率といった観点から1,1−ビナフタレン骨格であることが好ましい。
【0072】
また、該ビナフタレン骨格の芳香核上の置換基である、下記構造式(5)
【0073】
【化10】

(式中、Rは炭素原子数2〜5の直鎖状又は分岐状アルキレン基、Rは水素原子又はメチル基であり、lは繰り返し単位で1〜10の整数である。)
で表される置換基は、本発明の(メタ)アクリレート樹脂を活性エネルギー線の照射、或いは加熱により硬化させる際の反応性基として機能する構造部位である。該構造部位は、モノアルキルオキシ基又はポリオキシアルキレン基を介して(メタ)アクリロイルオキシ基がビナフタレン構造に結合していることから、反応性官能基である(メタ)アクリロイルオキシ基の自由度が高くなり、反応性が優れると共に、硬化物の耐熱性・耐湿性が高くなる。
【0074】
ここで、前記構造式(5)中のRは、具体的には、エチレン、n−プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、4−メチル−n−ブチレン、n−ペンテン等が挙げられる。これらの中でも特に該(メタ)アクリレート樹脂自体の屈折率が高くなる点からエチレン、n−プロピレン、イソプロピレンからなる群から選択されるアルキレン基であることが好ましい。
【0075】
前記構造式(5)で表される置換基は、(メタ)アクリレート樹脂中の該樹脂を構成するビナフタレン骨格1モルあたり平均で1.5〜4.0となる割合で含有されることが耐熱性、耐湿性の点から好ましく、特に(メタ)アクリレート樹脂自体の屈折率が高くなる点から1.5〜1.98となる割合で含有されることが好ましい。
【0076】
前記構造式(5)におけるlの値は1〜10の整数であるが、10を超える場合には、(メタ)アクリレート樹脂自体の屈折率が低くなり、本発明の目的とする硬化物における屈折率が十分なレベルに達しなくなる。本発明では、(メタ)アクリレート樹脂自体の屈折率が高くなる点から、lの値の平均が1.0〜3.0の範囲であること、特に1.0〜1.5の範囲であることが好ましく、とりわけ実質的に1であることが好ましい。
【0077】
かかる(メタ)アクリレート樹脂は、1,1−ビナフトールを出発原料として用い、該1,1−ビナフトール中のフェノール性水酸基をアルキレンオキサイド化し、次いで、該アルキレンオキサイド化の結果生成する水酸基を、(メタ)アクリロイルオキシ化して得られる分子構造を有するものであることが、耐熱性・耐湿性に優れ、かつ、屈折率の高い硬化物が得られる点から好ましい。このような1,1−ビナフトールを出発原料とする(メタ)アクリレート樹脂としては、例えば、下記一般式(5−1)
【0078】
【化11】

(式中、X〜X12は、各々独立的に水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10の炭化水素基、又は炭素原子数1〜10のアルコキシ基、A、Aは炭素原子数2〜5の直鎖状又は分岐状アルキレン基、Y、Yは水酸基、アクリロイルオキシ基、又はメタクロイルオキシ基であり、n及びmは繰り返し単位であって、それぞれ1〜10の整数である。但し、Y及びYの少なくとも一方はアクリロイルオキシ基又はメタクロイルオキシ基である。)
で表される分子構造を有するものが挙げられる。
【0079】
ここで、一般式(5−1)中、A及びAで表される構造部位は、前記構造式(5)中のRに対応するものであり、具体的には、エチレン、n−プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、4−メチル−n−ブチレン、n−ペンテン等が挙げられる。これらの中でも特に該(メタ)アクリレート樹脂自体の屈折率が高くなる点からエチレン、n−プロピレン、イソプロピレンからなる群から選択されるアルキレン基であることが好ましい。
【0080】
また、一般式(5−1)中、m又はnは、前記構造式(5)中のlに対応する繰り返し単位を表す。更に、一般式(1)中のX〜X12を構成するハロゲン原子としは、塩素原子、臭素原子が挙げられ、炭素原子数1〜10の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基、オクチル基、直鎖状又は分岐状のでデシル基等のアルキル基の他、前記ビナフタレン骨格に対してベンジル化剤を反応させることによって形成されるアラルキル基であってもよい。また、炭素原子数1〜10のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基等が挙げられる。ここで、X〜X12を構成するハロゲン原子を用いた場合には、該アクレート樹脂自体の屈折率が高くなるが、非ハロゲン化が要求される用途への適用は困難なものとなる。一方、炭素原子数1〜10の炭化水素基又は炭素原子数1〜10のアルコキシ基を用いた場合には、アクレート樹脂の粘度をより低減させることができる。
【0081】
このような上記一般式(5−1)で表される(メタ)アクリレート樹脂の中でも、本発明の効果である高耐熱性・高耐湿性、及び高屈折率という点から好ましいものとして下記の分子構造を有するものが挙げられる。
【0082】
【化12】

【0083】
【化13】

【0084】
【化14】

【0085】
【化15】

【0086】
ここで、上記式(1)〜(21)で表される構造式において、一般式(5−1)と同様に、Y、Yは水酸基、アクリロイルオキシ基、又はメタクロイルオキシ基を表し、n及びmは繰り返し単位で1〜10の整数である。但し、Y及びYの少なくとも一方はアクリロイルオキシ基又はメタクロイルオキシ基である。
【0087】
上記一般式(5−1)で表されるアクレート樹脂において、式中、X〜X12としてハロゲン原子を有するものは、前記した通り、該アクレート樹脂自体の屈折率を一層高めることができるものの、非ハロゲン化が要求される用途への適用は困難なものとなる。他方、X〜X12として直鎖状のアルキル基又はアルコキシ基の様にその構造自体の自由度が高いものアクレート樹脂の粘度低減には効果的ではあるものの、屈折率は、一般式(1)においてX〜X12の全てが水素原子であるものに比べ、比較的低いものとなる。そのため、屈折率と粘度の両特性の両立、合成上の難易度およびコストの面から、上記一般式(1)中の、X〜X12は、各々独立的に水素原子又は炭素原子数1〜3のアルキル基であることが好ましく、特にその全てが水素原子であることが好ましい。よって、上記一般式(1)で表されるアクレート樹脂は、A、Aが、エチレン、n−プロピレン、イソプロピレンからなる群から選択されるアルキレン基であり、X〜X12が全て水素原子である(メタ)アクリレート樹脂であることが好ましい。
【0088】
更に、上記一般式(5−1)中のY及びYは、前記した通り、水酸基、アクリロイルオキシ基、及びメタクロイルオキシ基から選択される官能基を表し、Y及びYの一方、或いは双方がアクリロイルオキシ基又はメタクロイルオキシ基であるが、本発明では、アクリロイルオキシ基及びメタクロイルオキシ基の中でも、特に、(メタ)アクリレート樹脂自体の屈折率が高くなる点からアクリロイルオキシ基が好ましい。
【0089】
また、前記一般式(5−1)で表される(メタ)アクリレート樹脂は、該一般式(5−1)を満たす種々の化合物の混合物として用いることができる。この際、(メタ)アクリレート樹脂に占める上記一般式(1)中のY及びYを構成する水酸基(以下、これを「水酸基(y1)」と略記する。)と、アクリロイルオキシ基又はメタクロイルオキシ基(以下、これを「(メタ)アクリロイル基(y2)」と略記する。)との割合は任意に調整することができる。本発明では、水酸基(y1)と、(メタ)アクリロイル基(y2)との割合がモル比率(y1/y2)で75/25〜1/99の範囲であることが好ましい。即ち、(メタ)アクリロイル基(y2)の量が、モル比(y1/y2)で75/25より多い場合には、活性エネルギー線又は加熱による硬化性が良好なものとなる他、常温液状の(メタ)アクリレート樹脂となり粘度も十分に低いものとなる。一方、(メタ)アクリロイル基(y2)の量が、モル比(y1/y2)で1/99より低い場合には、(メタ)アクリレート樹脂自体の結晶性を適度に抑えることができ、やはり常温での粘度を低減できる。
【0090】
前記した通り、前記一般式(5−1)中のA及びAで表される構造部位は、エチレン、n−プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、4−メチル−n−ブチレン、n−ペンテン等の炭素原子数2〜5の直鎖状又は分岐状アルキレン基であるが、本発明ではこれらの存在比率を任意に調節することが可能であり、例えば、(メタ)アクリレート樹脂に占めるエチレン(以下、これを「エチレン基(a1)」と略記する)の割合が高い方が(メタ)アクリレート樹脂自体の屈折率が高くなる。他方、その他の構造、即ち炭素原子数3〜5のアルキレン基(以下、これを「炭素原子数3〜5のアルキレン基(a2)」と略記する。)が適量存在することによって、(メタ)アクリレート樹脂の結晶化を抑制でき、粘度低減を図ることができる。従って、本発明では、前記エチレン基(a1)と前記炭素原子数3〜5のアルキレン基(a2)とのモル比率(a1/a2)が50/50〜98/2の範囲であることが、該(メタ)アクリレート樹脂が常温液状で粘度も低くなる点、更に該(メタ)アクリレート樹脂自体の屈折率が高くなる点から好ましい。
【0091】
更に、前記した通り、前記炭素原子数3〜5のアルキレン基(a2)としてn−プロピレン又はイソプロピレン(以下、これらを「C3アルキル」と略記する。)が好ましいことから、前記エチレン基(a1)とC3アルキルとのモル比率(エチレン基(a1)/C3アルキル)が、50/50〜98/2の範囲であることが好ましい。
【0092】
また、上記一般式(5−1)中のm、nは繰り返し単位を表す1〜10の整数であるが、(メタ)アクリレート樹脂自体の屈折率が高くなる点から、m、nは、それぞれその平均1.0〜3.0の範囲であること、特に1.0〜1.5の範囲であることが好ましく、とりわけ実質的に1であることが好ましい。
【0093】
以上詳述した(メタ)アクリレート樹脂は、25℃での粘度が3000Pa・s以下であることが、流動性が良好で各種用途への応用範囲が広がる他、粘度調整に使用する低屈折率物質である希釈剤の使用量を低減できることから好ましい。特にこの効果が顕著なものとなる点から1000〜100Pa・sの範囲であることが好ましい。
【0094】
(メタ)アクリレート樹脂は、上記した通り、それ自体高い屈折率を有するものであり、具体的には、1.55以上の屈折率、分子構造の選択によっては1.60以上の屈折率を有する材料となる。
【0095】
以上詳述した(メタ)アクリレート(D4)を製造する方法は、ビナフトール類と、アルキレンオキサイド、ハロゲノアルカノール、又はアルキレンカーボネートとを反応させて水酸基を有する化合物を得、次いで、得られた水酸基を有する反応生成物に(メタ)アクリレート化剤を反応させることにより得られる。
【0096】
ここで、使用し得るビナフトール類としては、前記一般式(5−1)に対応するビナフタレン構造を有するものが挙げられ、具体的には、下記構造式(5−2)
【0097】
【化16】

(式中、X〜X12は、各々独立的に水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10の炭化水素基、又は炭素原子数1〜10のアルコキシ基を表す。)
で表されるものが挙げられる。
【0098】
これらの中でも特に、屈折率と粘度の両特性の両立、合成上の難易度およびコストの面から、上記一般式(5−1)中の、X〜X12は、各々独立的に水素原子又は炭素原子数1〜3のアルキル基であることが好ましく、特にその全てが水素原子であることが好ましい。よって、上記一般式(5−1)で表されるアクレート樹脂は、A、Aが、エチレン、n−プロピレン、イソプロピレンからなる群から選択されるアルキレン基であり、X〜X12が全て水素原子である(メタ)アクリレート樹脂であることが好ましい。
【0099】
上記ビナフトール類と、アルキレンオキサイド、ハロゲノアルカノール、又はアルキレンカーボネートとを反応させる工程において、例えば、ビナフトール類とアルキレンオキサイドとを反応させる方法としては、アルカリ触媒の存在下、100〜200℃の温度条件で、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを重付加反応させる方法が挙げられる。
【0100】
次に、ビナフトール類とハロゲノアルカノールとを反応させる方法としては、ビナフトール類に2−クロロエタノール、3−クロロ−2−プロパノール、2−(2−クロロエトキシ)エタノールなどのハロゲノアルカノールをアルカリ触媒の存在下、100〜200℃の温度条件で反応させる方法が挙げられる。
【0101】
次に、ビナフトール類とアルキレンカーボネートとを反応させる方法は、具体的にはビナフトール類とアルキレンカーボネートとをアルカリ触媒又は酸触媒の存在下、80〜200℃の温度条件で反応させる方法が挙げられる。
【0102】
上記した各方法において、ビナフトール類とアルキレンオキサイドとを反応させる方法は、前記した構造式(5)における、繰り返し単位lの調節が困難であり、また、ビナフトール類とハロゲノアルカノールとを反応させる方法は、塩酸などの酸性物質が副生するため反応釜の腐食を招く、といった問題がある。これに対して、ビナフトール類とアルキレンカーボネートとを反応させる方法は、前記繰り返し単位lの調節が容易であり、また、腐食性の物質の生成を招くこともなく、工業的規模での生産に有利であり、好ましい。以下、このビナフトール類とアルキレンオキサイドとを反応させる方法について詳述する。
【0103】
ビナフトール類とアルキレンカーボネートとを反応させる方法において用いられるアルキレンカーボネートは、炭素原子数2〜5のアルキレン基を持つものであればよく、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ペンチレンカーボネートなどが挙げられるが、前記したとおり、一般式(1)のA及びAとして、エチレン、n−プロピレン、イソプロピレンであることが(メタ)アクリレート樹脂の屈折率が高く、かつ、樹脂粘度が低くなる点から好ましく、よって、該アルキレンカーボネートとしてはエチレンカーボネート、プロピレンカーボネートが好ましい。ここで、(メタ)アクリレート樹脂中のC2アルキルとC3アルキルとのモル比率(C2アルキル/C3アルキル)を50/50〜98/2の範囲に調節するには、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとの比率(モル比)を前者/後者が50/50〜98/2となる割合で用いることが好ましい。
【0104】
ビナフトール類とアルキレンカーボネートの反応割合は、特に制限されるものではなく、ビナフトール類の水酸基に対するアルキレンカーボネートの当量比を高める程、前記構造式(5)におけるlの値、即ち、好ましい実施態様である一般式(1)におけるm、nの値が大きくなる。前記した通り、前記構造式(5)におけるlの値、上記一般式(5−1)中のm、nの値は1〜10の整数であり、この範囲に調整するためには、ビナフトール類の水酸基1当量に対してアルキレンカーボネート1〜10当量の範囲であることが好ましい。
【0105】
また、前記構造式(5)におけるlの値、上記一般式(5−1)中のm、nの値は、(メタ)アクリレート樹脂自体の屈折率が高くなる点から、その平均が1.0〜3.0、特に1.0〜1.5であること、更に実質的に1であることが好ましいが、かかる範囲に調整する為には、ビナフトール類の水酸基1当量に対してアルキレンカーボネートが1〜5当量の範囲、特に1〜3当量の範囲であることが好ましい。
【0106】
アルキレンカーボネートとしてはエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ペンチレンカーボネートなどが使用できるが、
【0107】
前記方法3)の反応における触媒は、アルカリ触媒、酸触媒のいずれであってもよいが、反応の進行が速く、不純物が少なくなる点からアルカリ触媒であることが好ましい。アルカリ触媒は、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化バリウム、酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられるが、中でも水酸化カリウム、水酸化ナトリウムが好ましい。酸触媒を使用する場合も特に限定されるものではなく、硫酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等が挙げられるが、中でもp−トルエンスルホン酸が好ましい。触媒の使用割合はポリナフトールの水酸基1当量に対して触媒0.001〜0.1当量を使用するのが好ましい。
【0108】
上記反応は無溶剤であっても反応は進行するが、使用する場合は反応を阻害するアルコール系溶剤の他の有機溶剤、例えば、トルエン、キシレンを用いることが好ましい。また、反応温度は前記した通り、80〜200℃の範囲であることが好ましく、反応が良好に進行し、不純物が少なくなることから、特に100〜180℃の範囲であることがさらに好ましい。
【0109】
次いで、この様にして得られた水酸基含有化合物は、具体的には、下記一般式(5−3)
【0110】
【化17】

【0111】
(式中、X〜X12は、各々独立的に水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10の炭化水素基、又は炭素原子数1〜10のアルコキシ基、A、Aは炭素原子数2〜5の直鎖状又は分岐状アルキレン基、n及びmは繰り返し単位で1〜10の整数である。但し、Y及びYの少なくとも一方はアクリロイルオキシ基又はメタクロイルオキシ基である。)を(メタ)アクリレート化剤と反応させることにより、目的とする(メタ)アクリレート樹脂を得ることができる。
【0112】
ここで(メタ)アクリレート化剤としては、アクリル酸、メタクリル酸などの(メタ)アクリル酸;アクリル酸クロリド、メタクリル酸クロリドなどの(メタ)アクリル酸ハロゲン;アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸アルキルが挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリル酸ハロゲンは反応時に塩酸などの酸性物質が副生し反応釜腐食の問題を引き起こす他、(メタ)アクリル酸アルキルを用いた場合には、副生するアルコールを除去するための脱アルコール処理を施す必要があることから(メタ)アクリル酸であることが好ましい。
【0113】
前記水酸基含有化合物と(メタ)アクリル酸との反応は、例えば、トルエン、ベンゼン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の有機溶剤中で酸触媒下に脱水反応を行うことにより行うことができる。ここで用いる酸触媒としては、例えば、硫酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等が挙げられる。また、反応中、重合を防止するために重合禁止剤(例えば、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、メチルハイドロキノン等)を使用することが好ましい。
【0114】
また、前記水酸基含有化合物と(メタ)アクリル酸との反応割合は、水酸基含有化合物の水酸基1当量に対して(メタ)アクリル酸0.75〜0.99当量となる割合であることが好ましい。また、反応温度は60〜120℃が好ましく、反応時間は3〜20時間であることが好ましい。
【0115】
本発明で用いる化合物(D)としては、前記式(4)で表される化合物又は式(5−1)で表される化合物がより好ましい。また、化合物(D)は、25℃での屈折率が1.58以上である化合物がより好ましい。
【0116】
本発明において、化合物(D)の使用量としては、本発明の硬化性組成物の粘度低減の効果を十分に発揮すると共に、硬化物の屈折率を高いレベルに維持できる点から〔化合物(A)/化合物(D)の質量比率で10/90〜90/10の割合で用いることが好ましく、なかでも20/80〜50/50の割合で用いることが好ましい。
【0117】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物には、必要に応じてジルコニア粒子を加えても良い。好ましいジルコニア粒子は一次平均粒子径が10〜100nmである。ジルコニア粒子は一次粒度または結合粒度を有する粒子であってもよい。ナノ粒子は結合していないのが好ましい。本発明において一次粒子径は透過型電子顕微鏡(TEM)により測定された粒子径である。
【0118】
ジルコニア粒子は、分散体として用いられ、その平均分散粒子径が10〜50nmであることが、屈折率が高く、且つ、透明性に優れる硬化物が得られることから好ましく、さらに10〜30nmであることが透明性により優れる硬化物が得られることからより好ましい。本発明で用いるジルコニア微粒子(B)として、市販のジルコニア分散体、例えば、アメリカ合衆国のイリノイ州、ネーパービルのナルコ・ケミカル・カンパニーから製品名ナルコ OOSSOO8として市販されている製品や、スイス国のブーラー・AG・ウズヴィル(Buhler AG Uzwil)から商品名「ブーラー・ジルコニア・Z−WO・ゾル(Buhler zirconia Z−WO sol)」として市販されている製品などが利用できる。
【0119】
あるいはまた、市販のジルコニア粉末、例えば、第一稀元素化学工業株式会社から製品名「UEP酸化ジルコニウム」、「RC−100酸化ジルコニウム」として市販されている製品などを分散機で分散媒に分散し、分散体として使用することもできる。
【0120】
前記分散機としては、例えば、ホモジナイザー、サンドミル、超音波分散機、ボールミル、ビーズミル、三本ロール、加圧ニーダー、ビーズミルなどが利用できる。中でも、15〜100μmのビーズを利用し、湿式法で分散できるビーズミルを利用すると、ジルコニアを一次粒子近傍まで分散することができ、より好ましい。
【0121】
このようなビーズミルとして、例えば、アシザワ・ファインテック株式会社製スターミル、浅田鉄工株式会社製ピコミル、寿工業株式会社製ウルトラアペックスミルなどが挙げられる。
【0122】
また、前記分散媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;ジメチルフォルムアミド、N,N−ジメチルアセトアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類を用いることができる。
【0123】
本発明の硬化性樹脂組成物には、さらに性能改良のため、本来の特性を変えない範囲で光重合促進剤、希釈剤、シランカップリング剤、レベリング剤等の添加物を添加することができる。
【0124】
光重合促進剤としては、例えば、2−ジメチルアミノエチルベンゾエート、ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル等が挙げられる。
【0125】
前記希釈剤としては、例えば低粘度の有機化合物、いわゆる有機溶剤が使用できる。有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、カルビトールアセテート、ブチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ソルベントナフサ等が挙げられる。
【0126】
前記シランカップリング剤としては、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0127】
詳述した本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させる方法は、該硬化性樹脂組成物を目的・用途に応じて基材へ塗布或いは成型した後、活性エネルギー線を照射する方法が挙げられる。
【0128】
ここで、活性エネルギー線の照射によって硬化させる場合、かかる活性エネルギー線としては、電子線、紫外線、可視光線等が挙げられる。活性エネルギー線として、電子線を用いる場合には、コックロフトワルトン型加速器、バンデグラフ型電子加速器、共振変圧器型加速器、絶縁コア変圧器型、ダイナミトロン型、リニアフィラメント型および高周波型などの電子線発生装置を用いて本発明の硬化性樹脂組成物を硬化させることができる。また、活性エネルギー線として紫外線を用いる場合は、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯等の水銀灯、キセノンランプ、カーボンアーク、メタルハイトランプ等により照射し、硬化させることができる。この際の紫外線の露光量は0.1〜1000mJ/cmの範囲であることが好ましい。
【0129】
一方、加熱によって硬化させる場合は、60〜250℃の温度領域に加熱することによって硬化させることができる。
【0130】
以上詳述した本発明の硬化性樹脂組成物は、高屈折率、高耐熱性、高耐湿性といった性能を有することから、眼鏡レンズ、デジタルカメラ用レンズ、フレネルレンズ、及びプリズムレンズ等のプラスチックレンズ、光学用オーバーコート剤、ハードコート剤、反射防止膜、光ファイバー、光導波路、ホログラム、プリズムレンズ、LED封止材料、太陽光電池用コーティング材等の各種光学材料に適用することができる。
【0131】
これらのなかでも特に、硬化物における屈折率が高く、かつ、硬化物の耐熱性及び耐湿性にも優れるという特性からプラスチックレンズに好ましく適用でき、特に液晶基板用プリズムレンズとして有用である。
【0132】
ここで液晶基板用プリズムレンズとは、シート状成形体の片面に微細なプリズム形状部を複数有するものであって、通常、液晶表示素子の背面(光源側)に、該素子側にプリズム面が向くように配設され、更に、その背面に導光シートが配設されるように用いられるシート状レンズ、或いは前記プリズムレンズがこの導光シートの機能を兼ねているシート状レンズである。
【0133】
ここで該プリズムレンズのプリズム部の形状は、プリズム頂角の角度θが70〜110°の範囲であることが、集光性に優れ輝度が向上する点から好ましく、特に75〜100°の範囲、中でも80〜95°の範囲であることが特に好ましい。
【0134】
また、プリズムのピッチは、100μm以下であることが好ましく、特に70μm以下の範囲であることが、画面のモアレ模様の発生防止や、画面の精細度がより向上する点から好ましい。また、プリズムの凹凸の高さは、プリズム頂角の角度θとプリズムのピッチの値によって決定されるが、好ましくは50μm以下の範囲であることが好ましい。さらに、プリズムレンズのシート厚さは、強度面からは厚い方が好ましいが、光学的には光の吸収を抑えるため薄い方が好ましく、これらのバランスの点から50μm〜1000μmの範囲であることが好ましい。
【0135】
本発明の硬化性樹脂組成物から前記したプリズムレンズを製造するには、例えば、該硬化性樹脂組成物をプリズムパターンが形成された金型あるいは樹脂型等の成形型に塗布、樹脂組成物の表面を平滑化し、必要に応じて有機溶媒を揮発させた後、透明基材を重ね合わせ活性エネルギー線を照射、硬化させることによって製造する方法が挙げられる。
【0136】
ここで、透明基材としては透明性の高いものであれば、活性エネルギー線の透過性や取扱性等を考慮した場合には、厚さ3mm以下のものが好ましい。また、透明基材の材料としては、例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、これらポリマーの混合物等の合成樹脂あるいはガラス等が挙げられる。
【0137】
このようにして得られる透明基材上に形成されたプリズムシートは、そのまま使用することもできるが、透明基材を剥離してプリズム部単独の状態として使用してもよい。透明基材上にプリズム部を形成したまま使用する場合には、その界面の接着が十分であることが耐候性および耐久性の点で重要であり、透明基材にプライマー処理等の接着性向上処理を施すことが好ましい。
【0138】
一方、透明基材を剥離して使用する場合、比較的容易に剥離できるようにすることが好ましく、透明基材の表面をシリコーンやフッ素系の剥離剤で表面処理を施すことが好ましい。
【実施例】
【0139】
以下本発明の態様を合成例によって更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また例中の「部」及び「%」は特に断わりのない限りすべて質量基準である。尚、150℃における溶融粘度及び軟化点測定、NMR、MSスペクトルは以下の条件にて測定した。
【0140】
1)粘度:25℃にてE型粘度計(東機産業(株)製「TV−20形」コーンプレートタイプを使用して測定。
2)13C−NMR:日本電子株式会社製NMR「GSX270」
3)FD−MS:日本電子株式会社製 二重収束型質量分析装置「AX505H(FD505H)」
【0141】
合成例1
攪拌機、温度計、ディーンスタークトラップ、コンデンサーが装着された5Lの4つ口フラスコにビナフトール858g(3モル)、エチレンカーボネート634g(7.2モル)、48質量%水酸化カリウム24gを加え、170℃で4時間反応させた。その後、メチルイソブトキシケトン1500gを加えて溶解し、水1000gを加え、攪拌を停止して下層を棄却した。更に水1000gを加え、攪拌を停止して下層を棄却した。その後、150℃で脱溶剤を行いDSC測定による融点108℃の樹脂1050gを得た。この樹脂をマススペクトル(FD−MS)で測定し、M=374のピークが確認されたこと、また、図1に示した13C−NMRの測定結果から、下記構造式で表される水酸基含有化合物(a)であることを確認した。
【0142】
【化18】

【0143】
次いで、攪拌機、温度計、コンデンサー、デカンターが装着された1Lの4つ口フラスコに上記水酸基含有化合物(a)187g(0.5モル)、トルエン200g、アクリル酸72g(1.0モル)、p−トルエンスルホン酸15g、ハイドロキノン1gを加え、80−100℃で10時間脱水反応を行った。
【0144】
次いで反応液を冷却し、トルエン200gおよび20%苛性ソーダ水溶液100gを仕込み、攪拌を停止して下層を棄却した。次いで20%塩化ナトリウム、水溶液100gを用いて2回洗浄した。その後、100℃で脱溶剤を行い、樹脂200gを得た。この樹脂をマススペクトルで測定し、M=482およびM=428のピークが確認されたこと、また図2に示した13C−NMRの測定結果から、下記構造式(α)で表される化合物(α)及び下記構造式(β)で表される化合物(β)の混合物であるアクリレート樹脂(D1)であることを確認した。
【0145】
【化19】

【0146】
また、ガスクロマトグラフ(各々を単離し、内部標準法により算出)より、化合物(α)と化合物(β)との比率[(α)/(β)のモル比]は90/10であり、また、アクリロイルオキシ基/水酸基のモル比は95/5であることを確認した。このアクリレート樹脂の屈折率は1.63、E型粘度計で測定した粘度は460Pa.sであった。
【0147】
実施例1〜4及び比較例1〜4
下記第1表の配合に従い、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を調製した。この組成物の粘度(25℃)の粘度を測定するとともに、組成物を40℃の恒温装置に1ヶ月間静置させた。1ヶ月後再び組成物の粘度を測定し、以下の基準によって評価した。
【0148】
◎:粘度の上昇率が0〜100%未満
○:粘度の上昇率が101〜200%未満
△:粘度の上昇率が201〜300%未満
【0149】
前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いて硬化塗膜を作成し、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化性を評価した。硬化塗膜の作成方法と評価基準を以下に示す。
【0150】
<硬化塗膜の作成方法と評価基準>
前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物をそれぞれ、アプリケーター(0.152mm)を用いてPETフィルム(A4300:東洋紡績製)に塗布し、PETフィルム上に塗膜層を作成した。PETフィルムに形成した塗膜層の上にクロムメッキ処理板を置くことで、塗膜層をPETフィルムとクロムメッキ処理板でラミネートした。次に80W/cmの高圧水銀灯を用い、PETフィルム側から紫外線を照射し、以下の基準に従って硬化性を評価した。
【0151】
○:活性エネルギー線の積算照射量が500mJ/cmでタックのない硬化塗膜が得られた。
△:活性エネルギー線の積算照射量が500mJ/cmで硬化塗膜にタックがあったが活性エネルギー線の積算照射量が1000mJ/cmでタックのない硬化塗膜が得られた。
×:活性エネルギー線の積算照射量が1000mJ/cmでも硬化塗膜にタックがあった。
【0152】
【表1】

【0153】
第1表の脚注
DVB−810:1,3−ジビニルベンゼン、1,4−ジビニルベンゼン及びエチルビニルベンゼンの混合物。DVB−810中の1,3−ジビニルベンゼンと1,4−ジビニルベンゼン含有率は81%。
イルガキュア819:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド
ダロキュアTPO:2,4,6−トリメチルベンゾイルージフェニルーホスフィンオキサイド
アクリレート樹脂(D2):ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート
アクリレート樹脂(D3):エポキシアクリレート(DIC製「ユニディックV−5500」)
OPPEA:o−フェニルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート
PEA:フェノキシエチルアクリレート
イルガキュア184D:1−ヒドロキシーシクロヘキシルーフェニルーケトン
MEHQ:メトキノン
Qー1301:アルミニウムN−ニトロソフェニルヒドロキシアミン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香環に重合性不飽和二重結合が直接結合している化合物(A)とホスフィンオキサイド系光重合開始剤(B)と無水マレイン酸(C)とを含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記化合物(A)がジビニルベンゼン系化合物、ジビニルナフタレン系化合物、ジビニルビフェニル系化合物及びこれらの誘導体からなる群から選ばれる1種以上の化合物である請求項1記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記化合物(A)が1,3−ジビニルベンゼン、または1,4−ジビニルベンゼンである請求項1記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記重合開始剤(B)フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフェンオキシドである請求項1記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
更に、(メタ)アクリロイル基を有する化合物(D)を含有する請求項1記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記無水マレイン酸(C)の含有量が、化合物(A)と化合物(D)との合計100質量部に対して0.1〜10質量部である請求項5記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記化合物(D)が、25℃での屈折率が1.58以上である化合物である請求項5記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
前記化合物(D)が、下記一般式(5−1)
【化0】

(式中、X〜X12は、各々独立的に水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10の炭化水素基、又は炭素原子数1〜10のアルコキシ基、A、Aは炭素原子数2〜5の直鎖状又は分岐状アルキレン基、Y、Yは水酸基、アクリロイルオキシ基、又はメタクロイルオキシ基であり、n及びmは繰り返し単位であって、それぞれ1〜10の整数である。但し、Y及びYの少なくとも一方はアクリロイルオキシ基又はメタクロイルオキシ基である。)
で表される化合物である請求項5記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
前記化合物(D)が、下記一般式(4)
【化1】

(式中、R、Rはそれぞれ水素原子またはアルキル基である。Xはそれぞれ水素原子または水酸基である。m、nはそれぞれ0〜5である。)で表される化合物である請求項5記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
更に重合禁止剤(E)を有する請求項1記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
前記重合禁止剤(E)がアルミニウムN−ニトロソフェニルヒドロキシアミンである請求項10記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させてなることを特徴とする硬化物。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか1項記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を成形、硬化させてなることを特徴とするプラスチックレンズ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−99001(P2011−99001A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−252904(P2009−252904)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】